第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

当中間連結会計期間において、新たに発生した事業等のリスク及び前事業年度の有価証券報告書より重要な変更があった事業等のリスクについては、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において当社グループが判断したものであります。

また、以下の見出しに付された項目番号は、前事業年度の有価証券報告書における「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 事業等のリスク」の項目番号に対応したものです。

 

新たに発生した事業等のリスク

15 JR九州高速船株式会社における安全確保に関する重大な問題の発生に関する事項

 

当社連結子会社のJR九州高速船株式会社(以下、「JR九州高速船」という)において、2024年8月6日に国土交通省によるJR九州高速船に対する監査が実施された結果、JR九州高速船が運航する船体(以下、「本件船体」という)への浸水が認められたにも関わらず、国土交通省への報告を怠ったほか、浸水を検知しにくくなるよう本件船体に備わる浸水を検知する警報センサーの位置をずらしていた疑い等、関係法令及び安全管理規程に違反し、安全確保の体制に重大な疑義を生じさせる事案(以下、「本件事案」という)が判明いたしました。本件事案が判明したことを受け、JR九州高速船は、2024年8月13日より船舶の運航を中止しております。

JR九州高速船は、本件事案について国土交通省より海上運送法に基づく改善措置命令を受け、2024年10月31日に改善報告を行いました。

また、当社は、独立した立場から本件事案に関連する事実関係の解明と再発防止策の策定に取り組むべく第三者委員会を設置し、当該委員会からの報告書を受領する予定です。当社グループは、第三者委員会の調査に協力し、原因を追究するとともに、再発防止に取り組むことで、安全管理体制を再構築し、お客さま並びに関係者の皆さまの信頼回復に努めてまいります。

なお、今後は信用低下による営業活動への影響等がある場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

前事業年度の有価証券報告書より重要な変更があった事業等のリスク

13 運輸サービスグループに関する事項

 

(法的規制について)

(2)運賃及び料金の設定又は変更

当社が鉄道事業における運賃及び料金を設定又は変更する際には、鉄道事業法に規定された必要な手続きを経る必要があり、何らかの理由により当該手続きに基づいた運賃及び料金の設定又は変更を機動的に行えない場合には、当社の収益に影響を与える可能性があります。手続きの詳細については以下のとおりです。

① 運賃及び料金の認可の仕組みと手続き

鉄道運送事業者が旅客の運賃及び新幹線特急料金(以下「運賃等」という。)の上限を定め、又は変更しようとする場合、国土交通大臣の認可を受けなければならないことが法定されております(鉄道事業法第16条第1項)。

また、その上限の範囲内での運賃等の設定・変更及び在来線特急料金等その他の料金の設定・変更については、事前の届出で実施できることとなっております(鉄道事業法第16条第3項及び第8項)。

鉄道運送事業者の申請を受けて国土交通大臣が認可するまでの手続きは、過去の例によれば概ね次のようになっております。

 

0102010_001.png

(注)1 鉄道事業法第64条の2に基づく手続きであります。また、国土交通省設置法第23条では、運輸審議会が審議の過程で必要があると認めるとき又は国土交通大臣の指示等があったときに公聴会が開かれることが定められております。

2 鉄道営業法第3条第2項で、運賃その他の運送条件の加重をなす場合に7日以上の公告をしなければならないことが定められております。

 

なお、各旅客会社における独自の運賃改定の実施の妨げとなるものではありませんが、国鉄改革の実施に際し利用者の利便の確保を図るため、旅客会社では、現在、2社以上の旅客会社間をまたがって利用する旅客及び荷物に対する運賃及び料金に関し、旅客会社間の契約により通算できる制度とし、また、運賃について、遠距離逓減制を加味したものとしております。

 

② 運賃改定に対する当社の考え方

イ 当社では、1987年4月の会社発足以降、消費税等を転嫁するための運賃改定(1989年4月、1997年4月、2014年4月及び2019年10月)を除くと、1996年1月10日に初めての運賃改定(平均7.8%)を実施いたしました。また、2025年4月1日を実施日とする運賃改定(平均15.0%)の認可申請を2024年7月19日に行い、2024年9月30日現在、運輸審議会において、当社の運賃改定についての審議が行われています。今後も総合的な経営判断に立ち、適正な利潤を確保し得るような運賃改定を適時実施する必要があると考えております。

ロ 事業経営に当たっては、まず収入の確保と合理化努力を進め効率的な経営に努めますが、適正利潤についてはこのような努力を前提とした上で、将来の設備投資や財務体質の強化等を可能なものとする水準にあることが是非とも必要であると考えております。

ハ 鉄道事業の資本費用に大きな影響を与える設備投資については、安全・安定輸送を前提とし、案件ごとに必要性等を勘案しつつ実施しております。

なお、当社としましては、事業者の明確な経営責任の下で主体的に設備投資に取り組むことが必要であると認識しているところであります。

 

③ 国土交通省の考え方

当社の運賃改定に関し、国土交通省からは、次のような考え方が示されております。

イ 当社を含む鉄道事業の運賃の上限の改定に当たっては、鉄道事業者の申請を受けて、国土交通大臣が、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの(以下「総括原価」という。)を超えないものかどうかを審査して認可することとなっている(鉄道事業法第16条第2項)。

なお、原価計算期間は3年間とする。

ロ 総括原価を算定するに当たっては、他の事業を兼業している場合であっても鉄道事業部門のみを対象として、所要の株主配当を含めた適正な利潤を含む適正な原価を算定することとなっている。また、通勤・通学輸送の混雑等を改善するための輸送力の増強、旅客サービス向上等に関する設備投資計画の提出を求め、これについて審査を行い、必要な資本費用については原価算入を認めているところである。

ハ 総括原価を算定する方法としては、当該事業に投下される資本に対して、機会費用の考え方による公正・妥当な報酬を与えることにより資本費用(支払利息、配当金等)額を推定するレートベース方式を用いる方針であり、総括原価の具体的な算定は以下によることとしている。

総括原価=営業費等(注1)+事業報酬

・事業報酬=事業報酬対象資産(レートベース)×事業報酬率

・事業報酬対象資産=鉄道事業固定資産+建設仮勘定+繰延資産+運転資本(注2)

・事業報酬率=自己資本比率(注3)×自己資本報酬率(注4)+他人資本比率(注3)×他人資本報酬率(注5)

(注)1 鉄道事業者間で比較可能な費用について、経営効率化を推進するため各事業者間の間接的な競争を促す方式(ヤードスティック方式)により、比較結果を毎事業年度終了後に公表するとともに、原価の算定はこれを基に行うこととしている。

2 運転資本=営業費及び貯蔵品の一部

3 自己資本比率30%、他人資本比率70%

4 自己資本報酬率=公社債利回り実績値+β×(全産業(陸運業除く。)平均自己資本利益率-公社債利回り実績値)

※ 公社債利回り実績値:国債(10年もの)、地方債、政府保証債の平均の過去5年平均

※ β:(TOPIXの変化率と鉄道会社の株価変化率の共分散)÷(TOPIXの変化率の分散)

5 他人資本報酬率=当社の場合、法定債務を除き、債務実績利子率の上場旅客会社4社平均の過去5年平均

ニ なお、認可した上限の範囲内での運賃等の設定・変更、又はその他の料金の設定・変更は、事前の届出で実施できることとなっているが、国土交通大臣は、届出された運賃等が、次の(a)又は(b)に該当すると認めるときは、期限を定めてその運賃等を変更すべきことを命じることができるとされている(鉄道事業法第16条第9項)。

(a)特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものであるとき

(b)他の鉄道運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるものであるとき

なお、1999年の鉄道事業法改正により総括原価方式に基づく現行の鉄道運賃・料金制度が法定化されて以降、企業会計制度等が変更されたことに加え、高齢化する社会、コロナ禍の影響によるライフスタイルの変化、自然災害の激甚化、カーボンニュートラルやデジタルトランスフォーメーションへの対応等により、鉄道事業を取り巻く環境が大きく変化し、鉄道事業に求められる役割やニーズが多様化・高度化している中、鉄道事業の安定的・持続的な運営等を確保していく観点から、総括原価の算定方法を定める「収入原価算定要領」の見直しが、国土交通省により、2024年4月に行われました。今後も「収入原価算定要領」の見直しが行われた場合には、当社の運賃改定における総括原価の計算やそれに基づく運賃改定の可否等に影響を及ぼす可能性があります。

 

2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において判断したものであります。

 

(1)業績の状況

当中間連結会計期間における我が国の経済は、個人消費は一部に足踏みが残るものの、持ち直しの動きがみられ、雇用・所得環境が改善するなど、緩やかに回復してきました。

しかしながら、物価の上昇や金融資本市場の変動等の影響により、今後の経済の先行きには注意する必要があると考えられます。

このような状況のなか、当社グループは「JR九州グループ中期経営計画2022-2024」の総仕上げに向けて、3つの重点戦略として掲げる「事業構造改革の完遂」、「豊かなまちづくりモデルの創造」及び「新たな貢献領域での事業展開」を推進するとともに、重点戦略の実行を支える「戦略実行・実現を担う人づくり」及び「グループ一体で戦略を推進する基盤づくり」に注力してまいりました。

この結果、営業収益は前年同期比9.3%増の2,084億12百万円、営業利益は前年同期比10.1%増の295億35百万円、EBITDAは前年同期比12.3%増の476億3百万円、経常利益は前年同期比5.4%増の295億77百万円、親会社株主に帰属する中間純利益は前年同期比19.1%減の226億49百万円となりました。

 

(注) 当中間連結会計期間におけるEBITDAは、営業利益に減価償却費を加えた数値(転貸を目的としたリース資産に係る減価償却費を除く)であります。

 

当社グループの業績をセグメントごとに示すと次のとおりです。

(単位:百万円)

セグメントの名称

営業収益

営業利益

EBITDA(注2)

当中間

連結会計期間

前年同期比

増減

前年同期比

増減率

当中間

連結会計期間

前年同期比

増減

前年同期比

増減率

当中間

連結会計期間

前年同期比

増減

前年同期比

増減率

運輸サービス

82,171

2,826

3.6%

12,288

163

1.3%

18,752

823

4.6%

不動産・ホテル

61,167

5,921

10.7%

13,158

1,260

10.6%

22,081

2,747

14.2%

 不動産賃貸業

37,666

4,122

12.3%

9,238

630

7.3%

16,457

1,637

11.1%

 不動産販売業

8,473

△2,161

△20.3%

893

△613

△40.7%

901

△615

△40.6%

 ホテル業

15,027

3,959

35.8%

3,026

1,243

69.8%

4,722

1,725

57.6%

流通・外食

32,427

2,485

8.3%

1,874

195

11.7%

2,575

291

12.8%

建設

36,573

2,658

7.8%

239

610

848

735

648.5%

ビジネスサービス

36,681

2,196

6.4%

1,992

372

23.0%

3,559

497

16.2%

合計

249,021

16,086

6.9%

29,554

2,603

9.7%

47,817

5,094

11.9%

調整額(注1)

△40,609

1,593

△18

115

△213

102

連結数値

208,412

17,680

9.3%

29,535

2,718

10.1%

47,603

5,197

12.3%

(注)1 調整額は、セグメント間取引消去によるものです。

2 連結EBITDA=営業利益+減価償却費(セグメント間取引消去後、転貸を目的としたリース資産に係る減価償却費除く)、セグメント別EBITDA=各セグメント営業利益+各セグメント減価償却費(セグメント間取引消去前、転貸を目的としたリース資産に係る減価償却費除く)

 

① 運輸サービスグループ

鉄道事業においては、輸送人員が増加したことに伴い、鉄道旅客運輸収入が増加した結果、営業収益は増収、営業利益も増益となりました。

 

 

② 不動産・ホテルグループ

不動産賃貸業においては、2023年11月に開業のアミュプラザ長崎新館をはじめとした売上高の増加などにより営業収益は増収、営業利益は増益となりました。不動産販売業においては、2023年4月に保有資産を売却したことによる反動減などにより営業収益は減収、営業利益は減益となりました。ホテル業においては、都市圏を中心にADRや稼働率が上昇し営業収益は増収、営業利益は増益となりました。

 

 

③ 流通・外食グループ

新店の開業等に伴い、外食業の売上が増加したことで営業収益は増収、営業利益は増益となりました。

 

 

④ 建設グループ

北海道新幹線や北陸新幹線などの新幹線関連工事が増加したことにより営業収益は増収、営業利益は増益となりました。

 

 

⑤ ビジネスサービスグループ

受注が堅調に推移したことなどにより営業収益は増収、営業利益は増益となりました。

 

 

(参考)当社の鉄道事業の営業実績

①輸送実績

区分

単位

第38期中間会計期間

(自 2024年4月1日

至 2024年9月30日)

 

前年同期比(%)

営業日数

183

100.0

営業キロ

新幹線

キロ

358.5

100.0

在来線

1,984.1

100.0

2,342.6

100.0

輸送人員

定期

千人

109,569

102.4

定期外

56,969

103.6

166,539

102.8

輸送人キロ

 

新幹線

定期

千人キロ

118,785

105.8

定期外

847,281

99.0

966,066

99.8

在来線

幹線

定期

1,681,642

100.7

定期外

1,245,130

103.4

2,926,772

101.9

地方

交通線

定期

257,537

102.3

定期外

139,679

105.4

397,216

103.4

定期

1,939,179

101.0

定期外

1,384,809

103.6

3,323,988

102.1

合計

定期

2,057,964

101.2

定期外

2,232,090

101.8

4,290,055

101.5

 

②収入実績

区分

単位

第38期中間会計期間

(自 2024年4月1日

至 2024年9月30日)

 

前年同期比(%)

旅客運輸収入

新幹線

定期

百万円

1,612

106.7

定期外

27,633

104.2

29,245

104.3

在来線

定期

14,232

102.0

定期外

29,826

105.0

44,059

104.0

合計

定期

15,844

102.5

定期外

57,459

104.6

73,304

104.1

荷物収入

3

121.8

合計

73,308

104.1

鉄道線路使用料収入

219

97.1

運輸雑収

7,427

101.6

収入合計

80,956

103.9

 

(2)財政状態の分析

当中間連結会計期間末の資産の部の合計額は、1兆772億58百万円となりました。これは主に、受取手形、売掛金及び契約資産の減少によるものです。

一方、負債の部の合計額は、6,316億43百万円となりました。これは主に、コマーシャル・ペーパーの減少によるものです。

また、純資産の部の合計額は、4,456億15百万円となりました。これは主に利益剰余金の増加によるものです。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、売上債権の回収による収入が増加したこと等により前年同期に比べ46億96百万円増加し、548億14百万円となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果支出した資金は、関係会社株式の売却による収入が減少したこと等により前年同期に比べ168億28百万円増加し、537億7百万円となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果支出した資金は、コマーシャル・ペーパーの償還により支出が増加したこと等により前年同期に比べ118億13百万円増加し、159億93百万円となりました。

 

なお、現金及び現金同等物の当中間連結会計期間末残高は、前連結会計年度末に比べ133億94百万円減少し、485億12百万円となりました。

 

(4)研究開発活動

当中間連結会計期間におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、2億46百万円であります。

なお、当中間連結会計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

3【経営上の重要な契約等】

当中間連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。