当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「ITサービスで企業の成長を継続的に支援します」というミッションを掲げております。私達は、ITサービスを通じてデジタル化を継続的に推進し、企業の成長と、そこで働く人々の幸せに貢献してまいります。さらに、行動指針として以下の「リーダーシッププリンシプル」を掲げ、長期ビジョンである「日本を代表する企業になる」ことの達成を目指しております。
(リーダーシッププリンシプル)
自分自身の会社だと思う
リーダーは自分自身が会社のオーナーであると考えます。そのため常に当事者意識をもって事にあたります。優先すべきことは会社が長期にわたって継続的に成長していく事です。もし上司や役員が自社の成長にとってマイナスの意思決定をしていると感じた場合には、強い意思をもって意見を言います。
全体最適視点をもつ
リーダーは会社全体の成長にとって何が大切かを常に考え行動します。自分の部署やチームだけの利害にこだわりません。活動を最適化するために、他部署の情報も積極的に収集します。
誠意をもって人と接する
リーダーは周囲の一人一人に対して誠意をもって話を聞きます。自分や会社の立場だけではなく、相手の立場にもたって物事を考えます。相手が納得感を持った上で双方が望む方向へ導くよう最大限努力します。
学習し成長し続ける
リーダーは自分の目的にとって必要な新しい知識や経験を得るために貪欲に努力します。常に最新の情報にふれ知識をアップデートします。競合や他業界の優れた企業から積極的に学び、それを自社の成長のために活かします。
小さく試して大きく育てる
リーダーは新しい試みを積極的に行います。新しい試みは、それが実際に機能するかどうか分かりません。仮説が本当に正しいかどうか、小さな範囲、小さな予算からスタートし実証を行います。取捨選択を行いながら範囲や予算を拡大していき、最終的に大きく育てます。
費用対効果を考える
リーダーは予算執行の権限を持ちます。すべての予算は、それが費用対効果にみあっているのか検証される必要があります。予算執行をする際には、会社のお金だからという安易な気持ちを決してもちません。
やるべきことを実行する
リーダーは、やるべき事が何なのかを常に考えます。自分がやりたい事ではなく、顧客や組織の課題を解決するために必要な事を実行します。
他者の考えを受け入れる
リーダーは自分の考えと異なることがあった場合でも、それを素直に受け止めます。自分自身への健全な疑いを持ち、本当に正しい事が何なのかを第三者的な視点で考えます。もし自分が間違っていると気づいた時には素直にそれを認め、より正しい状態へ向かうために常に努力します。
失敗を許容する
リーダーは周囲の人の仮説をたてた上での失敗を許容します。知識としては知っている事でも実際に経験しないと分からないことが時にあります。失敗は大きな学びの機会であると考え、それを活かすよう促します。
考えている事を言葉で伝える
リーダーは自分自身の考えを必ず言葉で伝えます。自分が考えている事は、言葉以外では伝わりません。浸透しない場合は、伝わるまで丁寧に繰り返し伝えます。
結果にこだわる
リーダーはゴールを意識し達成するために最善を尽くします。困難があってもそれに立ち向かい妥協しません。また万が一を想定し、常に次善の策をイメージしておきます。
(2)経営戦略等
当社グループが競争力を高め、持続的な成長を実現するための施策として、当社の成長を牽引している「楽楽精算」「楽楽明細」「楽楽販売」をはじめとした「楽楽シリーズ」にリソースを重点的に配分します。その他のサービスについては競争優位性と市場の成長性を勘案した上で、利益貢献を重視しながら適切にリソースを配分することにより、当社グループ全体の持続的な事業成長を目指してまいります。
(3)経営環境
当社が所属する情報通信サービス市場においては、人手不足や働き方改革の影響からデジタルトランスフォーメーションによる業務効率化を推進する企業が増加する等、IT投資への意欲は引き続き旺盛に推移しております。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
インターネットは経済活動を支えるインフラとして不可欠なものとなっており、当社グループが提供しているクラウドサービス及びITエンジニア派遣サービスは今後も需要が拡大するものと予測されます。
当社グループの更なる成長を実現するため、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりであります。
① 成長サービスへの集中・強化
クラウドサービス市場は、今後も規模が拡大すると予測されておりますが、一方で新規参入の増加、サービスの飽和等が進むものと考えております。
当社グループは今後も継続的に事業を拡大するため経営資源を成長サービスに集中させ、それぞれの分野において一定の市場シェアを獲得することで収益の拡大に努めてまいります。
② 認知度の向上
当社グループはこれまでインターネットやテレビ、雑誌への広告の掲載、展示会への出展や販売代理店を通じて顧客を獲得してまいりました。提供する各サービスの顧客数を拡大し、企業価値の向上を実現するには当社及びサービス名の認知度の向上が不可欠であると考えております。
引き続き、費用対効果を見極めながら、インターネットやテレビ、雑誌などマスメディアの活用に加え、展示会への出展を通じて、更なる認知度の向上に努めてまいります。
③ 営業力の強化
クラウド事業では、東京・大阪・札幌・名古屋・新潟・広島・福岡の7拠点で営業活動を行っており、今後も営業人員を増員し営業力を強化するとともに、パートナー企業や販売代理店との連携を強化することにより販路の拡大も図ってまいります。
また、中長期的には、既存顧客に対しても、当社グループの他のサービスを追加で提案していく販売アプローチを進め収益機会の最大化に努めてまいります。
IT人材事業は、派遣先での業務を通じてITエンジニアのキャリアアップを行い、提供するサービスの高付加価値化を行う事業であり、多くの案件を常に確保し、ITエンジニアの成長機会を提供することが不可欠であります。そのため営業担当者が顧客のニーズを引き出し、最適なマッチングを行うことで継続的な案件確保に努めてまいります。
④ 開発力の強化
クラウドサービス市場においてサービスの機能優位性を維持していくためには機能の改善・追加をスピーディーかつ継続的に実施していく必要があります。
当社グループでは、従来の国内開発に加え、ベトナムに開発拠点を設立する等開発リソースの確保に注力してまいりました。今後も国内外を問わず開発力の強化に努めてまいります。
⑤ マーケティングの強化
現在クラウド事業において行っているマーケティング戦略は、時間とともに陳腐化する可能性があります。そのため新たなマーケティング手法を取り入れ、得られたデータを分析し販売力の強化に努めてまいります。
⑥ サービスラインナップの強化
当社グループは、法人向けに業務効率化に貢献するクラウドサービスとして、多様なサービスを提供するサービスポートフォリオ管理を特色としております。
サービスラインナップを拡充することで、主力サービスである経費精算システム「楽楽精算」への依存度を低下させるとともに、新たな事業成長の機会を確保し、持続的な成長の実現を目指してまいります。
⑦ 人材の確保
当社グループの成長のためには優秀な人材を数多く確保することが不可欠であります。そのため積極的な採用活動を継続することはもちろんのこと、労働市場において知名度の向上を図り採用力の向上に努めてまいります。
⑧ システムの安定性の確保
当社グループは、インターネット上で顧客にサービスを提供しており、システムの安定稼働の確保は必要不可欠であります。安定してサービスを提供していくため顧客の増加に合わせたサーバーの増設等の設備投資を継続的に行い、システムの安定性の確保に努めてまいります。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは1株当たり利益(EPS)の持続的成長を最重要指標として掲げております。1株当たり利益(EPS)を中長期で大きく伸長させていくために、成長投資を強化して売上高の拡大を目指してまいります。
現在取り組んでいる中期経営目標において、成長投資強化期間中は高い売上高成長を優先いたしますが、最終年度に向けて投資効率を見極め、営業利益率を継続的に向上させることで、1株当たり利益(EPS)の持続的伸長を目指してまいります。
なお、中期経営目標数値は以下のとおりです。
・5カ年の売上高 : CAGR(年平均成長率)27%~30%
・2026年3月期 当期純利益 : 100億円以上
・2026年3月期 純資産 : 200億円以上
売上高CAGRにつきましては、足元の数値を踏まえ、上限、下限ともに引き上げます。
見直し後の、中期経営目標数値は以下のとおりです。
・5カ年の売上高 : CAGR(年平均成長率)31%~32%
・2026年3月期 当期純利益 : 100億円以上
・2026年3月期 純資産 : 200億円以上
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
世界最速で進行する労働人口減少という課題において、経済的豊かさを維持するためには一人当たりの労働生産性を高める施策が求められます。ラクスはマテリアリティ(重要課題)に誠実に向き合い、ミッションである「ITサービスで企業の成長を継続的に支援します」、ビジョン「日本を代表する企業になる」の実現を通じて、社会課題を解決に近づけ、豊かな社会の実現に貢献できると考えています。
(1)ガバナンス
この「サステナビリティの考え方」を経営の基盤とし、社内外のステークホルダーとのエンゲージメントを向上させながら、社会・経済環境の変化に即応した的確な意思決定ができる組織体制を永続的に運用していきます。
(2)戦略
ラクスは、社会課題に向き合い、事業を通じてよりよい社会の実現に近づけるため、持続可能な事業運営を重視しています。事業を推進するにあたり、社会課題と照らし合わせてラクスが向き合うべきリスクと機会を整理し、マテリアリティを特定しました。
① 顧客に寄り添うサービスの提供
DXを実現して労働生産性を向上させるためには、顧客の業務を深く理解し、顧客の課題やリテラシーに寄り添ってサービスを提供することが必要です。ラクスは一社一社のお客様に誠実に向き合い業務課題の解決、効率化に貢献します。
② 顧客志向の製品開発
顧客の業務を深く理解し、最新技術の動向を把握しながら必要な技術を取り入れ、顧客の課題を解決する製品・機能を開発します。顧客に安定した製品を提供し続けるため、セキュリティの強化にも取り組んでいます。
③ 安心して働き、成長し続けられる環境の整備
社員一人ひとりが能力を最大限発揮でき、働きがいを感じながら業務を遂行できる環境の提供に努めます。多様性を尊重し、社員一人ひとりが成長を続けることで労働生産性が向上し、社会へ提供できる価値の総量が増加します。
④ 事業の継続と成長を支える強固な経営基盤の確立
私たちが事業を継続させ、成長させることが、豊かな社会の実現の一助になると考えています。そのためラクスはコーポレートガバナンスの強化やコンプライアンスの徹底により、事業成長を支える経営基盤を強化しています。
マテリアリティとして特定しているとおり、ラクスでは「安心して働き、成長し続けられる環境の整備」への取り組みの重要性を認識しています。
性別や年齢などにかかわらず多様な人材を積極的に採用するとともに、社員が成長するための機会及び環境を提供し、社員個人の自発的な成長を促進することで、一人ひとりの成長と組織パフォーマンスの最大化を実現できる仕組みづくりに取り組んでいます。
また、リーダーシッププリンシプル(行動指針)を取り組みの中心に据えることで、それぞれの活動を有機的に結びつけ、社員個人の成長と組織パフォーマンスの向上により事業の持続的成長を目指す企業文化の醸成を促進しています。
(3)リスク管理
事業を取り巻く外部環境におけるリスクと機会を以下のとおり選定・抽出し、これらを見据えた事業推進の体制を構築しています。
また、リスクの適切な管理・運営による経営の健全性を確保するために「リスク管理規程」を定め、具体的な事象を想定した経営に重大な影響を与えるまたはその可能性が高いリスクの発生に備えています。
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主な外部環境 |
リスク |
機会 |
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価値観・働き方の多様化 |
エンゲージメントの低下 労働生産性の低下 |
多彩なバックグラウンドを持った人材の確保 |
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少子高齢化の進展 |
将来的な市場の縮小 専門性を備えた人材の取り合い |
業務の効率化・生産性向上ニーズの高まり |
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技術進化とコモディティ化 |
提供サービスのコモディティ化による収益機会の減少 サイバー攻撃によるリスクの高まり |
先端技術の活用による多様なサービス提供機会の増大 |
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地球環境への課題意識の高まり |
資本市場・潜在顧客におけるネガティブスクリーニング対象としてのリストアップ |
新たな判断基準による選択機会の増加 |
当社グループの事業においてリスクの要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しております。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。
(1)経営環境の変化について
当社グループは、インターネット業界においてクラウドサービス及びITエンジニア派遣サービスを提供しております。現在は顧客企業のIT投資マインドの上昇を背景として事業を拡大しておりますが、今後国内外の経済情勢や景気動向等の理由により顧客企業のIT投資マインドが減退するような場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)競合他社による影響について
当社グループのクラウド事業では先行者メリットを活かしつつ、顧客のニーズに合ったサービスの開発を行うことで優位性を高めております。しかしながらクラウドサービスの新規参入の技術的な障壁は必ずしも高いものとは言えず、資金力、ブランド力を有する大手企業をはじめとする競合他社により類似したサービスが開発され価格競争が激化した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)特定の製品への依存リスクについて
当社グループは、法人向けに業務効率化に貢献するクラウドサービスの提供を行っており、経費精算システム「楽楽精算」(2024年3月期 売上:14,446百万円)が主力サービスとして、当社グループの業績を牽引しております。「楽楽精算」が当社グループの売上高に占める割合は大きく、今後、競合製品との競争激化により売上高が大幅に減少した場合には、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。
(4)技術革新等への対応について
当社グループが各種サービスを提供するインターネット業界においては新技術の開発及びそれに基づく新サービスの導入が頻繁に行われており、非常に変化の激しい業界となっております。そのため常に新しい技術要素をITエンジニアに習得させてまいりますが、何らかの理由で技術革新への対応が遅れた場合当社グループが提供するサービスの競争力が低下する可能性があります。また、新技術への対応のため予定していないシステムへの投資が必要となった場合、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
また、会計、税務、人事労務その他の規制に関する変更により、当社グループが提供するサービスについて重大な修正を要した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(5)ITエンジニア派遣市場の動向について
現在、多様なインターネットサービスの登場や企業の情報システム化に伴い国内ITエンジニア派遣市場は活況を呈しておりますが、企業によるシステム開発の内製化、人件費や事業コストの安い新興国の企業・人材を活用して開発コストを削減するオフショア開発が当社グループの想定する以上に急激に進んだ場合、及び、主要な派遣先の業績不振等により派遣受入ニーズが減退した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)主要な取引先の喪失の可能性について
IT人材事業においては数十名規模のチームで派遣を行う場合もあり、その結果1社当たりの売上額が大きい取引先が存在します。取引先とのコミュニケーションを頻繁にとることで取引先のニーズに合った人材を派遣し顧客満足度の向上に努めておりますが、何らかの原因によりそれらの取引先の喪失があった場合、当社グループの業績に重大な影響を与える可能性があります。
(7)システムトラブルによるリスクについて
当社グループはクラウドサービスを提供しており、同サービスの保守・運用・管理は通信ネットワークに依存しております。安定的なサービス提供のため、サーバー設備の増強や情報セキュリティ責任者が適切なセキュリティ手段を講じることで外部からの不正アクセスの回避等を行っておりますが、以下のシステム障害が発生した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
①サービス提供を行っているコンピューターシステムへの急激なアクセスの増加や電力供給の停止等の予測不可能な様々な要因によって当該コンピューターシステム及び周辺システムがダウンした場合。
②コンピューターウィルスやハッカーの侵入等によりシステム障害が生じた場合。
③従業員の過誤等によって、当社グループの提供サービスのプログラムが書き換えられたり、重要なデータが削除された際、事態に適切に対応できず信用失墜や損害賠償による損失が生じた場合。
(8)法的規制によるリスクについて
①クラウド事業について
当社グループは、電気通信事業者(旧一般第二種電気通信事業者)として総務省に届出(届出番号E17-2681)を行っており、電気通信事業法に基づく通信役務の提供を行っております。現在のところ、当社の事業に対する同法による規制の強化等が行われるという認識はありませんが、社会情勢の変化等により当社の事業展開を阻害する規制の強化等が行われる可能性は絶無では無く、万一かかる規制の強化がなされた場合には、当社グループの事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
また、インターネットの普及に伴い、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダー責任制限法)」、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」及び「特定商取引に関する法律」等の法令が整備されておりますが、今後、これらの法律による規制の強化、関連業者を対象とした新たな法的規制等が制定された場合、当社グループの業務が一部制約を受け、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
②IT人材事業について
当社グループのIT人材事業においては、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(以下「労働者派遣法」という。)により規制されているため、当社は同法に基づき厚生労働大臣の許可を受け、一般労働者派遣事業を行っております(派遣:派13-310802、紹介:13-ユ-309573)。労働者派遣法は、労働者派遣事業の適正な運営を確保するために、派遣事業を行うもの(派遣元事業主)が、派遣元事業主としての欠格事項に該当したり、法令に違反した場合には、事業許可の取り消し、又は業務の停止を命じる旨を定めています。当社では、社員教育の徹底、内部監査等による関連法規の遵守状況モニター、取引先の啓蒙等により、法令違反等の未然防止に努めていますが、万一当社役職員による重大な法令違反等が発生した場合、当社グループの業績に重大な影響を与える可能性があります。
(9)特定の人物への依存について
代表取締役社長である中村崇則は、当社グループの創設者であり、会社経営の最高責任者として経営方針や事業戦略の決定をはじめ、当社グループの事業推進において重要な役割を果たしております。
当社グループは、中村崇則に過度に依存しない経営体制を整備するため、取締役間の相互の情報共有や事業部制導入による経営組織の強化を図っております。しかしながら、何らかの理由により中村崇則が当社グループの業務を継続することが困難になった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(10)人材の採用・育成について
今後の業容拡大を図る中で、各事業において、専門性を有する人材の採用・育成は不可欠であると認識しております。そのため人材の採用・育成を継続的に行っておりますが、今後各事業において人材獲得競争が激化し、優秀な人材の採用が困難となる場合や在職している人材の社外流出が大きく生じた場合、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(11)情報管理体制について
当社グループは、提供するサービスに関連して多数の顧客企業の機密情報や個人情報を取り扱っております。これらの情報資産を保護するため情報セキュリティ基本方針を定め、この方針に従って情報資産を適切に管理、保護しておりますが、このような対策にもかかわらず重要な情報資産が外部に漏洩した場合には、当社グループの社会的信用の失墜、損害賠償請求の発生等により、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(12)知的財産の侵害におけるリスクについて
当社グループは、提供しているサービスの名称について商標登録申請をしております。また、第三者の知的財産の侵害の可能性については、法務担当及び顧問弁護士並びに弁理士等を通じて事前調査を行い対応しております。しかしながら、万が一、当社グループが第三者の知的財産権を侵害した場合、当社グループへの損害賠償請求やロイヤリティの支払要求、使用差止請求等が発生し、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(13)海外子会社について
当社グループは、海外子会社においてクラウドサービスの一部を開発しており、当該国の政治・経済・社会情勢の変動に起因して生じる予期せぬ事態、各種法令・規則の変更等により当地における事業の継続が困難となる等のカントリーリスクを有しております。カントリーリスクについては顧問契約を締結している現地の会計事務所や法律事務所と情報を共有し適切に対応することでリスクヘッジを行っております。しかしながら、このようなリスクが顕在化した場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(14)自然災害について
クラウド事業の顧客の情報資産が格納されるサーバーは、東京都内及び大阪府内に分散管理することでリスクを分散させておりますが、データセンターやその周辺ネットワーク設備等に被害を及ぼす災害、事故等が発生し情報資産の消失又はサービスの提供が維持できない状態に至った場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。また、災害、事故等によりIT人材事業における派遣先の重要な設備が損壊し事業活動の停止もしくは事業継続に支障をきたす事態が発生した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(15)有価証券の価格変動リスク
当社グループでは、有価証券を保有しておりますが、市場価格のない株式等以外の有価証券については、株式市場の変動などにより時価が著しく下落した場合には、評価損を計上することとしております。また、市場価格のない有価証券については、期末時点での発行会社の財務状況や今後の見通しから減損すべきだと判断した場合には、評価損を計上することとしております。このような状況になった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(16)のれんの減損による影響について
当社グループは、企業買収に伴い生じたのれんを2024年3月期末時点で1,696百万円計上しております。買収時の収益計画と概ね相違ない進捗であり、減損の兆候はないと判断しているものの、収益性の悪化などによる価値の毀損により、当該のれんの減損処理を実施する場合は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が5類感染症へ移行されたことによる行動制限の緩和、雇用・所得環境の改善により、緩やかな回復が見られました。一方、世界的な物価高騰が継続するとともに、各国の金融引き締め影響による海外景気の下振れリスクもあり、先行きについては不透明な状況が続いております。
当社が所属する情報通信サービス市場においては、働き方の見直しや人手不足等による業務効率化への関心の高まりに伴い、企業業務のデジタル化が進展しており、企業の積極的なIT投資も継続いたしました。
このような経営環境の中、当社グループは、2021年3月期を基準として、2026年3月期までの5ヵ年で売上高をCAGR(年平均成長率)27%~30%、2026年3月期の親会社株主に帰属する当期純利益100億円以上、純資産200億円以上とする中期経営目標に取り組んでおります。中でも、特に重視している売上高目標の上限であるCAGR30%の達成に向けて、成長投資を継続しながら、投資効率の向上による利益拡大も実現する方針です。
中期経営目標の3年目となる2024年3月期において、クラウド事業は、組織体制の見直しによる生産性向上に取り組むとともに、主力サービスを中心に新規採用や広告宣伝といった積極的な投資を継続いたしました。IT人材事業については、エンジニアの稼働率が低下したことから、新規採用を抑制して営業活動の強化に努めました。
この結果、当連結会計年度の業績は、売上高38,408百万円(前連結会計年度比40.2%増)、営業利益5,559百万円(前連結会計年度比235.7%増)、経常利益5,610百万円(前連結会計年度比234.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益4,185百万円(前連結会計年度比228.4%増)となりました。
財政状態については次のとおりであります。
a.資産
当連結会計年度末における流動資産は13,145百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,666百万円増加いたしました。これは主に、売掛金が1,616百万円、現金及び預金が1,020百万円それぞれ増加したことによるものであります。固定資産は8,088百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,494百万円増加いたしました。これは主に、顧客関連資産が2,067百万円、のれんが1,232百万円、投資有価証券が429百万円、工具、器具及び備品が337百万円、繰延税金資産が250百万円、差入保証金が99百万円、建物及び構築物が32百万円それぞれ増加したことによるものであります。
この結果、総資産は21,234百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,160百万円増加いたしました。
b.負債
当連結会計年度末における流動負債は7,372百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,025百万円増加いたしました。これは主に、1年内返済予定の長期借入金が750百万円、未払法人税等が672百万円、未払消費税等が482百万円、未払金が385百万円、契約負債が316百万円、未払費用が221百万円それぞれ増加したことによるものであります。固定負債は513百万円となり、前連結会計年度末に比べ335百万円増加いたしました。これは主に、長期借入金が183百万円、繰延税金負債が128百万円それぞれ増加したことによるものであります。
この結果、負債合計は7,886百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,361百万円増加いたしました。
c.純資産
当連結会計年度末における純資産合計は13,347百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,799百万円増加いたしました。主な要因は、利益剰余金が剰余金の配当により353百万円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により4,185百万円増加したことによるものであります。
経営成績については次のとおりであります。
a.売上高
当連結会計年度の売上高は38,408百万円(前連結会計年度比40.2%増)となりました。クラウド事業においては「楽楽精算」「楽楽明細」が好調に推移しており、売上高は32,466百万円(前連結会計年度比45.7%増)となっております。IT人材事業においては稼働エンジニア数の増加により、売上高は5,942百万円(前連結会計年度比16.0%増)となりました。
b.売上原価、売上総利益
当連結会計年度の売上原価は10,789百万円(前連結会計年度比25.1%増)となりました。これは主に労務費の増加によるものであります。この結果、売上総利益は27,619百万円(前連結会計年度比47.1%増)となりました。
c.販売費及び一般管理費、営業利益
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は22,059百万円(前連結会計年度比28.8%増)となりました。これは主に、業容拡大に伴う給料手当、広告宣伝費が増加したことによるものであります。この結果、営業利益は5,559百万円(前連結会計年度比235.7%増)となりました。
d.営業外収益、営業外費用及び経常利益
当連結会計年度の営業外収益は為替差益、関係会社貸倒引当金戻入額等により53百万円(前連結会計年度37百万円)となりました。
当連結会計年度の営業外費用は支払利息等により2百万円(前連結会計年度16百万円)となりました。これらの結果、経常利益は5,610百万円(前連結会計年度比234.5%増)となりました。
e.特別損益、親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の特別利益は受取和解金の計上により7百万円(前連結会計年度215百万円)となりました。
当連結会計年度の特別損失は固定資産除却損の計上により9百万円(前連結会計年度52百万円)となりました。
この結果、税金等調整前当期純利益は5,608百万円(前連結会計年度比204.8%増)となり、法人税等合計1,422百万円(前連結会計年度比151.7%増)の計上により、親会社株主に帰属する当期純利益は4,185百万円(前連結会計年度比228.4%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
a.クラウド事業
クラウド事業は、組織体制の見直しによる営業活動・マーケティング活動の強化に取り組みました。主力サービスの楽楽精算、楽楽明細においては、インボイス制度や電子帳簿保存法を契機とした需要の高まりを受け、新規導入社数が大幅に増加しました。また、2023年7月に連結子会社化した株式会社ラクスHRテックの業績が、第2四半期連結会計期間より寄与しております。
この結果、売上高は32,466百万円(前連結会計年度比45.7%増)、セグメント利益は4,979百万円(前連結会計年度比332.0%増)となりました。
b.IT人材事業
IT人材事業は、低下していた稼働率を改善するために新規採用の抑制と営業活動の強化に努めたことで、稼働エンジニア数が増加しました。
この結果、売上高は5,942百万円(前連結会計年度比16.0%増)、セグメント利益は580百万円(前連結会計年度比15.2%増)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,018百万円増加し、7,008百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
a.営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、5,288百万円の収入(前連結会計年度は2,170百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益5,608百万円、減価償却費577百万円、未払消費税等の増加額490百万円、未払金の増加額377百万円、のれん償却額290百万円、未払費用の増加額205百万円の増加要因があった一方、売上債権の増加額1,429百万円、法人税等の支払額1,156百万円の減少要因があったことによるものであります。
b.投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動によるキャッシュ・フローは、4,860百万円の支出(前連結会計年度は699百万円の支出)となりました。これは主に、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出3,306百万円、有形固定資産の取得による支出814百万円、投資有価証券の取得による支出499百万円、差入保証金の差入による支出217百万円によるものであります。
c.財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動によるキャッシュ・フローは、579百万円の収入(前連結会計年度は348百万円の支出)となりました。これは主に、長期借入れによる収入1,500百万円の収入があった一方、長期借入金の返済による支出566百万円、配当金の支払額353百万円があったことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは、インターネット上での各種サービス及びITエンジニア派遣を主たる事業としており、生産に該当する事項が無いため、生産実績に関する記載はしておりません。
b.受注実績
当社グループは、受注生産を行っておりませんので、受注実績に関する記載はしておりません。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月1日 至 2024年3月31日) |
前連結会計年度比(%) |
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クラウド事業(百万円) |
32,466 |
145.7 |
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IT人材事業(百万円) |
5,942 |
116.0 |
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合計(百万円) |
38,408 |
140.2 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.総販売実績に対する割合が10%以上の相手先はありません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。
セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりです。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、成長投資にかかる人件費及び広告宣伝費等の売上原価、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要のうち主なものは、サーバー等の設備投資、子会社株式の取得等によるものです。
当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、自己資金を基本としているものの、金融機関からの長期借入等について柔軟に対応することとしております。
なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は970百万円であり、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は7,008百万円となっております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表作成においては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、次のとおりです。
当社グループは1株当たり利益(EPS)の中長期での成長を最重要指標として掲げております。1株当たり利益(EPS)を中長期で大きく伸長させていくために、成長投資を強化して高い売上高成長を実現した後に、効率化を追求して利益成長を実現する方針の中期経営目標を掲げております。
具体的には、2021年3月期を基準として、2026年3月期までの5ヵ年で売上高をCAGR(年平均成長率)27%~30%、2026年3月期の親会社株主に帰属する当期純利益100億円以上、純資産200億円以上とする中期経営目標を掲げておりましたが、足元の状況を踏まえ、売上高のCAGRを31%~32%に引き上げます。引き続き中期経営目標の中で、特に重視している売上高目標の高水準での達成に向けて、当初4年間は積極的な投資を行いながら、最終年度に向けて投資効率の向上と利益拡大を目指す方針です。
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決算年月 |
第22期 2022年3月 |
第23期 2023年3月 |
第24期 2024年3月 |
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売上高 |
(百万円) |
20,629 |
27,399 |
38,408 |
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営業利益 |
(百万円) |
1,578 |
1,656 |
5,559 |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
(百万円) |
1,078 |
1,274 |
4,185 |
|
1株当たり当期純利益 |
(円) |
5.95 |
7.03 |
23.10 |
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EBITDA |
(百万円) |
2,158 |
2,263 |
6,480 |
|
EBITDAマージン |
|
10.5% |
8.3% |
16.9% |
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純資産 |
(百万円) |
8,617 |
9,548 |
13,347 |
(注)1.EBITDA=税金等調整前当期純利益+特別損益+減価償却費+のれん償却費+支払利息
2.EBITDAマージン=EBITDA÷売上高
(1) 当社は、2023年5月15日開催の取締役会において、HOYA株式会社が運営するクラウド勤怠管理・給与明細閲覧サービス事業を会社分割(新設分割)して新たに設立した株式会社ラクスHRテックの全株式を取得し、100%子会社化することを決議し、同日付で株式譲渡契約を締結いたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
(2) 当社は、2024年2月13日開催の取締役会において、2024年4月1日を効力発生日として、当社の特定子会社かつ完全子会社である株式会社ラクスHRテックを吸収合併することを決議し、同日付で合併契約を締結いたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。
当連結会計年度における研究開発活動の総額は
当社グループは「ITサービスで企業の成長を継続的に支援します」をミッションに掲げ、将来を見据えた研究開発や新規事業の創出及び新サービスの開発スピードが重要な課題であると考え、安定的な高成長を目指して、「新たなクラウドサービスの追加」を推進するための研究開発活動と中長期の競争力確保につながる研究開発及びノウハウの蓄積を継続的に行っております。セグメント別の研究開発活動の概要は以下のとおりです。
(1) クラウド事業
当セグメントの研究開発活動の金額は
(2) IT人材事業
当セグメントにおいては研究開発活動を行っておりません。