文中の将来に関する事項は、当四半期連結会計期間末日現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営成績の状況
当第2四半期連結累計期間において、当社グループは、ITK-1の第Ⅲ相臨床試験の開鍵(キーオープン)の実施、米国で研究開発中のグローバル向けがんペプチドワクチンGRN-1201のメラノーマ(悪性黒色腫)対象の第Ⅰ相臨床試験及び非小細胞肺がん※1対象の第Ⅱ相臨床試験を推進いたしました。また、今後の更なる成長を目指した取り組みとして、iPS技術を利用したNKT細胞※2療法(iPS-NKT)と、ネオアンチゲン※3(遺伝子変異抗原)をターゲットとする薬剤の研究開発を推進いたしました。その他にも、新規抗体のパイプライン化を目指した研究、新規シーズの探索及び各種研究機関との共同研究の推進など、創薬パイプラインの拡充を図りました。
平成25年6月より日本国内において進行性の去勢抵抗性前立腺がんを対象とするプラセボ対照第Ⅲ相二重盲検比較試験を実施しておりましたが、平成30年5月の開鍵(キーオープン)の結果、主要評価項目を達成することが出来ませんでした。今後は、導出先の富士フイルム株式会社の決定を踏まえて検討してまいります。
米国でのライセンス・アウトを目指すGRN-1201については、第1適応をメラノーマ(悪性黒色腫)として、米国FDA(米国食品医薬品局)へ平成27年10月に治験申請(IND)を行い、現在米国での第Ⅰ相臨床試験を実施中です。また、平成29年1月から、非小細胞肺がんへ適応拡大し、現在米国で免疫チェックポイント阻害剤との併用による第Ⅱ相臨床試験を進めております。
免疫チェックポイント阻害剤は、がん治療の歴史に大きな変革をもたらし、様々ながん種で治療効果を示しましたが、単剤ではその奏効率は20-30%と言われております。当社はT細胞の抗腫瘍効果を加速させるがんペプチドワクチンの開発に長年の経験を有しており、がん細胞を殺傷する免疫への抑制状態を解除する免疫チェックポイント阻害剤との相乗効果を狙った創薬コンセプトのもと、グローバルに注目を集める複合的がん免疫療法の一つとして臨床開発を進めております。
平成28年12月に、地方独立行政法人 神奈川県立病院機構が有する特許「上皮成長因子受容体※4(EGFR)のT790M点突然変異※5に由来する抗原ペプチド」の譲渡を受け、現在非小細胞肺がんを適応症とするネオアンチゲン(遺伝子変異抗原)ペプチドワクチンの研究を進めております。
肺がんは、米国では約23万人、日本では約13万人が罹患すると報告されています。その内一部の患者は、治療の過程で既存の治療薬であるEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)に対し耐性を生じている状態でした。しかし、これらの患者の約6割にEGFR-T790M点突然変異という遺伝子変異が生じていることが分かっており、当社は、このEGFR-TKI耐性遺伝子変異を抗原とするペプチドワクチンの研究を進めております。
iPS-NKTは、NKT細胞由来iPS細胞から再分化誘導したNKT細胞を用いる新規他家がん免疫療法です。がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用を持ちますが、体内には微量にしか存在しない免疫細胞であるNKT細胞を、iPS細胞の高い増殖性を活かしてがん免疫療法へ応用することを試みるものです。
当社は、平成30年3月に、国立研究開発法人理化学研究所統合生命医科学研究センターが中心となって進める細胞医薬の技術開発と臨床応用に向けたプロジェクトに参画いたしました。本プロジェクトは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)再生医療実現拠点ネットワークプログラム疾患・組織別実用化研究拠点(拠点B)に採択された「NKT細胞再生によるがん免疫治療技術開発拠点」プロジェクト及び理研創薬・医療技術基盤プログラムのプロジェクトとして進められています。当該プロジェクトの一環で第三者医療機関が行う頭頸部がんを対象とした医師主導治験が平成31年度中をめどに開始される計画となっております。当社は、理化学研究所からiPS-NKT細胞療法の独占的開発製造販売ライセンスのオプション権を取得しており、世界でも初となるiPS-NKT細胞療法の臨床応用実現にむけ、本医師主導治験を全面的に後押しいたします。
また、導入プロジェクト及び共同研究プロジェクトとして、新規パイプラインの創製に繋げるためのシーズ探索や、国立大学法人東京大学、地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター、国立大学法人三重大学など、各種研究機関との共同研究の推進と、国内外でのパートナリングイベントへの参加による提携先企業の開拓などに積極的に取り組みました。また、PD-1等の免疫チェックポイント抗体よりも新しい世代の抗体医薬として創製中のシーズにつきましては、川崎創薬研究所での研究を加速し、早期に当社パイプラインとしてリストアップすることを目指しております。
この結果、当第2四半期連結累計期間における売上高につきましては、抗体測定系構築の受託業務収入として16,540千円をブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社から得ました。またITK-1の第Ⅲ相臨床試験にかかる業務の終了に伴うマイルストン収入100,000千円を富士フイルム株式会社から得た一方で治験受託業務量が第Ⅲ相臨床試験の終了により前年同期と比較して減少したため、売上高は142,435千円(前年同期比40,247千円減、22.0%減)となりました。
当第2四半期連結累計期間における営業損失につきましては、研究開発を推進したことなどにより826,092千円(前年同期の営業損失は685,920千円)となりました。
当第2四半期連結累計期間における親会社株主に帰属する四半期純損失は「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、192,671千円を減損損失として特別損失に計上したことにより1,017,343千円(前年同期の親会社株主に帰属する四半期純損失は687,332千円)となりました。
なお、当社グループは単一事業であり、セグメントは「医薬品開発事業」でありますので、セグメントごとの記載はしておりません。
※1「非小細胞肺がん」:(NSCLC:Non-small cell lung cancer)肺がんは、大きく「小細胞肺がん」と「非小細胞肺がん」の2種類に分けられる。「非小細胞肺がん」は「小細胞肺がん」に比べ比較的進行が穏やかである一方、化学療法と放射線療法の効果が現れにくいという特徴を有する。日本人においては、肺がん患者の8割以上がこの「非小細胞肺がん」に分類される。「非小細胞肺がん」は更に「腺がん」、「扁平上皮がん」、「大細胞がん」などに分類される。
※2「NKT細胞」:(NKT:Natural Killer T細胞) NKT細胞は、がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に、他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもつ免疫細胞。活性化すると、多様なサイトカインを産生し、自然免疫系に属するNK細胞の活性化と樹状細胞の成熟化を促す。成熟した樹状細胞は、更に獲得免疫系に属するキラーT細胞を増殖・活性化させることで、相乗的に抗腫瘍効果が高まる。また、自然免疫系を同時に活性化させることで、T細胞では殺傷できないMHC陰性のがん細胞に対しても殺傷能を持つ。
※3「ネオアンチゲン」:(Neoantigen) がん細胞に独自の遺伝子異常が起きた際に生じる、遺伝子変異(アミノ酸変異)を含む抗原のこと。個々の患者のがん細胞に生じた独自の遺伝子変異によって発現されるようになったがん特異的な抗原で、正常な細胞には存在しない。免疫系から「非自己」として認識されるネオアンチゲンを標的とすることで、がん細胞を殺傷する免疫を効率よく誘導できるようになることが期待されている。がんワクチンの抗原として使われるのみならず、免疫チェックポイント抗体が有効な患者を選別するためのバイオマーカーとしての使用、またこちらも近年台頭してきているT細胞療法(CAR-T:キメラ抗原遺伝子導入T細胞療法、TCR-T:養子T細胞受容体遺伝子組換T細胞療法)の精度の高い標的として使用されることも期待されている。
なお、ネオアンチゲンには、腫瘍特異的な遺伝子変異抗原ばかりでなく、リン酸化、糖鎖修飾、メチル化などの翻訳後修飾による抗原も含まれる。
※4「上皮成長因子受容体」:(EGFR:Epidermal Growth Factor Receptor)細胞の増殖や成長を制御する上皮成長因子 (Epidermal Growth Factor) と結合し、シグナル伝達を行う受容体(Receptor)。この受容体が活性化されると細胞の分化・増殖が起こる。またEGFRは多くの細胞に見られ、変異が起こることでがん化や浸潤・転移に関わるようになる。
※5「T790M点突然変異」:EGFRの790番目のアミノ酸がスレオニンからメチオニンへの変異することを指す。この変異はタルセバやイレッサ等、既存のチロシンキナーゼ阻害剤に対する薬剤耐性を示すとされている。
(2)財政状態の状況
(資産)
当第2四半期連結会計期間末における総資産は前連結会計年度末より1,072,736千円減少し、6,163,166千円となりました。これは、現金及び預金が研究開発等に関連する支出により905,714千円減少したこと、ITK-1第Ⅲ相臨床試験の終了により治験受託関連業務に関する売掛金が65,861千円減少したこと、各種研究機関との共同研究の推進により前払費用が69,005千円増加したこと、固定資産につきまして事業・研究開発用資産を減損したことに伴い174,841千円減少したことが主な要因であります。
(負債)
負債は前連結会計年度末より62,624千円減少し、222,708千円となりました。これは、富士フイルム株式会社から収受したマイルストン収入に対する久留米大学への包括的業務契約に基づくロイヤリティ支払が発生していることにより買掛金が19,998千円増加したこと、前連結会計年度末と比べて研究開発機器の取得が減少したことにより未払金が80,939千円減少したことが主な要因であります。
(純資産)
純資産は前連結会計年度末より1,010,111千円減少し、5,940,458千円となりました。これは、親会社株主に帰属する四半期純損失1,017,343千円を計上したことが主な要因であります。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末の95.3%を維持しております。
(3)キャッシュ・フローの状況
当第2四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末より905,714千円減少し、5,623,045千円となりました。
当第2四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は760,621千円となりました。これは主に税金等調整前四半期純損失1,015,067千円を計上したこと及び減損損失192,671千円を計上したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は140,393千円となりました。これは主に研究開発機器等の有形固定資産の取得による支出139,496千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は4,700千円となりました。これは、新株予約権の発行による収入2,500千円及び連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出7,200千円によるものであります。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当第2四半期連結累計期間において、当社グループが対処すべき課題について重要な変更はありません。
(5)研究開発活動
当第2四半期連結累計期間における研究開発費の総額は、689,183千円であります。
平成25年6月より日本国内において進行性の去勢抵抗性前立腺がんを対象とするプラセボ対照第Ⅲ相二重盲検比較試験を実施してまいりましたITK-1につきましては、平成30年5月の開鍵(キーオープン)の結果、主要評価項目を達成できませんでした。今後は、導出先の富士フイルム株式会社の決定を踏まえて検討してまいります。
また、当第2四半期において、当社グループの最初の細胞医薬品開発プロジェクトであるiPS-Tは、近年の世界的T細胞医薬品の存在感の高まりを受けた細胞医薬ポートフォリオの強化・見直しに伴い、共同研究によるプロジェクトの開発中止を決定いたしました。