当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、「未来から、今を選ぼう。」という企業目的のもとに、ビッグデータ解析をリアルタイムに行うAI(人工知能)によるレコメンデーション技術を用いて、デジタルマーケティングにおけるパーソナライゼーションを追求することを経営の基本方針としております。当社の技術的優位性であるAI技術を活用したリアルタイム分析により、独自のリアルタイム・ユーザー動線分析技術を開発してまいりました。今後も様々な最先端技術を組み合わせることで、予測精度の向上を図っていきます。また、顧客にとって有意義な技術、サービスの開発及びコンサルティングサービスを提供することによって、共存共栄を図っていきます。
(2)目標とする経営指標
当社が重視している経営指標は、営業収益、営業利益であります。当社は、AI(人工知能)を用いた日本初のレコメンデーション専門企業としてのノウハウを活かし、更なるレコメンドサービス及び技術における専門性を高め、競争力をつけることにより、営業収益の更なる成長を目指すとともに、企業価値の向上、株主価値の向上を図ってまいります。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社は、レコメンデーション市場でNo.1の企業になるという目標を達成するため、以下の戦略を重点的に行ってまいります。
① EC市場における成長業種へのサービス提供
② サービス提供する業種における専門性の追求
③ 既存顧客への更なる価値提案による売上増加
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社は、以下の4点を主な経営の課題として認識しております。
① 経営環境の変化への機動的な対応と、それによる収益力拡大
将来にわたる持続的な成長を実現するため、当社は市場及び消費者のニーズを的確に捉え、社会・時代の変化に機動的に対応し、グローバル展開も視野に入れつつ、当社のAI技術を基盤とした既存事業の強化と新規の事業機会の創出を絶えず行うことで、収益性拡大と企業成長を図ってまいります。
② 企業運営の進化
前述のとおりの非連続な成長を遂げるには、成長を支える企業運営を同時に進化させる必要があります。GTM(Go To Market)実現のため、要であるアジャイル開発の進化や営業戦略の見直し、間接部門の強化を進化させてまいります。
また当事業年度はコーポレート・ガバナンスの強化に取組んでまいりましたが、引き続き内部管理体制の強化を図り、経営の透明性と効率性を高め、企業価値の最大化に努めてまいります。
③ 安定かつセキュアなシステム構築
当社のサービス提供において、システムの安定的な稼働とセキュアなシステム構築を重要視しております。
システムの安定的な稼働のため、データセンターにおけるサーバの稼働の常時監視を行うとともに、より安定性の高いクラウド型サービスへの切り替え等を推進し、更なるシステム管理やシステム基盤の強化に努めてまいります。
セキュアなシステム構築につきましては、主力サービスでの世界水準の個人データ保護規則に則ったセキュリティを実現しております。グローバルで急速に進むセキュリティ対応に適応し得る技術力と体制を整えてまいります。
④ 人材育成と環境の整備
事業構造上、当社は「人材」への投資が最重要項目であると考えております。創業以来、「多様性をベースに、フェアなチャンスを与え続ける(Give fair opportunities with diversity)」を人材育成の基本方針とし、ダイバーシティ&インクルージョン経営を行ってまいりました。
当事業年度は人材採用戦略を刷新し、組織環境の整備、キャリアアップをバックアップする仕組みの構築、社員エンゲージメントの把握と向上に向けて活動を行いました。引き続き基本方針のもと、価値獲得のイノベーションをできる組織に進化できるように施策を行ってまいります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般
当社は、「AIクラウド型サービスで、あらゆるタッチポイントにおけるリアルタイム・パーソナライゼーションの実現」をミッションに掲げており、当社の事業活動そのものを通じて社会の持続可能性の向上と当社の企業価値向上の両立に努めております。この実現のために、当社では人材への投資が最も重要な取組であると認識しております。
なお、気候変動などの環境問題については、当社が事業を通じて直接貢献できる範囲が限定されることから、記載を省略しております。
(2)ガバナンス及びリスク管理
当該ミッションを達成するためのガバナンス体制として、当社では、取締役、監査役から構成される取締役会を中心に、経営戦略やミッションとの関連性を踏まえ、サステナビリティに関する重要課題や方針、具体的な対策等について議論を行っており、経営と一体となったサステナビリティ活動を推進しております。
(3)人材育成及び社内環境整備に関する方針
当社は創業以来、「多様性をベースに、フェアなチャンスを与え続ける (Give fair opportunities with diversity)」を人材育成の基本方針とし、ダイバーシティ&インクルージョン経営を行っております。国籍にとらわれることなく高度外国人雇用を実践している企業を日本全国から約100社選出する『ビジョナリー経営』(*)の対象企業に選定されております。
(*)内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が推進し、一般社団法人情報サービス産業協会(JISA)より受託した全研本社株式会社が進める政府プロジェクト
①人材育成の基本方針
「多様性をベースに、フェアなチャンスを与え続ける (Give fair opportunities with diversity)」を基本方針として、主に以下の実現に重点をおいております。
(a)多様性を力にする組織づくり
社員がお互いを認め合い、多様な個の違いを力に変える組織風土や働き方により、社員全員が活躍できる環境づくり
(b)多様な人材の活躍
国籍、性別、年齢によらず、多様なバックグラウンドの人材が活躍
(c)変革と創造
人材を持続的な競争力の源泉と位置づけ、事業活動における先見性に繋げ、変革を生み続ける
②社内環境整備
(a)人材の採用方針
当社は、国籍、性別、年齢に関わらず、人材採用を行っております。
外国籍人材比率(*)は高水準で推移しており、日本以外の国籍は8か国(2023年12月末時点)になります。
(*)外国籍人材比率 2022年12月末:16%、2023年12月末:20%
(b)組織環境の整備
多様なバックグラウンドを持つ人材が活躍できる環境が整っております。
仕事と育児等の両立支援については、出産の前後や育児における休暇・休業・在宅・職場復帰制度、時短勤務制度等の諸制度を設けるなど、働きやすい職場環境の整備に積極的に取組んでおります。育児・介護サポート、スキルアップなど福利厚生のあらゆる面をサポートする福利厚生システムの導入を行いました。
(c)キャリアアップをバックアップする仕組みの構築
当社の多様な人材が自らの強みを発揮し、その成果と貢献が適切に評価され、誰もが成長を実感しながら自らキャリアを切り開くことが当社の未来を切り開くことに繋がることを目指しております。従業員の自己啓発プログラム(e-Learning)は、「専門家としても個人としても、最先端の学びによって成長できる」をコンセプトに、自らの専門性や未来のありたい姿、ライフスタイルに基づいて自らが学ぶテーマを内発的に設定し、自己向上を図ることを目指すものとして刷新されております。
(d)社員エンゲージメントの把握と向上
社員一人ひとりの意欲を高め、組織力につなげることを目的とし、2023年から半期ごとに全社員を対象とした従業員満足度調査を行っております。重要な経営データとして経営会議や取締役会に報告し、人事制度及び人事戦略の策定に活用しております。
(4)指標及び目標
前述のとおり、事業構造上、当社は「人材」への投資が最重要項目と考えております。ダイバーシティ・インクルージョン戦略のもと、人員数を拡大しており、当事業年度末時点の従業員数は50名です。今後は更なる事業成長とともに従業員数100名を目標に掲げております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は本項及び本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えられます。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の表示がない限り、当事業年度末現在において、当社が判断したものであります。
(1)事業環境に係るリスクについて
① インターネット市場における業界環境の変化、技術革新について
当社はインターネット上でECサイトの運営やウェブサービスの提供を行う企業に対してサービスを提供しております。近年、インターネットのEC市場規模は急速に拡大し、また、ネットショッピングを利用した世帯の割合も増加しており、当社の業績も拡大傾向にあるものと認識しております(経済産業省調べ)。しかしながら、今後インターネットの普及に伴う環境整備やその利用に関する新たな規制の導入、その他予期せぬ要因等により、インターネット市場における業界環境が変化する可能性があります。また、インターネット関連分野における技術革新は著しく進展しており、技術革新によるスマートフォンやタブレットの急速な普及のようにユーザーの利用環境が変化する事も予想されます。当社がこのような環境変化や技術革新への対応に時間を要した場合には、競争力の低下を招き、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
② アドテクノロジー業界について
当社がレコメンド広告サービスを展開するアドテクノロジー業界は参入企業が多く、広告の表示方法や販売手法など広告の効果を向上させるための様々な取組みや技術の導入が行われております。当社も配信システムの改善、新たな機能の追加などを行うことにより、競争力の維持・強化に努めております。しかしながら、新たな手法や新たな技術が出現した場合、当社が提供している広告配信システムの競争力が著しく低下することにより、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
③ 法的規制について
現時点において、当社の主力事業であるリアルタイム・レコメンドサービスに関連して、事業継続に重要な影響を及ぼす法的規制はないものと認識しております。しかし、インターネットの利用者及び事業者を規制対象とする法令、行政指導、その他の規制等が制定された場合、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、当社のリアルタイム・レコメンドサービスに使用している成果のトラッキング及び不正行為防止のために使用している技術(クッキーの使用等)が規制、制限された場合には、代替手段の開発に多額の投資が必要となり、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
④ 有害コンテンツを含む顧客サイト及び広告に対する規制について
当社が運営しているリアルタイム・レコメンドサービス及びレコメンド広告サービスは、規約等により独自の基準を設けており、法令や公序良俗に反する広告及び掲載されているコンテンツを排除するように規制並びに管理をしており、各々のサービスの申込み時に、レコメンドが表示される顧客のウェブサイト及び広告主が掲載希望するバナー広告について、有害コンテンツを含むサイト及び広告でないかについて確認を行っております。また、申込み時だけでなくその後も当社の社員がウェブサイトにおけるレコメンドの表示状況のモニターを行っております。モニターにおいては、「特定商取引に関する法律」等を念頭におき、当社の基準に反するコンテンツ等が存在している場合は、顧客及び広告主に対して警告を行い、従わない場合は契約の解除等の対策を行っております。しかしながら、顧客及び広告主によって法令や公序良俗に反する広告や商品・サービスの提供、コンテンツの掲載が継続された場合には、当社の信用が低下し、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
また、レコメンド広告サービスについては、申込みの段階で有害コンテンツを含む広告はない旨を顧客に表明保証していただいております。しかしながら、当社においてすべてのリンク先サイトのモニターまでを行うことができず、有害コンテンツが掲載されたことにより、当社の信用が低下し、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 競合サービスについて
当社は、インターネットEC市場を主たる事業領域としておりますが、当該分野においては、多くの企業が事業展開していることもあり、競合サービスが増加する可能性があります。今後、十分な差別化や機能向上等が行えなかった場合や、新規参入等により競争が激化した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ スマートフォン分野への事業展開について
今後はスマートフォンの利用が活発化するものと見込まれております。当社としてもPC向けサービスのスマートフォン対応を進めておりますが、インターネットのスマートフォンでの利用が大きく拡大した場合、PCからのサービス利用と同等の利用者数や利用時間を獲得できない可能性があります。その場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)事業運営体制に係るリスクについて
① 特定人物への依存及び人材確保に係るリスクについて
当社では、事業拡大に伴って優秀な人材の確保とその育成は重要な課題となっており、人材採用と人材育成に関する各種施策を継続的に講じております。しかしながら、十分な人材確保が困難になった場合や、人材が外部に流出した場合には、当社の業務に支障をきたすおそれがあります。また当社では、代表取締役の専門的な知識、技術、経験に依存している面があります。このため当社では、特定の人物に過度に依存しない体制を構築すべく経営組織及び技術スタッフの強化を図っておりますが、これらの役職員が何らかの理由で退任、退職し、後任者の採用が困難になった場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 内部管理体制について
当社は、今後の事業展開や成長を支えるためにも内部管理体制のより一層の充実を図っていく予定であります。今後、事業規模の拡大に合わせ、内部管理体制も充実・強化させていく方針ではありますが、事業の拡大及び人員の増加に適時適切に組織的な対応ができなかった場合、事業展開に影響が出るなどして、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ オペレーションリスクについて
当社の各サービスでは、顧客企業の商品マスタや物件情報等を日々取扱っており、煩雑で件数も膨大になります。それに付随する、オペレーション上のリスクが発生する可能性があります。当社では、リスクの軽減を図るため、システムでの管理により、業務基盤の整備を進めておりますが、事務処理における事故・不正等が起きた場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 情報セキュリティ管理について
当社は、リアルタイム・レコメンドサービス及びレコメンド広告サービスの提供にあたり会員情報や銀行口座の情報等の個人情報を取得及び利用しておりません。そのため、「個人情報の保護に関する法律」が定める個人情報取扱事業者としての義務は課されておりませんが、取引データの管理や、社内における顧客企業等の情報及び個人情報についてもその取扱いには細心の注意を払い、法令を遵守するほか入退室管理、ハードウェアやネットワーク管理について最大限の取組みを行っております。しかしながら、以上のような当社の努力にも関わらず、万一、外部からの不正アクセスなどにより情報の外部流出等が発生した場合には、当社への損害賠償の請求や当社の社会的信用の失墜等によって、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 知的財産権について
当社は、当社の提供するサービスの基礎をなす技術やビジネスモデルについて、特許権を出願し取得するとともに、各種の商標を登録しております。しかし、現時点で権利取得に至っていない権利について、今後これらの権利を取得できるという確実性はありません。また、特許申請の必要性について社内で検討し、顧問弁護士や弁理士と連携の上、速やかに特許申請を行う体制を構築しておりますが、特許申請をしない方が競争優位に立てると判断した場合は特許申請を行わない場合もあります。慎重に判断を行い権利保護に努めておりますが、他社による模倣を効果的に防ぐことができない可能性もあります。一方で、当社の事業分野において、国内外の各種事業者等が特許その他の知的財産権を取得した場合、その内容次第では、当社に対する訴訟やクレーム等が発生し、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、当社では、第三者に対する知的財産権を侵害することがないように常に注意を払い事業活動を行っておりますが、当社の事業分野における知的財産権の現状を完全に把握することは困難であり、万一当社が第三者の知的財産権を侵害した場合には、損害賠償又は使用差止めなどの請求を受ける可能性があります。これらの事態が発生した場合、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 設備及びネットワークの安定性について
インターネットは重要な社会基盤として社会全般に浸透してきており、そのネットワークは継続的に拡大を続けております。そのため、当社の設備及びネットワークは24時間稼働、年中無休での運用が求められております。当社は、リアルタイム・レコメンドサービス及びレコメンド広告サービスを提供し、また成果の集計管理をシステムを通じて提供しております。システムに支障が生じることは、サービス全般の停止を意味するため、設備及びネットワークの監視や冗長化、定期的なデータのバックアップなど、障害の発生防止に努めております。しかしながら、地震、火事などの災害のほか、コンピュータウイルスやハッカーなどの行為、ハードウェア・ソフトウエアの不具合、人為的ミスによるもの、その他予期せぬ重大な事象の発生により、万一、当社の設備又はネットワークが利用できなくなった場合には、サービス停止に伴う信用の低下を引き起こし、顧客の解約はもちろん今後の新規顧客の獲得に影響が生じることが考えられ、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 成果報酬型の料金体系について
リアルタイム・レコメンドサービスの「アイジェント・レコメンダー」において、既存顧客の多くが成果報酬型の料金体系を適用しております。このため、税制改正や冷夏・暖冬等の一般的に消費者の購買意欲が低下するような事象が起きた場合、当社が高い精度のレコメンド表示に努めたとしても、顧客のサイトの売れ行きがその影響を受け、当社の業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、顧客の望む成果を出せなかった場合、顧客の解約はもちろん今後の新規顧客の獲得に影響が生じることが考えられ、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、レコメンド広告サービスの「ホットビュー」において、顧客企業と契約した成果に達するまでは、顧客企業から得られる収益よりも当社が買い付ける広告枠費が多くなるという現象が発生するケースがあります。広告枠費については、当社でも日々管理をしているものの、その結果として損失が発生することにより、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 新たな事業展開について
当社は今後、更なる収益拡大を図るため、既存事業の周辺領域での新たな事業展開や海外における新規顧客獲得についても取組んでまいりたいと考えておりますが、先行投資として人件費等の追加的な支出が発生する場合や、これまで想定していない新たなリスクが発生するなど、当社の想定どおりに進捗せず、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)その他
配当政策について
当社は、設立以来配当を実施した実績はありませんが、株主に対する利益還元は重要な経営課題であると認識しており、事業基盤の整備状況、今後の事業展開、業績や財政状態などを総合的に勘案した上、配当を検討していきたいと考えております。これからしばらくの期間については、既存事業領域はもちろんのこと、さらにその周辺領域においても魅力的な事業機会が存在する、又は新たに発見できると考えており、当面は更なる成長に向けたサービスの拡充、組織の構築などに投資を行うことが株主価値の最大化に資すると考え、その原資となる内部留保の充実を基本方針とする考えであります。
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、経営成績等という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当社は、連結子会社Silver Egg Technology Asia Limitedの重要性が乏しくなったことから、連結の範囲より除外し、2023年12月期より非連結決算に移行いたしました。そのため、前期比につきましては、個別業績との比較数値を記載しております。なお、Silver Egg Technology Asia Limitedは2023年7月7日に清算結了しております。
当事業年度における日本経済は、新型コロナウイルス感染症の沈静化によって経済活動の正常化が進み、景気の緩やかな回復が見られる一方で、世界的な資源価格の高騰や不安定な為替の動向、商品・サービスの値上げによる物価高等によって、依然として先行き不透明な状況が続いております。
当社が所属する情報通信サービス市場におきましては、働き方の見直しや人手不足などによる業務効率化への関心の高まりに伴い、企業による業務デジタル化への積極的なIT投資、SaaSビジネスへの関心の高まりが継続しております。国内SaaS市場は高い成長率を維持しており、2027年度に2兆990億円(当事業年度見込比6,862億円増)(富士キメラ総研刊行『ソフトウエアビジネス新市場』出典)の規模に達すると予想されております。
また、当社が事業を展開しているEC市場については、2022年国内BtoC-EC市場規模は前年比109.9%の22.7兆円となりました。分野別では、物販系分野に関して前年比105.4%と伸長しており、物販系分野におけるEC化率についてもBtoC-ECで9.1%(前年比0.3ポイント増)と伸長しております。BtoB-EC市場におけるEC化も37.5%(前年比1.9ポイント増)と増加傾向にあり(いずれも経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書」)、国内のEC市場規模拡大は継続しております。
このような事業環境のもと、当社は、AI(人工知能)を用いたクラウド型サービスのリーディングカンパニーとして、「AIクラウド型サービスで、あらゆるタッチポイントにおけるリアルタイム・パーソナライゼーションの実現」をミッションに掲げております。ユーザー行動情報を分析し、「いま」求められる情報を届ける独自のAIエンジンによるマーケティング・サービスの開発及び提供を行っております。当社が提供する主力サービス「アイジェントサービス」は、レコメンドエンジン市場において41%のシェアを占めております。
当社は、当事業年度を成長投資期と位置づけ、新たなAIレコメンダーサービスの開発、当社のAI技術を活用した新領域の事業の準備、カスタマーサクセス強化の3本の柱を掲げて事業活動を行いました。
既存事業におきましては、主力の「アイジェントレコメンダー」を中心とする既存サービスの機能・セキュリティ改善と、新しいサービスを搭載する総合マーケティング・プラットフォームの開発を進めました。また、新サービスの一つとして、「Like Discovery」をリリースしました。
次に、LLMを活用した新領域へのアプローチを実施しております。新事業のサービスのリリースは、2024年12月期を予定しております。
当社の組織運営におきましては、プロダクトマネジメントの強化を目的として、人員の最適な再配置を行った結果、生産性向上に繋がりました。為替の影響により通信費が前年同期比に対して上振れしましたが、生産性向上と人材採用戦略の見直し、販売施策が功を奏し、改善を見せております。
この結果、当事業年度の営業収益につきましては1,257,336千円(前年同期比1.3%増)、営業利益は95,846千円(同3.0%増)、経常利益は95,553千円(同22.2%増)となり増収増益での着地となりました。また、当期純利益は59,100千円(同51.9%減)となりました。
なお、当社は、レコメンデーションサービス事業の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を行っておりません。
② キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、1,096,784千円となりました。
なお、当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とその要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における営業活動の結果、得られた資金は、78,184千円となりました。主な内訳は、法人税等の支払額93,872千円があった一方で、税引前当期純利益の計上額86,374千円、減価償却費の計上額29,589千円及び未払金の増加額31,573千円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における投資活動の結果、支出した資金は2,582千円となりました。主な内訳は、無形固定資産の取得による支出3,088千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度における財務活動による資金の増減はありません。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
b.受注実績
当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
c.販売実績
当事業年度の販売実績は次のとおりであります。
|
サービスの名称 |
当事業年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
前年同期比(%) |
|
レコメンデーションサービス事業(千円) |
1,257,336 |
101.3 |
|
合計(千円) |
1,257,336 |
101.3 |
(注)1.当社の事業セグメントは、レコメンデーションサービス事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載をいたしておりません。
2.主要な販売先については、相手先別販売実績の総販売実績に対する割合がいずれも100分の10未満であるため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表の作成にあたり採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載しております。
② 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
(イ)財政状態
(資産)
当事業年度末の総資産は、前事業年度末に比べ41,776千円増加し、1,505,302千円となりました。主な内訳は、売掛金の減少12,459千円、ソフトウエアの減少32,624千円及び繰延税金資産の減少26,563千円があった一方で、現金及び預金の増加75,601千円及び未収還付法人税等の増加36,224千円があったこと等によるものであります。(負債)
当事業年度末の負債は、前事業年度末に比べ17,324千円減少し、127,325千円となりました。主な内訳は、未払金の増加31,573千円及び未払消費税等の増加9,492千円があった一方で、未払法人税等の減少60,883千円があったこと等によるものであります。
(純資産)
当事業年度末の純資産は、前事業年度末に比べ59,100千円増加し、1,377,976千円となりました。これは当期純利益の計上による利益剰余金の増加59,100千円によるものであります。
(ロ)経営成績
(営業収益)
当事業年度の営業収益につきましては、国内SaaS市場が高い成長率を維持しており、国内のEC市場規模も継続して拡大していること、分野別では、物販系分野に関して引き続き好調に進捗した結果1,257,336千円(前年同期比1.3%増)となりました。
(営業利益)
当事業年度の営業費用につきましては、為替の影響により通信費が前年同期比に対して上振れしましたが、生産性向上と人材採用戦略の見直し、販売施策が功を奏した結果、営業利益は95,846千円(同3.0%増)、売上高営業利益率は7.6%(前事業年度7.5%)となりました。
(営業外収益、営業外費用及び経常利益)
当事業年度の営業外費用は300千円(同98.0%減)となりました。
これは主に為替差損の影響によるものであります。
この結果、経常利益は95,553千円(同22.2%増)となり、売上高経常利益率は7.6%(前事業年度6.3%)となりました。
(特別利益、特別損失及び当期純利益)
当事業年度におきまして、固定資産除却損を9,178千円計上いたしました。これはソフトウエアにつきまして、自社ソフトLPO の除却を行ったことによるものであります。
これらの結果、当期純利益は59,100千円(同51.9%減)となり、売上高当期純利益率は4.7%(前事業年度9.9%)となりました。
(ハ)キャッシュ・フローの状況の分析
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
b.経営成績に重要な影響を与える要因
当社は、「3 事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境、事業内容、組織体制、法的規制等、様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社は常に市場動向に留意しつつ、内部管理体制を強化し、優秀な人材を確保し、市場のニーズに合ったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行ってまいります。
c.資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社は、健全で安定した財務体質の形成に努めております。
必要な運転資金及び設備投資資金を全額自己資金で賄っており、自己資金の範囲内で安全かつ安定的な資金運用が可能と認識しております。
該当事項はありません。
当社では、インターネットサービスのパーソナライズ化を実現するための技術を研究開発しております。専門分野としては、機械学習技術をリアルタイムにビッグデータに応用することをベースとしたレコメンドシステムであり、研究分野としては、情報検索、最適化、協調フィルタリング、自然言語処理、画像認識・処理等を対象としております。当社のサービスをサポートするためのウェブとモバイル領域におけるビッグデータ分析、クラウド技術、堅牢性の高い分散アーキテクチャといったエンジニアリング技術の研究開発を継続的に行い、またオープンソースソフトウエアも積極的に活用した結果、研究開発費として、
なお、当社は、レコメンデーションサービス事業の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を行っておりません。