文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
当社は、「私たちは、がん免疫治療分野の最先端を切り拓くことにより、一人ひとりが自らの力でがんを克服する世界を実現します。」を経営理念として、新規がん免疫治療薬を創製することによって、現在進行しているがん治療革新の一翼を担いたいと考えております。
これを実現するために、当社は①開発領域をがん免疫治療薬に特化し、②シーズ導入・創製において国内外のアカデミアやベンチャー企業と広く連携するオープンイノベーションを進めながら、③ライセンスアウト型事業モデルによる好循環で持続可能な開発および企業成長を目指してまいります。
① がん免疫治療薬にフォーカスするのは、がん免疫に働きかけてがんを排除するという創薬コンセプトの有効性が免疫チェックポイント阻害抗体によって証明されており、この創薬コンセプトを具現化する方法を拡げることによって、従来の治療法では治療効果を得られなかったアンメットメディカルニーズを満たすことができるフロンティアが依然として大きく存在するからです。それは、当社が創業以来取り組んで来た経験とノウハウの蓄積がある領域であり、世界の医薬品市場の成長を他のどの医薬品カテゴリーよりも牽引している領域でもあります。
② オープンイノベーションを進めるのは、今や日進月歩でサイエンスが更新されていくがん免疫療法の領域において、最先端のサイエンスへのアクセスを可能にするためです。がん免疫治療のフロンティアには、アンメットメディカルニーズを満たすためのサイエンスがまだ数多く存在しています。創薬ベンチャーとして創薬を好循環で進めるために、当社は③のライセンスアウト型の事業モデルを採っています。知的財産を導出することによって収益化を図るモデルで、その知的財産は、最先端のサイエンスが織り込まれていないと成立しません。
③ ライセンスアウト型の事業モデル(シーズの創製や創薬コンセプト証明に集中し、大掛かりな組織体制を必要とする後期臨床試験以降は、製造販売網を有する製薬企業にライセンスアウトして早期収益化を図る事業モデル)を採るのは、創薬ベンチャーとして開発を持続して行えるようにするためです。一つひとつの新規医薬品候補物質の研究開発は、シーズの創製から規制当局の承認を得て医薬品として製造販売に至るまで、薬事規制等に則って探索的研究から第三相臨床試験まで段階を踏みながら進められ、全体として長期間におよぶとともに多額の資金を必要とします。よって、財務負担が蓄積し経営の機動性を喪失する前に、早期収益化を図ります。
(2) 目標とする経営指標
当社では、ライセンスアウト時の契約一時金と、その後の継続的なマイルストン報酬(マイルストン収入、販売ロイヤリティなど)を収益とするビジネスモデルを採っているため、製薬企業へのライセンスアウト(タイミングとライセンス取引額)、原則としてライセンスアウト成立の前提となる、創薬コンセプトを証明する非臨床試験または臨床試験成績の取得、そこに至るまでの開発イベント(例えば、当局による治験開始申請の受理)が、重要な経営イベントとなります。
持続可能な企業成長と企業価値の向上を目指して、また技術革新著しいがん免疫治療薬分野における事業機会を逃さないために、開発ポートフォリオの継続的な更新を重視しており、既存のパイプラインの開発推進や新規パイプラインの自社創製のみならず、新規パイプラインの導入やオープンイノベーションに基づく共同創出も積極的に進めてまいります。
なお、研究開発型の創薬ベンチャーは、研究開発投資からライセンスアウトによる収益化までの長期間に及ぶ事業サイクルが、開発パイプライン複数個によって資産(企業価値を構成するソフトな資産)構成されるため、売上高や当期純損益や、ROE、ROAといった年単位で見る指標は、適切な経営指標となりにくいと考えております。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
現在当社は、免疫システムに働きかけ免疫を使ってがんを排除させるメカニズムの「がん免疫治療」薬に開発領域を定め、その医薬品形態としてがんワクチン、細胞医薬、抗体医薬という3つのモダリティでパイプラインを構成し、医薬品開発プロセス上は探索研究から早期臨床試験までを国内外で手掛け、早期収益化を図るために国内外の製薬企業に開発途中段階でライセンス・アウトしていく事業モデルを採っています。想定するライセンス・アウトの開発段階は、モダリティや個々のパイプラインで異なっており、現在米国で第二相臨床試験を実施中のがんワクチンもあれば(GRN-1201)、探索研究段階にある各種抗体医薬シーズもあります。
中長期的には、開発領域は、軸足をがん免疫治療薬に置き続けることは変わりませんが、がん免疫治療薬で築いた創薬プラットフォームを他の疾患の治療薬(例えば感染症)に用いる可能性はあり、モダリティも現在の主力の3つに軸足を置きながらもより新しいモダリティ(例えば核酸、融合タンパク)を採用していく可能性はあります。手掛ける医薬品開発プロセスは、現在のモデルでいずれかのパイプラインのライセンス・アウトが成功し、開発費の負担に耐えうる資金力がついた暁には、より多くの収益を当社が取り込めるよう、それに続く複数のパイプラインのうちいくつかは後期臨床試験以降まで進め、創薬ベンチャーから製薬企業へ転換を図っていくことも想定しています。そのときには、各パイプラインの開発が進み、一つひとつを独立したものでなく、複合的に治療に用いて相乗効果を引き出す統合的ながん免疫治療アプローチを採ることができるようになっていると考えています。
(4) 会社の対処すべき課題
今後もライセンスアウトの動向及び財務状況を鑑みながら研究開発を積極的に推進又は新規投資・導入を行い、企業価値の向上を図っていくために、研究開発活動の質及びその研究開発活動を支える企業活動の基盤としての経営の質を向上させる必要があると認識しております。当社が対処すべき事項として認識している事項は、以下のとおりです。
① 競争力のあるパイプラインのポートフォリオ構築
当社は創業以来がんペプチドワクチンを中心にパイプラインを構成してきましたが、近年がん治療の新時代を築き、当社が開発領域として焦点を定めているがん免疫治療薬の形態(モダリティ)も多様化へ向かい、治療効果が証明され後続が列をなす抗体(免疫チェックポイント阻害抗体)や細胞(CAR-T)では承認薬も出て、16年前の創業時から様変わりしております。
当社も、免疫調整因子抗体と細胞医薬を開発領域に加えており、さらにがんペプチドワクチン自体も、多数のがん患者に共有される共通抗原(がんの目印)を標的とするITK-1から、共通抗原と免疫チェックポイント阻害抗体を組み合わせる複合的がん免疫療法を志向するGRN-1201へ、さらに、患者ごとにほぼ完全に異なる遺伝子変異抗原を標的として個別にジャスト・イン・タイム製造するネオアンチゲンワクチンへと展開しております。
当社は現時点では新薬候補を後期臨床試験に至る前に製薬企業にライセンスアウトする事業モデルを採っており、ライセンスを成功させるためには当該新薬候補がその時点でサイエンスの面で陳腐化していてはならず、さらにがん免疫療法は全医薬品業界の成長を牽引する領域であるからこそ日進月歩でサイエンスが進んでいるため、当社は常に同分野全体のサイエンスが向かう方向性と進捗を見ながら、各パイプラインの開発ステージを探索から非臨床試験、そして臨床試験へと一定期間内に上げて行くとともに、必要に応じてパイプラインの入れ替えを図っていく必要があります。
当社が関わるがん免疫療法は、医薬品業界の成長を牽引するとともにサイエンスが日進月歩で進展する領域であるため、社内に専門性の高い研究員と充実した研究施設を有することが不可欠で、現在も研究施設として川崎創薬研究所を構えておりますが、常にこれを向上させていく必要があります。
さらに、研究開発体制を社内に留めることなく社外にもオープンイノベーションの機会を積極的に求めて行くことが、この領域の最先端のサイエンスの情報収集のみならずパイプラインの充実と迅速なアップデートのためにも不可欠で、現在も国立がん研究センター、東京大学、三重大学、神奈川県立がんセンター、理化学研究所など本邦を代表する研究機関との共同研究を進めております。アカデミアの研究シーズを企業シーズへと迅速かつ着実にトランスレーションする組織能力をより一層高める必要があります。
他の創薬ベンチャーと同様に当社も新規性のある医薬品の開発を行っておりますので、個々の社員には非常に高度な専門性が要求されます。そのため、適切な人材の確保が重要な課題となります。十分な技術・知識のみならずベンチャーマインドを有し、成長意欲のある人材を全部門において採用し、OJTによる人材育成により、今後拡大・加速していくことが予想される事業・研究開発スピードに対応してまいりたいと考えております。
当社にとって前述のアライアンス・ネットワーク体制の構築は重要な課題であり、また株主を含めたステークホルダーとの良好な関係も重要な課題であります。社外関係者との良好な関係の構築のためには、社会的信用を維持・向上させていく必要があると認識しております。特に、当社の取引先は主に上場企業、医療機関、公的な研究機関でありますので、協業体制を構築し、取引関係を維持していくには、当社も社会的信用を維持していく必要があります。また、世間に広く製品を提供していく創薬企業としての社会的責任を果たしていく必要があると認識しております。
そのため、当社は小規模ではありますが、コーポレート・ガバナンス体制を構築し、内部管理体制及び管理部門の強化を推進してまいります。また、内部監査の充実及び監査役との連携強化などの施策により業務執行の適法性・妥当性を監視する機能を強化し、財務報告に係るリスクを最小化して、経営の健全化に努めてまいります。
当社は創薬ベンチャーであり、実際の製品化までの研究開発活動において年単位での時間を要します。製品化までの研究開発活動において設備投資、人材の採用・育成、また、企業価値向上のための新規パイプラインの創製(最新の技術の探索、導入及び共同研究など)に多額の資金が必要となります。これらの資金を外部から調達する必要があり、中長期的な視点から、財務基盤の強化のためにも、様々な資金調達の可能性を検討してまいります。
④ IR活動の推進
当社は、株主・投資家等のステークホルダーからの意見を収集し、経営のさらなる改善に努め、また、企業情報及び研究開発の状況等を正確、適時及び適切に発信し、信頼と正当な評価を得ていくことを目指します。
当社の事業展開その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。また、当社として必ずしも重要なリスクと考えていない事項及び具体化する可能性が必ずしも高くないと想定される事項についても、投資判断の上で又は当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、それらのすべてについて回避できる保証はありません。また、以下の記載内容は当社のリスクすべてを網羅するものではありませんのでご留意ください。
なお、本項記載の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。
(1) 創薬事業全般にかかるリスクについて
当社の手掛ける創薬事業では、一つ一つの新規医薬品候補物質の研究開発が、シーズの創製から規制当局の承認を得て医薬品として製造販売に至るまで、薬事規制等に則って探索的研究から第三相臨床試験まで段階を踏みながら進められ、全体として長期間におよぶとともに多額の資金を必要とします。
そのため、財務状況への負荷の蓄積をところどころで緩和し、持続可能な成長を実現させるために、当社は医薬品候補物質毎に、シーズの創製や創薬コンセプト証明に集中し、大掛かりな組織体制を必要とする後期臨床試験以降は、製造販売網を有する製薬企業にライセンスアウトして早期収益化を図る事業モデルを採っています。
ライセンスアウトは、開発の段階毎に目標とする試験成績が積み上げられていくことが前提となるので、いずれにせよ研究開発の進捗がライセンスアウトの成否を大きく左右します。そのため、試験成績の目標未達、開発が先行する競合新薬候補が及ぼす影響や、技術革新がもたらす当該技術の陳腐化等により、研究開発が進行遅延若しくは終了・中止を免れない状況になった場合には、ライセンスアウトが成立しなくなる可能性があり、成立した後でも、ライセンス契約解消若しくはロイヤリティ収入の低迷の可能性があります。その場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 法的規制等にかかる不確実性について
当社が携わる研究開発領域は、研究開発を実施する国ごとに薬事に係る法律、薬価等が関係する医療保険制度及びその他の関係法規・法令による規制が存在します。当社の事業計画・研究開発計画は、現行の薬事関連法規・法令や規制当局の承認・認可の基準(Good Laboratory Practice、Good Manufacturing Practice、Good Clinical Practice等)を前提に作成しておりますが、これらの法律・法令及び基準は技術の発展・市場の動向などにより適宜改定されます。これにより既存の研究開発の体制(組織的な体制、製造方法、開発手法、臨床試験の進め方、追加試験を行う必要性の発生など)の変更が必要となる場合、その体制の変更に速やかに対処できず研究開発が遅延・中止となるリスク、人員確保や設備投資に計画外の追加資金が必要となり、追加資金確保のために新たな資金調達が必要となるリスクがあり、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 競合について
当社が携わる研究開発領域は、急激な市場規模の拡大が見込まれており、欧米を中心にベンチャー企業を含む多くの企業が参入する可能性があります。競合他社の有する医薬品候補物質の研究開発が当社の有する医薬品候補物質と同じ疾患領域で先行した場合又は競合新薬が上市された場合、当社の開発品の競争力が低下する可能性があります。その結果として、当社が進める臨床試験の被験者登録が停滞する等により臨床試験が遅延する可能性若しくは目標被験者数に届かない等により臨床試験が中止となる可能性、導出していた場合はライセンス契約解約の可能性又は上市後に想定したロイヤリティが得られない可能性があり、当社の事業戦略や経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 研究開発活動について
① 製造物責任のリスクについて
臨床試験実施中に使用する治験薬、大学及びその提携施設が実施する医師主導治験用に提供する治験薬等並びに当社が研究開発した上市後の医薬品に起因して、未知の重篤な健康被害を被験者又は患者に与えた場合、製造物責任を当社が負う可能性又は治験薬等の提供先若しくは導出先の企業から損害賠償の請求を受ける可能性があります。これらの場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
② 副作用に関するリスクについて
当社が研究開発を実施した治験薬及び上市後の医薬品で、臨床試験段階から製品上市後にかけて、予期せぬ重篤な副作用が発現する可能性があります。重篤な副作用が発現した場合、製造物責任等の損害賠償リスクが発生する可能性がありますが、保険の加入などにより財政的な影響を回避又は最小限にしていくよう対応しておりますが、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
③ 研究開発施設等における事故等の発生に関するリスクについて
当社は、本店及び事業所に研究開発施設を有しております。事故防止の管理教育は徹底しておりますが、何らかの原因により火災や環境汚染事故、感染等が発生した場合、研究開発活動の中断、停止、又は、損害賠償や風評被害等重大な損失を招く可能性があります。また、当社は、経営の機動性・効率性の観点、コスト低減や専門性の高い分野における協業などの観点から、研究開発業務の一部を専門機関である外部委託先(CRO-医薬品開発業務受託機関、治験実施施設、原薬・製剤の製造業者等)に委託しており、これら外部委託先において何らかの原因により火災や環境汚染事故等が発生した場合にも、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能があります。
(5) 知的財産権について
① 特許の状況について
現在出願中の特許については、特許出願時に特許性等に関する調査を行っておりますが、すべてのものが特許として成立するとは限りません。出願中の特許が成立しなかった場合又は登録された特許権が無効化された場合、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。また、特許の出願は、特許の内容、対象国などについて費用対効果を考慮して行いますので、研究開発で得られたすべての特許を出願するものではありません。また、出願費用・維持費用等のコストを回収できない可能性があります。
なお、当社のパイプラインにおいて、その実施に支障又は支障をきたす可能性のある事項は、当社が調査した限りにおいて存在しておりません。
② 知的財産権に関する訴訟及びクレーム等について
本書提出日現在において、当社の事業に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームといった問題が発生した事実はありません。当社は、弁護士及び弁理士との連携を図って可能な限り特許侵害・被侵害の発生リスクを軽減する対策を講じております。
ただし、今後において当社が第三者との間の法的紛争に巻き込まれた場合、弁護士等と協議のうえ、その内容によって個別に対応策を検討していく方針でありますが、解決に時間及び多大の費用を要する可能性があり、場合によっては当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 研究開発費が多額の見通しであることについて
当社による医薬品候補物質の研究開発の期間は長期間にわたります。また、研究開発の期間においては非常に多くの実証・確認すべき事項があること、また当社では日本国内のみならず海外においても研究開発活動を行っていることなどから研究開発費は多額となる見通しであります。
製薬企業等とのライセンス契約から発生する契約一時金収入、マイルストン収入、ロイヤリティ収入を研究開発中のパイプライン及び新規パイプラインに再投資することを事業及び資金サイクルとしていくこととしておりますが、製薬企業等との契約締結が想定通りに進まない場合又は既存のパイプラインにおいて想定以上の研究開発費が必要となった場合などにおいては、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 社内体制について
① 小規模組織であることについて
当社は、役員7名(取締役4名、監査役3名)、従業員は44名(2020年3月31日現在)であり小規模な組織となっており、内部管理体制も規模に応じたものとなっております。人員については、研究開発の状況に応じて増員を図っていく予定であり、内部管理体制も規模に応じて体制の強化を図っていく予定であります。
しかし、小規模組織のため、役員はじめ従業員においてもそれぞれが重要な役割を持って業務に従事しており、特定の役員・従業員への過度な負担・依存とならないよう経営組織の強化を図る予定でありますが、退任・退職により人材が流出した場合、長期休養等により長期間業務の遂行が困難となった場合、代替要員を適時に確保できない場合、業務の引継ぎが不十分となった場合などにおいては、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
② 情報管理について
当社の事業においては、研究開発におけるデータ、ノウハウ、技術など、経理業務における財務データ、人事業務における役員、社員に関する情報などは非常に重要な機密事項になります。また、業務を通して入手した個人情報も重要な機密事項となります。その機密事項の流出リスクを低減するために、機密事項を取り扱う役員、社員に対しては規程等を整備し、情報管理の重要性を周知徹底するとともに、取引先等と守秘義務に関する契約を締結するなど、厳重な情報管理に努めております。
しかしながら、当社の通信インフラの破壊や故障などにより当社が利用しているシステム全般が正常に稼働しない状況に陥ってしまった場合、システムに不具合が発生した場合、又は役員・職員、取引先等により情報管理が十分に遵守されず、重要な機密情報・個人情報などが漏えいした場合には、当社の事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(8) その他
① 新株予約権にかかる事項
当社は、優秀な人材を確保するため、また当社の事業及び研究開発活動へのモチベーションの維持・向上を目的として、新株予約権(ストック・オプション)を役員、社員及び社外の協力者等に付与しております。今後においても上記の目的のため新たに新株予約権を付与していく予定であります。また、研究開発領域の拡大に伴い、研究開発費及び事業運営経費が多額に必要となることから新株予約権を活用した資金調達を実施する可能性があります。これらの新株予約権が行使された場合には、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
なお、当社が発行した新株予約権にかかる潜在的株式の数は10,708,600株(2020年5月31日現在)であり、発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は25.14%であります。
② 資金使途にかかる事項
2015年10月の株式上場時における公募増資の資金使途につきましては、主にGRN-1201の臨床開発試験、新規パイプライン導入のための研究開発費及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。また、2016年5月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、主にGRN-1201の新規適応症への新規パイプラインに関する臨床開発試験、新規パイプラインの探索・研究開発のための研究開発費、M&A資金及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。さらに、2017年11月に開示いたしました第三者割当増資の資金使途につきましては、がん免疫治療領域における研究開発費用及び事業運営上必要となる経費等に充当しております。
しかしながら、今後において事業環境の変化等により、また、上記本項目「事業等のリスク」に記載のリスクの発生により、たとえ計画通りに使用した場合でも、想定している成果を達成できない可能性があります。
なお、当社が携わる研究開発の領域においては、技術開発の変化など外部環境が急速に変化する可能性があります。新薬の上市、法令等の改正、当社の研究開発・臨床試験の進捗状況によっては、上記の資金使途以外の事象に資金を充当する可能性があり、今後の戦略の策定において新たな事象の発生、新たな戦略の実行により、研究開発資金が想定以上に増加する可能性もあります。
③ M&A等(買収、合併等)による事業拡大に関する事項
当社は、事業拡大へ向けた新たな経営資源を取得するため、また保有する経営資源の効率的運用と企業価値を最大化するため、M&A等を活用して事業規模の拡大を図ること検討してまいります。M&A候補の選定に当たりましては、詳細なデューデリジェンスを行うことにより極力リスクを回避してまいりますが、買収後の偶発債務の発生や、のれんが発生する場合は買収後の事業環境や競合状況の変化等により想定通りの効果が得られない場合にのれんの減損損失を計上する等、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響が及ぶ可能性があります。
④ 資金調達にかかる事項
当社のパイプラインの研究開発が完了し製品化となるまでまだ長期間を要しますので、今後も多額の資金調達を必要とします。この期間において、事業計画の修正を必要とする状況になった場合、資金不足が生じる可能性があります。その場合、公的補助金の活用や日本国内のみならず海外企業・機関を含めた新規提携契約の締結、新株発行等により資金需要に対応していく予定であります。しかしながら、適切なタイミングで資金調達ができなかった場合には、当社の事業の継続に重大な懸念が生じる可能性があります。
また、今後において、さらなる事業拡大等のための資金調達の方法として新株発行や新株予約権付社債などを発行する可能性があります。新株等発行の結果、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
⑤ 自然災害について
当社は、東京都千代田区及び神奈川県川崎市に事業所及び研究施設を設けております。当社の事業地域で地震等の大規模な災害が発生した場合には、不測の事態の発生により事業活動が停滞する可能性があります。いずれかの地域で大規模な災害が発生した場合でも、いずれかで業務を継続できる体制となっており、また電子データ等のバックアップも前述の各地域以外の場所に設置しております。しかしながら、自然災害の規模、状況によっては、当社及び外部委託先の設備・インフラが支障をきたし稼働できない状況、従業員等が出社できない状況など一時的又は長期間業務が停止し、臨床開発及び事業活動を一時的又は長期間休止せざるを得ない状況が発生した場合には、当社の臨床開発、事業、業績や財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 新型コロナウイルス感染拡大の影響
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、当社の事業所及び研究施設並びに国内外の臨床試験・非臨床試験・製造委託先及び共同研究開発先社員等の罹患や移動制限・自粛等に伴う要員不足や原材料の納入遅延、並びに製造機能や物流・卸機能の停滞が生じ、結果として研究開発活動に影響を及ぼす可能性があります。また、臨床試験施設においても感染拡大回避のための新規登録の一時中断や来院制限の措置が取られ、現在進行中または新規に立ち上げようとしている臨床試験の遅延等の発生の可能性があります。当社は、リスク情報共有会議を立ち上げ、頻回開催し、当社の国内・海外の製造委託先、共同研究開発のパートナー及び臨床試験施設の状況確認やビジネスにおける影響等について、情報の把握と対応の検討、経営レベルでの議論と意思決定を行っています。
(業績等の概要)
当事業年度(2019年4月1日から2020年3月31日まで)の世界経済は、保護主義的な通商政策の影響などにより経済成長に減速傾向が見られていた中、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が起こり、2020年は戦後最大の経済成長の落ち込みの見通しが示されるなど、極めて先行き不透明な状況となりました。わが国の経済も、概ね緩やかな回復傾向を示してはいたものの、COVID-19が拡大し、医療崩壊を避けるための経済活動自粛が続く中で、インバウンド消費、内需、輸出等が大幅に減速し、先行き不透明な状況となりました。
当社の開発領域であるがん免疫治療薬は、これまで約50年に一度起こってきたがん治療の革新をここ5年でもたらし、適応されるがん種の拡大とモダリティ(医薬品形態)の多様化が進み、依然として医薬品産業成長の牽引役となっています。それでも、がん免疫療法にブレークスルーをもたらした免疫チェックポイント阻害抗体の単剤の奏効率は多くのがん種で10-40%程度にとどまっており、アンメット・メディカルニーズは未だ大きく、「がん免疫」という科学的に証明されたメカニズムを用いた治療薬ががん治療の革新をさらに推し進める余地は大きく拡がっています。
このような環境下で、当社は「一人ひとりが、自らの力で、がんを克服する世界を実現する」ことを目指し、新規のがん免疫治療薬に開発領域を特化し、がんワクチン、細胞医薬、抗体医薬モダリティに関する、探索から早期臨床試験段階にある複数のパイプラインの開発を、同時並行で進めてまいりました。
パイプラインの中で現在臨床試験段階にあるのが、がんペプチドワクチン(GRN-1201)で、現在は米国で、非小細胞肺がんを対象に、免疫チェックポイント阻害抗体ペンブロリズマブとの併用による第二相臨床試験を進めています。
次に臨床試験段階に入るのが、細胞医薬パイプラインのiPS細胞由来再生NKT細胞療法(iPS-NKT)で、国立研究開発法人理化学研究所と国立大学法人千葉大学が主体となって、頭頸部がんを対象とする医師主導治験がまもなく開始される予定で、現在準備が進められています。
これらに次いで臨床試験に進むべく非臨床試験を実施中であるのが、次世代のがんワクチンとなる完全個別化ネオアンチゲンワクチン(BP1101)、当年度に国立大学法人信州大学から導入したHER2 CAR-T細胞療法(BP2301)、同じく当年度に国立大学法人大阪大学らから導入したTLR9アゴニスト(BP1401)です。抗体医薬パイプラインはすべて自社創製で、PD-1/PD-L1に次いで、T細胞の疲弊や機能抑制に関する免疫チェックポイント分子としてそれを阻害することの有効性が科学的に示される途上にある標的分子に対する抗体を、Best-in-classとなることを目指して開発しています。今後リード最適化とさらなる機能評価、ならびにより機能の高い新規クローンの取得を進める予定です。
これらの結果、当事業年度につきましては研究開発活動の拡大により営業損失は1,827,349千円(前年同期の営業損失は1,665,548千円)、経常損失は1,823,996千円(前年同期の経常損失は1,678,084千円)、当期純損失は1,857,774千円(前年同期の当期純損失は1,884,318千円)となりました。
① 流動資産
当事業年度末における流動資産は前事業年度末より1,833,461千円減少し3,328,186千円となりました。これは、現金及び預金が研究開発等に関連する支出により1,882,820千円減少したことが主な要因であります。
② 固定資産
当事業年度末における固定資産は前事業年度末より3,636千円増加し146,452千円となりました。これは、研究機器の購入により工具、器具及び備品が6,395千円増加したことが主な要因であります。
③ 流動負債
当事業年度末における流動負債は前事業年度末より24,045千円増加し172,862千円となりました。これは、久留米大学への包括的業務契約に基づくロイヤリティ支払により買掛金が27,519千円減少したこと、前事業年度末と比べて研究開発費及び研究機器の取得が増加したことにより未払金が54,260千円増加したことが主な要因であります。
④ 固定負債
当事業年度末における固定負債は前事業年度末より6,964千円増加し66,539千円となりました。これは、対象社員数の増加により退職給付引当金が11,112千円増加したことが主な要因であります。
⑤ 純資産
当事業年度末における純資産は前事業年度末より1,860,834千円減少し、3,235,237千円となりました。これは、当期純損失1,857,774千円を計上したことが主な要因であります。以上の結果、自己資本比率は前事業年度末の94.7%から91.5%となりました。
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末と比べて1,882,820千円減少し、3,018,356千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は1,784,461千円(前事業年度は1,457,571千円の支出)となりました。これは主に税引前当期純損失1,859,861千円を計上したこと、減損損失48,159千円を計上したこと、減価償却費62,471千円を計上したこと、仕入債務の減少27,519千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は106,879千円(前事業年度は185,115千円の支出)となりました。これは主に研究開発機器等の有形固定資産の取得による支出107,282千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は8,521千円(前事業年度は15,810千円の収入)となりました。これは、主に新株予約権の行使による株式の発行による収入10,750千円によるものであります。
(生産、受注及び販売の状況)
当事業年度における生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.ITK-1第三相臨床試験が終了したため、前年同期と比べ65,244千円減少しております。
当事業年度における受注実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.ITK-1第三相臨床試験が終了したため、前年同期と比べ120,458千円減少しております。
(3) 販売実績
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
(注)1.ITK-1第三相臨床試験が終了したため、前年同期と比べ144,508千円減少しております。
2.最近事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
4.当事業年度の富士フイルム株式会社に対する販売実績につきましては、当該割合が10%未満の為記載を省略しております。
5.前事業年度の大日本住友製薬株式会社に対する販売実績につきましては、当該割合が10%未満の為記載を省略しております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は下記のとおりであります。なお、当社は、医薬品開発事業の単一事業であるため、セグメント別の業績に関する記載を省略しております。また、文中の将来に関する事項は、本書提出日時点において当社が判断したものであります。
(経営指標について)
当社は、創薬ベンチャーであり、研究開発活動という投資期間が長く、その研究開発活動の成果として、ライセンスアウトによる契約一時金やマイルストン収入等などを獲得するビジネスモデルであります。
中長期的視点からの経営の安定化、企業価値の向上を目指して、また著しい技術革新がなされ、大きな期待を受けているがん免疫治療薬分野における大きな事業機会を逃さないために、既存のパイプラインの推進のみならず、新規のパイプラインを積極的に導入していく方針であります。
従いまして、売上高や当期純損益の推移やROE、ROAといった経営指標を目的とすることはせずに、現預金残高の推移、研究開発活動の効率化、パイプライン数の拡大・充実について、財務状況を勘案しながら、早期のライセンスアウト及び黒字化の実現に向けて、事業を進めてまいります。
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されております。この財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。この見積りに関しては、過去の実績や適切と判断する仮定に基づいて合理的に算出しておりますが、実際の結果はこれらの見積りと相違する可能性があります。
当事業年度末における資産合計は、前事業年度末より1,829,824千円減少し3,474,639千円となりました。
これは研究開発等に関連する支出により1,882,820千円現金及び預金が減少したことが主な理由であります。
また、当事業年度末における資産の内訳としましては、現金及び預金が3,018,356千円と、資産の合計の86.9%を占めており、研究開発を推進していくにあたり、当面の資金は確保している状況にあります。
今後の現金及び預金の残高推移については、株式市場等からの資金調達やライセンスアウトによる契約一時金収入・マイルストン収入の獲得が実施されるまでの期間において、主に研究開発費用及び研究機器等の購入に伴う支出により減少する傾向にあります。現金及び預金の残高推移を注視しつつ、がん免疫治療薬分野の最先端の研究開発を積極的に推進してまいります。
当事業年度末における負債合計は、前事業年度末より31,010千円増加し239,401千円となりました。
これは久留米大学への包括的業務契約に基づくロイヤリティ支払により買掛金が27,519千円減少した一方で前事業年度末と比べて研究開発費及び研究機器の取得が増加したことにより未払金が54,260千円増加したことが主な理由であります。
当事業年度末における総資産に占める負債の割合は、6.9%であります。当社の有するパイプライン開発の推進に伴い、未払金は増加する傾向にあります。当事業年度末における現金及び預金の残高に対する負債の割合は非常に小さいと考えており、引き続き効率的な研究開発活動を推進してまいります。
当事業年度末における純資産は、前事業年度末より1,860,834千円減少し3,235,237千円となりました。
これは当期純損失1,857,774千円を計上したことが主な理由であります。自己資本比率は前事業年度末の94.7%から91.5%となりました。
当事業年度の売上高につきましては、前事業年度と比べ144,508千円減少(92.7%減)し、11,300千円となりました。
これはITK-1の開発中止に伴い治験受託業務が終了したことが主な要因であります。
当事業年度における営業損失は、前事業年度と比べ161,800千円損失が増加し1,827,349千円となりました。
当社は新規のがん免疫治療薬に開発領域を特化し、がんワクチン、細胞医薬、抗体医薬モダリティに関する、探索から早期臨床試験段階にある複数のパイプラインの開発を、同時並行で進めたことにより、当事業年度の研究開発費は前事業年度と比べ97,180千円増加し、1,484,854千円となりました。
当社の販管費に占める研究開発費の割合は約81%であり、事業運営費用が約19%となっております。このため、研究開発費の計上額の推移が営業損益の金額に直接影響を与える構造となっております。
各パイプラインの推進に加え、日進月歩でサイエンスが進む環境に迅速に適合していくためにも、新規シーズの導入は今後も引き続き積極的に行っていく方針であるとともに、さらには川崎創薬研究所において創出している新規医薬品候補の開発を順次進めてまいります。
当事業年度における当期純損益は、前事業年度と比べ26,544千円損失が減少し1,857,774千円となりました。
当事業年度の研究開発費が前事業年度と比べ97,180千円増加しましたが、減損損失が前事業年度と比べ146,670千円減少したことが主な要因であります。
当事業年度のキャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 業績等の概要 (3) キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
経営成績に重要な影響を与える要因は、当社が推進する研究開発を遅延又は中止させる事象でありますが、詳細については「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照ください。
当社の資金需要は、研究開発にかかる人件費、試薬等材料費、消耗品費、外部委託費及び研究機器の購入等及び事業運営・上場維持にかかる人件費、外部委託費及び特許関連費用等であります。これらの費用及び研究機器の購入等については、自己資金により支出していく予定であります。自己資金については、すべて銀行預金としておりますので、すべての支出について迅速かつ確実に対応できるよう資金の流動性を確保しております。
(注) 上記譲渡契約は、下記の「③包括的業務契約」に内包されております。下記の「③包括的業務契約」は、上記5件の譲渡契約の後に締結している契約であり、上記5件の譲渡契約の内容を補完する包括的契約であります。当社が久留米大学に支払うロイヤリティ及び契約解除の取扱いなど上記譲渡契約に規定されていない事項については、下記の「③包括的業務契約」において、上記5件の譲渡契約に関して包括的に規定しております。
(注) 上記譲渡契約は、下記の「③包括的業務契約」に内包されております。下記の「③包括的業務契約」は、上記2件の譲渡契約の後に締結している契約であり、上記2件の譲渡契約の内容を補完する包括的契約であります。当社が久留米大学に支払うロイヤリティ及び契約解除の取扱いなど上記譲渡契約に規定されていない事項については、下記の「③包括的業務契約」において、上記2件の譲渡契約に関して包括的に規定しております。
当社は、設立以来、新規作用メカニズムのがん免疫治療薬の研究開発を行っています。
なお、当社は医薬品開発事業及びこれに付随する単一セグメントであり、当事業年度における研究開発費は1,484百万円であります。
(1)GRN-1201:がんペプチドワクチン
GRN-1201は、欧米人に多いHLA-A2型のペプチド4種で構成される、米国や欧州を始めとするグローバル展開を想定したがんペプチドワクチンです。より多くの抗腫瘍効果をもつT細胞を誘導できるよう複数抗原をワクチンとして投与するところに特徴があります。米国でメラノーマ(悪性黒色腫)を対象に第一相臨床試験を実施し、安全性と免疫誘導が示され、現在は同じく米国で、非小細胞肺がんの、免疫細胞にダメージを与える化学療法をいくつも経た患者でなく一次治療(ファースト・ライン)の患者を対象に、日本発ワクチンとしては初となる、免疫チェックポイント阻害抗体ペンブロリズマブとの併用による第二相臨床試験を実施しています。これまでのがんワクチンの開発は、ワクチンで誘導された活性化T細胞が、免疫抑制がかかる腫瘍局所に浸潤したとき疲弊してしまう可能性が技術課題として挙げられてきました。そこで、本第二相臨床試験では、ペンブロリズマブをワクチンと併用することで免疫抑制を一部解除し、T細胞が本来の抗腫瘍効果を発揮できるようになることを想定しています。一定の累積症例数に至ったところで、中間評価を行い、目標とする奏効率をクリアしていれば、さらに症例数を積み重ねていきます。
本試験は米国で進めており、治験施設は地域の中核病院として新型コロナウイルスの感染拡大防止への対応に追われているため、現在の臨床試験中のがん治療薬候補の大部分と同様に、追加の患者登録が一時的に滞っている状況にあります。この状況が想定より長引けば全体の治験計画に影響を及ぼす可能性があります。
(2)BP1101:ネオアンチゲン
BP1101は、がん特有の遺伝子変異由来の抗原(ネオアンチゲン)に対するがん免疫を誘導する完全個別化ネオアンチゲンワクチンです。がん遺伝子変異量(ネオアンチゲンの量)と免疫チェックポイント抗体療法の奏功が相関することから、同抗体によりネオアンチゲンをがんの目印として認識するT細胞の抗腫瘍効果が高まると考えられています。このネオアンチゲンは患者一人ひとりで全く異なるため、一人ひとりに個別のネオアンチゲンワクチンを製造し投与する完全個別化治療となり、一定の患者層に共通した薬剤を大量製造することを前提とする従来の医薬品とは異なる開発法が求められます。現在非臨床試験を進めています。
(3)BP1401:TLR9アゴニスト
BP1401は、免疫抑制が強くかかる腫瘍微小環境において抗腫瘍効果を持つT細胞が能動的に賦活化される環境を整えるために、樹状細胞の受容体TLR9を刺激するTLR9アゴニストです。BP1401による刺激はサイトカインシグナルを介して、T細胞が腫瘍局所に浸潤していない“Cold Tumor”を、それらが多く存在する“Hot Tumor”へと転換することを図るものです。BP1401は、このTLR9アゴニストの有効成分である核酸を脂質に織り込む脂質製剤とすることで安定性を高め、標的とするTLR9発現樹状細胞へのデリバリーを高めています。現在非臨床試験を進めています。
(4)iPS-NKT:iPS細胞由来再生NKT細胞療法
iPS-NKTは、iPS細胞から再分化誘導したNKT細胞を用い、固形がんを対象とする新規の他家細胞医薬です。NKT細胞は、多面的な抗腫瘍効果を持ちながら、血中に僅かしか存在しないため、従来の培養法では細胞療法として機能を保った細胞を十分量確保できないという課題がありました。そこで、NKT細胞を一旦iPS細胞化することによって、培養での高い増殖能を付与し、そこからNKT細胞に再び分化誘導するという技術開発に成功し、これをがん免疫細胞療法に用いることができるようになりました。iPS細胞技術は、現在の自家中心の細胞療法に、均質な細胞の大量製造を可能にするマスターセルバンク型の他家細胞療法を可能にし、当年度は数々の大手製薬企業の参入が表明されましたが、臨床試験に進むに当たってこれらに先行しております。
当社は2018年に、理化学研究所が進める本開発プロジェクトに参画し、共同研究を進めており、iPS-NKTの独占的開発製造販売ライセンスの導入オプション権を有しています。世界でも初となるiPS細胞由来再生NKT細胞療法の臨床応用実現に向け、医師主導治験を後押しするとともに、医師主導治験に続く企業治験を見据えた製造工程改良を進めてまいります。
(5)BP2301:HER2 CAR-T
BP2301は、様々な固形がんで高発現しているHER2抗原を認識するキメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞(HER2 CAR-T細胞)療法です。血液がんで70-90%の奏効率に至ることもあり、優れた臨床効果を示し承認されたCAR-T療法を、より多くの患者がいる固形がんへと適応を拡げることを目指しています。固形がんへの展開には、がん免疫に抑制がかかる腫瘍微小環境においてCAR-T細胞が疲弊し十分に機能を発揮できないという課題があります。この課題を解決するために、当社は信州大学の中沢洋三教授及び京都府立医科大学の柳生茂希助教らと新規CAR-T細胞培養法を共同開発し、これを中沢教授の非ウイルス遺伝子導入法と組み合わせることにより、若いメモリーフェノタイプの、体内で長期生存可能で、したがって持続的な抗腫瘍効果発現が期待されるCAR-T細胞の製造に成功しました。現在、非臨床試験を実施中です。
(6)BP1200:抗CD73抗体
BP1200は、腫瘍内でのアデノシン産生に介入するCD73を標的とする新規免疫調整因子抗体です。腫瘍内で産生されるアデノシンは、T細胞の疲弊と抑制を引き起こし、抗腫瘍免疫活性を低下させます。CD73は多くのがんで高発現し、予後不良を引き起こすことが報告されています。BP1200はCD73のアデノシン産生酵素の機能を阻害します。
T細胞ががん細胞を殺傷するがん免疫の成立を妨げる様々な要因が腫瘍局所には存在しますが、その要因のトリガーとなる免疫調整因子の代表的なものがPD-1/PD-L1です。ニボルマブやペンブロリズマブといった抗PD-1抗体は、T細胞疲弊を促す免疫チェックポイントPD-1を抗体で阻害することによってがん免疫の成立が可能となることを、科学的に証明しました。抗PD-1抗体はがん治療の革新をもたらしましたが、それでも奏効率はがん種により10-40%であり、残りの抗PD-1抗体で効果が得られない60-90%の患者の「がん免疫」を、PD-1以外の抑制系免疫調整因子の一つであるCD73を阻害することによって成立させようとするのがBP1200です。今後リード最適化とさらなる機能評価ならびにより機能の高い新規クローンの取得を進める予定です。
(7)BP1210:抗TIM-3抗体
BP1210は、世界各国の多様ながん種、ステージで医薬品承認が進む免疫チェックポイントPD-1/PD-L1阻害抗体に続く、免疫チェックポイントTIM-3を阻害する新規抗体です。TIM-3はPD-1分子の局在や機能と同様に、T細胞に発現し、腫瘍局所においてT細胞の疲弊を促します。BP1210は、T細胞に発現するTIM-3を阻害することにより、TIM-3がもたらす細胞疲弊を回避し、抗腫瘍免疫活性を亢進します。抗PD-1抗体で、抑制系免疫チェックポイントの阻害で「がん免疫」が成立することが科学的に証明されたように、同じ抑制系免疫チェックポイントTIM-3を阻害することにより、抗PD-1抗体だけでは不十分だった「がん免疫」を成立させることを目指します。今後リード最適化とさらなる機能評価ならびにより機能の高い新規クローンの取得を進める予定です。
(8)その他の開発プログラム
これらに加え、新しい世代のがん免疫を亢進する抗体医薬シーズを複数創製しており、川崎創薬研究所においてこれらの研究を加速してまいります。