第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において、当社が判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社は「もっと人のために」を経営理念としております。体外診断用医薬品分野において、この理念を実現すべく、医療検査の要請に応じて技術革新にあくなき探求を続け、お客様に満足いただける品質の高い製品を供給するという運営基本方針を定めております。

この方針に従い、ISO13485品質マネジメントに基づいた、企画開発から製造、販売までを自社一貫体制で行う強みを生かし、独自の研究開発を基本とした品質の高い製品を提供し続けることで、企業価値の向上に努め、ステークホルダーの期待に応えてまいります。

 

(2) 目標とする経営指標

当社は、中長期的な事業拡大と収益性を重視しており、売上高増加率及び売上高経常利益率を重要な経営指標として経営を行っております。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

当社は、企画開発、製造、販売の自社一貫体制のもと、体外診断用医薬品における革新的技術を構築することにより、病院・開業医分野及びOTC・その他分野において、以下の事項を成長戦略として位置づけ、実践してまいります。

① 病院・開業医分野

・遺伝子POCT機器・試薬の製品開発を推進するとともに売上拡大を図り、簡易迅速な確定診断製品として新たな市場創出に取り組みます。

・感染症POCT免疫検査薬の製品群を拡大することにより、ウイルス・細菌分野における市場開拓に取り組みます。

② OTC・その他分野

・スイッチOTC製品の先発品の上市準備に取り組むとともに、OTC医薬品の大手企業であるアリナミン製薬株式会社(旧社名 武田コンシューマーヘルスケア株式会社)との販売提携のもとOTC市場でのシェアの拡大を図ります。

 

(4) 経営環境及び優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

体外診断用医薬品業界におきましては、近年において様々な感染症の集団発生を背景に、感染症の早期診断に対する国民の意識が高まり、医療への期待は「治療」から「予防」へとシフトしてきております。診療の現場におきましても、適切な医療をより効果的かつ効率的に提供するための体制構築が迫られ、また、感染拡大防止や院内感染の予防対策として、感染症の早期診断及び早期治療の重要性の認識はさらに高まっており、遺伝子検査などの早期診断に有用な診断技術への期待も大きくなっております。

このようななか、2019年末に発生した新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大は、その後4年以上にわたり感染拡大を繰り返し、わが国においても国民の社会経済活動に大きな影響を及ぼしました。当業界におきましても、遺伝子検査や抗原検査などの新型コロナウイルス感染症の検査需要が急激に高まる一方で、感染防御の効果の波及や受診控えによる外来患者の減少により、既存の感染症全般の検査需要が減少するという影響を受けました。

当社は新型コロナウイルス感染症の検査体制の拡充に寄与し、感染拡大防止に貢献するべく、「全自動遺伝子解析装置Smart Gene」を用いた新型コロナウイルス検出試薬の早期開発に取り組み、2020年8月より同試薬の発売を開始しました。また、急速に高まる需要に応えるため、設備投資によって増産体制を構築し、安定供給の維持に尽力いたしました。一方では、検査体制のさらなる拡充に貢献するべく、各種抗原キットの新製品の開発・発売にも注力し、5類移行後、急増する抗原キットの需要に対応するための設備投資を推進し、増産に尽力いたしました。

 

当事業年度におきましては、新型コロナウイルス感染症は、感染力が高いオミクロン変異株により感染拡大を繰り返しているものの、重症化リスクの低減を背景に2023年5月には感染症法上の分類が5類へ移行され、社会経済活動の正常化はさらに加速しました。これに伴い、それまで抑えられていたインフルエンザをはじめとした既存の感染症全般が急増しております。今後、様々な感染症の検査需要は、コロナ禍前の状態に戻っていくものと見込まれ、その過程において、引き続き競合他社との技術及び価格競争など厳しい状況が続くことが予想されます。

当社は、「もっと人のために」という経営理念のもと、企画開発から製造、販売までを自社一貫体制で行う強みを生かし、医療機関や患者のニーズに応える数多くの優れた製品を提供するため、新型コロナウイルス感染症との共生期や終息後の経営環境も見据えながら、以下の課題に取り組み、事業の継続的な成長と企業価値の向上に努めてまいります。

 

① 遺伝子POCT検査機器試薬システムの検査項目の拡充及び次世代システムの開発

検査薬市場においては、世界的にもPOCT市場向けの機器試薬システムの技術開発が加速しており、感染症、循環器、糖尿病など各々の疾患を早期に診断、治療を行うための新たなPOCT機器試薬システムが開発されております。当社は、主力とする感染症分野におきまして、これまでのイムノクロマト法に代わる革新的診断技術として、各種シーズ技術のスクリーニングを経たのち、遺伝子診断技術の開発に注力を続け、この成果として、2018年に業界では先発となる遺伝子解析装置「全自動遺伝子解析装置 Smart Gene」及びマイコプラズマ核酸キット「スマートジーン Myco」を発売いたしました。さらに、2020年には新型コロナウイルス感染症の検査体制の拡充・感染拡大の防止に貢献するべく、同ウイルス検出試薬の早期開発に取り組み、「スマートジーン新型コロナウイルス検出試薬(現 スマートジーン SARS-CoV-2)」を発売いたしました。

遺伝子POCT検査薬機器試薬システムは、診療の現場において短時間で確定診断が可能なことから、新型コロナウイルス感染症が拡大するなか、感染拡大防止や早期診断に有用であることが広く認知されることとなり、その期待の高まりを背景に将来の遺伝子POCT検査市場の拡大が見込まれています。また、当社の遺伝子解析装置「全自動遺伝子解析装置 Smart Gene」の普及が急速に進み、将来における各専用試薬の需要の基盤が確立しつつあることから、新たな検査項目の拡充や性能の改善が喫緊の課題となっております。

この課題に対応すべく、同装置を用いる新たな遺伝子POCT検査項目の開発・製品化を進め、2022年度においては、インフルエンザウイルス核酸キット「スマートジーン Flu A,B」、院内感染による下痢症の感染防御に貢献するCDトキシン核酸キット「スマートジーン CD トキシンB」、胃がん発症の原因となるヘリコバクター・ピロリ核酸及びクラリスロマイシン耐性遺伝子検出キット「スマートジーン H.Pylori G」の発売を開始し、性能の改善に努めております。今後につきましても、呼吸器感染症、消化器感染症、泌尿器感染症及び婦人科感染症項目並びに薬剤耐性菌項目など、さらなるラインナップの拡充を図るとともに、性能の改善に向けた開発にも注力し、簡便操作、迅速判定、コンパクトかつ低コストという特長を持つ遺伝子POCT機器試薬システムとして、病院や診療所へのさらなる普及に向け尽力してまいります。

これらに加え、今後さらなる市場拡大のため、次世代の遺伝子POCT検査装置として、測定時間のさらなる迅速化や複数検体・複数項目同時検出をコンセプトとした遺伝子マルチ検査システムの開発を一層推進してまいります。

 

② 高感度POCT機器試薬システムの検査項目の拡充

POCT検査は治療に直結する検査であることから、各種検査項目について、より高感度、短時間判定かつ客観性の高い検査を実施できる機器試薬システムの開発が課題となっております。

この課題に対応すべく、当社は、富士フイルム株式会社との共同開発に取り組み、他社に先駆け、発症初期の診断精度や客観性を向上させた高感度感染症迅速診断システム(銀増幅イムノクロマト法)として、デンシトメトリー分析装置「クイックチェイサー Immuno Reader」及び高感度インフルエンザ抗原検出用キット「クイックチェイサー Auto Flu A,B」の開発に成功し、販売を開始いたしました。その後も、検査キットにつきましては、A群β溶血連鎖球菌、アデノウイルス、RSウイルス、マイコプラズマ抗原及び新型コロナウイルス抗原を検査項目として逐次追加し、ラインナップの拡充を図りました。さらに、新型コロナウイルスとインフルエンザの同時流行が懸念されるなか、両ウイルスを同時に検出する「クイックチェイサー Auto SARS-CoV-2/Flu」を発売し、これに続き、インフルエンザのA型とB型を判別できる「クイックチェイサー Auto SARS-CoV-2/Flu A,B」を発売開始(2025年2月)するなど、クイックチェイサーAutoシリーズとして品揃えをさらに充実させております。

また、機器につきましても、タッチパネルの採用やオンライン化対応等により実用性をさらに向上させた後継機を発売するなど、機器試薬システムとして、競合他社の製品との差別化を実現しております。今後も、さらなる検査項目の追加、性能の改善のための開発を継続することにより、市場及びシェアの拡大に努めてまいります。

 

 

③ POCT迅速診断検査薬の項目開発及び性能向上

小児科など医療現場においては、特に迅速な治療が必要とされる感染症のPOCT検査薬の項目開発及び性能向上が求められており、加えて院内感染防御※1における迅速な検査体制の強化が課題となっております。

この課題に対応すべく、当社は、簡易・迅速に検査が実施できるイムノクロマト製品のさらなる性能向上のため、モノクローナル抗体※2の新規開発や機器の使用による機能強化といった研究開発を継続的に進めており、また、新たなPOCT検査薬項目の開発や薬剤耐性因子※3を検出する検査薬の創出において、専門機関との共同開発に取り組んでおります。

機器の使用による機能強化として、2021年4月、検査結果を自動判定し、その結果をモニター表示及びプリントアウトできるデンシトメトリー分析装置「スマート QC リーダー」を発売いたしました。迅速診断キットと組み合わせて使用することにより、測定環境や判定者に依存しない客観的かつ安定した精度の高い判定結果を得られます。今後につきましては、同装置の普及に尽力するとともに、適応する検査項目の拡充にも努め、簡易・迅速性が特に求められる検査ニーズにも応えてまいります。

 

④ 遺伝子POCT検査技術を応用した新たな事業展開

企業価値を一層高めていくためには、事業の拡大や多角化は重要な経営施策の一つであると認識しております。イムノクロマト法及び当社の遺伝子POCT検査技術は、医療だけではなく、環境・食品検査分野にも応用できるものであります。今後の事業拡大の施策の一つとして、環境・食品検査分野への進出が課題となっております。

この課題に対応すべく、当社は、独自の遺伝子POCT検査技術を基盤として、環境・食品検査分野への応用開発に取り組んでおります。

 

⑤ 開発人員の強化・育成

当社の研究開発は、体外診断用医薬品業界における豊富な経験を有する研究開発人員により行われているものの、新技術や新分野での診断項目の開発においては、各開発グループの責任者及び一部の研究開発人員に強く依存しているところがあります。

当社は、継続的な成長を果たすためには、開発部門の人的強化が欠かせないと認識しており、既存開発人員に対する教育や各種学会への参加による育成を行うとともに、優秀な人材の採用に努めております。

 

⑥ 製造能力の増強及び生産工程の合理化

検査需要の増加に伴う生産量の増大やPOCT検査薬の項目数の拡充に伴い、製造能力の増強とともに生産工程の合理化が課題となっております。

この課題に対応すべく、遺伝子POCT検査キット及びクイックチェイサーAutoシリーズの量産及び安定供給を行うため、2019年に福岡県久留米市に新規製造工場を建設し、新型コロナウイルス核酸キット「スマートジーン SARS-CoV-2」の需要増加を見込んだ設備投資を行い、月あたり約40万テスト以上の増産体制を整備いたしました。

また、新型コロナウイルス感染症の5類移行以来、需要が急増している抗原キットの増産のため、生産ラインを新設し稼働を開始するなど、月産の製造能力を大幅に増強しております。

今後もさらなる増産や安定した多項目生産に向け、生産設備の導入及び自動化により生産工程の合理化を図り、高品質の製品供給を維持する生産体制の構築に取り組んでまいります。

 

[用語集]

※1 院内感染防御とは、病院や医療機関内で新たに細菌やウイルスなどの病原体に感染する院内感染において、免疫力の低い多くの患者が同時に感染するリスクがあることから、院内の環境改善や集団感染時の対策マニュアルなどを講じ、薬剤耐性菌の蔓延を防止するための抗生剤や消毒薬の使用について組織的な防御を整えることをいいます。

※2 ウイルスなど抗原が生体に侵入した場合、そのウイルスの一部(抗原)に対する抗体が産生されます。抗体は、そのウイルスの抗原部位に結合しウイルスを失活させる機能を持っています。これらの抗体には抗原のいろいろな箇所に結合する複数種類の抗体が混在しており、ポリクローナル抗体と呼ばれています。モノクローナル抗体とは、単一の抗体産生細胞に由来するクローンから得られた抗体であり、反応性が多様なポリクローナル抗体に比べて的確にウイルスと結合することができます。また、クローンに由来するため、安定した品質の抗体を生産することができます。

※3 細菌などの微生物が、抗生物質などの薬剤に接触することで抵抗力を獲得し、薬剤の効果が低下することを薬剤耐性といいます。これは、細菌が自ら耐性遺伝子を作り出したり、既に耐性化した他の細菌からそのような遺伝子を獲得したりするものであります。薬剤耐性因子とは、そのような耐性遺伝子のことをいいます。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

当社は、「もっと人のために」の経営理念のもと、「新たな価値の創造」の実現を通じて、感染症の感染拡大防止や早期診断・早期治療に役立ち、お客様から信頼される質の高い製品を安定的に供給し、医療検査体制の拡充に寄与することで、中長期的な企業価値の向上並びに社会的責任を果たしてまいります。

 

(1) ガバナンス

当社では、サステナビリティ関連のリスク及び機会を、その他経営上のリスク及び機会と一体的に監視及び管理しております。取締役会の責任の下、内部統制システムを整備し、当社の事業を取り巻く様々なリスクに対して的確な管理・実践するため「リスク管理規程」を定め、全社的なリスク管理推進に関わる課題・対応策を協議・承認する組織としてリスク管理委員会を設置し、また、コンプライアンスの徹底や社会的信用の向上を図るため「コンプライアンス規程」を定め、その活動の推進及び個別課題の協議・決定を行う組織としてコンプライアンス委員会を設置しております。

詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。

 

(2) 戦略

人材の育成方針

当社は、事業に付随する業務のいずれかに密接な関連のある専門性の高い知識・スキルを身に付け、新たな診断技術の創出や新規診断項目の開発などといった、持続的成長戦略を推進することができ、新たなイノベーションの担い手となる多様で優秀な人材を確保・育成し、定着を図ることを目指して、以下のことに取り組みます。

① 高い専門性を持ち、社会やニーズに敏感に対応でき、知識・スキルを追求し続ける人材を育成するため、OJTによる実務研修を中心に取り組んでおり、現場での経験を数多く積むことを通じて、実務に必要な専門的な知識やスキルの取得・向上を推し進めております。

② 専門的な知識・スキルの取得・向上のため、社外で開催される各種セミナーや研修への参加、eラーニング等の活用を推進し、キャリア形成の支援に取り組みます。

③ 組織の多様性を確保し、社員の成長を促すため、採用や人事考課にあたっては、性別、国籍、中途採用か否かに関わらず、能力・成果に応じた公正な評価を行います。

 

社内環境整備方針

当社は、社員の一人ひとりが業務に対して誇りを持ち、「やりがい」や「幸福度」を感じることができる社内環境を実現し、上記の新たなイノベーションの担い手となる人材の確保・定着を目指し、以下のことに取り組みます。

① 仕事と家庭の両立(ワークライフバランス)支援制度の利用しやすい社内環境を作るために、人事労務に関連する就業規則等を整備し、36協定の締結及び協定遵守により時間外労働の削減に取り組みます。また、心身ともに健康を保つためのリフレッシュの機会としての年次有給休暇(1日、半日、時間)の取得率向上に取り組みます。

② 社員の健康・安全衛生管理を推進するための安全衛生委員会を毎月1回開催します。また、業務内容や作業環境が社員に有害な影響を与えるおそれがないかを確認するために、産業医の職場巡視を月1回実施するほか、定期健康診断を年1回実施します。

③ 年3回の上司との個別面談において「人事考課」(実績評価2回、能力評価1回)を実施し、社員個人の実績・能力を公正に評価します。

④ 年1回の「自己申告制度」を活用して社員の担当業務に対する意識、満足度やスキル、要望等を確認することにより、効果的で公正かつ公平な人事管理や組織運営の実現に反映させます。また、社内の「提案制度」を活用して社員の経営参画意識の醸成を図り、社内業務の効率化、活性化を図ります。

⑤ 会社の業務範囲に属する事項に関して行った発明考案についての取り扱いを定め、発明者の権利を補償し、発明考案から生ずる特許権の管理及び実施の合理的な運用を図るための規程を整備しております。社員の発明考案が適切に評価され、報いられることを保障することにより、社員の発明考案のインセンティブを喚起しております。

⑥ 業務の効率化・省力化を推進するべく、ITを積極的に活用することによって労働環境の改善を図るとともに、IT人材の育成にも取り組みます。

 

 

(3) リスク管理

当社は、事業を取り巻く様々な「リスク(災害・情報・雇用人事・社内不正・法令違反・環境等)」に対して的確な管理・実践が可能となるよう「リスク管理規程」を定めており、事業の継続・安定的発展の確保、製品・サービスの品質と安全性の確保を最優先としたステークホルダーの利益阻害要因の除去・軽減、製品・サービスの安定的供給を社会的使命とすること等を基本方針としております。当該リスク管理の推進により、事業に相当程度影響を与えるすべてのリスクの経営レベルでの早期発見・特定、対応の優先順位や主管する組織の明確化、対応策の整備等を図っております。

全社的なリスク管理推進に関わる課題・対応策を協議・承認する組織として、取締役会の下に「リスク管理委員会」を設置しており、その構成員は、代表取締役を委員長とし、常勤取締役(リスク管理担当役員を含む)及び事務局(総務部)であります。原則として年2回(上期・下期)定例で同委員会を開催し、委員会においては、各部門からの「リスクの洗い出し報告書」の提出に基づき、新たなリスクの発生またはリスク増大の有無を確認しております。また、リスクに関する発生・対応状況等によって、必要に応じて臨時の委員会を開催することにしております。

 

(4) 指標及び目標

当社では、上記「(2) 戦略」において記載した人材の育成方針及び社内環境整備方針について、新たなイノベーションの担い手となる多様で優秀な人材の確保・定着を図るうえで、次の指標を用いており、当該指標に関する実績及び目標は次のとおりであります。

指標

実績
(2024年12月期)

 目標

女性従業員の育児休業取得率

100

100

男性従業員の育児休業取得率

40

50%以上

有給休暇取得率

81.3

85%以上

有給休暇取得日数

13.4

14日以上

定着率

84.0

85%以上

 

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、下記におけるリスクの項目は、すべてのリスクを網羅したものではありません。また、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 新型コロナウイルス感染症の拡大の影響と特定製品への依存

過去7年(2013年~2019年)ほどにわたり、インフルエンザ検査薬は、当社の売上高(通期)の約50%を維持しながら、その他の感染症検査項目とともに売上を伸ばしてきた主力製品であります。インフルエンザの流行時期は冬季であることから、第1四半期会計期間(1~3月)及び第4四半期会計期間(10~12月)に売上高及び営業利益が集中するといった季節変動、また、その年の業績が流行の開始時期や大きさに影響を受けやすいという傾向がありました。

2019年末に発生した新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大は、その後4年以上に渡り感染拡大を繰り返し、わが国においても国民の社会経済活動に大きな影響を及ぼしました。体外診断用医薬品業界におきましては、新型コロナウイルスの遺伝子検査や抗原検査の需要が急激に高まるなか、当社は、遺伝子検査として、2020年8月に「スマートジーン SARS-CoV-2」の発売を開始し、これに続き、抗原検査として、クイックチェイサー Immuno ReaderⅡ等を用いる高感度検出キット(銀増幅イムノクロマト法)、スマートQCリーダーを用いる抗原キット、さらに新型コロナウイルス・インフルエンザウイルス同時検出キットの発売を開始し、これらの新型コロナウイルスに係る各種検査キットの売上高が急激に増加しました。

一方では、新型コロナウイルスに対する感染防御の効果の波及や受診控えの影響により、インフルエンザをはじめ既存の感染症の検査需要が大幅に減少するという影響を受けました。結果として、2020年以降はインフルエンザ検査薬への依存度が低下し、新型コロナウイルス検査薬への依存度が急激に高まることとなりました。

2023年5月に新型コロナウイルス感染症は感染症法上の分類が5類へ移行され、社会経済活動の正常化はさらに加速し、それまで抑えられていた様々な既存の感染症が同時多発的に流行しました。同年、インフルエンザは異例の夏場の流行後も流行拡大が継続し、2024年前半はB型の流行も長引きました。また、12月には異例の速さで流行拡大し患者数は過去10年最多を記録するなど、新型コロナウイルスとの同時流行を背景に、新型コロナウイルス・インフルエンザウイルス同時検査キットの需要が急増する結果となりました。

今後につきましては、新型コロナウイルス検査薬は、今後の感染拡大の動向や医療・検査体制の変化などによって、これらの検査キットの需要や売上高が大きく左右される可能性があり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、新型コロナウイルスやインフルエンザの流行の時期や規模によって、新型コロナウイルス及びインフルエンザウイルスの各単独検査キットあるいは同時検査キットの需要が大きく変動する可能性があり、これらの状況の変化に伴い特定製品への依存度がさらに変化する可能性があります。

さらに、将来、新型コロナウイルス感染症のような大規模な感染症が新たに発生し、それに伴い政府・自治体による感染拡大防止策(緊急事態宣言等)が同様に講じられた場合、医療機関への受診控えによる外来患者数の減少や新たな感染症に対する感染防御の効果の波及などにより、既存の感染症項目の検査薬の売上高が大幅に減少する可能性があります。また、新たな感染症とそれに対する当社の対応状況(当該感染症の検査需要と当該検査薬の開発・量産状況等)によって、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

当事業年度(2024年12月期)の各四半期会計期間の売上高の内訳及び直近5事業年度の売上高の内訳は、以下のとおりであります。

 

 

2024年12月期の各四半期会計期間の売上高の内訳

 

 (単位:百万円)

 

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

合計

売上高

2,742

1,926

3,321

3,439

11,429

 新型コロナウイルス検査薬

1,663

993

2,355

1,868

6,881

 (内 CoV/Flu同時検査薬)

(1,056)

(233)

(1,130)

(1,310)

(3,730)

 インフルエンザ単独検査薬

356

101

104

414

977

 その他の検査薬及び機器

635

739

754

1,058

3,187

 OTC・その他

86

91

106

98

382

 

 

直近5事業年度の売上高の内訳

 

(単位:百万円)

 

2019年
 12月期

2020年
 12月期

2021年
 12月期

2022年
 12月期

2023年
 12月期

売上高

6,427

4,205

13,137

17,581

10,989

 新型コロナウイルス検査薬

1,270

9,794

15,179

7,617

 (内 CoV/Flu同時検査薬)

(―)

(―)

(34)

(2,206)

(3,324)

 インフルエンザ単独検査薬

3,196

750

239

416

949

 その他の検査薬及び機器

2,792

1,773

2,689

1,640

2,070

 OTC・その他

438

411

414

345

352

 

 

 

(2) 品質問題

当社は、医薬品医療機器等法及び関連法令並びに品質マネジメントシステムに基づき、万全の品質管理体制を敷いて製品の品質確保に取り組んでおります。しかしながら、万が一製品に重大な品質問題が発生した場合には、速やかに調査、回収、情報提供等の措置を取る必要があり、売上高の減少やコストの増加などにより、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 原材料の調達

当社は、様々な原材料を国内外より調達し製造活動を行っておりますが、調達にあたっては、仕入先との協力関係の維持強化、重要性及び調達リスクに応じた安全在庫の確保、一部の重要な原材料の自製化などにより調達リスクの低減に努めております。しかしながら、原材料に関する国内外の規制または原材料メーカーによる品質問題の発生、あるいは国際情勢の変化や政情不安等によって、原材料の入手が長期的に困難になることにより、製品を製造・販売することができなくなった場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 製品供給の遅延または休止

当社は、製品の安定供給を目指し、複数の製造拠点(佐賀県鳥栖市及び福岡県久留米市)を有しており、風水害、地震、火災等の災害発生時のリスク分散・軽減を図っております。しかしながら、当社の製造拠点や当社の原材料等の調達先の製造施設・倉庫等において、甚大な風水害や地震等の自然災害や火災の発生あるいは技術上や規制上の問題により、操業が停止または混乱が生じた場合、製品の供給が遅延または休止し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 開発人員の強化・育成について 

当社は、今後の事業拡大や市場に対し付加価値の高い製品を提供するため、新たな診断技術の創出や新分野での診断項目に対する研究開発といった活動に日々邁進しており、これに不可欠である研究開発人員を継続的に確保し、強化・育成するよう努めております。しかしながら、今後様々な市場ニーズへの対応や他社の開発技術と競合するなか、これに対応できる独創性や高度な開発技術を有する人材の確保及び強化・育成が計画通りに進まない場合、これら新たな診断技術の創出等の研究開発活動に支障が生じ、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(6) 知的財産権

当社の製品は、特許及び実用新案等により一定期間保護されています。当社は、知的財産権を厳しく管理し、第三者からの侵害あるいは第三者の知的財産権を侵害するおそれについても、常に監視を行っております。しかしながら、当社の保有する知的財産権が第三者から侵害を受けた場合には、期待される収益が失われる可能性があります。また、当社の製品が意図せず他社の知的財産権を侵害した場合には、損害賠償を請求される可能性があり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 研究開発

体外診断用医薬品は、所轄官庁の定めた企業としての責任体制、製品の有効性、安全性、生産方法・管理体制に関する厳格な審査により許認可を得てはじめて上市可能となります。このため、研究開発が計画通りに進行しない、許認可取得に時間を要する、あるいは治験段階において新製品が期待通りの性能を示さない等の事由により、開発期間の延長や開発の中止を余儀なくされることがあります。これらにより、多額の追加投資が必要となった場合や、それまでに投下した研究開発投資の回収見込みがなくなった場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 競合他社との競争

当社は、市場ニーズを先取りした新製品開発及び性能改善を行っておりますが、体外診断用医薬品業界は技術開発及び性能の向上において常に競合他社と競争状態にあります。技術競争の結果、競合他社が当社より先に新製品や性能改善品を上市した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 市場環境の変化

病院・開業医分野では、医療制度改革や診療報酬の改定が行われるなか、治療に即した検査への淘汰が進んでおり、価格競争は激化しております。また、OTC・その他分野でも薬局・薬店業界の再編や新規参入など市場環境は日々変化しております。そのため、市場環境の変化への対応が遅れた場合、病院・開業医分野では、主要製品の需要減少、販売価格の低下、OTC・その他分野では、既存シェアの変化などにより、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)法的規制等

当社は、体外診断用医薬品の製造販売を行うために「体外診断用医薬品製造販売業許可」及び「体外診断用医薬品製造業登録」、また、医療機器の製造販売を行うために「医療機器製造販売業許可」及び「医療機器製造業登録」が必要であり、そのために医薬品医療機器等法及び関連法令をはじめ、様々な法規制の適用を受けております。

当社は、以下の主要な許認可を含めこれらの許認可等を受けるための諸条件及び関係法令の遵守に努めており、現状においては当該許認可が取り消しとなる事由は発生しておりませんが、今後、これらの関係法規が改廃または新たな法的規制が設けられた際に、仮にこれらの法規制を遵守できなかった場合、事業活動を制限されることはもとより、社会的信用の低下を招き、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、これらの法規制を遵守するためのコストが発生し、利益率の低下につながる可能性があります。

許認可等の名称

 許可番号

有効期限

取消事由

体外診断用医薬品

製造販売業許可

佐賀県知事許可

41E1X80013

2030年3月30日

医薬品医療機器等法第二十三条の二
第1項

体外診断用医薬品

製造業登録

佐賀県知事許可

41EZ280071

2030年3月30日

医薬品医療機器等法第二十三条の二の三
第1項

第二種医療機器

製造販売業許可

佐賀県知事許可

41B2X10001

2026年4月26日

医薬品医療機器等法第二十三条の二
第1項

医療機器

製造業登録

佐賀県知事許可

41BZ200003

2026年4月26日

医薬品医療機器等法第二十三条の二の三
第1項

体外診断用医薬品

製造業登録

福岡県知事許可

40EZ200001

2029年6月12日

医薬品医療機器等法第二十三条の二の三
第1項

 

 

(11)訴訟の提起

当社は、事業活動を継続していく過程において、製造物責任(PL)関連、労務関連、知的財産関連、商取引関連、その他に関する訴訟が提起される可能性があります。これらの訴訟の結果によっては、損害賠償を請求される等、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(12)ITセキュリティ及び情報管理

当社は、各種の情報システム・IT機器を利用して業務を遂行しており、また、業務の遂行を通じて、開発・営業その他経営に関する機密情報や従業員の個人情報等を保有しております。これらの情報システム及び情報の保護等に関しては、情報システム運用管理規程や情報セキュリティポリシー等の制定及びその遵守・周知徹底により、業務の円滑化、適切な運用、セキュリティの強化等に努めております。しかしながら、サイバー攻撃等によるシステム障害、コンピューターウイルスの感染及びその他災害等が発生した場合、業務が阻害され、機会損失の発生等追加的なコストが発生し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、それら外部要因を含めた不測の事態により情報の流出や漏えいが発生した場合には、社会的信用を大きく失うこととなり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)創業者への依存について

当社の創業者は、代表取締役会長兼社長である唐川文成であります。同氏は、当社設立以来の最高経営責任者であり、経営方針や経営戦略の決定、営業や研究開発などの事業運営において重要な役割を果たしております。当社では、全ての部署に担当取締役を配置し、さらに各部門長には執行役員もしくは部長を配置しております。各々が参加する定期的な会議体にて、意見等の吸い上げや情報共有などを積極的に進めており、また、適宜権限の委譲も行うことで、同氏に依存しない経営体制の整備を進めております。しかしながら、何らかの理由により同氏が業務執行を継続することが困難になった場合には、当社の業績及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当事業年度(2024年1月1日~2024年12月31日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限や入国制限等の解除を背景に社会経済活動の正常化が進み、雇用・所得環境の改善など、景気は緩やかな回復基調で推移しました。一方、欧米における高い金利水準の継続に伴う影響や中国経済活動の停滞など、海外景気の下振れが懸念される状況となっております。また、アメリカの今後の政策動向や中東地域をめぐる情勢等の影響を注視する必要があり、先行きは依然として不透明な状況が続くことが予想されます。

 

体外診断用医薬品業界におきましては、2019年末に発生した新型コロナウイルス感染症は、その後4年以上にわたり新たな変異株による感染拡大を繰り返すなか、感染拡大防止を目的とした遺伝子検査や抗原検査等の検査需要が急激に高まりました。一方、インフルエンザをはじめとした既存の感染症は、新型コロナウイルス感染症対策の効果の波及や受診控え等により、検査需要が減少するという影響を受けました。

重症化リスクが低減しているといわれるオミクロン変異株が主流となるに従い、行動制限が緩和され、社会経済活動は正常化に向かい、2023年5月には新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが5類へ移行されました。この大きな社会環境の変化に伴い、過去4年程の間に免疫獲得の機会を十分に持てなかった様々な既存の感染症は、反動的な急拡大を伴いながらコロナ禍前の状況に戻りつつあります。新型コロナウイルス感染症につきましても、足元では患者報告数は増加傾向が継続しており再拡大も懸念されるなど、感染症全般にわたり今後の動向を注視する必要があります。

 

このようななか、当社は、新型コロナウイルス検査薬(遺伝子検査キット及び抗原キット)をはじめ、流行が急拡大したインフルエンザ検査薬や様々なその他感染症項目の検査薬の増産に取り組み、安定供給の維持に尽力いたしました。他方では、2024年4月に新型コロナウイルス抗原及びRSウイルス抗原を同時に検出する「クイックチェイサー SARS-CoV-2/RSV」を発売するなど、クイックチェイサーシリーズの検査項目の拡充を図りました。また、遺伝子POCT検査機器試薬システムにつきましては、スマートジーンシリーズの新たな検査項目の開発に注力するとともに、次世代の遺伝子POCT検査装置として、測定時間のさらなる迅速化や遺伝子マルチ検査システムの開発にも取り組んでおります。

 

このような環境下におきまして、当事業年度の売上高は、114億29百万円(前期比4.0%増)となりました。

当社は、体外診断用医薬品事業の単一セグメントでありますが、市場分野別の売上高は、以下のとおりであります。

 

(単位:百万円、%)

 市場分野の名称

2024年12月

2023年12月

 

対売上高

構成比

対前期

増減率

 

対売上高

構成比

病院・開業医分野

11,046

96.7

3.9

10,636

96.8

OTC・その他分野

382

3.3

8.5

352

3.2

合計

11,429

100.0

4.0

10,989

100.0

 

 

 

病院・開業医分野におきましては、新型コロナウイルス感染症は、2023年5月以降、感染症法上の位置づけが5類に移行した影響により、遺伝子検査キット「スマートジーン SARS-CoV-2」の出荷数は、約32万テスト(前期は66万テスト)と大幅に減少しました。一方、新型コロナウイルス抗原キット(銀増幅イムノクロマト法による抗原キット含む)につきましては、インフルエンザとの同時流行を背景として、主に新型コロナウイルス・インフルエンザウイルス抗原同時検出キットの需要が増加し、出荷数は約708万テスト(前期は445万テスト)と大幅な増加となり、遺伝子検査キットの減収分を補いました。これらの結果、新型コロナウイルス検査薬全体の売上高は、68億81百万円(前期比9.7%減)となりました。

インフルエンザ検査薬につきましては、2024/2025シーズンのインフルエンザの流行は、12月には警報レベルを超えるなど異例の速さで感染が急拡大しました。しかし、同時に新型コロナウイルス感染症も増加傾向に転じたことから新型コロナウイルス・インフルエンザウイルス同時検出キットの需要が急増したため、インフルエンザ単独検査薬全体の売上高としては、9億77百万円(前期比3.0%増)と微増にとどまりました。

その他感染症項目の検査薬につきましては、新型コロナウイルス感染症の5類移行という社会環境の変化に伴い、多くの感染症が増加傾向を示し、マイコプラズマをはじめ、アデノウイルス(咽頭結膜熱)、A群β溶血連鎖球菌(Strep A)、肺炎球菌/レジオネラ及びアデノ眼(流行性角結膜炎)など、多くの項目において前期比で増収となりました。これらの結果、その他感染症項目の検査薬を含むその他の検査薬及び機器全体の売上高は、その他感染症項目の需要回復に伴い、31億87百万円(前期比54.0%増)と大幅な増加になりました。

以上により、病院・開業医分野全体の売上高は、110億46百万円(前期比3.9%増)となりました。

 

OTC・その他分野におきましては、妊娠検査薬及び排卵日検査薬は、新型コロナウイルス感染症の影響がほぼ一掃され、OTC・その他分野全体の売上高は、3億82百万円(前期比8.5%増)となりました。

 

利益面につきましては、主に新型コロナウイルス遺伝子検査キットの減収に伴う売上構成比の変化により、売上原価率が上昇したことに加え、研究開発費及び人件費の増加により、営業利益は49億17百万円(前期比4.6%減)となりました。なお、外国為替相場の急激な変動に伴い、為替差益1億67百万円を営業外収益に計上しております。これは主に当社が保有する外貨建資産を期末為替レートで換算したことにより発生したものであります。これらの結果、経常利益は51億67百万円(前期比2.4%減)、当期純利益は37億73百万円(前期比0.0%減)となりました。

 

当事業年度末の財政状態につきましては、以下のとおりであります。

当事業年度末における資産の残高は、前事業年度末に比べ17億81百万円増加し、207億29百万円となりました。これは主に、現金及び預金の増加11億11百万円及び棚卸資産の増加4億51百万円があったことによるものであります。

当事業年度末における負債の残高は、前事業年度末に比べ1億2百万円増加し、33億75百万円となりました。これは主に、未払法人税等の減少93百万円があったものの、役員退職慰労引当金の増加84百万円及び未払消費税等の増加67百万円があったことによるものであります。

当事業年度末における純資産の残高は、前事業年度末に比べ16億78百万円増加し、173億54百万円となりました。これは主に、利益剰余金の増加16億78百万円によるものであります。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ9億48百万円増加し、96億64百万円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における営業活動により増加した資金は、33億48百万円(前期は39億91百万円の増加)となりました。これは主に、法人税等の支払15億26百万円、棚卸資産の増加4億51百万円、為替差損益1億65百万円及び売上債権の増加1億44百万円によるキャッシュ・フローの減少があったものの、税引前当期純利益51億67百万円及び減価償却費2億28百万円によるキャッシュ・フローの増加があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における投資活動により減少した資金は、3億7百万円(前期は2億70百万円の減少)となりました。これは主に、定期預金の払戻30億40百万円によるキャッシュ・フローの増加があったものの、定期預金の預入30億40百万円及び有形固定資産の取得2億99百万円によるキャッシュ・フローの減少があったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における財務活動により減少した資金は、20億94百万円(前期は23億81百万円の減少)となりました。これは主に、配当金の支払20億94百万円によるキャッシュ・フローの減少があったことによるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

当社は、体外診断用医薬品事業の単一セグメントであるため、生産、受注及び販売の状況については市場分野別に記載しております。

 

イ.生産実績

当事業年度の生産実績を市場分野別に示すと、次のとおりであります。

市場分野の名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

病院・開業医分野

11,754

100.3

OTC・その他分野

446

115.8

合計

12,201

100.8

 

(注) 金額は販売価格によっております。

 

ロ.受注状況

当社は見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

 

 

ハ.販売実績

当事業年度の販売実績を市場分野別に示すと、次のとおりであります。

市場分野の名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

病院・開業医分野

11,046

103.9

OTC・その他分野

382

108.5

合計

11,429

104.0

 

(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前事業年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日

当事業年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

株式会社メディセオ

1,958

17.8

2,046

17.9

東邦薬品株式会社

1,495

13.6

1,682

14.7

株式会社スズケン

1,226

11.2

1,175

10.3

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

① 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

イ.経営成績の分析

(売上高)

売上高は、114億29百万円(前期比4.0%増)となりました。市場分野別の売上高の状況の認識及び分析等は以下のとおりであります。

病院・開業医分野におきましては、新型コロナウイルス感染症は、2023年5月以降、感染症法上の位置づけが5類に移行した影響により、遺伝子検査キット「スマートジーン SARS-CoV-2」の出荷数は、約32万テスト(前期は66万テスト)と大幅に減少しました。一方、新型コロナウイルス抗原キット(銀増幅イムノクロマト法による抗原キット含む)につきましては、インフルエンザとの同時流行を背景として、主に新型コロナウイルス・インフルエンザウイルス抗原同時検出キットの需要が増加し、出荷数は約708万テスト(前期は445万テスト)と大幅な増加となり、遺伝子検査キットの減収分を補いました。これらの結果、新型コロナウイルス検査薬全体の売上高は、68億81百万円(前期比9.7%減)となりました。

インフルエンザ検査薬につきましては、2024/2025シーズンのインフルエンザの流行は、12月には警報レベルを超えるなど異例の速さで感染が急拡大しました。しかし、同時に新型コロナウイルス感染症も増加傾向に転じたことから新型コロナウイルス・インフルエンザウイルス同時検出キットの需要が急増したため、インフルエンザ単独検査薬全体の売上高としては、9億77百万円(前期比3.0%増)と微増にとどまりました。

その他感染症項目の検査薬につきましては、新型コロナウイルス感染症の5類移行という社会環境の変化に伴い、多くの感染症が増加傾向を示し、マイコプラズマをはじめ、アデノウイルス(咽頭結膜熱)、A群β溶血連鎖球菌(Strep A)、肺炎球菌/レジオネラ及びアデノ眼(流行性角結膜炎)など、多くの項目において前期比で増収となりました。これらの結果、その他感染症項目の検査薬を含むその他の検査薬及び機器全体の売上高は、その他感染症項目の需要回復に伴い、31億87百万円(前期比54.0%増)と大幅な増加になりました。

以上により、病院・開業医分野全体の売上高は、110億46百万円(前期比3.9%増)となりました。

 

 

OTC・その他分野におきましては、妊娠検査薬及び排卵日検査薬は、新型コロナウイルス感染症の影響がほぼ一掃され、OTC・その他分野全体の売上高は、3億82百万円(前期比8.5%増)となりました。

 

(売上原価、販売費及び一般管理費)

売上原価は、33億45百万円(前期比14.8%増)、売上原価率は29.3%(前期から2.7ポイント上昇)となりました。これは主に、売上構成比が変化したことによるものであります。

販売費及び一般管理費は、31億66百万円(前期比8.4%増)となりました。これは主に、遺伝子POCTをはじめとした新製品に係る研究開発費の増加や人件費の増加によるものであります。

 

(営業利益)

営業利益は、前事業年度に比べ2億34百万円減少して49億17百万円となりました。

 

(営業外収益、営業外費用)

営業外収益は、前事業年度に比べ1億9百万円増加して2億50百万円となりました。これは主に、外国為替相場の急激な変動のなか、当社が保有する外貨建資産を期末為替レートで評価替えしたことにより発生した為替差益1億67百万円並びに受取利息及び配当金の増加によるものであります。

営業外費用の計上はありませんでした。

 

(経常利益)

経常利益は、前事業年度に比べ1億24百万円減少して51億67百万円となりました。また、売上高経常利益率は45.2%となり、前事業年度に比べ2.9ポイント低下し、収益性は低下しております。

 

(特別利益、特別損失)

特別利益及び特別損失の計上はありませんでした。

 

(当期純利益)

当期純利益は、前事業年度に比べ0百万円減少して37億73百万円となりました。

 

インフルエンザ検査薬は、過去7年(2013年~2019年)ほどにわたり、当社の売上高の約50%を占める主力製品でありましたが、2019年末に発生した新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、インフルエンザの流行は著しく低い水準に抑えられ、2020年よりインフルエンザ検査薬の売上高は大幅に減少しました。

一方、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、遺伝子検査や抗原検査の需要が急激に高まるなか、2020年より遺伝子検査キット「スマートジーン SARS-CoV-2」の発売を開始し、これに続き発売を開始した各種抗原キットの売上高が大幅に増加したことから、新型コロナウイルス検査薬への依存度が急激に高まる結果となりました。

2023年5月に新型コロナウイルス感染症は感染症法上の分類が5類へ移行され、社会経済活動の正常化はさらに加速し、それまで抑えられていた様々な既存の感染症が同時多発的に流行しました。同年、インフルエンザは異例の夏場の流行後も流行拡大が継続し、2024年前半はB型の流行も長引きました。また、12月には異例の速さで流行拡大し患者数は過去10年最多を記録するなど、新型コロナウイルスとの同時流行を背景に、新型コロナウイルス・インフルエンザウイルス同時検査キットの需要が急増する結果となりました。

今後につきましては、新型コロナウイルス検査薬は、感染拡大の動向や医療・検査体制の変化などによって、本検査薬の需要や売上高は大きく左右される可能性があります。また、新型コロナウイルスやインフルエンザの流行の時期や規模によって、新型コロナウイルス及びインフルエンザウイルスの同時検査キットあるいは各単独検査キットの需要が大きく変動する可能性があり、これらの状況の変化に伴い特定製品への依存度が変化する可能性があります。

当事業年度(2024年12月期)の各四半期会計期間の売上高の内訳及び直近5事業年度の売上高の内訳は、以下のとおりであります。

 

 

2024年12月期の各四半期会計期間の売上高の内訳

 

 (単位:百万円)

 

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

合計

売上高

2,742

1,926

3,321

3,439

11,429

 新型コロナウイルス検査薬

1,663

993

2,355

1,868

6,881

 (内 CoV/Flu同時検査薬)

(1,056)

(233)

(1,130)

(1,310)

(3,730)

 インフルエンザ単独検査薬

356

101

104

414

977

 その他の検査薬及び機器

635

739

754

1,058

3,187

 OTC・その他

86

91

106

98

382

 

 

直近5事業年度の売上高の内訳

 

(単位:百万円)

 

2019年
 12月期

2020年
 12月期

2021年
 12月期

2022年
 12月期

2023年
 12月期

売上高

6,427

4,205

13,137

17,581

10,989

 新型コロナウイルス検査薬

1,270

9,794

15,179

7,617

 (内 CoV/Flu同時検査薬)

(―)

(―)

(34)

(2,206)

(3,324)

 インフルエンザ単独検査薬

3,196

750

239

416

949

 その他の検査薬及び機器

2,792

1,773

2,689

1,640

2,070

 OTC・その他

438

411

414

345

352

 

 

ロ.財政状態の分析

当事業年度末における資産の残高は、前事業年度末に比べ17億81百万円増加し、207億29百万円となりました。これは主に、現金及び預金の増加11億11百万円及び棚卸資産の増加4億51百万円があったことによるものであります。

当事業年度末における負債の残高は、前事業年度末に比べ1億2百万円増加し、33億75百万円となりました。これは主に、未払法人税等の減少93百万円があったものの、役員退職慰労引当金の増加84百万円及び未払消費税等の増加67百万円があったことによるものであります。

当事業年度末における純資産の残高は、前事業年度末に比べ16億78百万円増加し、173億54百万円となりました。これは主に、利益剰余金の増加16億78百万円によるものであります。

 

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

キャッシュ・フローの分析につきましては「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

当社の資金需要につきまして、運転資金として主なものは、原材料購入等の製造費用、商品の仕入のほか、研究開発費や人件費を含む販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、設備資金として主なものは、製造または研究開発のための設備の新設または更新であります。

運転資金及び設備資金につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローからの充当を基本とし、手元資金、回収期間及びリスク等を勘案したうえで、必要に応じて金融機関からの短期借入または長期借入による調達を行う方針であります。また、機動的かつ安定的に資金の調達が行えるよう、取引銀行と当座貸越契約(総額16億円)を締結しており、緊急の資金需要や不測の事態にも備えております。

株主の皆様への利益還元につきましては、当社は、業績に対応した配当を行うことを基本としつつ、配当性向、企業体質の一層の強化及び今後の事業展開に備えるための内部留保の充実などを総合的に勘案して決定する方針を採っております。この方針に基づき、配当性向50%を目標として配当を実施するよう努めてまいります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や会社の状況・経営環境等に応じ、合理的だと想定される様々な仮定に基づき、見積り及び判断を行っておりますが、将来の不確実性により、最善の見積りを行った結果としての見積られた金額と事後的な結果との間に乖離が生じる可能性があります。

会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおり、該当事項はありません。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

(1) 主要な技術導入契約

 

相手先の名称

契約内容

契約締結日

契約期間

富士フイルム株式会社

「感度増幅技術」の特許に関わるライセンス契約

2011年4月26日

2011年4月26日から

2030年1月21日まで

(以降1年毎の自動更新)

 

 

(2) 主要な販売契約

 

相手先の名称

契約内容

契約締結日

契約期間

株式会社メディセオ

当社が製造する体外診断用医薬品等の売買に関する契約

2005年3月31日

2005年4月1日から

2006年3月31日まで

(以降1年毎の自動更新)

東邦薬品株式会社

当社が製造する体外診断用医薬品等の売買に関する契約

1994年8月1日

1994年8月1日から

1995年7月31日まで

(以降1年毎の自動更新)

株式会社スズケン

当社が製造する体外診断用医薬品等の売買に関する契約

2009年10月1日

2009年10月1日から

2010年9月30日まで

(以降1年毎の自動更新)

アルフレッサ株式会社

当社が製造する体外診断用医薬品等の売買に関する契約

2005年3月1日

2005年4月1日から

2006年3月31日まで

(以降1年毎の自動更新)

株式会社アステム

当社が製造する体外診断用医薬品等の売買に関する契約

1999年9月22日

1999年10月1日から

2000年9月30日まで

(以降1年毎の自動更新)

 

 

6 【研究開発活動】

当社は、体外診断用医薬品事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

(1) 研究開発への取り組み

当社は、体外診断用医薬品において免疫化学発光法や核酸増幅法などの技術が普及し、検査薬市場が飽和傾向にあるなか、診断と治療の一体化による迅速かつ的確な患者診療が行われる医療体制の確立並びに患者サービスの効率化を実現するため、商品価値の向上につながるPOCT検査薬の技術革新、新製品開発及び性能改善などの研究開発を行っております。また、次世代技術の創出を目的とし、免疫分野及び遺伝子分野における新規ターゲットの調査や要素技術の開発活動も行っております。

 

 

(2) 研究開発体制

研究開発については、開発企画部が開発計画を統括し、開発部にて研究開発活動及び生産移管を実施しております。

開発企画部では、テーマ探索、新製品開発及び改良改善におけるテーマ企画、開発品の製品像となる顧客ニーズと差別化を重点とした設計開発仕様の設定並びに完成した開発品の外部評価を基本とした妥当性確認の実施など、インプット及びアウトプットの両面を担っております。本社に組織を置き、4名体制で対応しております。

開発部は、本社と久留米の研究開発拠点を合わせて37名体制で組織されており、呼吸器と消化器を主とした感染症診断薬及び測定装置の開発を行っております。免疫試薬についてはイムノクロマト法、遺伝子試薬についてはPCR法を原理とし、新製品の早期開発及び改善改良を行っております。また、POCTシステムに求められる機器の開発並びに操作性を向上させるためのデバイスや付属品の開発・製造につきましても、積極的に外部へアウトソーシングすることで、スピーディーかつ低コストの開発を実現しております。なお、全ての検査薬、医療機器の開発において、ISO13485に基づく設計開発システムによる製品開発並びに製品の量産化活動を行っております。

 

(3) 主な研究開発活動とその成果

当事業年度における主な研究開発活動とその成果は、以下のとおりであります。

免疫試薬開発においては、富士フイルム株式会社と共同開発に着手しておりました銀増幅イムノクロマト法を用いた高感度POCT機器試薬システムについて、2025年2月、新型コロナウイルス抗原及びインフルエンザウイルス抗原を同時検出でき、さらにインフルエンザA型、B型の判別が可能となった、高感度POCT検査試薬「クイックチェイサー Auto SARS-CoV-2/Flu A,B」の開発を終了し、販売を開始いたしました。

イムノクロマト法POCT検査薬については、2024年4月、新型コロナウイルス抗原及びRSウイルス抗原を同時に検出する検査キット「クイック チェイサー SARS-CoV-2/RSV」の開発を終了し、販売を開始いたしました。

遺伝子試薬開発においては、POCT遺伝子検出技術の研究開発に取り組み、1つのカートリッジと小型の専用装置により、遺伝子の抽出・増幅・検出を1ステップで行うことができる独自の技術で特許を出願し、遺伝子POCT検査システムの開発を推進しております。2018年10月に、業界では先発となるPOCT遺伝子解析装置「全自動遺伝子解析装置 Smart Gene」及びマイコプラズマ核酸キット「スマートジーン Myco」を発売いたしました。

その後、2020年新たに発生し、急激に感染が拡大した新型コロナウイルス感染症の検査体制の拡充等に貢献するべく、同ウイルスの遺伝子検査薬の早期開発に取り組んだ結果、同年8月に公的保険適用を受け、「スマートジーン新型コロナウイルス検出試薬」(現「スマートジーン SARS-CoV-2」)を発売することができました。

また、同年12月、胃内視鏡検査において得られる胃内視鏡廃液を検体として慢性胃炎や十二指腸潰瘍の原因となるヘリコバクター・ピロリの菌感染判断のためのヘリコバクター・ピロリ核酸の検出、さらには多くのヘリコバクター・ピロリ菌が有するクラリスロマイシンの耐性に関与する遺伝子変異も同時に検出するキット「スマートジーンH.pylori G」の許認可を取得し、2022年11月には新規の保険収載となり、同年12月に販売を開始いたしました。

当事業年度におきましては、本装置及びこれらのキットの評価・改善を継続したほか、新たな検査項目として、呼吸器感染症項目、消化器感染症項目、泌尿器感染症・婦人科感染症項目及び薬剤耐性菌項目を選定し、医療現場のニーズにお応えできる検査キットの創出に尽力しております。さらに、次世代の遺伝子POCT検査装置として、測定時間のさらなる迅速化や多項目を同時に検出できる遺伝子マルチ検査システムの開発にも注力しております。

 

(4) 研究開発活動の総額

当社の研究開発体制は開発企画部及び開発部が担当し、全従業員の21.9%に相当する41名のスタッフが各グループに分かれて行っており、当事業年度における研究開発費の総額は783百万円であります。