第2 【事業の状況】

 

1 【事業等のリスク】

当第3四半期連結累計期間において、下記「(1) 潜在株式の行使による当社株式価値の希薄化について」の他に、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについての重要な変更があった事項はありません。
 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)潜在株式の行使による当社株式価値の希薄化について

当社は、当社取締役、監査役、従業員および社外協力者等の業績向上に対する意欲や士気を高め、また優秀な人材を確保する観点から、ストック・オプション制度を導入しており、会社法に基づき、株主総会の決議において承認を受け、新株予約権を取締役、監査役、従業員及び社外協力者等に対して付与しております。
 また、当社は、資金調達を目的として、会社法に基づく新株予約権を発行しております。
 当第3四半期連結会計期間末現在における当社の発行済株式総数は34,988,400株ですが、これに対して、当第3四半期連結会計期間末に残存している新株予約権が将来行使された場合の新株(以下「潜在株式」といいます。)発行予定株数の合計は3,724,700株と、発行済株式総数の10.65%であります。
 今後についても優秀な人材確保のために、同様のインセンティブプランを継続して実施する可能性があります。また、新株予約権を活用した資金調達を実施する可能性もあります。
 このため、既に付与された、もしくは今後付与される当該新株予約権の行使が行われた場合には、当社の1株あたりの株式価値は希薄化する可能性があります。

 

2 【経営上の重要な契約等】

当第3四半期連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。

 

3 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間末日現在において、当社が判断したものであります。

なお、当社は、当第3四半期連結会計期間から四半期連結財務諸表を作成しているため、前年同四半期連結累計期間及び前連結会計年度末との比較分析は行っておりません。

 

(1)業績の状況

当第3四半期連結累計期間において、当社は、リード開発品であるITK-1の第Ⅲ相臨床試験の推進、及び米国で研究開発中のグローバル向けがんペプチドワクチンGRN-1201の第Ⅰ相臨床試験を推進いたしました。また、今後の更なる成長を目指した新たな取り組みとして、iPS技術を利用したT細胞療法(T-iPS療法)と、ネオアンチゲン(遺伝子変異抗原)ペプチドワクチンの研究開発を開始いたしました。

 

①ITK-1 (薬剤選択型前立腺がんペプチドワクチン)

平成25年6月以降、ライセンス・アウト先の富士フイルム株式会社とともに、去勢抵抗性前立腺がん患者を対象とする第Ⅲ相臨床試験を実施しております。平成27年6月に行われた中間解析を経て、最終解析における主要評価項目達成の見込みが一定以上あることが示され治験継続となりました。当第3四半期連結累計期間におきましては、平成28年4月に症例登録が完了し、現在経過観察を行っております。今後は一定の観察期間を経て第Ⅲ相臨床試験を終了する予定であり、引き続き安全性に十分留意し本試験を実施してまいります。

 

②GRN-1201 (グローバル向けがんペプチドワクチン)

第Ⅲ相臨床試験まで進んでいるITK-1の知見を活かし、米国でのライセンス・アウトを目指すGRN-1201については、平成27年10月に米国食品医療品局(FDA:Food and Drug Administration)へ治験申請(IND)を行い、同年11月に審査が完了したことにより、米国で第Ⅰ相臨床試験を開始しております。現在、第一適応としてメラノーマ(悪性黒色腫)患者を対象としておりますが、日進月歩の進展を見せるがん免疫治療薬開発において、適応拡大をはじめとした付加価値向上を実現するための施策の検討を引き続き継続してまいります。

 

③GRN-1301(ネオアンチゲン-遺伝子変異抗原ペプチドワクチン)

平成28年12月9日に公表いたしました通り、地方独立行政法人 神奈川県立病院機構が有する特許「上皮成長因子受容体(EGFR)※1のT790M点突然変異※2に由来する抗原ペプチド」の譲渡を受け、非小細胞肺がん※3を適応症とするネオアンチゲン※4(Neoantigen: 遺伝子変異抗原)ペプチドワクチンの開発を開始いたしました。
 肺がんは、米国では約22万人、日本では約13万人が罹患すると報告されています。その内一部の患者は、治療の過程で既存の治療薬であるEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)に対し耐性を生じている状態でした。しかし、これらの患者の約6割にEGFR-T790M点突然変異という遺伝子変異が生じていることが分かっており、当社は、このEGFR-TKI耐性遺伝子変異を抗原とするペプチドワクチンの開発を開始いたしました。

 

④T-iPS(iPS細胞由来T細胞療法)

平成28年12月1日に公表いたしました通り、株式会社アドバンスト・イミュノセラピーの子会社化に伴い、中内啓光東京大学医科学研究所教授兼スタンフォード大学教授等が開発した技術を利用するiPS細胞由来T細胞療法に関する研究開発を開始いたしました。同社は、iPS技術を用いてT細胞を再生させる(若返らせる)ことにより、がん免疫療法においてこれまで課題とされてきたがん細胞を攻撃するT細胞の疲弊と、様々な過程で起こりうる副作用を回避する独自の技術を保有しております。
 当初はコンセプトを示しやすいウイルス性血液がんの一種であるEBウイルス※5性リンパ腫を適応症といたしますが、将来的には固形がんを含む需要の大きい適応症への展開を見込んでおります。

 

この結果、当第3四半期連結累計期間におきましては、売上高は431,430千円、営業損失は699,210千円、経常損失は711,892千円、親会社株主に帰属する四半期純損失は712,882千円となりました。
 なお、当社は単一事業であり、セグメントは「医薬品開発事業」でありますので、セグメントごとの記載はしておりません。 

また、当社は今後の企業価値の向上に必要となる新規パイプラインの研究開発等にかかる資金調達を目的に、平成28年6月9日付でメリルリンチ日本証券株式会社を割当先とする行使価額修正条項付き第9回新株予約権を発行しており、当第3四半期末現在における行使の進捗率は58.8%となっています。

 

<語句説明>

※1「上皮成長因子受容体」:(EGFR:Epidermal Growth Factor Receptor)細胞の増殖や成長を制御する上皮成長因子 (Epidermal Growth Factor) と結合し、シグナル伝達を行う受容体(Receptor)。この受容体が活性化されると細胞の分化・増殖が起こる。またEGFRは多くの細胞に見られ、変異が起こることでがん化や浸潤・転移に関わるようになる。

 

※2「T790M点突然変異」:EGFRの790番目のアミノ酸がスレオニンからメチオニンへの変異することを指す。この変異はタルセバやイレッサ等、既存のチロシンキナーゼ阻害剤に対する薬剤耐性を示すとされている。

 

※3「非小細胞肺がん」:(NSCLC:Non-small cell lung cancer)肺がんは、大きく「小細胞肺がん」と「非小細胞肺がん」の2種類に分けられる。「非小細胞肺がん」は「小細胞肺がん」に比べ比較的進行が穏やかである一方、化学療法と放射線療法の効果が現れにくいという特徴を有する。日本人においては、肺がん患者の8割以上がこの「非小細胞肺がん」に分類される。「非小細胞肺がん」は更に「腺がん」、「扁平上皮がん」、「大細胞がん」などに分類される。

 

※4「ネオアンチゲン」:(Neoantigen) がん細胞に独自の遺伝子異常が起きた際に生じる、遺伝子変異(アミノ酸変異)を含む抗原のこと。個々の患者のがん細胞に生じた独自の遺伝子変異によって発現されるようになったがん特異的な抗原で、正常な細胞には存在しない。免疫系から「非自己」として認識されるネオアンチゲンを標的とすることで、がん細胞を殺傷する免疫を効率よく誘導できるようになることが期待されている。がんワクチンの抗原として使われるのみならず、免疫チェックポイント抗体が有効な患者を選別するためのバイオマーカーとしての使用、またこちらも近年台頭してきているT細胞療法(CAR-T:キメラ抗原遺伝子導入T細胞療法、TCR-T:養子T細胞受容体遺伝子組換T細胞療法、そしてT-iPS:iPS化再生T細胞)の精度の高い標的として使用されることも期待されている。
なお、ネオアンチゲンには、腫瘍特異的な遺伝子変異抗原ばかりでなく、リン酸化、糖鎖修飾、メチル化などの翻訳後修飾による抗原も含まれる。

 

※5「EBウイルス」:エプスタイン・バール・ウイルス。EB ウイルスはヘルペスウイルスに属し、ほとんどの人が感染しており、その一部がヒトに腫瘍を発生させる。1964 年にEpsteinとBarrによって発見されたヒトの腫瘍から見つかった最初のウイルス。

 

(2)財政状態の分析

当第3四半期連結会計期間末における総資産は4,501,469千円となりました。主な内訳は現金及び預金が4,009,628千円、売掛金が66,165千円、有形固定資産が107,850千円、投資その他の資産が39,430千円であります。

負債は193,436千円となりました。主な内訳は買掛金が26,493千円、未払法人税等が12,683千円、退職給付にかかる負債が24,805千円、資産除去債務が16,533千円であります。

純資産は4,308,033千円となりました。主な内訳は資本金が3,119,628千円、資本準備金が3,103,213千円、利益剰余金が△1,951,975千円であります。

以上の結果、自己資本比率は94.9%となりました。

 

(3)事業上及び財務上の対処すべき課題

当第3四半期連結累計期間において、当社が対処すべき課題について重要な変更はありません。

 

(4)研究開発活動

当第3四半期連結累計期間の研究開発費の総額は、492,467千円であります。

なお当社は、当第3四半期連結累計期間において、ネオアンチゲン並びにiPS細胞由来T細胞療法にかかる新規パイプラインの研究開発を開始いたしました。(詳細につきましては、第2(事業の状況)、3(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)、(1)業績の状況に記載しております。)

当社は、今後におきましてもがん免疫療法のより広い領域(創薬モダリティー)へと事業基盤を拡大し、当社独自の統合的なアプローチを図ってまいります。

 

(5)主要な設備

当社がかねてより新研究拠点として立ち上げを進めてまいりました川崎市殿町地区のライフイノベーションセンターにおいて、平成28年8月にその開所式が執り行われるとともに、当社研究所「川崎創薬研究所」も本格的に稼働を開始しております。

 

(6)従業員

当第3四半期連結累計期間において、業容の拡大に伴い積極的に人員採用を行った結果、当第3四半期連結会計期間末の当社グループの人員数は32名となりました。

なお、当社は単一事業であり、セグメントは「医薬品開発事業」でありますので、セグメントごとの記載はしておりません。