第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社は「未来から、今を選ぼう。」という企業理念のもと、膨大な行動データ解析とリアルタイムAIによるレコメンデーション技術を核とし、AI によるクラウド型サービスであらゆるタッチポイントにおけるリアルタイム・パーソナライゼーションの実現を基本方針としております。

 当社の強みは、常に最先端をいくAI・新しいAIアルゴリズムの自社開発、高性能なリアルタイム解析レコメンドエンジン、主要な業界を網羅する行動データの蓄積にあります。当社のサービス提供と顧客ごとのコンサルティング支援によってサービス・ドミナント・ロジックを強力に支援し、顧客企業の売上貢献とブランド力向上に寄与します。

 

(2)目標とする経営指標

 当社が重視している経営指標は、営業収益、営業利益です。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

 当社は、既存事業の収益力強化と新規事業の創出・拡大により、レコメンド単体ツールベンダーの枠を超え、より多様な市場で価値を創出することを目指しております。内容詳細は、今後中期経営計画にて説明予定です。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社は、以下の4点を主な経営の課題として認識しております。

 

① 既存事業の収益力拡大

 当社を取り巻く環境においては、主要プロダクトであるレコメンドサービス市場の成熟化と、消費者の消費行動の変化が同時に進みつつあります。そのような中で持続的な成長を実現するため、当社の持つ優位性を最大限に磨き上げ、基盤事業としての収益力を向上させることに注力いたします。新アルゴリズムを搭載した従来を上回る高い性能のレコメンドサービス、既存サービスの品質強化、コスト構造の見直し、販売体制強化を行います。

 

② 新規事業の創出・拡大

 AIによるイノベーションは、周辺領域を巻き込みながら新たな市場を創出しており、また企業における業務のDXは急速に進んでいます。当社はダイレクトリクルーティングDXサービス「レコタレント」の早期収益化、DXシステム開発受託を皮切りに、当社のコアであるAIによるパーソナライゼーション技術とビッグデータの効果的な活用によって競争優位性を獲得し、社会課題を解決する社会DXサービスの開発・共創・展開の加速に向けて企業活動を行います。

 

③ 経営変革

 前述による非連続な成長を遂げるには、事業規模拡大に応じた経営基盤の整備と成長を支える企業運営を同時に進化させる必要があります。当社は中期経営計画を策定し、経営基盤の整備と一段上の企業運営を行うとともに、経営資源配分の最適化、戦略的かつ積極的な事業投資、社内DX化やブランド力向上に注力します。

 

④ 人材育成と環境の整備

 事業構造上、当社は「人材」への投資が最重要項目であると考えております。創業以来、「多様性をベースに、フェアなチャンスを与え続ける(Give fair opportunities with diversity)」を人材育成の基本方針とした経営を行っております。変革をリードするイノベーティブでグローバルな人材の確保、創造性の上がるワークプレイスや働き方の実現、イノベーションを育む文化を醸成することで、社員と会社のエンゲージメントを向上させ、双方の持続的な成長と発展を実現します。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般

当社は、「AIクラウド型サービスで、あらゆるタッチポイントにおけるリアルタイム・パーソナライゼーションの実現」をミッションに掲げており、当社の事業活動そのものを通じて社会の持続可能性の向上と当社の企業価値向上の両立に努めております。この実現のために、当社では人材への投資が最も重要な取組であると認識しております。

なお、気候変動などの環境問題については、当社が事業を通じて直接貢献できる範囲が限定されることから、記載を省略しております。

 

(2)ガバナンス及びリスク管理

当該ミッションを達成するためのガバナンス体制として、当社では、取締役、監査役から構成される取締役会を中心に、経営戦略やミッションとの関連性を踏まえ、サステナビリティに関する重要課題や方針、具体的な対策等について議論を行っており、経営と一体となったサステナビリティ活動を推進しております。

 

(3)人材育成及び社内環境整備に関する方針

当社は創業以来、「多様性をベースに、フェアなチャンスを与え続ける (Give fair opportunities with diversity)」を人材育成の基本方針とし、ダイバーシティ&インクルージョン経営を行っております。国籍にとらわれることなく高度外国人雇用を実践している企業を日本全国から約100社選出する『ビジョナリー経営』(*)の対象企業に選定されております。

(*)内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が推進し、一般社団法人情報サービス産業協会(JISA)より受託した全研本社株式会社が進める政府プロジェクト

 

①人材育成の基本方針

「多様性をベースに、フェアなチャンスを与え続ける (Give fair opportunities with diversity)」を基本方針として、主に以下の実現に重点をおいております。

(a)多様性を力にする組織づくり

社員がお互いを認め合い、多様な個の違いを力に変える組織風土や働き方により、社員全員が活躍できる環境づくり

(b)多様な人材の活躍

国籍、性別、年齢によらず、多様なバックグラウンドの人材が活躍

(c)変革と創造

人材を持続的な競争力の源泉と位置づけ、事業活動における先見性に繋げ、変革を生み続ける

 

②社内環境整備

(a)人材の採用方針

当社は、国籍、性別、年齢に関わらず、人材採用を行っております。

外国籍人材比率(*)は高水準で推移しており、日本以外の国籍は7か国(2024年12月末時点)になります。

(*)外国籍人材比率  2022年12月末:16%、2023年12月末:20%、2024年12月末:17.6%

(b)組織環境の整備

多様なバックグラウンドを持つ人材が活躍できる環境が整っております。

仕事と育児等の両立支援については、出産の前後や育児における休暇・休業・在宅・職場復帰制度、時短勤務制度等の諸制度を設けるなど、働きやすい職場環境の整備に積極的に取組んでおります。育児・介護サポート、スキルアップなど福利厚生のあらゆる面をサポートする福利厚生システムも活用されております。

(c)キャリアアップをバックアップする仕組みの構築

当社の多様な人材が自らの強みを発揮し、その成果と貢献が適切に評価され、誰もが成長を実感しながら自らキャリアを切り開くことが当社の未来を切り開くことに繋がることを目指しております。従業員の自己啓発プログラム(e-Learning)は、「専門家としても個人としても、最先端の学びによって成長できる」をコンセプトに、自らの専門性や未来のありたい姿、ライフスタイルに基づいて自らが学ぶテーマを内発的に設定し、自己向上を図ることを目指すものとして運用されております。

 

(d)社員エンゲージメントの把握と向上

社員一人ひとりの意欲を高め、組織力につなげることを目的とし、2023年から半期ごとに全社員を対象とした従業員満足度調査を行っております。重要な経営データとして経営会議や取締役会に報告し、人事制度及び人事戦略の策定に活用しております。

 

(4)指標及び目標

前述のとおり、事業構造上、当社は「人材」への投資が最重要項目と考えております。ダイバーシティ・インクルージョン戦略のもと、人員数を拡大しており、当事業年度末時点の従業員数は50名です。今後は更なる事業成長とともに従業員数100名を目標に掲げております。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は本項及び本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えられます。

 なお、文中の将来に関する事項は、別段の表示がない限り、当事業年度末現在において、当社が判断したものであります。

 

 (1)事業環境に係るリスクについて

  ① 事業環境の変化、技術革新について

 当社はデジタルマーケティング領域において、企業に対してサービスを提供しております。

 当社が所属するデジタルマーケティング市場規模は拡大傾向であるものの、パーソナライゼーションに対するソリューションがスタンダードになってきております。

 また、生成AIの急速な進化が、業界のビジネスモデルと競争環境、企業の業務に大きな影響を及ぼしております。生成AIに学習させるデータが差別化要因となる中、サービス提供企業のビッグデータとAI技術をコアに持つ当社の機会は拡大しておりますが、このような環境変化や技術革新への対応に時間を要した場合には、競争力の低下をまねき、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

  ② 法的規制について

 現時点において、当社の主力事業であるリアルタイム・レコメンドサービスに関連して、事業継続に重要な影響を及ぼす法的規制はないものと認識しております。しかし、インターネットの利用者及び事業者を規制対象とする法令、行政指導、その他の規制等が制定された場合、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、当社のリアルタイム・レコメンドサービスに使用している成果のトラッキング及び不正行為防止のために使用している技術(cookieの使用等)が規制、制限された場合には、代替手段の開発に多額の投資が必要となり、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

  ③ 有害コンテンツを含む顧客サイト及び広告に対する規制について

 当社が運営しているリアルタイム・レコメンドサービス及びレコメンド広告サービスは、規約等により独自の基準を設けており、法令や公序良俗に反する広告及び掲載されているコンテンツを排除するように規制並びに管理をしており、各々のサービスの申込み時に、レコメンドが表示される顧客のウェブサイト及び広告主が掲載希望するバナー広告について、有害コンテンツを含むサイト及び広告でないかについて確認を行っております。また、申込み時だけでなくその後も当社の社員がウェブサイトにおけるレコメンドの表示状況のモニターを行っております。モニターにおいては、「特定商取引に関する法律」等を念頭におき、当社の基準に反するコンテンツ等が存在している場合は、顧客及び広告主に対して警告を行い、従わない場合は契約の解除等の対策を行っております。しかしながら、顧客及び広告主によって法令や公序良俗に反する広告や商品・サービスの提供、コンテンツの掲載が継続された場合には、当社の信用が低下し、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 また、レコメンド広告サービスについては、申込みの段階で有害コンテンツを含む広告はない旨を顧客に表明保証していただいております。しかしながら、当社においてすべてのリンク先サイトのモニターまでを行うことができず、有害コンテンツが掲載されたことにより、当社の信用が低下し、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

 (2)事業運営体制に係るリスクについて

  ① 特定人物への依存及び人材確保に係るリスクについて

 当社では、事業拡大に伴って優秀な人材の確保とその育成は重要な課題となっており、人材採用と人材育成に関する各種施策を継続的に講じております。しかしながら、十分な人材確保が困難になった場合や、人材が外部に流出した場合には、当社の業務に支障をきたすおそれがあります。また当社では、代表取締役の専門的な知識、技術、経験に依存している面があります。このため当社では、特定の人物に過度に依存しない体制を構築すべく経営組織及び技術スタッフの強化を図っておりますが、これらの役職員が何らかの理由で退任、退職し、後任者の採用が困難になった場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ② 内部管理体制について

 当社は、今後の事業展開や成長を支えるためにも内部管理体制のより一層の充実を図っていく予定であります。今後、事業規模の拡大に合わせ、内部管理体制も充実・強化させていく方針ではありますが、事業の拡大及び人員の増加に適時適切に組織的な対応ができなかった場合、事業展開に影響が出るなどして、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ③ オペレーションリスクについて

 当社の各サービスでは、顧客企業の商品マスタや物件情報等を日々取扱っており、煩雑で件数も膨大になるため、それに付随する、オペレーション上のリスクが発生する可能性があります。当社では、リスクの軽減を図るため、システムでの管理により、業務基盤の整備を進めておりますが、事務処理における事故・不正等が起きた場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ④ 情報セキュリティ管理について

 当社は、リアルタイム・レコメンドサービス及びレコメンド広告サービスの提供にあたり会員情報や銀行口座の情報等の個人情報を取得及び利用しておりません。そのため、「個人情報の保護に関する法律」が定める個人情報取扱事業者としての義務は課されておりませんが、取引データの管理や、社内における顧客企業等の情報及び個人情報についてもその取扱いには細心の注意を払い、外部コンサルティングを含めたセキュリティ委員会を立ち上げ、世界水準のセキュリティサービスの実現に向け、最大限の取組みを行っておりますが、万一、外部からの不正アクセスなどにより情報の外部流出等が発生した場合には、当社への損害賠償の請求や当社の社会的信用の失墜等によって、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

  ⑤ 知的財産権について

 当社は、当社の提供するサービスの基礎をなす技術やビジネスモデルについて、特許権を出願し取得するとともに、各種の商標を登録しております。しかし、現時点で権利取得に至っていない権利について、今後これらの権利を取得できるという確実性はありません。また、特許申請の必要性について社内で検討し、顧問弁護士や弁理士と連携の上、速やかに特許申請を行う体制を構築しておりますが、特許申請をしない方が競争優位に立てると判断した場合は特許申請を行わない場合もあります。慎重に判断を行い権利保護に努めておりますが、他社による模倣を効果的に防ぐことができない可能性もあります。一方で、当社の事業分野において、国内外の各種事業者等が特許その他の知的財産権を取得した場合、その内容次第では、当社に対する訴訟やクレーム等が発生し、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、当社では、第三者に対する知的財産権を侵害することがないように常に注意を払い事業活動を行っておりますが、当社の事業分野における知的財産権の現状を完全に把握することは困難であり、万一当社が第三者の知的財産権を侵害した場合には、損害賠償又は使用差止めなどの請求を受ける可能性があります。これらの事態が発生した場合、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

  ⑥ 設備及びネットワークの安定性について

 当社の設備及びネットワークは24時間稼働、年中無休での運用が求められております。システムに支障が生じることは、サービス全般の停止を意味するため、設備及びネットワークの監視や冗長化、定期的なデータのバックアップなど、障害の発生防止に努めております。しかしながら、地震、火事などの災害のほか、コンピュータウイルスやハッカーなどの行為、ハードウェア・ソフトウエアの不具合、人為的ミスによるもの、その他予期せぬ重大な事象の発生により、万一、当社の設備又はネットワークが利用できなくなった場合には、サービス停止に伴う信用の低下を引き起こし、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

  ⑦ 成果報酬型の料金体系について

 「アイジェント・レコメンダー」において、既存顧客の多くが成果報酬型の料金体系を適用しております。このため、税制改正や冷夏・暖冬等の一般的に消費者の購買意欲が低下するような事象が起きた場合、当社が高い精度のレコメンド表示に努めたとしても、顧客のサイトの売れ行きがその影響を受け、当社の業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、顧客の望む成果を出せなかった場合、顧客の解約はもちろん今後の新規顧客の獲得に影響が生じることが考えられ、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、レコメンド広告サービスの「ホットビュー」において、顧客企業と契約した成果に達するまでは、顧客企業から得られる収益よりも当社が買い付ける広告枠費が多くなるという現象が発生するケースがあります。広告枠費については、当社でも日々管理をしているものの、その結果として損失が発生することにより、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

  ⑧ 新たな事業展開について

 当社は今後、更なる収益拡大を図るため、既存事業の周辺領域での新たな事業展開や海外における新規顧客獲得についても取組んでまいりたいと考えておりますが、先行投資として人件費等の追加的な支出が発生する場合や、これまで想定していない新たなリスクが発生するなどにより、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (3)その他

   配当政策について

 当社は、設立以来配当を実施した実績はありませんが、株主に対する利益還元は重要な経営課題であると認識しており、事業基盤の整備状況、今後の事業展開、業績や財政状態などを総合的に勘案した上、配当を検討していきたいと考えております。当面は、既存事業領域と新規事業領域において更なる成長に向けたサービスの創出・拡充、組織の構築などに投資を行うことが株主価値の最大化に資すると考えます。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、経営成績等という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当事業年度、当社が属する国内の情報通信サービス市場においては、企業が収集するあらゆるデジタルデータを活用した業務効率化、サステナビリティ経営の実現に向けたIT環境整備とシステム更新需要が依然として高まっております。また、エンドユーザーとの接点強化など、企業成長と競争力強化を目的とするクラウドサービスや、生成AIなどのテクノロジーに対するIT投資が堅調に推移しており、大企業ではIT投資が実装段階に移行しています。

国内SaaS市場は高い成長率を維持し、国内SaaS市場は2027年度に2兆990億円(2024年度見込比6,862億円増)(注1)、DX市場は2030年度に8兆350億円(2023年度見込比4兆153億円増)(注2)の規模に達すると予想されており、当社が事業を展開している国内のEC市場規模拡大も継続しております。このような環境下において、AIクラウド型サービスのリーディングカンパニーとして当社が果たすべき役割は、重要性を増しています。

当社は2024年度を事業拡大期と位置づけ、事業の収益構造の変革を事業目標に掲げております。今後の力強い事業成長の足掛かりの実現に向け、当社のAI技術を軸として、既存事業と新領域の二つの事業を両輪とした企業活動を行っており、当事業年度における取り組み事例は次のとおりです。

既存事業においては、当社のレコメンドサービスの優位性である『高性能』を最大限に磨くことに注力してまいりました。個別クライアントにおける多様なユーザー行動に対応する、複数の新アルゴリズムを同時に開発いたしました。一部顧客への先行導入において、業界トップクラスのレコメンド精度を確認いたしました。2025年より、より多くの顧客への提供を開始する予定です。また、プライバシー保護の潮流に対応するため、世界水準のセキュリティ基準への準拠を完了いたしました。さらに、従来のレコメンドサービスにとって大きな障壁であったデータが少なくレコメンドがうまくできないというコールドスタート問題に対応した、LLM(大規模言語モデル)を活用した新機能サービス「V-レコ」をリリースいたしました。また、高性能かつコストパフォーマンスに優れた機能限定版の低価格モデル「アイジェント・レコメンダーS」を提供開始することで、多様な企業のニーズに対応できるサービスラインナップを構築いたしました。

新領域の事業においては、LLMを活用したダイレクトリクルーティング分野のサービス「レコタレント」β版を、2024年11月にリリースいたしました。さらに建設会社の課題解決を目的としてDXシステム開発に取り組み、2024年12月に納品いたしました。当初予定のスケジュールからは若干遅れがあるものの、収益基盤の強靭化に向けて複数の新領域のサービス開発に着手し、収益源の種を蒔くことができました。

既存事業の進化と新領域の二つの事業を支える人材活用戦略の一環として、従業員の健康やウェルビーイングに配慮し、組織生産性の向上を両立させるオフィスづくりを目指し、東京オフィス移転と大阪オフィスリニューアルを行いました。

このような状況のもと、当事業年度の営業収益は、主要顧客であるアパレル業界のECサイトにおいて秋冬物の需要が低迷している影響を受け、1,229,202千円(前年同期比2.2%減)となりました。想定以上の減収に加え、為替変動によるクラウドサービス利用料の増加や、次年度以降の収益源の拡大に向けた投資の結果、営業利益は65,779千円(同31.4%減)、経常利益は66,249千円(同30.7%減)、当期純利益は30,304千円(同48.7%減)となりました。

なお、当社は、レコメンデーションサービス事業の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を行っておりません。

 

(注)1.「2024デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望 市場編/企業編」富士キメラ総研刊行

2.「ソフトウェアビジネス新市場 2024年版」富士キメラ総研

 

② キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、1,179,431千円となりました。

なお、当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とその要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における営業活動の結果、得られた資金は、102,736千円となりました。主な内訳は、未払金の減少額31,825千円があった一方で、税引前当期純利益の計上額50,735千円、減価償却費の計上額27,908千円及び法人税等の還付額36,989千円があったこと等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における投資活動の結果、支出した資金は25,029千円となりました。これは、有形固定資産の取得による支出10,461千円及び差入保証金の差入による支出14,568千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における財務活動の結果、得られた資金は4,940千円となりました。主な内訳は、新株予約権の行使による株式の発行による収入5,000千円があったこと等によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

b.受注実績

 当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

c.販売実績

 当事業年度の販売実績は次のとおりであります。

サービスの名称

当事業年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

前年同期比(%)

レコメンデーションサービス事業(千円)

1,229,202

97.8

合計(千円)

1,229,202

97.8

 (注)1.当社の事業セグメントは、レコメンデーションサービス事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載をいたしておりません。

2.主要な販売先については、相手先別販売実績の総販売実績に対する割合がいずれも100分の10未満であるため、記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社の財務諸表の作成にあたり採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載しております。

 

② 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等

(イ)財政状態

(資産)

当事業年度末の総資産は、前事業年度末に比べ16,223千円増加し、1,521,525千円となりました。主な内訳は、売掛金の減少9,746千円、未収還付法人税等の減少36,224千円、ソフトウエアの減少25,638千円及び繰延税金資産の減少9,438千円があった一方で、現金及び預金の増加82,647千円及び差入保証金の増加20,866千円があったこと等によるものであります。

 

(負債)

当事業年度末の負債は、前事業年度末に比べ26,039千円減少し、101,286千円となりました。主な内訳は、未払法人税等の増加15,945千円があった一方で、未払金の減少24,903千円、未払消費税等の減少9,029千円及び賞与引当金の減少8,516千円があったこと等によるものであります。

 

(純資産)

当事業年度末の純資産は、前事業年度末に比べ42,262千円増加し、1,420,239千円となりました。主な内訳は、新株予約権の増加7,017千円及び当期純利益の計上による利益剰余金の増加30,304千円があったこと等によるものであります。

 

(ロ)経営成績

(営業収益)

 当事業年度の営業収益につきましては、主要顧客であるアパレル業界のECサイトにおいて秋冬物の需要が低迷している影響を受けた結果、1,229,202千円(前年同期比2.2%減)となりました。

 

(営業利益)

 当事業年度の営業費用につきましては、為替変動によるクラウドサービス利用料の増加や、次年度以降の収益源の拡大に向けた投資を行いました。その結果、想定以上の減収もあり、営業利益は65,779千円(同31.4%減)、売上高営業利益率は5.4%(前事業年度7.6%)となりました。

 

(営業外収益、営業外費用及び経常利益)

 当事業年度の営業外収益は503千円(前事業年度は7千円)となりました。

これは主に還付加算金の影響によるものであります。

 この結果、経常利益は66,249千円(同30.7%減)となり、売上高経常利益率は5.4%(前事業年度7.6%)となりました。

 

(特別利益、特別損失及び当期純利益)

 当事業年度の特別損失につきましては、主にオフィス移転に伴い、固定資産除却損を12,498千円及び事務所移転費用3,016千円を計上いたしました。

 これらの結果、当期純利益は30,304千円(同48.7%減)となり、売上高当期純利益率は2.5%(前事業年度4.7%)となりました。

 

(ハ)キャッシュ・フローの状況の分析

各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

b.経営成績に重要な影響を与える要因

当社は、「3 事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境、事業内容、組織体制、法的規制等、様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社は常に市場動向に留意しつつ、内部管理体制を強化し、優秀な人材を確保し、市場のニーズに合ったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行ってまいります。

 

c.資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社は、健全で安定した財務体質の形成に努めております。

必要な運転資金及び設備投資資金を全額自己資金で賄っており、自己資金の範囲内で安全かつ安定的な資金運用が可能と認識しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社では、インターネットサービスのパーソナライズ化を実現するための技術を研究開発しております。専門分野としては、機械学習技術をリアルタイムにビッグデータに応用することをベースとしたレコメンドシステムであり、研究分野としては、情報検索、最適化、協調フィルタリング、自然言語処理、画像認識・処理等を対象としております。当社のサービスをサポートするためのウェブとモバイル領域におけるビッグデータ分析、クラウド技術、堅牢性の高い分散アーキテクチャといったエンジニアリング技術の研究開発を継続的に行い、またオープンソースソフトウエアも積極的に活用した結果、研究開発費として、54,980千円を計上しております。

なお、当社は、レコメンデーションサービス事業の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を行っておりません。