第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針及び経営環境

当社グループは、「あるべき姿」である「安全とサービスを基盤として九州、日本、そしてアジアの元気をつくる企業グループ」の実現に向けて、「安全・安心なモビリティサービスを軸に地域の特性を活かしたまちづくりを通じて九州の持続的な発展に貢献する」という「2030年長期ビジョン」を掲げています。

当社グループを取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス感染症の発生を機に大きく変化しており、将来における経営環境の変化の不確実性も一層高まっています。このようななかにおいても、「2030年長期ビジョン」を実現するために、2030年までに想定される主要な外部環境変化と、その変化に影響を受ける人々の豊かさに関する価値観の変化に着目するとともに、極端な変化を想定した未来シナリオも検討したうえで、「2030年長期ビジョン実現方針」として、2つの方針を定めています。

1つ目は、これまで当社グループが主にターミナル駅周辺で進めてきたまちづくりを進化させ、「価値観の変化を捉えた“豊かな生活を実現する”まちづくり」を進めていくことです。九州を大きく2つのエリアに分けて捉え、ターミナル駅周辺・沿線においては、複合的な価値を提供し、「住みたい・働きたい・訪れたい」まちの構築を目指すとともに、地方においては、自治体や他交通モードとの連携、地域資源の再発掘と活用により交流人口の拡大を目指します。

2つ目は、「九州の持続的な発展に貢献する領域の拡大」を進めていくことです。当社グループの強みを活かして、事業ポートフォリオの強化及び拡大を進め、環境、地域経済、地域社会へと当社グループの貢献領域を拡大してまいります。特に脱炭素社会の実現は、重要テーマの1つと考えており、2050年のCO2排出量実質ゼロに向けて、CO2排出量を削減する「守り」の視点だけではなく、新たな価値を創出する「攻め」の取り組みも推進してまいります。

さらに、ESGの取り組みについては、2030年長期ビジョンの実現に向けて、マテリアリティとそれに付随する非財務KPIを設定しており、実効性を高めるため非財務KPIの一部は役員報酬と連動しています。

 

 

≪経営計画の体系≫

 

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(2)対処すべき課題

2023年3月期よりスタートした「JR九州グループ中期経営計画2022-2024」では、この3ヵ年を当社グループが早期に成長軌道への復帰を図る重要なステージとして位置づけています。3つの重点戦略として掲げる「事業構造改革の完遂」、「豊かなまちづくりモデルの創造」及び「新たな貢献領域での事業展開」を推進するとともに、重点戦略の実行を支える「戦略実行・実現を担う人づくり」及び「グループ一体で戦略を推進する基盤づくり」にも引き続き注力してまいります。

 

1.事業構造改革の完遂

前中期経営計画より進めてきた事業構造改革は喫緊の課題と認識しており、鉄道事業、ホテル事業をはじめとした主力事業の構造改革を中期経営計画期間に完遂させます。

鉄道事業においては、鉄道旅客運輸収入の緩やかな回復やBPR(Business Process Re-engineering)の完遂等により2023年3月期には営業損益が3期ぶりに黒字化しました。一方で、今後エネルギーや原材料価格の高騰などによるコストの増加が見込まれており、将来の技術革新や新たな価値創造を見据えた「未来鉄道プロジェクト」等を通じた更なる収支改善に取り組み、持続的で安定した黒字体質の実現を目指してまいります。また、ホテル事業においては、ホテル運営子会社の統合により経営基盤や管理体制の強化を図ってまいります。あわせて、流通・外食事業におけるフランチャイズ事業の強化や店舗リニューアルなどによるブランド/店舗の競争力向上、建設事業の体制強化によるグループ内から外への主戦場の転換を推進してまいります。

 

2.豊かなまちづくりモデルの創造

九州内各エリアにおける成長機会を認識したうえで、マンション、商業、オフィス、物流施設等の不動産開発を進めるとともに、中期経営計画期間では、西九州エリア及び福岡エリアでのまちづくりに注力してまいります。

西九州エリアにおいては、2022年9月に開業した西九州新幹線を起爆剤としてまちづくりを推進してまいります。具体的には、駅ビルや自治体等と連携して西九州新幹線の利用促進に取り組むことに加え、2023年度に開業を迎えた「アミュプラザ長崎新館」、「長崎マリオットホテル」、「嬉野八十八(うれしのやどや)」、「サガハツ」といった商業施設・宿泊施設の着実な成長に向けた取組みを進めてまいります。

福岡エリアでは、福岡市地下鉄七隈線延伸による博多駅のターミナル機能向上を好機と捉え、「コネクトスクエア博多」や「りすのこスクエア」等の開発を行いました。今後も「博多駅空中都市プロジェクト」等の複合開発を推進してまいります。

2022年度に開始した物流不動産事業については、2024年度は高速道路インターチェンジや港湾といった交通結節点を中心に本格参入してまいります。また、2023年8月28日に開業した日田彦山線BRTひこぼしラインについて、日常利用の更なる促進を行うなど、持続可能なモビリティサービスのモデルの構築を目指してまいります。

 

3.新たな貢献領域での事業展開

当社グループの主要事業はBtoC事業を中心としており、人口動態の影響を受けやすい特性があります。人口動態の影響を受けにくいBtoB事業及びBtoG事業を強化することで、九州の発展に向けた貢献範囲の拡大及び事業の持続性向上を目指します。

具体的には、BtoB、BtoG事業が中心である建設及びビジネスサービスセグメントにおいて、M&Aやアライアンス戦略を強化することで、事業展開エリアや事業領域を拡大し、BtoC事業に並ぶグループの柱へと成長を目指します。また、多角化戦略で培った当社グループ全体の強みを活かして、鉄道に限らない都市インフラの工事や保守管理業務の受託拡大、蓄電池事業への参入など、競争優位性を持つことができる領域の探索と事業拡大も進めてまいります。

 

 

4.戦略実行・実現を担う人づくり

当社グループの経営戦略・ビジネスモデルや労働市場が変化するなか、新たな人材戦略を策定し、「社員が働きがいを持ち、いきいきと活躍できる会社づくり」、「人間力と実務力を持った社員の育成」という2つの基本方針のもと、「採用・配置」「育成」「評価」等の様々な場面で人事制度を改革することで、戦略の担い手となる多様な社員の“個”の力の最大化と当社グループの成長を実現してまいります。

具体的には、人材戦略の4つの柱として「意欲と能力のある社員への挑戦・成長の機会の提供と支援」、「多様な価値観や能力を持つ社員の活躍による新たな価値の創造」、「努力と成果に応じたメリハリのある評価と報酬」、「ライフプランに合わせた柔軟な働き方が選択できる環境整備と健康経営の推進」に取り組んでまいります。

 

5.グループ一体で戦略を推進する基盤づくり

戦略を推進する基盤づくりとして、2022年4月に事業ポートフォリオ強化を目的としてセグメント区分を変更したほか、グループ横断でのBtoGビジネスの強化及び持続的なモビリティサービスの構築を目的として地域戦略部を設置いたしました。また、2023年4月には鉄道事業本部において事業統括部を設置し、新たな収支管理制度を導入したことに加え、同年7月には建設セグメントにおいて中間持株会社を設置するなど、グループ内の連携や収支管理機能の強化に向けた取り組みを推進してまいります。

さらに、当社グループ全体でのデータマーケティング加速を目的とした顧客管理基盤の整備と事業ポートフォリオの柔軟性強化にも取り組んでまいります。

DX推進の分野では、「JR九州グループDX戦略2022-2024」に基づき、「お客さま体験価値向上」、「オペレーション・メンテナンス改革」、「働き方改革・生産性向上」の3つの領域においてデジタル技術を活用した各種施策を推進するとともに、DX推進を支える「基盤」及び「人材育成・推進体制」の整備に注力してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取り組み】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

(1)ESG経営の推進

 ESG経営を強化・推進していくための審議機関として、社長執行役員を委員長とする「ESG戦略委員会」を設置しています。「ESG戦略委員会」は、ESG経営を全社的な課題と位置づけ、環境・社会・ガバナンスの各分野における取り組みを強化・推進するための審議機関です。委員会では非財務情報の進捗やESG分野の動向や課題について審議した事項は、必要に応じて取締役会へ報告するなどリスク管理を含めた管理体制としております。また、ESG経営をさらに推進していくために、ESGに関する知見を有する社外取締役も「ESG戦略委員会」にオブザーバーとして適宜参加しています。

 

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 当社グループの「あるべき姿」には、私たちが、九州の元気をつくっていく、さらに、九州から日本、そしてアジアを舞台に元気をつくっていくという思いが込められています。当社グループは、「あるべき姿」のもと、長期的かつ持続的な価値を追求することで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。当社グループには、「おこない」ということばがあります。「誠実」、「成長と進化」、「地域を元気に」の3つの「おこない」は、「あるべき姿」の実現のため、従業員が守るべき指針であり、従業員一人ひとりが大切にしてきたものです。当社グループは、昔から変わらない「おこない」を通して、マテリアリティの解決に向けて取り組みを行っていきます。

 

マテリアリティと非財務KPI

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(2)気候変動

 2021年2月、当社は金融安定理事会(FSB)により設置された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)による提言に賛同を表明しています。今後もTCFD提言に基づく「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4つの視点について、相互のつながりを意識し、気候変動関連リスク及び機会への対応を経営に統合して取り組みを推進することで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

 

 ①ガバナンス

 当社グループはマテリアリティの一つとして「脱炭素社会の実現」を掲げています。「ESG戦略委員会」で気候変動をはじめとする環境問題への対応について、基本理念・基本方針に則った事業活動が推進されているかを確認し、気候変動問題解決に向けた自主的目標の設定及び進捗の確認、気候変動に伴うリスクマネジメント等を実施しています。「ESG戦略委員会」で審議された重要な事項について、取締役会は必要に応じて報告を受け、指示を出す管理体制としています。今後も、気候変動関連の取り組みや開示の方向性、各種目標設定、環境マネジメント体制等、取締役会内にて議論を進め、脱炭素社会の実現に向けてESG経営を推進していきます。

 

 ②戦略

 当社グループの事業特性などを鑑み、気候変動によるリスクや機会を特定しています。主なリスクとして、炭素税の引き上げ、グリーンビルディング開発・改修、気温の上昇による光熱費増加、ならびに、気候変動を原因とする自然災害の増加による事業活動の停止や資産の被害が見込まれます。機会については、鉄道の環境優位性の維持による売り上げの増加やグリーンビルディングへの需要の高まり、サステナブル商品への関心の高まりによる需要の拡大などが見込まれます。これらのリスク・機会を踏まえ、「JR九州グループ中期経営計画2022-2024」(2022年3月公表)において、脱炭素社会の実現に向けたロードマップを策定しています。エネルギー使用量の削減や再生可能エネルギーの導入・活用に加え、バイオディーゼル燃料の導入等に向けた新技術の実証試験、不動産アセットにおけるグリーンビルディング認証の取得といった緩和策の積極的な実施とともに、各施設における電気機器室の嵩上げや止水板の設置等の降雨対策、BCP対策の充実、などの適応策も実施していきます。

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 ③リスク管理

 気候変動関連のリスクに関しては、社長執行役員を委員長とする「ESG戦略委員会」において、当社グループの事業が受けるリスクを識別・評価するため、TCFD対応の一環として気候変動に関するリスクと機会を分析しています。また、本リスクの管理体制として、同じく「ESG戦略委員会」において、CO2排出量を削減していくための施策の計画・立案、進捗を中心に管理しています。気候変動関連リスクの識別・評価、管理状況については「ESG戦略委員会」の中で毎年1回以上報告するとともに、必要に応じて取締役会にも報告します。

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 ④指標と目標

 当社グループでは2050年CO2排出量実質ゼロを目指すことを表明しています。また、「脱炭素社会の実現」をマテリアリティとしており、「JR九州グループ中期経営計画2022-2024」では2030年中間目標を含めた非財務KPIを設定し、CO2排出量削減の取り組みを推進しています。今後も、当社グループ全体で脱炭素社会の実現に向けてESG経営の強化を進めていきます。「脱炭素社会の実現」に関する非財務KPI及び進捗状況については、「(1)ESG経営の推進」をご参照下さい。なお、2024年3月期の実績については2024年度中に発行する統合報告書等にて別途公表します。

(3)人的資本について

    ■基本的な考え方

     「2030年長期ビジョン」を実現していくためには、戦略の実行・実現を担う人づくりが重要であるとの認識のもと、マテリアリティの一つに「価値創造の源泉である人づくり」を掲げています。2023年3月に新たに策定した「JR九州の人材戦略」を確実に推進し、PDCAサイクルを回しながら有効性を高め、あるべき姿の実現につなげます。

     「JR九州の人材戦略」については、以下のとおりです。

 

 

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 ① ガバナンス

      2023年4月に、ガバナンス強化の観点から、継続して人材戦略を審議する機関として、社長執行役員を委員長とする「人材戦略委員会」を設置しました。

      2023年度は、人材戦略委員会を11回開催し、人材に関する各種計画の策定や取り組みの進捗確認など、延べ34の議題を付議し、議論しました。

      そのうち、従業員意識調査の結果及び課題、その課題の打ち手となるタレントマネジメントシステムの導入や経営人材の選抜・育成等を含めた今後の人材戦略の重点取り組みについては、取締役会にて報告、審議しました。

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 ② 戦略

      人材戦略として策定した4つの柱に基づいて、具体的な取り組みを計画して人材戦略委員会にて練り上げ(P)、実施しました(D)。その後、従業員意識調査の結果や人材に関するKPIの進捗を確認し、人材戦略委員会にて、その取り組みの結果を検証し(C)、課題を抽出、次の手を打ちました(A)。こうして、社員が働きがいを持ち、いきいきと活躍できる会社をつくり、人間力と実務力を持った社員の育成を図ります。

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    ≪4つの柱に基づいた具体的な取り組み≫

     a 意欲と能力のある社員への挑戦・成長の機会の提供と支援

      2023年9月より、一般の社員約5,000名を対象に、新たにキャリアデザイン研修を開講しました。事業の社会的意義等を改めて考え、理解し、自らの業務の意義や価値を明確にするとともに、将来のキャリアビジョンを描くことで働きがいを向上させることを目的としています。本研修の講師は公募制異動により選出された社内トレーナーが担当しています。2023年度は882名が受講し、2024年度中に全対象者が完了する予定です。

      また、新入社員研修、管理者研修、経営幹部育成研修など、各階層においてそれぞれの成長ステージに合わせた階層別研修も実施しています。階層別研修を通じて、社員はコミュニケーションスキル・マネジメント手法等について学びます。

さらに、一人ひとりが自ら目標を持って学び続けられるように、グロービス単科派遣、海外留学・大学院・大学への派遣等、様々な社外派遣制度のプログラムを設定しています。2023年度より派遣対象の階層や派遣社員数を拡大するなど、多くの社員がスキルアップを図れるように取り組んでいます。なお、1年を通じて学ぶことに意欲的に取り組んだ社員を表彰する「学び大賞」を毎年実施しています。

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キャリアデザイン研修

 

「学び大賞」の受賞

 

     b 多様な価値観や能力を持つ社員の活躍による新たな価値の創造

  多様な価値観や能力を活かす環境をつくるため、JR九州にとってのDE&Iの考え方をまとめ、2024年度以降の取り組みを決定しました。当社で働く社員が互いを認め合い学び合うという社員の意識改革を推進するとともに誰もが活躍できる公平な機会を提供することに注力しています。誰もが働きがいを持ちいきいきと活躍し、風通しの良い組織で活発な意見が飛び交う状態とすることで、社員も会社も成長しあるべき姿を実現します。

  また、多様な人材の確保のひとつとして、社会人の採用・活躍に向けた取り組みを実施しました。2023年度から本格的に社会人の採用を開始し、1年間で82名の社会人が入社しました。2023年10月には、リターン雇用制度をリニューアルし、対象者を拡大した「ハッピーターン採用」を開始しました。一度退職したものの再び当社で力を発揮したいと考える方に対し、採用の窓口を設けたもので、2024年4月に10名が入社しました。入社時研修やメンター制度、職場や主管部との定期的な面談、人事部長等との意見交換会等、フォロー体制を構築し、定着そして活躍を支援しています。

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2023年10月入社の社会人採用者

 

 

     c 努力と成果に応じたメリハリのある評価と報酬

2024年度から毎年度初に評価者が実施するフィードバック面談について、被評価者に対して特に良かった点や今後の最優先課題と共に評価内容や理由を伝えるよう見直しを行います。昇給や賞与の通知を行う際にも、社員に理由を伝え、評価と報酬に納得感を持たせ、働きがいの向上を図ります。

フィードバック面談の実施方法の見直しに併せて2023年8月より評価者を対象とする研修を開講しました。マネジメントにおける人事評価の重要性や人事評価の前提となる心理的安全性、そして目標設定のポイントと目標達成に向けた部下との接し方等、マネジメント能力の向上を目的に導入しました。マネジメント能力の継続的な向上を図るために、定期的に本研修を受講することとしており、2023年度は1,322名が受講しています。

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評価者(コミュニケーション)研修

 

     d ライフプランに合わせた柔軟な働き方が選択できる環境整備と健康経営の推進

育児や介護等のライフステージに合わせて就業するエリアを限定できる制度を新設しました(社員が希望し、会社が認めた場合に限る)。就業するエリアは福岡・佐賀エリア、長崎エリア、大分エリア、熊本エリア、鹿児島エリア、宮崎エリア、東京エリア(※東京エリアは2024年10月より追加)の中から選択することが可能です。

また、当社グループは「JR九州グループ健康宣言」のもと、当社グループ全体で健康経営の推進に取り組んでいます。「あなたの健康は、みんなの幸せ」をスローガンに掲げ、社員一人ひとりがより積極的に健康増進のための具体的行動を起こすことを目指しています。2023年度は、社内の健康経営推進体制を整備し、重点項目を定め、その箇所別実績を経営会議等で報告するなど、会社全体で健康経営を推進していく体制を構築しました。

さらに、特定保健指導については、面談時間を労働時間にしたほか、特に実施率が低い箇所にはヒアリングを行い、課題を明らかにすることで対象者が指導を受けやすい環境づくりを行いました。2024年3月には、当社の健康経営の取り組みが評価され、「健康経営優良法人」の認定を受けました。

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健康経営推進体制

 

「健康経営優良法人」に認定

 

 ③ リスク管理

   社長執行役員を委員長とする人材戦略委員会において、人材に関する各種計画策定とKPIの進捗確認を実施しています。人材戦略の具体的な取り組みを計画するにあたっては、KPIのほか、全社員を対象に定期的に実施している従業員意識調査の結果を重要視しています。2023年度は前年と比べ総合満足度は上昇し過去最高値を記録しましたが、以前より課題としていた「従業員にとっての魅力」や「市場での発展」、「会社へのロイヤリティ」の項目は他の項目に比べて低い数値で留まっています。この結果を踏まえ、2024年度は、2022年度から実施している経営陣と全社員を対象とした意見交換会の継続した開催や管理者に対する組織活性化に関する研修の導入、タレントマネジメントシステムによる人材発掘の推進等の施策を実施することにしました。このほか、会社を取り巻く環境の変化や各種施策の浸透度、進捗状況等に応じて具体的な施策を見直すなど、柔軟に対応することで人材戦略の実効性を高めています。人材戦略委員会に付議した内容は必要に応じて取締役会にも報告しています。

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従業員意識調査の結果(2022年度、2023年度)

 

総合満足度の推移

 

    ④ 指標と目標

      当社グループでは、2030年長期ビジョンの実現に向け、非財務KPIを設定しています。「価値創造の源泉である人づくり」に関する非財務KPI及び進捗状況については、「(1)ESG経営の推進」をご参照下さい。

 

3【事業等のリスク】

当社グループは、九州新幹線をはじめとした九州主要都市間を結ぶ鉄道ネットワークを有しており、鉄道事業に加えて、鉄道事業との相乗効果の高い不動産業(駅ビル商業施設、マンション、ホテル等)、小売業、飲食業、建設業等について九州を中心に展開しております。

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、これらは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

1 感染症に関する事項

2020年2月頃からの急速な新型コロナウイルス感染症の拡大及び緊急事態宣言の発令に伴い、社会経済活動に大きな制約が生じ、当社グループにおいても、鉄道利用者の大幅な減少、駅ビル等商業施設の休館又は営業時間短縮等による賃料収入の低迷、ホテルの休館又は客室稼働率減等に伴う売上減少、コンビニエンスストア及び飲食店舗等の休業、営業時間短縮又は利用者減少等による売上減少等の影響を受けておりましたが、提出日現在においては、新型コロナウイルス感染症による行動制限の解除に伴う社会経済活動の正常化が進み、サービス分野を中心に緩やかな景気の回復が続いております。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の完全収束後も、在宅勤務やオンライン授業の拡大などにより、人々が移動又は接触を避ける新しい行動様式が広まる場合には、当社グループの鉄道、駅ビル商業施設、ホテル、コンビニエンスストア及び飲食店舗等への需要が中長期的に減退する可能性もあります。

このように、新型コロナウイルス感染症、SARS(重症急性呼吸器症候群)、新型インフルエンザ等をはじめとする重大な感染症が国内外で発生・蔓延し、インバウンドを含めた人的移動の自粛や制限、企業活動の縮小、サプライチェーンの寸断等が生じることで経済活動全体が停滞した場合、当社グループの事業における需要の減退等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

国内外で重大な感染症拡大の恐れがある場合、対策本部を設置し、政府関係機関・自治体との連携や感染防止への措置など、事業継続に向けた対策を速やかに実施します。しかしながら、感染力が強く、社員や委託先に罹患者が大量発生した場合等は、事業の継続に影響を及ぼす可能性があります。

 

2 少子高齢化等の人口動向に関する事項

当社グループの主な事業エリアである九州は、人口減少率が国内の他のエリアよりも高く、加えて高齢者の割合も高い傾向が続くと予測されています。進行する人口減少に対して、当社グループは、沿線価値を高める駅ビル及びマンション開発等により沿線の定住人口を増やすとともに、ビジネスや観光、アジア各国との地理的なメリットを活かしたインバウンド需要の取り込み等により交流人口を増やし、鉄道事業の収入の確保や九州圏内の消費の活性化を図っております。

今後の九州の人口減少及び少子高齢化によって、通勤や通学等の定期収入、ビジネスや旅行等の定期外収入が減少する場合、運輸サービスグループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの駅ビル等の商業施設や店舗等の利用者が減少する場合や、賃貸マンション・分譲マンションの利用者・購入者が減少する場合、不動産・ホテルグループや流通・外食グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

3 自然災害等に関する事項

当社グループは、九州を中心として幅広い事業を展開しており、そのなかで鉄道軌道、鉄道車両、不動産といった多くの固定資産を有しているため、地震、火山の噴火、津波、台風、地滑り、豪雨、大雪、洪水等の自然災害、テロリズムや武力紛争等の人的災害が発生した場合には、かかる保有資産の大規模な修繕に加え、当社グループの業務運営の全部若しくは一部を継続できない又は重大な支障が生じる可能性があります。特に当社グループの事業が集中する九州あるいは福岡において甚大な被害が生じた場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。2016年4月に発生した「平成28年熊本地震」では、九州新幹線をはじめとして当社グループの施設が大きな被害を受けました。また、2020年7月に発生した「令和2年7月豪雨」の影響により、久大本線及び肥薩線の鉄道施設に被害を受け、肥薩線においては、現在も一部区間において代行輸送を行っております。

昨今の自然災害の頻発及び激甚化を踏まえて、着実な安全投資を行い、新幹線脱線対策や構造物の耐震補強の対策や、降雨による線路沿線斜面の落石・崩落防止等の対策を講じるほか、机上訓練や避難誘導訓練等を実施する等、ハード及びソフト両面の防災及び減災対策の強化に努めております。

 

 

4 経済動向や国際情勢に関する事項

当社グループは、運輸サービス、不動産・ホテル、流通・外食、建設、ビジネスサービス等の様々な事業を主に九州で展開しており、消費増税や政府による経済政策の影響等、日本全体の経済環境のほか、福岡市やその他の主要都市部をはじめとした九州の経済環境の影響下にあります。また、為替相場の状況、政治的要因、自然災害、異常気象、事故、感染症の流行等の国内外の状況により、韓国、中国、台湾、香港その他の近隣のアジア諸国及び地域をはじめとした海外からの観光客の増減、資材やエネルギー調達価格の変動等の影響を受ける可能性があります。これらにより、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

5 中期経営計画に関する事項

当社グループは2022年3月に「JR九州グループ中期経営計画2022-2024」を発表し、経営数値目標を定めております。しかし、例えば、今後の新型コロナウイルス感染症の状況、人々の価値観やライフスタイルの変化、国内外及び九州の政治・経済情勢、大規模な自然災害、不動産市況、エネルギー価格の高騰、法令規制の変化、雇用環境の悪化、新規事業の経験不足、提携や買収の失敗、その他幅広いリスク・要因の影響を受け、重点戦略としている「事業構造改革の完遂」、「豊かなまちづくりモデルの創造」及び「新たな貢献領域での事業展開」やデジタル化の推進、事業ポートフォリオの組み換え、成長投資等を計画どおりに推進できない場合には、当中期経営計画における目標を達成できない可能性があります。また、当社グループの運輸サービスと不動産・ホテルの両事業は相互に関連しているため、一部の事業の低迷が他の事業にも影響する可能性があります。

その他、当社グループの施策が奏功しなかった場合、当社グループの前提及び予測が不正確若しくは不十分であった場合、又は顕在化したリスク要因に対して当社グループが適切な対応を実施できない場合等においては、当中期経営計画における目標の達成に影響を及ぼす可能性があります。

 

6 情報技術(IT)上の問題に関する事項

当社グループにおいては、鉄道事業をはじめとする様々な事業を安全かつ適切に運営するため、様々なITシステムを利用しています。また、当社グループと取引関係にある他の会社(各旅客会社間の収入清算等の計算業務を委託している鉄道情報システム株式会社等)においても同様にITシステムが利用されております。

当社グループではDX戦略を制定し、ITシステムのセキュリティ強化を進めるとともに、インシデントの早期検知や復旧等の対応能力向上に努めております。しかしながら、それらの施策にもかかわらず、当社グループ又は当社グループと取引関係にある他の会社のITシステムに関する事故、故障、サイバー攻撃及び人為的な過誤・不正操作等により、鉄道の遅延、不具合、きっぷの発券及び予約機能の障害又は遅延をはじめとして、当社グループの事業運営に様々な問題が起こる可能性があるとともに、当社グループの安全性又は信頼性に対する懸念が生じ、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

7 個人情報保護に関する事項

当社グループは、鉄道事業をはじめとする様々な事業を営んでおり、これらの性質上多数の個人・法人の顧客から様々な情報を取得し保有しております。個人情報に関して、当社グループは、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)に基づき、個人情報取扱事業者として、個人情報保護に係る義務等の遵守が求められており、社内規程の整備、セキュリティ強化及び社員教育の徹底等の対策に努めております。

しかしながら、当社グループが保有する顧客情報等の個人情報やその他重要な情報が外部に漏洩した場合には、損害賠償請求や行政処分を受ける可能性があります。また、かかる事案に対応するための時間及び費用が生じ、当社グループの事業運営上の支障や社会的信用の低下による顧客喪失等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

8 競合に関する事項

当社グループの各事業は競争に晒されています。運輸サービスグループにおいては、安全性、コスト、速達性、利便性、快適性その他の点で、他の鉄道会社に加え、自動車、バス、航空機、船舶等の他の輸送機関との間でも競合しております。特に九州では高速道路が多く利用されており、都市間を結ぶ当社グループの新幹線や特急列車と競合しています。

また、不動産・ホテルグループにおいては、利便性、顧客獲得能力、価格、賃料その他の賃貸条件、ブランド力の点で、他の不動産デベロッパーやホテル事業者と競合しています。そのほか、流通・外食グループにおいては利便性、価格、施設の魅力、顧客満足度等の点で類似の小売・飲食事業者と、建設グループ及びビジネスサービスグループにおいては九州全域又はその他の地域に所在し類似サービスを提供する事業者と競合しています。

当社グループが顧客の嗜好や需要の変化、技術の進展に対応できず、又は、競合他社の統合等により競争力を向上又は維持できない場合、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

9 保有資産の価値に関する事項

当社グループは、土地その他の不動産を中心に、多くの固定資産を所有しており、経営環境の変化や収益性の低下等により当該固定資産への投資額の回収が見込めなくなった場合には、減損損失を計上することが必要になり、また、将来かかる資産を簿価未満で売却する場合には、売却損を計上する可能性があります。

当社グループは、鉄道事業において継続的に多額の設備投資を実施しているため、将来において鉄道事業の業績が予想以上に低調となった場合には、鉄道事業固定資産について減損損失を計上する可能性があります。

また、当社グループの繰延税金資産は、税務上の繰越欠損金及び将来減算一時差異について、収益力及びタックス・プランニングに基づく将来の課税所得発生額を見積り、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると認められる範囲内で計上しております。従って、将来の課税所得の予測・仮定に基づいて繰延税金資産の一部又は全部の回収ができないと判断した場合、繰延税金資産は減額される可能性があります。

さらに、市場金利の変動や発行主体の業績又は資産状況の悪化等により、当社が保有する投資有価証券等の金融資産の市場価値が下落する可能性があります。

このような事象が生じた場合、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

10 外部委託先や取引先に関する事項

当社グループは、事業上様々な局面において、第三者である外部事業者に対し、業務委託等を行っております。例えば、不動産・ホテルグループでは、建設業務の一部及び居住用物件の賃貸及び販売管理を第三者に委託しております。

さらに、流通・外食グループ及びビジネスサービスグループでは、第三者生産者、卸売業者及びメーカーより原材料や商品の仕入れを行い、コンビニエンスストアの運営については株式会社ファミリーマートとのフランチャイズ契約に基づいております。

このため、これらの第三者又はその再委託先が、当社グループの定める基準を満たす商品やサービスの提供等を怠った場合やこれらの第三者に起因する問題や事故が発生した場合、当社グループの社会的信用や当社グループの事業等に重大な影響を及ぼし、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

11 企業買収等に関する事項

当社グループは、成長戦略として企業買収等を行っており、また、将来行うことがあります。企業買収等の実施に当たっては、対象会社の財務内容等に関するデューデリジェンスを綿密に行いますが、当該デューデリジェンスの過程で検知できなかった偶発債務や未認識債務等が顕在化した場合等には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。加えて、適切な対象企業を見つけることができないこと、受入可能な取引条件を交渉・合意できないこと、買収資金を調達できないこと、必要な同意や許可等を取得できないこと、法令上の問題を解決できないこと等の理由に基づき、企業買収等を行うこと自体ができない可能性もあります。

また、企業買収等実行後の事業環境の変化に伴い、対象会社の収益力が低下した場合や期待するシナジーが実現できない場合、減損損失を認識する必要が生じ、投資の回収が不可能となる等、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

12 環境規制や気候変動に関する事項

当社グループは、主として運輸サービスグループ及び不動産・ホテルグループにおいて、不動産を所有しております。当社グループは、かかる不動産の取得に際し、土壌汚染、水質汚濁、建物へのアスベスト等の有害物質等の使用に関する環境調査を実施しておりますが、かかる調査によりすべての有害物質等の存在又は使用等が事前に判明する保証はありません。また、土地の所有者は、土壌汚染対策法(平成14年法律第53号)に基づき、さまざまな場面において、土壌汚染に関する調査を実施しなければならず、また、人体への健康被害を生じうる土壌汚染が判明した場合には、その所有者は、土壌汚染に関する帰責性の有無及び善意・悪意を問わず、当局より有害物質等の除去を命じられる可能性があります。また、建築基準法(昭和25年法律第201号)及び大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)に基づき、既存建物の解体、修繕等に関し、アスベストの除去又はその他一定の措置を講じる必要があります。有害物質等の存在は、不動産の販売、賃貸借、開発又は担保としての利用の制約となる可能性があり、また、資産価値の低下、有害物質等の除去等に要する費用の増加等を生じる可能性があります。さらに、かかる有害物質に起因して、現実に人体への健康被害等が生じた場合には、当社グループは、損害賠償等の責任を負う可能性があります。その結果、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、2015年の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議での「パリ協定」採択を機に、世界的に脱炭素社会に向けた動きが広がっております。こうしたなか、低炭素化に向けた政策・規制の見直しが実施され、税負担、事業活動における諸材料・エネルギーの調達コスト、設備・車両の変更等の対応費用が増加した場合、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、脱炭素社会の実現を重要課題の一つと位置付け、気候変動問題への対応を進めており、2021年2月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明するとともに、TCFDに沿った気候関連情報を開示しました。また、鉄道事業における省エネ型車両の導入、建物の省エネ化及び再生可能エネルギーの導入などの取り組みを推進するとともに、2022年3月には2050年CO2排出量実質ゼロに向けたロードマップを策定しました。しかしながら、このような取り組みにも関わらず、株主・投資家から低炭素化への取り組みが不十分である、又は気候変動に関する情報開示に的確に対応していない、などと判断され信頼・評価が低下した場合、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

13 運輸サービスグループに関する事項

(安全対策について)

当社グループは、基幹事業である鉄道事業における安全は最大の使命であり、企業価値の源泉であるという認識の下、経営トップの主体的関与により安全管理に係るPDCAサイクルを適切に機能させ、安全監査及び安全点検等を実施することにより、更なる安全の確保に努めています。

鉄道事業にかかる重大事故があった場合、第三者から損害賠償等の請求を受ける可能性があるほか、損傷した鉄道路線の修繕や交換に要する多額の支出、運休による収入の減少及び当社グループの評判や社会的信頼の毀損を生じる可能性があります。なお、新幹線を中心に、鉄道ネットワークは相互連携しているため、比較的小規模な事故が当社グループの鉄道の運行に広範囲にわたって支障を来たす可能性があり、当社グループの収益の減少又は鉄道サービスや設備の安全性そのものに対する懸念や、場合によっては当社グループの鉄道事業以外の事業に対する社会的信頼やブランド価値に影響を及ぼす可能性があります。

 

(法的規制について)

(1)鉄道事業に係る法律関連事項

当社は、鉄道事業者として鉄道事業法の定めに基づき事業運営を行っております。また、JR会社法の適用対象からは除外されたものの、同法の附則に定められた「当分の間配慮すべき事項に関する指針」等に配慮した事業運営が求められております。これらの詳細については、以下のとおりです。

① 鉄道事業法(昭和61年法律第92号)

当社グループの鉄道事業においては、鉄道事業法の規制を受けております。鉄道事業者は本法の定めに従い、営業する路線及び鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の許可を受けなければならない(第3条)とともに、旅客の運賃及び料金について国土交通大臣の認可を受け、その範囲内での設定・変更を行う場合は、事前届出を行うこととされております(第16条)。また、鉄道事業の休廃止については、国土交通大臣に事前届出(廃止の場合は廃止日の1年前まで)を行うこととされております(第28条、第28条の2)。この他、国土交通省の指針や事業の公益性の観点から鉄道事業において大きな方針転換を図ることができない可能性があります。

 

② 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律(平成27年法律第36号)(以下「JR会社法改正法」という。)

JR会社法改正法附則第2条において、当社及び当社の鉄道事業の全部又は一部を譲受け、合併等により施行日以降経営する者のうち国土交通大臣が指定するもの(以下「新会社」という。)が事業を営むに際し、当分の間配慮すべき事項に関する指針(以下「指針」という。)を定めると規定されております。この指針は2015年12月に告示され、2016年4月1日より適用されております。指針に定められた内容は概ね次のとおりです。

・会社間(新会社との間又は、新会社と北海道旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社又は東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社、西日本旅客鉄道株式会社、並びにその事業の全部若しくは一部を譲受、合併、分割、相続によりJR会社法の改正法(平成13年法律第61号)の施行日以後経営するもののうち国土交通大臣が指定するものとの間をいう。)における旅客の運賃及び料金の適切な設定、鉄道施設の円滑な使用その他鉄道事業に関する会社間における連携及び協力の確保に関する事項

・国鉄改革の実施後の輸送需要の動向その他新たな事情の変化を踏まえた現に営業している路線の適切な維持及び駅その他の鉄道施設の整備に当たっての利用者の利便の確保に関する事項

・新会社がその事業を営む地域において当該事業と同種の事業を営む中小企業者の事業活動に対する不当な妨害又はその利益の不当な侵害を回避することによる中小企業者への配慮に関する事項

国土交通大臣は、指針を踏まえた事業経営を確保するため必要があると認めるときは、新会社に対し、その事業経営について必要な指導及び助言をすることができるとされており(附則第3条)、さらに正当な理由がなく指針に反する事業運営を行ったときには、勧告をすることができるとされております(附則第4条)。

なお、当社はこれまでも指針に定められた事項に沿った事業運営を行ってきており、この指針は今後の当社の事業運営に大きな影響を及ぼすものではないと考えております。

 

(2)運賃及び料金の設定又は変更

当社が鉄道事業における運賃及び料金を設定又は変更する際には、鉄道事業法に規定された必要な手続きを経る必要があり、何らかの理由により当該手続きに基づいた運賃及び料金の設定又は変更を機動的に行えない場合には、当社の収益に影響を与える可能性があります。手続きの詳細については以下のとおりです。

① 運賃及び料金の認可の仕組みと手続き

鉄道運送事業者が旅客の運賃及び新幹線特急料金(以下「運賃等」という。)の上限を定め、又は変更しようとする場合、国土交通大臣の認可を受けなければならないことが法定されております(鉄道事業法第16条第1項)。

また、その上限の範囲内での運賃等の設定・変更及び在来線特急料金等その他の料金の設定・変更については、事前の届出で実施できることとなっております(鉄道事業法第16条第3項及び第8項)。

鉄道運送事業者の申請を受けて国土交通大臣が認可するまでの手続きは、過去の例によれば概ね次のようになっております。

 

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(注)1 鉄道事業法第64条の2に基づく手続きであります。また、国土交通省設置法第23条では、運輸審議会が審議の過程で必要があると認めるとき又は国土交通大臣の指示等があったときに公聴会が開かれることが定められております。

2 鉄道営業法第3条第2項で、運賃その他の運送条件の加重をなす場合に7日以上の公告をしなければならないことが定められております。

 

なお、各旅客会社における独自の運賃改定の実施の妨げとなるものではありませんが、国鉄改革の実施に際し利用者の利便の確保を図るため、旅客会社では、現在、2社以上の旅客会社間をまたがって利用する旅客及び荷物に対する運賃及び料金に関し、旅客会社間の契約により通算できる制度とし、また、運賃について、遠距離逓減制を加味したものとしております。

 

② 運賃改定に対する当社の考え方

イ 当社では、1987年4月の会社発足以降、消費税等を転嫁するための運賃改定(1989年4月、1997年4月、2014年4月及び2019年10月)を除くと、1996年1月10日に初めての運賃改定(平均7.8%)を実施いたしました。今後も総合的な経営判断に立ち、適正な利潤を確保し得るような運賃改定を適時実施する必要があると考えております。

ロ 事業経営に当たっては、まず収入の確保と合理化努力を進め効率的な経営に努めますが、適正利潤についてはこのような努力を前提とした上で、将来の設備投資や財務体質の強化等を可能なものとする水準にあることが是非とも必要であると考えております。

ハ 鉄道事業の資本費用に大きな影響を与える設備投資については、安全・安定輸送を前提とし、案件ごとに必要性等を勘案しつつ実施しております。

なお、当社としましては、事業者の明確な経営責任の下で主体的に設備投資に取り組むことが必要であると認識しているところであります。

 

③ 国土交通省の考え方

当社の運賃改定に関し、国土交通省からは、次のような考え方が示されております。

イ 当社を含む鉄道事業の運賃の上限の改定に当たっては、鉄道事業者の申請を受けて、国土交通大臣が、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの(以下「総括原価」という。)を超えないものかどうかを審査して認可することとなっている(鉄道事業法第16条第2項)。

なお、原価計算期間は3年間とする。

ロ 総括原価を算定するに当たっては、他の事業を兼業している場合であっても鉄道事業部門のみを対象として、所要の株主配当を含めた適正な利潤を含む適正な原価を算定することとなっている。また、通勤・通学輸送の混雑等を改善するための輸送力の増強、旅客サービス向上等に関する設備投資計画の提出を求め、これについて審査を行い、必要な資本費用については原価算入を認めているところである。

ハ 総括原価を算定する方法としては、当該事業に投下される資本に対して、機会費用の考え方による公正・妥当な報酬を与えることにより資本費用(支払利息、配当金等)額を推定するレートベース方式を用いる方針であり、総括原価の具体的な算定は以下によることとしている。

総括原価=営業費等(注1)+事業報酬

・事業報酬=事業報酬対象資産(レートベース)×事業報酬率

・事業報酬対象資産=鉄道事業固定資産+建設仮勘定+繰延資産+運転資本(注2)

・事業報酬率=自己資本比率(注3)×自己資本報酬率(注4)+他人資本比率(注3)×他人資本報酬率(注5)

(注)1 鉄道事業者間で比較可能な費用について、経営効率化を推進するため各事業者間の間接的な競争を促す方式(ヤードスティック方式)により、比較結果を毎事業年度終了後に公表するとともに、原価の算定はこれを基に行うこととしている。

2 運転資本=営業費及び貯蔵品の一部

3 自己資本比率30%、他人資本比率70%

4 自己資本報酬率=公社債利回り実績値+β×(全産業(陸運業除く。)平均自己資本利益率-公社債利回り実績値)

  ※ 公社債利回り実績値:国債(10年もの)、地方債、政府保証債の平均の過去5年平均

  ※ β:(TOPIXの変化率と鉄道会社の株価変化率の共分散)÷(TOPIXの変化率の分散)

5 他人資本報酬率=当社の場合、法定債務を除き、債務実績利子率の上場旅客会社4社平均の過去5年平均

ニ なお、認可した上限の範囲内での運賃等の設定・変更、又はその他の料金の設定・変更は、事前の届出で実施できることとなっているが、国土交通大臣は、届出された運賃等が、次の(a)又は(b)に該当すると認めるときは、期限を定めてその運賃等を変更すべきことを命じることができるとされている(鉄道事業法第16条第9項)。

(a)特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものであるとき

(b)他の鉄道運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるものであるとき

 

 

なお、1999年の鉄道事業法改正により総括原価方式に基づく現行の鉄道運賃・料金制度が法定化されて以降、企業会計制度等が変更されたことに加え、高齢化する社会、コロナ禍の影響によるライフスタイルの変化、自然災害の激甚化、カーボンニュートラルやデジタルトランスフォーメーションへの対応等により、鉄道事業を取り巻く環境が大きく変化し、鉄道事業に求められる役割やニーズが多様化・高度化している中、鉄道事業の安定的・持続的な運営等を確保していく観点から、総括原価の算定方法を定める「収入原価算定要領」の見直しが、国土交通省により、2024年4月に行われました。今般の見直し内容は、当社の運賃改定における総括原価の計算やそれに基づく運賃改定の可否等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(整備新幹線について)

(1)整備新幹線の建設計画

整備新幹線は、1970年に制定された全国新幹線鉄道整備法(昭和45年法律第71号)に基づき、1973年に整備計画が決定されており、当社は九州新幹線(鹿児島ルート(福岡市~鹿児島市)、西九州ルート(福岡市~長崎市))について営業主体とされました。

このうち、九州新幹線(鹿児島ルート)については、2004年3月13日に新八代・鹿児島中央間、2011年3月12日に博多・新八代間がそれぞれ開業しました。

九州新幹線(西九州ルート)については、武雄温泉・長崎間(西九州新幹線)がフル規格で建設主体である鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下「鉄道・運輸機構」という。)により工事が進められ、2022年9月23日に武雄温泉駅で博多・武雄温泉間を走行する在来線特急と対面乗換を行うこと(いわゆるリレー方式)により暫定開業しました。

また、新鳥栖・武雄温泉間については、当初、在来線を活用する軌間可変電車を導入する予定であったものの、2017年7月14日の国土交通省の軌間可変技術評価委員会において、軌間可変電車の安全性、経済性について引き続き課題が残っているものと評価されるなど、軌間可変電車の開発状況に鑑み、2018年7月19日に与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム九州新幹線(西九州ルート)検討委員会(以下「検討委員会」という。)により導入が断念されました。その後、2019年8月5日の検討委員会において、「九州新幹線(西九州ルート)の整備のあり方等に関する基本方針」が示され、武雄温泉駅での対面乗換が恒久化することはあってはならず、新鳥栖・武雄温泉間はフル規格(複線)で整備することが適当であることと、今後は、国土交通省、佐賀県、長崎県、当社の間で協議を行い、検討を深めていくべきであり、国土交通省に対し、協議の実施と検討委員会への報告を求めることとされました。以後、これまでに国土交通省と佐賀県との間で複数回の協議がなされ、この間、国土交通省と当社、国土交通省と長崎県との間でも個別に協議が行われましたが、合意には至っておりません。したがって、現時点において、新鳥栖・武雄温泉間の整備方式は決定しておりません。

 

(2)整備新幹線建設の費用負担

整備新幹線は、鉄道・運輸機構が建設を行っており、その費用は国、地方公共団体及びJRが負担することとされていますが、当社の負担については、整備新幹線の営業主体となるJRが支払う貸付料を充てることとされています。

1997年10月の北陸新幹線高崎・長野間の開業に伴い、整備新幹線の営業主体であるJRが支払う貸付料の額の基準が設けられ、現在は独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法施行令(平成27年政令第392号)(以下「施行令」という。)第6条に規定されています。

施行令において、貸付料の額は、当該新幹線開業後の営業主体の受益の程度を勘案し算定された額に、貸付けを受けた鉄道施設に関して鉄道・運輸機構が支払う租税及び鉄道・運輸機構の管理費の合計額を加えた額を基準として、鉄道・運輸機構において定めるものとされています。ここでいう受益は、新幹線が開業した場合の当該新幹線区間及び関連線区区間の収支と、開業しなかったと仮定した場合の並行在来線及び関連線区区間の収支を比較し、前者が後者より改善することにより営業主体が受けると見込まれる利益とされており、具体的には、開業後30年間の需要予測及び収支予測に基づいて算定されることとなります。なお、この受益の程度を勘案し算定された額については、開業後30年間は定額とされています。また、租税及び鉄道・運輸機構管理費相当額については、営業主体の当該新幹線開業後の経費として、受益算定の際に反映されています。

整備新幹線の建設を行う鉄道・運輸機構は建設費の調達を行い、建設した施設を保有することとされています。当社は完成後にこの施設の貸付けを受け、開業後に上記の貸付料を支払うこととなっており、建設期間中における同機構への建設費の直接負担は原則としてないものとされています。

なお、九州新幹線(鹿児島ルート)については、JR会社法改正法及び九州旅客鉄道株式会社の経営安定基金の取崩しに関する省令(平成27年国土交通省令第61号)に基づき、上記貸付料の定額部分につき、2016年4月1日から各区間の開業後30年までに係る貸付料の全額(約2,205億円)を一括して2015年度末に鉄道・運輸機構に支払っております。

また、2022年9月23日に開業した武雄温泉・長崎間(西九州新幹線)について、当該路線の営業主体となる当社が、建設主体である鉄道・運輸機構に支払う新幹線鉄道施設の貸付料の年額は、定額部分5.1億円に租税及び管理費相当額を加えた額となります。

 

(3)並行在来線の扱い

九州新幹線(鹿児島ルート)については、2004年3月の新八代・鹿児島中央間の開業時に、並行在来線である鹿児島本線八代・川内間は経営分離され、「肥薩おれんじ鉄道株式会社」に引き継がれました。

また、西九州新幹線については、長崎本線江北・諫早間は経営分離せず、2022年9月23日の開業時点で上下分離し、当社は、当該開業時点から3年間は一定水準の列車運行のサービスレベルを維持するとともに、当該開業後、23年間運行を維持することを関係6者(当社、佐賀県、長崎県、検討委員会、国土交通省及び鉄道・運輸機構)にて合意しており、2022年9月の武雄温泉・長崎間(西九州新幹線)の開業時に、当該合意に基づいて、長崎本線江北・諫早間の鉄道施設の一部を「一般社団法人佐賀・長崎鉄道管理センター」に譲渡し、上下分離方式へ移行しております。

 

(4)整備新幹線建設に関する当社の考え方

(2)記載の貸付料のうち、受益の程度を勘案して算定される額は、実際の収益に関わらず定額を支払うこととされているため、収支が予測を下回る場合、当社の鉄道事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社は、2019年3月27日の検討委員会において、リレー方式による運営が長期化又は固定化することは、地域振興効果が極めて限定的になること等から、到底受け入れられない旨の表明をしており、少しでも早期に全線開業できるよう要望しているところです。

さらに、2019年4月12日に国土交通省より鉄道・運輸機構に対して、工事予算の増額等を主旨とする工事実施計画(武雄温泉・長崎間)の変更認可がなされました。なお、2018年11月28日の与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームにおいて、当社は、整備新幹線の建設費に応じて貸付料を引上げることについて、整備新幹線の基本的なスキームを大幅に逸脱するものであり受け入れられるものではない旨の表明をしております。

また、2021年6月14日に検討委員会より、九州新幹線(西九州ルート)について、新鳥栖・武雄温泉間の在来線については、JR九州が運行を維持することが不可欠である等の検討状況が示されました。なお当社は、経営上極めて重要な課題となる並行在来線の取扱いについては、

・在来線の利便性の問題は、地域の皆さまにとって重要な課題である

・必ずしも経営分離を前提とせず、佐賀県等から具体的な課題認識のご意見を拝聴しながら、真摯に議論を

 深めたい

・佐賀県と国土交通省の「幅広い協議」において、「フル規格」という選択肢にある程度の目途がつきそう

 な段階になれば、議論を深めたい

との考えを、国土交通省との協議において示しております。

 

14 不動産・ホテルグループに関する事項

当社グループの不動産・ホテルグループにおいては、収益化まで長期にわたるプロジェクトの各過程で多額の投資を行います。そして、建設資材価格及び人件費の上昇による建設費の増加、金利水準並びに金融政策をはじめとする当社グループが制御できないさまざまな外部要因により、完成に要する時間と投資額等が増加し、想定していた収益を生まないことがあります。

不動産販売業においては、販売価格の低下や、完成した販売用不動産を長期にわたって保有せざるを得ない場合に評価損を認識することがあります。不動産賃貸業においては、大型テナントの喪失、空室率の上昇や賃料の低下が生じる場合があり、駅ビル商業施設のテナント売上が減少した場合は、賃料収入の売上連動部分が減少します。ホテル業においては、景気動向の影響を受けやすいため、景気低迷による企業活動の縮小や個人消費の減退が続いた場合、過当な価格競争による売上減少、また、これに伴う事業収支の悪化により、有形固定資産の減損損失を計上する可能性があります。

また、当社グループは、プロジェクトの完成後にも、テナント、居住者その他の利用者に生じた不測の損失、損害、被害の責任や、建築瑕疵の補償費用の負担を負うことがあります。

このような事象が生じた場合、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

1 経営成績等の概要

(1)経営成績

当連結会計年度における我が国の経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限の解除に伴う社会経済活動の正常化が進み、個人消費を中心に緩やかな回復が続いてきました。しかしながら、物価の上昇や金融資本市場の変動等の影響により、今後の経済の先行きには注意する必要があるものと考えられます。

このような状況のなか、当社グループは「JR九州グループ中期経営計画2022-2024」のもと、3つの重点戦略として掲げる「事業構造改革の完遂」、「豊かなまちづくりモデルの創造」及び「新たな貢献領域での事業展開」を推進するとともに、重点戦略の実行を支える「戦略実行・実現を担う人づくり」及び「グループ一体で戦略を推進する基盤づくり」に注力してまいりました。

また、「安全とサービス」を基盤とし、西九州新幹線の開業や福岡市地下鉄七隈線の博多延伸などを契機とした、沿線でのまちづくりを着実に進めるとともに、グループの未来をつくる「人、モノ、新技術」への投資を積極果敢に行い、成長軌道への復帰を果たすべく取り組みました。

この結果、当連結会計年度における営業収益は前期比9.7%増の4,204億2百万円となりました。営業利益は前期比37.2%増の470億94百万円、EBITDAは前期比25.4%増の800億94百万円、経常利益は前期比37.1%増の489億36百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比23.4%増の384億45百万円となりました。

当社グループの業績をセグメントごとに示すと次のとおりです。

(単位:百万円

セグメントの名称

営業収益

営業利益

EBITDA(注2)

当連結

会計年度

前期比

増減

前期比

増減率

当連結

会計年度

前期比

増減

前期比

増減率

当連結

会計年度

前期比

増減

前期比

増減率

運輸サービス

163,785

25,466

18.4%

10,396

7,873

312.1%

22,351

9,212

70.1%

不動産・ホテル

133,159

10,048

8.2%

24,803

2,696

12.2%

40,833

4,548

12.5%

 不動産賃貸業

70,764

8,154

13.0%

15,882

989

6.6%

29,082

2,361

8.8%

 不動産販売業

37,137

△6,452

△14.8%

5,241

△1,011

△16.2%

5,263

△1,009

△16.1%

 ホテル業

25,258

8,346

49.4%

3,680

2,718

282.7%

6,488

3,197

97.1%

流通・外食

61,755

6,974

12.7%

3,206

1,795

127.3%

4,518

1,793

65.8%

建設

90,092

1,721

1.9%

5,970

527

9.7%

7,033

527

8.1%

ビジネスサービス

77,999

4,511

6.1%

3,875

389

11.2%

6,895

648

10.4%

合計

526,792

48,723

10.2%

48,253

13,282

38.0%

81,632

16,731

25.8%

調整額(注1)

△106,390

△11,563

△1,158

△511

△1,537

△528

連結数値

420,402

37,159

9.7%

47,094

12,771

37.2%

80,094

16,203

25.4%

(注)1 調整額は、セグメント間取引消去によるものです。

2 連結EBITDA=営業利益+減価償却費(セグメント間取引消去後、転貸を目的としたリース資産に係る減価償却費除く)、セグメント別EBITDA=各セグメント営業利益+各セグメント減価償却費(セグメント間取引消去前、転貸を目的としたリース資産に係る減価償却費除く)

 

① 運輸サービスグループ

鉄道事業においては、安全とサービスを基盤とした事業運営を行いながら、将来の技術革新や新たな価値創造を見据えた「未来鉄道プロジェクト」を推進しました。

営業面では、西九州新幹線の開業1周年を地域と一体となって盛り上げるため、昨年9月に開業1周年記念イベント~西九州が真っ赤に染まる日~「GO WEST」プロジェクトを展開しました。そのほか、在来線特急料金の見直しやJR-KYUSHU RAIL PASSの価格改定を実施しました。

また、デジタル技術の活用による安全性・効率性の向上や需要に応じた列車設定、持続可能なモビリティサービスのモデル構築に努めました。鉄道事業のオペレーション・メンテナンス改革として、本年3月には香椎線(全線)でGOA2.5自動運転(動力車操縦運転免許を有しない係員が必要な教育訓練を受けた上で行う自動運転)を開始したほか、同じく本年3月には鹿児島本線(折尾~二日市間)において、運転士の操縦を支援する「自動列車運転支援装置」を使用した列車の実証試験を開始しました。

新たなモビリティサービス(MaaS)の分野においては、各地域の交通事業者、自治体、観光団体等と連携し、MaaSアプリ「my route」を活用したボーダレスな交通サービスの実現に向けた取り組みを進め、九州全県でのサービスの提供を開始しました。

この結果、営業収益は前期比18.4%増の1,637億85百万円、営業利益は前期比312.1%増の103億96百万円、EBITDAは前期比70.1%増の223億51百万円となりました。

 

② 不動産・ホテルグループ

不動産賃貸業においては、JR博多シティを中心に駅ビルテナント売上高が緩やかに回復したほか、昨年11月には西九州エリアのまちづくりの核となる「JR長崎駅ビル」が開業し、西九州エリアの賑わい創出に貢献しました。また、福岡エリアにおいて、本年1月に株式会社桜十字と共同で開発を行った「りすのこスクエア」を開業し、本年3月には当社を代表企業とする「コネクトスクエア博多」を開業したほか、オフィスビルや物流施設の取得など積極的に成長投資を実施しました。

不動産販売業においては、賃貸マンションを売却したほか、分譲マンション「MJR深川住吉」や「MJRザ・ガーデン香椎」等の引き渡しによる売上を計上しました。また、分譲マンション「MJR千早ミッドスクエア」や「MJR博多ザ・レジデンス」、「MJR熊本ゲートタワー」等の販売に取り組みました。

ホテル業においては、昨年10月に「嬉野八十八(うれしのやどや)」を開業し、本年1月には「長崎マリオットホテル」を開業しました。また、国内旅行需要やインバウンド需要の高まりを受け、着実な需要の取り込みを図りました。

この結果、営業収益は前期比8.2%増の1,331億59百万円、営業利益は前期比12.2%増の248億3百万円、EBITDAは前期比12.5%増の408億33百万円となりました。

 

③ 流通・外食グループ

小売業においては、コンビニエンスストア店舗の新規出店やリニューアルによる競争力強化等に取り組みました。飲食業においては、フランチャイズ店舗の新規出店による収入拡大を図るとともに、不採算店舗の閉店など経営の効率化も実施しました。また、昨年6月には、「黒糖ドーナツ棒」シリーズ等の菓子製造・販売を主業に、地域に根ざした事業運営を行っている株式会社フジバンビを子会社化しました。

この結果、営業収益は前期比12.7%増の617億55百万円、営業利益は前期比127.3%増の32億6百万円、EBITDAは前期比65.8%増の45億18百万円となりました。

 

④ 建設グループ

建設業においては、鉄道に係る土木・軌道・建築工事やメンテナンス事業、車両機械設備工事業を通して鉄道の安全・安定輸送の確保に取り組みました。また、昨年7月に建設グループ5社の中間持株会社としてJR九州建設グループホールディングス株式会社を設立し、建設グループ各社が連携して施工可能な案件の受注検討を進めているほか、採用活動の支援や原価マネジメントの深度化に取り組みました。

この結果、営業収益は前期比1.9%増の900億92百万円、営業利益は前期比9.7%増の59億70百万円、EBITDAは前期比8.1%増の70億33百万円となりました。

 

⑤ ビジネスサービスグループ

建設機械販売・レンタル事業においては、積極的な営業活動を行い収益の確保に努めました。また、広告業を中心に新規受注の獲得やコスト削減に取り組みました。そのほか、保険代理店としての強固な経営基盤の確立、収益拡大へ向けた高度な専業化、より機動力のある組織構築を図ることを目的に、当社の損害保険代理業等を会社分割し、子会社であるJR九州保険コンサルティング株式会社へ事業承継しました。

この結果、営業収益は前期比6.1%増の779億99百万円、営業利益は前期比11.2%増の38億75百万円、EBITDAは前期比10.4%増の68億95百万円となりました。

 

(注)セグメント別のEBITDAは、各セグメントにおける営業利益に減価償却費を加えた数値(セグメント間取引消去前、転貸を目的としたリース資産に係る減価償却費除く)であります。

 

 

(参考)当社の鉄道事業の営業実績

① 輸送実績

区分

単位

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

 

前年同期比(%)

営業日数

366

100.3

営業キロ

新幹線

キロ

358.5

100.0

在来線

1,984.1

100.0

2,342.6

100.0

客車走行キロ

新幹線

千キロ

64,814

105.8

在来線

196,066

96.8

260,880

98.9

輸送人員

定期

千人

205,273

104.3

定期外

113,605

113.8

318,878

107.5

輸送人キロ

新幹線

定期

千人キロ

218,894

109.5

定期外

1,722,861

127.4

1,941,755

125.1

在来線

幹線

定期

3,184,590

102.7

定期外

2,470,565

118.0

5,655,156

108.8

地方

交通線

定期

472,737

104.1

定期外

284,812

128.6

757,549

112.1

定期

3,657,327

102.8

定期外

2,755,378

119.0

6,412,705

109.2

合計

定期

3,876,222

103.2

定期外

4,478,239

122.1

8,354,461

112.5

乗車効率

新幹線

45.3

118.3

在来線

30.0

112.5

30.7

113.7

(注) 乗車効率は次の方法により算出されております。

乗車効率

輸送人キロ

×

100

客車走行キロ × 客車平均定員

 

② 収入実績

区分

単位

当事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

 

前年同期比(%)

旅客運輸収入

新幹線

定期

百万円

2,990

109.4

定期外

54,552

132.1

57,542

130.7

在来線

定期

27,277

103.5

定期外

60,265

118.1

87,542

113.1

合計

定期

30,267

104.0

定期外

114,818

124.3

145,085

119.5

荷物収入

8

133.5

合計

145,094

119.5

鉄道線路使用料収入

444

104.0

運輸雑収

14,957

102.2

収入合計

160,497

117.6

 

 

(2)キャッシュ・フロー

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、税金等調整前当期純利益が増加したこと等により前連結会計年度に比べ269億47百万円増加し、890億31百万円となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果支出した資金は、固定資産の取得支出が増加したこと等により前連結会計年度に比べ143億12百万円増加し、1,118億93百万円となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果得られた資金は、コマーシャル・ペーパーの発行による収入が増加したこと等により前連結会計年度に比べ232億88百万円増加し、322億52百万円となりました。

 

以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ96億23百万円増加し、619億7百万円となりました。

 

 

(3)生産、受注及び販売の実績

当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また人的サービスの提供を主たる業務とする場合も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で表すことはしておりません。

このため、生産、受注及び販売の実績については、「1 経営成績等の概要」におけるセグメント業績に関連付けて示しております。

 

 

2 経営者の視点による経営成績等に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。

 

(1)重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成に当たって採用している重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しているため省略しております。また、当社グループの連結財務諸表の作成につきましては、決算日における資産、負債及び報告期間における損益に影響を与える事項につき、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づき、合理的と考えられる範囲で継続的に見積り及び判断を行っております。ただし、実際の結果は、見積り特有の不確実性により異なる場合があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた見積りや仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

(2)経営成績の分析

① 営業収益

営業収益は、鉄道旅客運輸収入の増、ホテル業や小売業の収入増などにより、前連結会計年度に比べ9.7%増の4,204億2百万円となり、3期連続の増収となりました。

 

運輸サービスセグメントは、前連結会計年度に比べ18.4%増加し、1,637億85百万円となりました。これは、当社の鉄道旅客運輸収入が、前連結会計年度に比べ19.5%増の1,450億94百万円となったこと等によるものです。

新幹線については、輸送人キロは前連結会計年度に比べ25.1%増の19億41百万人キロとなりました。定期収入は前連結会計年度に比べ9.4%増の29億90百万円、定期外収入は前連結会計年度に比べ32.1%増の545億52百万円となり、全体では前連結会計年度に比べ30.7%増の575億42百万円となりました。

在来線については、輸送人キロは前連結会計年度に比べ9.2%増の64億12百万人キロとなりました。定期収入は前連結会計年度に比べ3.5%増の272億77百万円、定期外収入は前連結会計年度に比べ18.1%増の602億65百万円、全体では前連結会計年度に比べ13.1%増の875億42百万円となりました。

 

不動産・ホテルセグメントは、前連結会計年度に比べ8.2%増加し、1,331億59百万円となりました。これは、ホテル業の収入増などによるものです。

 

流通・外食セグメントは、前連結会計年度に比べ12.7%増加し、617億55百万円となりました。これは、小売業の収入増などによるものです。

 

建設セグメントは、前連結会計年度に比べ1.9%増加し、900億92百万円となりました。これは、工事の増などによるものです。

 

ビジネスサービスセグメントは、前連結会計年度に比べ6.1%増加し、779億99百万円となりました。これは、受注の増などによるものです。

 

② 営業費

営業費は、前連結会計年度に比べ7.0%増加し、3,733億7百万円となりました。

運輸業等営業費及び売上原価は、前連結会計年度に比べ4.0%増加し、2,551億3百万円となりました。これは、修繕費の増等によるものです。

 販売費及び一般管理費については、前連結会計年度に比べ14.0%増加し、1,182億4百万円となりました。これは、ホテルの開業に伴う経費の増等によるものです。

 

③ 営業利益

営業利益は、前連結会計年度に比べ37.2%増加し、470億94百万円となりました。

なお、営業収益に対する営業利益の比率は、前連結会計年度の9.0%に対し、当連結会計年度は11.2%となりました。

 

④ 営業外損益

営業外収益は、前連結会計年度に比べ14.6%増加し、48億43百万円となりました。これは、持分法による投資利益の増等によるものです。

営業外費用は、前連結会計年度に比べ5.4%増加し、30億2百万円となりました。これは支払利息の増等によるものです。

 

⑤ 経常利益

経常利益は、前連結会計年度に比べ37.1%増加し、489億36百万円となりました。

なお、営業収益に対する経常利益の比率は、前連結会計年度の9.3%に対し、当連結会計年度は11.6%となりました。

 

⑥ 特別損益

特別利益は、前連結会計年度に比べ1.6%増加し、183億65百万円となりました。これは、関係会社株式売却益等によるものです。

特別損失は、前連結会計年度に比べ40.4%増加し、189億24百万円となりました。これは、災害損失引当金繰入等によるものです。

 

⑦ 親会社株主に帰属する当期純利益

親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ23.4%増加し、384億45百万円となりました。

 

(3)財政状態の分析

当連結会計年度末の資産の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ9.3%増加し、1兆891億70百万円となりました。流動資産は、売掛金の増等により前連結会計年度末に比べ12.4%増加し、2,215億23百万円となりました。固定資産は、有形固定資産の増等により前連結会計年度末に比べ8.5%増加し、8,676億46百万円となりました。

一方、負債の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ9.7%増加し、6,468億82百万円となりました。流動負債は、コマーシャル・ペーパーの増等により前連結会計年度末に比べ14.8%増加し、2,242億66百万円となりました。固定負債は、社債の増等により前連結会計年度末に比べ7.1%増加し、4,226億16百万円となりました。

また、純資産の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ8.7%増加し、4,422億87百万円となりました。これは、利益剰余金の増等によるものです。

 

(4)資本の財源及び資金の流動性

① キャッシュ・フロー

現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ96億23百万円増加し、619億7百万円となりました。

営業活動の結果得られた資金は税金等調整前当期純利益が増加したこと等により前連結会計年度に比べ269億47百万円増加し、890億31百万円となりました

投資活動の結果支出した資金は、固定資産の取得支出が増加したこと等により前連結会計年度に比べ143億12百万円増加し1,118億93百万円となりました

財務活動の結果得られた資金は、コマーシャル・ペーパーの発行による収入が増加したこと等により前連結会計年度に比べ232億88百万円増加し322億52百万円となりました

 

② 重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源

「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備の新設等」に記載のとおりです。

 

③ 財務政策

資金調達については、財務健全性を維持しつつ主として借入余力を活用した投資計画や既存債務の返済資金のうち、当社グループのキャッシュ・フローで不足する部分を調達しております。その調達手段は、主に社債の発行や金融機関からの借入等、市場や金利の動向を総合的に勘案しながら決定しております。

当社グループはキャッシュマネージメントサービス(CMS)を導入しており、CMS参加各社の余裕資金の運用と資金調達の管理を一括して行うことで、資金効率の向上に努めております。

当社は、当連結会計年度に国内において償還期限を2028年とする無担保普通社債及び償還期限を2033年とする2本のグリーンボンドを総額300億円発行いたしました。これらの社債は、株式会社格付投資情報センターよりAA-の格付を取得しております。

当社グループは、資金の流動性確保のため、主要な取引銀行に当座借越枠を設定しております。なお、当連結会計年度末における当座借越残高はありません。また、コマーシャル・ペーパーについて、当社は株式会社格付投資情報センターよりa-1+の短期(CP)格付を取得しております。なお、当連結会計年度末におけるコマーシャル・ペーパーの発行残高は400億円であります。

 

(5)経営者の問題認識と今後の方針について

経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照下さい。

 

5【経営上の重要な契約等】

 経営上の重要な契約等は以下のとおりです。

契約会社名

相手先

契約内容

当社

北海道旅客鉄道㈱

東日本旅客鉄道㈱

東海旅客鉄道㈱

西日本旅客鉄道㈱

四国旅客鉄道㈱

乗車券等の相互発売等旅客営業に係る取扱い

会社間の運賃及び料金の収入区分並びに収入清算の取扱い

駅業務並びに車両及び鉄道施設の保守等の業務の受委託

会社間の経費清算の取扱い 等

当社

日本貨物鉄道㈱

貨物会社が当社の鉄道線路を使用する場合の取扱い

駅業務並びに車両及び鉄道施設の保守等の業務の受委託

会社間の経費清算の取扱い 等

当社

鉄道情報システム㈱

旅客会社6社共同で列車の座席指定券等の発売を行うためのオンラインシステム(マルスシステム)の使用

各旅客会社間の収入清算等の計算業務の委託 等

当社

(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構

九州新幹線(博多・鹿児島中央間)及び西九州新幹線(武雄温泉・長崎間)の鉄道施設の貸付け及び貸付け後の鉄道施設の管理 等

 

6【研究開発活動】

当社グループにおいては、運輸サービスグループを中心に、更なる安全性の向上と低コスト体制の構築、お客さま満足の向上に資するための研究開発活動を行っております。

当連結会計年度における研究開発活動の総額は、425百万円です。

 

(1)運輸サービスグループ

当社は、鉄道固有の技術的な問題点の解明や新技術の開発を中心とした研究開発を、公益財団法人鉄道総合技術研究所に委託しており、「研究開発等に関する協定」に基づき、当連結会計年度には、425百万円の負担金を支払っております。

 

①2024年3月期 公益財団法人鉄道総合技術研究所 研究開発指定課題(主要項目)

・公衆通信回線利用の統合型列車制御システムの開発

・列車前方映像を用いた沿線設備の劣化判定手法の開発

・車上測定に基づく著大な通り変位に対する安定性評価法の開発

・車両駆動用蓄電池の高頻度通電への耐久性に関する研究

②鉄道事業における技術的な課題解決の取組み

・鹿児島本線における自動列車運転装置の実証運転開始

 

(2)不動産・ホテルグループ、流通・外食グループ、建設グループ、ビジネスサービスグループ

特に記載する事項はありません。