文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当社が掲げる経営理念には、お客さまによりそい、一人ひとりの人生を守り続けていくために、全社員一丸となって歩んでいくという、当社の決意が込められております。この経営理念を実現するため、当社が目指していく具体的な姿を経営方針として制定しております。
いつでもそばにいる。どこにいても支える。すべての人生を、守り続けたい。
かんぽ生命保険は、お客さまから選ばれる真に日本一の保険会社を目指します。
① お客さま一人ひとりの人生によりそい、分かりやすい商品と質の高いサービスを提供します。
② お客さまにより良いサービスを提供するため、お客さまと接する社員が力を発揮する態勢を整備します。
③ 社員一人ひとりが成長でき、明るく生き生きと活躍できる環境をつくります。
④ コーポレート・ガバナンスの確立による健全な経営を行い、常に新しい価値を創造することで、持続的な成長を生み出します。
⑤ 健康促進、環境保護、地域と社会の発展に積極的に貢献します。
⑥ すべてのステークホルダーと密接なコミュニケーションを図ります。
2024年度の日本経済は、個人消費に一部足踏みが見られるも、引き続き堅調なインバウンド需要等を受けたサービス業をはじめ、好調な企業業績を背景に緩やかに回復しました。米国経済は、底堅い雇用環境や好調な個人消費に支えられ堅調に推移するも、関税政策によるインフレ懸念の高まりから足元で個人消費に減速感が見られました。欧州経済は、政治の不透明感が残るも、消費者物価の低下による家計の回復を背景に個人消費に回復が見られましたが、ドイツを中心に製造業の不振が続き、回復ペースが鈍化しました。
こうした経済状況の中、運用環境は以下のようになりました。
国内長期金利は、賃上げや物価上昇を背景とした日本銀行の金融政策正常化期待を受けて、7月には1.1%台と12年ぶりの高水準まで上昇して推移しました。7月末には日本銀行が政策金利を0.25%へ引き上げたものの、米国の失業率上昇等による景気後退懸念により低下し、9月まで横ばいで推移しました。その後は、日本銀行の金融政策正常化期待を受けて再び上昇し、1月には0.5%へ政策金利の引き上げが発表され、3月末は1.5%程度となりました。
日経平均株価は、米国景気の底堅さや日本経済の脱デフレ期待、日本企業のガバナンス改革への期待等から上昇し、7月には42,000円台となり史上最高値を更新しました。その後は米景気悪化懸念により下落後急反発するも、日本銀行の金融政策正常化による日本経済への影響や米新政権による政策の不透明感等から概ねレンジで推移し、3月末は米国の関税政策による景気悪化懸念から下落し35,000円台となりました。
ドル円は、米国中央銀行の高い政策金利の据え置き姿勢を背景にドル高円安が進行し、7月には160円台まで上昇しました。その後は米景気悪化懸念や米国中央銀行における利下げが開始されたことで9月には140円台までドル安円高基調となりましたが、緩やかな利下げペースが見通される中で再びドル高円安となり、12月には158円台となりました。その後は日本銀行による利上げ観測等からドル安円高となり、3月末は149円台となりました。
また、近年、生命保険業界を取り巻く経営環境は大きく変化しております。
少子高齢化の進展や単身世帯の増加に伴い伝統的な死亡保障へのニーズが縮小する一方、社会保障制度に対する不安感や自助努力意識の高まりから、医療・介護等の第三分野商品に対するニーズの拡大が見られ、今後もこの傾向は継続するものと考えられます。さらに、自然災害、資源価格の高騰、為替の変動等、先行きが読めない不確実な状況が続くとともに、コロナ禍を経たライフスタイルの変化や、生成AIの急速な広まり等による社会のデジタル化の進展等、社会全体が大きく変化している現在、万が一の保障に備えるお客さまの自助努力を支援し、安心を提供するという生命保険事業の社会的役割はより一層重要性を増しております。当社としても、時代とともに加速するお客さまの価値観やライフスタイルの変化・多様化に合わせて最適なサービスを提供できるよう、引き続きお客さま本位の業務運営の推進・定着に取り組んでおります。
販売チャネルにつきましては、従来からの営業職員チャネルや銀行を中心とした金融機関の窓口販売チャネル等の対面チャネルに加え、デジタル技術の活用により非対面・非接触での保険サービスを提供する取り組みが進んでおります。
当社におきましては、創業以来、養老保険・終身保険を中心とした簡易で小口な商品を、全国津々浦々の郵便局を通じて、家庭市場を中心に多くのお客さまにご提供するという独自のビジネスモデルを展開してまいりました。商品・チャネル・顧客基盤といったこれらの特徴は、他社にはない当社の大きな強みである一方、時代や環境の変化に適応したビジネスモデルの転換を図る必要性を認識しております。かかる課題認識を踏まえた当社の成長戦略の詳細は、下記「(4) 経営戦略及び対処すべき課題」に記載のとおりであります。
2024年度において、当社の代理店である郵便局において、お客さまから事前に同意をいただかないまま、非公開金融情報※を保険募集を目的とした来局のご案内に不適切に利用した事案(以下「非公開金融情報の不適切利用事案」といいます。)を確認いたしました。また、2024年1月に販売を開始した一時払終身保険に関して、販売に係る保険業法上の認可を取得する前にお客さまへ勧誘を行っていた事案を確認いたしました。
両事案について、同様の事案が発生することがないよう再発防止策を策定しており、当社を含む日本郵政グループは、グループの総力を結集し再発防止に努めてまいります。詳細については、下記「(4) 経営戦略及び対処すべき課題」に記載のとおりであります。
※ 非公開金融情報とは、お客さま対応等の中で知った、お客さまの金融取引や資産に関する、通常、本人しか知りえない情報(口座残高や引落情報、保有ファンドの状況等)のことです。
当社は、下記「(4) 経営戦略及び対処すべき課題」に記載のとおり、2024年5月に中期経営計画(以下「中計」といいます。)の見直しを公表しており、同時に、目標とする経営指標についても一部見直しを行っております。見直し後の主要な経営指標は次のとおりであります。
見直し後の中計においても、当社グループは、お客さまのご評価を主要目標として設定し、「お客さま満足度※1」や「ネットプロモータースコア(NPS®※2)」の向上を目指してまいります。一方、経営基盤を維持していくためのストックベースの目標として設定していた「保有契約件数(個人保険)」については、下記「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3) 目標とする経営指標の達成状況等」に記載のとおり、保有契約件数が減少傾向にあることを踏まえ、目標件数の見直しを行っております。
また、財務目標として設定していた「連結当期純利益」に替えて、新契約の初年度に係る標準責任準備金負担による影響及びのれん償却による影響を調整した「修正利益※3」及びこれを踏まえた「修正ROE※4」を新たに設定しております。このほか、財務目標として「1株当たり配当額」及び「EV成長率」を引き続き設定しております。
なお、主要目標の達成状況については、下記「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (3) 目標とする経営指標の達成状況等」に記載のとおりであります。
※1 お客さま満足度を5段階評価として、上位2段階に相当する「満足」「やや満足」として回答いただいた合計割合です。
※2 NPS®とは、Net Promoter Scoreの略語であり、ベイン・アンド・カンパニー、フレッド・ライクヘルド、サトメトリックス・システムズ(現NICE Systems,Inc.)の登録商標です。
※3 修正利益とは、新契約の初年度に係る標準責任準備金負担による影響及びのれん償却による影響を調整するための当社独自の指標であり、連結当期純利益に「責任準備金の調整額(税引後)」及びのれん償却額を加算したものです。責任準備金の調整額とは、当該事業年度の新契約に係る標準責任準備金の繰入額から保険料計算に用いる基礎率により計算した責任準備金の繰入額を控除した金額です。
※4 修正ROEとは、修正利益を連結株主資本(期中平均)からのれん未償却残高(期中平均)を控除したもので除して算出しております。
(適正な業務運営・法令遵守等に関して)
2024年度において、当社の代理店である郵便局において、非公開金融情報の不適切利用事案を確認いたしました。本事案を踏まえ、2025年4月、代理店の監督を一元的に行う部署の新設や業務執行部門とは独立したコンプライアンス部門の権限強化等を行うことで委託元としてのガバナンス態勢を強化しております。加えて、グループを挙げてお客さまからの非公開金融情報等の利用に係る同意の取得促進と、同意を得た非公開金融情報等を適切に活用するシステム構築に取り組んでおります。また、グループで連携して郵便局の活動に関する客観的データ等を活用したモニタリングに取り組むほか、当社では現地における直接の実態把握も強化しながら、引き続き代理店である日本郵便株式会社を教育・指導してまいります。
また、2024年1月に販売を開始した一時払終身保険に関して、販売に係る保険業法上の認可を取得する前にお客さまへ勧誘を行っていた事案を確認いたしました。これを踏まえ、当社では、認可を取得する前段階における社員への情報伝達の内容等を見直すほか、適切な業務運行等に関する社員への継続的な教育を行うとともに、その理解や履行状況の実態把握に一層取り組む等、実行態勢を強化しながら法令遵守を徹底してまいります。
両事案について、今回の事態に至った責任を重く受け止め、当社では、関係役員の報酬の減額を実施いたしました。同様の事案が発生することがないよう、当社を含む日本郵政グループは、グループの総力を結集し再発防止に努めてまいります。
(中期経営計画)
当社はこれまで、多くのお客さまへ保険という安心をお届けし、保険金等のお支払いを通じてお客さまの人生をお守りすることで、社会へ貢献してまいりました。
こうした当社の価値を提供し続けていくため、2021年5月に公表した2025年度までの中計について、お客さま本位の業務運営の徹底等の基本方針を維持しながら、内外環境の変化や計画の進捗を踏まえ、2024年5月に見直しを行いました。

引き続き「お客さまから信頼され、選ばれ続けることで、お客さまの人生を保険の力でお守りする」という当社の社会的使命を果たすべく、見直し後の中計の取り組みを進めてまいります。
特に、中計最終年度となる2025年度は、全ての活動をお客さま起点に進化させるとともに、お客さまサービス向上に関するこれまでの取り組みを定着・発展させることで、あらゆる場面でお客さまに安心をお届けし続ける活動の展開に注力してまいります。加えて、安心を支える強靭な経営基盤の確立に取り組むことで、「お客さまの人生を通して安心をお届けする」という当社の価値をお客さまへ提供し続けてまいります。

① 成長戦略
ア.ライフステージ/世代を超えたつながりによるお客さまの維持・拡大
当社は、お客さま本位の業務運営をさらに発展させるため、「保険のプロ」としての使命感のもと、お客さまへの商品提案からアフターフォロー、請求手続き等のあらゆる場面で、お客さまに安心をお届けし続ける活動を一体的に展開してまいります。

a.専門知識に基づく最適なご提案
当社では、お客さまとの長期安定的な関係を築きながら、様々な世代のお客さまの課題を把握し、解決策としての保障をご提案できるよう、教育体制を強化しながら営業社員のスキル向上に取り組んでまいります。

b.多様なニーズに対応した商品
当社は、あらゆる世代のお客さまの多様なニーズにお応えすべく、金利上昇等の外部環境の変化を捉えた既存商品の魅力向上と、お客さまのライフサイクル全体で安心を提供できるような商品領域の拡充に取り組んでまいります。

c.“ALLかんぽ”でのアフターフォロー
当社は、お客さまのご自宅への訪問等による対面のサポートに加え、デジタル技術を活用した非対面のサポートを組み合わせながら、当社の全てのお客さまとの信頼関係を一層構築してまいります。加えて、保障の見直しや継続の必要性が高いお客さまには優先的に対面でサポートすることで、お客さまにとって必要となる保障を継続いただきながら、確実に保険金をお支払いしてまいります。

d.お客さまに寄り添った手続き体験の提供
当社では、各種手続きにおけるお客さまの負担軽減や利便性向上を果たすべく、デジタルを活かした手続きを一層拡充し、お客さまサービスのさらなる向上に取り組んでまいります。

※ かんぽデジタル手続きシステムとは、対面でのご請求時に紙を使わずに端末で受け付けるシステムのことです。
e.マネジメント手法の進化
当社は、営業社員に対して、保険募集実績だけでなくアフターフォロー等も含めたお客さま本位の活動全般を定量的に評価する制度を導入し、社員の成長度合いを見える化・評価して成長を促進しながら、お客さまサービスの向上に取り組んでまいりました。この制度をさらに発展させ、当社の各拠点の活動全般と成長度合いも定量的に見える化・評価することで、社員と組織双方の成長を一層促進し、上記a~dの活動を着実に推進してまいります。

これらの取り組みにより、常にお客さまのための活動・サービス提供を行うことで、お客さま満足度を向上させながら、お客さま数の維持・拡大につなげてまいります。
イ.持続的な「強い会社」へ
a.資産運用
当社は、引き続き、ERM※1の枠組みの下、ALM※2運用を基本として運用収益の向上を目指し、市場環境の変化を捉えた追加収益の獲得や、他社との連携等を通じた運用態勢や人材ポートフォリオの高度化に取り組んでまいります。
また、サステナブル投資※3については、社会課題解決に向けたインパクト投資や産学連携を中核に、かんぽ生命らしい“あたたかさ”の感じられる投資を推進してまいります。

※1 ERMとは、Enterprise Risk Managementの略語で、会社が直面するリスクに関して、潜在的に重要なリスクを含めて総体的に捉え、会社全体の自己資本などと比較・対照することによって、事業全体として行うリスク管理のことです。
※2 ALMとは、Asset Liability Managementの略語で、資産負債の総合管理のことです。
※3 サステナブル投資とは、サステナビリティ(持続可能性)の諸要素を考慮した投資行動を指します。
b.生産性向上
当社では、引き続きデジタル技術を活用することで、お客さまサービスを向上させるとともに、生産性向上を実現し、これにより生じた経営資源を当社の強化領域にシフトすることで、ビジネスモデルの変革等のDXを推進してまいります。
また、これまでの企画業務における生成AIの活用に加え、営業社員によるお客さまサポート業務においても活用する等、全社的なAIやデータ活用にも取り組んでまいります。

※ バックオフィス業務とは、お手続き後の書類確認、保険の引受審査や保険金等の支払可否の判定等の事務処理を行う後方支援部門(サービスセンター)における業務を指します。デジタル化の推進により、請求書等がデータ送信され、郵便物の受入れや受け入れた書類のデータ化を不要としているほか、書類確認や引受審査等を自動化することで、業務量を削減しております。
c.収益源の多様化
当社は、大和証券グループ、KKR & Co.Inc(以下「KKR」といいます。)、及びその子会社のGlobal Atlantic Financial Group(以下「GA」といいます。)との提携等、国内外の提携関係を発展させるとともに、中長期的な成長に資する新たな領域を広く探索することで、さらなる収益獲得に取り組んでまいります。

② サステナビリティ経営
当社は、自らの社会的使命を果たす事業活動を通じて社会課題の解決に貢献することで、当社の持続的な成長とSDGsの実現を目指してまいります。
こうした目的を果たすためには、健全な経営基盤が欠かせないものと認識しております。この認識のもと、コーポレートガバナンスの強化や企業風土改革・人的資本経営の推進に引き続き取り組んでまいります。
特に、コーポレートガバナンスの強化について、上記「(適正な業務運営・法令遵守等に関して)」に記載したとおり、法令遵守等の課題を克服すべく、ガバナンス態勢の強化に取り組んでまいります。

※ フロントラインとは、お客さま対応を行う営業部門等のことです。
また、社員一人ひとりが自信と誇りをもって働く企業を目指し、企業風土改革・人的資本経営を推進してまいります。

このほか、段階的な適用が予定されている新たなサステナビリティ情報の開示基準等を踏まえた適切な情報開示を進めてまいります。
このように、各種取組を推進することで、高い外部評価の継続的な獲得にもつなげてまいります。
③ 資本効率を意識した経営
当社では、引き続き、ERMに基づき、財務の健全性を確保しつつ、資本収益性を向上させ、修正利益を原資とした安定的な株主還元を図ることで、持続的な成長や中長期的な企業価値の向上を実現してまいります。これに向けて、株主・投資家との対話等を踏まえながら資本コストや株価を意識した経営に取り組むことで、市場評価の改善を図ってまいります。

※ ESRとは、Economic Solvency Ratioの略語で、財務健全性指標の一つである「経済価値ベースのソルベンシー比率」のことです。
上記の取り組み等を通して、株主・投資家をはじめとする様々なステークホルダーの皆さまのご期待に沿えるよう、持続的な企業価値の向上を目指してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当社は、全国の郵便局ネットワーク等を通じて保険サービスを提供することで、お客さまのいざというときの支えとなり、お客さまの人生をお守りしてまいりました。そうした事業活動そのものがサステナビリティを実現するための取り組みであると位置づけ、当社は、以下の「サステナビリティ方針」を定めております。
(サステナビリティ方針)
かんぽ生命保険は、経営理念を実現し、お客さまの人生を保険の力でお守りするという社会的使命を果たすことで、サステナビリティ(持続可能性)をめぐる社会課題の解決に貢献し、当社の持続的な成長とSDGsの実現を目指します。
(1) ガバナンス
当社は、サステナビリティ推進規程において、サステナビリティ推進に関する基本的な事項を定めております。これに基づき、サステナビリティ推進部担当執行役を委員長とするサステナビリティ委員会において、サステナビリティ戦略やサステナビリティ実施計画の策定・進捗等に関する協議・報告を行っております。
サステナビリティ委員会での検討・協議の状況は、適宜経営会議に報告するとともに、重要なものについては、経営会議で協議・決定の上、取締役会へ報告しております。(2024年度は、サステナビリティ推進に係る取り組みについて、経営会議へ3回、取締役会へ1回報告しております。)
また、執行役に対して支給する業績連動型株式報酬の指標の一つとして、「ESG指標(GHG削減施策の実施状況、本社女性管理職比率、ESG評価機関の評価の改善状況)」を定めております。
(サステナビリティ推進体制)

上記に加え、他の専門委員会で協議・検討する取り組みのうち、サステナビリティに関する取り組みについては、サステナビリティ委員会に取り組み内容の報告等を行っております。具体的には、気候変動リスク・自然関連リスクについてはリスク管理統括部担当執行役を委員長とするリスク管理委員会で、人的資本については人事戦略部担当執行役を委員長とする働き方改革委員会でそれぞれ取り組みを協議・検討するとともに、これらの内容について、サステナビリティ委員会へ適宜報告等を行っております。
(2024年度 サステナビリティ委員会の開催状況)
(2) リスク管理
当社では、SDGsの17の目標を達成するための具体的な169のターゲットから、当社事業に関連するリスクや機会を考慮の上、取り組むべき社会課題を抽出し、抽出した課題に「ステークホルダーからの期待」と「当社にとっての重要度(戦略的重要性)」の2軸に基づく優先順位をつけて、マテリアリティ(重要課題)として特定しております。特に、「ステークホルダーからの期待」については、業界団体によるガイドラインや外部評価機関等からの要請事項、機関投資家との対話を通じた当社への要請事項、お客さまから当社に寄せられた声及び社員アンケートの内容等を踏まえ、特定作業を行っております。そして、マテリアリティに紐づくサステナビリティ実施計画を策定し、その進捗状況を管理・評価しております。なお、これらの取り組みは適宜サステナビリティ委員会、経営会議及び取締役会へ報告しております。
また、当社はリスク選好ステートメント※を設定し、ERMに基づき事業運営における健全性を確保しつつ、持続的な成長や中長期的な企業価値の向上を目指しております。リスク選好ステートメントでは全体方針に加え、保険引受リスク・資産運用リスク・オペレーショナルリスクをリスク区分として定めております。下記「(3) 戦略」に記載のマテリアリティを推進するための取り組みと関連するリスク(サステナビリティに関連するリスク)は上記リスク区分を基に管理しております。具体的には、人的リスクやコンプライアンスリスクはオペレーショナルリスクのリスク区分で管理しております。また、気候変動リスク及び自然関連リスクに関しては、全てのリスク区分でリスクの洗い出し・リスク評価を行う態勢を整備しており、サステナビリティ推進部がリスクを特定及び評価して対応策を検討した上で、リスク管理統括部がリスク評価の妥当性を検証し、検証結果をリスク管理委員会に報告しております。
※ リスク選好ステートメントとは、当社のリスクテイクの方針(目標収益達成を果たす上で、どのようなリスクを取るか)を定めたものです。当社では「定性的なリスク選好」と「定量的なリスク選好」に分けて設定しております。
(3) 戦略
当社では、社会的使命を果たし、サステナビリティをめぐる諸課題に取り組むため、以下の5つのマテリアリティ(重要課題)を特定しており、マテリアリティに沿った各取り組みを推進しております。
なお、本マテリアリティは、外部環境の変化等を踏まえ、2024年3月に見直しを行ったものであり、見直しに当たっては、サステナビリティ委員会及び経営会議で協議・決定し、取締役会へ報告しております。

(各マテリアリティの取り組み)
マテリアリティ1 郵便局ネットワーク等を通じた保険サービスの提供
当社は、前身である簡易生命保険事業の創業以来、郵便局ネットワーク等を通じて全国のお客さまに基礎的な保険商品・サービスをご提供してまいりました。現在も、人生100年時代における、あらゆる世代のお客さまの保障ニーズにお応えし、お客さまの人生を保険の力でお守りすることが当社の社会的使命であると認識しており、この使命を果たすことで、サステナビリティ(持続可能性)をめぐる社会課題の解決に貢献するとともに、当社の持続的な成長を目指しております。そのため、常にお客さまのニーズにお応えする保険サービスをご提案するとともに、お客さまの万が一の際に迅速かつ確実に保険金をお支払いする態勢を整備してまいります。
なお、将来にわたってお客さまに保険サービスを提供する基盤を維持するため、保有契約件数(個人保険)を指標及び目標として設定しております。また、保険サービスに関するお客さまからの評価を把握し、より良いサービスの提供に活かしていくことを目的に、お客さま満足度及びネットプロモータースコア(NPS®)を指標及び目標に設定しております(詳細は、「(4) 指標及び目標」を参照)。
マテリアリティ2 人々の笑顔と健康を守るWell-being向上のためのソリューションの展開
当社は、生命保険会社としてお客さまの万が一を支えるだけでなく、日々の健康づくりのサポートやサステナブル投資の推進に取り組むことにより、人々の毎日の暮らしを元気で笑顔に満ちたものにすることに貢献してまいります。当社がこうした取り組みを推進し、人々の健康で豊かな人生を支えることは、生命保険会社である当社の持続的な成長にも資するものと考えております。
具体的には、当社は、当社発祥のラジオ体操の普及推進等を通じて日々の健康づくりをサポートしたいと考えており、ラジオ体操の普及推進の進捗を把握する指標及び目標として、ラジオ体操実施率を設定しております。また、サステナブル投資の推進については、「Well-being向上」「地域と社会の発展」「環境保護への貢献」を重点取り組みテーマとしており、これらの取り組みの進捗を把握する指標及び目標として、インパクト“K”プロジェクト※認証ファンドの累計件数及び金額を設定しております。本指標及び目標は、マテリアリティ3及び4にも関連するものです(詳細は、「(4) 指標及び目標」を参照)。
※ 「インパクト“K”プロジェクト」とは、インパクト投資に関わる国内外の基準や考え方に加え、当社として重視する事項を包摂した社内認証制度です。
マテリアリティ3 多様性と人権が尊重される安心・安全で暮らしやすい地域と社会の発展への貢献
当社は、多様性や人権尊重に関する社会的要請が高まる中、これらを侵害することのない企業活動を行っていく必要があると認識しております。そのため、人々が将来にわたって安心・安全に生活できるよう、多様性や人権を尊重した地域と社会の持続的な発展に資する取り組みを行うことで、誰もが生きがいをもって豊かに暮らせる共生社会の実現に貢献いたします。
なお、地域と社会の持続的な発展に資する取り組みの進捗を把握する指標及び目標として、社会貢献活動の実施を設定しております。また、マテリアリティ2に記載のインパクト“K”プロジェクト認証ファンドの累計件数及び金額も、指標及び目標として設定しております(詳細は、「(4) 指標及び目標」を参照)。
マテリアリティ4 豊かな自然を育む地球環境の保全への貢献
当社は、持続的な地球環境があってこそ、当社の持続的な成長が実現できるという考えの下、気候変動への対応を行っております(詳細は、「① 気候変動に関する取り組み」を参照)。加えて、社会的要請が高まっている生物多様性・自然資本への取り組みも進めており、「自然資本への依存と影響」、「リスクと機会」の分析を実施しております。
なお、気候変動への対応として、温室効果ガス排出量の削減に向けて、当該排出量に関する指標及び目標を設定しており、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて取り組んでおります。また、マテリアリティ2に記載のインパクト“K”プロジェクト認証ファンドの累計件数及び金額も、指標及び目標として設定しております(詳細は、「(4) 指標及び目標」を参照)。
マテリアリティ5 サステナビリティ経営を支える経営基盤の構築
当社では、1~4のマテリアリティの達成のためには、社員一人ひとりが力を発揮できる職場環境や、会社の健全な経営基盤が欠かせないものと認識しております。そのため、社員のエンゲージメントの向上や多様な人材の活躍を進める人的資本経営の推進を図るとともに、特に、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4) 経営戦略及び対処すべき課題 (適正な業務運営・法令遵守等に関して)」に記載したとおり、法令遵守等の課題を克服すべく、コンプライアンスの徹底、コーポレートガバナンスの強化に取り組んでまいります(人的資本経営の詳細は、「② 人的資本経営の推進」を参照)。
なお、人的資本経営の進捗を把握する指標及び目標として、ES調査(エンゲージメントスコア調査)結果や、本社における女性管理職比率、育児休業取得率、障がい者雇用率(日本郵政グループ全体)を設定しております。加えて、コンプライアンスの徹底のため、具体的な実践計画であるコンプライアンス・プログラムに基づき、重点的に取り組むべき事項を選定し、推進しております(詳細は、「(4) 指標及び目標」を参照)。
以降は、5つのマテリアリティのうち、「4 豊かな自然を育む地球環境の保全への貢献」の取り組みの一つである「気候変動に関する取り組み」及び「5 サステナビリティ経営を支える経営基盤の構築」の取り組みの一つである「人的資本経営の推進」について、詳細を記載いたします。
① 気候変動に関する取り組み
当社は、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に、2019年4月に賛同を表明しており、気候変動への対応を経営上の重要課題として認識し、取り組みを進めております。具体的には、TCFD提言の内容を踏まえ、気候変動関連のリスクと機会を特定するとともに、それらが当社の生命保険事業や資産運用に及ぼす影響を把握するためのシナリオ分析を実施しております。引き続き、当社ではカーボンニュートラルの実現に向けて、低炭素社会への移行に関する取り組みを実践し、事業の持続可能性を高めてまいります。
(気候変動が当社事業に及ぼすリスクと機会)
生命保険事業
資産運用
※1 上記リスクと機会の特定に当たっては、想定される大小のリスクを洗い出した上で、当社事業における重要性を勘案し、影響度の高いリスクと機会を開示しております。
※2 影響の時間軸は、短期:5年、中期:15年、長期:30年程度と想定しております。
(主なシナリオ分析の実施内容※1)
※1 気候変動が生命保険事業及び資産運用に及ぼす影響については、一般的に確立された計測モデルはない上、長期間にわたり発現するなど気候変動自体の不確実性が高いことから、分析の精度や信頼性についての課題は多いと考えております。引き続き、調査・分析等を通じた影響把握に取り組んでまいります。
※2 NGFSとは、Network for Greening the Financial Systemの略語で、気候変動リスクへの金融監督上の対応を検討するための中央銀行及び金融監督当局の国際的なネットワークのことです。
(低炭素社会への移行に関する取り組み)
② 人的資本経営の推進
ア.人的資本経営の考え方
当社は、お客さまから信頼され選ばれる企業になること及びお客さまに感動いただける保険サービスの提供を通じた持続的な成長を目指しており、そのためには、主体的に行動して付加価値の高い成果を発揮できる多様な人材の確保が必要不可欠であると考えております。一方で、当社では、優秀な専門人材の採用ができない可能性や、魅力的な労働条件や職場環境を提供できない場合に人材の流出、不足等を招く可能性があることを重要なリスクとして認識しております。
こうした中で、2024年5月に見直しを行った中計(2021年度~2025年度)においても、サステナビリティ経営の重要な課題として「人的資本経営・企業風土改革」を位置づけております。そして、以下に記載する「『人的資本経営』3つの基本理念」の下、人材育成及び社内環境整備の取り組みを進めることで、全役員・社員が会社とともに成長し、自信と誇りをもって堂々と仕事ができる会社を目指しております。
(「人的資本経営」3つの基本理念)
1.社員が主体的に行動する企業風土の定着
2.戦略的な人材確保
3.多様な人材の活躍と柔軟な働き方の推進
イ.「人的資本経営」3つの基本理念とその取り組み
a.(基本理念1)社員が主体的に行動する企業風土の定着
経営陣と社員が将来のビジョンを共有して共感することや、社員の主体性を引き出すマネジメント、多様なキャリアにチャレンジできる機会の提供、並びに、若手主体のプロジェクトの導入を通じて、社員のエンゲージメント※1の向上と主体的に行動する企業風土の定着を目指しております。
具体的には、会社が直面している課題やその取り組み等に対して、社長から全社員への定期的なメッセージ発信を行う「社長通信」や経営陣等と社員が定期的に意見交換する「フロントラインミーティング」、社員が社長に直接提案を行う制度の「かんぽ目安箱」を実施しております。これらにより、会社の将来のビジョンや方針等の理解を促進するとともに、経営陣と社員が同じ方針に基づいて全社一体となって課題等に取り組んでおります。
また、社員の主体性を引き出す取り組みとして、キャリアに関する社員本人の希望を踏まえて各社員の育成方針などの議論を行う人材育成会議を実施しております。これにより、社員一人ひとりが自身の強みや弱みに気づき、その改善等に社員自らが取り組むことで、能力やモチベーションの向上を図っております。加えて、管理職の人事評価の中で、部下社員が能力を最大限発揮できる環境の構築が役割であることを明確化するとともに、各拠点の管理職等を対象にコーチング※2研修を実施し、マネジメント手法の改善に取り組んでおります。これらにより、部下社員との定期的な対話等によるコミュニケーションを活性化するとともに、主体的に行動する社員の育成や組織力の強化を図っております。
さらに、社員の自律的な成長等を目的に、現在と異なる職務や環境で新たな業務へ自ら挑戦することができるキャリアチャレンジ制度を導入しております。これにより、社員自らが新たな業務に挑戦し、その領域でのスキル向上や視野を広げることで新たな発想等による課題解決力の向上を図るとともに、人事交流の活性化による組織間の相互理解も促進しております。
このほか、新たな取り組みとして、若手社員が組織を超えてチームを組み、自分達の裁量で重要なミッションを遂行する若手主体のプロジェクトも導入しております。
これらの取り組み等を通じた社員のエンゲージメントを客観的に把握するため、年2回ES調査を実施しており、その調査結果を指標及び目標に設定しております(詳細は、「(4) 指標及び目標」を参照)。2024年度は、各種コミュニケーション施策の継続的な取り組み等により、社員の将来への期待・自信が高まり、社員のエンゲージメントにも大きな向上が見られました。今後も、会社の理念・方向性の社員への浸透と相互尊重を中心としたコミュニケーション改革に加え、管理職へのコーチング研修等によるマネジメント力強化や、社員の主体性をさらに引き出す人材育成、社員がやりがいをもって仕事に活き活きと取り組める環境作り等、企業風土改革の取り組みを強化することで、さらなるエンゲージメント向上を目指してまいります。
※1 エンゲージメントとは、会社との深い関わり合いや関係性を意味する言葉です。
※2 コーチングとは、管理職等が部下社員とともに達成したいことを明確にすることで、考え方や行動の選択肢を増やし、社員が主体的に行動するように促すコミュニケーション・スキルです。
b.(基本理念2)戦略的な人材確保
現状及び将来必要な人材の「量」と「質」を把握し、経営戦略に合った人材の採用や強化領域への配置とリスキルの促進、各階層及び領域に応じた育成の実施により、会社の持続的な成長を支える人材を確保してまいります。
具体的には、組織及び人事面から各部門の事業拡大や変革をサポートするツールとして、現状及び将来必要な人材の「量」と「質」を可視化する人材ポートフォリオの策定を進めており、各領域別の将来的な構想を踏まえた必要要員数の整理を行うとともに、強化領域への人事異動を推進しております。これにより、当社において、重点的に強化すべき組織や今後各領域で必要となる人材を特定し、現状とのギャップ分析を実施することで、ギャップを踏まえて戦略的に採用や配置、育成を行ってまいります。その一環として、新卒採用では会社説明会やインターンシップの強化、積極的なリクルーター活動等に取り組んでまいります。経験者採用では、営業、アクチュアリー※、資産運用・リスク管理、IT・デジタル分野における専門人材等を確保するために、人材紹介会社を経由した採用や、社員からの紹介を通じた採用等を進めてまいります。これらの取り組みを測る指標として、新規採用者数に関する目標を設定しております(詳細は、「(4) 指標及び目標」を参照)。また、書類審査等のバックオフィス業務の削減を進め、こうした業務に従事していた人材をリスキルし、お客さま対応を行う部門等の当社の強化領域へシフトしてまいります。
加えて、営業社員一人ひとりの能力や成長度合いを総合的かつ定量的に評価する制度を導入しており、中長期的な視点で営業社員の育成を進めてまいります。このほか、会社の成長を支えていく経営リーダーを、長期的な計画の中で戦略的に育成していくことを目的に、次世代リーダー育成プログラムを策定しており、将来を見据えて、各領域・階層に応じた社員育成を実施してまいります。
※ アクチュアリーとは、確率や統計等の手法を用いて、将来の不確実な事象の評価を行い、保険数理業務、リスクマネジメント等を行う専門職です。
c.(基本理念3)多様な人材の活躍と柔軟な働き方の推進
多様な人材が互いの「個」を尊重し、それぞれの役割を果たして成果を上げることや時間や場所にとらわれない柔軟な働き方ができる環境の整備により、多様化する社会のニーズに応え、社員・お客さまの満足度の向上を目指しております。
具体的には、多様な人材の活躍の一環として、将来管理職として活躍することが期待される女性社員に向けたキャリア形成支援研修などの実施により女性活躍を推進しており、進捗を把握する指標及び目標として、本社における女性管理職比率を設定しております(詳細は、「(4) 指標及び目標」を参照)。
加えて、育児や介護をしながらでも安心して社員が働き続けられるよう、育児休業取得社員に対する職場復帰プログラムの実施の徹底や、仕事と育児の両立支援セミナーの開催等に取り組んでおり、進捗を把握する指標及び目標として、育児休業取得率を設定しております(詳細は、「(4) 指標及び目標」を参照)。2024年度は男女ともに育児休業取得率100%となっており、これを継続するために、引き続き各種取り組みを実施いたします。
また、障がいのある方の就労能力を正しく評価し、就業機会を提供することは企業の社会的責任の一環であると考え、当社を含む日本郵政グループ各社において、障がい者雇用の推進に積極的に取り組んでおり、日本郵政グループ全体の障がい者雇用率を指標及び目標に設定しております(詳細は、「(4) 指標及び目標」を参照)。当社の主な取り組みとしては、障がいのある社員との定期的な対話や座談会の実施、専用相談窓口の設置を行うとともに、採用業務を行う拠点にこれらの取り組みを牽引する「障がい者雇用促進リーダー」を配置し、障がいのある社員の職場定着を支援しております。加えて、新たな雇用領域の創出として、本社では障がいのある社員が社内カフェ業務に従事し、コーヒーや焼き立てのパンなどを提供しております。その美味しさだけでなく、障がいのある社員の笑顔は、多くの社員から大変好評であり、ノーマライゼーション意識の浸透にも繫がる取り組みに発展しております。
(4) 指標及び目標
当社は、5つのマテリアリティについて、以下のとおり指標及び目標を設定し、各取り組みの進捗を管理しております。
※1 ラジオ体操実施率は、当社が定期的に実施しているオンライン調査(対象は20歳~69歳の男女2,400名)において、ラジオ体操を知っていると回答した方のうち、1年に1回以上ラジオ体操を実施すると回答した方の割合です。
※2 インパクト“K”プロジェクト認証ファンドの目標及び実績は、2022年度の認証開始からの累計案件数及び当社による投資額(ファンドの形態により投資額もしくはコミットメント額を計上)です。
※3 目標・実績は、当社グループにおいて主要な事業である生命保険事業を営む当社について記載しております。
※4 Scope1とは、自社が直接排出する排出量です。新規事業による増加分を除きます。
※5 Scope2とは、他社から供給された電気などの使用に伴う排出量です。新規事業による増加分を除きます。
※6 上記目標は、現時点の将来見通しに基づいたものであり、社会動向や技術革新の状況の変化によって見直す可能性があります。
※7 温室効果ガス排出量(Scope1・2)の実績については、当社の組織体制の変更等により変更の可能性があります。
※8 当社の社員が、仕事内容・職場環境・人間関係・福利厚生などについてどの程度満足しているかを、株式会社リンクアンドモチベーションが提供する「モチベーションクラウド」を通じて調査の上、評価しております。全11段階中Bは上位から6段階目、CCCは上位から7段階目、CCは上位から8段階目の評価です。
※9 調査は、社員が外部サイトを通じて回答する方法で行っております。
※10 対象社員は、他社からの出向者を含む在籍社員(他社への出向者、派遣社員及び育児休業や病気休暇等の休職中の社員は除きます。)です。
※11 各年度の翌4月1日現在の本社(サービスセンターを含みます。)管理者のうち、女性の管理者の割合です。
※12 日本郵政グループ各社との整合性を図るため、当社を本籍とする社員を対象としており、他社からの出向者を含めておらず、他社への出向者を含めております。
※13 対象期間中に出産(男性の場合は配偶者が出産)した社員のうち、育児休業(育児・介護休業法第2条第1号。以下同じです。)を開始した社員(開始予定の申出者を含みます。)の割合です。また、臨時雇用(無期転換制度に基づく無期雇用転換者(アソシエイト社員)を含みます。)を含めておりません。
※14 各年度の6月1日現在の日本郵政グループ(日本郵政株式会社・ゆうせいチャレンジド株式会社・日本郵便株式会社・株式会社ゆうちょ銀行・株式会社かんぽ生命保険・日本郵政コーポレートサービス株式会社)の全社員(算定基礎労働者数、期間雇用社員等を含み、派遣社員を除きます。)のうち、障がいのある社員(雇用障がい者数)の割合です。
※15 当社では、障がい者雇用率の算定において障害者雇用促進法に基づくグループ適用を採用しているため、日本郵政グループ全体の障がい者雇用率を目標としております。
また、上記の目標の他にも、5つのマテリアリティに関連して、気候変動に関する取り組み及び人的資本経営の推進のうちの戦略的な人材確保への取り組みについて、それぞれ指標及び目標を設定しております。
① 気候変動に関する取り組み
Scope3※1におけるカテゴリー15(投資先ポートフォリオから発生する温室効果ガス排出量)について、2050年カーボンニュートラルの実現を目指すとともに、2029年度末までに2020年度末対比で50%削減する中間目標を設定しております※2・3。なお、2024年3月末時点の国内外上場株式及び国内外クレジット(企業融資を含みます。)ポートフォリオの温室効果ガス排出量は、2020年度末対比で24.6%減の約783万tCO2eとなっております※4。
※1 Scope3とは、サプライチェーンにおけるScope1、Scope2以外の間接排出です。15のカテゴリーに分類され、投資ポートフォリオにおける排出はカテゴリー15に該当します。
※2 Scope3におけるカテゴリー15の目標は、投融資先企業のScope1及びScope2の排出量について、当社の持ち分比率をかけて算出した値の合計です。対象資産は、国内外上場株式及び国内外クレジット(企業融資を含みます。)です。
※3 上記目標は、現時点の将来見通しに基づいたものであり、社会動向や技術革新の状況の変化によって見直す可能性があります。
※4 投資先ポートフォリオから発生する温室効果ガス排出量は、直接の計測が困難であることから、各種社外データ等を参照の上、一定の仮定や前提に基づき算出しております。削減率及び排出量実績等の数値は、計測対象資産の変更や計測方法の見直し等により、遡及的に修正する可能性があります。
② 戦略的な人材確保への取り組み
新規採用者数に関する目標※1を設定しております。新卒採用においては、2025年4月1日に総合職99人(うち、特定専門人材※2は12人)に加え、保険コンサルタントコースの社員※3を106人採用しております。今後も、同水準以上の採用者数を目指して取り組んでまいります。
※1 目標・実績は、当社グループにおいて主要な事業である生命保険事業を営む当社について記載しております。
※2 アクチュアリー、資産運用・リスク管理、IT・デジタル分野のいずれかに特化して従事する社員です。
※3 主にお客さまのお宅を訪問して活動する営業社員です。
上記のサステナビリティに関する考え方及び取り組みを通じて、当社グループの持続的な成長とSDGsの実現を目指してまいります。
文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) リスク管理体制と、「事業等のリスク」の特定・管理等プロセス
当社では、「リスク管理基本方針」に基づき、リスク管理に関する規程を整備するとともに、リスク管理統括部担当執行役を委員長とするリスク管理委員会を設置し、定期的に開催しております。
リスク管理委員会では、リスク管理に関する方針、リスク管理体制の整備及び運営に関する事項並びにリスク管理の実施に関する事項の協議を行うとともに、各種リスクの状況等について把握及び分析することにより適切なリスク管理を行い、リスク管理統括部担当執行役は、重要な事項を経営会議、監査委員会及び取締役会に付議又は報告しております(詳細は「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項 b.リスク管理体制の整備の状況」に記載のとおりであります。)。
「事業等のリスク」は、有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況並びに企業価値を表すEV(Embedded Value)や健全性を表すESR(Economic Solvency Ratio)等の指標に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクとし、「影響度」と「発生可能性」を勘案した上で「最も重要なリスク」及び「2025年度にかけてリスク認識が高まっている又は2025年度にリスク認識が高まると認識しているリスク」を特定し、年度を通じて管理しております。なお、当該リスクの分類及び各リスク情報の記載にあたっては、当社の経営陣の各リスクの影響、発生可能性、対応策等に関する認識を適切に反映させるため、2025年3月末現在の経営会議の構成員である常務以上の執行役及び業務を統轄する執行役に対して、「事業等のリスク」に関するアンケート(以下「経営陣アンケート」といいます。)を実施し、その集計結果を踏まえ、リスク管理委員会及び経営会議で協議を行うとともに、社外取締役からの意見聴取を行っております。また、当該アンケートを通じて、リスク項目の洗い替えも行っております。
(2) リスクマップと「最も重要なリスク」等
「リスクマップ」
経営陣アンケートの集計結果を踏まえ、リスクの影響度と発生可能性を勘案して策定した事業等のリスクの「リスクマップ」は、次のとおりです。なお、影響度「大」・発生可能性「高」、影響度「大」・発生可能性「中」、影響度「中」・発生可能性「高」に該当するリスク(リスクマップの赤枠に含まれる個別リスク項目)が当社における「最も重要なリスク」であると認識しており、リスク項目の重要度については、「最も重要なリスク」(リスクマップの赤枠に含まれる個別リスク項目)、影響度「中」・発生可能性「中」、影響度「中」・発生可能性「低」に該当するリスク(リスクマップの黄枠に含まれる個別リスク項目)、影響度「小」・発生可能性「低」に該当するリスク(リスクマップの青枠に含まれる個別リスク項目)の順に推移しております。

「最も重要なリスク」
経営陣アンケートを踏まえたリスク管理委員会での協議の結果、「最も重要なリスク」に選定された事業等のリスクは次のとおりです。事業戦略・経営計画に関するリスクのほか、リスクが顕在化した場合、当社の財政状況や経営成績等に与える影響が大きいと見込まれるサイバー攻撃に関するリスクや、経済環境の変動に伴うリスク、資産運用に関するリスク、法制度及び各種規制等に関するリスク等が含まれております。

「2025年度にかけてリスク認識が高まっている又は2025年度にリスク認識が高まると認識しているリスク」
同様に、「2025年度にかけてリスク認識が高まっている又は2025年度にリスク認識が高まると認識しているリスク」に選定された事業等のリスクは次のとおりです。昨今の外部環境の変化に鑑み、資産運用に関するリスク、人材に関するリスク、2024年度に公表いたしました日本郵政グループにおける非公開金融情報の不適切な取扱いや、一時払終身保険の販売に係る認可前の勧誘といった事案を踏まえ、法制度及び各種規制等に関するリスクや日本郵便株式会社との関係に関するリスク等が含まれております。

(3) 各リスク項目
各リスク項目は、その特性に応じて、「Ⅰ 経営戦略」、「Ⅱ 財務・資産運用」、「Ⅲ 事業固有」、「Ⅳ オペレーション」、「Ⅴ その他」に分類し、記述しております。
Ⅰ 経営戦略
(1) 事業戦略・経営計画に関するリスク
当社は、2019年度に発生した、お客さまのご意向に沿わず不利益が生じた契約乗換等に係る事案及び法令違反又は社内ルール違反が認められた事案(以下、本「事業等のリスク」において「募集品質問題」といいます。)等の反省を踏まえ、お客さまから真に信頼される企業へと再生し、持続的な成長を目指した「中期経営計画(2021年度~2025年度)」及び内外環境の変化や計画の進捗を踏まえて2024年5月に新たに策定した「中期経営計画(2021年度~2025年度)見直し」をはじめとする事業戦略・経営計画を策定しております。また、2024年度は、日本郵政グループにおいて非公開金融情報の不適切な取扱いや一時払終身保険の販売に係る認可前の勧誘といった事案が確認されており、改めてお客さま本位の活動の徹底・実践、法令等遵守の徹底等が求められていると強く認識しております。
これらの事業戦略・経営計画に含まれる取組みには、本「事業等のリスク」に記載の各種のリスクが内在しているほか、将来において、当社による上記取組みの実施を阻害するリスクが高まる又は新たなリスクが生じる可能性もあります。また、これらの事業戦略・経営計画は、市場金利、外国為替、株価、事業環境等の一般的経済状況や法制度などの多くの前提を置き、作成されておりますが、かかる前提どおりとならない場合や各施策に対する十分な事業評価が行われず投資額やコストに見合った成果が得られない場合には、当該事業戦略又は経営計画における目標を達成できず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
中計に掲げた各種施策に内在するリスクや中計の策定時に置かれた前提に関するリスクのうち、特に重要なものは以下のとおりであります。
① 当社の企業風土又は組織文化に関するリスク
募集品質問題に係る事案の事実関係及び原因等の究明に関して、日本郵政株式会社、日本郵便株式会社及び当社のいずれとも利害関係を有しない弁護士3名から構成される「かんぽ生命保険契約問題 特別調査委員会」が2019年12月に公表した調査報告書では、当社グループにおいて、「リスク事象を探知した際の原因追究・解決の先送り」、「問題の矮小化」並びに「部門間の横での連携不足及び上意下達の下での情報伝達の目詰まり」といった企業風土又は組織文化が従前から存在してきたことが指摘されました。当社グループでは、経営陣主導の下、健全な企業風土の醸成に取り組んでおり、中計においては、全役員・社員が会社とともに成長し、自信と誇りをもって堂々と仕事ができる会社を目指し、着実に改善が進んでおります。しかしながら、日本郵政グループにおいて非公開金融情報の不適切な取扱いや一時払終身保険の販売に係る認可前の勧誘といった事案が確認されており、これら事案を踏まえた再発防止策も含め、企業風土・組織文化改善の取り組みが奏功しない又は奏功するまでに想定以上の期間を要する場合には、類似の事案が再発するなど、当社グループの社会的信用、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 営業態勢に関するリスク
当社の営業戦略は、コンサルタントや郵便局窓口社員がお客さま一人ひとりの「信頼できる気軽な相談相手」となり、ライフステージや世代を超えて安心を提供し続けることで、お客さまから選ばれ、保有契約を維持・拡大するというものです。具体的には、質と量を伴った「アフターフォローの充実」により、多様なお客さまニーズを把握し、それらに応えられる「商品ラインアップの拡充」を図っております。
営業活動においては、保険営業における行動原則である「かんぽ営業スタンダード」に基づく、丁寧な情報収集・意向把握、お客さま本位の商品提案、丁寧でわかりやすい説明を基本としたお客さまに寄り添った課題解決の提案ができる当社社員の育成に取り組むとともに、日本郵便株式会社における郵便局社員の育成にも関与しております。
この営業態勢の下、2022年度のお客さま担当制の導入等による質の高いアフターフォローの充実や、2023年度の学資保険の改定及び一時払終身保険の販売開始によるお客さまニーズに応じた商品ラインアップの拡充など、中長期的な営業力をつける取り組みを進めております。この結果、2024年度は、新契約の実績が増加し、収益の源泉となる保有契約の減少が緩やかになっております。しかしながら、これらの取り組みが奏功しない場合や、新契約の実績が想定どおりに進捗しないなどの期間がより長期にわたり継続する場合には、当社グループの事業、業績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 日本の人口動態、商品、顧客構成に関するリスク
1970年代半ば以降、日本の出生率は総じて徐々に低下する傾向にあり、現在は世界で最低の水準にあります。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、総人口及び15歳から64歳までの人口は今後も減少し続けるであろうと予測されており、この傾向が日本国内における生命保険の総保有契約高減少の主要な要因であると考えております。また、当社の顧客基盤は中高齢層や女性の割合が高く、青壮年層の割合が相対的に低くなっております。
当社の取り扱う商品は、個人向け生命保険、とりわけ養老保険・終身保険などの貯蓄性商品の割合が高く、前述の長期的な日本の人口動態等の要因のほか、国内の雇用水準及び家計所得、貯蓄・投資スタンス、代替商品であるその他の商品に対する相対的魅力、保険会社の財務健全性、社会的信用に対する一般的な認識が、新契約数や保有契約の消滅率に影響を及ぼしております。
当社では、2023年4月より、昨今の教育費用の高まりやお客さまからのご要望を受け、学資保険「はじめのかんぽ」の改定を行い、また、2024年1月より、中高齢層のお客さまがお持ちの「一生涯の死亡保障ニーズ」にお応えするために一時払終身保険「つなぐ幸せ」の取扱いを開始するなど、青壮年層を含めたあらゆる世代の多様なお客さまニーズを把握し、それらに応えられる「商品ラインアップの拡充」に取り組んでおります。しかしながら、これらが想定どおりに進捗しない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ 業務提携及び戦略的提携に伴うリスク
当社グループは、新規事業機会の創出等のため、様々な業務について、他社等との提携を行っております。他社等との提携等に当たっては、必要に応じて外部専門家を活用してリスクを認識し、当社の管理態勢を整備した上で実行し、提携後には、出資・提携先の経営・財務状況を把握し、リスクの顕在化の未然防止に取り組んでおります。しかしながら、業務提携先において業務遂行上の問題が生じた場合や計画どおりに事業が行われない場合、業務提携によって期待した成果が得られない場合等には、当社グループの事業、社会的信用、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社は、2023年6月よりKKR及びGAとの戦略的提携契約を締結し、GAが運用する再保険共同投資ビークルへ相応規模の投資を行っております。2024年5月より収益源の多様化と資産運用力の強化を目的に、株式会社大和証券グループ本社及び同社の連結子会社である大和アセットマネジメント株式会社との資本業務提携について合意し、2024年10月に大和アセットマネジメント株式会社の第三者割当増資を引き受け、増資後株式の20%を取得いたしました。それに伴い、2025年3月期第3四半期末時点よりのれん相当額を認識しており、2025年3月期末時点で、336億円ののれん相当額を計上しております。
なお、出資先等の業績又は財政状態が悪化した場合や投資額に見合った成果が得られない場合等には、減損処理が発生し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 気候変動及び生物多様性・自然資本に関するリスク
当社は、気候変動によるリスクと機会を認識し、2019年4月にTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の提言へ賛同を表明しており、これまでの気候変動に関する取り組みを一層推進するとともに、情報開示の充実を図っております(詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりであります。)。
気候変動は、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があり、当社は、その影響を評価するためのシナリオ分析を行っております。
なお、気候変動による生命保険事業への主な影響としては、自然災害などの被害が増加することによる保険金等支払額の増加、平均気温上昇や異常気象の健康への影響により中長期的な死亡率や罹患率が変化することによる保険金等支払額の増加の可能性を認識しております。また、資産運用への主な影響としては、自然災害などの増加に伴う投融資先企業の損失拡大による投融資資産の価値毀損、低炭素社会への移行に伴う制度変更、規制強化、消費者選好の変化の影響による投融資先企業の価値毀損を認識しております。
加えて、温室効果ガス排出量を踏まえた投資ポートフォリオの管理を行うため、投資ポートフォリオの温室効果ガス排出量を測定・分析し、分析結果を考慮した上で投融資先企業等に対するエンゲージメント(目的を持った対話)を行うとともに、再生可能エネルギー施設等への投融資を積極的に推進しております。
また、当社は、気候変動とともにグローバルな重要課題となっている、生物多様性・自然資本に関する取り組みも進めており、自然資本に関する開示の枠組みを構築する国際的なイニシアチブであるTNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)の理念に賛同し、2023年6月にはその活動をサポートするTNFDフォーラムに参画し、2023年12月にはEarly Adopterとして、TNFD提言に基づく開示を行う意思表明をTNFDのウェブサイト上で行いました。
当社生命保険事業への主な影響として、生態系バランスが崩れることに起因する感染症の蔓延等による保険金等支払額の増加や、各種自然災害によって当社のデータセンターが運用遅延・停止に陥る可能性を認識しております。
また、資産運用においては投融資先企業が依存する自然資本の枯渇等に伴う投融資資産の価値棄損のほか、環境保全に関する法規制の厳格化や社会的要請の変化等に伴う投融資資産の価値棄損を認識しております。
なお、当社の投資ポートフォリオにおける主な自然関連の依存と影響に関する分析を実施しており、分析結果や社会的要請等を踏まえた資産運用に取り組んでおります。
このように、気候変動及び生物多様性・自然資本に関する各種取り組みを推進しておりますが、これらの対応が不十分と評価された場合には、当社グループの資本市場における評価、その他社会的な評価の低下につながる可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 人材に関するリスク
当社グループは、生命保険会社としての業務遂行のため、保険営業、保険数理、資産運用、リスク管理等各分野において安定した事務遂行と高い専門性を有する優秀な人材を必要としております。加えて、昨今のデジタル技術の進化・普及に伴い、当社のDX推進を担う人材の確保・育成も喫緊の課題と認識しております。しかし、少子化等の影響を受けて、人材獲得競争が強まる中で、当社が期待する量及び質の人材の採用は、一段と難しくなっている一方で、採用ができたとしても育成及び定着を図ることができない可能性があります。また、魅力的な労働条件や職場環境を提供できない場合や人事処遇、勤務管理、ハラスメントなどの人事労務上の問題や職場の安全衛生管理上の問題等が発生した場合には、人材の流出、不足等を招く可能性があります。
当社グループでは、中計において、全役員・社員が会社とともに成長し、自信と誇りをもって堂々と仕事ができる会社を目指すとの方針の下、経営陣と社員のコミュニケーションの活性化、多様なキャリア形成の支援及びマネジメント力の強化、人事評価制度の高度化に取り組むとともに、自律的な改善活動の推進などによる多様で柔軟な働き方を実現する働き方改革に取り組んでおります(詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりであります。)。
このように、社員のモチベーションや満足度の向上、退職者数の抑制、当社の将来を担う人材の育成等を図ることで、中計に掲げる再生と持続的成長の実現のための土台作りに取り組んでおりますが、これらの取り組みが奏功しない又は奏功するまでに想定以上の期間を要する場合には、お客さまサービスの質が低下することにより、当社グループの競争力の相対的な低下や新契約及び保有契約の減少を招き、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 経済環境の変動に伴うリスク
当社グループが行う事業は、その収益の多くが日本国内において生み出されるものであるため、国内の経済物価情勢や家計所得の動向、貯蓄・投資スタンスなどが、当社グループの行う事業に影響を及ぼす可能性があります。また、世界経済は総じて緩やかな成長を続けておりますが、景気後退懸念に加え、国家間紛争等の地政学リスクの顕在化、米国の新政権の政策運営を巡る不確実性などに直面しており、国内経済への影響が懸念されております。このように、経済物価情勢等の動向は、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
消費者物価は、既往の輸入物価上昇を起点とした価格転嫁の影響に加え、労働需給のひっ迫、賃金上昇等を受けたサービス価格の上昇が続く下で、緩やかに上昇しております。こうした状況が当社の想定を超えて継続する場合には、事業費の高騰とそれによる保険料採算の悪化、人材確保の困難化等が懸念されます。また、物価の上昇等を受けて、金利水準がこれまで以上に上昇した場合には、資産運用における国内金利リスクの顕在化のほか、保険契約者がより高い収益を得られる別の金融商品へ資金を移動させることにより、保険契約の解約・乗換が増加する可能性があります。こうした経路を通じ、国内経済のインフレ傾向は、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 競合他社との競争に関するリスク
当社は、日本の生命保険市場において、国内生命保険会社、外資系生命保険会社、各種協同組合等との激しい競争に直面しており、近年は、商品内容・ラインアップ、販売チャネル、保険料水準等に関して、当社より優位に立っている会社もあります。また、株式会社形態と相互会社形態の保険会社が共存・競争する中で、海外保険市場も見据えた統合や再編、異業種との提携等、又は新技術等(AI・生成AIなど)を応用した魅力的な商品・サービスの開発により、競合他社が今後より高い競争力を備える可能性もあります。さらに、当社が業務範囲を拡大した場合や当社を取り巻く規制緩和、新規参入等に伴い市場構造に変化が生じた場合に、現時点では競合関係にない会社との競合関係が新たに生じる可能性もあります。このように、競合他社との競争は、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社は、持続的成長のために、感動いただけるサービスを核にお客さまを拡大するなど、お客さま体験価値(Customer experience、以下「CX」といいます。)を最優先とするビジネスモデルへの転換に取り組んでおります。CXの向上に当たっては、DXも積極的に推進しており、DX推進の中では、AIの利活用も進めておりますが、今後、AIが当社の想定以上に進展・普及し、当社のAIを使用したビジネス展開や業務の効率化・生産性の向上が遅れた場合には、競合他社との競争に劣後し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 投資計画に関するリスク
見直し後の中計期間において、DX推進等をはじめ、当社全体で約1,200億円規模の投資を行うこととしております。これらの投資は減価償却等を通じて今後数年間にわたり費用化されるとともに、その管理・維持には相当程度のコストが生じる見込みでありますが、投資額やコストに見合った成果が得られない場合には、中計における目標を達成できず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑩ 格付けの低下に関するリスク
当社は、株式会社格付投資情報センター(R&I)、株式会社日本格付研究所(JCR)、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン株式会社(S&P)の各格付会社より信用格付けを取得しており、2025年3月末現在における信用格付けは、それぞれ「AA-」(保険金支払能力)、「AA」(保険金支払能力格付)、「A+」(保険財務力格付け)であり、当社の財務の健全性に対して一定の評価を得ているものと認識しております。中計においては、お客さま本位の業務運営を徹底し、信頼回復に努めておりますが、新契約の実績、保有契約の維持及び事業費の抑制などが計画どおりに進捗せず、当社の将来的な財務内容の見通しが悪化することにより、各社の信用格付けが引き下げられた場合には、当社グループの資本市場における負債性資金の調達が有利な内容で行えない可能性があるとともに、当社に対する不安を想起させ、新契約及び保有契約の減少等につながる可能性があります。このように、各格付会社の当社に対する信用格付けは、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
Ⅱ 財務・資産運用
(1) 保険引受に関するリスク
① 保険料設定・責任準備金の積立に関するリスク
当社は、保険の種類及び内容、契約時の被保険者の年齢、性別、保険金額等を考慮して、次に掲げる計算基礎率(予定死亡率、予定利率、予定事業費率)等に基づいて保険料を設定しております。
保険契約においては、実際の死亡率が事前に設定した予定死亡率を超過した場合や実際の運用利回りが事前に設定した予定利率を下回った場合、実際の経費が事前に設定した予定事業費を超過した場合には、保険期間中の保険料等の受取総額を保険金・経費等の支払総額が上回ることにより損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、保険業法及び関連業規制に基づき、保険料収入の大部分を責任準備金として将来の保険金等の支払いに備えて積み立てております。責任準備金は、当社の負債の最も大きな部分を占めているものであり、各保険契約の保障対象となる事象の起こる頻度や時期、保険金等支払額、資産運用額等につき一定の前提を置き、これらに基づく見積りによって計算されるものであります。これらの前提と実際の結果が乖離した場合や環境の変化により将来乖離が見込まれる場合には、責任準備金の積増しが必要となる可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、責任準備金の積立に関する規制や標準利率・標準生命表は、金融当局である金融庁等によって定められているものですが、これらに変更があった場合には、保険料見直しや責任準備金の積増しが必要となる可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 再保険に関するリスク
当社は、民営化前の高い予定利率の終身年金保険契約を出再することにより、保険引受リスク及び資産運用リスクを削減し、将来収益及び資本効率の向上を図ることを目的として、再保険契約を締結しております。出再先については、当社の定める信用基準を満たした保険会社を選定しておりますが、今後、カウンターパーティリスクが顕在化した場合等には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 会計基準、税制の変更等に関するリスク
当社の繰延税金資産は、現行の会計基準及び税制に従い、一定の前提に基づいて見積もった課税所得により将来の税金負担額が軽減することが認められる範囲内で計上しております。したがって、新契約の実績が想定どおりに進捗しない期間がより長期にわたり継続したり、経済環境の大幅な悪化が継続したりする場合における見積りの前提の変更や、税制改正に伴う税率の引き下げにより、繰延税金資産額が減少する場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、国際会計基準審議会は、2020年6月に国際財務報告基準(以下「IFRS(International Financial Reporting Standards)」といいます。)第17号「保険契約」の修正を公表し、2023年1月1日以降に開始する事業年度より適用しております。当該基準は保険契約を経済価値で評価するため、毎期の変動が純資産に影響を及ぼす可能性があります。今後、IFRS又は同基準に準じる基準を当社グループの会計基準において適用する場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 資産運用に関するリスク
① 国内金利に関する市場リスク
当社の資産構成は、円金利資産の割合が高く、当社の保険契約者に対する債務のデュレーションが運用資産より長期であるため、資産と負債のデュレーションのミスマッチによる国内金利の変動リスクを有しております。
2024年3月の日本銀行によるマイナス金利政策解除後も当社が既に保有している保険契約の予定利率は変わらないことから、国内金利が現在の水準より上昇した場合には、資産運用利回りが上昇することにより、利息収入などの収益が向上するものの、既に保有している債券価格の下落により、評価損・減損損失や売却損等が発生する可能性があります。
一方、国内金利が現在の水準より低下した場合には、当初想定していた運用収益が確保できないあるいは逆ざや(資産運用ポートフォリオの平均運用利回りが既契約の責任準備金の積立てに用いた予定利率を下回る現象)となる可能性があります。このように、国内金利の変動は、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② ①以外の市場リスク
当社は外貨建資産を保有しており、その一部については、為替リスクをヘッジするため為替予約等をしておりますが、為替リスクがヘッジされていない部分について、為替相場の変動が発生した場合や為替リスクをヘッジしていたとしても、各国の金融・財政政策の動向等による国内外の金利差拡大によりヘッジコストが高まり、これまでの条件でロールによる為替予約等ができない場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、各国の金融・財政政策の変更や外国金利の変動により、当社の保有する外国証券の価値が下落した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、国内外の経済状況又は市場環境の悪化や地政学リスクの顕在化等によって、当社の保有する株式の価格が下落した場合には、保有株式に評価損・減損損失や売却損等が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、オルタナティブ運用などの資産運用の深化・進化が期待した結果を生まない可能性があります。
③ 信用リスク
当社グループの取引先・投融資先・当社が保有する有価証券の発行者において、国内外の景気動向や特定の業種を取り巻く経営環境の変化、不祥事の発生、地政学リスクの顕在化等その他不測の事態により、財政状態が悪化した場合には、信用リスク及び与信関係費用が増加し、当社が保有する有価証券の価値が下落すること等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、外国公社債運用などの資産運用の深化・進化が、期待した結果を生まない可能性があります。
上記①~③のリスクに備えて、当社では、保険契約の引受けによって生じる負債に見合った運用資産を適切に管理し、損益の安定を図る目的で、資産と負債のバランスを考慮してリスクコントロールを行う、ALM及び財務健全性の維持を軸にしたERMの高度化に向けた取り組みを継続しております。また、定期的にストレステストを実施し、ストレス事象発生時の対応力を検証するとともに、特に資産運用の深化・進化にあたっては、審査やモニタリングの体制を強化しております。しかし、そうした対応が奏功しない場合や国内外の景気変動、各国の金融・財政政策の変更等により市場環境が大きく変動した場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 市場流動性・資金繰りに関するリスク
① 市場流動性リスク
金融市場の混乱等により、市場において正常に金融商品の取引・資金決済ができなくなった場合や通常よりも著しく不利な価格での取引を余儀なくされることになった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、国内外の金融市場及び経済状況の悪化等により、市場の流動性が減退した場合には、当社の保有する資産の売却可能性や価値が減少する可能性があります。
② 資金繰りリスク
大量の保険契約の解約に伴う解約返戻金支出の増加や巨大災害に伴う保険金支出の増加等により資金繰りが逼迫し、資金の確保のため通常の評価額よりも低い価格での資産売却を余儀なくされた場合や保険金等の支払いが滞った場合には、当社グループの事業、社会的信用、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
Ⅲ 事業固有
(1) 法制度及び各種規制に関するリスク
① 郵政民営化法に基づく法規制等に関するリスク
当社は、郵政民営化法及び関係政省令の下、金融庁及び総務省の監督下にあります。また、郵政民営化法により、内閣に設置された郵政民営化推進本部が運営する郵政民営化委員会から意見を述べられる場合があるとともに、他の日本の生命保険会社にはない業務制限規制が課されております(以下「上乗せ規制」といいます。詳細は「第1 企業の概況 3 事業の内容 (参考) 郵政民営化法による特例措置」に記載のとおりであります。)。これらの規制により、将来的に当社の競争力や収益機会がさらに制限された場合には、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
このほか、日本は、WTO(World Trade Organization:世界貿易機関)の加盟国として「政府調達に関する協定を改正する議定書」を定めておりますが、この中で、公社を承継した機関はこの議定書に定められたルールが適用されるため、当社が物品等を調達する場合には、WTOによる政府調達のルールを遵守する必要があります。当社の作為又は不作為により、これらのルールを遵守できなかった場合には、調達行為が成立しないあるいは調達行為に遅れが生じる可能性があり、当初想定していた計画が実施できないなど、当社グループの社会的信用、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 保険業法、その他関連業規制に関するリスク
当社は日本の生命保険会社であり、保険業法及び関連業規制の下、他の日本の生命保険会社と同様に、金融庁による監督下にあります。保険業法は、内閣総理大臣(金融庁長官に権限委任)に対して、免許取消しや業務停止、報告徴求、会計記録等に関する厳格な立入り検査の実施等、保険業に係る広範な監督権限を与えております。また、保険業法に基づき、金融庁長官は、新商品の創設若しくは既存商品の改定に係る認可申請・届出が行われた場合に審査を行うこととされております。
生命保険業免許は、当社の主要な事業活動の前提であり、当該免許に期限はなく、当連結会計年度末現在、免許取消事由等に該当する事象は発生していないと認識しておりますが、当該事象が発生した場合には、当社の事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
また、保険業法その他の法令等のうち、特に重要なものに違反した場合等には、業務の全部若しくは一部の停止又は免許の取消しなどの行政処分を受ける可能性があります。このほか、金融庁による保険業法上の認可が得られない、又は当社が想定するタイミングで認可がなされない等の事由により、新商品を予定どおりの内容及びタイミングで販売できない場合、当該認可を得て新商品を販売した場合であっても外部要因等により想定した収益が確保できない場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、金融庁が日本の生命保険会社の健全性を判断する指標として定める、ソルベンシー・マージン比率と実質純資産額に基づく監督下にあります。2025年3月末現在の連結ソルベンシー・マージン比率は903.2%となりました。これは法令上の規制比率に比べ相当程度高い水準ですが、200%を下回った場合には、内閣総理大臣による早期是正措置が発動される可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
加えて、IAIS(International Association of Insurance Supervisors:保険監督者国際機構)は、2019年11月にコムフレーム(国際的に活動する保険会社グループ(以下「IAIGs」といいます。)に対する共通の監督枠組み)を採択し、その一部であるIAIGsに対する保険資本基準(ICS)について、2025年から正式に規制資本要件として適用を開始しております。金融庁も、国内における現行のソルベンシー・マージン規制を改正し、2026年3月期にICSに準じた基準による新たな規制を導入する検討を進めており、2024年10月31日及び2025年1月31日に規制改正案を公表しております。この新たな規制は経済価値に基づくものであり、現行の規制とは大きく異なります。本改正によって生じる変更やそれに伴う制約が、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 保険募集プロセスにおける品質確保に関するリスク
当社グループは、募集品質問題の発生を受け、お客さまからの信頼の早期回復、並びに保険募集プロセスにおける法令遵守及びお客さま本位の意識の徹底による募集品質の確保・向上を図ることを最優先かつ着実に取り組んでまいりました。
しかし、一時払終身保険の販売に加え、高齢者向け募集の再開等により、高齢者を含むお客さまと接する機会が増加する中で、お客さまのご意向に沿わず不利益となる事例や法令違反・社内ルール違反となる事例、違反には至らなくともお客さまに適合する契約ではない事例やお客さまの契約に対するご理解が十分とはいえない事例、保険契約に対する苦情・無効申請が行われる事例が発生する場合には、当社グループの社会的信用、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
このように、今後、当社グループにおいて遵守すべき法令等の義務に反する行為が発生する場合、当該違反行為の規模や程度又は当社の取り組み状況によっては、監督当局から再度業務停止命令等の行政処分を受けるなど、当社グループの経営や事業の存続に影響を及ぼす可能性があります。
なお、日本郵政グループにおける非公開金融情報の不適切な利用のほか、一時払終身保険の販売に係る保険業法上の認可前の勧誘という事案の真因に対する理解を一段と深め、再発防止策の実効性を確保するとともに、保険募集プロセスにおける品質の確保・向上を図り、法令遵守及びお客さま本位の活動の徹底・実践を確保してまいります。
(2) 日本郵便株式会社との関係に関するリスク
① ユニバーサルサービスの提供に関するリスク
日本郵便株式会社は、郵政民営化法上のユニバーサルサービスに係る規定を遵守するため、当社と生命保険募集・契約維持管理業務委託契約及び保険窓口業務契約を締結して当社の保険代理業務を受託し、全国の各郵便局において、当社の商品及びサービスを提供しております(詳細は「5 重要な契約等」に記載のとおりであります。)。
特に、保険窓口業務契約は、期間の定めのない契約であり、本契約に定める特段の事情がない限り、当社から一方的に解除することはできないこととされております。また当社の定款上、当社は日本郵便株式会社との間で、保険窓口業務契約を締結する旨の規定が存在し、当該契約を終了させる場合には当社の定款変更が必要となります。したがって、当社が日本郵便株式会社との間の保険窓口業務契約を終了させるには、これらの手続等を充足する必要があります。
それにより、日本郵便株式会社がユニバーサルサービスを提供する上での関連保険会社としての地位を維持する契約上の義務を負うため、当社の柔軟な事業展開が困難となる可能性があります。
さらに、今後のユニバーサルサービスの確保に関する政府の施策、法令や規制等の改正等の内容によっては、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、2018年12月に独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法の一部を改正する法律が施行され、従来は日本郵便株式会社と関連銀行・関連保険会社との間の契約に基づく委託手数料により賄われていた郵便局ネットワーク維持に要する費用のうち、ユニバーサルサービス確保のために不可欠な費用(日本郵便株式会社が負担すべき額を除く)は、同法に基づき、2020年3月期から、当社及び株式会社ゆうちょ銀行からの拠出金を原資として、郵政管理・支援機構から日本郵便株式会社に交付される交付金で賄われております。
拠出金・交付金の額の算出の基礎となる、当該不可欠な費用は、直近の郵便局ネットワークの維持の状況を基礎とした以下の費用の合計額として算定されます。
ア 郵便局ネットワークを最小限度の規模の郵便局により構成するものとした場合における人件費、賃借料・工事費その他の郵便局の維持に要する費用、現金の輸送及び管理に要する費用、固定資産税・事業所税
イ 簡易郵便局で郵政事業に係る基本的な役務が利用できるようにすることを確保するための最小限度の委託に要する費用
当社が郵政管理・支援機構に支払う拠出金(2025年3月期に当社が支払った拠出額は563億円)は、当該不可欠な費用及び拠出金・交付金の算定等に係る郵政管理・支援機構の事務費用の合計額を、郵便窓口業務、銀行窓口業務、保険窓口業務において見込まれる郵便局ネットワークの利用の度合に応じて按分し、保険窓口業務に按分された費用です。
このように、当社の拠出金額は関係法令に基づき郵政管理・支援機構が算定するため、当社の意向が反映されるものではありません。
当社は、日本郵便株式会社がユニバーサルサービスを提供する上での関連保険会社として、当該拠出金を拠出する必要があり、これは当社特有の固定的事業費となります。郵政管理・支援機構により算定された当該不可欠な費用の額が、当社の想定よりも多額である場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社は、日本郵便株式会社への生命保険募集・契約維持管理業務委託契約及び保険窓口業務契約に基づき委託元として代理店管理の責任を負っております。こうした中で、日本郵政グループにおける非公開金融情報の不適切な利用のほか、一時払終身保険の販売に係る保険業法上の認可前の勧誘という事案が確認されました。今後、当社は、これら事案の真因に対する理解を一段と深め、再発防止策の実効性を確保するとともに、代理店管理者として委託業務全般における代理店管理態勢の実効性も確保してまいります。しかしながら、当社の代理店管理態勢が有効に機能しない場合や欠陥が発生した場合等には、予期せぬ損失を被る可能性や行政処分等を受ける可能性があり、当社グループの社会的信用、事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 日本郵便株式会社への委託手数料等に関するリスク
当社は、日本郵便株式会社と締結している生命保険募集・契約維持管理業務委託契約、保険窓口業務契約等及び代理店手数料規程等に基づき、日本郵便株式会社に対して委託手数料を支払っております。委託手数料には、日本郵便株式会社が当社に提供する業務に必要な経費単価に郵便局数等を乗じて算定するものや保有契約の維持管理に必要なものなど、営業活動量に左右されず発生する固定的事業費となるものが含まれており、直ちに削減することができない可能性があるほか、当社からの委託業務に応じて費用が増加する可能性があります。
当社は、上記に加え、各年度における当社グループの事業戦略と整合させた手数料の仕組みの導入を検討する場合があります。当該手数料の仕組みを含めた委託手数料体系の設定を適切に行わなかった場合には、当社グループへの信用が毀損する可能性や新契約の実績又は保有契約の維持、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります(詳細は「5 重要な契約等 (参考)日本郵便株式会社に支払う委託手数料」に記載のとおりであります。)。
③ 郵便局ネットワークに関するリスク
当社の商品及びサービスの提供の多くは、郵便局ネットワークを通じて行われておりますが、近年はコミュニケーション手段の多様化により、生活に必要な様々なサービスがインターネット等によって簡便に利用できるようになっており、非対面サービスへのニーズが高まっております。これに伴う、郵便局数及び郵便局の利用者数又は利用頻度の減少により、郵便局ネットワークの販売力や魅力が損なわれる場合には、当社の新契約の実績や保有契約の維持に影響を及ぼす可能性があります。当社は、郵便局ネットワークを補完又は一部代替する商品・サービスの提供手段を今後も検討・導入してまいりますが、これらの対応が奏功しない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、郵便局における当社の商品及びサービスの提供は、業務委託先である日本郵便株式会社の社員により行われているため、日本郵便株式会社による優秀な人材の確保や当社による日本郵便株式会社の社員の保険業務に関する教育等が十分でない場合等においては、当社の商品及びサービスの提供が期待どおりに行われない可能性があります。
(3) 日本郵政株式会社との関係に関するリスク
① 日本郵政株式会社が議決権を保有することによる影響力及び他の一般株主との利益相反に関するリスク
日本郵政株式会社が有する当社議決権の所有割合は、当連結会計年度末現在、49.8%となっておりますが、日本郵政株式会社は、依然として、当社の役員の選解任、他社との合併等の組織再編、減資、定款の変更等の当社の株主総会決議の結果に影響を及ぼす可能性があります。さらに、日本国政府は、2025年3月末現在において、日本郵政株式会社の議決権の36.0%程度を保有しております。
日本郵政株式会社は、日本郵政グループの利益やユニバーサルサービスの提供等の観点から、当社及び当社の一般株主の利益と異なる議決権の行使等を行う可能性があります。また、下記「b.日本郵政グループとの取引」に記載の当社との業務委託関係その他の取引・契約関係等にあるほか、子会社等を通じて当社と競合し又は競合する可能性のある事業(当社以外の生命保険会社の商品の受託販売等)を行うなど、当社の一般株主と異なる利害関係を有しております。例えば、2018年12月に、日本郵政株式会社は、アフラック・インコーポレーテッド及びアフラック生命保険株式会社との間で、「資本関係に基づく戦略提携」に関する基本合意書を締結いたしました。この合意に基づき、日本郵政株式会社は、アフラック・インコーポレーテッドの普通株式の発行済株式総数の7%(2018年12月時点)を取得したほか、がん保険に関する取り組みの再確認、新たな協業の取り組みの検討を行うこととし、2021年6月には、日本郵政株式会社、日本郵便株式会社及び当社は、アフラック・インコーポレーテッド及びアフラック生命保険株式会社と「資本関係に基づく戦略提携」をさらに発展させることに合意いたしました。2024年3月には、日本郵政株式会社がアフラック・インコーポレーテッドに持分法適用を行うこととし、2024年度からアフラック・インコーポレーテッドの利益の一部が日本郵政株式会社の連結業績に反映されております。また、日本郵政株式会社は、日本郵便株式会社及び楽天グループ株式会社との間で、物流、モバイル、DXなど様々な領域での連携を強化することを目的とした業務提携合意書を2021年3月に締結し、さらに2021年4月に、日本郵政株式会社、日本郵便株式会社、株式会社ゆうちょ銀行及び当社は、楽天グループ株式会社と業務提携合意書を改めて締結いたしました。これらの合意において、日本郵政株式会社は、保険分野での協業に関する協議・検討を行うこととしておりますが、協業の内容が当社グループの業績等に影響を及ぼすなど、当社及び当社の一般株主の利益と相反する可能性があります。
なお、当社と日本郵政グループとの人的関係及び取引関係は、以下のとおりです。
a.日本郵政グループとの人的関係
当社では、日本郵政グループの役員を兼任する役員が在職しており、そのうち、本書提出日現在において、主な日本郵政グループの役員を兼任する役員は、下表のとおりであります。また、当社の経営会議には、経営会議の構成員である当社の常務以上の執行役及び業務を統轄する執行役を兼任している者を除き、原則、日本郵政株式会社の役員は出席しておりませんが、議題又は報告事項に応じて、出席が必要と当社が考える日本郵政株式会社の代表執行役に出席を要請することとしております。
(注) 同氏は、日本郵政株式会社の子会社である、日本郵便株式会社及び株式会社ゆうちょ銀行の取締役(非常勤)も兼任しております。
なお、2025年6月18日開催予定の定時株主総会の議案(決議事項)として「取締役11名選任の件」を提案しており、当該議案が承認可決されますと、主な日本郵政グループの役員を兼任する役員は、下表のとおりとなる予定です。
(注) 同氏は、当社の親会社である日本郵政株式会社の取締役兼代表執行役社長、日本郵政株式会社の子会社である、日本郵便株式会社及び株式会社ゆうちょ銀行の取締役(非常勤)に就任予定であります。
当社の役員の状況については「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (2) 役員の状況」に記載のとおりであります。
また、当社は、日本郵政株式会社並びにその子会社である日本郵便株式会社及び株式会社ゆうちょ銀行との間で、出向者を受け入れて人事交流を行っておりますが、このうち、当社において事業運営に重要な影響を及ぼす役職に就いている者はおりません。
b.日本郵政グループとの取引
当社は日本郵政グループに属する他社との取引を行っており、当連結会計年度における主な取引は以下のとおりであります。
(注) 上記のほか、「Ⅲ 事業固有 (2) 日本郵便株式会社との関係に関するリスク ① ユニバーサルサービスの提供に関するリスク」に記載のとおり、郵便局ネットワーク維持に係る郵政管理・支援機構への拠出金の支払いが、2025年3月期において562億円あります。
なお、日本郵政グループに属する他社との取引条件の適切性を確保するため、新たに重要な取引を実施する場合や既存の重要な取引条件を変更する場合には、社外取締役を含む取締役会で決議する態勢を整備しております。
② 日本郵政株式会社に対するブランド価値使用料に関するリスク
当社は「5 重要な契約等」に記載のとおり、日本郵政グループ内各社との間で「日本郵政グループ協定」等を締結しており、グループ運営を適切・円滑に行うために必要な事項や法令等に基づき日本郵政株式会社による管理等が必要な事項については、日本郵政株式会社との事前協議又は日本郵政株式会社への報告の対象とされております。また、当社は日本郵政株式会社から「かんぽ生命」等の商標の使用を許諾されるとともに、日本郵政株式会社に対し、日本郵政グループが持つブランド力を当社の事業活動に活用できることによる利益の対価として、ブランド価値使用料を支払っております。
なお、当社が日本郵政グループに属することにより利益を享受するブランド価値は当社の業績に反映されるとの考え方に基づき、当該利益が反映された業績指標である前年度末時点の保有保険契約高に対して、一定の料率(0.0036%)を掛けて算出しており、この料率は、重大な経済情勢の変化等、特段の事情が生じない限り変更しないこととしております。また、ブランド価値使用料は、当社が日本郵政グループに属している限り、継続して支払うこととなり、当社が日本郵便株式会社法に定める関連保険会社としての業務を行っている間は、日本郵政株式会社の当社株式の保有割合にかかわらず、当該使用料の支払義務が継続いたします。
これら協定等の終了又は見直し等により現在の条件での商標の使用ができなくなった場合や重大な経済情勢の変化等の特段の事情に起因してブランド価値使用料の算定方法が変更された場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 日本郵政株式会社による当社株式の追加処分に関するリスク
日本郵政株式会社が有する当社議決権の所有割合は、当連結会計年度末現在、49.8%となっておりますが、郵政民営化法上、日本郵政株式会社が保有する当社株式は、その全部を処分することを目指し、当社の経営状況及びユニバーサルサービスの提供への影響等を勘案しつつ、できる限り早期に処分するものとされており、日本郵政株式会社は、当社株式について、保有割合が50%以下となった以降も株式処分について検討を進める旨を公表しております。
当社は、郵政民営化法に基づき、同業他社にはない上乗せ規制に服しておりますが、かかる規制は、(ⅰ)日本郵政株式会社が当社株式の全部を処分した場合や(ⅱ)日本郵政株式会社が当社株式の2分の1以上を処分し、かつ、内閣総理大臣及び総務大臣が、他の金融機関等との間の適切な競争関係及び利用者への役務の適切な提供を阻害するおそれがないと認め、当該規制を適用しない旨を決定した場合に適用されなくなります。日本郵政株式会社は総務大臣に対し、当社株式の2分の1以上を処分した旨の届出を行っておりますが、上記(ⅱ)の決定には当局の裁量が存在するため、上乗せ規制がいつどのように撤廃されるかは、不透明な状況にあります。なお、上乗せ規制のうち、新商品の開発及び新たな資産運用手段を実施するにあたっての認可等、郵政民営化法第138条に定める業務の制限については、日本郵政株式会社が当社株式の2分の1以上を処分した旨を総務大臣に届け出た日以後は適用されず、既に届出制へ移行しております。今後の日本郵政株式会社による当社株式の売却の時期、売却の規模等は未確定ですが、将来、当社株式の追加的な売却が行われ、又はかかる売却により市場で流通する当社株式の数が増え需給が悪化するとの認識が市場で広まった場合には、当社株式の流動性及び株価形成等に影響を及ぼす可能性があります。逆に、当社株式の処分に係る郵政民営化法の定めの変更、株式市場の動向等により日本郵政株式会社による当社株式のさらなる売却が予定どおりに進まない場合には、上乗せ規制の撤廃が行われず、日本郵政株式会社及び当社が期待する経営の自由度の拡大等が実現しない可能性もあります。
加えて、日本郵政株式会社による当社株式の売却に伴い、当社が日本郵便株式会社との間で締結している生命保険募集・契約維持管理業務委託契約、保険窓口業務契約、その他の契約の条件が当社に不利な内容に変更された場合や当該契約が終了した場合には、当社が郵便局ネットワークを利用できなくなるなど、当社の事業を従前どおり維持するために莫大なコストと時間等が必要となり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社が日本郵政グループとの間で締結している日本郵政グループ協定及び日本郵政グループ商標管理協定、並びに当社が日本郵政株式会社との間で締結している日本郵政グループ運営に関する契約及びグループ商標管理契約について、当社が関連保険会社に該当しないこととなり協定や契約そのものを適用しないこととなった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、当社は、日本国政府その他の公的機関から何らの保証その他の信用補完を受けておりませんが、日本郵政株式会社が当社の親会社ではなくなることに伴い、当社の経済的信用力が低下したという誤認や錯誤が社会に広く伝播した場合等には、社員採用活動への悪影響や、顧客その他の取引先による取引停止、取引量の減少、保険契約の解約、当社にとって不利な取引条件の変更等を誘発する可能性があります。
Ⅳ オペレーション
(1)オペレーショナルリスク
当社グループが業務を遂行していく過程には、オペレーショナルリスク(コンプライアンス・リスクを含む)が存在し、内部及び外部の不正行為、労務管理及び職場環境面での問題発生、顧客本位の業務運営への対応が不十分であることによる信用失墜、システム障害等に伴う事業中断、不適切な事務処理、保険金等の支払いに係る不備や事務態勢の逼迫、商標出願等の事務不備等が生じる可能性があります。特に、当社の商品及びサービスの提供の多くは郵便局ネットワークを通じて行われており、そこでは当社の事業のみならず、銀行・物流のサービスも並行して提供されるため、これらのオペレーショナルリスクが顕在化する可能性が相対的に高く、当社グループの事業、社会的信用、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
① システムリスク
当社グループは、当社グループが保有するシステムだけでなく、日本郵政株式会社、日本郵便株式会社及び株式会社ゆうちょ銀行が所有するシステム等も利用して、生命保険の募集及び管理業務を行い、また、全国の郵便局や当社の各種拠点等と通信を行っており、情報システムは、当社の事業にとって極めて重要な機能を担っております。
かかる情報システムには、地震、噴火、津波、台風、洪水、大雪、火災等の自然災害やテロリズム等の外的要因に加えて、人的過失、事故、停電、システムの新規開発・更新における瑕疵、通信事業者等の第三者の役務提供の瑕疵等により重大な障害や故障等が発生する可能性があります。こうしたシステム障害・故障等が生じた場合には、業務の停止・混乱及びそれに伴う損害賠償、行政処分、社会的信用の毀損、これらに対する対応や対策のためのコスト等が発生することにより、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② サイバー攻撃に関するリスク
当社においては、DX推進及びAIの利活用により、お客さまへのサービス提供が一段と増加している一方、システムに対するサイバー攻撃手法は日々高度化・巧妙化・組織化しており、サイバーリスクは年々深刻化しております。加えて、かかるリスクは、社会情勢の変化に伴う地政学的リスクや委託先等の第三者のシステムを経由したサプライチェーンによるリスク等により、今後さらに増大する可能性があります。
このようなリスクを踏まえ、当社は、防御・検知の仕組みを組み合わせた多層防御の考え方に基づいた未然防止態勢及びサイバー攻撃発生時にセキュリティ専門組織であるかんぽCSIRT(シーサート:Computer Security Incident Response Team)により、被害拡大防止に向けた適切な対応等を実施する態勢を整備しております。加えて、経済安全保障を考慮したデータガバナンスの強化、法令等に準拠した適正な業務運営態勢の確保、情報資産管理の強化及びサプライチェーンリスク対策の強化により、情報セキュリティ管理態勢をさらに強化するとともに、これらの土台となる全社的な情報リテラシーの向上及び情報管理ルールの徹底を図っております。加えて、サイバー攻撃に起因する危機が発生した場合に備え、通常の業務遂行態勢が困難となった場合の危機管理対応、お客さまを始めとする対外対応、代替手段による業務継続対応を予め整備した上で訓練等を通じて、その実効性の確保に取り組んでおります。
このように、当社は、恒常的にサイバーセキュリティ対策の高度化に取り組んでおりますが、かかる対策にもかかわらず、未知の脅威等により、当社の情報システムが機能しなくなり、業務に多大な影響が生じることとなった場合には、影響範囲の調査・分析、復旧及び再発防止に時間と費用が生じることにより、当社グループの事業、社会的信用、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ コンプライアンスに関するリスク
当社グループは、保険業法及び郵政民営化法に基づき、金融庁及び総務省の監督下にあります。加えて、保険法、消費者契約法、個人情報の保護に関する法律、犯罪による収益の移転防止に関する法律等、生命保険契約を取り扱う事業者として、各種関係法令の遵守の義務を負っております。
当社グループは、募集品質問題等の反省を踏まえ、法令等の遵守のみならず、利用者視点を欠く行為など社会的な期待に反する行為により、お客さまをはじめとするステークホルダーの信頼を失い、その結果、企業価値を毀損するリスクを「コンプライアンス・リスク」として定義し、リスク管理部門とコンプライアンス部門の連携を強化することにより、リスク管理態勢の強化を図ることとしております。これにより、高いリスク感度をもってリスク情報を検知するとともに、社員一人ひとりに社会の期待に応える行動を定着させることで、保険募集プロセス及びその他業務全般におけるコンプライアンス・リスクの顕在化を抑制してまいります。
さらに、お客さま本位の理念に基づく行動規範等を策定し、郵便局等の営業現場まで浸透させるための研修を実施するなど、全社を挙げて、より一層のコンプライアンスの強化に取り組んでおりますが、これらの指導・教育が十分な効果を発揮しないこと等により、不適正な募集活動などの法令等の違反が発生した場合には、当社グループの社会的信用、事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
このほか、当社グループにおいては、従来から「コンプライアンス・プログラム」を策定し、役員・社員への定期的なコンプライアンス研修、情報管理の徹底、犯罪防止やマネー・ローンダリング、テロ資金供与及び拡散金融対策の強化等を通じ、法令遵守の徹底を図っておりますが、役員・社員による作為若しくは不作為による法令等の違反が発生した場合や法令等の違反を防止するための対策が効果を発揮しなかった場合には、当社グループの社会的信用及び事業に影響を及ぼす可能性があります。また、当社は膨大な保険契約や業務委託・物品購入等の契約を締結しておりますが、契約の相手方による詐欺的行為の被害を受けた場合、反社会的勢力との契約を締結した場合等には、当社グループの社会的信用及び事業に影響を及ぼす可能性があります。さらに、当社グループは、社員、代理店、業務委託先、保険契約者等による詐欺その他の不正による潜在的な損失リスクにさらされております。当社の社員及び代理店は、保険契約者との対話を通じて、保険契約者の個人情報を保有しており、違法な販売手法、詐欺、なりすまし、個人情報の紛失・漏えい又は不適切な利用等が発生してしまう可能性は否定できません。当社はこのような違法行為等を未然に防止し、又は発見するための対策を講じておりますが、当社の取り組みがこれらを排除できない場合には、当社グループの社会的信用及び事業に影響を及ぼす可能性があります。
このように、当社グループは、保険法、犯罪による収益の移転防止に関する法律等、各種の規制の適用を受けており、その改正、その執行に関する政府方針の変更等が行われることにより、新たな対応、費用が発生するなど、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ 情報漏えいに関するリスク
当社グループは、事業を行う上で当社が直接に又は当社の代理店である日本郵便株式会社を通して、大量の情報を取得し保有しております。この情報には、保険契約者等の個人や法人のお客さまの情報のほか、業務上知り得た様々な内部情報が含まれます。その中でも、個人情報(「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」に定める個人番号を含む。以下同じ。)については、個人情報の保護に関する法律をはじめとする関係法等に基づき、適切な取扱いが求められております。特に、近年、企業・団体が保有する個人情報の漏えい・紛失等が多発しており、より厳格な管理が要求されております。
当社グループでは、プライバシーポリシーを策定するとともに、情報管理に関する規程等を整備し、厳正な情報管理に努めております。また、働き方改革として、在宅勤務を推進することに併せて、情報管理に関する注意喚起等を徹底しております。
しかし、社員(退職者を含む)、代理店、業務委託先又はその他の者により、当社が保有する個人情報やその他重要な情報が外部に漏えい等し、損害賠償請求や行政調査、指導又は処分を受けることとなった場合には、かかる事案に対応するための時間及び費用が生じること、また、当社グループの社会的信用が失墜すること等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 訴訟等に関するリスク
当社グループは、事業の遂行に関して、訴訟その他の法的手続が提起又は開始されるリスクを有しております。また、保険契約者等から訴訟を提起される可能性や人事処遇、勤務管理、ハラスメントなどの人事労務上の問題、職場の安全衛生管理上の問題等に関連する訴訟等を当社グループの社員等から提起される可能性もあります。
当社に対する新たな訴訟が提起された場合、その解決には相当の時間及び費用を要する可能性があります。また、社会的関心・影響の大きな事象についての訴訟等が発生し、当社に対して損害賠償の支払いが命じられる等、不利益となる判断がなされた場合には、当社グループの社会的信用、事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 風評・風説等に関するリスク
当社グループが行っている事業全般に対する風評・風説が、報道機関・市場関係者への情報伝播、インターネット上の掲示板やソーシャル・ネットワーキング・サービスへの書き込み等により拡散し、報道機関により否定的報道が行われる場合やAIの悪用活用により、フェイクニュースといった誤情報が発信され、風評リスクが顕在化した場合等には、当社グループが提供するサービスの公益性、事業規模、社会における認知度・注目度等を背景に、当該風評・風説、報道等が事実に基づくか否かにかかわらず、顧客や市場関係者等から否定的理解・認識をされる可能性や強い批判を受ける可能性があり、それにより、商品・サービス、事業のイメージ・社会的信用がさらに毀損し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) リスク管理の有効性に関するリスク
当社グループは、リスク管理に関する規程を定め、リスク管理態勢を整備し、保険引受リスク、資産運用リスク、市場流動性リスク、資金繰りリスク及びオペレーショナルリスクの全般の管理を実施しております。
当社グループの保険引受リスク、資産運用リスク、市場流動性リスク及び資金繰りリスク等のリスク管理は、過去の経験・データに基づき構築されておりますが、必ずしも将来発生するリスクを正確に予測することができないため、新しい業務分野への進出や外部環境の変化等によりリスク管理が有効に機能しない可能性があります。また、当社グループがリスク管理の方針及び手続を策定する際、参考又は前提とした情報が正確性、完全性又は合理性を欠く可能性があります。
さらに、当社グループのオペレーショナルリスク等のリスク管理においては、膨大な取引や事象の適切な記録、審査、調査等に係る方針及び手続の有効性や効率性等が重要ですが、今後、かかる方針や手続が必ずしも有効に機能しない可能性があります。加えて、リスク管理の実施及びその遵守状況の監督は、当社の商品及びサービスを提供する日本郵便株式会社における郵便局ネットワーク全体に対しても行う必要があり、株式会社ゆうちょ銀行の商品及び日本郵便株式会社の郵便・物流サービスの提供を含め、郵便局ネットワークに対する実施・監督に困難又は落ち度が生じた場合には、当社によるリスク管理が機能しない、又は不十分となる可能性があります。
当社は、経営環境、リスクの状況などの変化に応じ、リスク管理態勢全般について随時見直しを行い、万全のリスク管理態勢を構築するよう努めておりますが、当社グループのリスク管理態勢が有効に機能しない場合や欠陥が発生した場合等には、予期せぬ損失を被る可能性や行政処分等を受ける可能性があり、当社グループの社会的信用、事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
Ⅴ その他
(1) 大規模災害等の発生に伴うリスク
当社は、日本全国に営業網を有して生命保険業を営んでおります。このため、地震、噴火、津波、台風、洪水、大雪等の大規模災害、新型インフルエンザ等の感染症の大流行、テロリズム、国家間紛争等の人的災害、水道、電気、ガス、通信・金融サービス等に係る社会的インフラの重大な障害や混乱等が発生した場合には、以下のような事態が発生する可能性があります。
・当初の想定を超える保険金の支払い又は保険契約解約の発生
・保険営業機会の減少や保険ニーズの低下による収入保険料の減少
・大規模感染症の拡大に伴う外出自粛要請の発令等による経済活動の停滞と、金融市場におけるリスク回避志向の高まりによる保有株式等の価値の毀損
・役員・社員・関係者の被災・罹患あるいは災害拡大防止に伴う出勤者の減少による業務の停止又は停滞など正常な業務運営体制の確保の困難、事業継続・復旧のための費用の発生
・当社グループの本社、支店その他の設備や施設の損壊による業務の停止又は停滞と、事業継続・復旧のための費用の発生
・非常時における社会的要請等を踏まえた特別の取扱いやサービスの設定及びその適用事例が当初想定を超えて発生することによる損失の発生
当社では、保険金支払いに備えて保険業法上の基準に従って危険準備金を積み立てるほか、十分な資金流動性の確保に努めております。また、万が一の際に、保険会社として保険金支払いなどの重要な業務を確実に実施できる体制を確保するための業務継続計画を策定し、平時から定期的に危機管理役員連絡会の開催や防災訓練等を実施し、役員・社員の危機管理意識向上を図るとともに、災害への対応状況を確認しております。さらに、危機発生時には危機管理委員会を中心に適切かつ迅速な対応をとる体制としております。
しかし、そうした対応が奏功しないあるいは想定以上の災害が発生し、前述の事象が発生、拡大、長期化する場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の開示に影響を与える見積りを必要とします。
経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針及び見積りが連結財務諸表に大きな影響を及ぼす可能性があると考えております。
有価証券の一部及びデリバティブ取引は、時価法に基づいて評価しております。時価は、公表された相場価格に基づいて算定しておりますが、公表された相場価格がない場合には合理的な見積りに基づいて算定された価額によっております。
将来、見積りに影響する新たな事実の発生等により、見積額は変動する可能性があります。
なお、金融商品の時価の算定方法は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(金融商品関係)に記載のとおりであります。
金銭の信託で運用する有価証券を含め売買目的有価証券以外の有価証券のうち、時価又は実質価額が著しく下落したものについては合理的な基準に基づいて減損処理を行っております。株式市場の悪化等、将来の金融市場の状況によっては、多額の減損損失を計上する可能性があります。
なお、有価証券の減損処理に係る基準は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(有価証券関係)及び(金銭の信託関係)に記載のとおりであります。
繰延税金資産の回収可能性の判断に際しては、将来の課税所得を合理的に見積もっております。当該課税所得の見積りは、当連結会計年度に作成した経営計画を基礎としており、今後、当該計画における取組方針の下、一定の新契約水準に到達する前提で作成しております。
当連結会計年度における新契約の実績は、一時払終身保険の販売が増加し経営計画の水準を達成しているものの、今後の新契約水準は将来の経営環境や営業施策の効果発現による影響を受けることから、繰延税金資産の回収可能性については、当該経営計画を基礎とした前提の下、複数のストレスシナリオを考慮して判断しております。
以上のとおり、繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存するため、将来、当社を取り巻く経営環境に大きな変化があった場合等、その見積額が変動した場合は、繰延税金資産の回収可能性が変動する可能性があります。
債権の貸倒れによる損失に備えるため、資産の自己査定基準及び償却・引当基準に則り、債務者の状況に応じ、回収不能見積額を計上しております。
将来、債務者の財務状況が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。
なお、貸倒引当金の計上基準は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載のとおりであります。
連結会計年度末時点において支払義務が発生したが保険金等の支出をしていないもの、または、まだ支払事由の報告を受けていないが支払事由が既に発生したと認められるもののうち保険金等の支出をしていないものについて支払備金を積み立てております。
将来、見積りに影響する新たな事実の発生等により、支払備金の計上額が当初の見積額から変動する可能性があります。
保険契約に基づく将来における債務の履行に備えるため、責任準備金を積み立てております。
責任準備金の計算に使用される予定死亡率、予定利率及び予定事業費率などの基礎率は合理的であると考えておりますが、実際の結果が著しく乖離した場合や環境の変化により将来乖離が見込まれる場合には、責任準備金の金額に影響を及ぼす可能性があります。
なお、責任準備金の積立方法は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載のとおりであります。
⑦ 退職給付債務及び退職給付費用
退職給付債務及び退職給付費用は、割引率など将来の退職給付債務算出に用いる数理計算上の前提条件に基づいて算出しております。
このため、実際の結果が前提条件と異なる場合や前提条件の変更が行われた場合には、将来の退職給付債務及び退職給付費用が変動する可能性があります。
なお、退職給付債務等の計算の基礎に関する事項は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(退職給付関係)に記載のとおりであります。
営業面においては、当連結会計年度における個人保険の新契約件数は、2024年1月に販売を開始しました一時払終身保険の影響等により、前連結会計年度と比べ16.6万件増と増加が継続し79.5万件(前期比26.5%増)となりました。個人保険の保有契約件数(受再している簡易生命保険契約(保険)を含む)は、前連結会計年度末と比べ89.0万件減少し1,881.0万件(前期比4.5%減)となったものの、個人保険の保有契約件数(受再している簡易生命保険契約(保険)を含まない)においては、新契約件数の増加に伴い2.4%減と前連結会計年度末と比べ緩やかな減少となっております。新契約年換算保険料は、個人保険が前連結会計年度と比べ582億円増加し、1,750億円(前期比49.9%増)となった一方で、第三分野が32億円減少し71億円(同31.1%減)となりました。保有契約年換算保険料については、個人保険が1,315億円減少し2兆8,558億円(前期比4.4%減)(受再している簡易生命保険契約(保険)を含む)、第三分野が267億円減少し5,379億円(同4.7%減)(受再している簡易生命保険契約を含む)といずれも減少となりました。なお、受再している簡易生命保険契約(保険)を含まない保有契約年換算保険料(個人保険)は、2兆1,372億円(前期比2.9%減)となっております。
資産運用面においては、円金利資産と円金利負債のマッチングを図るALMの観点から、公社債を中心に運用しております。総資産残高は、前連結会計年度末に比べ1兆3,002億円減少し、59兆5,556億円(前期比2.1%減)となりました。株式、外国証券等の収益追求資産については、為替が円安で推移する中オープン外債を売却したことや、日経平均株価等の下落により国内株式の含み益が減少したもののオルタナティブへの投資を継続したことから、前期比で残高は横ばいとなり、収益追求資産の占率は総資産比で上昇し18.7%となりました。平均予定利率は一時払終身保険の販売や再保険の活用等により前期比で0.05ポイント下落し1.61%、基礎利益上の運用収支等の利回り(利子利回り)は収益追求資産の収益貢献等により前期比で0.07ポイント増加し1.91%となり、順ざやは前期比で507億円増加し1,425億円となりました。キャピタル損益は、国債の売却による有価証券売却損の増加及び外国債券の売却による有価証券売却益の減少等により、26億円のキャピタル益となりました。
当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、保有契約の減少等の影響及び新契約の増加に伴う短期的な費用(初年度に係る標準責任準備金の積増負担)の増加の影響があった一方、運用環境の好転等による順ざやの増加等により、1,234億円と前連結会計年度と比べ364億円の増益(前期比41.8%増)となりました。
なお、連結当期純利益に、新契約の初年度に係る標準責任準備金負担による影響及びのれん償却による影響を調整した修正利益は、1,457億円となりました。
当連結会計年度末の総資産額は、保有契約は減少しているものの一時払終身保険の販売好調の影響等もあり、前連結会計年度末に比べ1兆3,002億円減少し59兆5,556億円(前期比2.1%減)となりました。
資産の部合計は、前連結会計年度末に比べ1兆3,002億円減少し、59兆5,556億円(前期比2.1%減)となりました。主な資産構成は、有価証券46兆5,287億円(同2.4%減)、金銭の信託6兆4,600億円(同3.0%増)及び貸付金2兆5,300億円(同22.9%減)となっております。
負債の部合計は、前連結会計年度末に比べ1兆1,458億円減少し、56兆3,142億円(前期比2.0%減)となりました。その大部分を占める保険契約準備金は、保有契約は減少しているものの一時払終身保険の販売好調の影響等により前連結会計年度末と比べ減少し50兆1,656億円(同3.5%減)となりました。
純資産の部合計は、前連結会計年度末に比べ1,543億円減少し、3兆2,414億円(前期比4.5%減)となりました。純資産の部のうち、その他有価証券評価差額金は、前連結会計年度末に比べ2,240億円減少し、1兆5,516億円(同12.6%減)となりました。
なお、当連結会計年度末における連結ソルベンシー・マージン比率(大災害や株価の大暴落など、通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる「支払余力」を有しているかどうかを判断するための行政監督上の指標の一つ)は、903.2%と高い健全性を維持しております。
経常収益は、前連結会計年度と比べ5,787億円減少し、6兆1,653億円(前期比8.6%減)となりました。経常収益の内訳は、保険料等収入3兆1,548億円(同27.0%増)、資産運用収益1兆1,956億円(同1.3%減)、その他経常収益1兆8,148億円(同40.5%減)となっております。
保険料等収入は、保有契約は減少した一方で、2024年1月から一時払終身保険の販売を開始したこと等により、前連結会計年度に比べ6,708億円増加し、3兆1,548億円(前期比27.0%増)となりました。
資産運用収益は、金銭の信託運用益等が増加した一方で、有価証券売却益等が減少したことから、前連結会計年度に比べ159億円減少し、1兆1,956億円(前期比1.3%減)となりました。
その他経常収益は、一時払終身保険の販売好調の影響等に伴う責任準備金戻入額の減少等により、前連結会計年度に比べ1兆2,337億円減少し、1兆8,148億円(前期比40.5%減)となりました。
経常費用は、前連結会計年度と比べ5,879億円減少し、5兆9,950億円(前期比8.9%減)となりました。経常費用の内訳は、保険金等支払金が5兆2,053億円(同9.9%減)、資産運用費用が2,790億円(同1.2%減)、事業費が4,314億円(同2.0%減)、その他経常費用が785億円(同3.5%減)等となっております。
保険金等支払金は、保有契約の減少等により、前連結会計年度に比べ5,732億円減少し、5兆2,053億円(前期比9.9%減)となりました。
資産運用費用は、有価証券売却損が増加したものの、金融派生商品費用が減少したこと等により、前連結会計年度に比べ34億円減少し、2,790億円(前期比1.2%減)となりました。
事業費は、業務委託手数料の減少等により、前連結会計年度に比べ88億円減少し、4,314億円(前期比2.0%減)となりました。
その他経常費用は、減価償却費の減少等により、前連結会計年度に比べ28億円減少し、785億円(前期比3.5%減)となりました。
経常利益は、主として、保有契約の減少及び新契約の増加に伴う短期的な費用(初年度に係る標準責任準備金の積増負担)の増加の影響等により保険関係損益が減少した一方で、その影響を順ざやの増加が上回ったこと等により、前連結会計年度に比べ91億円増加し、1,702億円(前期比5.7%増)となりました。
提出会社の経常利益等の明細については、「(参考4) 健全性の状況 (1) 基礎利益」の(経常利益等の明細(基礎利益))に記載のとおりであります。
特別損益は、キャピタル損益相当額及び順ざやに含まれる為替に係るヘッジコストに対応した価格変動準備金の戻入額の増加等により、前連結会計年度に比べ276億円増加し、436億円の利益となりました。
契約者配当準備金繰入額は、前連結会計年度に比べ410億円増加し、969億円(前期比73.5%増)となりました。
経常利益に特別損益を加減し、契約者配当準備金繰入額及び法人税等合計を差し引いた親会社株主に帰属する当期純利益は、保有契約の減少等の影響及び新契約の増加に伴う短期的な費用(初年度に係る標準責任準備金の積増負担)の増加の影響があった一方、運用環境の好転等による順ざやの増加等により、前連結会計年度に比べ364億円増加し、1,234億円(前期比41.8%増)となりました。
なお、当社の当事業年度における基礎利益は、2,421億円(前期比8.1%増)となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、2024年1月から一時払終身保険の販売を開始したこと等により保険料等収入が増加したことや保有契約の減少等により保険金支払が減少したこと等により、前連結会計年度に比べ1兆4,353億円支出減の1兆6,278億円の支出となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、貸付金の回収による収入が増加したものの、一時払終身保険の販売好調に伴う運用額の増加等により有価証券の取得による支出が増加したこと及び有価証券の売却・償還による収入が減少したこと等から、前連結会計年度に比べ3,353億円収入減の2兆3,864億円の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額の増加等により、前連結会計年度に比べ20億円収入減の601億円の収入となりました。
上記a.~c.の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、期首から8,187億円増加し、1兆9,760億円となりました。
「第3 設備の状況 3 設備の新設、除去等の計画 (1) 重要な設備の新設等」に記載の設備投資を含む当面の設備投資及び株主還元などは自己資金又は社債の発行による調達資金で賄う予定であります。
(3) 目標とする経営指標の達成状況等
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 目標とする経営指標」に記載のとおり、当社は2024年5月に経営指標を見直しております。見直し後の主要目標のうち、「お客さま満足度」については、2024年度において、84%となっております。「ネットプロモータースコア(NPS®)」と併せて、引き続き、DXを推進し、CXを最優先とするビジネスモデルへの転換に取り組むことにより、向上を目指してまいります。「保有契約件数(個人保険)」については、2024年6月末、9月末、12月末及び2025年3月末において、それぞれ1,956万件、1,936万件、1,911万件及び1,881万件と推移しております。このように保有契約件数は減少しているものの、受再している簡易生命保険契約(保険)を含まない民営化後契約においては新契約件数の増加に伴い、2024年3月末と比べ緩やかな減少となっており、早期の底打ち反転を目指しております。また、新契約の初年度に係る標準責任準備金負担による影響及びのれん償却による影響を調整した「修正利益」は1,457億円となり、これを踏まえた「修正ROE」は8.8%となっております。「EV成長率」については、2024年6月末、9月末、12月末及び2025年3月末において、それぞれ9.7%、8.9%、8.4%及び9.8%と推移しております。
なお、「1株当たり配当額」については、期初計画どおり、2024年12月に中間配当52円を実施し、期末配当についても52円といたします。
(4) 生産、受注及び販売の状況
生命保険事業における業務の特殊性により、該当する情報がないため記載しておりません。
(個人保険及び個人年金保険は、当社が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約を含みません。)
(単位:千件、百万円)
(注) 個人年金保険の金額は、年金支払開始前契約の年金支払開始時における年金原資と年金支払開始後契約の責任準備金額を合計したものであります。
(単位:千件、百万円)
(注) 1.件数は、新契約件数に転換後契約件数を加えた数値であります。なお、転換後契約とは、既契約の転換によって成立した契約であります。
2.個人年金保険の金額は、年金支払開始時における年金原資であります。
(単位:百万円)
(注) 1.年換算保険料とは、1回あたりの保険料について保険料の支払方法に応じた係数を乗じ、1年あたりの保険料に換算した金額であります(一時払契約等は、保険料を保険期間等で除した金額)。
2.医療保障・生前給付保障等には、医療保障給付(入院給付、手術給付等)、生前給付保障給付(特定疾病給付、介護給付等)、保険料払込免除給付(障がいを事由とするものは除きます。特定疾病罹患、介護等を事由とするものを含みます。)等に該当する部分の年換算保険料を計上しております。
(単位:百万円)
(注) 1.年換算保険料とは、1回あたりの保険料について保険料の支払方法に応じた係数を乗じ、1年あたりの保険料に換算した金額であります(一時払契約等は、保険料を保険期間等で除した金額)。
2.医療保障・生前給付保障等には、医療保障給付(入院給付、手術給付等)、生前給付保障給付(特定疾病給付、介護給付等)、保険料払込免除給付(障がいを事由とするものは除きます。特定疾病罹患、介護等を事由とするものを含みます。)等に該当する部分の年換算保険料を計上しております。
3.新契約年換算保険料は、新契約に係る年換算保険料に、既契約の転換による転換前後の年換算保険料の純増加分を加えた数値であります。
(単位:千件、百万円)
(注) 計数は、郵政管理・支援機構における公表基準によるものであります。
(単位:百万円)
(注) 当社が郵政管理・支援機構から受再している簡易生命保険契約について、上記「(参考1) 当社の保険引受の状況 (3) 保有契約年換算保険料明細表」に記載しております個人保険及び個人年金保険の保有契約年換算保険料と同様の計算方法により、当社が算出した金額であります。
(注) 1.機構貸付とは、郵政管理・支援機構(簡易生命保険勘定)への貸付であります。
2.不動産については、土地・建物・建設仮勘定を合計した金額を計上しております。
(単位:%)
(注) 1.利回り計算式の分母は帳簿価額ベースの日々平均残高、分子は経常損益中、資産運用収益-資産運用費用として算出した利回りであります。
2.一般勘定計には、有価証券信託に係る資産を含めております。
3.海外投融資とは、外貨建資産と円建資産の合計であります。
基礎利益は、保険料等収入、保険金等支払金、事業費等の保険関係の収支と、利息及び配当金等収入を中心とした運用関係の収支からなる、生命保険会社の基礎的な期間損益の状況を表す指標であります。
当社の当事業年度における基礎利益は、2,421億円となりました。
(単位:百万円)
(参考) その他項目の内訳
(単位:百万円)
生命保険会社は将来の保険金等の支払いに備えて責任準備金を積み立てており、通常予測できる範囲のリスクについては責任準備金の範囲内で対応できます。
ソルベンシー・マージン比率とは、大災害や株価の大暴落など、通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる「支払余力」を有しているかどうかを判断するための行政監督上の指標の一つであります。
この比率が200%を下回った場合は、当局によって早期是正措置がとられます。逆にこの比率が200%以上であれば、健全性の一つの基準を満たしていることになります。
当連結会計年度末における連結ソルベンシー・マージン比率は903.2%と高い健全性を維持しております。
(単位:百万円)
(注) 保険業法施行規則第86条の2、第88条及び平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出しております。
生命保険会社では、大災害の発生、金融資産の価格変動等、生命保険事業の経営環境の変化に伴うリスクに備え、将来にわたる健全で安定的な経営を確保するために、危険準備金と価格変動準備金を積み立てることとしております。
当連結会計年度末における残高は危険準備金1兆2,191億円、価格変動準備金8,299億円となり、合計で2兆490億円となりました。
(単位:億円)
実質純資産額とは、資産全体を時価評価して求めた資産の合計から、危険準備金や価格変動準備金等の資本性の高い負債を除いた負債の合計を引いたものであり、決算期末の保険会社の健全性の状況を示す行政監督上の指標の一つであります。この数値がマイナスになると業務停止命令等の対象となることがあります(ただし、満期保有目的の債券及び責任準備金対応債券の含み損を除いた額がプラスとなり、かつ、流動性資産が確保されている場合には、原則として業務停止命令等の措置は取られないこととなっております。)。当連結会計年度末における連結実質純資産額は4兆659億円となりました。
(単位:億円)
追加責任準備金とは、加入時の計算基礎で計算した積立額では、逆ざや等により保険金等の支払いに不足する額として追加して積み立てている責任準備金であります。当連結会計年度末における追加責任準備金は5兆730億円を積み立てております。なお、責任準備金の積立方法は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表」の(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載のとおりであります。
(単位:億円)
エンベディッド・バリュー(以下「EV」といいます。)は対象事業に割り当てられた、資産及び負債から生じる株主への分配可能な利益の価値の見積りであります。ただし、将来の新契約から生じる価値は含みません。この価値は、修正純資産及び保有契約価値で構成されるものであります。
修正純資産は株主に帰属すると考えられる純資産(時価)であり、必要資本とフリー・サープラスで構成されるものであります。
保有契約価値は、保有契約及び保有契約に係る資産から将来発生すると見込まれる株主への分配可能な利益の評価日時点の現在価値であり、必要資本を維持するための費用等を控除したものであります。
生命保険契約は、一般に販売時に多くのコストが発生するため、一時的には損失が発生するものの、契約が継続することで、将来にわたり生み出される利益によりそのコストを回収することが期待される収支構造となっております。現行の法定会計では、このような収支構造をそのまま各年度の損益として把握しておりますが、EVは、全保険期間を通じた損益を現在価値で評価することとなるため、現行の法定会計による財務情報では不足する情報を補うことができる指標の一つと考えております。
EVの開示に関する一貫性と透明性の改善を図る目的で、2004年5月にヨーロッパの主要保険会社のCFO(最高財務責任者)の集まりである、CFOフォーラムが、ヨーロピアン・エンベディッド・バリュー(以下「EEV」といいます。)原則及び指針(ガイダンス)を制定いたしました。
2016年5月には、CFOフォーラムによってEEV原則の改正が公表され、EVに2016年1月から施行された欧州ソルベンシーⅡ等の計算で用いた計算手法及び前提の使用が許容されるようになりました。
今回のEEVの計算には、市場整合的手法を用いております。この手法は、資産又は負債から発生するキャッシュ・フローを市場で取引されている金融商品と整合的に評価するものであります。
当社は、郵政民営化法に基づき、2007年10月1日に発足しました。また、2007年9月末までに契約された簡易生命保険契約は、郵政管理・支援機構に承継されるとともに、郵政管理・支援機構が負う保険責任のすべてについて、当社が受再しております。
当社は、郵政管理・支援機構との再保険契約において、簡易生命保険契約を他の保険契約と区分して管理すること(簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金も区分して管理すること)、簡易生命保険契約から生じた利益(危険準備金及び価格変動準備金の戻入による利益も含んでおります。)も区分して管理すること、及び郵政管理・支援機構が簡易生命保険契約に対して既に約款で約束している確定配当所要額と再保険損益(確定配当所要額及び法人税等を除いたこの区分における利益)の8割の合計額を、郵政管理・支援機構へ再保険配当として支払うことを定めております。EEVの計算においては、この郵政管理・支援機構への再保険配当を差し引いた後の利益を反映しております。
このように郵政管理・支援機構への再保険配当の原資に、簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金の戻入による利益が含まれることから、簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金は修正純資産には含めておらず、将来において戻入する前提で保有契約価値に含めて計算しております。
当社のEEVは以下のとおりであります。
(単位:億円)
修正純資産は、資産の市場価値のうち、契約者に対する負債及びその他の負債の価値を超過する部分であり、株主に帰属すると考えられる価値であります。純利益による増加を主な理由として、当事業年度末における修正純資産は前事業年度末から増加しております。修正純資産の内訳は以下のとおりであります。
(単位:億円)
(注) 1.計算対象に子会社を含めているため、連結貸借対照表の純資産の部合計を計上しております。ただし、その他の包括利益累計額合計を除いております。また、自己株式に計上している株式給付信託(BBT)が保有する当社株式の帳簿価額を加え、当事業年度末については2025年3月31日に取得(約定)した自己株式330億円を控除しております。
2.簡易生命保険契約に係る部分を除いております。
3.保険契約に係らない有価証券、貸付金及び不動産の含み損益、一般貸倒引当金、退職給付の未積立債務(未認識過去勤務費用及び未認識数理計算上の差異)並びに劣後債の含み損益を計上しております。
当事業年度末の修正純資産を計算する際に除いた保険契約に係る部分は以下のとおりであります。
(単位:億円)
(注) 1.連結貸借対照表の純資産の部合計を計上しております。ただし、その他の包括利益累計額合計を除いております。また、自己株式に計上している株式給付信託(BBT)が保有する当社株式の帳簿価額を加え、2025年3月31日に取得(約定)した自己株式330億円を控除しております。
2.保険契約に係る部分(②)は、簡易生命保険契約に係る部分を計上しております。詳細は「(2) 簡易生命保険契約について」に記載のとおりであります。
3.有価証券、貸付金及び不動産の含み損益、一般貸倒引当金、退職給付の未積立債務(未認識過去勤務費用及び未認識数理計算上の差異)並びに劣後債の含み損益を計上しております。
保有契約価値は、保有契約の評価日時点における価値を表したもので、保有契約及び保有契約に係る資産から将来発生すると見込まれる株主への分配可能な利益を現在価値に割り引いております。「(4) 前事業年度末EEVからの変動要因」に記載のとおり、前提条件(経済前提)と実績の差異を主な理由として、当事業年度末における保有契約価値は前事業年度末から減少しております。保有契約価値の内訳は以下のとおりであります。
将来利益の計算において保険契約に係る資産は簿価評価しております。また、簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金が将来において戻入する前提で、その戻入による利益を含めて計算しております。詳細は「(2) 簡易生命保険契約について」に記載のとおりであります。
(単位:億円)
新契約価値は、当期間に獲得した新契約(更新特則による加入契約を含む。条件付解約による加入契約及び転換契約については正味増加分のみ)の契約獲得時点における価値を表したものであります。
当事業年度の新契約価値は前事業年度から増加しております。新契約価値の内訳は以下のとおりであります。
(単位:億円)
なお、新契約マージン(新契約価値の保険料収入現価に対する比率)は以下のとおりであります。
(単位:億円)
(注) 将来の収入保険料を、新契約価値の計算に用いたリスク・フリー・レートで割り引いております。
(単位:億円)
当社は当事業年度において379億円の株主配当金を支払っており、修正純資産がその分減少しております。また、2025年3月31日に330億円の自己株式の取得(約定)を行っており、修正純資産がその分減少しております。
新契約価値は、当事業年度に新契約を獲得したことによる契約獲得時点における価値を表したものであり、契約獲得に係る費用を控除した後の金額が反映されております。
保有契約価値の計算にあたっては、将来の期待収益をリスク・フリー・レートで割り引いておりますので、時間の経過とともに割引の影響が解放されます。これには、オプションと保証の時間価値、必要資本を維持するための費用及びヘッジ不能リスクに係る費用のうち当事業年度分の解放を含んでおります。修正純資産からは、対応する資産からリスク・フリー・レート(0.054%)分に相当する収益が発生しております。
EEVの計算にあたっては、将来の期待収益としてリスク・フリー・レートを用いておりますが、実際の会社はリスク・フリー・レートを超過する利回りを期待しております。この項目は、その期待される超過収益を表しております。当事業年度の超過収益を計算するために使用した期待収益率は、「付録B EEV計算における主な前提条件 (1) 経済前提」に記載のとおりであります。
当事業年度に実現が期待されていた利益が、保有契約価値から修正純資産に移管されます。これには、前事業年度末の保有契約から期待される当事業年度の利益と、当事業年度に獲得した新契約からの、契約獲得に係る費用を含めた当事業年度の損益が含まれております。
これらは保有契約価値から修正純資産への振替えであり、EEVの金額には影響しません。
前事業年度末の保有契約価値の計算に用いた前提条件(非経済前提)と、当事業年度の実績の差額であります。
前提条件(非経済前提)を更新したことにより、翌事業年度以降の収支等が変化することによる影響であります。
市場金利やインプライド・ボラティリティ等の経済前提が、前事業年度末EEV計算に用いたものと異なることによる影響であります。当該影響は、当事業年度の実績及び翌事業年度以降の見積りの変更を含んでおります。
国内株価下落による保有国内株式の含み益の減少等により、EEVは3,295億円減少しました。
前提条件を変更した場合のEEVの感応度は以下のとおりであります。感応度は、一度に一つの前提のみを変化させることとしており、同時に2つの前提を変化させた場合の感応度は、それぞれの感応度の合計とはならないことにご注意ください。
(単位:億円)
感応度1から4について、修正純資産の増減額は以下のとおりであります。また、感応度5から11については、保有契約価値のみの増減額となります。
(単位:億円)
(注) 参考値として、保有契約に係る資産の含み損益も加えた増減額(税引後に換算)を示しております。なお、EEVの計算にあたって、保険契約に係る部分の資産の含み損益については、修正純資産ではなく、保有契約価値の計算に含めて評価しております。
新契約価値の感応度
(単位:億円)
なお、50bp低下によりリスク・フリー・レートが0%を下回る場合は0%としております。ただし、50bp低下前のリスク・フリー・レートが0%を下回る場合はその値をそのまま使用しております。
株式及び不動産の評価日時点の価格が10%下落した場合の影響を表しております。
事業費率(契約維持に係るもの)が10%減少した場合の影響を表しております。
解約失効率が10%減少(基本となる解約失効率に90%を乗じた水準)した場合の影響を表しております。
死亡保険について、保険事故発生率(死亡率・罹患率)が5%低下(基本となる保険事故発生率に95%を乗じた水準)した場合の影響を表しております。
年金保険について、保険事故発生率が5%低下(基本となる保険事故発生率に95%を乗じた水準)した場合の影響を表しております。
必要資本を法定最低水準(ソルベンシー・マージン比率200%水準)に変更した場合の影響を表しております。
オプションと保証の時間価値の計算に使用する、株式オプションのインプライド・ボラティリティが25%上昇した場合の影響を表しております。
オプションと保証の時間価値の計算に使用する、金利スワップションのインプライド・ボラティリティが25%上昇した場合の影響を表しております。
EEVの計算においては、リスクと不確実性を伴う将来の見通しを含んだ多くの前提条件を使用し、それらの多くは個別会社の管理能力を超えた領域に属するものであります。また、将来の実績がEEVの計算に使用した前提条件と大きく異なる場合もあり得ます。
これらの理由により、本EEV開示は、EEV計算に用いられた将来の税引後利益が達成されることを表明するものではなく、使用にあたっては、十分な注意を払っていただく必要があります。
当社が当事業年度末のEEVを計算するために使用した方法及び前提は市場整合的手法であり、EEV原則とその指針(ガイダンス)に準拠しております。
計算の対象範囲は、当社及びその子会社の取り扱う生命保険事業であります。
なお、当社は生命保険事業のみを取り扱っております。
また、当社は日本郵政グループの一員ですが、本計算は当社単独の計算となっております。
修正純資産は、貸借対照表の純資産の部の金額に対して、以下の調整を加えて計算しております。
なお、修正純資産から必要資本を控除したものがフリー・サープラスと呼ばれております。
なお、保険契約に係る資産の含み損益については、修正純資産ではなく、保有契約価値の計算に含めて評価しております。
⑤ 2025年3月31日に取得(約定)した自己株式330億円を修正純資産から控除しております。
保有契約価値は、確実性等価将来利益現価から、オプションと保証の時間価値、必要資本を維持するための費用及びヘッジ不能リスクに係る費用を控除することにより算出しております。
確実性等価将来利益現価は、最良推計(ベスト・エスティメイト)による前提に基づき、将来キャッシュ・フローを決定論的手法により計算したもので、将来利益をリスク・フリー・レートで割り引いた現在価値であります。
将来利益の計算において、保険契約に係る資産の運用収益を簿価評価しておりますが、リスク・フリー・レートによる割引現在価値は資産時価と一致しております(この取扱いは「EEV原則の指針(ガイダンス)G10.11」のとおりであります。)。なお、EEV及び新契約価値における確実性等価将来利益現価の計算では、将来の資産運用リスクのプレミアム(例えば、株式や債券等に期待されるリスク・フリー・レートを超過する利回り)は反映されておりません。また、簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金が将来において戻入する前提で、その戻入による利益を含めて計算しております。詳細は「(参考5) 当社のEV (2) 簡易生命保険契約について」に記載のとおりであります。
この価値には、契約者配当等のオプションと保証の本源的価値も反映しておりますが、オプションと保証の時間価値は反映されず、別途、計算しております。
オプションと保証の時間価値は、最良推計(ベスト・エスティメイト)による前提に基づいた値(確実性等価将来利益現価)と、市場で取引されているオプション価格と整合的な前提により確率論的に計算された将来の税引後利益現価の平均との差として計算しております。
オプションと保証の時間価値は、以下のような要素を勘案しております。
有配当保険においては、発生した損益に対して、株主への分配可能な利益には、非対称性が存在しております。例えば、利益が発生した場合には、契約者配当を支払うことから、利益のすべてが株主には帰属しておりません。一方、損失が発生した場合には、契約者に追加の負担が生じないため、損失のすべてが株主負担となります。契約者配当は、収益状況に応じた一定割合を還元するように設定しているため、シナリオによって異なった金額となります。
経済の状況等に応じて、契約者はさまざまな行動を取るオプションを有しております。ここでは、金利水準により契約者の解約行動が変化することを反映しております。
保険会社は健全性維持のために負債の額を超えて必要資本を保有する必要があります。この必要資本に係る運用収益に対する税金と資産運用管理のための費用を認識しております。
EEV原則において、この必要資本は、法定最低水準以上であることが求められ、さらに、内部の目的を達成するために必要となる金額とすることが認められております。日本における法定最低水準の資本要件はソルベンシー・マージン比率200%であることを踏まえ、当社では、必要資本を維持するための費用の計算にあたり、ソルベンシー・マージン比率600%に相当する金額を必要資本としております。
なお、日本におけるソルベンシー・マージン基準では、一定の範囲内で、全期チルメル式責任準備金相当額超過額をマージンに反映することが規定されており、本計算においてもこれを反映しております。また、保有契約価値の計算において、簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金に加え、保険契約に係るその他有価証券評価差額金、一般貸倒引当金を含めて評価しており、これらの準備金等をマージンに含めております。
当社の前事業年度末及び当事業年度末における必要資本はゼロとなりました。ただし、これらの準備金等は将来において戻入されることを想定しているため、将来における必要資本は必ずしもゼロではありません。
EEV原則では、「EVは対象事業のリスク全体を考慮した上で、対象事業に割り当てられた資産から発生する分配可能利益の中の株主分の現在価値」と定義されており、すべてのリスクを勘案してEEVを計算することが求められております。
一部のリスクについては、最良推計(ベスト・エスティメイト)による前提だけではEEVに与えるさまざまな影響を十分に反映できない場合があり、EEVの計算において、ヘッジ不能リスクに係る費用として認識するという補正が必要となります。このような例として、オペレーショナル・リスク及び巨大災害リスクの他、以下のリスクが挙げられます。
① 当社は簡易生命保険契約において終身年金等の生存保障系商品の占率が高く、将来に死亡率の改善が進んだ場合、将来の年金支払額等が増加し、価値が悪化します。死亡率前提設定において将来の死亡率の改善を反映しておりますが、最良推計以上に死亡率が改善することにより、価値の不確実性が存在しております。
② 将来、剰余が発生した場合には税金を支払いますが、損失が発生した場合には税金はゼロとなります。この場合でも、税務上の欠損金の多くは翌年度以降に繰り越すことにより回収可能と考えられますが、繰越期間内に回収できないリスクが存在しております。
③ 計算に用いるリスク・フリー・レートのうち、超長期の金利には十分な取引のある市場が存在しないことにより、価値の不確実性が存在しております。
当社では、簡易モデルによってヘッジ不能リスクに係る費用を推定しております。
当事業年度の新契約価値は、当期間に獲得した新契約の獲得時点における価値であります。
計算対象は、新契約、特約の中途付加及び更新特則による加入契約を対象としております。なお、将来時点における更新特則による加入契約については、保有契約価値及び新契約価値には反映しておりません。また、条件付解約による加入契約及び転換契約の新契約価値としては、旧契約の価値からの正味増加分を反映しております。また、経済前提は2024年6月末時点のもの、その他の前提は保有契約価値と同一の期末時点のものを用いております。
新契約価値の評価について、当社では、実際の契約者配当の水準を、保有契約全体の損益に基づいて決定していることを踏まえ、新契約を獲得した場合の保有契約全体の損益に基づいて計算したEVと、新契約を獲得しなかった場合の保有契約全体の損益に基づいて計算したEVの差とするマージナル方式としております。マージナル方式では、新契約獲得に伴う分散効果によるリスクの軽減の影響等も新契約価値として評価されております。
確実性等価将来利益現価の計算においては、当社の保有資産等を考慮し、リスク・フリー・レートとして、評価日時点の国債を使用しております。
参照金利のない超長期の金利は、終局金利を用いて補外しております。
具体的には終局金利として3.8%を仮定し、日本国債の流動性等を踏まえ補外開始年度を30年目と設定しております。31年目以降のフォワード・レートは補外開始年度以降30年間で終局金利の水準に収束するようにSmith-Wilson法により補外しております。
計算に使用したリスク・フリー・レート(スポット・レート換算)の年限別数値は以下のとおりであります。
保有契約価値の計算に用いるリスク・フリー・レート
(データ:財務省 補正後)
新契約価値の計算に用いるリスク・フリー・レート
(データ:財務省 補正後)
金利モデルとして、日本円、米ドル、ユーロ、豪ドルを通貨とする確率論的αβρ-LIBOR マーケットモデルを構築しました。各金利変動の相関を考慮するとともに、日本円を基準通貨とするリスク中立アプローチに基づきモデルを調整しております。金利モデルは、評価日時点の市場にキャリブレートされており、パラメータはイールド・カーブと期間の異なる複数の金利スワップションのインプライド・ボラティリティから推計しております。オプションと保証の時間価値を算出するための確率論的手法では5,000シナリオを使用しております。これらのシナリオは保険数理に関する専門知識を有する第三者機関により生成されたものを使用しております。
シナリオのキャリブレーションに使用した金利スワップションのインプライド・ボラティリティ(抜粋)は以下のとおりであります。
金利スワップション
保有契約価値の計算に用いるインプライド・ボラティリティ
(データ:Bloomberg)
新契約価値の計算に用いるインプライド・ボラティリティ
(データ:Bloomberg)
主要な株式のインデックス及び通貨のボラティリティについては、市場で取引されているオプションのインプライド・ボラティリティのデータに基づいてキャリブレーションを行っております。シナリオのキャリブレーションに使用したインプライド・ボラティリティ(抜粋)は以下のとおりであります。なお、当社が実際に使用する国内株式インデックスは、主にTOPIXをベンチマークとした運用がなされていることを踏まえ、TOPIXの日経225に対するヒストリカル・ボラティリティ比(2024年6月30日:89.2%、2025年3月31日:88.1%)を下記の日経225のインプライド・ボラティリティに乗じて算出しております。
株式オプション
保有契約価値の計算に用いるインプライド・ボラティリティ
(データ:Markit 補正後)
新契約価値の計算に用いるインプライド・ボラティリティ
(データ:Markit 補正後)
通貨オプション
保有契約価値の計算に用いるインプライド・ボラティリティ
(データ:Bloomberg)
新契約価値の計算に用いるインプライド・ボラティリティ
(データ:Bloomberg)
前述のインプライド・ボラティリティに加え、相関係数を元に当社の資産構成を反映させたインプライド・ボラティリティを計算しております。
相関係数については、十分な流動性を有するエキゾチック・オプションに基づく市場整合的なデータが存在しておりません。このため、評価日時点の直近10年間の市場データから計算した値を使用しております。
主要な変数間の相関係数は以下のとおりであります。
保有契約価値の計算で使用
(データ:日本円金利は財務省、その他はBloomberg)
新契約価値の計算で使用
(データ:日本円金利は財務省、その他はBloomberg)
当社の評価日時点の資産構成の実態を考慮するとともに、将来の新規購入資産は、負債特性を踏まえた年限での運用を想定しております。
また、当社の外貨建資産の通貨別構成を踏まえ、すべての外貨建資産は米ドル建、ユーロ建及び豪ドル建から構成されるとみなしております。
「前事業年度末EEVからの変動要因」の期待収益(超過収益分)の計算に用いた主な資産の期待収益率(リスク・フリー・レート分と超過収益分の合計)は以下のとおりであります。
期待収益(超過収益分)の計算に用いる期待収益率は、前事業年度末における資産占率に上記の期待収益率を乗じることにより算出しております。会社全体における資産占率考慮後の期待収益率は、0.930%であります。
保険料、事業費、保険金・給付金、解約返戻金、税金等のキャッシュ・フローは、契約消滅までの期間にわたり、保険種類別に、直近までの経験値及び期待される将来の実績を勘案して(最良推計(ベスト・エスティメイト)による前提)予測しております。
b.消費税については、10%としております。
現行の配当実務に基づき、配当率の前提を設定しております。
なお、郵政管理・支援機構への再保険配当については、郵政管理・支援機構との再保険契約に基づく額を支払うこととしております。
直近の実効税率に基づき、以下の実効税率を用いております。
2024年度~2025年度:28.00%
2026年度以降:28.93%
当社は、郵政管理・支援機構との間で再保険契約を締結し、郵政民営化法により公社から郵政管理・支援機構に承継された、簡易生命保険契約に基づく郵政管理・支援機構の保険責任のすべてを受再しております。また、当該再保険契約に基づき、簡易生命保険契約及びそこから生じた利益を他の保険契約と区分して管理しており、過年度の実績の推移は下表のとおりであります。
下表における旧区分の数値は、上記に基づき算出した簡易生命保険契約に係るものであり、新区分の数値は、全体から旧区分の数値を差し引いたものであります。よって、下表は当社の内部管理上の数値であり、企業会計原則に則って作成される数値ではありません。
重要な契約等は、次のとおりであります。
当社は、親会社である日本郵政株式会社を含む、日本郵政グループ内各社と契約を締結しており、また、これらの契約に基づく取引が発生しております。なお、当社には保険業法が適用されることから、日本郵政グループ内各社との取引にあたっては、アームズ・レングス・ルール(保険会社は、親会社及びその子会社等の一定の関係者との間で、通常と著しく異なる条件での取引等を行ってはならないこととされており、この定めを「アームズ・レングス・ルール」といいます。)に基づき、日本郵政グループ内取引の必要性、取引条件の適正性等の観点からのチェックを実施しております。
日本郵政グループ共通の理念及び方針その他のグループ運営に係る基本的事項について定め、円滑な日本郵政グループの運営の実施に資することを目的とした協定であり、グループ商標等に係る商標権の取得・管理等を含む、日本郵政株式会社、日本郵便株式会社、株式会社ゆうちょ銀行及び当社の責務が定められております。
本協定の存続期間は、2015年4月1日から、株式会社ゆうちょ銀行又は当社のいずれかが、それぞれ日本郵便株式会社法第2条第2項に定める銀行窓口業務契約又は同条第3項に定める保険窓口業務契約を解除する日までとされております。また、株式会社ゆうちょ銀行又は当社が日本郵政株式会社の連結子会社でなくなった場合には、本協定について必要な見直しを行うものとされております。
日本郵政グループを統轄する日本郵政株式会社が行うグループ運営に関する基本的事項(当社から日本郵政株式会社に対して事前協議又は報告を行うこと等)について定めた契約であり、上記①a.日本郵政グループ協定に基づき締結されたものであります。本契約に基づいて締結したグループ運営のルールに関する覚書における主な事前協議事項は下記のとおりでありますが、当該事前協議は当社の意思決定を妨げる又は拘束するものではない旨が本契約で定められております。
(主な事前協議事項)
・ 株主総会の決議事項
・ 代表執行役及び役付執行役の選定又は解職
・ 執行役の選任又は解任
・ 経営理念及び経営方針等の策定又は変更
・ 中期経営計画の策定又は変更
・ 年度事業計画(資金調達及び運用計画を含む。)の策定又は変更
・ 子会社の新設
・ 重要な株式の取得及び処分(運用目的の場合を除く。)の決定
・ 重要な業務提携等の決定
・ 重要な資産(不動産、株式、運用目的の債権等の資産を除く。)の取得、処分の決定
・ 重要な投資又は融資の決定
・ 資本戦略の決定
なお、「3 事業等のリスク (3) 各リスク項目 Ⅰ 経営戦略 (1) 事業戦略・経営計画に関するリスク」に記載の募集品質問題の発生を受け、グループ会社間の連携及びガバナンス態勢の強化等を図る観点から、上記覚書において、営業(業務)に関する目標・指標の制定又は改廃、年度営業(業務)方針・計画の策定又は改廃に関する報告事項(事前報告)を規定するとともに、内部監査、コンプライアンス、オペレーショナルリスクの各領域において、当社と日本郵政株式会社との間で協議・調整を行う会議体を設置すること等を明文化しております。
本契約の存続期間は、2015年4月1日から、株式会社ゆうちょ銀行又は当社のいずれかが、それぞれ日本郵便株式会社法第2条第2項に定める銀行窓口業務契約又は同条第3項に定める保険窓口業務契約を解除する日までとされております。また、株式会社ゆうちょ銀行又は当社が日本郵政株式会社の連結子会社でなくなった場合には、本契約について必要な見直しを行うものとされております。
また、本契約に基づき、当社は日本郵政株式会社に対して、「かんぽ」等を含むグループ商標の使用許諾の対価等として、ブランド価値使用料を支払うものとされております。ブランド価値使用料の算定方法は、重大な経済情勢の変化等、特段の事情が生じない限り、変更しないものとしており、日本郵政株式会社の当社株式の保有割合に直接影響されるものではありません。なお、2025年3月期の当社から日本郵政株式会社に支払ったブランド価値使用料は、19億円であります。
2012年の郵政民営化法の改正に伴い、日本郵便株式会社に保険のユニバーサルサービス義務が課されました。本契約は、日本郵便株式会社が果たすべきユニバーサルサービス義務のうち、「簡易に利用できる生命保険の役務を利用者本位の簡便な方法により、あまねく全国において公平に利用できるようにする」との責務を果たすため締結した契約であります。本契約においては、日本郵便株式会社にユニバーサルサービス義務が課される終身保険及び養老保険について、保険募集、満期保険金及び生存保険金の支払請求の受理について、日本郵便株式会社が保険窓口業務を提供することが定められております。
本契約は、期間の定めのない契約であり、本契約に定める特段の事情がない限り、日本郵便株式会社又は当社から一方的に解除することはできないものとされております。また、当社の定款上、本契約を日本郵便株式会社との間で締結することが定められております(本契約に関し、当社グループに生じうるリスクについては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。)。
なお、当社は日本郵便株式会社に対して各種の委託手数料を支払っていますが、ユニバーサルサービス義務が課された業務に対し、同義務が課されていることによる追加的な手数料は支払っておりません。当該手数料の詳細については、下記の「(参考) 日本郵便株式会社に支払う委託手数料」に記載のとおりであります。
上記a.の保険窓口業務契約で定めたユニバーサルサービス義務が課された業務を含め、当社を保険者とする生命保険契約の募集及び維持・管理等に関する業務、具体的には保険契約の締結の媒介、保険料等の受領、保険金等の支払等に関する業務を、日本郵便株式会社に委託する契約であります。
なお、本契約に基づき募集を委託する保険商品は当社の全商品としておりますが、当社は通知により、委託する商品を追加、変更又は削除することが可能であります。本書提出日現在においては、当社はかかる通知を行っておりません。
本契約において当社は、日本郵便株式会社が行う業務の対価として、当社が別途定める代理店手数料規程に基づき手数料を支払う旨が定められております。本契約は期限の定めのない契約であり、6カ月前の書面による通知により解除について協議を申し入れた上で、解除することが可能であります。また、本契約に定める特段の事由が存在する場合、当社は事前協議及び書面による通知なしに本契約を解除することが可能であります。なお、保険窓口業務に該当する業務については、保険窓口業務契約に定めがある場合を除くほか、生命保険募集・契約維持管理業務委託契約の定めるところによるものとしております。
当社が郵政管理・支援機構から受託した簡易生命保険管理業務の一部(簡易生命保険契約に係る保険料等の受領、保険金等の支払等)について、日本郵便株式会社に再委託する契約であります。本契約において当社は、日本郵便株式会社が行う業務の対価として、当社が別途定める代理店手数料規程に基づき手数料を支払う旨が定められております。本契約は期限の定めのない契約であり、日本郵便株式会社又は当社のいずれか一方から、6カ月前までに、事業運営上の合理的な理由により本契約を解約する旨の意思表示が書面によりなされた場合には、解約することが可能であります。また、郵政管理・支援機構と当社との間の簡易生命保険管理業務委託契約が解除された場合等、本契約に定める特段の事由が存在する場合、当社は予告なしに本契約を解除することが可能であります。
当社を保険者とする生命保険契約の募集を行う簡易郵便局に対する指導・教育等について、日本郵便株式会社に委託する契約であります。本契約において当社は、日本郵便株式会社が行う業務の対価として、当社が別に定める総括代理店手数料規程に基づき総括代理店手数料を支払う旨が定められております。
本契約の有効期間は契約締結日から1年間(1年ごとの自動更新条項付)とされており、日本郵便株式会社又は当社のいずれか一方から、6カ月前までに、事業運営上の合理的な理由により本契約を解約する旨の書面での意思表示がなされた場合には、解約することが可能であります。また、生命保険募集・契約維持管理業務委託契約が解除された場合には、当社は文書による予告なしに本契約を解除することが可能であります。
株式会社ゆうちょ銀行が所有し、郵便局の窓口に設置している窓口端末機等を、当社並びに当社の業務を委託している日本郵便株式会社、当社の連結子会社であるかんぽシステムソリューションズ株式会社が当社業務の実施を目的として使用することについて、株式会社ゆうちょ銀行が当社に許諾すること等を定めた契約であります。本契約において当社は、株式会社ゆうちょ銀行に対して、株式会社ゆうちょ銀行が毎年度通知する機器使用料を支払うものとされております。本契約の有効期間は契約締結日から1年間(1年ごとの自動更新条項付)とされております。
なお、本契約は、株式会社ゆうちょ銀行が所有し、郵便局の窓口に設置している紙幣硬貨入出金機を、日本郵便株式会社が郵便及び物販窓口業務の実施を目的として使用することについて、株式会社ゆうちょ銀行が日本郵便株式会社に許諾することについても定めた契約となっているため、3社での契約となっております。
郵政管理・支援機構が公社から承継した簡易生命保険管理業務のうち、簡易生命保険契約の維持・管理、保険料の収納、保険金の支払い、資産運用等の業務を当社が郵政管理・支援機構から受託する契約であります。本契約において郵政管理・支援機構は、下記②の再保険契約が有効である間については、委託業務に関する手数料は支払わないものとされております。本契約は期限の定めのない契約であり、再保険契約の終了に伴い終了する旨が定められております。また、当社が破産の申立てを行った場合等、本契約に定める特段の事由が発生した場合には、郵政管理・支援機構は、予告なく本契約を解除することが可能であります。なお、本契約の変更・解除は、郵政管理・支援機構が総務大臣の認可を受けなければ効力を生じないとされております。
郵政管理・支援機構が公社から承継した簡易生命保険契約について、郵政管理・支援機構が負う保険責任のすべてを当社が受再する契約であります。郵政管理・支援機構は、簡易生命保険契約の保険料のすべてを再保険料として当社に払い込むこととされております。また、本契約において当社は、毎事業年度末において、再保険損益の8割と公社解散時において確定している簡易生命保険契約の契約者配当の分配のために必要な額の合計額を、再保険配当として契約者配当準備金に繰り入れることとしております。再保険配当の計算方法の変更の必要性については、毎事業年度、郵政管理・支援機構と当社間で協議することとされておりますが、本契約締結以降、当該計算方法が変更されたことはなく、本書提出日時点において変更の予定もありません。
本契約は期限の定めのない契約であり、郵政管理・支援機構は、6カ月前の書面による通知により解除について協議を申し入れた上で、解除することが可能であります。また、本契約に定める特段の事由が存在する場合、郵政管理・支援機構は直ちに本契約を解除することが可能であります。なお、本契約の変更・解除は、郵政管理・支援機構が総務大臣の認可を受けなければ効力を生じないとされております。
郵政管理・支援機構が公社から承継した簡易生命保険契約の契約者に対する貸付金及び地方公共団体等に対する貸付金の総額に相当する額について、公社が相手方と約定した貸付条件と同一の条件で、当社が郵政管理・支援機構に対し貸付けをする契約であります。
該当事項はありません。