当事業年度におけるわが国経済は、政府や日銀による経済・金融政策を背景に円安株高が進み、企業収益は改善傾向にあり、雇用環境や個人消費も持ち直しの兆しがみられるなど、景気は緩やかな回復基調で推移しました。一方、アメリカの金融政策が正常化へ向かうなか、中国をはじめとするアジア新興国経済の減速傾向や中東を中心とする政情不安による影響など、わが国の景気の先行きは依然として不透明な状況が続いております。
体外診断用医薬品業界におきましては、少子高齢化が進行するなか、インフルエンザウイルスやノロウイルスなど感染症の集団発生への対応を背景に、国民の健康に関する意識は高まり、医療への期待は「治療」から「予防」や「ケア」へとシフトしてきております。また、医療現場におきましても、早期診断・早期治療の重要性の認識はさらに高まっており、特に感染症分野では、小児・老人医療における感染拡大の防止や院内感染の予防対策など早期治療に有用な検査技術が求められており、国内外を問わず微生物検査や遺伝子検査の技術革新のスピードは速まっております。一方では、高齢化に伴う国民医療費の増大を抑えるため、検査においても保険点数改定により、治療に即した検査への淘汰が進んでおり、診断薬関連企業にとっては、医療現場のニーズに応える診断薬の開発、さらには海外市場を視野に入れた製品開発が求められる状況となっております。
このような環境のなか、当社は、医療現場からの様々なニーズに応えるために、POCTメーカーとして新技術や新製品の開発を推進するとともに、既存製品の改善改良にも尽力してまいりました。また、主力製品や新製品の売上拡大に努めるとともに、競争力強化のため生産性の効率化及び合理化にも注力するなど、様々な経営施策を継続的に推進し、経営体質の強化に取り組んでまいりました。
これらの結果といたしまして、当事業年度の売上高は40億82百万円(前期比2.4%増)となりました。
当社は、体外診断用医薬品事業の単一セグメントでありますが、市場分野別の売上高は以下のとおりであります。
| (単位:百万円、%) | ||||
市場分野の名称 | 平成27年12月期 | 平成26年12月期 | |||
| 対売上高 構成比 | 対前期 増減率 |
| 対売上高 構成比 | |
病院・開業医分野 | 3,547 | 86.9 | 4.1 | 3,408 | 85.5 |
OTC・その他分野 | 534 | 13.1 | △7.5 | 578 | 14.5 |
合計 | 4,082 | 100.0 | 2.4 | 3,986 | 100.0 |
市場分野別では、病院・開業医分野におきましては、2014/2015シーズン(当社第1四半期)のインフルエンザの流行が例年より3週間ほど早く始まり、流行のピークが1月に前倒しとなったことから、市場ではインフルエンザ検査薬が品薄状態となりました。当社は自社一貫体制の強みを生かし、そのピーク時においても製品供給を継続できたことから、当検査薬の売上高が急伸しました。一方、2015/2016シーズン(当社第4四半期)は前シーズンとは逆に、例年より1ヶ月以上流行の開始が遅れ、一部期ずれ(後ずれ)が起きましたが、第1四半期の売上高の急伸がこれを補い、当期のインフルエンザ検査薬の売上高は、前期と同水準の19億69百万円(前期比0.0%減)となりました。生化学検査薬は前期比2.9%減と減収となったものの、アデノウイルス検査薬は前期比9.5%増、Strep A(A群β溶血連鎖球菌)検査薬は前期比20.5%増と増収となり、また、前期(平成26年10月)に発売開始したノロウイルス検査薬の売上高が伸長しました。以上により、病院・開業医分野全体の売上高は35億47百万円(前期比4.1%増)となりました。
OTC・その他分野におきましては、妊娠検査薬は前期比2.7%増と堅調に推移したものの、排卵日検査薬は一部の代理店への売上高が減少したため前期比27.0%減となり、OTC・その他分野全体の売上高は5億34百万円(前期比7.5%減)となりました。
利益面につきましては、たな卸資産廃棄損59百万円の計上のほか、業容拡大に向けた人員増や昇給等に伴う人件費の増加、研究開発費の増加により、営業利益は3億88百万円(前期比16.5%減)となりました。また、株式上場関連費用等の発生により、経常利益は3億71百万円(前期比19.1%減)、当期純利益は2億57百万円(前期比18.8%減)となりました。
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ2百万円増加し、41百万円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における営業活動により増加した資金は、17百万円(前期は2億15百万円の増加)となりました。これは主に、たな卸資産の増加2億75百万円及び法人税等の支払1億75百万円によるキャッシュ・フローの減少があったものの、税引前当期純利益3億69百万円、減価償却費52百万円、役員退職慰労引当金の増加28百万円及び退職給付引当金の増加8百万円によるキャッシュ・フローの増加があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における投資活動により減少した資金は、61百万円(前期は42百万円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得60百万円によるキャッシュ・フローの減少があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における財務活動により増加した資金は、46百万円(前期は1億67百万円の減少)となりました。これは主に、短期借入金の純減3億11百万円、長期借入金の返済1億6百万円及び配当金の支払97百万円があったものの、長期借入金による収入3億円及び株式の発行による収入2億69百万円よるキャッシュ・フローの増加があったことによるものであります。
当社は、体外診断用医薬品事業の単一セグメントであるため、生産、受注及び販売の状況については市場分野別に記載しております。
当事業年度の生産実績を市場分野別に示すと、次のとおりであります。
市場分野の名称 | 生産高(千円) | 前年同期比(%) |
病院・開業医分野 | 4,356,453 | 136.1 |
OTC・その他分野 | 526,393 | 84.7 |
合計 | 4,882,847 | 127.7 |
(注) 1.金額は販売価格によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当社は見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
当事業年度の販売実績を市場分野別に示すと、次のとおりであります。
市場分野の名称 | 販売高(千円) | 前年同期比(%) |
病院・開業医分野 | 3,547,488 | 104.1 |
OTC・その他分野 | 534,816 | 92.5 |
合計 | 4,082,304 | 102.4 |
(注) 1. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先 | 前事業年度 (自 平成26年1月1日 至 平成26年12月31日) | 当事業年度 (自 平成27年1月1日 至 平成27年12月31日) | ||
販売高(千円) | 割合(%) | 販売高(千円) | 割合(%) | |
東邦薬品株式会社 | 626,423 | 15.7 | 639,048 | 15.7 |
株式会社メディセオ | 584,497 | 14.7 | 526,991 | 12.9 |
体外診断用医薬品業界におきましては、医療現場におけるPOCT検査薬の重要性が高まっている一方で、競合他社との技術及び価格競争などにより、引き続き厳しい状況が続くことが予想されます。このようななか、当社は、ユーザーに信頼される製品を供給することを基礎として、以下の課題への取り組みを通じて経営の合理化及び業績の向上に努めてまいります。
(1) 病院・開業医分野におけるPOCT検査薬の開発
小児科など医療現場では、特に迅速な治療を要する感染症のPOCT検査薬の項目開発や性能向上が求められており、加えて院内感染防御※1における迅速な検査体制の強化が課題となっております。
この課題に対応すべく、当社はモノクローナル抗体※2の新規開発及び性能向上、並びにイムノクロマト法の性能向上を図るために、新たなPOCT検査薬項目や薬剤耐性因子※3を検出する検査薬の創出を目的として、専門機関との共同開発に取り組んでおります。
(2) 次世代POCT機器試薬システムの開発と機器試薬市場への参入
インターネット等による情報伝達が進み、患者の知識が向上するなか、病院・開業医分野では、治療法の選択において患者への検査結果にかかる情報提供が重要となっており、多種多様なPOCT検査薬が求められております。また、POCT検査は治療に直結する検査であることから、迅速かつ的確な検査結果が診療の場で得られる必要性があります。そのため、各種項目について、短時間で精度の高い検査を実施できる機器試薬システムの開発が課題となっております。
この課題に他社に先駆けて対応すべく、当社は、インフルエンザの2011/12シーズンより、新たなPOCT機器試薬システムとして、富士フイルム株式会社との共同開発に取組み、高感度インフルエンザ抗原検出用キット「クイックチェイサー Auto Flu A,B」の販売を開始いたしました。その後も、A群β溶血連鎖球菌検出用キット「クイックチェイサー Auto Strep A※4」、アデノウイルス検出用キット「クイックチェイサー Auto Adeno」、RSウイルス・アデノウイルス検出用キット「クイックチェイサー Auto RSV/Adeno」とシリーズ化を進めており、小児科向けを主としてクイックチェイサーAutoシリーズの品揃えの強化に取り組んでおります。
(3) 新規診断技術革新へのシーズ開発
世界的にも検査薬市場においては、POCT市場向けの機器試薬システムの技術開発が加速化しており、感染症、循環器、糖尿病など各々の疾患を早期に診断、治療を行うための新たなるPOCT機器試薬システムが開発されています。当社が主力分野とする感染症におきましても、これまでのイムノクロマト法に代わる革新的技術の開発がPOCT市場の発展に向けての最大の課題となっております。
この課題に対応すべく、当社は、長期に渡ってイムノクロマト法に代わる各種シーズ技術のスクリーニングを続けており、次世代POCT機器試薬システムの開発を進めております。また、現在の主力製品である免疫血清POCT分野から新たな遺伝子POCT分野へ発展させるため、平成22年に遺伝子診断技術開発チームを設置し、感染症遺伝子検査のPOCT機器試薬システムの開発を推進するとともに、独自特許による新規診断技術の創出に取り組んでおります。
(4) 検査薬のスイッチOTC化
平成25年に政府が策定した日本再興戦略において、予防・健康管理の新たな仕組み作りとして、薬局を地域に密着した健康情報の拠点としたセルフメディケーションの推進が提言されました。これを受けて、規制改革会議では、平成26年度中にスイッチOTC化による一般用検査薬の許認可スキームの構築を実施する方針が示されました。これにより、LH、尿潜血及び便潜血の3項目を先行して、ガイドライン審査のうえで一般検査薬としての許認可申請の受付開始、許認可及び販売解禁というスケジュールのもと、厚生労働省は業界団体等との連携を含め、本格的に動き始めました。そして、上記3項目に加えて他の検査項目についてもスイッチOTC化が進むと予想されるため、新たな検査項目のスイッチOTC化に備えた対策をとることが課題となっております。
この課題に対応すべく、当社は、行政機関及び各種業界団体による検査薬のスイッチOTC化の動きに積極的に参画して動向の把握に努めるとともに、先発品を上市する準備に取り組んでおります。また、新たな検査項目のスイッチOTC化の推進、及びそれらの項目の検査薬の開発にも取り組んでおります。
(5) 新規診断技術を基盤とした食品検査分野への応用開発
イムノクロマト法及び当社が開発した診断技術は、医療だけではなく、食品検査分野にも応用できるものであります。今後の事業拡大のためには、食品検査分野への進出が課題となっております。
この課題に対応すべく、遺伝子POCT機器試薬システムなどの新規診断技術を基盤として、食品検査分野への応用開発に取り組んでおります。
(6) 開発人員の強化・育成
当社の研究開発は、体外診断用医薬品業界における豊富な経験を有する研究開発人員により運営されているものの、新技術や新分野での診断項目の開発を推進するには、各開発グループの責任者及び少数の研究開発人員に強く依存するところがあります。
当社は、継続的な成長を果たすためには、開発部門の人的強化が欠かせないと認識しており、常に優秀な人材を採用するとともに育成に努めております。
(7) 生産工程の合理化及び製造能力の増強
売上高の増加に伴う生産量の拡大やPOCT検査薬の項目増加により、生産工程の合理化が課題となっております。また、検査薬のスイッチOTC化及び遺伝子POCT検査薬の工業化に向けて、製造能力の増強が課題となっております。
この課題に対応すべく、当社は、生産工程の合理化につきましては、生産設備を導入し、工程の自動化に取り組んでおります。また、製造能力の増強につきましては、新製品の安定的な生産及び供給体制を確立するため、生産設備計画の策定及び生産体制の構築に取り組んでおります。
(8) 市場環境の変化への対応
病院・開業医分野につきましては、医療制度改革や診療報酬の改定が行われるなか、臨床検査需要は減少し、価格競争は激化しております。また、OTC・その他分野につきましては、薬局・薬店業界の再編や新規参入が進んでおります。このような市場環境の変化に柔軟に対応することが課題となっております。
この課題に対応すべく、当社は、病院・開業医分野につきましては、特にインフルエンザ検査薬について、機器試薬システムの販売をさらに強化することで、他社製品との差別化を図り、売上高の維持に取り組んでおります。また、OTC・その他分野市場につきましては、大手ドラッグストアへのプライベートブランド製品の提案及び拡充とともに、大手OTC医薬品企業との販売提携を行うことにより競争力を強化することで、薬局・薬店業界の再編に対応するとともに、売上高の維持及び拡大に取り組んでおります。
[用語集]
※1 院内感染防御とは、病院や医療機関内で新たに細菌やウイルスなどの病原体に感染する院内感染に対し、免疫力の低い患者が多い院内では多くの患者が同時に感染するリスクがあることから、院内の環境改善や集団感染時の対策マニュアルなどを講じ、薬剤耐性菌の蔓延を防止するための抗生剤や消毒薬の使用について組織的な防御を整えることをいいます。
※2 ウイルスなど抗原が生体に侵入した場合、そのウイルスの一部(抗原)に対する抗体が産生されます。抗体は、そのウイルスの抗原部位に結合しウイルスを失活させる機能を持っています。これらの抗体には抗原のいろいろな箇所に結合する複数種類の抗体が混在しており、ポリクローナル抗体と呼ばれています。モノクローナル抗体とは、単一の抗体産生細胞に由来するクローンから得られた抗体であり、反応性が多様なポリクローナル抗体に比べて的確にウイルスと結合することができます。また、クローンに由来するため、安定した品質の抗体を生産することができます。
※3 細菌などの微生物が、抗生物質などの薬剤に接触することで抵抗力を獲得し、薬剤の効果が低下することを薬剤耐性といいます。これは、細菌が耐性遺伝子を作り出したり、他の既に耐性化した細菌からそのような遺伝子を獲得して発生するものであります。薬剤耐性因子とは、そのような耐性遺伝子のことをいいます。
※4 Strep Aとは、A群β溶血連鎖球菌といい、のどや皮膚に見られる細菌です。一般に咽頭炎や扁桃炎を発症し、気管支炎を起こすことも多い細菌です。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 品質問題
当社は、医薬品医療機器等法及び関連法令並びに品質マネジメントシステムに基づき、万全の品質管理体制を敷いて製品の品質確保に取り組んでおりますが、製品に重大な品質問題が発生した場合には、回収等の措置を取る可能性があり、売上高の減少やコストの増加などにより、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 原材料の調達
当社は、原材料を国内外より調達しておりますが、原材料に関する国内外の規制または原材料メーカーによる品質問題の発生、あるいは国際情勢の変化や政情不安等によって原材料の入手が長期的に困難になることにより、製品を製造・販売することができなくなった場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 製品供給の遅延または休止
技術上や規制上の問題、または火災やその他人災、もしくは当社の製造設備の所在地である佐賀県鳥栖市あるいは当社の原材料供給先に影響があるような地震等の自然災害により、製品の製造施設・倉庫等において操業停止または混乱が発生した場合、当該製品の供給が遅延または休止し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 開発人員の強化・育成について
当社では、今後の事業拡大及び技術革新に対応できる人材を継続的に確保し強化・育成していくことが重要な課題であると認識しております。市場に対し付加価値の高い製品を提供することを目的として、新たな診断技術の創出に向けて技術者の教育を行うとともに、新技術や新分野での診断項目に対する研究開発活動を推進しております。しかし、今後様々な市場ニーズへの対応や他社の開発技術と競合するなか、より独創性があり高度な開発技術を有する人材強化が必要となります。これら新たな診断技術への対応の遅れが生じる場合や、高度な技術を有する人材を計画通りに強化・育成出来ない場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。
(5) 知的財産権
当社の製品は、特許及び実用新案等により一定期間保護されています。当社は、知的財産権を厳しく管理し、第三者からの侵害あるいは第三者の知的財産権を侵害するおそれについても、常に監視を行っております。しかし、当社の保有する知的財産権が第三者から侵害を受けた場合には、期待される収益が失われる可能性があります。また、当社の製品が意図せず他社の知的財産権を侵害した場合には、損害賠償を請求される可能性があり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 研究開発
体外診断用医薬品は所轄官庁の定めた企業としての責任体制、製品の有効性、安全性、生産方法・管理体制に関する厳格な審査により許認可を得てはじめて上市可能となります。研究開発が計画通りに進行しなかった場合、あるいは治験段階において新製品が期待通りの性能を示せなかった場合、また、許認可取得に時間を要した場合など、開発期間の延長や開発を中止した場合、特に当社が新たな技術開発のもと事業化を予定している感染症遺伝子検査におきましては、新規技術に基づく生産方法・管理体制などに新たな投資を予定していることから、それまでにかかったコストを回収できないリスクや製品の上市が遅延するリスク、及び研究開発戦略の軌道修正を余儀なくされる可能性があり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 業績の季節変動及び特定製品への依存について
インフルエンザ検査薬は、平成26年12月期及び平成27年12月期において、売上高の約50%を占める主力製品となっております。また、インフルエンザの流行時期は冬季であることから、売上高及び営業利益ともに、第1四半期(1~3月)及び第4四半期(10~12月)に集中する傾向があります。当社は、非季節性並びに夏季流行性の感染症検査項目を拡充することにより、当製品への依存度の軽減と同時に季節変動の平準化を図っております。
しかし、インフルエンザの流行が当初の想定より小規模であった場合、または予期せぬ事由により当製品の売上高が大幅に減少した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、インフルエンザの流行の開始時期が当初予想していた時期より大幅に後ずれし、当期に予定していたインフルエンザ検査薬の売上高の多くが翌期に期ずれした場合、当社の当期の業績に影響を及ぼす可能性があります。
第38期(平成26年12月期)の四半期会計期間ごとの売上高及び営業利益又は営業損失 | |||||
| (単位:百万円) | ||||
| 第1四半期 | 第2四半期 | 第3四半期 | 第4四半期 | 第38期 合計 |
売上高 | 1,297 | 594 | 589 | 1,505 | 3,986 |
内インフルエンザ検査薬の売上高 | 832 | 124 | 102 | 911 | 1,970 |
売上高の四半期百分率 | 32.5% | 14.9% | 14.8% | 37.8% | 100% |
営業利益又は営業損失(△) | 240 | △41 | △69 | 335 | 465 |
第39期(平成27年12月期)の四半期会計期間ごとの売上高及び営業利益又は営業損失 | |||||
| (単位:百万円) | ||||
| 第1四半期 | 第2四半期 | 第3四半期 | 第4四半期 | 第39期 合計 |
売上高 | 1,464 | 544 | 605 | 1,468 | 4,082 |
内インフルエンザ検査薬の売上高 | 1,010 | 46 | 69 | 842 | 1,969 |
売上高の四半期百分率 | 35.9% | 13.3% | 14.8% | 36.0% | 100% |
営業利益又は営業損失(△) | 327 | △156 | △87 | 305 | 388 |
(注)1.インフルエンザ検査薬には、「クイックチェイサー Flu A,B」、「クイックチェイサー Auto Flu A,B」及び富士フイルム株式会社向け機器試薬システムの試薬が含まれております。
2.各四半期の売上高及び営業利益又は営業損失(△)につきましては、有限責任監査法人トーマツによるレビューを受けておりません。
(8) 競合他社との競争
当社は、市場ニーズを先取りした新製品開発及び性能改善を行っておりますが、体外診断用医薬品業界は技術開発及び性能の向上において常に競合他社と競争状態にあります。技術競争の結果、競合他社が当社より先に新製品や性能改善品を上市した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 市場環境の変化
病院・開業医分野では、医療制度改革や診療報酬の改定が行われるなか、臨床検査需要の減少や価格競争の激化が進んでおります。また、OTC・その他分野でも薬局・薬店業界の再編や新規参入など市場環境は日々変化しております。そのため、市場環境の変化への対応が遅れた場合、病院・開業医分野では、主要製品の需要減少、販売価格の低下、OTC・その他分野では、既存シェアの変化などにより、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)法的規制等
当社は、体外診断用医薬品の製造販売を行うために「体外診断用医薬品製造販売業許可」及び「体外診断用医薬品製造業登録」が必要であり、そのために医薬品医療機器等法及び関連法令をはじめ、様々な法規制の適用を受けております。
当社は、以下の主要な許認可を含めこれらの許認可等を受けるための諸条件及び関係法令の遵守に務めており、現状においては当該許認可が取り消しとなる事由は発生しておりませんが、今後、これらの関係法規が改廃された場合や新たな法的規制が設けられる場合、仮にこれらの法規制を遵守できなかった場合、事業活動を制限されることはもとより、社会的信用の低下を招き、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、これらの法規制を遵守するためのコストが発生し、利益率の低下につながる可能性があります。
許認可等の名称 | 許可番号 | 有効期限 | 取消事由 |
体外診断用医薬品 製造販売業許可 | 佐賀県知事許可 41E1X80013 | 平成32年3月30日 | 医薬品医療機器等法第七十五条第1項 |
体外診断用医薬品 製造業登録 | 佐賀県知事許可 41EZ280071 | 平成32年3月30日 | 医薬品医療機器等法第七十五条の二第1項 |
(11)訴訟の提起
当社は、事業活動を継続していく過程において、製造物責任(PL)関連、労務関連、知的財産関連、商取引関連、その他に関する訴訟が提起される可能性があります。これらの訴訟の結果によっては、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(12)ITセキュリティ及び情報管理
当社は、各種の情報システム・IT機器を利用して業務を遂行しております。そのため、システムの不備、災害及びコンピュータウイルス等の外部要因により業務が阻害される可能性があります。また、不測の事態により情報の流出や漏えいが発生した場合には、社会的信用を大きく失うこととなり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(13)創業者への依存について
当社の創業者は、代表取締役会長兼社長である唐川文成であります。同氏は、当社設立以来の最高経営責任者であり、経営方針や経営戦略の決定、営業や研究開発などの事業運営において重要な役割を果たしております。当社では、全ての部署に担当取締役を配置し、さらに各部門長には執行役員もしくは部長を配置しております。各々が参加する定期的な会議体にて、意見等の吸い上げや情報共有などを積極的に進めており、また、適宜権限の委譲も行うことで、同氏に依存しない経営体質の構築を進めております。しかし、何らかの理由により同氏に不測の事態が生じた場合、または、同氏が退任するような事態が発生した場合には、当社の業績及び事業展開に影響を与える可能性があります。
相手先の名称 | 契約内容 | 契約締結日 | 契約期間 |
富士フイルム株式会社 | 「感度増幅技術」の特許に関わるライセンス契約 | 平成23年4月26日 | 平成23年4月26日から 平成32年9月30日まで (以降1年毎の自動更新) |
相手先の名称 | 契約内容 | 契約締結日 | 契約期間 |
東邦薬品株式会社 | 当社が製造する体外診断用医薬品等の売買に関する契約 | 平成6年8月1日 | 平成6年8月1日から 平成7年7月31日まで (以降1年毎の自動更新) |
株式会社メディセオ(注) | 当社が製造する体外診断用医薬品等の売買に関する契約 | 平成17年3月31日 | 平成17年4月1日から 平成18年3月31日まで (以降1年毎の自動更新) |
富士フイルム株式会社 | 当社が製造する体外診断用医薬品等の売買に関する契約 | 平成23年4月26日 | 平成23年4月26日から 平成32年9月30日まで (以降1年毎の自動更新) |
アルフレッサ株式会社 | 当社が製造する体外診断用医薬品等の売買に関する契約 | 平成17年3月1日 | 平成17年4月1日から 平成18年3月31日まで (以降1年毎の自動更新) |
株式会社バイタルネット | 当社が製造する体外診断用医薬品等の売買に関する契約 | 平成13年11月1日 | 平成13年11月1日から 平成14年10月31日まで (以降1年毎の自動更新) |
(注)株式会社メディセオは、平成21年10月に株式会社メディセオ・パルタックホールディングス(現 株式会社メディパルホールディングス)から医療用医薬品等卸事業を継承した株式会社クラヤ三星堂が、千秋薬品株式会社、株式会社潮田クラヤ三星堂、株式会社やまひろクラヤ三星堂、平成薬品株式会社、株式会社井筒クラヤ三星堂と合併し、商号変更したものです。
当社は、体外診断用医薬品事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
(1) 研究開発への取り組み
当社は、体外診断用医薬品において化学発光法や核酸増幅法などの技術が普及し、検査薬市場が飽和傾向にあるなか、診断と治療の一体化による迅速かつ的確な患者診療が行われる医療体制の確立並びに患者サービスの効率化を実現するため、POCT検査薬の商品価値の向上につながる技術革新、新製品開発及び性能改善などの研究開発を行っております。また、次世代の新規技術の創出を目的とし、免疫精密測定分野及び微生物遺伝子検出分野における新規検査薬の技術開発活動も行っております。
(2) 研究開発体制
研究開発については、開発企画部が開発計画を統括し、開発部にて実施しております。
開発企画部では、テーマ探索、新製品開発及び改良改善におけるテーマ企画及び開発品の製品像となる顧客ニーズと差別化を重点とした設計開発仕様の設定と完成した開発品の外部評価を基本に妥当性確認の実施などインプット及びアウトプットの両面を司り、本社と関東に分割して平成27年度は4名体制で対応しております。
開発部は、25名体制で、感染症や糞尿中のタンパクやホルモンを中心に性能向上の大きなポイントであるモノクローナル抗体開発を行っております。組織体制は、感染症を中心としたグループとホルモン関連を中心としたグループから構成され、新製品開発及び改善改良を行っております。感染症グループには5名体制の遺伝子検出技術開発チームを形成しており、遺伝子POCT検査薬とともに機器の開発についても早期製品化に向けて取り組んでおります。後者のホルモン関連を中心としたグループでは、病院・開業医分野の製品開発に取り組むとともに、OTC・その他分野の製品開発を実施しております。また、POCT検査薬に求められる機器の開発並びに操作性を向上させるためのデバイスや付属品の開発につきましても、外部へアウトソーシングすることにより、スピーディーかつ低コストでの開発を実現しております。なお、全ての検査薬開発においては、ISO13485に基づく設計開発組織による製品開発並びに製品の量産化活動を行っております。
(3) 主な研究開発活動とその成果
当事業年度における研究開発活動としましては、インフルエンザ検査薬「クイックチェイサー Flu A,B」では、より反応性の高い抗体を採用することにより、数多い競合品の中でもトップレベルの感度を有する製品に改善いたしました。
富士フイルム株式会社との共同開発品であるインフルエンザウイルスの機器試薬システムでは、「クイックチェイサー Flu A,B」と同様に新規抗体によりさらなる感度性能の向上が認められ、グレードアップした製品を市場展開いたしました。また、この機器試薬システムで測定可能な検査項目の拡充のため、RSウイルスとアデノウイルスを同時検出する検査薬を平成27年10月に発売いたしました。さらに、これら呼吸器感染症分野におきましては、平成26年に新規抗体の開発にも成功しており、製品開発のうえ、3項目の新規製品の申請を行いました。
インフルエンザを主として製品化を行ってきた呼吸器感染症分野に引き続き、消化器感染症分野については、平成26年10月に発売したノロウイルス検出用キット「クイックチェイサー Noro」、平成26年12月に発売したロタウイルス及びアデノウイルス抗原検出用キット「クイックチェイサー Rota/Adeno」に続き、新規項目の抗体の開発に着手しております。
また、遺伝子検出技術開発チームは、POCT遺伝子検出技術の研究開発に取り組み、遺伝子の抽出・増幅・検出ステップを完結するPOCT検査としての簡易装置の開発を推進し平成26年度より製品開発ステージへ移行し、同年、独自開発の遺伝子抽出法の特許申請を終了するとともに、臨床試験を開始いたしました。
(4) 研究開発活動の総額
当事業年度の主な研究開発活動は、既存POCT検査薬の性能改善及び細菌分野におけるPOCT検査薬開発と富士フイルム株式会社と共同開発を行った機器試薬システム製品の品揃え、また、新規POCT検査技術としてイムノクロマト技術に代わる次世代免疫診断技術と遺伝子診断技術の研究開発であります。
当社の研究開発体制は開発企画部及び開発部が担当し、全従業員の19.7%に相当する27名のスタッフが各グループに分かれて行っており、当事業年度における研究開発費の総額は3億6百万円であります。
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたっては、決算日における資産・負債並びに会計期間における収入・費用の数値に影響を与える確かな見込みに基づく見積りにより行われておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの結果と異なる可能性があります。
(2) 経営成績の分析
① 売上高
売上高は前期に比べ95百万円増加して40億82百万円(前期比2.4%増)となりました。
病院・開業医分野におきましては、2014/2015シーズン(当社第1四半期)のインフルエンザの流行が例年より3週間ほど早く始まり、流行のピークが1月に前倒しとなったことから、市場ではインフルエンザ検査薬が品薄状態となりました。当社は自社一貫体制の強みを生かし、そのピーク時においても製品供給を継続できたことから、当検査薬の売上高が急伸しました。一方、2015/2016シーズン(当社第4四半期)は前シーズンとは逆に、例年より1ヶ月以上流行の開始が遅れ、一部期ずれ(後ずれ)が起きましたが、第1四半期の売上高の急伸がこれを補い、当期のインフルエンザ検査薬の売上高は、前期と同水準の19億69百万円(前期比0.0%減)となりました。生化学検査薬は前期比2.9%減と減収となったものの、アデノウイルス検査薬は前期比9.5%増、Strep A(A群β溶血連鎖球菌)検査薬は前期比20.5%増と増収となり、また、前期(平成26年10月)に発売開始したノロウイルス検査薬の売上高が伸長しました。以上により、病院・開業医分野全体の売上高は35億47百万円(前期比4.1%増)となりました。
OTC・その他分野におきましては、妊娠検査薬は前期比2.7%増と堅調に推移したものの、排卵日検査薬は一部の代理店への売上高が減少したため前期比27.0%減となり、OTC・その他分野全体の売上高は5億34百万円(前期比7.5%減)となりました。
② 売上原価、販売費及び一般管理費
売上原価は前期に比べ74百万円増加して14億22百万円(前期比5.5%増)となりました。売上原価率は34.8%となり、前期に比べ1.0%上昇いたしました。これは主に、たな卸資産廃棄損59百万円の発生によるものであります。
販売費及び一般管理費は前期に比べ88百万円増加して22億72百万円となりました。これは主に、業容拡大に向けた人員増や昇給等に伴う等人件費の増加、研究開発費の増加によるものであります。
③ 営業利益
営業利益は前期に比べ76百万円減少して3億88百万円となりました。
④ 営業外収益、営業外費用
営業外収益は前期と同水準の2百万円となりました。また、営業外費用は前期に比べ11百万円増加して19百万円となりました。これは主に、株式上場関連費用等の発生によるものであります。
⑤ 経常利益
経常利益は前期に比べ87百万円減少して3億71百万円となりました。
⑥ 特別利益、特別損失
当期は特別利益の計上はありません。特別損失は、固定資産売却損1百万円を計上しております。
⑦ 当期純利益
当期純利益は前期に比べ59百万円減少して2億57百万円となりました。
(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
① キャッシュ・フロー
キャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (2)キャッシュ・フロー」をご参照ください。
② 財政状態
当事業年度末における資産の残高は、前事業年度末に比べ2億72百万円増加し、34億90百万円となりました。これは主に、たな卸資産の増加2億75百万円によるものであります。
当事業年度末における負債の残高は、前事業年度末に比べ1億57百万円減少し、19億円となりました。これは主に、長期借入金(1年内返済予定の長期借入金含む)の増加1億93百万円及び役員退職慰労引当金の増加28百万円があったものの、短期借入金の減少3億11百万円及び未払法人税等の減少79百万円があったことによるものであります。
当事業年度末における純資産の残高は、前事業年度末に比べ4億29百万円増加し、15億89百万円となりました。これは主に、株式の発行による資本金及び資本準備金の増加2億69百万円及び利益剰余金の増加1億60百万円によるものであります。
(4) 経営者の問題意識と今後の方針
当社の経営陣は、病院・開業医分野の体外診断用医薬品及びOTC・その他分野の一般用検査薬における市場環境について入手可能な情報と経験を生かし、また、海外の企業動向を基に5~10年後の医療体制を想定して経営判断を行っております。
わが国の医療産業は、保険点数の新規収載や薬価引下げなど医療制度改革に基づき変動しております。また、OTC・その他分野におきましても規制緩和などによる市場拡大については、行政動向が大きな要因となっております。当社が開発する製品が、これらの環境変化に対応し、医療制度と市場ニーズが融合したポジションにおいてシェアを獲得できるよう研究開発に努めるとともに、市場コストに反映する生産システムの合理化を図ってまいります。
(5) 経営戦略の現状と見通しについて
体外診断用医薬品業界における市場環境は、少子高齢化による医療体制の変革や医療費抑制政策に加え、流通及び医薬品企業を含めた企業の再編など収益構造の変化が求められており、各企業は経営の効率化を積極的に推進する必要があります。そのような状況のなか、当社は小児科医療、老人医療における感染症分野を主体としたPOCT検査薬市場及びセルフケアを促進するOTC検査薬市場を基盤とした事業の育成を目指してまいります。
POCT検査薬市場は、多くの企業が参入しており、技術面並びに販売面ともに厳しい状況が続いております。動物に感染したインフルエンザウイルスがヒトに感染するなどのウイルスの変異、海外で感染した感染症が国内に持ち込まれる「輸入感染症」の発生など、今後も新たな感染症の流行が予想されます。当社は、新たなPOCT検査薬の開発を行うため、細菌やウイルスの変異及び輸入感染症の情報を収集するとともに、専門機関との連携を深め、事業規模の拡大を図ってまいります。
また、機器試薬システムを用いた次世代POCTシステム、そして感染症を主とした遺伝子検査のPOCT化に注力することにより、POCT検査薬の高感度及び検査結果の客観性を向上させ、迅速かつ効率的に診断できる製品の製品化を競合企業よりも先に実現し、市場への浸透を図ってまいります。
さらに、遺伝子検査のPOCT化に用いる新規診断技術は、食品検査分野にも応用できるものであるため、食中毒などの食品検査分野への進出により事業規模の拡大を図ってまいります。
OTC検査薬市場は、検査薬のスイッチOTC化により市場の拡大が見込まれております。当社は、行政機関及び各種業界団体による検査薬のスイッチOTC化の動きに積極的に参画して動向の把握に努めるとともに、先発品を上市する準備に取り組んでおります。また、新たな検査項目のスイッチOTC化の推進、及びそれらの項目の検査薬の開発、製品化により事業規模の拡大を図ってまいります。