文中の将来に関する事項は、本書提出日時点において当社が判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
当社は、「私たちは、がん免疫治療分野の最先端を切り拓くことにより、一人ひとりが自らの力でがんを克服する世界を実現します。」を経営理念として、新規がん免疫治療薬を創製することによって、現在進行しているがん治療革新の一翼を担いたいと考えております。
これを実現するために、当社は①開発領域をがん免疫治療薬に特化し、②シーズ導入・創製において国内外のアカデミアやベンチャー企業と広く連携するオープンイノベーションを進めながら、③ライセンスアウト型事業モデルによる好循環で持続可能な開発および企業成長を目指してまいります。
① がん免疫治療薬にフォーカスするのは、がん免疫に働きかけてがんを排除するという創薬コンセプトの有効性が免疫チェックポイント阻害抗体を中心に証明されており、がん免疫を増強するメカニズムを様々な方法(=がん免疫治療薬)で亢進させることにより、従来の治療法では治療効果を得られなかったアンメットメディカルニーズを満たすことができるフロンティアがまだまだ大きく拡がっているからです。それは、当社が創業以来取り組んで来た経験とノウハウの蓄積がある領域であり、世界の医薬品市場の成長を他のどの医薬品カテゴリーよりも牽引している領域でもあります。
② オープンイノベーションを進めるのは、今や日進月歩でサイエンスが更新されていくがん免疫療法の領域において、最先端のサイエンスへのアクセスを可能にするためです。がん免疫治療のフロンティアには、アンメットメディカルニーズを満たすためのサイエンスがまだ数多く存在しています。創薬ベンチャーとして創薬を好循環で進めるために、当社は③ライセンスアウト型の事業モデルを採っています。知的財産を導出することによって収益化を図るモデルで、その知的財産は、最先端のサイエンスが織り込まれていないと成立しません。
③ ライセンスアウト型の事業モデル(シーズの創製や創薬コンセプト証明に集中し、大掛かりな組織体制を必要とする後期臨床試験以降は、製造販売網を有する製薬企業にライセンスアウトして早期収益化を図る事業モデル)を採るのは、創薬ベンチャーとしてがん免疫治療薬開発を持続して行えるようにするためです。一つひとつの新規医薬品候補物質の研究開発は、シーズの創製から規制当局の承認を得て医薬品として製造販売に至るまで、薬事規制等に則って探索的研究から第三相臨床試験まで段階を踏みながら進められ、全体として長期間におよぶとともに多額の資金を必要とします。よって財務負担が蓄積し経営の機動性を喪失する前に早期収益化を図ります。
(2) 目標とする経営指標
当社では、ライセンスアウト時の契約一時金と、その後の継続的なマイルストン報酬(マイルストン収入、販売ロイヤリティなど)を収益とするビジネスモデルを採っているため、製薬企業へのライセンスアウト(タイミングとライセンス取引額)、原則としてライセンスアウト成立の前提となる、創薬コンセプトを証明する非臨床試験または臨床試験成績の取得、そこに至るまでの開発イベント(例えば、当局による治験開始申請の受理)を重要な経営イベントとなります。
持続可能な企業成長と企業価値の向上を目指して、また大きな期待を背景に技術革新も著しいがん免疫治療薬分野における事業機会を逃さないために、開発ポートフォリオの更新を重視しており、既存のパイプラインの開発推進や新規パイプラインの自社創製のみならず、新規パイプラインの導入やオープンイノベーションに基づく共同創出も積極的に進めてまいります。
なお、研究開発型の創薬ベンチャーは、研究開発投資からライセンスアウトによる収益化までの長期間に及ぶ事業サイクルが、開発パイプライン複数個によって資産(企業価値を構成するソフトな資産)構成されるため、売上高や当期純損益や、ROE、ROAといった年単位で見る指標は、適切な経営指標となりにくいと考えております。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社は、今日まで研究開発活動の多くをがんペプチドワクチンの開発に費やして来ましたが、その間の外部環境として、世界でがん免疫治療薬領域で大きく開発に成功したのは免疫チェックポイント阻害抗体でした。がんは遺伝子異常により発生・増殖しますが、遺伝子変異が多い、すなわちT細胞の攻撃の目印として認識する抗原が多いほど同抗体の治療効果が高いことから、免疫サイクル(免疫機構によりがん細胞が認識され殺傷されるまでの一連の流れ)を補強・再構築するがん免疫治療の基本コンセプトも実証されてきました。がんワクチンは、この免疫サイクルの言わばスタートに必要な抗原(T細胞ががん細胞を認識するときの目印)が不足しているがん患者に、人工的に作った抗原を体外から追加する療法ですが、現在世界ではこの免疫サイクルのボトルネックを解消する手段として、がんワクチンに限らず、PD-1抗体を含む様々な免疫チェックポイント阻害抗体や、CAR-Tを始めとする細胞医薬といった多様なモダリティ(医薬品形態)のがん免疫治療薬の開発が進められています。
当社は、がんペプチドワクチンと免疫チェックポイント阻害抗体を併用することにより、免疫サイクルにおける2つのステップが滞るのを同時に解消することを目指す複合的がん免疫療法の臨床試験を進めるとともに(GRN-1201)、これまでのがんワクチンとは異なるステップに働きかける細胞医薬(iPS細胞由来再生NKT細胞療法)や抗体(複数の免疫調整因子抗体)にモダリティを拡げており、さらにがんワクチンについては、進化型のネオアンチゲン標的完全個別化ネオアンチゲンワクチンの開発に取り組んでおります。この免疫サイクルの好循環を生み出すために有効なモダリティの開発を手掛けて行くこと、中長期的には、一つひとつ独立したものでなく統合的に用いて相乗効果を引き出すアプローチを志向していくことが、当社の開発ポートフォリオ戦略です。
(4) 会社の対処すべき課題
今後もライセンスアウトの動向及び財務状況を鑑みながら研究開発を積極的に推進又は新規投資・導入を行い、企業価値の向上を図っていくために、研究開発活動の質及びその研究開発活動を支える企業活動の基盤としての経営の質を向上させる必要があると認識しております。当社が対処すべき事項として認識している事項は、以下のとおりです。
① 競争力のあるパイプラインのポートフォリオ構築
当社は創業以来がんペプチドワクチンを中心にパイプラインを構成してきましたが、近年がん治療の新時代を築き、当社が開発領域として焦点を定めているがん免疫治療薬の形態(モダリティ)も多様化へ向かい、治療効果が証明され後続が列をなす抗体(免疫チェックポイント阻害抗体)や細胞(CAR-T)では承認薬も出て、15年前の創業時から様変わりしております。
当社も、3年前から免疫調整因子抗体と細胞医薬を開発領域に加えており、さらにがんペプチドワクチン自体も、多数のがん患者に共有される共通抗原(がんの目印)を標的とするITK-1から、共通抗原と免疫チェックポイント阻害抗体を組み合わせる複合的がん免疫療法を志向するGRN-1201へ、さらに、患者ごとにほぼ完全に異なる遺伝子変異抗原を標的として個別にジャスト・イン・タイム製造するネオアンチゲンワクチンへと展開しております。
当社は現時点では新薬候補を後期臨床試験に至る前に製薬企業にライセンスアウトする事業モデルを採っており、ライセンスを成功させるためには当該新薬候補がその時点でサイエンスの面で陳腐化していてはならず、さらにがん免疫療法は全医薬品業界の成長を牽引する領域であるからこそ日進月歩でサイエンスが進んでいるため、当社は常に同分野全体のサイエンスが向かう方向性と進捗を見ながら、各パイプラインの開発ステージを探索から非臨床試験、そして臨床試験へと一定期間内に上げて行くとともに、必要に応じてパイプラインの入れ替えを図っていく必要があります。
当社が関わるがん免疫療法は、医薬品業界の成長を牽引するとともにサイエンスが日進月歩で進展する領域であるため、社内に専門性の高い研究員と充実した研究施設を有することが不可欠で、現在も研究施設として川崎創薬研究所を構えておりますが、常にこれを向上させていく必要があります。
さらに、研究開発体制を社内に留めることなく社外にもオープンイノベーションの機会を積極的に求めて行くことが、この領域の最先端のサイエンスの情報収集のみならずパイプラインの充実と迅速なアップデートのためにも不可欠で、現在も国立がん研究センター、東京大学、三重大学、神奈川県立がんセンター、理化学研究所など本邦を代表する研究機関との共同研究を進めております。アカデミアの研究シーズを企業シーズへと迅速かつ着実にトランスレーションする組織能力をより一層高める必要があります。
他の創薬ベンチャーと同様に当社も新規性のある医薬品の開発を行っておりますので、個々の社員には非常に高度な専門性が要求されます。そのため、適切な人材の確保が重要な課題となります。十分な技術・知識のみならずベンチャーマインドを有し、成長意欲のある人材を全部門において採用し、OJTによる人材育成により、今後拡大・加速していくことが予想される事業・研究開発スピードに対応してまいりたいと考えております。
当社にとって前述のアライアンス・ネットワーク体制の構築は重要な課題であり、また株主を含めたステークホルダーとの良好な関係も重要な課題であります。社外関係者との良好な関係の構築のためには、社会的信用を維持・向上させていく必要があると認識しております。特に、当社の取引先は主に上場企業、医療機関、公的な研究機関でありますので、協業体制を構築し、取引関係を維持していくには、当社も社会的信用を維持していく必要があります。また、世間に広く製品を提供していく創薬企業としての社会的責任を果たしていく必要があると認識しております。
そのため、当社は小規模ではありますが、コーポレート・ガバナンス体制を構築し、内部管理体制及び管理部門の強化を推進してまいります。また、内部監査の充実及び監査役との連携強化などの施策により業務執行の適法性・妥当性を監視する機能を強化し、財務報告に係るリスクを最小化して、経営の健全化に努めてまいります。
当社は創薬ベンチャーであり、実際の製品化までの研究開発活動において年単位での時間を要します。製品化までの研究開発活動において設備投資、人材の採用・育成、また、企業価値向上のための新規パイプラインの創製(最新の技術の探索、導入及び共同研究など)に多額の資金が必要となります。これらの資金を外部から調達する必要があり、中長期的な視点から、財務基盤の強化のためにも、様々な資金調達の可能性を検討してまいります。
④ IR活動の推進
当社は、株主・投資家等のステークホルダーからの意見を収集し、経営のさらなる改善に努め、また、企業情報及び研究開発の状況等を正確、適時及び適切に発信し、信頼と正当な評価を得ていくことを目指します。
当社の事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。また、当社として必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、それらのすべてについて回避できる保証はありません。また、以下の記載内容は当社のリスクすべてを網羅するものではありませんのでご留意ください。
なお、本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。
(1) 創薬事業全般にかかるリスクについて
当社の手掛ける創薬事業では、一つ一つの新規医薬品候補物質の研究開発が、シーズの創製から規制当局の承認を得て医薬品として製造販売に至るまで、薬事規制等に則って探索的研究から第三相臨床試験まで段階を踏みながら進められ、全体として長期間におよぶとともに多額の資金を必要とします。
そのため、財務状況への負荷の蓄積をところどころで緩和し、持続可能な成長を実現させるために、当社は医薬品候補物質毎に、シーズの創製や創薬コンセプト証明に集中し、大掛かりな組織体制を必要とする後期臨床試験以降は、製造販売網を有する製薬企業にライセンスアウトして早期収益化を図る事業モデルを採っています。
ライセンスアウトは、開発の段階毎に目標とする試験成績が積み上げられていくことが前提となるので、いずれにせよ研究開発の進捗がライセンスアウトの成否を大きく左右します。そのため、試験成績の目標未達、開発が先行する競合新薬候補が及ぼす影響や、技術革新がもたらす当該技術の陳腐化等により、研究開発が進行遅延若しくは終了・中止を免れない状況になった場合には、ライセンス・アウトが成立しなくなる可能性があり、成立した後でも、ライセンス契約解消若しくはロイヤルティ収入の低迷の可能性があります。その場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 法的規制等にかかる不確実性について
当社が携わる研究開発領域は、研究開発を実施する国ごとに薬事に係る法律、薬価等が関係する医療保険制度及びその他の関係法規・法令による規制が存在します。当社の事業計画・研究開発計画は、現行の薬事関連法規・法令や規制当局の承認・認可の基準(Good Laboratory Practice、Good Manufacturing Practice、Good Clinical Practice等)を前提に作成しておりますが、これらの法律・法令及び基準は技術の発展・市場の動向などにより適宜改定されます。これにより既存の研究開発の体制(組織的な体制、製造方法、開発手法、臨床試験の進め方、追加試験を行う必要性の発生など)の変更が必要となる場合、その体制の変更に速やかに対処できず研究開発が遅延・中止となるリスク、人員確保や設備投資に計画外の追加資金が必要となり、追加資金確保のために新たな資金調達が必要となるリスクがあり、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 競合について
当社が携わる研究開発領域は、急激な市場規模の拡大が見込まれており、欧米を中心にベンチャー企業を含む多くの企業が参入する可能性があります。競合他社の有する医薬品候補物質の研究開発が当社の有する医薬品候補物質と同じ疾患領域で先行した場合又は競合新薬が上市された場合、当社の開発品の競争力が低下する可能性があります。その結果として、当社が進める臨床試験の被験者登録が停滞する等により臨床試験が遅延する可能性若しくは目標被験者数に届かない等により臨床試験が中止となる可能性、導出していた場合はライセンス契約解約の可能性又は上市後に想定したロイヤリティが得られない可能性があり、当社の事業戦略や経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 研究開発活動について
① 製造物責任のリスクについて
臨床試験実施中に使用する治験薬、大学及びその提携施設が実施する医師主導治験用に提供する治験薬等並びに当社が研究開発した上市後の医薬品に起因して、未知の重篤な健康被害を被験者又は患者に与えた場合、製造物責任を当社が負う可能性又は治験薬等の提供先若しくは導出先の企業から損害賠償の請求を受ける可能性があります。これらの場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
② 副作用に関するリスクについて
当社が研究開発を実施した治験薬及び上市後の医薬品で、臨床試験段階から製品上市後にかけて、予期せぬ重篤な副作用が発現する可能性があります。重篤な副作用が発現した場合、製造物責任等の損害賠償リスクが発生する可能性がありますが、保険の加入などにより財政的な影響を回避又は最小限にしていくよう対応しておりますが、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
③ 研究開発施設等における事故等の発生に関するリスクについて
当社は、本店及び事業所に研究開発施設を有しております。事故防止の管理教育は徹底しておりますが、何らかの原因により火災や環境汚染事故、感染等が発生した場合、研究開発活動の中断、停止、又は、損害賠償や風評被害等重大な損失を招く可能性があります。また、当社は、経営の機動性・効率性の観点、コスト低減や専門性の高い分野における協業などの観点から、研究開発業務の一部を専門機関である外部委託先(CRO-医薬品開発業務受託機関、治験実施施設、原薬・製剤の製造業者等)に委託しており、これら外部委託先において何らかの原因により火災や環境汚染事故等が発生した場合にも、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能があります。
(5) 知的財産権について
① 特許の状況について
現在出願中の特許については、特許出願時に特許性等に関する調査を行っておりますが、すべてのものが特許として成立するとは限りません。出願中の特許が成立しなかった場合又は登録された特許権が無効化された場合、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。また、特許の出願は、特許の内容、対象国などについて費用対効果を考慮して行いますので、研究開発で得られたすべての特許を出願するものではありません。また、出願費用・維持費用等のコストを回収できない可能性があります。
なお、当社のパイプラインにおいて、その実施に支障又は支障をきたす可能性のある事項は、当社が調査した限りにおいて存在しておりません。
② 知的財産権に関する訴訟及びクレーム等について
本書提出日現在において、当社の事業に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームといった問題が発生した事実はありません。当社は、弁護士及び弁理士との連携を図って可能な限り特許侵害・被侵害の発生リスクを軽減する対策を講じております。
ただし、今後において当社が第三者との間の法的紛争に巻き込まれた場合、弁護士等と協議のうえ、その内容によって個別に対応策を検討していく方針でありますが、解決に時間及び多大の費用を要する可能性があり、場合によっては当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 研究開発費が多額の見通しであることについて
当社による医薬品候補物質の研究開発の期間は長期間にわたります。また、研究開発の期間においては非常に多くの実証・確認すべき事項があること、また当社では日本国内のみならず海外においても研究開発活動を行っていることなどから研究開発費は多額となる見通しであります。
製薬企業等とのライセンス契約から発生する契約一時金収入、マイルストン収入、ロイヤリティ収入を研究開発中のパイプライン及び新規パイプラインに再投資することを事業及び資金サイクルとしていくこととしておりますが、製薬企業等との契約締結が想定通りに進まない場合又は既存のパイプラインにおいて想定以上の研究開発費が必要となった場合などにおいては、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 社内体制について
① 小規模組織であることについて
当社は、役員7名(取締役4名、監査役3名)、従業員は42名(2019年3月31日現在)であり小規模な組織となっており、内部管理体制も規模に応じたものとなっております。人員については、研究開発の状況に応じて増員を図っていく予定であり、内部管理体制も規模に応じて体制の強化を図っていく予定であります。
しかし、小規模組織のため、役員はじめ従業員においてもそれぞれが重要な役割を持って業務に従事しており、特定の役員・従業員への過度な負担・依存とならないよう経営組織の強化を図る予定でありますが、退任・退職により人材が流出した場合、長期休養等により長期間業務の遂行が困難となった場合、代替要員を適時に確保できない場合、業務の引継ぎが不十分となった場合などにおいては、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
② 情報管理について
当社の事業においては、研究開発におけるデータ、ノウハウ、技術など、経理業務における財務データ、人事業務における役員、社員に関する情報などは非常に重要な機密事項になります。また、業務を通して入手した個人情報も重要な機密事項となります。その機密事項の流出リスクを低減するために、機密事項を取り扱う役員、社員に対しては規程等を整備し、情報管理の重要性を周知徹底するとともに、取引先等と守秘義務に関する契約を締結するなど、厳重な情報管理に努めております。
しかしながら、当社の通信インフラの破壊や故障などにより当社が利用しているシステム全般が正常に稼働しない状況に陥ってしまった場合、システムに不具合が発生した場合、又は役員・職員、取引先等により情報管理が十分に遵守されず、重要な機密情報・個人情報などが漏えいした場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(8) その他
① 新株予約権にかかる事項
当社は、優秀な人材を確保するため、また当社の事業及び研究開発活動へのモチベーションの維持・向上を目的として、新株予約権(ストック・オプション)を役員、社員及び社外の協力者等に付与しております。今後においても上記の目的のため新たに新株予約権を付与していく予定であります。また、研究開発領域の拡大に伴い、研究開発費及び事業運営経費が多額に必要となることから新株予約権を活用した資金調達を実施する可能性があります。これらの新株予約権が行使された場合には、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
なお、当社が発行した新株予約権にかかる潜在的株式の数は2,329,600株(2019年5月31日現在)であり、発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は5.54%であります。新株予約権の状況及び内容につきましては、「第4 提出会社の状況 1.株式等の状況(2)新株予約権等の状況」をご参照ください。
② 資金使途にかかる事項
2015年10月の株式上場時における公募増資の資金使途につきましては、主にGRN-1201の臨床開発試験、新規パイプライン導入のための研究開発費及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。また、2016年5月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、主にGRN-1201の新規適応症への新規パイプラインに関する臨床開発試験、新規パイプラインの探索・研究開発のための研究開発費、M&A資金及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。さらに、2017年11月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、がん免疫治療領域における研究開発費用及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。
しかしながら、今後において事業環境の変化等により、また、上記本項目「事業等のリスク」に記載のリスクの発生により、たとえ計画通りに使用した場合でも、本書提出日現在において想定している成果を達成できない可能性があります。
なお、当社が携わる研究開発の領域においては、技術開発の変化など外部環境が急速に変化する可能性があります。新薬の上市、法令等の改正、当社の研究開発・臨床試験の進捗状況によっては、上記の資金使途以外の事象に資金を充当する可能性があり、今後の戦略の策定において新たな事象の発生、新たな戦略の実行により、研究開発資金が想定以上に増加する可能性もあります。
③ M&A等(買収、合併等)による事業拡大に関する事項
当社は、事業拡大へ向けた新たな経営資源を取得するため、また保有する経営資源の効率的運用と企業価値を最大化するため、M&A等を活用して事業規模の拡大を図ること検討してまいります。 M&A候補の選定に当たりましては、詳細なデューデリジェンスを行うことにより極力リスクを回避してまいりますが、買収後の偶発債務の発生や、のれんが発生する場合は買収後の事業環境や競合状況の変化等により想定通りの効果が得られない場合にのれんの減損損失を計上する等、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
④ 資金調達にかかる事項
当社のパイプラインの研究開発が完了し製品化となるまでまだ長期間を要しますので、今後も多額の資金調達を必要とします。この期間において、事業計画の修正を必要とする状況になった場合、資金不足が生じる可能性があります。その場合、公的補助金の活用や日本国内のみならず海外企業・機関を含めた新規提携契約の締結、新株発行等により資金需要に対応していく予定であります。しかしながら、適切なタイミングで資金調達ができ なかった場合には、当社の事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。
また、今後において、さらなる事業拡大等のための資金調達の方法として新株発行や新株予約権付社債などを発行する可能性があります。新株等発行の結果、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
⑤ 自然災害について
当社は、東京都千代田区及び神奈川県川崎市に事業所及び研究施設を設けております。当社の事業地域で地震等の大規模な災害が発生した場合には、不測の事態の発生により事業活動が停滞する可能性があります。いずれかの地域で大規模な災害が発生した場合でも、いずれかで業務を継続できる体制となっており、また電子データ等のバックアップも前述の各地域以外の場所に設置しております。しかしながら、自然災害の規模、状況によっては、当社及び外部委託先の設備・インフラが支障をきたし稼働できない状況、従業員等が出社できない状況など一時的又は長期間業務が停止し、臨床開発及び事業活動を一時的又は長期間休止せざるを得ない状況が発生した場合には、当社の臨床開発、事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(業績等の概要)
当社が開発を手掛けるがん免疫治療薬の分野では、京都大学の本庶佑特別教授が、近年のがん治療に革新をもたらした免疫チェックポイント阻害抗体の開発につながる分子PD-1の発見によりノーベル生理学・医学賞を受賞したことが大きな話題となりました。また、キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法(CAR-T)が、米国、欧州に続き日本国内においても承認され、新たな形態としてがん免疫療法に加わり、同分野は引き続き進展を見せております。今後も、より高い治療効果、より高い治療効果予測精度の医療、そして患者一人ひとりに合わせた個別化医療の実現を目指して、免疫チェックポイント阻害抗体を中心に複数のがん免疫治療薬を組み合わせる複合的免疫療法や、CAR-Tに代表される遺伝子改変T細胞療法、ネオアンチゲンを標的とする完全個別化ワクチンなど、がん免疫の力を最大限に引き出すことを狙った様々な取り組みが進められる見通しです。
このような環境下で、当社は、新しいがん治療の時代に適応すべく、創業以来の開発テーマで現在臨床試験段階にあるがんペプチドワクチンの開発と、その枠を越えた新規形態の創薬研究を進めてまいりました。
米国で開発中のがんペプチドワクチンGRN-1201については、単剤での治療効果に関する評価が確立された免疫チェックポイント阻害抗体の次のテーマとして、併用パートナー薬との複合的がん免疫療法が志向される中で、非小細胞肺がんを対象に、免疫チェックポイント阻害抗体と当該ワクチン併用の第二相臨床試験を推進しています。
当社にとって新規形態となる細胞医薬については、iPS細胞技術をがん免疫療法へ応用し固形がん対象の他家細胞医薬品の創製を目指し、2018年3月に理化学研究所と「iPS-NKT細胞療法」の共同研究を開始しました。今後、頭頸部がんを対象とする医師主導治験が2019年度中に開始される予定です。
また、近年がんゲノム医療として注目を集める、遺伝子レベルで個人差に対応する完全個別化ネオアンチゲンワクチン療法を開発するべく、国立がん研究センター、東京大学及び神奈川県立がんセンター並びに三重大学との共同研究を引き続き継続してまいります。2018年12月には、東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター長である宮野悟教授や、ゲノム解析における統計数理モデリングを専門とする井元清哉教授を中心とした研究グループとネオアンチゲン予測アルゴリズムの高精度化を目的とした共同研究を開始しております。
これらに加え、新しい世代のがん免疫を亢進する抗体医薬シーズを複数創製しており、川崎創薬研究所においてこれらの研究を加速してまいります。
なお、第三相臨床試験を完了したがんペプチドワクチンITK-1につきましては、2018年5月の開鍵(キーオープン)の結果、主要評価項目を達成することが出来なかったため、導出先の富士フイルム株式会社の決定を踏まえて開発を中止いたしました。また、iPS細胞由来再生T細胞療法の開発のために実施した東京大学及び順天堂大学との共同研究は、細胞医薬開発をより積極的に推し進めるための選択と集中において中止いたしました。分子標的薬耐性変異を標的とするがんワクチンGRN-1301についても、標的を同じくする競合の上市分子標的薬の市場動向を踏まえて、こちらもパイプラインの選択と集中を図るべく開発中止を決定いたしました。
これらの結果、当事業年度の売上高につきましては、富士フイルム株式会社からITK-1の第三相臨床試験にかかる業務の終了に伴うマイルストンの受領等及びブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社から抗体測定系構築の受託業務収入を得たことにより、155,808千円(前年同期比198,601千円減、56.0%減)となりました。また、研究開発活動の拡大により、経常損失は1,678,084千円(前年同期の経常損失は1,569,648千円)、当期純損失は1,884,318千円(前年同期の当期純損失は1,577,142千円)となりました。
なお、当社は、医薬品開発事業の単一事業であるため、セグメント別の業績に関する記載を省略しております。
① 流動資産
当事業年度末における流動資産は前事業年度末より1,751,208千円減少し5,161,647千円となりました。これは、現金及び預金が研究開発等に関連する支出により1,626,876千円減少したこと、ITK-1第三相臨床試験の終了により治験受託関連業務に関する売掛金が76,171千円減少したことが主な要因であります。
② 固定資産
当事業年度末における固定資産は前事業年度末より181,762千円減少し142,815千円となりました。これは、事業・研究開発用資産を減損したことに伴い185,285千円減少したことが主な要因であります。
③ 流動負債
当事業年度末における流動負債は前事業年度末より81,821千円減少し148,816千円となりました。これは、富士フイルム株式会社から収受したマイルストン収入に対する久留米大学への包括的業務契約に基づくロイヤリティ支払が発生していることにより買掛金が19,564千円増加したこと、前事業年度末と比べて研究開発機器の取得が減少したことにより未払金が91,478千円減少したことがが主な要因であります。
④ 固定負債
当事業年度末における固定負債は前事業年度末より3,348千円増加し59,574千円となりました。これは、社員数の増加により退職給付引当金が1,677千円増加したことが主な要因であります。
⑤ 純資産
当事業年度末における純資産は前事業年度末より1,854,498千円減少し、5,096,072千円となりました。これは、当期純損失1,884,318千円を計上したことが主な要因であります。以上の結果、自己資本比率は前事業年度末の95.2%から94.7%となりました。
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、4,901,177千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は1,457,571千円となりました。これは主に税引前当期純損失1,880,529千円を計上したこと、減損損失194,829千円を計上したこと、減価償却費82,770千円を計上したこと、関係会社貸倒引当金繰入額28,614千円を計上したこと、売上債権の減少76,171千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は185,115千円となりました。これは主に研究開発機器等の有形固定資産の取得による支出173,164千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は15,810千円となりました。これは、新株予約権の行使による株式の発行による収入15,810千円によるものであります。
(生産、受注及び販売の状況)
当事業年度における生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.ITK-1第三相臨床試験が終了したため、前年同期と比べ246,302千円減少しております。
当事業年度における受注実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.ITK-1第三相臨床試験が終了したため、前年同期と比べ197,428千円減少しております。
(3) 販売実績
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
(注)1.ITK-1第三相臨床試験が終了したため、前年同期と比べ198,601千円減少しております。
2.最近事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
4.ITK-1第三相臨床試験が終了したため、前年同期と比べ197,102千円減少しております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は下記のとおりであります。なお、当社は、医薬品開発事業の単一事業であるため、セグメント別の業績に関する記載を省略しております。また、文中の将来に関する事項は、本書提出日時点において当社が判断したものであります。
(経営指標について)
当社は、創薬ベンチャーであり、研究開発活動という投資期間が長く、その研究開発活動の成果として、ライセンスアウトによる契約一時金やマイルストン収入等などを獲得するビジネスモデルであります。
中長期的視点からの経営の安定化、企業価値の向上を目指して、また著しい技術革新がなされ、大きな期待を受けているがん免疫治療薬分野における大きな事業機会を逃さないために、既存のパイプラインの推進のみならず、新規のパイプラインを積極的に導入していく方針であります。
従いまして、売上高や当期純損益の推移やROE、ROAといった経営指標を目的とすることはせずに、現預金残高の推移、研究開発活動の効率化、パイプライン数の拡大・充実について、財務状況を勘案しながら、早期のライセンスアウト及び黒字化の実現に向けて、事業を進めてまいります。
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されております。この財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。この見積りに関しては、過去の実績や適切と判断する仮定に基づいて合理的に算出しておりますが、実際の結果はこれらの見積りと相違する可能性があります。
当事業年度末における資産合計は、前事業年度末より1,932,970千円減少し5,304,463千円となりました。
研究開発等に関連する支出により1,626,876千円現金及び預金が減少したこと、ITK-1第三相臨床試験の終了により治験受託関連業務が終了したため76,171千円売掛金が減少したこと、事業・研究開発用資産を減損したことに伴い185,285千円事業・研究開発用固定資産が減少したことが主な理由であります。
当事業年度末における資産の内訳としましては、現金及び預金が4,901,177千円であり、資産の合計に占める割合は92.4%となっております。研究開発を推進していくにあたり、当面の資金は確保している状況にあります。
今後の現金及び預金の残高推移については、株式市場等からの資金調達やライセンスアウトによる契約一時金収入・マイルストン収入の獲得が実施されるまでの期間において、主に研究開発費用及び研究機器等の購入に伴う支出により減少する傾向にあります。現金及び預金の残高推移を注視しつつ、がん免疫治療薬分野の最先端の研究開発を積極的に推進してまいります。
当事業年度末における負債合計は、前事業年度末より78,472千円減少し208,390千円となりました。
富士フイルム株式会社から収受したマイルストン収入に対する久留米大学への包括的業務契約に基づくロイヤリティ支払が発生していることにより19,564千円買掛金が増加しました。一方で前事業年度末と比べて研究開発機器の取得が減少したことにより91,478千円未払金が減少しました。
当事業年度末における総資産に占める負債の割合は、3.9%であります。
創薬研究及び細胞医薬における研究開発の推進に伴い、未払金は増加する傾向にあります。
当事業年度末における現金及び預金の残高に対する負債の割合は非常に小さいと考えており、引き続き効率的な研究開発活動を推進してまいります。
当事業年度末における純資産は、前事業年度末より1,854,498千円減少し5,096,072千円となりました。
当期純損失1,884,318千円を計上したことが主な要因であります。
自己資本比率は前事業年度末の95.2%から94.7%となりました。
当事業年度の売上高につきましては、前事業年度と比べ198,601千円減少(56.0%減)し、155,808千円となりました。
当事業年度の売上高の77.9%(121,420千円)が富士フイルム株式会社からのITK-1第三相臨床試験にかかる業務終了に伴うマイルストンの受領等でありますが、ITK-1の開発中止に伴い治験受託業務が終了したため、前事業年度と比べ、198,601千円の減収となりました。
当事業年度における営業損失は、前事業年度と比べ213,192千円損失が増加し1,665,548千円となりました。
当事業年度の研究開発費は、現在臨床試験段階にあるがんペプチドワクチンの開発とがん免疫治療薬分野の研究開発領域を拡大していくという方針のもと、川崎創薬研究所における創薬研究の研究が進捗したこと、細胞医薬の研究が進捗したこと、複数の大学・研究機関との共同研究契約を推進したことなどにより、前事業年度と比べ241,089千円増加し、1,387,674千円となりました。
当社の販管費に占める研究開発費の割合は約79%であり、事業運営費用が約21%となっております。このため、研究開発費の計上額の推移が営業損益の金額に直接影響を与える構造となっております。
2020年3月期において、研究開発費は当事業年度よりも増額となる2,079,000千円、そして営業損益も研究開発費の増額により2,417,000千円の損失と当事業年度よりも損失増加を想定しております。
各パイプラインの推進に加え、日進月歩でサイエンスが進む環境に迅速に適合していくためにも、新規シーズの導入は今後も引き続き積極的に行っていく方針であるとともに、さらには川崎創薬研究所において創出している新規医薬品候補の開発を順次進めてまいります。
完全個別化がん免疫療法の開発を目指した共同研究では、既存の研究開発ネットワークを深化させることで、より強固な共同研究基盤に発展させるとともに、最先端のサイエンスの知見・ノウハウの獲得を通して、次世代がん免疫治療のターゲットの探索と臨床試験へ向けた開発を進めてまいります。
以上から、当事業年度よりも研究開発費が増加することを想定しております。
当事業年度における当期純損益は、前事業年度と比べ307,175千円損失が増加し1,884,318千円となりました。
当事業年度の研究開発費が前事業年度と比べ241,089千円増加したこと、旧連結子会社への債権に関する貸倒引当金繰入額が123,630千円減少したこと、減損損失が固定資産の減損に係る会計基準の適用により、194,829千円増加したことが主な要因であります。
2020年3月期において、がん免疫治療薬分野の最先端の研究開発を積極的に推進していく方針のもと、当期純損失は、主に研究開発の積極的な推進による販管費の増加により、当事業年度よりも損失増加となる2,417,000千円を想定しております。
① 営業活動によるキャッシュ・フローの状況
現在臨床試験段階にあるがんペプチドワクチンの開発とがん免疫治療薬分野の研究開発領域を拡大していくという方針のもと、主に川崎創薬研究所における創薬研究及び細胞医薬の研究の推進により、営業活動によるキャッシュ・フローは1,457,571千円の支出となりました。
今後においても、がん免疫治療分野における新規パイプラインの創製・導入を積極的に推進するという方針を継続していきますので、当事業年度よりも支出額は増加する可能性があります。
② 投資活動によるキャッシュ・フローの状況
主に川崎創薬研究所における創薬研究及び細胞医薬研究の研究機器の購入による研究環境の整備を図ったことにより投資活動によるキャッシュ・フローは185,115千円の支出となりました。
今後においても、がん免疫治療薬分野における新規パイプラインの創製・導入を積極的に推進するという方針を継続し、研究開発環境の向上を図ってまいりますので、当事業年度よりも支出額は増加する可能性があります。
③ 財務活動によるキャッシュ・フローの状況
新株予約権の権利行使による株式の発行により15,810千円の収入となりました。
経営成績に重要な影響を与える要因は、当社が推進する研究開発を遅延又は中止させる事象でありますが、詳細については「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照ください。
当社の資金需要は、研究開発にかかる人件費、試薬等材料費、消耗品費、外部委託費及び研究機器の購入等及び事業運営・上場維持にかかる人件費、外部委託費及び特許関連費用等であります。これらの費用及び研究機器の購入等については、自己資金により支出していく予定であります。自己資金については、すべて銀行預金としておりますので、すべての支出について迅速かつ確実に対応できるよう資金の流動性を確保しております。
2020年3月期のキャッシュ・フローについては、2020年3月期の当期純損失が研究開発費の増加を主要因として当事業年度よりも損失が増加することから、営業活動によるキャッシュ・フローは当事業年度よりも支出が上回る見込みであります。
(注) 上記譲渡契約は、下記の「③包括的業務契約」に内包されております。下記の「③包括的業務契約」は、上記5件の譲渡契約の後に締結している契約であり、上記5件の譲渡契約の内容を補完する包括的契約であります。当社が久留米大学に支払うロイヤリティ及び契約解除の取扱いなど上記譲渡契約に規定されていない事項については、下記の「③包括的業務契約」において、上記5件の譲渡契約に関して包括的に規定しております。
(注) 上記譲渡契約は、下記の「③包括的業務契約」に内包されております。下記の「③包括的業務契約」は、上記2件の譲渡契約の後に締結している契約であり、上記2件の譲渡契約の内容を補完する包括的契約であります。当社が久留米大学に支払うロイヤリティ及び契約解除の取扱いなど上記譲渡契約に規定されていない事項については、下記の「③包括的業務契約」において、上記2件の譲渡契約に関して包括的に規定しております。
当社は、設立以来、新規作用メカニズムのがん免疫治療薬の研究開発を行っています。現在のパイプラインは、以下の通りです。

(1) GRN-1201:がんペプチドワクチン
GRN-1201は欧米人に多いHLA(ヒト組織適合抗原)型であるHLA-A2拘束性のペプチド4種で構成されるペプチドワクチンであり、現在、米国にてメラノーマ(悪性黒色腫)を対象とした第一相臨床試験及び非小細胞肺がんを対象とした、免疫チェックポイント阻害抗体併用の第二相臨床試験を行っております。
がん治療を大きく進展させた免疫チェックポイント阻害抗体は、これまでに様々ながん種において顕著な臨床効果を示して来ましたが、単剤では2-4割の人しか効果を得られておらず、残りの6-8割の効果が得られない人のために、様々な併用療法の臨床試験が進められています。GRN-1201も、がん免疫療法が奏功する人を増やすための複合的がん免疫療法の創製を目指しています。
米国でも、非小細胞肺がん一次治療において多数の臨床試験が進められており、その中で必要な数の被験者の登録を完了し、免疫チェックポイント阻害抗体単剤ヒストリカル・コントロールを上回る併用療法の有効性を示唆する臨床試験データを取得し、より大きな規模の後期臨床試験を遂行する製薬企業へのライセンスアウトに備える必要があります。
(2)iPS-NKT:iPS細胞由来再生NKT細胞療法
iPS-NKTは、iPS細胞技術をがん免疫療法に応用し、世界で承認が進む血液がん対象自家CAR-Tの次に来る固形がん対象の他家細胞医薬品の創製を図るものです。がん細胞を直接殺傷する能力と他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用を持つものの体内には微量にしか存在しないNKT細胞を多数のがん患者で使えるようにするため、健常人から採取したNKT細胞をiPS細胞化し、iPS細胞の高い増殖性を活かして必要なときに増殖、NKT細胞へ再分化誘導して用いる新規細胞療法になります。
当社は、理化学研究所が日本医療研究開発機構(AMED)の再生医療実現 拠点ネットワークプログラムの下で本細胞医薬の技術開発と臨床応用を進めるプロジェクトに、2018年3月に理化学研究所から独占的開発製造販売ライセンスのオプション権を取得することによって参画しました。
本プロジェクトは2019年度中を目処に医師主導治験が開始される予定で、順当に進めばその後企業治験を経て再生医療新法下での条件付承認申請を目指します。本医師主導治験で本細胞医薬の安全性と有効性を示唆するデータが得られること、また企業治験及び承認後の細胞供給を踏まえて現在の細胞製造工程の移管と最適化を進めることが当面の開発マイルストンとなります。
(3) その他の開発プログラム
近年がんゲノム医療として注目を集める、遺伝子レベルで個人差に対応する完全個別化ネオアンチゲンワクチン療法を開発するべく、国立がん研究センター、東京大学及び神奈川県立がんセンター並びに三重大学との共同研究を引き続き継続してまいります。2018年12月には、東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター長である宮野 悟教授や、ゲノム解析における統計数理モデリングを専門とする井元 清哉教授を中心とした研究グループとネオアンチゲン予測アルゴリズムの高精度化を目的とした共同研究を開始しております。
これらに加え、新しい世代のがん免疫を亢進する抗体医薬シーズを複数創製しており、川崎創薬研究所においてこれらの研究を加速してまいります。
なお、当社は医薬品開発事業及びこれに付随する単一セグメントであり、当事業年度における研究開発費は1,387百万円であります。