第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針及び経営環境

当社グループは、経営理念として「わたしたちの夢」、「使命」、「おこない」を掲げるとともに、経営理念から導出したJR九州グループが常に考えるべきことであるマテリアリティを設定しております。

(経営理念)

 わたしたちの夢:「九州の元気を、世界へ」

魅力あふれるまちづくりを通じて、九州をもっとにぎやかに、もっとおもしろく。

九州に住む人、九州を訪れる人、そしてJR九州グループをご利用の世界中の人を元気に

していきます。

 使命:「安全を最優先し、お客さま視点で考え、安心で快適な毎日と わくわくするときをつくる。」

 おこない:「誠実」 常に誠実さを貫き、自分に、そして社会に誇れる仕事をする。

   「共創」 人や地域、多様な仲間と未来につながる価値を共創する。

       「挑戦」 柔軟な発想を持ち、成長のための挑戦を続ける。

 

(マテリアリティ)

 ①事業

  「最大の使命である安全の創造とお客さま満足の追求」

   ・私たちが営むあらゆる事業は、安全であるというお客さまからの信頼の上に成り立っています

   ・変化する世界の中でも、安心で快適な毎日をつくり出すため、誠実に手間を惜しまず安全を最優先し、

    お客さまにとって価値のある商品やサービスを提供します

 

  「モビリティサービス を軸に総合力を活かした地域との共創によるまちづくり」

   ・モビリティサービスを軸に多様な商品やサービス、そこから生まれるわくわくの提供を通じて、

    まちとまち、まちと人、人と人をつないでいきます

   ・地域のことを深く理解し、JR九州グループに関わるすべての人と手を取り合いながら、持続可能で魅力

    あふれる、「住みたい・働きたい・訪れたい」まちづくりを推進します

 

  ②基盤

  「価値創造の源泉である人づくり」

・社員の誰もがやりがいを持ち、いきいきと活躍できる会社をつくるとともに、人間力・実務力を持っ

 た人材を育成します

   ・多様な価値観や能力を活かし、社員のの力の最大化を図ります

 

    「健全な企業運営」

   ・情報を適切に管理・共有するとともに、法令の遵守を徹底します

   ・持続的な成長のための適切なリスクテイクを実現するガバナンス体制のあり方を常に検討します

   ・ステークホルダーとの対話を充実させ、適切に企業活動に活かしていきます

 

    「環境と調和した事業展開」

   ・環境優位性を有する鉄道輸送の提供により脱炭素社会の実現に貢献します

   ・効率的な資源利用による資源循環や生物多様性保全の取組みを推進します

   ・ビジネス機会でもある環境課題の解決を通じて、持続可能な社会の形成に貢献します

 

(経営環境)

グローバルな社会・経済情勢の変化が、当社グループを取り巻く経営環境に加速度的な変容を及ぼしている現況を的確に捉え、俯瞰的に将来の変化を見据えた経営を行うことが肝要と認識しております。

特に、国内における物価高騰や労働人口の減少、働き手の価値観の変容を踏まえた待遇改善の必要性については、注視が必要な変化と捉えております。また、諸外国の政策動向や金融資本市場の変動等の影響に鑑みると、今後の経済の先行きには注意する必要があるものと考えられます。

 

(2)対処すべき課題

2026年3月期よりスタートした「JR九州グループ中期経営計画2025-2027」では、コロナ禍からの成長軌道への復帰を果たした前中期経営計画と当社グループ内外の環境変化を踏まえて、長期的な目線で当社グループが持続的な成長を遂げていくことに主眼を置いた戦略の実行が必要との認識のもと、3つの重点戦略である「サステナブルなモビリティサービスの実現」、「事業間連携の強化によるまちづくり」、「未来への種まき」を推進するとともに、「労働市場の変化を踏まえた人的資本拡充」、「環境課題への統合的なアプローチ」、「DX活用範囲の拡大と深堀り」、「グループガバナンス強化・適切なリスクテイクを可能にするガバナンス体制構築」からなる経営基盤強化の取り組みを進めてまいります。

 

1.サステナブルなモビリティサービスの実現

本年4月に実施した運賃改定は、鉄道事業にとって大きな転換点と認識しております。これまで、消費税率引き上げによる改定を除き29年間運賃を維持してまいりましたが、デフレからインフレへ環境が変化する中、運賃改定により物価高騰や人材確保に向けた待遇改善等のコスト上昇に対して、より適切な対応が可能になると考えています。運賃改定を契機として、安全やお客さま満足の更なる向上をはじめ、各種取り組みをさらに強力に推進することで、サステナブルなモビリティサービスを実現し、グループ全体の持続的な成長につなげてまいります。

 

2.事業間連携の強化によるまちづくり

駅を中心としたまちづくりを核に、各事業の成長に加え、事業間連携を強化し、グループの総合力の最大化を進めてまいります。事業間連携強化のポイントとなるのが、お客さま接点の強化です。当社グループが提供する各種サービス会員の新規獲得等、これまで推進してきたJRキューポの取り組みを強化し、お客さまに寄り添った行動の提案や、特典の付与等による複数サービスの利用促進を通じて、お客さま単価・ご利用頻度の増加につなげてまいります。また、これまで以上に力強いCRM施策の推進に向け、お客さまのご利用データを統合的に分析し、未来の市場の創出のため本 年4月に新たに「未来市場戦略部」を立ち上げました。このサイクルを少しずつ拡大していくことで、中長期的に事業間の相互送客を増やし、にぎわうまちづくりに貢献していきます。

 

3.未来への種まき

未来への種まきとして、適切なリスクテイクを通じた新たな事業機会の創出とレジリエンスの更なる強化に積極  的に取り組んでまいります。

新たな事業機会の創出について、外部環境の変化に対応し、不透明な将来においても当社グループの競争力を維持するためには、新規事業への挑戦が不可欠です。新たな収益源の確保と既存事業の変革・活性化を目指し、本中期経営計画期間においては、ベンチャーキャピタルへの出資等を通じたスタートアップとの協業等を加速してまいります。

レジリエンスの強化について、資本効率性の向上を意識しつつ、人流依存の事業ポートフォリオの改善、お客さまとの接点の強化・拡大など、当社グループの強みが活かせる事業への投資を行ってまいります。

 

4.労働市場の変化を踏まえた人的資本拡充

本中期経営計画期間では、昨今の激しく変化する労働市場に鑑み、長期的に事業を継続し、成長させていくという観点から待遇や働きやすさを改善するための投資を拡充していきます。加えて、マテリアリティや事業戦略と連動して各種研修を拡充するなど、持続的な成長を支える人材の育成を推進いたします。また、本計画の取り組みに応じた人材KPIを細かく設定し、企図した成果が得られているか検証しながら適切な配分につなげてまいります。

 

5.環境課題への統合的なアプローチ

従前より取り組んできた気候変動に加え、資源循環や生物多様性も含めた統合的なアプローチを行い、自然と共生した未来を目指す「JR九州グループ環境ビジョン2050」を本年2月に策定しました。2050年カーボンニュートラルに向けては2035年度における野心的な目標として、2023年度比でグループ全体のGHG排出量60%削減を掲げるなど、それぞれの領域において長期的に企業価値に資する取り組みを意欲的に推進してまいります。

 

  6.DX活用範囲の拡大と深堀り

    本年3月にアップデートしたJR九州グループDX戦略に基づき、「デジタルの力で、まちを、お客さまを、社員を、元気に」を旗印に各種取り組みを推進するとともに、システム・インフラの整備、各層の教育、人材育成、DXによる変革を進める企業文化の醸成を進めてまいります。

 

 

 

  7.グループガバナンス強化・適切なリスクテイクを可能にするガバナンス体制構築

   (1)グループガバナンス強化

当社は、連結子会社であるJR九州高速船株式会社で発生した安全管理体制に重大な疑義を生じさせる事案を受け、グループガバナンス強化に注力いたします。昨年8月の事案発覚以降、昨年9月に第三者委員会を設置し、調査を実施いたしました。また、第三者委員会からの調査報告書を踏まえ昨年11月に再発防止策を公表し、JR九州グループ会社に対するガバナンス強化策を次のとおり定めております。

まず昨年7月より開始しましたJR九州グループ全社安全推進会議を毎年開催し、当社グループが提供する商品・サービスの安全を確保し、その取り組みを継続するとともに、安全に関する情報共有や議論を行うことで、グループ会社の安全意識の向上を図ります。また、グループ会社社長に対するコンプライアンス研修や新任役員に対する研修等を通じて、グループ会社役員のコンプライアンス意識向上を図るとともに、グループ会社の監査役に対する研修等を通じて監査役の技能向上を図ってまいります。

新たな取り組みとして、各グループ会社に安全を担当する役員を選任し、安全に関する定例会議を開催します。加えて、行政処分を受ける等の社会的影響の大きな事象等が発生したグループ会社へのモニタリングの実施や、グループ会社における安全に関するリスク特定及び対策の明確化、グループ全社の業績評価に安全の項目の追加、グループ会社の監査体制強化等により管理体制を一層強化してまいります。

また、当社グループの内部通報制度について、研修等により再度周知徹底を図るとともに、JR九州グループ企業倫理ホットラインの窓口を本年2月より第三者機関に変更し、より社員が相談しやすい環境を作ってまいります。

これらの対策を継続し、その実施状況をトレースすることで、グループガバナンスを強化するとともに、当社グループにおける安全意識の向上及び安全管理体制の再構築を図り、グループ全体で安全を最優先とした事業運営を行ってまいります。

 

   (2)適切なリスクテイクを可能にするガバナンス体制構築

持続的な企業価値の向上に向けて、取締役会における独立した社外取締役の比率を原則過半数とする方針を定めるとともに、業績・企業価値の向上に対する動機付けをより強くする方向で役員報酬の見直しを行う等の仕組みを強化し、これまで以上に適切なリスクテイクを促進してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取り組み】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

(1)持続的な価値創造に向けたESG経営の推進

 未来に向けた価値を提供し続け、社会に貢献する企業グループであるために、日々の使命と、その先に実現したい未来像を掲げた経営理念を「わたしたちの夢」「使命」「おこない」として定めています。「わたしたちの夢」は九州の元気を世界へ届けることであり、この夢の実現のためには持続的な価値提供が不可欠です。この持続的な価値提供のために、常に考えるべきこととしてマテリアリティを設定しています。そして、このマテリアリティに真摯に取り組んで行くことこそが、環境・社会・ガバナンスの観点から企業の持続可能性を高める「ESG経営」であり、この非財務活動がわたしたちの経営基盤を強固に支え、持続的な財務価値の創出につながっていくものと考えています。

 ESG経営を強化・推進していくための審議機関として、社長執行役員を委員長とする「ESG戦略委員会」を設置しています。「ESG戦略委員会」は、ESG経営を全社的な課題と位置づけ、環境・社会・ガバナンスの各分野における取り組みを強化・推進するための審議機関です。委員会では非財務情報の進捗やESG分野の動向や課題について審議した事項は、必要に応じて取締役会へ報告するなどリスク管理を含めた管理体制としております。また、ESG経営をさらに推進していくために、ESGに関する知見を有する社外取締役も「ESG戦略委員会」にオブザーバーとして適宜参加しています。

 

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JR九州グループ中期経営計画 2022-2024[マテリアリティと非財務KPI]

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JR九州グループ中期経営計画 2025-2027[マテリアリティと非財務KPI]

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※1 鉄道事業における接遇、設備、ダイヤ等に関わるアンケート調査の総合スコア

※2 従業員意識調査結果(総合満足度)以外は単体指標

※3 退職しなければ勤続15年に達した者を含む

※4 当社独自の指標で、従業員意識調査における関連する項目の平均スコア

※5 売上高原単位:水使用量/売上(千㎥/億円)

 

(2)気候変動

 2021年2月、当社は金融安定理事会(FSB)により設置された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)による提言に賛同を表明しています。今後もTCFD提言に基づく「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4つの視点について、相互のつながりを意識し、気候変動関連リスク及び機会への対応を経営に統合して取り組みを推進することで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

 

 ①ガバナンス

 当社グループは環境に関わるマテリアリティを「脱炭素社会の実現」から「環境と調和した事業展開」に見直し、「気候変動」に加え「資源循環」、「生物多様性」といった環境課題に対して統合的なアプローチを実現するため、新たに「JR九州グループ環境ビジョン2050」を策定しました。「ESG戦略委員会」で気候変動をはじめとする環境課題への対応について、策定された環境ビジョンに則った事業活動が推進されているかを確認し、気候変動等の環境課題解決に向けた自主的目標の設定及び進捗の確認、リスクマネジメント等を実施しています。「ESG戦略委員会」で審議された重要な事項について、取締役会は必要に応じて報告を受け、指示を出す管理体制としています。今後も、気候変動関連の取り組みや開示の方向性、各種目標設定、環境マネジメント体制等、取締役会内にて議論を進め、脱炭素社会の実現に向けてESG経営を推進していきます。

 

 ②戦略

 当社グループの事業特性などを鑑み、気候変動によるリスクや機会を特定しています。主なリスクとして、炭素税の引き上げ、グリーンビルディング開発・改修、気温の上昇による光熱費増加、並びに、気候変動を原因とする自然災害の増加による事業活動の停止や資産の被害が見込まれます。機会については、鉄道の環境優位性の維持による売り上げの増加やグリーンビルディングへの需要の高まり、サステナブル商品への関心の高まりによる需要の拡大などが見込まれます。これらのリスク・機会を踏まえ、「JR九州グループ環境ビジョン2050」において、脱炭素社会の実現に向けたロードマップを策定しています。エネルギー使用量の削減や再生可能エネルギーの導入・活用に加え、バイオディーゼル燃料の導入等に向けた新技術の実証試験、不動産アセットにおけるグリーンビルディング認証の取得といった緩和策の積極的な実施とともに、各施設における電気機器室の嵩上げや止水板の設置等の降雨対策、BCP対策の充実、などの適応策も実施していきます。

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 ③リスク管理

 気候変動関連のリスクに関しては、社長執行役員を委員長とする「ESG戦略委員会」において、当社グループの事業が受けるリスクを識別・評価するため、TCFD対応の一環として気候変動に関するリスクと機会を分析しています。また、本リスクの管理体制として、同じく「ESG戦略委員会」において、GHG排出量を削減していくための施策の計画・立案、進捗を中心に管理しています。気候変動関連リスクの識別・評価、管理状況については「ESG戦略委員会」の中で毎年1回以上報告するとともに、必要に応じて取締役会にも報告します。

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 ④指標と目標

 当社グループでは2050年GHG排出量実質ゼロを目指すことを表明しています。また、「JR九州グループ環境ビジョン2050」で策定したロードマップについて、「JR九州グループ中期経営計画2025-2027」で非財務KPIと設定し、経営戦略に反映することにより、GHG排出量削減の取り組みを推進しています。今後も、当社グループ全体で脱炭素社会の実現に向けてESG経営の強化を進めていきます。「JR九州グループ中期経営計画2022-2024」で設定した非財務KPI及び実績については「(1)持続的な価値創造に向けたESG経営の推進」をご参照下さい。なお、2025年3月期の実績については2025年度中に発行する統合報告書等にて別途公表します。

(3)人的資本について

■ 基本的な考え方

   前中期経営計画(2022-2024)の期間中である2023年3月に「JR九州の人材戦略」を策定し、その戦略に基づきPDCAサイクルを回しながら施策を実施することで、“あるべき姿”を実現するための人づくりを推進してきました。新たな中期経営計画(2025-2027)においても、「価値創造の源泉である人づくり」をマテリアリティの一つとして掲げており、人づくりはこれまでも、そしてこれからも当社グループの企業価値を向上させるためには非常に重要な取り組みであると考えています。

   2025年3月より経営理念を“わたしたちの夢”、“使命”、“おこない”に変更し、人的資本を拡充することが経営理念の実現に繋がるという認識のもと、人材戦略を「わたしたちの夢を実現するためのJR九州の人材戦略」に改めました。これまでの「JR九州の人材戦略」で定めていた2つの基本方針と4つの柱を継承しつつ、経営理念の“使命”に掲げる「安全」、「お客さま視点」の意識を更に醸成するために、新たに「安全を最優先し、お客さま視点で考える社員を育む組織づくり」という柱を追加しました。新たに策定した「わたしたちの夢を実現するためのJR九州の人材戦略」については、以下のとおりです。

 

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 ① ガバナンス

 人的資本経営を推進するために、2023年4月に設置した社長執行役員を委員長とする「人材戦略委員会」を継続的に実施し、人材戦略に関する取り組みを審議しました。

 2024年度は、人材戦略委員会を9回開催し、人材に関する各種計画の策定や取り組みの進捗確認など、延べ24の議題を付議し、議論しました。

 また、人材戦略における2024年度の振返りと2025年度の重点取り組みについては、取締役会にて報告しました。

 

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 ② 戦略

      2024年度は「JR九州の人材戦略」の4つの柱に基づいて、具体的な取り組みを計画して人材戦略委員会にて練り上げ(P)、実施しました(D)。その後、従業員意識調査の結果や人材に関するKPIの進捗を確認し、人材戦略委員会にて、その取り組みの結果を検証し(C)、課題を抽出、次の手を打ちました(A)。こうして、社員が働きがいを持ち、いきいきと活躍できる会社をつくり、人間力と実務力を持った社員の育成を図ります。

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    ≪4つの柱に基づいた具体的な取り組み≫

a 意欲と能力のある社員への挑戦・成長の機会の提供と支援

      2024年10月より、人材戦略の基本方針の一つである「社員の誰もがやりがいを持ち、いきいきと活躍できる会社づくり」に関して、キャリア自立を通して実現させるために、キャリアカウンセリング室を開設しました。相談窓口は社内外にそれぞれ設置し、社内窓口については、国家資格であるキャリアコンサルタントを保有している社員を配置しています。開設以降2025年3月までの6ヶ月間で17名の社員による利用がありました(社外窓口含む)。

      また、動画研修による自律的な学習支援の一つとして、2023年度に企業内大学「JR九州アカデミー」を開設しました。2025年3月末時点で開校以来延べ約3,180名が受講しています。JR九州アカデミーは年間を通して複数人が合同で受講できる「人間力学部」、「実務力学部」の二つの学部と個人が3ヶ月の短期間で学習する「新規事業学部」で構成しています。社員が学びたい内容や学習スタイルを選択できるようにしており、学びへの意欲向上を図ることで社員が自ら学ぶ風土を醸成しています。

      このような取り組みを通して、当社の人材戦略で掲げる「人間力」と「実務力」を兼ね備えた人材を育成し、ひいては会社の成長に繋げていきます。

 

     b 一人ひとりが持つ価値観や能力を活かせる風土と仕組みづくり

      お客さま、地域社会、株主、社員のニーズの変化に対応し、今後さらに会社を成長させていくためには、社員一人ひとりが持つ力を「誰もが」最大限に発揮することが必要と考え、2024年度に当社としてのDE&Iの概念をまとめました。社員が自分の仕事に誇りを持ち、誰もがいきいきと活躍できる会社を目指す活動を推進する部署として「明るく楽しい会社づくりプロジェクト」を立ち上げ、DE&Iの浸透に取り組んでいます。

      2024年4月には経営層を対象に、先進的にDE&Iに取り組んでいる企業から講師を招いて「DE&I経営」に関する講演会を開催、同年5月~10月にかけて管理者を対象に、アンコンシャスバイアスへの気づきや職場のメンバーへの対話を通した関わり方を学ぶとともに、明るく楽しい会社づくりを進める上での手段を習得するための「明るく楽しい会社づくり研修」を実施しました。本研修の受講者は、研修受講後、自箇所でのファシリテーターとして一般社員向けの職場対話会を開催しています。研修で学んだことを活かしながら、職場対話会の中では一人ひとりが、誰もが活躍できる職場にするために「自分が」できることを考えました。さらに、各職場から、管理者とともにDE&I推進に取り組む「明るく楽しい会社づくりリーダー」を選出し、各職場の管理者とリーダーの取り組みを支援することで、DE&I推進が自走する組織を目指しています。

 

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明るく楽しい会社づくり研修

 

職場対話会

 

     c 努力と成果に応じたメリハリのある評価と報酬

2024年度より、年度初に評価者が実施するフィードバック面談において、被評価者に対して特に良かった点や今後の最優先課題と共に評価内容や理由を伝えるよう見直しました。また、昇進試験における面接評価や昇給、賞与の通知を行う際にも社員に理由を伝え評価と報酬に納得感を持たせ、働きがいの向上に努めています。

社員の納得感を高めるために、評価者や面接官を対象とした研修を実施し、コミュニケーション能力や評価スキルの向上を図っています。評価者に対する評価者(コミュニケーション)研修は、主にマネジメントにおける人事評価の重要性や人事評価の前提となる心理的安全性、そして目標設定のポイントと目標達成に向けた部下との接し方等、マネジメント能力の向上を目的に実施しています。評価者は3年に1度の頻度で本研修を受講する計画としており、2024年度から2巡目を実施しています。また、昇進試験の面接官を対象とした面接官研修では、公正かつ納得感のある試験実施のためのポイントについて学んでいます。これらの研修を通じて、社員の評価と報酬に対する納得感を高め、働きがいの向上を図っています。

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評価者(コミュニケーション)研修

 

     d ライフプランに合わせた柔軟な働き方が選択できる環境整備と健康経営の推進

 仕事と子育ての両立支援として、短時間勤務や深夜帯免除の対象者を拡大しました。対象者拡大に合わせて、仕事や育児への考えをパートナーや家族と共有するとともに、制度を利用する社員も周囲の社員もできるときにできることを行い、最大限の力を発揮して欲しいという想いをトップメッセージとして発出し、「お互い様」の気持ちで助け合う風土の醸成に努めました。

 また、2024年度に健康経営における戦略マップを策定しました。これまでも健康経営推進の取り組みは実施してきましたが、戦略マップを新たに作成することでより効率的かつ効果的に健康経営を推進していきます。戦略マップでは身体の健康と心の健康のどちらも対象とし、健康状態を維持、向上をするために、様々な指標を設け、その取り組み状況をモニタリングし打ち手を実施することで社員の仕事に対するパフォーマンスややりがいの向上を図ります。2025年3月には、当社の健康経営の取り組みが評価され、「健康経営優良法人2025」の認定を受けました。

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健康経営における戦略マップ

 

健康経営優良法人2025

 

≪JR九州の人材戦略として新しく追加した柱≫

a 安全を最優先し、お客さま視点で考える社員を育む組織づくり

      「安全」をつくることが最優先事項であることを宣言するとともに、常にお客さま視点で物事を捉えることでお客さまのニーズを上回る良質な顧客体験を提供する、という新たな経営理念の一つである“使命”に込めたおもいを人材戦略の新たな柱に盛り込みました。安全は最優先事項であるという認識のもと、新しい人材戦略では、1つ目の柱として掲げています。2025年度はこれまで実施してきた安全創造運動や安全創造館研修に加え、新たに役員向けのコンプライアンス研修や社員が気づいた安全やお客さま視点の声などの意見を活発に出し合える組織の構築に向けて対話型の意見交換会を実施する予定です。また、お客さま満足の向上を目的に、サービス介助士資格取得者の拡大(2025年3月期時点で326名の取得)や講演会の開催、お客さま満足度調査結果のフィードバックやフォロー教育に取り組み、お客さま視点に立った「観察力・想像力・行動力」の習得、向上を図ります。

 

 ③ リスク管理

    社長執行役員を委員長とする人材戦略委員会において、人材に関する各種計画策定とKPIの進捗確認を実施しており、本委員会に付議した内容は必要により取締役会にも報告しています。各種施策の有効性を測るとともに、人材戦略の具体的な取り組みを計画するにあたり、KPIのほか、全社員を対象に実施している従業員意識調査の結果を重要視しています。2024年度は前年度と比べると多くの項目で満足度が向上しており、総合満足度においても過去最高値を記録しました。一方で、「従業員にとっての魅力」や「仕事の質の負担感」の項目は他の項目に比べて低い数値に留まっています。2025年度は、全社員に配布しているブランドブックを活用して新たな経営理念の理解・共感を深める取り組みや自箇所の役割や存在意義について職場内で対話をする職場対話会、タレントマネジメントシステムを活用した人材発掘・人事ローテーションの活性化等を推進し、社員の誰もがやりがいを持ち、いきいきと活躍できる会社を目指してこれまで以上に人的資本に関する取り組みを拡充させていきます。

 

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従業員意識調査の結果(2023年度、2024年度)

 

総合満足度の推移

 

    ④ 指標と目標

      当社グループでは、企業理念の実現に向け、非財務KPIを設定しています。当社の人材戦略に関する非財務KPI及び進捗状況については、「(1)持続的な価値創造に向けたESG経営の推進」をご参照下さい。

3【事業等のリスク】

当社グループは、九州新幹線をはじめとした九州主要都市間を結ぶ鉄道ネットワークを有しており、鉄道事業に加えて、鉄道事業との相乗効果の高い不動産業(駅ビル商業施設、マンション、ホテル等)、小売業、飲食業、建設業等について九州を中心に展開しております。

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性のあると認識している主なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

1 安全の確保に関する事項

鉄道事業にかかる重大事故があった場合、第三者から損害賠償等の請求を受ける可能性があるほか、損傷した鉄道路線の修繕や交換に要する多額の支出、運休による収入の減少及び当社グループの評判や社会的信頼の毀損を生じる可能性があります。なお、新幹線を中心に、鉄道ネットワークは相互連携しているため、比較的小規模な事故が当社グループの鉄道の運行に広範囲にわたって支障を来たす可能性があり、当社グループの収益の減少又は鉄道サービスや設備の安全性そのものに対する懸念や、場合によっては当社グループの鉄道事業以外の事業に対する社会的信頼やブランド価値に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループにおいて、基幹事業である鉄道事業の安全は最大の使命であり、企業価値の源泉であるという認識の下、経営トップの主体的関与により安全管理に係るPDCAサイクルを適切に機能させ、安全監査及び安全点検等を実施することにより、更なる安全の確保に努めています。

 

2 少子高齢化等の人口動向に関する事項

当社グループの主な事業エリアである九州は、人口減少率が国内の他のエリアよりも高く、加えて高齢者の割合も高い傾向が続くと予測されています。今後の九州の人口減少及び少子高齢化によって、通勤や通学等の定期収入、ビジネスや旅行等の定期外収入が減少する場合、運輸サービスグループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの駅ビル等の商業施設や店舗等の利用者が減少する場合や、賃貸マンション・分譲マンションの利用者・購入者が減少する場合、不動産・ホテルグループや流通・外食グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

進行する人口減少に対して、当社グループは、沿線価値を高める駅ビル及びマンション開発等により沿線の定住人口を増やすとともに、ビジネスや観光、アジア各国との地理的なメリットを活かしたインバウンド需要の取り込み等により交流人口を増やし、鉄道事業の収入の確保や九州圏内の消費の活性化を図っております。

 

3 自然災害等に関する事項

当社グループは、九州を中心として幅広い事業を展開しており、そのなかで鉄道軌道、鉄道車両、不動産といった多くの固定資産を有しているため、地震、火山の噴火、津波、台風、地滑り、豪雨、大雪、洪水等の自然災害、テロリズムや武力紛争等の人的災害が発生した場合には、かかる保有資産の大規模な修繕に加え、当社グループの業務運営の全部若しくは一部を継続できない又は重大な支障が生じる可能性があります。特に当社グループの事業が集中する九州あるいは福岡において甚大な被害が生じた場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。2020年7月に発生した「令和2年7月豪雨」の影響により、久大本線及び肥薩線の鉄道施設に被害を受け、肥薩線においては、現在も一部区間において代行輸送を行っております。

昨今の自然災害の頻発及び激甚化を踏まえて、着実な安全投資を行い、新幹線脱線対策や構造物の耐震補強の対策や、降雨による線路沿線斜面の落石・崩落防止等の対策を講じるほか、机上訓練や避難誘導訓練等を実施する等、ハード及びソフト両面の防災及び減災対策の強化に努めております。

 

 

4 感染症に関する事項

重大な感染症が国内外において発生・流行した場合、社会経済活動の制約やお客さまの外出の自粛、社員の感染等により、鉄道事業を始めとした当社グループの正常な事業活動ができなくなり、当社グループの財政状態及び経営成績に大きな影響を与える可能性があります。

新型コロナウイルス感染症が発生・流行した際には、鉄道利用者の大幅な減少、駅ビル等商業施設の休館又は営業時間短縮等による賃料収入の低迷、ホテルの休館又は客室稼働率減等に伴う売上減少等の影響が発生しました。

国内外で重大な感染症拡大の恐れがある場合には、当社が定める「新型インフルエンザ等対策業務計画」に基づき、社長を対策本部長とする対策本部を設置し、政府関係機関・自治体との連携や感染防止への措置など、事業継続に向けた対策を速やかに実施します。

 

5 経済動向や国際情勢に関する事項

当社グループは、運輸サービス、不動産・ホテル、流通・外食、建設、ビジネスサービス等の様々な事業を主に九州で展開しており、消費増税や政府による経済政策の影響等、日本全体の経済環境のほか、福岡市やその他の主要都市部をはじめとした九州の経済環境の影響下にあります。また、昨今の米国等の関税影響、為替相場の状況、政治的要因、自然災害、異常気象、事故、感染症の流行等の国内外の状況により、韓国、中国、台湾、香港その他の近隣のアジア諸国及び地域をはじめとした海外からの観光客の増減、資材やエネルギー調達価格の変動等の影響を受ける可能性があります。これらにより、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

6 JR九州グループ会社に対するガバナンス強化策に関する事項

当社は、グループ会社に対するガバナンス強化に取り組んでおりますが、グループ会社においてガバナンス強化策が着実に実行されず、安全や法令順守意識の欠如、安全管理体制の不備、法令に関する理解不足等により、社会的影響の大きい事象を発生させてしまった場合、当社グループの信用が失墜すると共に、事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社は、連結子会社であるJR九州高速船株式会社において、安全確保に関わる重大な問題が発生したことを受け、2024年9月3日に第三者委員会を設置し調査を実施いたしました。第三者委員会からの調査報告書を踏まえ、2024年11月26日に公表しました再発防止策で、グループ会社に対するガバナンス強化策を定めております。今後も継続的に取り組み、当社グループにおける安全意識の向上及び安全管理体制の再構築を図り、安全を最優先とした事業運営を行ってまいります。

 

7 情報技術(IT)上の問題に関する事項

当社グループにおいては、鉄道事業をはじめとする様々な事業を安全かつ適切に運営するため、様々なITシステムを利用しています。また、当社グループと取引関係にある他の会社(各旅客会社間の収入清算等の計算業務を委託している鉄道情報システム株式会社等)においても同様にITシステムが利用されております。

当社グループではDX戦略を制定し、ITシステムのセキュリティ強化を進めるとともに、インシデントの早期検知や復旧等の対応能力向上に努めております。また、情報セキュリティ委員会を設置し、セキュリティリスクを経営課題としてとらえ、グループ全体の対策推進に取り組んでおります。しかしながら、それらの施策にもかかわらず、当社グループ又は当社グループと取引関係にある他の会社のITシステムに関する事故、故障、サイバー攻撃及び人為的な過誤・不正操作等により、鉄道の遅延、不具合、きっぷの発券及び予約機能の障害又は遅延をはじめとして、当社グループの事業運営に様々な問題が起こる可能性があるとともに、当社グループの安全性又は信頼性に対する懸念が生じ、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

8 個人情報保護に関する事項

当社グループは、鉄道事業をはじめとする様々な事業を営んでおり、これらの性質上多数の個人・法人の顧客から様々な情報を取得し保有しております。個人情報に関して、当社グループは、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)に基づき、個人情報取扱事業者として、個人情報保護に係る義務等の遵守が求められており、社内規程の整備、セキュリティ強化及び社員教育の徹底等の対策に努めております。

しかしながら、当社グループが保有する顧客情報等の個人情報やその他重要な情報が外部に漏洩した場合には、損害賠償請求や行政処分を受ける可能性があります。また、かかる事案に対応するための時間及び費用が生じ、当社グループの事業運営上の支障や社会的信用の低下による顧客喪失等により、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

9 競合に関する事項

当社グループの各事業は競争に晒されています。運輸サービスグループにおいては、安全性、コスト、速達性、利便性、快適性その他の点で、他の鉄道会社に加え、自動車、バス、航空機、船舶等の他の輸送機関との間でも競合しております。特に九州では高速道路が多く利用されており、都市間を結ぶ当社グループの新幹線や特急列車と競合しています。

また、不動産・ホテルグループにおいては、利便性、顧客獲得能力、価格、賃料その他の賃貸条件、ブランド力の点で、他の不動産デベロッパーやホテル事業者と競合しています。そのほか、流通・外食グループにおいては利便性、価格、施設の魅力、顧客満足度等の点で類似の小売・飲食事業者と、建設グループ及びビジネスサービスグループにおいては九州全域又はその他の地域に所在し類似サービスを提供する事業者と競合しています。

当社グループが顧客の嗜好や需要の変化、技術の進展に対応できず、又は、競合他社の統合等により競争力を向上又は維持できない場合、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

10 保有資産の価値に関する事項

当社グループは、土地その他の不動産を中心に、多くの固定資産を所有しており、経営環境の変化や収益性の低下等により当該固定資産への投資額の回収が見込めなくなった場合には、減損損失を計上することが必要になり、また、将来かかる資産を簿価未満で売却する場合には、売却損を計上する可能性があります。

当社グループは、鉄道事業において継続的に多額の設備投資を実施しているため、将来において鉄道事業の業績が予想以上に低調となった場合には、鉄道事業固定資産について減損損失を計上する可能性があります。

また、当社グループの繰延税金資産は、税務上の繰越欠損金及び将来減算一時差異について、収益力及びタックス・プランニングに基づく将来の課税所得発生額を見積り、将来の税金負担額を軽減する効果を有すると認められる範囲内で計上しております。従って、将来の課税所得の予測・仮定に基づいて繰延税金資産の一部又は全部の回収ができないと判断した場合、繰延税金資産は減額される可能性があります。

さらに、市場金利の変動や発行主体の業績又は資産状況の悪化等により、当社が保有する投資有価証券等の金融資産の市場価値が下落する可能性があります。

このような事象が生じた場合、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

11 外部委託先や取引先に関する事項

当社グループは、事業上様々な局面において、第三者である外部事業者に対し、業務委託等を行っております。例えば、不動産・ホテルグループでは、建設業務の一部及び居住用物件の賃貸及び販売管理を第三者に委託しております。

さらに、流通・外食グループ及びビジネスサービスグループでは、第三者生産者、卸売業者及びメーカーより原材料や商品の仕入れを行い、コンビニエンスストアの運営については株式会社ファミリーマートとのフランチャイズ契約に基づいております。

このため、これらの第三者又はその再委託先が、当社グループの定める基準を満たす商品やサービスの提供等を怠った場合やこれらの第三者に起因する問題や事故が発生した場合、当社グループの社会的信用や当社グループの事業等に重大な影響を及ぼし、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

12 企業買収等に関する事項

当社グループは、成長戦略として企業買収等を行っており、また、将来行う可能性があります。企業買収等の実施に当たっては、対象会社の財務内容等に関するデューデリジェンスを綿密に行いますが、当該デューデリジェンスの過程で検知できなかった偶発債務や未認識債務等が顕在化した場合等には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。加えて、適切な対象企業を見つけることができないこと、受入可能な取引条件を交渉・合意できないこと、買収資金を調達できないこと、必要な同意や許可等を取得できないこと、法令上の問題を解決できないこと等の理由に基づき、企業買収等を行うこと自体ができない可能性もあります。

また、企業買収等実行後の事業環境の変化に伴い、対象会社の収益力が低下した場合や期待するシナジーが実現できない場合、減損損失を認識する必要が生じ、投資の回収が不可能となる等、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

13 環境規制や気候変動に関する事項

当社グループは、主として運輸サービスグループ及び不動産・ホテルグループにおいて、不動産を所有しております。当社グループは、かかる不動産の取得に際し、土壌汚染、水質汚濁、建物へのアスベスト等の有害物質等の使用に関する環境調査を実施しておりますが、かかる調査によりすべての有害物質等の存在又は使用等が事前に判明する保証はありません。また、土地の所有者は、土壌汚染対策法(平成14年法律第53号)に基づき、さまざまな場面において、土壌汚染に関する調査を実施しなければならず、また、人体への健康被害を生じうる土壌汚染が判明した場合には、その所有者は、土壌汚染に関する帰責性の有無及び善意・悪意を問わず、当局より有害物質等の除去を命じられる可能性があります。また、建築基準法(昭和25年法律第201号)及び大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)に基づき、既存建物の解体、修繕等に関し、アスベストの除去又はその他一定の措置を講じる必要があります。有害物質等の存在は、不動産の販売、賃貸借、開発又は担保としての利用の制約となる可能性があり、また、資産価値の低下、有害物質等の除去等に要する費用の増加等を生じる可能性があります。また、同様に、ポリ塩化ビフェニルについてもポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(平成13年法律第65号)に基づき適正に保管、処分等を実施するために、費用の増加等を生じる可能性があります。さらに、かかる有害物質に起因して、現実に人体への健康被害等が生じた場合には、当社グループは、損害賠償等の責任を負う可能性があります。その結果、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、2015年の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議での「パリ協定」採択を機に、世界的に脱炭素社会に向けた動きが広がっております。こうしたなか、低炭素化に向けた政策・規制の見直しが実施され、税負担、事業活動における諸材料・エネルギーの調達コスト、設備・車両の変更等の対応費用が増加する可能性があります。また、気候変動が進展し、自然災害の頻発や激甚化により設備への被害が増額した場合に、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、脱炭素社会の実現を重要課題の一つと位置付け、気候変動問題への対応を進めており、2021年2月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明するとともに、TCFDに沿った気候関連情報を開示しました。また、鉄道事業における省エネ型車両の導入、建物の省エネ化及び再生可能エネルギーの導入などの取り組みを推進するとともに、2025年2月には2050年GHG排出量実質ゼロに向けたロードマップを策定しました。しかしながら、このような取り組みにも関わらず、株主・投資家から低炭素化への取り組みが不十分である、又は気候変動に関する情報開示に的確に対応していない、などと判断され信頼・評価が低下した場合、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

14 特有の法的規制

(1)鉄道事業に係る法律関連事項

当社は、鉄道事業者として鉄道事業法の定めに基づき事業運営を行っております。また、JR会社法の適用対象からは除外されたものの、同法の附則に定められた「当分の間配慮すべき事項に関する指針」等に配慮した事業運営が求められております。これらの詳細については、以下のとおりです。

① 鉄道事業法(昭和61年法律第92号)

当社グループの鉄道事業においては、鉄道事業法の規制を受けております。鉄道事業者は本法の定めに従い、営業する路線及び鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の許可を受けなければならない(第3条)とともに、旅客の運賃及び料金について国土交通大臣の認可を受け、その範囲内での設定・変更を行う場合は、事前届出を行うこととされております(第16条)。また、鉄道事業の休廃止については、国土交通大臣に事前届出(廃止の場合は廃止日の1年前まで)を行うこととされております(第28条、第28条の2)。この他、国土交通省の指針や事業の公益性の観点から鉄道事業において大きな方針転換を図ることができない可能性があります。

 

② 旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律の一部を改正する法律(平成27年法律第36号)(以下「JR会社法改正法」という。)

JR会社法改正法附則第2条において、当社及び当社の鉄道事業の全部又は一部を譲受け、合併等により施行日以降経営する者のうち国土交通大臣が指定するもの(以下「新会社」という。)が事業を営むに際し、当分の間配慮すべき事項に関する指針(以下「指針」という。)を定めると規定されております。この指針は2015年12月に告示され、2016年4月1日より適用されております。指針に定められた内容は概ね次のとおりです。

・会社間(新会社との間又は、新会社と北海道旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社又は東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社、西日本旅客鉄道株式会社、並びにその事業の全部若しくは一部を譲受、合併、分割、相続によりJR会社法の改正法(平成13年法律第61号)の施行日以後経営するもののうち国土交通大臣が指定するものとの間をいう。)における旅客の運賃及び料金の適切な設定、鉄道施設の円滑な使用その他鉄道事業に関する会社間における連携及び協力の確保に関する事項

・国鉄改革の実施後の輸送需要の動向その他新たな事情の変化を踏まえた現に営業している路線の適切な維持及び駅その他の鉄道施設の整備に当たっての利用者の利便の確保に関する事項

・新会社がその事業を営む地域において当該事業と同種の事業を営む中小企業者の事業活動に対する不当な妨害又はその利益の不当な侵害を回避することによる中小企業者への配慮に関する事項

国土交通大臣は、指針を踏まえた事業経営を確保するため必要があると認めるときは、新会社に対し、その事業経営について必要な指導及び助言をすることができるとされており(附則第3条)、さらに正当な理由がなく指針に反する事業運営を行ったときには、勧告をすることができるとされております(附則第4条)。

なお、当社はこれまでも指針に定められた事項に沿った事業運営を行ってきており、この指針は今後の当社の事業運営に大きな影響を及ぼすものではないと考えております。

 

(2)運賃及び料金の設定又は変更

当社が鉄道事業における運賃及び料金を設定又は変更する際には、鉄道事業法に規定された必要な手続きを経る必要があり、何らかの理由により当該手続きに基づいた運賃及び料金の設定又は変更を機動的に行えない場合には、当社の収益に影響を与える可能性があります。手続きの詳細については以下のとおりです。

① 運賃及び料金の認可の仕組みと手続き

鉄道運送事業者が旅客の運賃及び新幹線特急料金(以下「運賃等」という。)の上限を定め、又は変更しようとする場合、国土交通大臣の認可を受けなければならないことが法定されております(鉄道事業法第16条第1項)。

また、その上限の範囲内での運賃等の設定・変更及び在来線特急料金等その他の料金の設定・変更については、事前の届出で実施できることとなっております(鉄道事業法第16条第3項及び第8項)。

鉄道運送事業者の申請を受けて国土交通大臣が認可するまでの手続きは、概ね次のようになっております。

 

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(注)1 鉄道事業法第64条の2に基づく手続きであります。また、国土交通省設置法第23条では、運輸審議会が審議の過程で必要があると認めるとき又は国土交通大臣の指示等があったときに公聴会が開かれることが定められております。

2 鉄道営業法第3条第2項で、運賃その他の運送条件の加重をなす場合に7日以上の公告をしなければならないことが定められております。

 

なお、各旅客会社における独自の運賃改定の実施の妨げとなるものではありませんが、国鉄改革の実施に際し利用者の利便の確保を図るため、旅客会社では、現在、2社以上の旅客会社間をまたがって利用する旅客及び荷物に対する運賃及び料金に関し、旅客会社間の契約により通算できる制度とし、また、運賃について、遠距離逓減制を加味したものとしております。

 

② 運賃改定に対する当社の考え方

イ 当社では、1987年4月の会社発足以降、消費税等を転嫁するための運賃改定(1989年4月、1997年4月、2014年4月及び2019年10月)を除くと、1996年1月10日に初めての運賃改定(平均7.8%)を実施し、2025年4月1日に29年ぶりとなる2度目の運賃改定(平均15.0%)を実施いたしました。今後も総合的な経営判断に立ち、適正な利潤を確保し得るような運賃改定を適時実施する必要があると考えております。

ロ 事業経営に当たっては、まず収入の確保と合理化努力を進め効率的な経営に努めますが、適正利潤についてはこのような努力を前提とした上で、将来の設備投資や財務体質の強化等を可能なものとする水準にあることが是非とも必要であると考えております。

ハ 鉄道事業の資本費用に大きな影響を与える設備投資については、安全・安定輸送を前提とし、案件ごとに必要性等を勘案しつつ実施しております。

なお、当社としましては、事業者の明確な経営責任の下で主体的に設備投資に取り組むことが必要であると認識しているところであります。

 

③ 国土交通省の考え方

当社の運賃改定に関し、国土交通省からは、次のような考え方が示されております。

イ 当社を含む鉄道事業の運賃の上限の改定に当たっては、鉄道事業者の申請を受けて、国土交通大臣が、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの(以下「総括原価」という。)を超えないものかどうかを審査して認可することとなっている(鉄道事業法第16条第2項)。

なお、原価計算期間は3年間とする。

ロ 総括原価を算定するに当たっては、他の事業を兼業している場合であっても鉄道事業部門のみを対象として、所要の株主配当を含めた適正な利潤を含む適正な原価を算定することとなっている。また、通勤・通学輸送の混雑等を改善するための輸送力の増強、旅客サービス向上等に関する設備投資計画の提出を求め、これについて審査を行い、必要な資本費用については原価算入を認めているところである。

ハ 総括原価を算定する方法としては、当該事業に投下される資本に対して、機会費用の考え方による公正・妥当な報酬を与えることにより資本費用(支払利息、配当金等)額を推定するレートベース方式を用いる方針であり、総括原価の具体的な算定は以下によることとしている。

総括原価=営業費等(注1)+事業報酬

・事業報酬=事業報酬対象資産(レートベース)×事業報酬率

・事業報酬対象資産=鉄道事業固定資産+建設仮勘定+繰延資産+運転資本(注2)

・事業報酬率=自己資本比率(注3)×自己資本報酬率(注4)+他人資本比率(注3)×他人資本報酬率(注5)

(注)1 鉄道事業者間で比較可能な費用について、経営効率化を推進するため各事業者間の間接的な競争を促す方式(ヤードスティック方式)により、比較結果を毎事業年度終了後に公表するとともに、原価の算定はこれを基に行うこととしている。

2 運転資本=営業費及び貯蔵品の一部

3 自己資本比率30%、他人資本比率70%

4 自己資本報酬率=公社債利回り実績値+β×(全産業(陸運業除く。)平均自己資本利益率-公社債利回り実績値)

  ※ 公社債利回り実績値:国債(10年もの)、地方債、政府保証債の平均の過去5年平均

  ※ β:(TOPIXの変化率と鉄道会社の株価変化率の共分散)÷(TOPIXの変化率の分散)

5 他人資本報酬率=当社の場合、法定債務を除き、債務実績利子率の上場旅客会社4社平均の過去5年平均

ニ なお、認可した上限の範囲内での運賃等の設定・変更、又はその他の料金の設定・変更は、事前の届出で実施できることとなっているが、国土交通大臣は、届出された運賃等が、次の(a)又は(b)に該当すると認めるときは、期限を定めてその運賃等を変更すべきことを命じることができるとされている(鉄道事業法第16条第9項)。

(a)特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものであるとき

(b)他の鉄道運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるものであるとき

 

 

(3)整備新幹線について

ア.整備新幹線の建設計画

整備新幹線は、1970年に制定された全国新幹線鉄道整備法(昭和45年法律第71号)に基づき、1973年に整備計画が決定されており、当社は九州新幹線(鹿児島ルート(福岡市~鹿児島市)、西九州ルート(福岡市~長崎市))について営業主体とされました。

このうち、九州新幹線(鹿児島ルート)については、2004年3月13日に新八代・鹿児島中央間、2011年3月12日に博多・新八代間がそれぞれ開業しました。

九州新幹線(西九州ルート)については、武雄温泉・長崎間(西九州新幹線)がフル規格で建設主体である鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下「鉄道・運輸機構」という。)により工事が進められ、2022年9月23日に武雄温泉駅で博多・武雄温泉間を走行する在来線特急と対面乗換を行うこと(いわゆるリレー方式)により暫定開業しました。

また、新鳥栖・武雄温泉間については、当初、在来線を活用する軌間可変電車を導入する予定であったものの、2017年7月14日の国土交通省の軌間可変技術評価委員会において、軌間可変電車の安全性、経済性について引き続き課題が残っているものと評価されるなど、軌間可変電車の開発状況に鑑み、2018年7月19日に与党整備新幹線建設推進プロジェクトチーム九州新幹線(西九州ルート)検討委員会(以下「検討委員会」という。)により導入が断念されました。その後、2019年8月5日の検討委員会において、「九州新幹線(西九州ルート)の整備のあり方等に関する基本方針」が示され、武雄温泉駅での対面乗換が恒久化することはあってはならず、新鳥栖・武雄温泉間はフル規格(複線)で整備することが適当であることと、今後は、国土交通省、佐賀県、長崎県、当社の間で協議を行い、検討を深めていくべきであり、国土交通省に対し、協議の実施と検討委員会への報告を求めることとされました。以後、これまでに国土交通省と佐賀県との間で複数回の協議がなされ、この間、国土交通省と当社、国土交通省と長崎県との間でも個別に協議が行われましたが、合意には至っておりません。したがって、現時点において、新鳥栖・武雄温泉間の整備方式は決定しておりません。

 

イ.整備新幹線建設の費用負担

整備新幹線は、鉄道・運輸機構が建設を行っており、その費用は国、地方公共団体及びJRが負担することとされていますが、当社の負担については、整備新幹線の営業主体となるJRが支払う貸付料を充てることとされています。

1997年10月の北陸新幹線高崎・長野間の開業に伴い、整備新幹線の営業主体であるJRが支払う貸付料の額の基準が設けられ、現在は独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法施行令(平成27年政令第392号)(以下「施行令」という。)第6条に規定されています。

施行令において、貸付料の額は、当該新幹線開業後の営業主体の受益の程度を勘案し算定された額に、貸付けを受けた鉄道施設に関して鉄道・運輸機構が支払う租税及び鉄道・運輸機構の管理費の合計額を加えた額を基準として、鉄道・運輸機構において定めるものとされています。ここでいう受益は、新幹線が開業した場合の当該新幹線区間及び関連線区区間の収支と、開業しなかったと仮定した場合の並行在来線及び関連線区区間の収支を比較し、前者が後者より改善することにより営業主体が受けると見込まれる利益とされており、具体的には、開業後30年間の需要予測及び収支予測に基づいて算定されることとなります。なお、この受益の程度を勘案し算定された額については、開業後30年間は定額とされています。また、租税及び鉄道・運輸機構管理費相当額については、営業主体の当該新幹線開業後の経費として、受益算定の際に反映されています。

整備新幹線の建設を行う鉄道・運輸機構は建設費の調達を行い、建設した施設を保有することとされています。当社は完成後にこの施設の貸付けを受け、開業後に上記の貸付料を支払うこととなっており、建設期間中における同機構への建設費の直接負担は原則としてないものとされています。

なお、九州新幹線(鹿児島ルート)については、JR会社法改正法及び九州旅客鉄道株式会社の経営安定基金の取崩しに関する省令(平成27年国土交通省令第61号)に基づき、上記貸付料の定額部分につき、2016年4月1日から各区間の開業後30年までに係る貸付料の全額(約2,205億円)を一括して2015年度末に鉄道・運輸機構に支払っております。

また、2022年9月23日に開業した武雄温泉・長崎間(西九州新幹線)について、当該路線の営業主体となる当社が、建設主体である鉄道・運輸機構に支払う新幹線鉄道施設の貸付料の年額は、定額部分5.1億円に租税及び管理費相当額を加えた額となります。

 

ウ.並行在来線の扱い

九州新幹線(鹿児島ルート)については、2004年3月の新八代・鹿児島中央間の開業時に、並行在来線である鹿児島本線八代・川内間は経営分離され、「肥薩おれんじ鉄道株式会社」に引き継がれました。

また、西九州新幹線については、長崎本線江北・諫早間は経営分離せず、2022年9月23日の開業時点で上下分離し、当社は、当該開業時点から3年間は一定水準の列車運行のサービスレベルを維持するとともに、当該開業後、23年間運行を維持することを関係6者(当社、佐賀県、長崎県、検討委員会、国土交通省及び鉄道・運輸機構)にて合意しており、2022年9月の武雄温泉・長崎間(西九州新幹線)の開業時に、当該合意に基づいて、長崎本線江北・諫早間の鉄道施設の一部を「一般社団法人佐賀・長崎鉄道管理センター」に譲渡し、上下分離方式へ移行しております。

 

エ.整備新幹線建設に関する当社の考え方

イ.記載の貸付料のうち、受益の程度を勘案して算定される額は、実際の収益に関わらず定額を支払うこととされているため、収支が予測を下回る場合、当社の鉄道事業の業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社は、2019年3月27日の検討委員会において、リレー方式による運営が長期化又は固定化することは、地域振興効果が極めて限定的になること等から、到底受け入れられない旨の表明をしております。また、少しでも早期に全線開業できるよう要望しており、2024年7月30日の検討委員会においても、同様の要望をしております。

さらに、2019年4月12日に国土交通省より鉄道・運輸機構に対して、工事予算の増額等を主旨とする工事実施計画(武雄温泉・長崎間)の変更認可がなされました。なお、2018年11月28日の与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームにおいて、当社は、整備新幹線の建設費に応じて貸付料を引上げることについて、整備新幹線の基本的なスキームを大幅に逸脱するものであり受け入れられるものではない旨の表明をしております。

また、2021年6月14日に検討委員会より、九州新幹線(西九州ルート)について、新鳥栖・武雄温泉間の在来線については、JR九州が運行を維持することが不可欠である等の検討状況が示されました。なお当社は、経営上極めて重要な課題となる並行在来線の取扱いについては、

・在来線の利便性の問題は、地域の皆さまにとって重要な課題である

・必ずしも経営分離を前提とせず、佐賀県等から具体的な課題認識のご意見を拝聴しながら、真摯に議論を

 深めたい

・佐賀県と国土交通省の「幅広い協議」において、「フル規格」という選択肢にある程度の目途がつきそう

 な段階になれば、議論を深めたい

との考えを、国土交通省との協議において示しております。

 

15 不動産・ホテルグループに関する事項

当社グループの不動産・ホテルグループにおいては、収益化まで長期にわたるプロジェクトの各過程で多額の投資を行います。そして、建設資材価格及び人件費の上昇による建設費の増加、金利水準並びに金融政策をはじめとする当社グループが制御できないさまざまな外部要因により、完成に要する時間と投資額等が増加し、想定していた収益を生まないことがあります。

不動産販売業においては、販売価格の低下や、完成した販売用不動産を長期にわたって保有せざるを得ない場合に評価損を認識することがあります。不動産賃貸業においては、大型テナントの喪失、空室率の上昇や賃料の低下が生じる場合があり、駅ビル商業施設のテナント売上が減少した場合は、賃料収入の売上連動部分が減少します。ホテル業においては、景気動向の影響を受けやすいため、景気低迷による企業活動の縮小や個人消費の減退が続いた場合、過当な価格競争による売上減少、また、これに伴う事業収支の悪化により、有形固定資産の減損損失を計上する可能性があります。

また、当社グループは、プロジェクトの完成後にも、テナント、居住者その他の利用者に生じた不測の損失、損害、被害の責任や、建築瑕疵の補償費用の負担を負うことがあります。

このような事象が生じた場合、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

1 経営成績等の概要

(1)経営成績

当連結会計年度における我が国の経済は、個人消費は一部に足踏みが残るものの、持ち直しの動きが見られ、雇用・所得環境が改善するなど、緩やかに回復してきました。

しかしながら、物価上昇の継続、諸外国の政策動向や金融資本市場の変動等の影響により、今後の経済の先行きには注意する必要があるものと考えられます。

このような状況のなか、当社グループは「JR九州グループ中期経営計画2022-2024」のもと、3つの重点戦略として掲げる「事業構造改革の完遂」、「豊かなまちづくりモデルの創造」及び「新たな貢献領域での事業展開」を推進するとともに、重点戦略の実行を支える「戦略実行・実現を担う人づくり」及び「グループ一体で戦略を推進する基盤づくり」に注力してまいりました。

また、加速度的に変化する社会の中で、グループの未来を作る「人、モノ、新技術」への投資を積極果敢に行うなど、今後の持続的な成長に繋がる取り組みを推進しました。

この結果、営業収益は前期比8.1%増の4,543億93百万円、営業利益は前期比25.2%増の589億76百万円、EBITDAは前期比19.8%増の959億55百万円、経常利益は前期比21.7%増の595億71百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比13.6%増の436億57百万円となりました。

当社グループの業績をセグメントごとに示すと次のとおりです。

(単位:百万円

セグメントの名称

営業収益

営業利益

EBITDA(注2)

当連結

会計年度

前期比

増減

前期比

増減率

当連結

会計年度

前期比

増減

前期比

増減率

当連結

会計年度

前期比

増減

前期比

増減率

運輸サービス

169,337

5,551

3.4%

12,186

1,790

17.2%

25,392

3,041

13.6%

不動産・ホテル

143,412

10,253

7.7%

31,483

6,679

26.9%

49,608

8,775

21.5%

 不動産賃貸業

78,274

7,510

10.6%

18,215

2,333

14.7%

32,866

3,784

13.0%

 不動産販売業

32,899

△4,238

△11.4%

6,460

1,218

23.3%

6,475

1,212

23.0%

 ホテル業

32,239

6,981

27.6%

6,808

3,127

85.0%

10,266

3,778

58.2%

流通・外食

67,072

5,317

8.6%

3,482

275

8.6%

4,977

459

10.2%

建設

100,619

10,527

11.7%

7,360

1,389

23.3%

8,647

1,613

22.9%

ビジネスサービス

82,599

4,599

5.9%

5,260

1,384

35.7%

8,524

1,629

23.6%

合計

563,042

36,249

6.9%

59,773

11,520

23.9%

97,151

15,519

19.0%

調整額(注1)

△108,648

△2,258

-

△796

361

-

△1,196

341

-

連結数値

454,393

33,991

8.1%

58,976

11,881

25.2%

95,955

15,861

19.8%

(注)1 調整額は、セグメント間取引消去によるものです。

2 連結EBITDA=営業利益+減価償却費(セグメント間取引消去後、転貸を目的としたリース資産に係る減価償却費除く)、セグメント別EBITDA=各セグメント営業利益+各セグメント減価償却費(セグメント間取引消去前、転貸を目的としたリース資産に係る減価償却費除く)

 

① 運輸サービスグループ

鉄道事業においては、安全とサービスを基盤とした事業運営を行いながら、将来の技術革新や新たな価値創造を見据えた「未来鉄道プロジェクト」を推進しました。また、九州新幹線における夜間作業終了後の線路確認業務について、カメラとAIを用いた装置で実証実験を行うなど、安全性と生産性を両立したメンテナンスの拡充に取り組みました。

営業面では、福岡・大分デスティネーションキャンペーンにあわせて、当社主催の観光キャンペーン「オフろう!」を開催したほか、昨年4月には新D&S列車「かんぱち・いちろく」の運行を開始しました。また、西九州新幹線の開業2周年を地域と一体となって盛り上げるため、昨年9月に開業2周年記念プロジェクト~西九州を舞台にした人と音楽の祭典~「GO WEST2」を実施しました。そのほか、駅トイレをリニューアルする“恋するトイレプロジェクト”「HEARTFUL JR KYUSHU」やQRコード(注)を使用したチケットレスサービスを開始し、お客さまの快適性や利便性の向上を行いました。

 

また、新たなモビリティサービス(MaaS)の分野においては、九州各地域の交通事業者、自治体、観光団体等と連携し、MaaSアプリ「my route」の活用をはじめとしたボーダレスな交通サービスの実現に向けた「九州MaaS」の取り組みを昨年8月に開始しました。

この結果、営業収益は前期比3.4%増の1,693億37百万円、営業利益は前期比17.2%増の121億86百万円、EBITDAは前期比13.6%増の253億92百万円となりました。

(注)QRコードは株式会社デンソーウェーブの登録商標です。

 

② 不動産・ホテルグループ

不動産賃貸業においては、株式会社JR博多シティを中心に駅ビルテナント売上高が堅調に推移したほか、昨年4月にはJR九州リージョナルデザイン株式会社が運営する複合体験型アウトドア施設内に、「Snow Peak YAKEI SUITE ABURAYAMA FUKUOKA」を開業しました。また、オフィスビルや物流施設開発用地を取得するなど、成長投資を実施しました。

不動産販売業においては、賃貸マンションを売却したほか、分譲マンション「MJR千早ミッドスクエア」や「MJR博多ザ・レジデンス」等の引き渡しによる売上を計上しました。また、分譲マンション「MJR大分サーパスコート」や「MJR鹿児島中央駅前ザ・ガーデン」、「MJRザ・ガーデン上荒田」等の販売に取り組みました。

ホテル業においては、昨年10月にJR九州ホテルマネジメント株式会社を存続会社として、JR九州ホテルズ株式会社、JR九州ハウステンボスホテル株式会社、JR九州ステーションホテル小倉株式会社を吸収合併し、JR九州ホテルズアンドリゾーツ株式会社を設立するとともに、総合的なホテル運営会社として各社で蓄積してきたリソースやノウハウを結集して経営基盤、施設運営力の強靭化を図りました。

この結果、営業収益は前期比7.7%増の1,434億12百万円、営業利益は前期比26.9%増の314億83百万円、EBITDAは前期比21.5%増の496億8百万円となりました。

 

③ 流通・外食グループ

小売業においては、コンビニエンスストア店舗の新規出店やリニューアルによる競争力強化等に取り組みました。飲食業においては、フランチャイズ店舗の新規出店による収入拡大を図ったほか、飲食事業店舗のメニュー見直しによる競争力強化等に取り組みました。

この結果、営業収益は前期比8.6%増の670億72百万円、営業利益は前期比8.6%増の34億82百万円、EBITDAは前期比10.2%増の49億77百万円となりました。

 

④ 建設グループ

建設業においては、鉄道に係る土木・軌道・建築工事やメンテナンス事業、車両機械設備工事業を通して鉄道の安全・安定輸送の確保に取り組むとともに、北海道新幹線関連工事等の官公庁工事やマンション等の民間工事の新規受注に努めました。

また、BtoB・BtoG事業を強化し、グループ全体で更なる成長を目指すため、昨年4月に株式会社九鉄ビルト、株式会社メタルスター九州、株式会社西日本電機器製作所及び株式会社有馬電設を連結子会社化しました。

この結果、営業収益は前期比11.7%増の1,006億19百万円、営業利益は前期比23.3%増の73億60百万円、EBITDAは前期比22.9%増の86億47百万円となりました。

 

⑤ ビジネスサービスグループ

建設機械販売・レンタル事業においては、積極的な営業活動を行い収益の確保に努めました。また、広告業を中心に新規受注の獲得やコスト削減に取り組みました。

また、BtoB・BtoG事業を強化し、グループ全体で更なる成長を目指すため、昨年4月にCKレンタル株式会社、株式会社プレミアムロジックス、株式会社ビー・エス・エス及び株式会社ウイズユニティを連結子会社化しました。

この結果、営業収益は前期比5.9%増の825億99百万円、営業利益は前期比35.7%増の52億60百万円、EBITDAは前期比23.6%増の85億24百万円となりました。

 

 

 

(参考)当社の鉄道事業の営業実績

① 輸送実績

区分

単位

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

 

前年同期比(%)

営業日数

365

99.7

営業キロ

新幹線

キロ

358.5

100.0

在来線

1,984.1

100.0

2,342.6

100.0

客車走行キロ

新幹線

千キロ

64,979

100.3

在来線

200,318

102.2

265,297

101.7

輸送人員

定期

千人

214,064

104.3

定期外

117,755

103.7

331,820

104.1

輸送人キロ

新幹線

定期

千人キロ

234,362

107.1

定期外

1,751,933

101.7

1,986,296

102.3

在来線

幹線

定期

3,271,400

102.7

定期外

2,546,036

103.1

5,817,436

102.9

地方

交通線

定期

495,941

104.9

定期外

295,650

103.8

791,592

104.5

定期

3,767,341

103.0

定期外

2,841,687

103.1

6,609,028

103.1

合計

定期

4,001,704

103.2

定期外

4,593,621

102.6

8,595,325

102.9

乗車効率

新幹線

46.2

102.0

在来線

30.0

100.3

30.9

100.7

(注) 乗車効率は次の方法により算出されております。

乗車効率

輸送人キロ

×

100

客車走行キロ × 客車平均定員

 

② 収入実績

区分

単位

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

 

前年同期比(%)

旅客運輸収入

新幹線

定期

百万円

3,201

107.1

定期外

57,329

105.1

60,531

105.2

在来線

定期

27,989

102.6

定期外

62,717

104.1

90,707

103.6

合計

定期

31,191

103.1

定期外

120,046

104.6

151,238

104.2

荷物収入

10

125.1

合計

151,248

104.2

鉄道線路使用料収入

506

113.8

運輸雑収

15,301

102.3

収入合計

167,056

104.1

 

 

(2)キャッシュ・フロー

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、税金等調整前当期純利益が増加したこと等により前連結会計年度に比べ76億38百万円増加し、966億69百万円となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果支出した資金は、固定資産の取得支出が減少したこと等により前連結会計年度に比べ44億83百万円減少し、1,074億10百万円となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果支出した資金は、コマーシャル・ペーパーの発行による収入が減少したこと等により、69億31百万円となりました。(前期は322億52百万円の収入)

 

以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ161億7百万円減少し、457億99百万円となりました。

 

 

(3)生産、受注及び販売の実績

当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また人的サービスの提供を主たる業務とする場合も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で表すことはしておりません。

このため、生産、受注及び販売の実績については、「1 経営成績等の概要」におけるセグメント業績に関連付けて示しております。

 

 

2 経営者の視点による経営成績等に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。

 

(1)重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表作成に当たって採用している重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しているため省略しております。また、当社グループの連結財務諸表の作成につきましては、決算日における資産、負債及び報告期間における損益に影響を与える事項につき、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づき、合理的と考えられる範囲で継続的に見積り及び判断を行っております。ただし、実際の結果は、見積り特有の不確実性により異なる場合があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた見積りや仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

(2)経営成績の分析

① 営業収益

営業収益は、鉄道旅客運輸収入の増、不動産・ホテルの収入増などにより、前連結会計年度に比べ8.1%増の4,543億93百万円となり、4期連続の増収となりました。

 

運輸サービスセグメントは、前連結会計年度に比べ3.4%増加し、1,693億37百万円となりました。これは、当社の鉄道旅客運輸収入が、前連結会計年度に比べ4.2%増の1,512億48百万円となったこと等によるものです。

新幹線については、輸送人キロは前連結会計年度に比べ2.3%増の19億86百万人キロとなりました。定期収入は前連結会計年度に比べ7.1%増の32億1百万円、定期外収入は前連結会計年度に比べ5.1%増の573億29百万円となり、全体では前連結会計年度に比べ5.2%増の605億31百万円となりました。

在来線については、輸送人キロは前連結会計年度に比べ3.1%増の66億9百万人キロとなりました。定期収入は前連結会計年度に比べ2.6%増の279億89百万円、定期外収入は前連結会計年度に比べ4.1%増の627億17百万円、全体では前連結会計年度に比べ3.6%増の907億7百万円となりました。

 

不動産・ホテルセグメントは、前連結会計年度に比べ7.7%増加し、1,434億12百万円となりました。これは、不動産賃貸業やホテル業の収入増などによるものです。

 

流通・外食セグメントは、前連結会計年度に比べ8.6%増加し、670億72百万円となりました。これは、小売業の収入増などによるものです。

 

建設セグメントは、前連結会計年度に比べ11.7%増加し、1,006億19百万円となりました。これは、工事の増などによるものです。

 

ビジネスサービスセグメントは、前連結会計年度に比べ5.9%増加し、825億99百万円となりました。これは、受注の増などによるものです。

 

② 営業費

営業費は、前連結会計年度に比べ5.9%増加し、3,954億17百万円となりました。

運輸業等営業費及び売上原価は、前連結会計年度に比べ3.9%増加し、2,650億13百万円となりました。これは、建設業の売上増等によるものです。

 販売費及び一般管理費については、前連結会計年度に比べ10.3%増加し、1,304億3百万円となりました。これは、人件費の増等によるものです。

 

③ 営業利益

営業利益は、前連結会計年度に比べ25.2%増加し、589億76百万円となりました。

なお、営業収益に対する営業利益の比率は、前連結会計年度の11.2%に対し、当連結会計年度は13.0%となりました。

 

④ 営業外損益

営業外収益は、前連結会計年度に比べ10.2%減少し、43億50百万円となりました。これは、持分法による投資利益の減等によるものです。

営業外費用は、前連結会計年度に比べ25.1%増加し、37億55百万円となりました。これは支払利息の増等によるものです。

 

⑤ 経常利益

経常利益は、前連結会計年度に比べ21.7%増加し、595億71百万円となりました。

なお、営業収益に対する経常利益の比率は、前連結会計年度の11.6%に対し、当連結会計年度は13.1%となりました。

 

⑥ 特別損益

特別利益は、前連結会計年度に比べ40.1%減少し、109億94百万円となりました。これは、関係会社株式売却益の減等によるものです。

特別損失は、前連結会計年度に比べ24.2%減少し、143億36百万円となりました。これは、災害損失引当金繰入の減等によるものです。

 

⑦ 親会社株主に帰属する当期純利益

親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ13.6%増加し、436億57百万円となりました。

 

(3)財政状態の分析

当連結会計年度末の資産の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ4.7%増加し、1兆1,405億9百万円となりました。流動資産は、有価証券の減等により前連結会計年度末に比べ3.3%減少し、2,141億46百万円となりました。固定資産は、有形固定資産の増等により前連結会計年度末に比べ6.8%増加し、9,263億62百万円となりました。

一方、負債の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ5.4%増加し、6,818億88百万円となりました。流動負債は、コマーシャル・ペーパーの減等により前連結会計年度末に比べ5.2%減少し、2,127億6百万円となりました。固定負債は、社債の増等により前連結会計年度末に比べ11.0%増加し、4,691億81百万円となりました。

また、純資産の部の合計額は、前連結会計年度末に比べ3.7%増加し、4,586億20百万円となりました。これは、利益剰余金の増等によるものです。

 

(4)資本の財源及び資金の流動性

① キャッシュ・フロー

現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ161億7百万円減少し、457億99百万円となりました。

営業活動の結果得られた資金は、税金等調整前当期純利益が増加したこと等により前連結会計年度に比べ76億38百万円増加し、966億69百万円となりました。

投資活動の結果支出した資金は、固定資産の取得支出が減少したこと等により前連結会計年度に比べ44億83百万円減少し、1,074億10百万円となりました。

財務活動の結果支出した資金は、コマーシャル・ペーパーの発行による収入が減少したこと等により、69億31百万円となりました。(前期は322億52百万円の収入)

 

② 重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源

「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1) 重要な設備の新設等」に記載のとおりです。

 

③ 財務政策

資金調達については、財務健全性を維持しつつ主として借入余力を活用した投資計画や既存債務の返済資金のうち、当社グループのキャッシュ・フローで不足する部分を調達しております。その調達手段は、主に社債の発行や金融機関からの借入等、市場や金利の動向を総合的に勘案しながら決定しております。

当社グループはキャッシュマネージメントサービス(CMS)を導入しており、CMS参加各社の余裕資金の運用と資金調達の管理を一括して行うことで、資金効率の向上に努めております。

当社は、当連結会計年度に国内において償還期限を2027年、2029年及び2044年とする無担保普通社債及び償還期限を2034年とする2本のグリーンボンドを総額400億円発行いたしました。これらの社債は、株式会社格付投資情報センターよりAA-の格付を取得しております。

当社グループは、資金の流動性確保のため、主要な取引銀行に当座借越枠を設定しております。なお、当連結会計年度末における当座借越残高はありません。また、コマーシャル・ペーパーについて、当社は株式会社格付投資情報センターよりa-1+の短期(CP)格付を取得しております。なお、当連結会計年度末におけるコマーシャル・ペーパーの発行残高は250億円であります。

 

(5)経営者の問題認識と今後の方針について

経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照下さい。

 

5【重要な契約等】

 経営上の重要な契約等は以下のとおりです。

契約会社名

相手先

契約内容

当社

北海道旅客鉄道㈱

東日本旅客鉄道㈱

東海旅客鉄道㈱

西日本旅客鉄道㈱

四国旅客鉄道㈱

乗車券等の相互発売等旅客営業に係る取扱い

会社間の運賃及び料金の収入区分並びに収入清算の取扱い

駅業務並びに車両及び鉄道施設の保守等の業務の受委託

会社間の経費清算の取扱い 等

当社

日本貨物鉄道㈱

貨物会社が当社の鉄道線路を使用する場合の取扱い

駅業務並びに車両及び鉄道施設の保守等の業務の受委託

会社間の経費清算の取扱い 等

当社

鉄道情報システム㈱

旅客会社6社共同で列車の座席指定券等の発売を行うためのオンラインシステム(マルスシステム)の使用

各旅客会社間の収入清算等の計算業務の委託 等

当社

(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構

九州新幹線(博多・鹿児島中央間)及び西九州新幹線(武雄温泉・長崎間)の鉄道施設の貸付け及び貸付け後の鉄道施設の管理 等

 

6【研究開発活動】

当社グループにおいては、運輸サービスグループを中心に、更なる安全性の向上と低コスト体制の構築、お客さま満足の向上に資するための研究開発活動を行っております。

当連結会計年度における研究開発活動の総額は、507百万円です。

 

(1)運輸サービスグループ

当社は、鉄道固有の技術的な問題点の解明や新技術の開発を中心とした研究開発を、公益財団法人鉄道総合技術研究所に委託しており、「研究開発等に関する協定」に基づき、当連結会計年度には、507百万円の負担金を支払っております。

 

2025年3月期 公益財団法人鉄道総合技術研究所 研究開発指定課題(主要項目)

・公衆通信回線利用の統合型列車制御システムの開発

・ドローン等を活用した橋りょうの性能評価手法の構築

・仕業検査支援装置(屋根上・床下撮影装置)を用いた検査手法の構築

・レール腐食による損傷を防止するための非破壊検査手法の開発

 

(2)不動産・ホテルグループ、流通・外食グループ、建設グループ、ビジネスサービスグループ

特に記載する事項はありません。