第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社は、事業を通じて21世紀の医療に貢献する企業となることを目指しております。

 当社は、生物が元来持っている機能を利用することで、これまでにない医療技術及び医薬品開発技術の実用化が期待される中、ヒト細胞の機能に着目し、この機能を維持したまま対外で大量に増殖させる細胞技術を開発してきました。この技術を応用し、さらに、増殖したヒト細胞を実験動物に移植する技術により、ヒト細胞の機能を様々な用途に提供していく所存であります。

 

(2)経営戦略等

 当社は、海外でのPXBマウス事業のさらなる拡大を図るため、2010年8月に完全子会社PhoenixBio USA Corporationを設立し、2017年11月にKMT Hepatech,Inc.の株式を取得しました。また、北米製薬企業やCROとのパイプを持つコンサル会社との提携等によって北米を中心とした海外展開に注力してまいりました。今後、当該子会社を海外における事業拠点として、PXBマウスの現地生産・受託サービス提供に関して協力企業との折衝を進めてまいります。

 

(3)経営環境

 最近のトレンドとして、従来、医薬品の主流であった低分子化合物に代わる、タンパク質、核酸、細胞といった新しい形態の新薬開発が世界的に注目を集めており、ヒト細胞で構成された臓器をもつ実験動物として世界で唯一であるヒト肝細胞キメラマウスや、その動物から単離された新鮮ヒト肝細胞が、ヒト特異的なタンパク質や核酸に対する有効性、安全性を評価するうえで非常に有用なツールであるという認識が高まりつつあります。当社グループの製品であるPXBマウス、PXB-cellsはこのニーズに応えることができる素材であることから、北米のコンソーシアム(CMHL Consortium)や、国内外の大学、製薬企業との共同研究、さらに、業務提携先の非臨床試験受託機関との連携によって、新しい知見を積み重ね、プロモーションに利用して、認知度向上に務めております。また、薬効薬理分野においても、非アルコール性肝炎や脂質代謝などの新しい分野への応用を目指したモデル開発を進めております。併せて、当社製品の普及のため、自社施設での受託試験サービスに加えて、国内外の非臨床試験受託機関との連携を一層強化し、PXBマウス及びPXB-cells等の製品販売を国内外で拡大していく計画であります。

 なお、当社グループの主要顧客である国内外の製薬企業の研究開発活動は、新型コロナウイルス感染症の拡大による停滞から立ち直り、PXBマウスの需要は増加しております。当社グループでは、供給体制の整備を進めるとともに、提携先CROも含めた受託試験のキャパシティ確保に努めております。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

a.市場開拓

 当社グループがこれまで実績をあげてまいりました肝炎治療薬の薬効評価試験は、現在も活発に研究開発が進んでいる市場でありますが、規模が限定されていることに加え、新薬の開発状況によっては収束していく可能性があります。一方、急速に拡大しているバイオ医薬領域では、抗体医薬や細胞治療医薬、核酸医薬など新しいモダリティ(治療薬の形態)が新薬開発の主流となるなかで、評価ツールとしてのヒト化動物の重要性はますます高まっております。

 今後、PXBマウスが新薬開発トレンドにおけるニーズを掴んで事業を拡大成長させるためには、PXBマウスの利用が既存の創薬手法と比較して費用対効果に優れていることに加え、ヒトの細胞・タンパク・遺伝子の活動が臓器レベルで維持されていることによる、ヒト化動物としての完成度の高さを顧客に周知する必要があります。しかしながら、巨大な市場の中で熾烈な研究開発競争を繰り広げている製薬企業群を相手にPXBマウスの有用性を認識させるには、当社グループだけの活動では限界があります。

 このような状況において、当社グループでは、これまでにPXBマウスの市場開拓のためにコンソーシアムの活用と国内外のCROとの連携強化を進めてまいりました。米国に設立したコンソーシアムは、PXBマウスの有用性について製薬企業と共に研究する場として2022年3月期現在で10機関が参加しております。その研究成果については学会や学術雑誌に順次発表することで、プロモーション活動として販路拡大につなげてまいります。また、これらの研究成果によって用途拡大を図る一方、顧客である製薬企業等の様々な要望に対応するため豊富な経験を持つCROとの業務提携を積極的に進めることでサービス拡充を推進してまいります。

 

b.米国での供給体制の確立

 世界の製薬業界では総売上高の多くはメガファーマによって占められており、これらメガファーマは全て、主要な研究開発拠点を米国に有しています。さらに米国の西海岸、東海岸では、バイオ医薬領域で研究開発を進めるスタートアップ企業も多数活動していることから、当社グループが事業拡大を図る上では、北米での供給体制確立が不可避であると考えております。このため、当社は2017年11月に当社と同様にヒト肝細胞キメラマウスを生産し、受託試験サービスを行ってきたカナダのKMT Hepatech, Inc.の株式を取得し、完全子会社化しました。2020年8月には、増加するPXBマウス及びPXB-cellsの需要に対応するために行った設備投資を実施いたしましたが、未だ収益化に至るまでの十分な生産実績をあげておらず、現在の旺盛な需要に対応するためには、同社での生産体制確立が喫緊の課題であると認識しております。2023年3月期の早期に生産確立を果たして収益への寄与を目指します。

 

c.AAALAC認証の取得

 現在、医薬品の創薬工程では、薬効及び安全性等の確認に多くの実験動物が用いられております。世界的には動物実験を削減する方向に進んでいくことが予想されますが、臨床試験における安全性、有効性を担保するためには、前臨床試験における実験動物の必要性は今後も変わらないと考えております。

 当社におきましては、PXBマウスをはじめとする実験動物の生産・飼育及びこれを用いた試験を実施していますが、動物実験に対して動物愛護が強く求められる環境を鑑みて、実験動物倫理委員会を設置し、飼育及び試験時の苦痛の軽減の取り組みや飼育環境の整備を行ってまいりました。

 今後、当社がグローバルな事業展開を行う上で、動物福祉についての整備もより一層、製薬企業から求められることが予想されることから、客観的な外部機関による評価が必要だと認識しております。このため、国際的に動物管理及び使用に関する評価を行っているAAALAC International (国際実験動物ケア評価認証協会)の認証を取得をするため、これまでに飼育環境の改善や人員の教育に努めており、早期認証取得を目指します。

 

(5)目標とする経営指標

 当社グループは経営指標として、事業規模を示す売上高を採用しております。サービス分野別に「薬効薬理分野」と「安全性等分野」に区分しており、特に市場規模が大きい「安全性等分野」の売上高を重要な経営指標として、事業拡大を目指してまいります。

 

2【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)PXBマウス事業への依存について

 当社グループの売上高は単一事業であるPXBマウス事業のみとなっており、同事業に依存した収益構造となっております。経営資源を集中させることにより収益規模を拡大させることを目指しておりますが、今後、他社との競争によりPXBマウス事業の売上高が減少した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)抗肝炎ウイルス薬の新薬開発動向と安全性等領域の市場開拓について

 2022年3月期において当社グループの売上高の約4割を占める抗B型肝炎ウイルス薬の薬効評価試験等につきましては、限定された市場であり開発を行っている製薬企業数も限られていることから、当社グループの業績も当該製薬企業の開発状況に依存しております。従いまして、当該製薬企業の開発状況によって当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 また、今後これらの製薬企業において研究開発が進み、有力なB型肝炎ウイルス薬が上市されますと、同領域の市場は収束していくと予測しております。このため、当社グループでは、本来ターゲットとしている安全性等領域での市場開拓を進めており、戦略的にプロモーション活動等の施策を実施する計画であります。しかしながら、これらの施策に対して期待される効果を得られなかった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(3)大学等の公的研究機関との関係

 当社グループの主要な販売先である大学及び公的研究機関は、その研究資金の大部分を科学研究費補助金など公的な補助金及び助成金に依存しております。現在、海外製薬企業を中心に民間企業への販路が拡大しているものの、今後の計画も大学及び公的研究機関に対する売上を見込んでおり、科学研究費補助金等の削減又は制度の変更により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(4)国立大学法人広島大学との共同研究について

 当社グループは、自社での研究活動の他、国立大学法人広島大学と共同研究を実施しております。

 また、同大学は主要な顧客でもあり、2022年3月期において当社グループの売上高の3.0%を同大学が占めております。当社グループは、今後も同大学との間で良好な関係を維持し、共同研究を継続していく方針でありますが、当該契約の更新が困難となった場合又は解除その他の理由により取引が困難となった場合、当社グループの事業に悪影響を与える可能性があります。

 

(5)大規模試験の実施について

 当社グループで行う受託試験サービスのうち、肝炎関連試験は長期間の試験となるため、総売上高の5%を超えるような大規模試験となる場合があります。受託試験サービスは、クライアントと試験計画を協議した上で、試験計画書に基づき実施しておりますが、予期せぬトラブル又は不可抗力により試験期間が遅延することがあり、これらが生じた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(6)生産設備の事故、故障、感染症の発生について

 当社グループの事業は、マウス、ラットなど動物を扱う事業であり、これらは当社グループの研究施設及び生産施設内のクリーンルームで外部の病原菌からの感染を防止するなど、厳重な管理体制のもと飼育し、また不測の事態を考慮して複数の施設に分散する等リスク軽減のための処置を施しております。しかしながら、予期せぬ天災、環境設備の故障及び事故等で施設が損傷を受けた場合、又は動物に感染症等が発生した場合、当社グループの事業に重大な影響を与える可能性があります。

 

(7)ヒト肝細胞の入手について

 当社グループの主要な製品であるPXBマウスはヒトの肝細胞を移植しております。移植に使われるヒト肝細胞は、国内での入手は行えず、代理店を通じて国外業者から輸入しております。今後、仕入価格の高騰、法規制等でヒト肝細胞の入手が困難になった場合PXBマウスの生産に制約を受け、当社グループの事業展開及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(8)小規模組織であることについて

 当社グループの組織は2022年3月31日現在で取締役7名、監査役3名、従業員66名と小規模であり、内部管理体制も当該規模に応じたものであります。今後の事業拡大に伴い、計画的な人員の増強と内部管理体制の充実を図る方針でありますが、必要な人員を確保できない場合、当社グループの事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)技術者の確保、育成について

 当社グループの事業は特殊性が高く、かつ専門性が高いため、技術育成に期間を要します。また、技術の個人依存度が高いため急な増員が難しく、技術者が大幅に流出した場合には当社グループの事業展開に影響を与える可能性があります。

 

(10)税務上の繰越欠損金について

 当社グループは2022年3月31日現在、912,726千円の税務上の繰越欠損金を有しております。従いまして、当社グループの業績が順調に推移し当期純利益が計上された場合でも、当該繰越欠損金が解消されるまで課税される税金負担が繰越控除の限度内にて軽減されると考えております。しかしながら、当該繰越欠損金が解消された以降は税負担が増加し、当期純利益に影響を与えることが予想されます。

 

(11)調達資金の使途

 当社グループは2020年3月に第三者割当の方法による第1回無担保転換社債型新株予約権付社債及び第21回新株予約権の発行により資金調達を行っております。調達した資金は、主にPXBマウス及びPXB-cellsの用途拡大や顧客獲得のためのコンソーシアム活動、CROとの業務提携資金、生産設備の整備、改修費、外注委託費に充当してまいります。しかしながら、これらの投資に対して収益が直ちに結びつく保証はなく、結果、期待される利益に結びつかない可能性があります。

 

(12)研究開発について

 当社グループは、開発競争の激しいバイオ産業のなかで収益力を維持するためには、技術の独自性及び先進性を保ち、顧客のニーズにあったサービスを提供できるよう技術開発を行う事が重要だと認識しております。

 当社グループにおいて研究開発費は大きなウエイトを占めており、将来を見据えながら先行して研究開発及び設備投資を実施しております。しかしながら、研究開発が期待通りの結果を得られない場合は、先行して投資した研究開発費及び設備投資費を回収できない可能性があります。

 

(13)知的財産権について

 当社グループの属するバイオ産業は、技術進歩は著しく速く、日々新しい技術開発が進んでおります。当社グループの技術に関して第三者の知的財産権の侵害は存在しないと認識しておりますが、今後、知的財産権の侵害を理由とする当社グループへの訴訟が発生しないとは限らず、このような事態が発生した場合、当社グループの事業展開及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(14)配当政策について

 当社は創業以来、累積損失を計上しており利益配当を実施しておりません。

 当社は、事業の確立に向けて研究開発及び設備投資を実施している段階であり、投資した研究開発及び設備投資費用を回収するまでには至っておりません。さらに今後、生産体制を強化するため設備投資を実施する計画であります。しかしながら、当社は株主への利益還元も重要な経営課題であると認識しており、事業の確立、経営基盤の安定及び累積損失の一掃後に、内部留保を勘案しながら還元していく方針であります。

 

 

(15)為替相場の変動について

 当社グループは販路拡大を目的に、米国を中心に海外製薬会社に対し積極的にPXBマウスを用いた受託試験サービスを展開しております。海外製薬企業と受託試験サービスの契約を締結する場合は、外貨建取引によっております。通常、これらの受託試験サービスは、契約の締結から試験終了後の決済までに数ヶ月を要するため、為替リスクを有しております。このため、為替相場が円高傾向になりますと、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。当社グループは、為替リスクの低減に努める所存でありますが、為替相場の変動リスクを完全に排除することは困難であり、為替相場の変動が当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

 

(16)技術革新について

 当社グループの属するバイオ産業は、開発競争が激しく、技術革新が急速に進んでおります。当社グループの主要な製品であるPXBマウスは、ヒト肝細胞の置換率が70%以上という高置換率を誇っており、医薬品開発において有効な技術であると認識しております。しかしながら、今後これに代わる優れた技術、又は価格競争力に優れている技術が開発され、当社グループ技術の優位性を失った場合、技術の陳腐化、又は価格競争にさらされる恐れがあります。

 

(17)競合について

 PXBマウス事業の基幹技術である「ヒト肝細胞を持つキメラマウス」を安定生産するには、高い技術力と生産に係る経験を基礎とするノウハウを要するため、参入障壁が高いと考えておりますが、市場拡大が期待されることから、今後、他社が参入する可能性があります。競合他社が参入し当社の優位性が低下した場合、価格競争にさらされて、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(18)法的規制について

 当社グループでは、PXBマウスの生産で遺伝子組換え生物等を取り扱っており、国内においては遺伝子組換え生物等を用いる際の規制措置を定めた「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」に則り、事業を行っております。製品(PXB-cells)の販売につきましては、経済産業省から第二種使用等拡散防止措置確認を取得して産業利用を行っております。また、米国での生産につきましても、現地法令等に則り事業を行っております。

 当社グループでは、施設の保全、リスク管理並びに従業員への教育訓練等を実施し、法令等を遵守していく所存でありますが、事故による拡散及び法規制の強化等により、当社グループの事業展開及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(19)大株主との関係について

 当社のその他の関係会社である三和商事株式会社は、2022年3月31日時点で当社発行済株式総数の30.48%(1,008,000株)を所有し、三和商事株式会社の緊密な者である森本俊一氏は、当社発行済株式総数の15.30%(506,000株)を所有しております。また、同氏は、当社のその他の関係会社である三和澱粉工業株式会社の緊密な者でもあります。

 現在、これら大株主との関係については大きな変更を想定しておりませんが、将来において、大株主との関係に大きな変化が生じた場合は、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性があります。

 

(20)新株予約権による株式価値の希薄化

 当社は、転換社債型新株予約権付社債及び新株予約権を発行しております。2022年5月31日現在における新株予約権の目的となる株式の数は2,462,808株であり、発行済株式総数の74.5%に相当します。

 また、今後も優秀な人材を確保するために、ストック・オプション制度を活用していく可能性があり、現在付与している新株予約権に加えて、今後付与する新株予約権が行使された場合には、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。

 

 

(21)継続企業の前提に関する重要事象等

 当社グループは、継続して営業損失を計上しており、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。

 このような状況の解消を図るべく、当社グループでは北米を中心とした海外市場での事業拡大と生産体制の確立に努め、収益の改善に取り組んでまいります。海外売上高については、新型コロナウイルス感染症の影響による顧客の研究開発活動の停滞から一時的な落ち込みはあったものの、当連結会計年度は対前期比で増加し、受注環境は堅調であります。今後さらに売上を伸ばすため、コンソーシアム活動やCROとの業務提携により新規顧客開拓やPXBマウス及びPXB-cellsの用途拡大を進めてまいります。同時に従来の受託試験サービスからPXBマウス販売へのシフトを進めることで、経営資源をマウス生産に集中し、収益基盤の安定化を目指してまいります。そのための体制として、海外生産拠点であるKMT Hepatech,Inc.において設備投資を行い、PXBマウスの供給能力を増強しております。今後は同社でのPXBマウス生産の安定化を目指すとともに、効率化によるコストの低減に取り組んでまいります。

 資金面につきましては、当連結会計年度末において、1,325,507千円の現金及び預金を保有しており、翌連結会計年度の資金繰りを考慮した結果、当面の事業資金を確保していることから当社グループの資金繰りに重要な懸念はありません。

 以上のことから、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断し、連結財務諸表への注記は記載しておりません。

 

(22)新型コロナウイルス感染症の拡大について

 新型コロナウイルス感染症の拡大により、当社グループの主要顧客である製薬企業において新薬開発が停滞した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、当社グループでは感染予防策として出張や来訪者の制限、在宅勤務、アクリルパーテーションの設置を行うとともに、従業員に対しては体調チェック、マスク着用、手洗い及びアルコール消毒等を徹底しております。しかしながら、従業員間で新型コロナウイルス感染症が拡大した場合、当社グループの事業活動に影響を与える可能性があります。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 なお、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。

 そのため、当連結会計年度における経営成績に関する説明は、売上高については前連結会計年度と比較しての増減額及び前年同期比(%)を記載せずに説明しております。

 詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルスのワクチン接種の進展や各種政策の効果により、持ち直しの動きが見られるものの、原材料価格の高騰やウクライナ情勢に起因する地政学リスクの高まりが懸念されるなど、先行きは依然として不透明な状況にあります。

 当社グループの顧客が属する医薬品業界では、世界人口の増加と新興国の所得水準の向上を背景として市場は成長しておりますが、特許切れによる後発薬の台頭、新薬開発の長期化等により製薬企業の収益性は厳しさを増しております。一方で、潤沢な資金を持つ大手製薬企業は、新たな収益源を求めて有望なパイプラインには積極的に投資する等、M&Aによる業界再編が進んでおります。このような状況を背景に、製薬企業では新薬開発を迅速かつ効率的に実施するために、臨床試験等の開発業務を外部のCRO(開発業務受託機関)へ委託するケースが増えております。また、新型コロナウイルス感染症の拡大によるテレワークの広がりによって、製薬企業の外部委託は一層増加しております。

 このような状況のもと、当社グループでは感染予防策を講じながら営業及び生産活動を行っており、世界の大手製薬企業が研究開発拠点を置く米国を中心に、マウスの肝臓の70%以上がヒトの肝細胞に置き換えられたヒト肝細胞キメラマウス(当社製品名:PXBマウス)を用いた受託試験サービスを提供しております。

 当社グループの主要顧客である製薬企業や研究機関における研究開発活動はコロナ禍による影響から復調しており、海外製薬企業の抗B型肝炎ウイルス薬の開発も活発な状況にあることから、売上高は国内市場、海外市場ともに堅調に推移いたしました。しかしながら、国内生産施設での生産工程の不具合によるPXBマウスの一時的な生産数減少や海外生産施設での生産の遅れに伴う供給不足は、売上高を押し下げる要因となりました。費用面につきましては、売上高の増加に加えて、使用したPXBマウスに一部状態不良が含まれていたことによる大型案件の再試験費用や設備投資した海外生産施設の償却負担増により、売上原価は増加いたしました。販売費及び一般管理費は前年同期とほぼ同水準となりましたが、営業赤字は継続する結果となりました。また、海外子会社におけるPXBマウスの生産が想定どおりに進んでいないことから、当該生産施設を対象とした減損損失を計上いたしました。

 この結果、当連結会計年度の売上高1,324,817千円(前年同期は1,013,543千円)、営業損失167,619千円(前年同期は営業損失276,889千円)、経常損失127,965千円(前年同期は経常損失223,875千円)、親会社株主に帰属する当期純損失387,970千円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失238,002千円)となりました。

 なお、当社グループは「PXBマウス事業」の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ2,305千円減少し、1,325,507千円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、獲得した資金は16,398千円(前連結会計年度は101,909千円の支出)となりました。これは主に税金等調整前当期純損失393,002千円、売上債権及び契約資産の増加48,806千円があった一方で、減損損失265,027千円、前受金の増加101,423千円、減価償却費86,238千円があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、使用した資金は6,975千円(前連結会計年度は184,775千円の支出)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出6,771千円があったことによるものであります

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、使用した資金は34,658千円(前連結会計年度は160,194千円の支出)となりました。これは主にリース債務の返済による支出30,161千円があったことによるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

生産高(千円)

前年同期比(%)

PXBマウス事業

603,085

140.4

 

b.受注実績

 当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

受注高

(千円)

前年同期比

(%)

受注残高

(千円)

前年同期比

(%)

PXBマウス事業

1,993,321

170.3

1,168,375

213.2

(注)外貨建て取引の受注高につきましては、受注時の為替レートにより、また、受注残高につきましては、当事業年度末の為替レートによりそれぞれ換算しております。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

PXBマウス事業

1,324,817

(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

F.Hoffmann-La Roche AG

264,816

26.1

173,759

13.1

Gilead Sciences,Inc.

62,188

6.1

165,662

12.5

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営成績

 当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、新型コロナウイルス感染症の影響により抑制されていた研究開発活動が回復しており、海外製薬企業を中心に新薬開発は活発な状況にあります。当社のPXBマウスにおいては長年の実績がある抗B型肝炎ウイルス薬の薬効評価に加えて、核酸医薬品などバイオ医薬領域での利用も増加しており、2022年3月期の受注高及び受注残高は過去最高となりました。一方でPXBマウスの供給においては、海外生産施設では歩留率が安定しない状況にあることから計画を下回る生産数となり、国内生産施設においても不具合による一時的な生産数の落ち込みが発生したため、納品や受託試験に遅れが生じました。結果として、売上高も過去最高となる1,324,817千円となったものの、当初計画値からは下回る水準での着地となりました。利益面については、海外生産施設のコスト増が収益に貢献できていない状況に加えて、受託試験においてはマウスの状態不良による大型案件の再試験費用が発生したことから、売上総利益率は前連結会計年度から悪化する等、赤字からは脱却できず、営業損失は167,619千円となりました。また、2020年8月に設備投資が完了した海外生産施設は生産実績を踏まえた将来の回収可能性を検討した結果、有形固定資産の帳簿価額全額について減損損失の計上を余儀なくされ、親会社株主に帰属する当期純損失387,970千円となりました。

 なお、減損損失は計上したものの同海外生産施設は需要が増加している北米でのPXBマウス生産拠点としての位置づけに変わりなく、引き続き安定生産に向けて取り組んでまいります。

 

財政状態

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は1,854,247千円となり、前連結会計年度末に比べ54,833千円増加いたしました。これは主に売掛金及び契約資産が66,406千円増加したことによるものです。また固定資産は426,219千円となり、前連結会計年度末に比べ290,691千円減少いたしました。これは主に海外子会社の有形固定資産を対象とした減損損失の計上により、建物及び構築物が108,034千円、工具、器具及び備品が100,231千円、使用権資産が87,666千円、それぞれ減少したことによるものです。この結果、資産合計は2,280,467千円となり、前連結会計年度末に比べ235,857千円減少となりました。

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は438,768千円となり、前連結会計年度に比べ39,983千円増加いたしました。これは主にその他が25,275千円、未払法人税等が6,600千円、それぞれ増加したことによるものです。また固定負債は1,013,547千円となり、前連結会計年度末に比べ10,002千円減少いたしました。この結果、負債合計は1,452,315千円となり、前連結会計年度末に比べ29,981千円増加となりました。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は828,151千円となり、前連結会計年度に比べ265,838千円減少いたしました。これは主に収益認識会計基準等の適用により利益剰余金の期首残高が80,682千円、為替換算調整勘定が26,012千円、それぞれ増加した一方で、親会社株主に帰属する当期純損失387,970千円を計上したことによるものです。

 

経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

 当社グループの事業は、PXBマウスを用いた受託試験サービスとPXB-cellsの販売を中心に展開しておりますが、とりわけ、PXBマウス及びPXB-cellsは薬効薬理分野における抗肝炎ウイルス薬の薬効評価ツールとして、国内外で、C型肝炎ウイルスやB型肝炎ウイルスの基礎研究、医薬品開発に貢献してまいりました。肝炎分野の受託試験サービスは、当連結会計年度でも売上構成の4割を占めておりますが、今後、優れた抗肝炎ウイルス薬が上市された場合、市場が収束すると予想されることから、当社グループでは、ほぼ全ての医薬候補物質が対象となり、より大きな市場である安全性等分野でのPXBマウス、PXB-cellsの普及に努めております。

 したがいまして、当社グループでは、分野別の売上高を重要な経営指標として位置づけております。

 

 当連結会計年度の分野別売上高は下記のとおりであります。

分野別

当連結会計年度

(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)

売上高(千円)

前年同期比(%)

薬効薬理分野

515,578

安全性等分野

809,238

 

 

(注)当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しておりますので、前年同期比は記載しておりません。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フローの分析・検討)

 当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度に比べ2,305千円減少の1,325,507千円となりました。これは主に、営業活動により16,398千円の資金を獲得した一方で、投資活動により6,975千円及び財務活動により34,658千円の資金をそれぞれ使用したことによるものです。

(資本の財源及び資金の流動性)

 当社グループの主な資金需要は、PXBマウス、PXB-cellsの生産ならびに受託試験にかかる製造費、PXBマウスの用途開発や有用性検証を目的とするコンソーシアム活動や南カリフォルニア大学との共同研究を含めた研究開発費、専門学会でのブース展示を含めた国内外での営業宣伝活動費、これらグループの活動を支える間接部門に係る運転資金の他、生産、受託試験及び研究開発のための設備・機器への投資とこれらの設備・機器の運転・維持、ならびに実験機器等消耗品の購買資金であります。これらのうち、運転資金につきましては内部資金を活用し、設備投資資金につきましては、投資規模により資金調達コストを勘案の上、内部資金の活用の他、金融機関からの借入金、リースによる調達によっております。

 なお、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、主に前述の資金調達等により前連結会計年度末に比べ2,305千円減少し、1,325,507千円となりました。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。また、連結財務諸表の作成にあたり必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しておりますが、見積りには不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

 

4【経営上の重要な契約等】

 

共同出願に係る発明の不実施補償

相手先の名称

対象発明の内容

契約内容

契約日

契約期間

公益財団法人

東京都医学総合研究所

ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベータートランスジェニックマウス

当社、公益財団法人東京都医学総合研究所及び中外製薬株式会社の三社共同出願した本発明に係る知的財産権を当社が独占的に商業実施することによる不実施補償

2016年2月22日

2016年4月1日から

2032年4月27日まで

中外製薬株式会社

(注)1.本マウスを商業実施に用いた匹数により不実施補償料を支払っております。

2.本マウスは、PXBマウスの生産において使用しているホスト動物であるurokinase-type plasminogen activator cDNAトランスジェニックマウス(cDNA-uPA)であります。

 

5【研究開発活動】

 PXBマウスの潜在的な市場を具現化するには、創薬工程における実験動物としての用途開発をすることが必要であります。特に、非臨床試験のうち薬物代謝試験及び安全性試験の新たな評価ツールとしてPXBマウスを用いた試験手法は将来有望であり、PXBマウス単体の付加価値は実験動物としての限界がありますが、用途開発によって高収益体質を持続可能なものにできます。PXBマウス事業の研究開発活動はこの用途開発に注力し知的財産権の確立を目指しております。

 当連結会計年度の研究開発費は、PXBマウス事業に係るものであり、総額は219,773千円となっております。