第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当事業年度末日現在において当社が判断したものであります。

(1)経営方針、経営環境

当社は、「世界を変える仲間をつくる。」をミッションとし、選択と集中のため事業や子会社を売却したい方、経営環境の変化に合わせるために事業や子会社を買収したい方、後継者不在で引き継ぎ先を探す必要に迫られている方、企業の更なる成長のために資金調達又は経営権の譲渡を望まれる方など、それぞれ企業の変化に合わせた経営体制の構築をM&Aを通じて支援することにより、広く社会に貢献することを企業理念としております。

具体的な取組については、下記のとおりとしております。

 
①当社は会社設立時から、公認会計士・税理士を中心とした会計分野の専門性を有するプロフェッショナル集団であり、中堅・中小企業のM&A仲介事業を主たる事業として展開してまいりました。2024年8月に「中小M&Aガイドライン」が第3版に改訂され、また、業界団体による自主規制や業界健全化に向けた取組が行われ、これまで以上にM&A支援サービスの質の確保が求められます。当社はガイドラインや業界団体による自主規制を遵守し、引き続き、専門性の高い業務提供を行うことで、顧客が安心して満足できるM&Aを創出していく方針であります。
 

 ②当社でのM&A仲介は、より多くの買収候補先を探索し、譲渡希望者に提案できることを目指しております。このため、日々の業務活動を通じて得られる買収ニーズをデータベース化し、これを活用することで相手先を探索するほか、提携金融機関からの紹介による探索、インターネット経由でのマッチングを強化するためWEBサイト「M&A市場SMART」を活用するなど、マッチング手法の強化を図っていく方針でもあります。

  なお、不適切な買収希望企業とのマッチングを排除するために、不適切事業者のリストを社内で共有するとともに、買収希望企業の審査を徹底する取組を実施しております。

  また、M&Aの利便性やM&Aによる問題解決策を広く社会に認知していただけるよう「M&A Online」等のWEBサイトを通じた情報発信を拡充していく方針であります。また、譲渡希望企業より買収希望企業の数がはるかに多く、買収ニーズがあるものの、現実的に買収できない企業が多く存在します。この状況を踏まえ、当社は買収を検討する企業のために「プレマーケティングサービス」を提供しております。このサービスは当社が買収希望企業の代わりに、譲渡希望企業の探索活動を一括して請け負い、M&A成約までのフルサポートを行います。当サービスを活用し、買収希望企業に買収を検討する機会をより多く提供していく方針であります。

 

 ③現在の環境としては、オーナー社長の高齢化や後継者不在の企業数の増加を背景に、日本国内の中堅・中小企業のM&Aは拡大傾向にあります。一方で、M&Aは後継者不在の解決策に限定されるものではなく、中期的な事業の拡大を図るために、事業承継のM&A市場だけにとらわれず、選択と集中のためのM&A、グループ企業のM&A、大企業とスタートアップ企業のM&A、事業再生のためのM&A等、事業承継以外のM&A市場でも積極的に活動してまいります。スタートアップ企業と大企業の提携を進める会員制のサービス「S venture Lab.」を展開しており、資金を必要とするスタートアップ企業とイノベーションを求める大企業を結びつけ、新しいビジネスや市場を生み出すことを目指していく方針であります。

  また、当社のミッション「世界を変える仲間をつくる。」を実現するため、仲間づくりの一環として、M&A仲介事業の周辺事業や新規事業への進出を図る方針であります。

 

 ④当社はM&Aコンサルタントを中心に積極的な人材採用を行っており、今後も当社の業績拡大のために、継続的な増員を計画しております。近年は新卒採用にも力を入れており、サービス品質向上に向けて研修メニューの充実や、OJTの推進等で、人材育成を強化する方針であります。また、従業員が安心して働くための職場環境づくりに努め、当社内での仲間づくりも強化する方針であります。

 

 

 ⑤当社は東京証券取引所のプライム市場に上場しており、プライム市場ではより高い水準のガバナンス体制が求められております。当社はガバナンスの一層の充実を図るため、取締役会の任意の諮問機関として指名・報酬諮問委員会を設置しております。また、SDGsの様々なゴール達成に貢献するため、サステナビリティ推進委員会を中心に、重要課題(マテリアリティ)の特定や、重要課題を達成するための指標及び具体的な目標を設定し、サステナビリティへの取組を推進していくとともに、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に基づく情報開示等に積極的に取り組んでまいります。

 

これらの経営方針及び取組のもと、今後3年間において、下記のとおり成約組数及び売上高を増加させていくことを当面の目標としております。また、案件の成約に先立ち、案件の新規受託が必須となることから、成約組数達成のための先行指標となる新規受託件数も下記のとおりの目標としております。これらの数値目標は、毎期、その期の活動状況を踏まえ、見直す方針としております。

 

2024年9月期

(実績)

2025年9月期

(目標)

2026年9月期

(目標)

2027年9月期

(目標)

成約組数(組)

252

310

350

396

売上高(百万円)

18,138

22,300

25,200

28,512

新規受託(件)

923

1,045

1,238

1,346

 

 

上記の目標達成には、M&Aコンサルタントの増員も必要不可欠となり、今後については、下記のとおりの増員を計画しております。

 

2024年9月期

(実績)

2025年9月期

(計画)

2026年9月期

(計画)

2027年9月期

(計画)

M&Aコンサルタント数(人)

303

364

408

454

 

なお、採用したコンサルタントについては、入社後1年間は収益貢献がほぼなく、2年目で1~2組の案件成約、3年目で2~3組の案件成約というように経験とともに成約数が増加することが一般的であります。

 

(2)対処すべき課題

① サービス品質の向上

中堅・中小企業の譲渡希望企業にとって、会社を譲渡することは非常に重い決断であるとともに、今まで企業を育ててきた努力を将来の新たな活力につなげる生涯における一大事であります。譲渡希望企業は様々な不安を抱えながら、決断を行い、理想の買収先を求め、交渉を進めていきます。一方、買収希望企業にとっては、貴重な経営資源を新たな会社に投下することは新たなリスクを抱えるものであり、慎重に会社を選定し、交渉を進め、決断を行います。
 このような状況下、譲渡希望企業と買収希望企業がM&Aを進める上では、仲介会社である当社の信用力が必要不可欠であり、顧客からの安心感を得られる体制を構築することが重要な課題であると認識しております。また、中小M&Aガイドライン及び業界団体による自主規制ルール等により、仲介会社は質の高いサービスを提供することが求められております。
 このため、社会的信用力の向上を目指すとともに、更に信頼される企業となるべく、社内管理体制及びコンプライアンス体制の整備・充実を図ってまいります。また、業務・サービスの品質を高めるべく、従業員の専門性を高めるため社内教育を推進するとともに、徹底的に顧客と向き合い案件を進めていく企業文化を構築するため、案件の検討に関する会議を定期的に開催し、社内コミュニケーションの促進、情報の共有を推進してまいります。
 一方、M&A仲介会社の社数は、昨今急増しており、競争環境も激化している状況にあります。多くのM&A仲介会社の中から当社を選んでもらうためには、信用力に加え、知名度の向上も課題になると認識しております。このため、知名度向上のための施策も積極的に取り組んでまいります。

 

 

② 多様なM&Aニーズへの対応、事業領域の拡大

事業承継問題を背景に、中堅・中小企業のM&A市場は活性化している状況でありますが、事業承継だけに限定することなく、選択と集中、スタートアップ企業のエグジット、事業整理、事業再生目的等多様なM&Aニーズにも対応を図るとともに、M&Aを利用した新たな問題解決手法を創出することも視野に入れ、M&A市場全体の発展に貢献してまいります。現在は特に、スタートアップ企業と大企業のイノベーション型M&Aと医療介護業界のM&A等に注力しております。
 また、M&A仲介事業を強化するために、M&A仲介事業の周辺事業や新規事業への進出による事業領域の拡大を目指してまいります。そのために、当社によるM&Aについても積極的に検討してまいります。

 

③人材の確保・育成・働きやすい環境づくり

当社では、M&A仲介事業を持続的に成長させるために最重要となる経営資源は人的資源であると考えており、優秀なM&Aコンサルタントを継続的に獲得し、育成し、維持していくことが課題であると認識しております。
 獲得に関しては、専門的な知識を有する人材、多様な分野に精通している人材、営業力・交渉力に長けた人材等の有能な人材を中途採用で獲得してまいります。また、今後の成長が期待できる人材を新卒採用で積極的に獲得してまいります。
 従業員の育成のため、専門的知識や専門的スキルの向上のための社内研修の充実、M&A情報の共有等の施策に取り組んでまいります。また、チーム制を導入しており、チームとして多様な案件に対応することを通じて、個人の経験を高める施策を推進しております。当事業年度に入社したM&Aコンサルタントが早期に収益貢献できるよう育成に努めてまいります。さらに、優秀なM&Aコンサルタントの定着率を向上させるため、成果主義に基づく給与制度や人事考課制度を採用しておりますが、社会環境や組織構造の変化に対応して随時見直しを行うとともに、従業員が積極的に仕事に取り組める環境を整備してまいります。

 

④顧客満足度に配慮した案件進捗管理

 業績目標を達成する上では、個々案件の成約に向けた進捗管理が重要な課題になると認識しておりますが、案件の成約時期については、譲渡希望先と買収候補先のそれぞれの意向や意思決定手続等により左右され、当社で完全にコントロールできない面もあります。また最近では、譲渡希望先と買収候補先のいずれかが大企業となるケースも増えており、以前に比べると成約までの期間が長期化する傾向にあります。さらに、中小M&Aガイドラインでは仲介者に対して、譲渡希望先と買収候補先の当事者間でM&A成立後のトラブルが発生するリスクを低減するための対応が求められているため、成約までの期間が長期化する可能性があります。
 当社では、コンサルタントが譲渡希望先と買収候補先の希望を踏まえ、当事者の意思決定プロセスも考慮し、スケジュール化するよう努めております。また全案件の進捗管理のため、毎週、案件の進捗状況を把握し、必要に応じた対策を図るようにしております。さらに、会計・法律などの専門家で構成されたコーポレートアドバイザリー部を設置し、コンサルタントをサポートするとともに、専門知識が必要となる高度ないし複雑な案件も成約できる支援体制を整備しております。
 これらの施策により、顧客満足度に配慮しながら、適切な時期に成約できるよう努めてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

当社は「M&Aは、人の想いでできている。」をコーポレートスローガンに掲げ、また「世界を変える仲間をつくる。」をミッションとして、ご相談者様の想いに寄り添いながら、企業の成長と発展を支援しています。

後継者不在の解決、規模拡大による生産性向上、イノベーションの創出など、本業であるM&Aを通じてこれまで多くの企業の事業継続や発展といった企業そのもののサステナビリティを実現するお手伝いをしてきましたが、今後はより一層社会や環境へのインパクトを意識するとともに、当社自身もサステナビリティを意識した経営を推進していかなければなりません。

当社では、サステナビリティ基本方針の下、新たにESGに関わる6つの重要課題(マテリアリティ)を設定し、これらの指標及び具体的な目標達成のため取り組みを進めています。

顧客目線での高品質なM&Aサービスの提供や従業員の専門性向上等を今後も継続するとともに、より一層環境面などにも配慮した事業運営やM&A支援を推し進めることにより、M&A業界全体の発展だけでなく社会全体の持続的な発展にも貢献していきたいと考えています。

 

(1) サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

 当社では、全社的なサステナビリティ活動の推進を目的として、管理部担当取締役を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」を設置しています。取締役会は優先的に取り組むべき重要課題を踏まえて、サステナビリティ推進委員会に対して取組方針を指示しています。サステナビリティ推進委員会では、サステナビリティに関連する方針や戦略、重要課題(マテリアリティ)、活動計画等について審議し、取り組みを具体化するために関連各部門に必要な指示や提言を行っています。
 サステナビリティに関連するリスクを含む全社的なリスクの管理は、管理部門担当取締役が統括しており、重要な方針については経営会議、取締役会への報告を行っています。

 

(2) 気候変動及び自然資本・生物多様性に関する取組

 当社では、気候変動問題を重要な課題の一つとして認識しており、2022年9月期よりTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に沿った気候変動への対応に着手しました。気候変動に係る当社の取組については、コーポレイトサイトにおいて詳細に開示しています。(https://www.strike.co.jp/sustainability/environment.html)

 また、気候変動と自然資本・生物多様性の影響を鑑み、当事業年度よりTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の提言に沿った対応に着手し、検討を進めています。自然関連のリスク・機会を把握するため、自然との関わりが強い事業活動の絞り込み、活動地域の脆弱性等を踏まえた優先地域の選定を開始いたしました。

 自然との関わりが強い事業活動の絞り込みにあたっては、ENCОREやインプット(資源投入)とアウトプット(負荷排出)のデータを用いた依存と影響の定性的な整理、エコロジカル・フットプリントを用いた依存と影響の大きさの数値化に取り組んでいます。

 今後、TNFD提言に基づく情報開示に向けて、サステナビリティ推進委員会を中心に取組を進めてまいります。

 

①ガバナンス

サステナビリティ推進委員会は、SDGsを意識したサステナビリティ全般の対応に加え、TCFD提言で要請されているリスクと機会の特定、シナリオ分析、温室効果ガス排出量の算定等を実施し、取締役会への報告を行う等、気候関連課題に対するモニタリングを実施しています。

取締役会は、気候変動問題への取組状況についての報告を受け、サステナビリティ推進委員会に対して取組方針を指示しています。

 

②戦略

a.気候変動に伴う重要なリスクと機会

気候変動に伴って将来生じる可能性のある当社のリスク・機会について、TCFD提言に沿ったリスク・機会を特定し、重要度の評価を行いました。リスク・機会の特定に当たっては、2030年(短期)、2050年(中期)、2100年(長期)を想定し、以下のシナリオを使用しました。

・IEA(国際エネルギー機関)1.5℃上昇(NZE2050)、2℃上昇(APS)

・IPCC(気候変動に関する政府間パネル)4℃上昇(SSP5、RCP8.5)

特定されたリスク・機会のうち、特に重要なものは次に示す表のとおりです。

 

重要なリスク

主なリスク

事業への影響

重要度

発現

時期

主な対応策

1.5℃/2℃

シナリオ

4℃

シナリオ

政策・

法規制

リスク

炭素税・賦課金や排出量取引制度の拡大

化石燃料由来のエネルギー使用に係る炭素税の税金や排出量取引の追加コストが発生する。

 

短中期

GHG排出量削減活動の推進

排出量目標達成のため、排出権取引や証書(クレジット)購入等のコストが増加する。また、報告に係る事務手続きのコストが増加する。

 

GHG排出量削減活動の推進

市場

リスク

気候変動に関する顧客の環境意識の高まり

環境リスクのある企業への投資が減少することで、売上が減少する。

 

環境に配慮した事業活動の推進

急性

リスク

台風・豪雨・洪水等の気候変動による災害の頻発化、激甚化

当社や顧客(買収先、譲渡先)のオフィスが被災、あるいは、それらを繋ぐ交通インフラや情報インフラが影響を受けた場合、事業が停止する。

 

中~高

中長期

拠点の防災・減災対策の推進、テレワーク・シェアオフィスの活用

慢性

リスク

海面上昇

拠点が高潮の被害に遭うリスクが増加し、オフィス移転の追加コストが発生する。

 

拠点の移転、防災・減災対策の推進、テレワーク・シェアオフィスの活用

 

 

重要な機会

主な機会

事業への影響

重要度

発現

時期

主な対応策

1.5℃/2℃

シナリオ

4℃

シナリオ

製品/

サービス

気候変動に伴う低炭素商品・サービス開発企業のM&Aニーズの増加

低炭素商品・サービスの開発を手掛ける企業の増加により、M&Aを検討する企業が増えることにより、M&Aニーズが増加する。

中~高

 

短中期

低炭素商品・サービス開発企業のM&Aニーズの把握

市場

気候変動に伴う企業のM&Aニーズの増加

脱炭素化が進行し、脱炭素・低炭素に貢献する事業分野の事業拡大や事業創出を図る企業(ベンチャー企業を含む)が増え、M&Aニーズが増加する。

 

脱炭素・低炭素事業に係るM&Aニーズの把握

脱炭素化が進行し、顧客の事業においてCO2排出量を低減する必要性が高まり、M&Aニーズが増加する。

中~高

 

脱炭素のためのM&Aニーズの把握

気候変動に対する顧客の意識が高まり、気候変動に関連した事業への投資に係る需要が増え、M&Aニーズが増加する。

中~高

 

気候変動に関連したM&Aニーズの把握

環境意識の高まりにより、企業へのESG関連の対応が更に求められ、事業の廃業を検討する企業が増え、M&Aニーズが増加する。

 

気候変動に関連したM&Aニーズの把握

市場における気候変動を加味した取引条件が設定されることにより、資本力が大きな企業との提携を希望する会社が増え、M&Aニーズが増加する。

 

気候変動に関連したM&Aニーズの把握

 

 

 

b.事業インパクト評価

特定されたリスクのうち、重要度が高く、試算可能なリスクについて、移行リスクとして炭素税導入による追加コスト、物理的リスクとして洪水・高潮発生時の拠点の浸水による追加コスト(オフィス代替費用)を試算しました。試算に当たっては、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)と国際エネルギー機関(IEA)の情報に基づき、1.5℃/2℃上昇、4℃上昇を想定したシナリオを使用しました。

 

ア.税制度(炭素税等)導入による追加コスト [移行リスク]

国際エネルギー機関(IEA)の情報に基づき、当社の拠点において、エネルギー消費に伴い排出される温室効果ガス排出量に応じて課税される追加コストを算定しました。なお、算定に当たっては、温室効果ガス排出量削減目標の基準年である2022年9月期の温室効果ガス排出量を用いました。

1.5℃上昇シナリオで追加コストが大きくなり、2050年の影響は約6.3百万円となりましたが、2023年9月期の経常利益に対して1%未満であり、気候変動の影響は小さいことがわかりました。

 

イ.高潮発生時の拠点の浸水による追加コスト(オフィス代替費用) [物理的リスク]

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が提供する将来予測データを用いて、当社の拠点が、洪水又は高潮で浸水被害を受けた場合、事業継続に必要な代替オフィスの借り上げ費(追加コスト)を算定しました。

当社の全拠点について、現況の洪水・高潮のハザードマップを重ねた結果、洪水のみの影響による浸水被害の試算対象となる拠点はなかったため、高潮を対象に試算しました。なお、試算は、2023年9月時点の拠点を対象として実施しました。

4℃上昇シナリオで追加コストが大きくなり、2100年の影響は約24百万円となりましたが、2023年9月期の経常利益に対して1%未満であり、気候変動の影響は小さいことがわかりました。

 

③リスク管理

気候変動関連のリスクについては、「サステナビリティ推進委員会」において、TCFD提言に沿って気候関連リスクとリスクに対応する機会の洗い出しを行い、取締役会への報告を行う等、気候関連課題に対するモニタリングを実施しています。また、特定したリスクと機会は、確からしさと影響の大きさから重要度を評価し、重要と評価されたリスクと機会については、取締役会に報告し、全社的なリスク管理の対象に組み込み、対応しています。

 

④指標及び目標

当社では、2023年9月期における当社事業(単体)に伴う温室効果ガス排出量を、国際基準であるGHGプロトコルに準拠して算定しました。2023年9月期におけるScope1、Scope2、Scope3の排出量は以下のとおりです。

 

2023年9月期温室効果ガス排出量

対象:当社単体(2023年9月期)

算定基準:GHGプロトコルに基づく算定

算定範囲:Scope1(燃料の燃焼)、Scope2(電気・熱の使用)、
Scope3(サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量)

 

 

区分

排出量(tCO2)

Scope1(燃料の燃焼)(注1)

22

Scope2(電気の使用)

ロケーション基準(注2)

131

マーケット基準(注3)

35

Scope2(熱の使用)

75

Scope3

7,117

計(Scope1+2+3)

(ロケーション基準)

7,346

(マーケット基準)

7,250

 

 

(注)1.ガソリンの年間使用量×ガソリンの単位発熱量×ガソリンの排出係数×44/12
ガソリンの単位発熱量、ガソリンの排出係数は、「地球温暖化対策の推進に関する法律」の「温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度」に基づく値を採用しております。

2.平均的な排出係数(令和3年度全国平均係数)に基づき算定しております。

3.「地球温暖化対策の推進に関する法律」で定められた電気事業者別の調整後排出係数(令和5年度報告用)に基づき算定しております。
本社については、2022年10月~2023年9月の期間、トラッキング付き非化石証書で購入した電力割当量を電気使用量から相殺しております。

 

Scope3 カテゴリ

排出量(tCO2)(注1)

割合(%)

1.購入した製品・サービス

3,465

48.7

2.資本財

2,595

36.5

3.Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動

61

0.9

4.輸送、配送(上流)

5.事業から出る廃棄物

8

0.1

6.出張

927

13.0

7.雇用者の通勤

58

0.8

8.リース資産(上流)(注2)

0

0.0

9.輸送、配送(下流)

10.販売した製品の加工

11.販売した製品の使用

12.販売した製品の廃棄

13.リース資産(下流)

14.フランチャイズ

15.投資

Scope3総排出量

7,117

100

 

(注)1.「―」は算定対象外

2.レンタルオフィス使用による排出量を算定しております。

 

当社では、気候関連のリスクと機会をマネジメントするため、2050年カーボンニュートラルに向けて、当社事業に伴う温室効果ガス排出量の削減に努めています。

2022年9月期の温室効果ガス排出量の算定結果を踏まえ、中期的な目標を以下のとおり設定しました。

 

対象:温室効果ガス排出量(Scope1+Scope2の総量)

目標:2030年9月期に基準年比50%削減 ※基準年:2022年9月期

 

(注)目標基準年である2022年9月期の排出量実績(Scope1+Scope2の総量)は、ロケーション基準で152tCO2、
マーケット基準で185tCO2

 

(3) 人的資本に関する取組

①戦略

当社では、M&A仲介事業を持続的に成長させるために最重要となる経営資源は人的資源であると考えており、優秀なM&Aコンサルタントを継続的に獲得し、育成し、維持していくことが課題であると認識しております。
 獲得に関しては、専門的な知識を有する人材、多様な分野に精通している人材、営業力・交渉力に長けた人材等の有能な人材を獲得することに注力していく方針としております。また、新卒採用も積極的に行っており、インターンシップの機会の増加や、会社説明会の開催回数の増加、大学での講演の実施等により業界理解を深めることに取り組んでおります。
 従業員の育成に関しては、研修メニューの見直しや開発に取り組み、新卒社員向け研修期間の伸長や、コンプライアンス、リーダー・管理職向け、個人資質向上等の階層別、テーマ別研修の開催回数を増やすとともに、eラーニングによる研修機会の提供や専門書籍の配布等を行っており、今後も専門的知識や専門的スキルの向上のための社内研修の充実、M&A情報の共有等の施策に取り組んでまいります。

また、チーム制を導入しており、チームとして多様な案件に対応することを通じて、個人の経験を高める施策を推進しております。当事業年度に入社したM&Aコンサルタントが早期に収益貢献できるよう育成に努めてまいります。当社は、優秀なM&Aコンサルタントの定着率を向上させるため、成果主義に基づく給与制度や人事考課制度を採用しておりますが、社会環境や組織構造の変化に対応して随時見直しを行ってまいります。

さらに、出産・育児・介護などに対する制度整備を進めるほか、年齢や性別、国籍に関わらず、従業員が積極的に仕事に取り組める環境を整備してまいります。

 

②指標及び目標

 当社の人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。

指標

目標

実績(当事業年度末時点)

女性管理職比率

2026年9月まで10

5.9

女性正規雇用者数

2026年9月まで70

63

 

 

 

3 【事業等のリスク】

当社の事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載しております。併せて、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項についても、投資者の判断にとって重要であると当社が考える事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。なお、本項の記載内容は当社株式の投資に関する全てのリスクを網羅しているものではありません。
 当社は、これらのリスクの発生可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
 本項記載の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 事業環境に関連するリスクについて

① M&A市場の低迷

中堅・中小企業のM&A市場は、1990年代以降、オーナー経営者の高齢化に伴う後継者問題等を背景に拡大傾向にあります。また、今後も、スタートアップ企業の出口戦略としてのM&Aの活用やスタートアップ企業と大企業との間でのオープンイノベーションのためのM&Aの活用、ノンコア事業からの撤退手段としてのM&Aの活用等により、市場は更に拡大する可能性があるものと予測しており、当社でも様々なM&Aニーズに対応できるよう体制を整備しております。しかしながら、将来的に後継者問題解決策としてのM&A譲渡ニーズが減少に転ずること、金融市場の動向等によりM&A買収ニーズが減少に転ずること等を要因として、市場が縮小した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

なお、過去にも、リーマンショックや東日本大震災を契機として、M&A買収ニーズの減少によりM&A市場が一時的に縮小した経緯もあり、類似した経済情勢の変化や自然災害の影響を受けて市場が低迷する可能性もあります。

当面のところ当該リスクが顕在化する可能性は低いものと判断しておりますが、経済情勢の変化や自然災害はいつ発生してもおかしくないものとなります。また、日本国内における経済情勢悪化の度合いが大きいほど、発生した自然災害のエリアや災害規模が大きいほど、当社の経営成績及び財政状態に与える影響は大きくなります。

 

② M&Aに関する法的規制

現状、M&A仲介業務を直接的に規制する法令はなく、許認可制度や資格制限もありません。しかしながら、今後、法令の制定により、M&A仲介業務に対する何らかの法的な規制を受けることに至った場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、M&A取引又はM&A制度に係る金融商品取引法、会社法、税法等の法改正が行われることで、社会におけるM&Aニーズも変化する可能性があり、その結果として、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクが顕在化する可能性が生じた場合には、早期に、検討及び分析を行い、必要な対応を図る予定としております。

 

③ 中小M&Aガイドライン

法規制ではないものの、中小企業庁が中小M&Aガイドラインを策定・改訂し、業界団体で自主規制を設ける等により、業界内で品質向上に向けた取組が行われています。今後さらにガイドライン等が強化された場合については、業務負担が増えることで当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性がありますが、現状では業務負担が大きく増加するような改訂は認識しておりません。

また、M&A仲介業者が準拠すべきルールが明確化されるとともに厳格化されることで、当該ルールに違反したことを要因とする訴訟が一般的に増加していくことが想定されることから、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。これらのガイドライン等を遵守する方針とするとともに、複数部門で協議し適切な対応を図ってまいりますので、訴訟となるリスクは低いと判断しております。

 


④ 同業者との競合

M&A仲介事業は許認可制度や資格制限もないことに加え、事業の開始にあたり大規模な設備投資も不要であることから、相対的に参入障壁が低い事業であると判断しております。このため、大手事業者から個人事業者まで多数の事業者がM&A仲介事業を展開しており、今後も同業者間での競争が激しくなることが推測されます。
 当社では、M&A仲介業務の差別化や顧客からの信頼を向上させるため、会議、研修、社内システムにより、これまでの経験により蓄積されたノウハウの社内共有、外部専門家による講習、従業員に対する専門的知識の教育を行うとともに、公認会計士・税理士等の有資格者やM&A実務経験者の積極的な採用をするなどの施策を講じてサービス品質の向上に向けた対応を図っておりますが、競合他社との競争が激化した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 事業内容に関連するリスクについて

① 案件成約の遅延

M&A仲介事業は、譲渡先と買収先の意向に従い、受託から成約までの一連の業務が進められております。当社は両者のマッチングが円滑に進み、早期に成約に至るよう取り組んでおり、案件の進捗管理を適時に実施しておりますが、両者での条件交渉が難航することや、買収先が手配して実施するデューディリジェンス作業が遅延すること等を要因として、予定どおりに案件が進まない場合も想定されます。この結果、当社の事業年度別の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

近年は、当社の顧客である譲渡企業と買収企業のどちらかが大企業となる案件も増えてきていること等に伴い、当初予定に比べ成約までの期間がやや長期化する傾向となりました。今後については、中小M&Aガイドラインの改訂に伴い、これまでになかった業務対応が求められることで、成約までの期間が若干長期化する可能性があるものと判断しております。

 

② 業績の変動

M&A仲介事業は、受託する案件の規模により、成約報酬も異なっております。当社では、受託案件数を増やすことにより、業績が大きく変動しないよう取り組んでおりますが、案件成約数の一時的な変動や成約案件規模の大小により、四半期又は事業年度ごとの一定期間で区切ってみた場合に、期間ごとの業績が大きく変動する可能性があり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 人材の獲得、確保、育成

当社が事業を拡大していくには、優秀なM&Aコンサルタントの獲得、育成、維持が重要な課題であると認識し、これに取り組んでおります。しかしながら、人材を適時に確保できない場合、人材が大量に社外流出してしまった場合、あるいは人材育成が計画どおりに進展しない場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
 

④ 情報セキュリティの管理

当社は、顧客から情報を入手するに際して、秘密保持契約等を締結し、顧客に対して守秘義務を負っております。当社で、情報セキュリティマネジメントシステム(ISМS)の国際規格である「JISQ 27001:2023(ISО/IEC27001:2022)」の認証を2024年3月に取得しており、顧客から入手した情報が漏洩しないよう、社内規程を整備し、情報の保管管理を徹底するとともに、役職員に対しても守秘義務に関する教育を行う等の施策を講じております。しかしながら、不測の事態等により、守秘義務の対象となる情報が漏洩した場合、損害賠償請求等の金銭補償や信用力の低下等により、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

なお、現在のところ、当該リスクが発生する可能性のある要因は認識しておりません。

 

⑤ 個人情報管理

当社は、メールマガジンの登録及びセミナーの受講等において、個人情報を取得する場合があります。当社では「個人情報の保護に関する法律」に従い、社内規程を整備し、個人情報の厳正な管理を行っております。このような対策にも関わらず、個人情報の漏洩や不正使用等の事態が生じた場合、損害賠償請求等の金銭補償や信用力の低下等により、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

なお、現在のところ、当該リスクが発生する可能性のある要因は認識しておりません。

 

(3) その他のリスクについて

① 大株主及び当社代表取締役について

当社代表取締役 荒井邦彦は、当社の創業者及び経営の最高責任者であり、荒井邦彦の資産管理会社である株式会社K&Companyとあわせて、当事業年度末現在、当社株式の44.1%を所有する大株主であるとともに、経営においても重要な役割を担っております。当社では、過度な依存を回避すべく、会議体での重要な意思決定の徹底、組織としての管理体制の強化、マネジメント層の採用・育成を図っておりますが、現時点において当該役員に対する依存度は高い状況にあるといえます。そのため、何らかの理由により同氏が当社の経営を行うことが困難な状態となり、また、後任となる経営層の採用・育成が進展していなかった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

継続的にマネジメント層の充実を図り、中長期的な観点で当該リスクへの対応を図っております。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

1)財政状態
 (資産の部)

当事業年度末の流動資産は、前事業年度末に比べ4,003百万円増加し、19,227百万円となりました。これは主として売掛金が322百万円減少したものの、現金及び預金が4,256百万円増加したことによるものであります。

当事業年度末の固定資産は、前事業年度末に比べ401百万円増加し、3,462百万円となりました。これは主として、投資有価証券が352百万円増加したほか、大阪オフィスや仙台オフィスの移転等に伴い建物が65百万円増加したことによるものであります。


 (負債の部)

当事業年度末の流動負債は、前事業年度末に比べ332百万円増加し、3,923百万円となりました。これは主として未払法人税等が173百万円、買掛金が94百万円それぞれ増加したことによるものであります。

当事業年度末の固定負債は、前事業年度末に比べ105百万円増加し、296百万円となりました。

 

 (純資産の部)

当事業年度末の純資産は、前事業年度末に比べ3,967百万円増加し、18,470百万円となりました。これは、主として、利益剰余金が配当により979百万円減少したものの、当期純利益により4,955百万円増加したことによるものであります。

 
2)経営成績

当事業年度においては、252組の案件が成約(前事業年度207組)し、売上高は18,138百万円(前期比31.2%増)となりました。売上原価は、売上増加に伴うインセンティブ給与の増加やM&Aコンサルタントの増員に伴う人件費の増加等により、6,527百万円(前期比42.6%増)、販売費及び一般管理費は、人員の増員に伴う人件費の増加や採用活動に係る手数料の増加、本社増床による地代家賃の増加等により、4,838百万円(前期比19.6%増)となった結果、営業利益は6,772百万円(前期比30.2%増)となりました。これらの結果を受け経常利益は、6,772百万円(前期比30.0%増)となり、特別利益として投資有価証券売却益を62百万円、特別損失として投資有価証券評価損を104百万円計上した結果、当期純利益は4,955百万円(前期比28.1%増)となりました。

なお、当社はM&A仲介事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。

 

② キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、18,358百万円と前事業年度末と比べ4,256百万円の増加となりました。主な増減要因は、下記のとおりであります。

 
 (営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は6,280百万円(前事業年度は6,809百万円の収入)となりました。これは主に、法人税等の支払額が1,659百万円あったものの、税引前当期純利益を6,730百万円計上し、売上債権の増減額が338百万円、未払又は未収消費税等の増減額が309百万円あったことによるものであります。

 

 (投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は1,045百万円(前事業年度は636百万円の支出)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が660百万円、投資有価証券の取得による支出が406百万円あったことによるものであります。

 

 (財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は979百万円(前事業年度は612百万円の支出)となりました。これは主に、配当金の支払額が978百万円あったことによるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

該当事項はありません。

 

b.受注実績

該当事項はありません。

 

c.販売実績

当事業年度における販売実績は、次のとおりであります。

事業の名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

M&A仲介事業

18,138,469

+31.2

合計

18,138,469

+31.2

 

(注) 1.当社は、M&A仲介事業の単一セグメントであるため、セグメントに関わる記載は省略しております。

   2.前事業年度及び当事業年度の主な相手先別の販売実績は、総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先がいないため、記載を省略しております。

3.前事業年度及び当事業年度におけるM&A成約組数の実績は次のとおりであります。

分類の名称

前事業年度

(自 2022年10月1日

 至 2023年9月30日)

当事業年度

(自 2023年10月1日

 至 2024年9月30日)

M&A成約組数

207

252

 

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、将来生じる実際の結果とは異なる可能性がありますので、ご留意ください。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。
 また、財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。
 

② 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態の分析

(資産の部)

当事業年度末の流動資産は、前事業年度末に比べ4,003百万円増加し、19,227百万円となりました。主な変動科目は下記のとおりであります。

・配当金の支払いがあったものの、期中に発生した売掛金の回収等により現金及び預金が4,256百万円増加しました。

 

当事業年度末の固定資産は、前事業年度末に比べ401百万円増加し、3,462百万円となりました。主な変動科目は下記のとおりであります。

・純投資目的とする新規投資等により、投資有価証券が352百万円増加しました。

・地方オフィスの移転等による設備投資により、有形固定資産が63百万円増加しました。

 

(負債の部)

当事業年度末の流動負債は、前事業年度末に比べ332百万円増加し、3,923百万円となりました。主な変動科目は下記のとおりであります。

・課税所得の増加に伴い、未払法人税等が173百万円増加しました。

・売上の増加に伴う案件紹介料の増加により、買掛金が94百万円増加しました。

 

当事業年度末の固定負債は、前事業年度末に比べ105百万円増加し、296百万円となりました。

 

(純資産の部)

当事業年度末の純資産は、前事業年度末に比べ3,967百万円増加し、18,470百万円となりました。主な変動科目は下記のとおりであります。

・利益剰余金が配当により979百万円減少したものの、当期純利益により4,955百万円増加しました。

 


b.経営成績の分析

(活動状況・取り組み)

当事業年度において、営業面におきましては、顧客への提案力向上のための研修開催や、社内で提案力コンテストを開催し、M&Aコンサルタントの育成を通じてサービス品質の向上に努めてまいりました。また、業種別にWEB広告や提案型営業を展開し、幅広くM&Aニーズの発掘に取り組みました。さらに、スタートアップ企業と事業会社の提携促進を目的とした会員制サービス「S venture Lab.」では毎月交流イベントを開催し、スタートアップ企業のM&A市場の開拓等にも注力しました。2024年6月には、京都発の更なるイノベーションの創出支援を目的として独立系ベンチャーキャピタルであるEast Venturesと共同で、京都イノベーションオフィスを開設いたしました。
 提携先との連携におきましては、南九州税理士協同組合、和歌山県税理士協同組合、兵庫県の神戸、西宮、尼崎、伊丹の各税理士協同組合との業務提携を開始したことで、税理士協同組合等との提携は全国22団体、6万5千人以上の会員とのネットワークに拡大いたしました。また、提携先金融機関より人材を受け入れることで、提携先金融機関内におけるM&A人材の育成を担い、協業によるM&A支援体制の強化を行いました。
 人員面におきましては、今後の業績拡大を図るため積極的な採用を進めたことで、当事業年度においてM&Aコンサルタントを77名増員しました。

このような取り組みの結果、新規受託実績は923件となり、目標件数(814件)を達成することができました。

 

(売上高)

当事業年度の売上高は18,138百万円と、前事業年度に比べ4,321百万円の増収(前期比31.2%増)となり、過去最高となりました。この主な要因は、成約組数が目標(270組)に届かなかったものの、252組成約(前期比+45組)するとともに、大型案件の成約が48組(前期比+14組)となり、全体的に成約単価が上昇したことによるものであります。

成約組数について、当初目標が達成できなかったのは、当社の顧客である買収企業が上場企業となる案件が増加し、また、最終交渉段階での検討に時間を要する案件が増加したこと等で、成約期間が想定より長期化したことが要因と判断しております。

成約単価については、売上高を成約組数で除した金額ベースで、前事業年度は67百万円のところ当事業年度は72百万円と上昇しております。

大型案件の成約数の増加については、当社への信用力及び知名度が向上したこと及び営業力が強化したことが要因と分析しております。

 

(売上総利益)

当事業年度の売上原価は6,527百万円となり、前事業年度に比べ1,949百万円の増加(前期比42.6%増)となりました。この主な要因は、人員増加及び売上に伴うインセンティブ賞与の増加による給与手当及び賞与の増加1,307百万円と、提携先からの紹介案件の成約が増えたことにより案件紹介料が444百万円増加したことによるものであります。

この結果、当事業年度の売上総利益は11,610百万円と、前事業年度に比べて2,362百万円の増益(前期比25.6%増)となりました。

 

(営業利益)

当事業年度の販売費及び一般管理費は4,838百万円となり、前事業年度に比べ792百万円の増加(前期比19.6%増)となりました。この主な要因は、人員増加に伴う給与手当及び賞与の増加210百万円や、地方オフィス移転等による地代家賃の増加163百万円等によるものであります。

この結果、当事業年度の営業利益は6,772百万円と、前事業年度に比べて1,570百万円の増益(前期比30.2%増)となりました。

 

(経常利益)

当事業年度の営業外収益は8百万円となり、前事業年度に比べ8百万円の減少(前期比50.1%減)となりました。この主な要因は、還付加算金の減少8百万円等によるものであります。

当事業年度の営業外費用は8百万円となり、前事業年度と同水準となりました。

この結果、当事業年度の経常利益は6,772百万円と、前事業年度に比べて1,560百万円の増益(前期比30.0%増)となりました。

 

(当期純利益)

当事業年度の特別利益は62百万円となり、前事業年度に比べ62百万円の増加となりました。

当事業年度の特別損失は104百万円となり、前事業年度に比べ89百万円の増加となりました。

また、当事業年度の法人税等は1,775百万円となり、前事業年度に比べ446百万円の増加(前期比33.6%増)となりました。

この結果、当事業年度の当期純利益は4,955百万円と、前事業年度に比べて1,088百万円の増益(前期比28.1%増)となりました。

   

c.経営成績に重要な影響を与える要因について

当社の経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

d.資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当事業年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社の運転資金需要の主なものは、人材の獲得、維持に係る人件費、営業継続のための物件維持費及びシステム維持費、将来の顧客獲得のため又は顧客の利便性や当社サービス向上のための広告宣伝費及びシステム改良費等の営業費用であります。

現時点で予定されている重要な資本的支出はありませんが、当社がM&Aにより企業買収することは常に視野に入れており、買収資金として活用する可能性はあります。

当社としては、不測の事態や競合会社とのサービス競争も想定し、十分な資金を自己資金(内部留保により)として確保しながら、必要に応じて銀行借入で調達する方針としております。なお、当事業年度末での銀行借入はありません。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。