文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、下記に掲げるグループ理念のもと、ビジョンの実現を目指し、各行動指針に基づいた活動を推進することで、事業を通じて企業の社会的責任を果たし、真に信頼されるグループとなるべく企業価値の更なる向上を図ってまいります。
<グループ理念>
私たちは事業を通じて、健やかで豊かな社会の実現に貢献します
<ビジョン>
フェアスピリットと変革への挑戦を大切にし、従業員とともに持続的に成長する食品リーディングカンパニー
<行動指針>
・安全安心と品質の追求による、価値ある商品とサービスの提供
・有言実行の徹底による信頼関係の構築、強化
・全員参加の闊達な意思疎通と相互理解による能力開発と育成
・コンプライアンスを最優先とした、公明正大で透明性のある行動
・地球環境に配慮した事業活動の推進
(2)目標とする経営指標
当社グループは「中期経営計画2023」において、経常利益200億円、ROIC6.8%以上をグループ目標としています。
(3)中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題
当社グループは、2021年度より3カ年を対象期間とする「中期経営計画2023」を作成し、これを推進しております。本計画では、『「既成概念の打破」と「強みの再認識」による更なる成長・飛躍』を基本指針とし、「経営基盤の強化」「収益基盤の強化」「新規事業・市場への取り組み」「サステナビリティへの取り組み」を主要テーマに設定しました。これらの着実な実行によって、競争力と成長力を高めながら企業価値の向上を図り、持続的に成長する食品リーディングカンパニーを目指しております。
具体的にはテーマごとに以下の課題を設定し、経営課題の解決に取り組んでおります。
「経営基盤の強化」
効率的で競争力のある事業執行体制と組織体系を構築することで、統合効果を最大化する
・組織再編によるグループ戦略の一体化
・各事業会社の制度統合
・デジタル戦略の推進
「収益基盤の強化」
コスト競争力の強化と商品・サービスの価値向上を図ることで、グループの市場競争力を高める
・コスト低減に向けた取り組み
・商品付加価値の向上
・事業規模拡大
「新規事業・市場への取り組み」
今後成長が見込める領域へ人材・資金等の経営資源を再配分することで、グループの成長力を高める
・事業領域の拡大
・生産地域・販売市場の拡大
「サステナビリティへの取り組み」
社会や環境価値に対応した取り組みを進め、社会の一員として責務を果たすことで、グループ価値の向上と持続的な成長につなげる
・サステナビリティ推進体制の強化
・社会貢献活動、労働環境整備
・環境に配慮した取り組み
当社グループは、グループ理念「私たちは事業を通じて、健やかで豊かな社会の実現に貢献します」に基づき、持続可能な社会の実現に貢献することをサステナビリティの基本と考えています。その実現に向けて「7つのマテリアリティ」を特定し、中期経営計画2023では「サステナビリティへの取り組み」を重点的に取り組む主要テーマの一つと位置付け、事業を通じた社会課題の解決に努めています。
当社グループのサステナビリティに関する重要事項については、取締役会の諮問機関であるサステナビリティ委員会での審議を経て取締役会にて審議、または報告がされています。
当社のサステナビリティ委員会は、取締役常務執行役員管理本部長が委員長を務め、各事業部門の関連する責任者及び社外有識者が委員として参加しており、社外の知見も得られる体制を整えています。
更に、2022年4月にサステナビリティ推進室を新設し、事業部門と連携してサステナビリティの取り組みをグループ全体で推進する体制を構築しています。また、サステナビリティ推進室と各事業部門・部署とを繋ぐため、各事業部門及び関連するコーポレートの各部署にサステナビリティ推進委員を任命し、サステナビリティへの取り組みを全社で加速させる体制としています。
当社では、サステナビリティ関連のリスク及び機会を全社的なリスクマネジメントプロセスの中で管理しています。サステナビリティ関連を含む経営上のリスクについては、年に1回全社的なリスクマップの見直しを実施しています。具体的には、発生可能性と当社事業への損失影響度から定量的に評価を行い、当社事業にとっての重要リスクを選定し、取締役会にて分析・最終評価する仕組みとなっています。特定された重要リスクについては、対応策を策定・実行するため、リスク毎に管理責任者及び担当部署責任者を設定しています。担当部署責任者は、管理責任者の指示の下、各リスクに関連する情報収集、ステークホルダーや専門家との意見交換、コンサルタントとの検討等に基づくリスクの分析や対応策の検討を行っています。また、対応策を実行するため、当社グループ会社や関係部署にリスクや対応策の周知や教育等を実施しています。
サステナビリティ関連リスク及び機会については、経営戦略部長が管理責任者、サステナビリティ推進室が担当部署となり取り組みを進めています。
特に気候変動関連リスク及び機会については、シナリオを設定してリスクを分析・評価する方法を活用しており、毎年サステナビリティ委員会にてリスク評価を行い、必要な対応策について審議しています。分析・評価結果は、全社プロセスに統合され、他の経営上のリスクと一体となって管理されています。
①気候変動に関する取り組み
戦略
当社は、畜産物及び畜産加工品を取り扱う事業を展開していることから、気候変動に伴う気温上昇による家畜への影響や自然災害の激甚化によるオペレーションの中断等に加え、社会の脱炭素化の流れの中で進む畜産品の需要低下等、当社事業が気候変動により様々な影響を受ける可能性があると認識しています。このような状況下、その発生可能性に拘わらず、あらゆるシナリオを想定して当社事業にとってのリスク及び機会を把握し、その対応策を検討することは当社事業の持続可能性を高める上で有用であると考え、2021年度にTCFD提言に則った分析を開始しました。
当社は、FAO(Food and Agriculture Organization of the United Nations、国連食糧農業機関)が発行するThe future of food and agriculture-Alternative pathways to 2050やIEA(International Energy Agency、国際エネルギー機関)のWorld Energy Outlook 2021の各気候シナリオを参照しながら、当社事業にとってのリスク・機会を評価し、対応策の検討を実施しました。
当社事業に大きな影響を及ぼし得る気候変動関連リスクとして、当社が事業を行う国・地域においてカーボンプライシングが導入された場合、特に1.5℃シナリオ下においては大きなコスト負担となる可能性があります。これに対し、当社は、当社グループの温室効果ガス(GHG)排出量を2030年度までに半減(2016年度比)、2050年ネットゼロとする削減目標を掲げ、GHGの排出削減に取り組んでいます。今後着実に削減を進めると共に、削減を促進する社内制度の整備も検討していきます。また、2℃シナリオ下においては、先進国を中心に環境負荷の低い食品への需要シフトが起こると見込まれ、食肉消費量が中長期的に大幅に減少すると、これに伴いハム・ソーセージなどの当社の畜産品の需要も減少すると考えられ、中・長期的に当社加工食品事業の売上に大きな影響を及ぼし得るものと認識しています。当社は、畜産品の需要減少に対する対応策として、植物性たんぱく質製品の開発・販売を既に進めています。さらに、培養肉をはじめとしたその他代替たんぱく質の研究開発、調理加工品などの売上拡大の検討を進めていきます。
一方で、2℃シナリオにおいては、環境意識の高まりを受け、環境負荷の低い代替肉の生産量が世界的に増加することが見込まれます。こうした環境下、植物性たんぱく質製品を取り扱う当社にとっては中・長期的に売上増加を見込むことができる大きな事業機会となり得ます。当社は、代替肉の中でも植物由来の大豆ミート商品の発売を2020年から開始しており、今後は、商品ラインアップの拡充と共に、食感・味・香り全てにおいて食肉由来品により近づけるための研究開発を継続して行っていきます。
上記の分析結果を事業環境分析に用いながら、今後の当社事業戦略に反映していきます。
指標及び目標
当社グループでは、気候変動への対応として以下のGHG排出削減目標を策定し、この達成に向けて取り組みを進めています。
GHG Scope1,2排出量(CO2換算)
2030年度目標 2016年度比半減
2050年目標 ネットゼロ
2022年度GHG排出量実績及び目標に対する進捗状況については、2023年9月発行予定の「伊藤ハム米久グループ統合報告書2023」にて開示予定です。
②人的資本に関する取り組み
戦略
(a)人材の多様性の確保を含む人材育成の方針および取り組み
当社は、従業員一人ひとりの多様な視点や価値観を活かしながら、積極的に変革に挑戦し続けていくことが企業の競争力や成長力を高める源泉であると考えています。一方で、少子高齢化や労働人口の減少など、労働市場の不確実性は高まっており、従業員の価値観や働き方も多様化する中で、従業員が働きやすく、自律的に成長できるような環境を醸成していくことも重要な課題であると認識しています。このような観点から、長期的な人材育成を基本に据えながら、多様性や価値観を尊重し、持続的な挑戦によって個人のキャリア形成が自律的にできるよう支援していくことを人材育成の基本方針としています。
具体的な施策としては、テレワーク環境の整備を更に推し進め、男性の育児休暇取得や育児支援策を推進・拡充するとともに、介護についても社内制度や公的支援などの関連する情報提供を充実させることにより、従業員が安心して働き、その能力を存分に発揮できる仕組みを整えて、多様な働き方に対応していきます。また、従業員が自律的に成長してキャリアアップできるための支援を充実させていくとともに、既存のFA制度や公募制度、また、ジョブローテーションの活性化や挑戦した姿勢を表彰する制度の見直しや拡充を進め、持続的に成長し続けることができる風土の醸成を目指していきます。
(b)人材採用方針および取り組み
当社では、国籍や性別を問わず応募者の適性や能力を重視した公正公平な採用活動を方針としています。加えて、多様性の確保という視点においては管理職や係長級における女性比率の向上を目指し、定期学卒採用およびキャリア採用における女性比率の拡大を推進しております。さらに変革の激しい時代に、既成概念を打破し新たな価値を創造していくためにもキャリア採用を継続し、年齢を問わず事業運営のニーズに合った専門性の高い中核人材の確保・育成に努めてまいります。
(c)従業員の安全・健康に関する方針および取り組み
当社は、当社の事業に関わるすべての方々が安全に安心して働くことができる職場環境を実現することを労働安全衛生の基本方針としています。
具体的には、当社グループの財産である従業員の安全衛生、健康維持に配慮した取り組みを下記の通り行っています。これらは安全な職場環境づくりのために労働安全衛生法など関連する法令を遵守するとともに、労働安全衛生マネジメントシステムの考え方に準拠した形で進めています。
安全衛生については、各事業所に安全衛生委員会などを設置し情報の共有化を進めています。中でも最大の課題である労働災害防止では、入職時安全教育の徹底、定期的な職場安全教育、日頃からの職場巡視やリスクアセスメントなどを計画的に実施しています。加えて、従業員一人ひとりが安全衛生に向き合う活動として、危険予知トレーニングの実施や、ヒヤリハット報告への参加により事前の対策と危険の認識を深めるなど、積極的に取り組める職場環境の実現を目指しています。健康維持に関しては、定期健康診断・ストレスチェックの実施に加え、グループの全従業員およびその家族が24時間使用できる「セーフティーネット電話センター」窓口を設け、いつでも相談できる体制を整えています。また、長時間労働、過重労働、メンタルヘルスなどについて従業員への産業医面談を実施し、グループ全体で健康障害の防止を図るための対策に取り組んでいます。
指標及び目標
目標
・研修参加人数(年間) 2023年度 14,000名(2021年度 13,389名)
・管理職の女性比率 2030年度 10%(2021年度 6.1%)
・係長級の女性比率 2030年度 20%(2021年度 10.9%)
・1人当たり年間有休取得率 2025年度 70%(2021年度 62.8%)
(注)管理職の女性比率、係長級の女性比率の指標の対象は主要国内グループ会社となります。
③人権尊重に関する取り組み
戦略
当社は、「人権の尊重は全ての判断や行動において根底をなすもの」との認識のもと、事業に関わる全ての人々の人権を尊重し、企業としての社会的責任を果たしていくために、「伊藤ハム米久グループ人権方針」を定めています。また、サプライチェーン全体で人権の尊重や環境への配慮等の取り組みが行われるよう「伊藤ハム米久グループ調達方針」及び「サプライヤー調達ガイドライン」を策定・開示しています。
さらに、人権デュー・ディリジェンスの実施を通じて当社事業による人権への負の影響の把握に努め、必要な防止・軽減措置を実施していきます。この一つの手段として、当社サプライヤーに対してアンケート調査を実施し、サプライチェーンにおける人権に関する負の影響の状況把握と人権リスクの防止に努めています。
指標及び目標
目標
当社調達額の80%をカバーするサプライヤーに対して、サプライヤー調査を毎年実施
・サプライヤー調査実績
2022年度に当社調達額の80%をカバーするサプライヤーに対してサプライヤー調査を実施し、人権をはじめとした各課題について追跡調査を要するレベルのリスクは確認されませんでした。
当社グループは、業績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクを発生可能性と影響度を勘案の上認識し、影響を最小化する仕組みの構築を図っております。特に重要なリスクとしては、世界的な原材料価格、穀物価格及びエネルギーコストの上昇や家畜伝染病の蔓延などがあげられますが、これらのリスクに対して適切に対応し、設定した課題に対する各種施策を着実に実行することによって、業績の向上に努めてまいります。
その他重要と思われるリスクとその対応方針は下表のとおりです。しかしながら、これらはすべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見できない、若しくは重要とみなしていないリスクの影響を将来的に受ける可能性や、対策の不足による損害が発生する可能性があります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが認識したものであります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりであります。
a.財政状態
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べて23,640百万円増加し、436,763百万円となりました。これは主に、売掛金及び棚卸資産並びに固定資産の増加と現金及び預金の減少によるものであります。
負債は、前連結会計年度末に比べて17,118百万円増加し、167,501百万円となりました。これは主に、短期借入金及び買掛金の増加によるものであります。
純資産は、前連結会計年度末に比べて6,521百万円増加し、269,261百万円となりました。これは主に、利益剰余金の増加によるものであります。
b.経営成績
当連結会計年度の当社グループの経営成績につきましては、売上高は922,682百万円(前期比8.0%増)、営業利益は22,994百万円(同6.6%減)、経常利益は26,044百万円(同8.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は16,975百万円(同11.2%減)となりました。
報告セグメント別の業績の概況は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分方法を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分方法に基づいて記載しております。
<加工食品事業>
当連結会計年度の加工食品事業につきましては、売上高は371,165百万円(前期比2.7%増)となりました。経常利益は5,954百万円(同52.3%減)となりました。
<食肉事業>
当連結会計年度の食肉事業につきましては、売上高は547,145百万円(前期比11.9%増)となりました。経常利益は21,465百万円(同21.7%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べて25,330百万円減少(前期は2,961百万円の減少)し、22,359百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により資金は3,947百万円増加(前期は18,473百万円の増加)しました。主な増加要因は、税金等調整前当期純利益の計上であり、主な減少要因は、棚卸資産の増加と法人税等の支払いによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により資金は22,926百万円減少(前期は11,251百万円の減少)しました。主な減少要因は、固定資産の取得と事業譲受による支出であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により資金は6,844百万円減少(前期は10,653百万円の減少)しました。主な減少要因は、配当金の支払と自己株式の取得による支出であり、主な増加要因は短期借入金の増加であります。
③生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分方法を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分方法に基づいて記載しております。
(注) 当社グループ製品の製造原価によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
b.受注実績
当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分方法を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分方法に基づいて記載しております。
(注) セグメント間の取引については、相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
また、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載していますが、特に次の重要な会計方針が、連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に影響を及ぼすと考えております。
a.棚卸資産の評価
当社グループの棚卸資産には一定期間保存する販売用食肉在庫があり、保存期間中における需給バランスの変化等の外部環境の影響により、その売価は畜産物相場の変動リスクにさらされております。
販売用食肉の貸借対照表価額は収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定しており、連結会計年度末における正味売却価額が取得原価を下回る場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。この正味売却価額は、見積売価から見積販売直接経費を控除して算定しております。
過去の販売実績及び将来の販売見込み等に基づき見積売価を予測しておりますが、その予測には不確実性を伴うため、実際の販売価格との乖離が発生した場合は翌期の損益に重要な影響を及ぼす可能性があります。
b.退職給付に係る負債及び退職給付に係る資産
退職給付に係る負債及び退職給付に係る資産は、数理計算上で設定される前提条件に基づき算出されております。これらの前提条件には、割引率、発生した給付額、利息費用、年金資産の長期期待運用収益率、死亡率などの要素が含まれております。実際の結果がこれらの前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来の会計期間にわたって償却されるため、将来の退職給付費用に影響を及ぼす可能性があります。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響に関して、当社グループは現時点では、厳重な対策を実施した上で事業活動を継続しており、業績及び会計上の見積りに与える影響は軽微であると判断しておりますが、その収束時期及び経済環境への影響等の予想については不確実性が高いことから、感染症の収束時期及び経済環境への影響が変化した場合には、翌連結会計年度以降の当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度におけるわが国経済は、不安定な国際情勢を背景とした資源価格の高騰や円安進行等による物価上昇が企業収益や家計に影響を及ぼす状況が続きましたが、ウィズコロナへの移行による行動制限の緩和等を受け、一部持ち直しの動きが見られました。
当業界においては、原材料価格や光熱費の上昇に加え、包材費や物流費の高止まりが続く中、円安進行の影響も重なり、厳しい経営環境が続きました。また、消費行動の変化やデジタル化の加速、サステナビリティに対する関心の高まりなど、急速に変化し多様化する消費者ニーズや価値観への対応が引き続き求められています。
このような状況の中、当社グループは「中期経営計画2023」において、「経営基盤の強化」「収益基盤の強化」「新規事業・市場への取り組み」「サステナビリティへの取り組み」を重点取組方針としています。「経営基盤の強化」では、戦略単位の組織再編の実行やデジタル戦略を推進し、「収益基盤の強化」では、生産拠点や物流拠点の再編に着手しています。「新規事業・市場への取り組み」では、ノンミート商品のラインアップ拡充やヘルスケア事業の強化を図り、「サステナビリティへの取り組み」では、温室効果ガス排出量を2030年度までに2016年度比で半減し、2050年にネットゼロとする目標に加え、エネルギー・用水使用量と廃棄物排出量については2021年度を基準年として、原単位で3年で3%削減する目標を設定し、実行に向けての取り組みを進めています。
「中期経営計画2023」では、投下資本利益率(ROIC)の向上を目指すことに加え、財務健全性と資本効率性を勘案した株主還元策によって株主価値の最大化を図るため、配当性向40%を目途に安定的に増配することとしています。また、自己株式の取得と消却も進めており、当連結会計年度は50億円の取得と10百万株の消却を行いました。
a.経営成績
(売上高)
加工食品事業は、ハム・ソーセージについては、テレビコマーシャルの投入や消費者キャンペーンの実施により、「The GRAND アルトバイエルン」「朝のフレッシュシリーズ」「ポークビッツ」「御殿場高原あらびきポーク」「原形ベーコンシリーズ」等、家庭用主力商品の拡販に努めたことに加え、ローストビーフをはじめとする業務用商品の販売が伸長したことから、売上高は増加しました。
調理加工食品については、「ラ・ピッツァ」「ピザガーデン」などのピザ類や「お肉屋さんの惣菜シリーズ」「米久の肉だんごシリーズ」、大豆ミートを使用した「まるでお肉!シリーズ」等、消費者ニーズの多様化に対応した商品の拡販に努めたことに加え、外食向け業務用商品の販売が伸長したことから、売上高は増加しました。
食肉事業は、国内事業については、輸入食肉の現地調達価格の高止まりの影響等により販売数量は減少しましたが、国内事業全般における販売単価の上昇や行動制限の緩和による外食向け販売の回復等により、売上高は増加しました。利益については、輸入鶏肉及び輸入牛肉が仕入価格の上昇分を販売価格に反映しきれなかったことに加え、配合飼料価格や物流コストの上昇による影響を受けて、減益となりました。
海外事業については、アンズコフーズ社が採算重視の調達及び販売に努めたことに加え、海外での堅調な食肉需要を受けて販売価格が上昇したことから、売上高、利益ともに増加しました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は、922,682百万円(前期比8.0%増)となりました。
(営業利益)
加工食品事業においては、原材料価格や光熱費の上昇等による影響が商品価格改定による効果を上回ったことから、減益となりました。食肉事業においては、アンズコフーズ社の業績が好調に推移したことから、増益となりました。
以上の結果、当連結会計年度の営業利益は、22,994百万円(同6.6%減)となりました。
(経常利益)
営業利益の減益等により、当連結会計年度の経常利益は、26,044百万円(同8.9%減)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、前期と比べて減少し、16,975百万円(同11.2%減)となりました。
(今後の見通し)
今後の見通しについては、ウィズコロナに向けた政策などにより景気は持ち直しの動きが見られるものの、物価上昇や欧米各国の金融不安、為替の動向など、経済情勢は予断を許さない状況が続くと考えております。
当業界においても、引き続き原材料価格や光熱費の高止まりが見込まれており、厳しい経営環境になるものと思われます。
このような状況において、当社グループは、事業環境の変化に適応して強みを発揮していくために「中期経営計画2023」に基づき、引き続き経営基盤・収益基盤の強化を進め、新たな市場ニーズへの対応に加え、社会や環境に配慮した取り組みを行い、競争力と成長力を高めてまいります。
上記を踏まえ、次期の連結業績については、売上高9,300億円、営業利益230億円、経常利益250億円、親会社株主に帰属する当期純利益150億円を見込んでおります。
b.経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
c.資本の財源及び資金の流動性についての分析
キャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
海外子会社及び一部の国内子会社を除く当社グループではキャッシュ・マネジメント・システムを導入し、グループ資金の有効活用を実現しております。
2023年度における運転資金及び設備投資資金の調達は自己資金及び借入金による調達を予定しております。
また、キャッシュ・フローの指標は、以下のとおりであります。
(注) 1.自己資本比率:自己資本/総資産
2.時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
3.キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
4.インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
*各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
*株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
*キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。
*有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
*利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
当社は2016年4月1日付で、共に連結子会社である伊藤ハム株式会社及び米久株式会社との間で同社に対する経営管理業務に関し、それぞれ「経営管理業務委託契約」を締結しております。
当社グループの研究開発につきましては、基礎研究を当社の中央研究所が中心に行い、商品開発を加工食品事業本部の商品開発部門が中心となり、マーケティング部門と連携をとりながら新商品の企画立案、商品化を推進しております。
まず研究活動の分野では、中央研究所においてグループの技術基盤強化を担い、基礎的研究、及び技術開発を通して、商品の改良や製造技術の高度化に繋げるテーマに取り組む一方、蓄積した研究成果、分析技術、品質評価技術等を活用してグループ各社の課題解決をサポートしています。研究を通じた新たな価値創出と、社内ニーズへの対応を果たす事を両輪として、グループへの貢献を果たすべく取り組んでまいりました。
当期におきましては、前期に引き続き前期に引き続き下記に掲げる3つの視点を堅持しこれらに寄与するテーマを選定して取り組みを進めました。
「品質保持技術の高度化」
微生物制御に重点を置いた取り組みを行いました。微生物検査における「培養法」の課題である迅速化を実現するため、DNAを増幅して生菌数を算出する新規PCR法を用いた細菌検査手法の確立やMALDI-TOF MSを用いてタンパク質のマススペクトルパターンから菌種を同定する手法の開発など、微生物検査の迅速化および簡便化に取り組みました。更に日持ち向上剤の評価法として従来の「培地」を用いた評価法に代わる製品に近い系で且つ高い再現性を担保する評価手法を開発しました。
「おいしさ・品質向上の追求」
おいしさを向上させる技術開発に繋がる基礎的研究と、製品のおいしさを客観的に評価するための新たな分析指標の構築およびそれに基づく分析手法の開発に取り組みました。
前者については、原料肉の品質(解凍状態や肉質、脂肪融点等)が加工特性や製品の品質に及ぼす影響について調べる事で、製造工程の最適化およびおいしさの向上に寄与する技術の開発に取り組みました。
後者では、近赤外分析装置を利用した栄養成分や食品添加物等の簡易分析法の開発、および組織観察の手法を用いた凍結解凍による肉組織への影響を数値化する方法を開発しました。
「新ニーズをとらえた基礎技術の開発」
電子レンジ調理の加熱シミュレーションモデルの構築、食肉製品の色調安定性向上に関する研究、新たな食肉加工用色素の研究、フードテックを利用した新たな食肉/食肉様製品の製造方法に関する検討、LC-QTOF-MSを用いたアレルゲン物質検出の新規プロトコルの確立等々、新技術創出に向けた基礎的研究を中心に取り組みました。
また、2023年2月より大阪大学吹田キャンパス内に大阪大学等との「培養肉社会実装共同研究講座」を開設し、3Dバイオプリント技術を用いた培養肉製造に関する共同研究を開始しました。和牛由来の細胞を筋肉組織、脂肪組織、血管組織にそれぞれ分化誘導し、3Dバイオプリント技術を用いて構造化することで、本物の和牛肉に近い食感、味等を有する培養肉の製造を実現すべく取り組んでおります。
次に商品開発の分野では、中期経営計画2023に基づき加工食品部門の戦略、本部機能が統合集約され、会社単位から戦略単位へと移行し、よりフラットな組織体系となり、伊藤ハム株式会社と米久株式会社の開発組織の連携を進めて開発力の相乗効果を目指します。加工食品事業本部の基本戦略である、
「ブランド力強化と多様性への対応強化」
「収益性の改善・向上」
「海外事業、市場への取り組み強化」
「調理食品/事業領域の更なる拡大」 に沿って情報や課題の共有に取り組んでおります。
新たな組織は、第1商品開発室(伊藤ハム工場生産商品)、第2商品開発室(米久NB商品)、第3商品開発室(米久PB・専売商品)、調達商品開発室(伊藤ハム社外生産商品)の4部署体制とし、各室に求められる開発力を効率的に発揮できる拠点へと配置しております。
当期におきましては、原材料、資材品価格の高騰に対し、資材品の代替品や規格等の見直し検討を実施し、収益性の向上のための施策を進めてきました。また、価格改定による消費者の購入意欲低下を防ぐため、より付加価値の高い商品の提案に注力しております。
なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、