第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1)経営方針

当社グループは、「新しい価値の創造により社会の持続的発展に貢献する」を経営理念とし、地域の安全・安心と持続ある国土形成に寄与する事業分野における活動を行っています。

当社設立母体であり現在は当社の特定完全子会社である株式会社福山コンサルタントにおいて、運営の基本としてきた「基本は技術」という考え方を、当社グル―プ全体に共通する「Strong Culture」として承継・育成し、多様化・複雑化する社会資本整備における要請に対して、多分野の専門家の知見を統合し提供する集団として常に高い技術力で応え続けてまいります。

(2)中長期的な経営戦略および経営指標

第5次中期経営計画(2022年7月から2028年6月まで)において、急変する社会状況や不確実性が増す事業環境に臨機に対応すべく「再定義(Redefinition)」を旗印として、常に社会の役に立ち続ける組織としての成長を目指しています。そして、同経営計画期間末には売上高100億円を計画しています。また年次の目標指標は、売上高成長率5%以上、営業利益率10%以上、ROE10%以上としています。

同経営計画における戦略は以下のとおりです。加えて人的資本投資の強化戦略も加えて競争力強化、経営基盤の強化に取り組んでいます。

① 建設コンサルタント事業(既存事業)の深化

② 研究開発、他社連携を核とした共創戦略(前中期経営計画から持続)の強化

③ M&A推進を中心とした規模・展開する市場の拡張

(3)経営環境

当社グループの属する建設コンサルタント業界は、防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策などを背景とした公共投資規模の安定的な持続を受けて、概ね堅調に推移しています。今後も頻発化・激甚化する自然災害対策や2050年カーボンニュートラルの実現に向けたGXなど多様化するニーズを背景に、堅調な市場環境が継続するものと想定しています。

特に、地震・集中豪雨やこれらに伴う土砂崩れ等の自然災害に対応する防災・減災事業、老朽化するインフラ設備(道路・橋梁)の老朽化対策事業に加え、グリーンインフラ等のインフラ・まちづくり分野における脱炭素化の推進など、様々な課題への対応が求められています。またDXや新技術開発による効率的な事業推進に加え、女性や外国人を含む多様な人材が働きやすい労働環境の整備、働くことを通しての職員個々における自己実現といった、より高い次元での経営力や企業グループとしての有機的な組織力が必要となっています。

(4)対処すべき課題

当社グループの属する建設コンサルンタント業界の主な市場である公共事業費は、年度当初予算で前年度と同水準が確保されています。また、年間予算総額も前年度とほぼ同水準の規模となるものと予想しており、足元の受注動向も順調に推移しています。

2025年6月期は2022年7月から開始した中期経営計画の前期3年間の最終年となることから、以下の目標を着実に実行し、ステークホルダーの皆様の期待にお応えできるよう業務を推進していく所存です。

① 社会の持続的発展に貢献できる「価値」の創出

② グループ各社の事業基盤の強化と一体的変革

③ 多様な働き方、社員の自己実現の場としての組織編制

④ サスティナブル経営力の向上

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)ガバナンス

当社は、経営理念「新しい価値の創造により社会の持続的発展に貢献する」でも挙げているようにサステナビリティを最重要課題に位置付けて経営を行なっています。

2020年12月にはSDGs宣言を行ない、2021年11月にはグループ全体の推進組織として、担当取締役を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」を立ち上げて活動しています。同委員会では半期に一度、活動内容や企業持続性へのリスク等を取りまとめ、取締役会に付議・報告を行い、審議結果を経営戦略に反映させる体制としています。

 

(2)戦略

  <サステナビリティに関する戦略>

当社グループは、建設コンサルタントとしての社会資本整備への貢献(防災・減災事業、老朽化対策事業の展開、環境保全等)や国土形成計画の推進に資する都市再生・地方創生に関するコンサルティングを通じた地域課題・社会課題解決などを通じて、社会の持続的発展に取り組みます。

当社グループにおける、気候変動に対する取り組みとして行っている主なコンサルティング事業は以下のとおりです。

① グリーンインフラに関する連携協定締結による自然資本を活用したまちづくり等を行っており、低炭素社会の実現に継続して貢献してまいります。    

② 頻発する豪雨災害による社会インフラ損傷対策の研究と商品化を進めています。

③ 海外における水資源開発事業等を通じて、環境保全と生物多様性保全に取り組んでまいります。

 

<人的資本に関する戦略>

当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針は、以下のとおりです。

① これまで培ってきた建設コンサルタント業の深化と業容の拡大に向けて、新卒採用者および専門知識を有する中途採用者の採用を積極的に継続します。

② 従業員エンゲージメント向上に向けて、リーダーシップ研修・専門技術研修・DX技術習得研修・資格取得支援などの技術力向上意欲を誘発する様々な施策を実施するとともに、働きやすさの向上のためのコミュニケーションスペースの設置、多様な報酬制度の導入などの福利厚生施策を実施しています。

③ 資格取得支援においては技術力向上の基盤となる技術士資格取得支援に重点をおいて実施し、技術社員数に対する技術指数(延数)は99.5%に達しています。今後は若年層の早期取得の推進など積極的な取得支援を継続します。

④ 異なる経験・技能・属性を反映した多様な価値観を有する人材が、個性や能力を発揮し活躍できるような雇用制度、企画提案型の海外研修や新規事業開発における内発的な創業支援等の社員の自主性を重視した活躍の場の提供を行っています。

 

(3)リスク管理

当社グループは、サステナビリティ課題への対応はリスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、取締役会が積極的・能動的に取り組みます。グループ全体の取り組み推進は取締役会傘下の「サステナビリティ推進委員会」が中心となって行います。

気候変動と人的資本に関する企業の持続性へのリスクとして①災害・事故・犯罪、②労務、③法令順守(コンプライアンス)、④経営事案、⑤感染症・伝染病、⑥諸外国の政情不安等、⑦その他リスク事案に分類して管理を行っています。管理主体として、担当取締役を事務局長とする「危機管理事務局」を常設しており、重要危機管理事案の発生時には代表取締役社長を責任者とする危機管理本部を立ち上げて対応を行います。

 

 

(4)指標及び目標

  <サステナビリティに関する指標及び目標>

当社グループでは、建設コンサルタント事業を中核事業とし、多発する自然災害や老朽化する社会資本の維持・更新、高齢化社会に対応した再整備、また、新しい技術を活用した次世代社会の創設など、人々の生活に密着した事業活動を行っており、社会の一員として、当社グループが保有する技術と様々な分野の企業・団体との共創により、人々が安心して生活できる持続可能な社会の実現に貢献しています。社会の持続的発展に資するための建設コンサルティングを中心とした活動については、当社が発出したSDGs宣言に沿って各事業会社でそれぞれの目標を設定し、推進します。SDGs宣言は①社会・地域の持続的発展、②環境の保全、③新規事業の開発、④品質の向上、⑤人権の尊重、⑥企業統治に分類して策定しています。

 

<人的資本に関する指標及び目標>

当社グループでは、上記「(2) 戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針について、「5 従業員の状況」に記載した指標を用いています。

当社グループでは多様性を重視した経営を推進していますが、当社グループが属する建設コンサルタント業界の女性労働者比率は他業界と比べてかなり低いレベルにあり、株式会社福山コンサルタントの正社員における女性社員の比率も11.7%となっているため、それに連動して女性管理職比率も低い値となっています。また、男女間賃金差異については、女性の正規労働者比率と平均年齢の低さに起因するものです。

しかし、ここ数年、採用人数における女性比率を引き上げており、多様性を重視する取り組みと合わせて女性管理職比率の引き上げ、男女間賃金差異の縮小を目指します。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する記述は、当連結会計年度末(2024年6月30日)現在において、当社グループが判断したものです。

①  国・地方公共団体への高い受注依存

国および地方公共団体からの受注比率が高いことから、社会資本整備関係予算が縮減された場合には、経営成績に影響を受ける可能性があります。このリスクに対応するため、民間事業者等の受注増加に向けた活動を強化しています。

 

②  法的規制

会社法、金融商品取引法、独占禁止法、個人情報保護法、下請法、建設コンサルタント登録規程などの様々な法的規制の適用を受けています。関連する内容で会社の信頼を損なう事態が発生した場合には、国および地方公共団体からの受注の前提となる指名競争入札参加資格の取り消しや一定期間の停止も予想され、その場合には経営成績に影響を受ける可能性があります。このリスクに対応するため、コーポレート・ガバナンス体制の強化、コンプライアンス姿勢の徹底を経営の重要課題として運営しています。

 

③  契約不適合責任

契約不適合責任が発生した場合には、当該顧客からの指名競争入札参加資格の停止等により経営成績に影響を受ける可能性があります。そのため、品質保証規格ISO9001を活用して、成果品質の確保と向上に努めています。なお、万一契約不適合責任が発生した場合の損害賠償請求に備え、建設コンサルタント損害賠償責任保険に加入しています。

 

④  情報セキュリティ

事業活動において個人情報等、種々の秘匿対象情報を取り扱う場合もあります。万が一情報漏洩等が発生した場合には、経営成績に影響を受ける可能性があります。このリスクに対応するため、プライバシーマークの取得(第17003301(03)号)による信頼性を確保するとともに、リスク管理マニュアルならびに情報セキュリティ管理規程に基づき、漏洩防止の徹底を図っています。IT化や電子納品制度の進展に伴い、情報セキュリティに関する潜在的なリスクが増大していることから、管理体制と社員教育の一層の強化を進めています。

 

⑤ 災害等による事業活動への影響

当社グループでは、万一の自然災害に備えたBCP(事業継続計画)を策定するとともに、定期的な訓練により防災管理体制を敷いています。しかし、自然災害の規模によっては事業活動が低下あるいは制約される等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 海外における内戦や政変等のカントリーリスク

当社グループでは、ОECD(経済協力開発機構)やR&Iが発表しているカントリーリスクの格付け情報によってリスクレベルを継続的に把握・モニタリングするとともに、海外展開地域の拡大・分散によるカントリーリスクの軽減を行い、経営への影響の最小化を図っています。しかし、今後当社グループが事業展開する地域において対象となる事案が発生した場合には、一時的に業務の中断や延期によって、経営に影響を受ける可能性があります。

 

 

⑦ 業績の季節変動

当社グループの売上高は、主要顧客である国および地方公共団体への納期が年度末に集中することから、売上高ならびに利益が第3~4四半期連結会計期間に偏重する傾向がありましたが、第6期期首から適用した「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等によりこの偏重傾向は緩和しています。

なお、前連結会計年度及び当連結会計年度の各四半期連結会計期間の売上高、営業損益は下表のとおりです。

                                                                                   (単位:千円)

 

2023年6月

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

  合計

売上高

1,823,329

2,029,573

2,567,991

2,145,805

8,566,699

営業損益

192,898

156,910

408,934

436,006

1,194,750

 

 

                                                      (単位:千円)

 

2024年6月

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

  合計

売上高

1,743,805

2,013,132

2,624,998

2,144,780

8,526,716

営業損益

105,305

121,845

550,081

357,988

1,135,221

 

 

⑧ 業務提携・企業買収等のリスク

当社グループでは、中期経営計画に基づいて他社との業務提携を積極的に推進しています。加えて、企業買収等についても重要な成長戦略のひとつと位置付けています。企業買収等に際しては、対象企業の財務・事業等について事前に十分にリスクを吟味し正常収益力を分析した上で機関決定しますが、買収後に偶発の債務の発生や未認識債務の判明等事前調査で把握できなかった問題が生じた場合、また事業の展開等が計画どおりに進まず想定した企業価値の向上を生まない場合には、のれんの減損処理を行う必要が生じる等、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

⑨ 人材確保と育成について

当社グループの事業は、人材への依存度が高く、成長戦略の推進においては専門性の高い人材の確保と育成が大きな鍵となっています。「Strong Culture」と位置付けた「基本は技術」を前提とした、多様な人材、専門性の高い人材採用施策を推進しています。また、社内外研修会、技術士資格取得支援制度、博士号取得支援制度に代表される教育訓練システムの活用と多様な働き方の制度導入によって、人材の育成施策、定着施策を強化しています。しかし、他産業を交えた工学系専門人材の獲得競争激化によって、人材採用が計画通り進まなかった場合や優秀な人材の流出が続いた場合には、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

① 財政状態の状況

当連結会計年度の財政状態は、総資産は前連結会計年度末に比べて2億62百万円増加し、92億84百万円となりました。これは主に、現金及び預金が93百万円、完成業務未収入金及び契約資産が3億13百万円、退職給付に係る資産が1億5百万円増加した一方で、のれんが2億14百万円減少したことによるものです。

負債は前連結会計年度末に比べて4億4百万円減少し、17億55百万円となりました。これは主に、従業員持株会支援信託ESОP導入に伴い持株会側が調達した長期借入金1億42百万円の債務保証額と未払法人税等が1億16百万円増加した一方で、一年内返済予定の長期借入金が6億50百万円減少したことによるものです。なお、東京拠点社屋整備資金として調達していた長期借入金は当期中に完済し、実質的に金融機関からの借入額はありません。

純資産は前連結会計年度末に比べて6億66百万円増加し、75億29百万円となりました。これは主に、利益剰余金の増加5億14百万円によるものです。

 

② 経営成績の状況

当連結会計年度における我が国経済は、雇用や企業業績において緩やかな改善傾向はあるものの為替の変動や物価の高騰が続き、世界経済は政情不安や金融引き締めへの警戒感の高まりによって、全体的には不透明な状況が続いています。

当社グループの属する建設コンサルタント業界は、年初に発生した「令和6年能登半島地震」においても強く認識された防災・減災対策の強化や老朽化した社会インフラの維持管理等、国土強靱化対策の予算確保など、堅調な市場環境で推移しました。

このような状況の中で、当社グループは経営理念[新しい価値の創造により社会の持続的発展へ貢献する]の実現に向けて2022年7月に策定した第5次中期経営計画「Redefinition:再定義」に沿って、グループ内および外部企業・団体との共創戦略により、「社会の持続的発展に貢献できる価値の創出」、「グループ各社の事業基盤の強化と一体的変革」、「多様な働き方、社員の自己実現の場としての組織編制」、「サスティナブル経営力の向上」に取り組んでいます。

具体的には、得意とする分野において国等から多数の業務表彰等を受けるなど高い顧客評価を継続しつつ、新たにインフラメンテナンス事業の拡大を目指した新法人の設立や、発生が懸念される大規模災害対応としての防災・減災事業の強化、AIを活用した新規事業への参入、海外でのSDGs関連事業への取り組み強化等を、グループ内外の共創戦略として進めました。

以上の結果、当連結会計年度の業績としては、当期中受注高は86億22百万円(前期比4.7%減)で、前期からの繰越を含む総業務量は140億99百万円(同0.4%増)を確保しました。売上高は発注時期の遅延により生産工程に投下できる時間が低下したことから、前年同期を若干下回る85億26百万円(同0.5%減)となりましたが、翌期への繰越業務量は55億72百万円(同1.8%増)を確保して順調な滑り出しとなっています。

損益面では、採用数の増加や賃上げ等を含む積極的な人材投資、研究開発など成長戦略への積極的な投資により、経常利益は11億35百万円(同5.6%減)となりました。また、連結子会社である株式会社地球システム科学において、事業展開するスーダン国等の政情悪化の影響および今後の地政学上のリスク想定により、同社の将来収支計画を保守的に見直すこととし、特別損失に減損損失として1億83百万円を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、6億70百万円(同17.1%減)となりました。

 

当連結会計年度の建設コンサルタント事業における事業分野別の売上高は次のとおりです。

事業分野

前連結会計年度

当連結会計年度

前年比(%)

 

金額(千円)

比率(%)

金額(千円)

比率(%)

モビリティ形成事業

2,960,843

34.6

2,871,006

33.7

△3.0

環境、都市・地域創生事業

1,424,458

16.6

1,425,235

16.7

0.1

社会インフラ、防災事業

4,181,398

48.8

4,230,473

49.6

1.2

合計

8,566,699

100.0

8,526,716

100.0

△0.5

 

 

当連結会計年度の建設コンサルタント事業における国内・海外での販売実績は次のとおりです。

事業分野

前連結会計年度

当連結会計年度

前年比(%)

 

金額(千円)

比率(%)

金額(千円)

比率(%)

国内

7,985,480

93.2

7,934,454

93.1

△0.6

海外

581,219

6.8

592,262

6.9

1.9

合計

8,566,699

100.0

8,526,716

100.0

△0.5

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金および現金同等物(以下「資金」という)は、17億23百万円となりました。なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、獲得した資金は7億17百万円(前連結会計年度は6億19百万円の獲得)となりました。

これは主に、税金等調整前当期純利益11億62百万円、売上債権の増加額3億13百万円、法人税等の支払額2億61百万円などによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果、獲得した資金は36百万円(前連結会計年度は1億61百万円の使用)となりました。

これは主に、保険積立金の払戻しによる収入3億79百万円、電子計算機を主とする有形固定資産の取得による支出2億84百万円などによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果、使用した資金は6億61百万円(前連結会計年度は7億85百万円の使用)となりました。

これは主に、長期借入金の返済による支出6億67百万円、配当金の支払額1億55百万円などによるものです。

 

④ 受注及び販売の状況

1) 受注の状況

当連結会計年度における建設コンサルタント事業の分野別の受注状況は次のとおりです。

事業分野

当連結会計年度

(自  2023年7月1日

至  2024年6月30日)

受注高

金額(千円)

前年比(%)

モビリティ形成事業

2,884,715

△6.1

環境、都市・地域創生事業

1,495,455

△11.5

社会インフラ、防災事業

4,242,434

△1.0

合計

8,622,605

△4.7

 

 

当連結会計年度における建設コンサルタント事業の国内・海外での受注状況は次のとおりです。

事業分野

当連結会計年度

(自  2023年7月1日

至  2024年6月30日)

受注高

金額(千円)

前年比(%)

国内

7,988,217

△8.8

海外

634,388

118.8

合計

8,622,605

△4.7

 

 

2) 販売実績

当連結会計年度における建設コンサルタント事業の分野別の販売実績は、次のとおりです。

事業分野

当連結会計年度

(自  2023年7月1日

至  2024年6月30日)

売上高

金額(千円)

前年比(%)

モビリティ形成事業

2,871,006

△3.0

環境、都市・地域創生事業

1,425,235

0.1

社会インフラ、防災事業

4,230,473

1.2

合計

8,526,716

△0.5

 

 

当連結会計年度における建設コンサルタント事業の国内・海外での販売実績は次のとおりです。

事業分野

当連結会計年度

(自  2023年7月1日

至  2024年6月30日)

売上高

金額(千円)

前年比(%)

国内

7,934,454

△0.6

海外

592,262

1.9

合計

8,526,716

△0.5

 

 

(注)1 当連結会計年度における主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりです。

相手先

前連結会計年度

(自  2022年7月1日

至  2023年6月30日)

当連結会計年度

(自  2023年7月1日

至  2024年6月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

国土交通省

2,861,579

33.4

2,675,021

31.4

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年6月30日)現在において、当社が判断したものです。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表の作成にあたっては、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われており、資産・負債の状況を反映しています。これらの見積りおよび仮定については、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、これらの見積りおよび仮定には不確実性が伴うため、実際の結果はこれらの見積りとは異なることがあります。

当社グループの連結財務諸表において採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載していますが、特に重要なものは以下のとおりです。

1) 受注損失引当金

当社グループは、受注業務に係る将来の損失に備えるため、当連結会計年度末の未成業務のうち、損失の発生が見込まれ、かつ、当該損失額を合理的に見積ることができる業務については損失見込額を計上しています。想定外の事象の発生等により、当初の想定損失見込額より多額となる場合は、実際の損失見積額と異なる可能性があります。

2) 繰延税金資産

当社グループは、連結貸借対照表上の資産・負債の計上額と課税所得の計算上の資産・負債との一時差異に関して法定実効税率を用いて繰延税金資産および繰延税金負債を計上しています。また、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際しては、将来の課税所得を十分に検討し、合理的に見積っていますが、将来の課税所得が予想を下回った場合は、繰延税金資産の修正が必要となる可能性があります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高は85億26百万円と前連結会計年度と比べ39百万円減少しました。売上総利益は29億11百万円と前連結会計年度と比べ80百万円減少しました。売上高に対する売上総利益率は34.1%となり、前連結会計年度と比べ0.8ポイント減少しました。

販売費及び一般管理費は17億76百万円と前連結会計年度と比べ21百万円減少しました。売上高に対する販売費及び一般管理費率は20.8%となり、前連結会計年度と比べ0.2ポイント減少しました。

営業利益は11億35百万円と前連結会計年度と比べ59百万円減少しました。売上高に対する営業利益率は13.3%となり、前連結会計年度と比べ0.6ポイント減少しました。

営業外収益は10百万円と前連結会計年度と比べ11百万円減少しました。また、営業外費用は10百万円と前連結会計年度と比べ3百万円減少しました。

経常利益は11億35百万円と前連結会計年度と比べ66百万円減少しました。売上高に対する経常利益率は13.3%と前連結会計年度と比べ0.7ポイント減少しました。

また、当社グループのキャッシュマネジメントの一環として連結子会社である株式会社地球システム科学の保険契約を見直した結果、特別利益に受取保険金2億20百万円を計上し、同社が事業展開するスーダン国等の財政悪化の影響および今後の地政学上のリスク想定により、同社の収支計画を保守的に見直し、特別損失にのれんの減損損失1億83百万円を計上しました。

その結果、親会社株主に帰属する当期純利益は6億70百万円となり、前連結会計年度と比べ1億38百万円減少しました。

なお、当連結会計年度末の総資産が92億84百万円と前事業年度と比べ2億62百万円増加しましたが、自己資本比率が81.1%と前連結会計年度末と比べ5.0ポイント上昇し、当社グループは引き続き健全な財政状態であると認識しています。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製造原価、販売費及び一般管理費等の営業費用です。投資を目的とした資金需要は、主に設備投資やM&A等によるものです。

事業の運転資金及び設備投資資金は、自己資金及び金融機関からの借入金を基本方針としています。

 

④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

2022年6月期までの第4次中期経営計画(Co-Creation(共創)22)で取り組んだ成長戦略を更に強力にすすめるべく、2022年7月より第5次中期経営計画(再定義:Redefinition:対象期間は2028年6月まで)を策定し推進しています。この新中期経営では、長期の経営思想や根本骨格に変更はありませんが、事業環境や資本市場からの要請も踏まえて、常に戦術や施策の進化をはかりながら、売上高成長率5%以上、売上高営業利益率10%以上、RОE10%以上の継続達成に努めて、100年企業への成長の基盤を構築してまいります。

なお、当連結会計年度の各指標の実績は、売上高成長率△0.46%、売上高営業利益率13.3%、RОE9.3%です。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

頻発・激甚化する自然災害や、急速に老朽化が進む土木インフラに対し、財政制約や労働力不足などの課題を背景に、適切な対応が求められています。当社グループは、これらの社会的課題に対処するため、DXをはじめとする先端技術を積極的に活用し、社会実装に向けた体系的かつ戦略的な研究開発を推進しています。具体的には、幅広いテーマを扱う「基礎研究」、研究の熟度を高め知財化や商品化をめざす「新技術開発」、開発商品の業務展開や販売を促進する「新商品事業展開」の3つに区分しています。

「基礎研究」については、既存技術の高度化に加え、新事業の展開を支える技術としてAI、ブロックチェーン、最適化等の先端的技術についても、大学との共同研究、学位取得制度、企業連携等を活用して、その技術習得に努め、その成果を活用して積極的に特許取得に結びつけています。これらの基礎研究に加え、より幅広い技術習得のため、MBAやMОT取得などマネジメント分野の技術も積極的に習得しています。

「新技術開発」では、AIベンダー、IoTメーカー、ビッグデータホルダー等の外部異業種企業とのアライアンスを加速し、外部企業の持つ技術と当社技術のシナジーにより先端的技術開発を早期に商品化できるよう研究開発を進めています。特に、防災・減災、インフラメンテナンス、スマートシティ、交通ビッグデータ分析、新モビリティ等の各研究分野に集中的に投資し、早期の商品化を目指しています。

「新商品事業展開」では、インフラモニタリング、防災・減災、新モビリティ、交通ビッグデータ分析、SDGs、下水道等の各分野について、他機関とも連携しながら業務活用や事業展開を図っています。

具体的な主な製品開発及び特許取得は、以下のとおりです。

 

① インフラメンテナンス事業に関する新会社設立

当社グループが保有する非破壊検査技術と、AI等の技術との連携により最先端の計測技術と分析・解析技術を進化させ、インフラメンテナンス事業の拡大や、インフラ施設の包括管理事業の展開を加速するため、2024年3月に株式会社インフラ・テックショリューションズ、4月に株式会社インフラ・テックショリューションズ西日本を設立しました。

具体的な技術として、株式会社福山コンサルタントが手掛けている国立研究法人理化学研究所発の完全非破壊塩分計測技術RANS-μ技術、株式会社地球システム科学が得意とするオーリス・ミラ等の非破壊検査技術、株式会社環境防災が保有するコンクリートや鋼材等の非破壊検査及び物性試験によるASR等の劣化診断技術、当社グループの研究機関である株式会社SVI研究所が開発したAI技術を活用した事業展開を進めています。

 

② 防災DXサービス開発

株式会社福山コンサルタントでは、3D都市モデル(PLATEAU)ユースケース開発として、これまで浸水災害の避難行動立案支援ツールや、人口衛星データを用いた浸水被害把握ツール等の防災DXツールの開発を行ってきました。これらの技術と日本電気株式会社(NEC)が有するデジタルプラットフォーム技術を融合させ、防災情報の一元化と市民への情報提供手法の共同開発を進めています。特に、住民の防災意識向上や、災害発生時の市民へ迅速な情報提供に基づく避難誘導、そして復旧・復興時においての人員不足の解消に焦点を当て、防災DXサービスを開発することにより、地域社会の安全と安心を向上させ、災害時の迅速で的確な対応を可能にし、地域全体のレジリエンスを高めることを目指します。

 

③ 生物多様性事業の取り組み

株式会社エコプラン研究所、株式会社福山コンサルタント等で構成される響灘ビオトープ共同事業体が指定管理者を務める「響灘ビオトープ」が2023年10月に「自然共生サイト」に認定されました。

株式会社エコプラン研究所では、この実績や、豊富な自然環境調査・分析の経験を活かし、基礎調査や計画立案、認証の登録手続き、認定後の管理業務などをワンストップで提供する自然共生サイト(ОECM)認定支援サービスを開始しました。

 

④ 自動運転等の交通関連サービスの展開

株式会社福山コンサルタントは、株式会社RYОDEN、株式会社ヴィッツと共に、仮想空間シミュレーター「WARXSS®」を用いた交通安全対策や自動運転に関する課題解決を図るサービスを開始しました。本サービスにより、高度で幅広い交通安全対策や持続可能な自動運転サービスカーの導入を加速させ、専門性の高い分野における人手不足や高齢化社会におけるラストマイルの課題の解決につなげることで、安全・安心な社会の実現に貢献していきます。

 

 

⑤ SDGs事業の取り組み

株式会社福山コンサルタントは、MIRARTHホールディングス株式会社のグループ会社である株式会社レーベンクリーンエナジー、株式会社トッププランニングJAPANと共に、MIRARTHグリーンテック株式会社(国内法人)、および同社100%出資によるMIRARTH Agri Tech Co.,Ltd.を設立し、カンボジア産カシューナッツ殻を活用したバイオマス燃料化事業に着手しました。

これらの事業会社の設立により、当地におけるカシューナッツ生産・加工・流通に関する技術をより発展させる形で、現地工場の建設、現地雇用の拡大、日本の製造オペレーション技術導入による労働生産性の向上により、同国の経済発展を支援するとともに、カシューナッツ殻のバイオマス活用事業の開発を進め、カーボンニュートラルへの貢献を目指します。

 

⑥ AIを活用した下水道管路の維持管理事業を展開

全国で約50万km存在する下水道管路は、今後急速に老朽化する上、予算的な制約と技術継承の課題もあるため、これまで以上に点検・修繕の効率化と信頼性の両立が重要となっています。株式会社SVI研究所では、AIを活用した下水道管路損傷診断技術、下水道管路損傷予測技術、雨天時浸入水予測技術等の維持管理分野の技術を開発してきました。

株式会社福山コンサルタントでは、これらの技術を用いた効率的な下水道管路の維持管理の実現、上下水道分野の官民連携事業であるウォーターPPPに活用した展開を進めていきます。

 

⑦ 大規模言語モデルを活用した研究開発の特許を出願

株式会社SVI研究所では、大規模言語モデルを活用した生成AIにより、生活者の質問の意図を把握し、求める情報をその状況・環境に合わせて適切に提供することで行動を支援するシステムに関する特許を出願しました。本技術を活用した観光・交通・小売など各専門事業者と連携し、その知見を掛け合わせるオープンイノベーションを活用し、広範囲での市場展開を目指していきます。

 

  上記活動における支出は111,011千円です。