第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものです。

 

(1) 会社の経営の基本方針

<行動指針>

当社は、「やさしく、つよく、おもしろく。」を行動指針としています。

[やさしく]

私たちの会社が社会に受け入れられるための前提となるものです。

相互に助け合うということ、

自分や他人を「生きる」「生かす」ということです。

 

[つよく]

企画やアイデアやコンテンツを、

会社として、組織として「実現」「実行」できること、

現実に成り立たせることです。

 

[おもしろく]

新しい価値を生み出し、コンテンツとして成り立たせるということです。

「ほぼ日刊イトイ新聞」や「TOBICHI」のように

「場」を生み出し、人が「場」に集まる理由です。

これがほぼ日の強みです。

 

 

ほぼ日は、この言葉の順番もたいせつにしています。

まず「やさしく」が、おおもとの前提にあり、

「やさしく」を実現する力が「つよく」です。

その上に、新しい価値となる「おもしろく」を

どれだけ生み出せるかが、ほぼ日の特徴です。

 

 

当社は「場」をつくり、「いい時間」を提供するコンテンツを企画、編集、制作、販売しています。ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」、主力商品の『ほぼ日手帳』のほか、最近立ち上げた「ドコノコ」「生活のたのしみ展」「ほぼ日の学校」などが、「場」だと考えています。

 

<場>

「場」では、コンテンツの作り手と受け取り手が出会います。当社が目指す「場」では、作り手だけでなく、コンテンツの受け取り手も前向きな姿勢で参加します。また、「場」に参加する者の役割は必ずしも固定されていません。作る者が、場にある別のコンテンツを楽しむ者にもなる。買い手が、次の機会には作るほうに回ることもある。作り手と受け取り手の、互いの関係がフラットで、役割が固定されすぎず、互いにリスペクトしあう能動的な当事者である。そのような「場」をつくる会社であろうとしています。
 

当社では、当社の独自性を生むカギとなるプロセスを模式化し、「クリエイティビティの3つの輪」と呼んでいます。「社会」が円環で示され、その内側が当社の活動です。

 

<クリエイティビティの3つの輪>


 

円環の内側

[集合]

[動機]

[実行]

当社発信のコンテンツに顧客が集まります。

社内で、顧客の反応等から、生活者が暗黙のうちに感じている「あったらいいな」という気持ちを考察し、共有します。企画担当者は、自らが「作りたい」と発する動機と、「集合」から得た考察を対照させながら企画を掘り下げます。

企画を編集・制作するプロセスです。「集合」の様子や「動機」の掘り下げと常に同期しながら、臨機応変に進みます。

円環の外側

[社会]「集合」「動機」「実行」が「社会」に対して開いているのは、独りよがりな内輪受けにならず、社会を意識し、社会に対してオープンでありたいからです。

 

 

このようにして発信したコンテンツについて、インターネットを介して、あるいはイベントの現場で顧客から寄せられる反応を、直接リアルタイムに受け止め、スピーディーに考察し、「動機」「実行」と同期しながら次の企画を生んでいきます。このプロセスを通して、企画力、商品力、そして販売方法も進化を続けます。その結果、多くの商品がロングセラーとなっていると考えています。

「やさしく、つよく、おもしろく。」の姿勢を保ち、「クリエイティビティの3つの輪」で示したプロセスでコンテンツを企画、制作してきた結果として、生活者の気持ちに関する考察が蓄積され、当社の独自性を形作っていると考えます。

 

<社是>

これまで述べた基本方針にのっとり、当社は「夢に手足を。」つける会社を目指します。


夢には翼しかついていない。
足をつけて、 歩き出させよう。
 
夢に手足を。
そして、手足に夢を。
 

 

 

 

(2) 中長期の経営戦略と対処すべき課題

当社では、会社の未来の姿を時間的に遠いほうから「遠景」「中景」「近景」の3つに分けて考えています。会社がどこに向かおうとしているのか(遠景)、途中でどうなっていたら順調だと判断するか(中景)、遠景に向けて今、どちらに一歩を踏み出すか(近景)、の道標にしようというものです。

 

「遠景」は、創業者である代表取締役社長の糸井重里が引退し、次世代経営陣が率いるチームが生き生きと事業を運営している姿です。糸井と当社がよきライバルとなり、お互いにおもしろいから「じゃあ、手を組もう」といったかたちで仕事ができるようになれば、というような未来像をイメージしています。

 

「遠景」に至る道程の途中の段階である「中景」は、「『いい時間』を提供する場をつくり、育てている」姿です。今よりも多く、幅広い属性のお客さまとお付き合いしている姿をイメージしています。それには、コンテンツを仕入れる力も、今よりつよくなっている必要があります。「中景」にかかわる事業環境では、2020年の東京オリンピックが生活者にもたらす変化に、そして逆に変わらないことに注目しています。また、情報セキュリティのリスク増大や個人情報保護の関心の高まり、インターネット通販の浸透と環境変化にも注意を払っています。こうした事業環境を踏まえると、上記のように「場」が今よりも広がるには、それを支える土台も強化しなくてはなりません。ITシステムに関する技術力は、今後も大切な課題であり続けると考えています。さらに、「やさしく、つよく、おもしろく。」が社内に浸透し、実践され続けるよう、たゆまぬ組織づくりが必要だと考えています。

 

これらの状況を踏まえた具体的な課題は、次の通りです。

 

①「場」の立ち上げと育成

当社は「ほぼ日刊イトイ新聞」の他に「ドコノコ」「生活のたのしみ展」「ほぼ日の学校」といった、「場」を立ち上げてきました。今後も魅力的なオリジナルコンテンツの幅を広げるよう、これらの「場」を育て、さらに新しい「場」も立ち上げ、「やさしく、つよく、おもしろく。」の姿勢で複数の「場」を運営する企業になることを目指しています。社外のクリエイターの方々にとってもコンテンツを生む新しい「場」となり、より多くの生活者に楽しんでいただけるよう、新しいサービスの開発を進めていきます。

 

②人材の確保と組織づくり

今後想定される事業拡大や新サービスを実現するには、継続的な人材の確保と、当社の考え方や価値を生む仕組みが定着するような組織づくりが重要だと考えています。「やさしく、つよく、おもしろく。」が社内に浸透し、実践され続けるよう、今後も人材の確保と組織づくりに優先的に取組んでいきます。

 

③インターネット環境変化への対応

インターネット業界は技術環境の変化が速く、生活者とインターネットの関わり方もデバイスやサービスとともに変わっていきます。また、情報セキュリティのリスクが増大しており、個人情報保護の関心も高まってきています。当社は魅力的なコンテンツを多くの方に安心して楽しんでいただけるよう、技術対応を進めます。同時に、インターネット環境の動向に左右されにくい「場」も開発していきます。

 

④経営基盤の強化

当社は小規模組織です。今後想定される事業拡大や新規事業を実現するため、経営陣の能力、組織運営、内部管理、様々なステークホルダーとの関係、機動的な財務運営等を継続的に高め、経営基盤の強化を図っていきます。

 

⑤市場の拡大

「ほぼ日刊イトイ新聞」で開発した商品コンテンツは、自社のウェブサイトのインターネット通販で販売を重ね、同時に他の販路にも展開して、より多くの生活者に楽しんで頂くことが重要だと考えています。国内では既存販路の強化や新規販路の開拓、海外に向けては自社の外国語コンテンツ強化や主要国に適した販路開拓等を通して顧客を広げ、関係づくりを進めていきます。

 

 

 

2 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあり、必ずしもリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から開示しています。これらのリスクについては、その発生可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針です。

なお、文中にある一部将来に関するリスクについては、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、将来において発生可能性のあるすべての事項を網羅するものではありません。

 

(1) ブランドに関するリスク

① ブランド力の低下

当社は、ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」で糸井重里のエッセイ「今日のダーリン」をはじめとする様々なコンテンツを1998年6月より毎日更新し、高品質のコンテンツをつくり続けて、ウェブサイトとして独自の位置づけと信頼を得てきました。主力商品『ほぼ日手帳』もウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」から半ば独立したブランドとして進化しつつあります。「ドコノコ」「生活のたのしみ展」「ほぼ日の学校」といった新しい「場」も立ち上げてきました。今後もコンテンツを生む力を強化し、ウェブサイト及び商品のブランド価値を高めていきます。そのために、経営方針に則って事業を運営していきますが、生活者の志向の変化等をきっかけに当社のブランド価値が低下した場合、サイトへの訪問数や販売数量の低下により、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

② 新サービスに関するリスク

当社は、より多くの顧客に喜んでいただき、持続的な成長を図るため、犬や猫のスマートフォン用写真SNSアプリ「ドコノコ」や生活雑貨の販売イベント「生活のたのしみ展」、AR技術を活用した専用アプリと連動する地球儀『ほぼ日のアースボール』等の新しいサービスや商品の開発を進めています。適切な人材配置や、新サービスの損益管理を通して、リスクをコントロールしていますが、予測困難な問題が発生して計画通りに進まない場合には、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 組織に関するリスク

① 人材投資

当社は、長期的な事業継続と成長を目指して経営しています。そのために人材投資を強化しており、短期的な財務成果より投資を優先することがあります。職場としての魅力を高めて発信し、採用手法や育成機会を多様化する等、人材投資の効果向上を図っていますが、人材の確保や能力開発が計画とおりに進まない等の場合、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

② 代表取締役社長への依存について

創業者であり代表取締役社長の糸井重里は、当社全体の経営方針や経営戦略の立案をはじめ、社会的な知名度と信頼、広い人脈による関係構築、新規事業の構想、毎日のエッセイ「今日のダーリン」執筆等、当社の事業活動上重要な役割を果たしています。代表取締役社長に依存しない組織的な経営体制の構築を進めていますが、何らかの事情により代表取締役社長が業務を継続することが困難になった場合、一時的に事業推進力が停滞し、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

③ 組織風土の維持、強化

当社では、内発的動機と自己管理を基礎にした組織風土が、高品質のコンテンツやサービスを生む源となっています。そのため、組織風土の維持強化を念頭において、採用、人材育成、組織開発を進めていますが、急激な組織拡大等により、こうした組織風土が十分機能しなくなると、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

④ 小規模組織であること

当社の組織体制は小規模であり、業務執行体制もそれに応じたものになっています。今後の事業展開に応じて、採用・能力開発等によって業務執行体制の充実を図っていきますが、当社の事業領域の環境や競合状況が急変する場合、対応に要する経営資源が不十分なために、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) インターネット環境等に関するリスク

① インターネットを取り巻く環境について

当社は、ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」の運営を事業の中核に据えています。また、新しい事業もすべてインターネットとの連動を前提にしています。メディアとして紙媒体や放送と比べて低コストでリアルタイムに発信でき、地域を問わず多くのユーザーとつながることができるメリットは、1998年の開設当時から変わりません。そのため、インターネットのさらなる発展が、当社事業の成長にとって重要だと考えています。一方、技術進展が早い領域であり、例えばユーザーが利用する機器も急速に変化します。そのため当社では、インターネット技術動向の情報収集及び技術力の向上刷新を図っていますが、こうした変化への対応が不十分な場合、ユーザーの訪問数、購買者数の減少等を通じて、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

② インターネット通販の利用動向

当社は、オリジナル企画商品を販売しており、売上高の約6割がインターネット通販によるものです。インターネット通販には、サイトを訪れた顧客に、商品の作り手とユーザー双方のエピソードを紹介し、その商品の魅力を詳しく伝えられるという、他の販路にはないメリットがあります。当社では、生活者のインターネット通販利用動向に関する情報収集を図っていますが、何らかの予測困難な要因により、生活者のインターネット通販利用動向が急激に変化し、その対応が不十分な場合、ユーザーの訪問数、顧客数の減少等を通じて、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

③ システムトラブル

当社は「ほぼ日刊イトイ新聞」のコンテンツ配信、商品の受注、決済、発送指示等の主要業務、および「ドコノコ」などのサービスの運営に内部、及び外部の情報システム及びネットワークを活用しています。当社では、バックアップ体制の強化等システムトラブル防止策、トラブル発生時の対応プラン策定、社員教育等の対応を継続的に図っていますが、当社が使用している情報システム及びネットワークに、自然災害、人為的過誤、停電、コンピューターウイルス、ハッカー等により障害等が発生した場合、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

④ 情報セキュリティに関するリスク

当社は、事業を行うために必要な顧客及び取引先の機密情報や個人情報および当社グループ内の機密情報や個人情報を保持しています。これらの情報は、外部流出や破壊、改ざん等がないように管理体制を構築し、ITセキュリティ、施設セキュリティの強化、従業員教育等の施策を実行しています。しかしながら、外部からの攻撃や過失、盗難等により、これらの情報の流出、破壊もしくは改ざんまたは情報システムの停止等が引き起こされる可能性があります。このような事態が生じた場合には、信用低下、被害を受けた方への損害賠償等の多額の費用の発生または長時間にわたる業務の停止等により、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 商品開発と販売に関するリスク

① 特定商品への依存度に関するリスク

『ほぼ日手帳』は、売上高の約6割を占め、当社の主要商品となっています。手帳市場動向に関する民間の調査によりますと、法人需要は経費削減等の影響で横ばいないし微減の一方で、個人向けは、デジタル文具やスマートフォンが普及したものの、アナログ手帳の方がスケジュールを俯瞰的に把握しやすいと評価する層が依然として多く、底堅い動きになっていると見られています。また、手帳の中では綴じ手帳が中心です。『ほぼ日手帳』は個人向けの綴じ手帳であり、足元の市場動向は堅調です。ただし、将来、市場動向が悪化し、また特定の仕入先への依存はないものの、仕入数量の減少や遅延等を通じて『ほぼ日手帳』の売上が減少する場合は、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

② 四半期の変動に関するリスク

当社の主力商品『ほぼ日手帳』は、商品の性質上、例年秋から冬に多く購入され、春から夏には販売が低調になる季節性があります。当社では、手帳の閑散期に販売を補う商品や市場の開拓を図っていますが、当社の業績は四半期毎に大きく変動します。なかでも第3四半期は売上が落ち込み、それに伴って利益も大幅に落ち込む傾向があります。このため四半期毎の一定期間で区切った場合、期間毎の業績は大きく変動します。

2018年8月期の四半期毎の売上高及び営業利益(損失)は、次のとおりです。

 

第1四半期

(2017年11月30日)

第2四半期

(2018年2月28日)

第3四半期

(2018年5月31日)

第4四半期

(2018年8月31日)

通期

(2018年8月31日)

売上高

2,077,774千円

1,257,477千円

525,162千円

1,177,526千円

5,037,940千円

売上

構成比

41.2%

25.0%

10.4%

23.4%

100.0%

営業利益(損失)

561,162千円

191,353千円

△208,453千円

18,345千円

562,408千円

 

③ 商品評価損に関するリスク

当社は、市場を創造することを方針として、付加価値の高い独自商品を開発し、新販路を含む幅広い市場開拓を図っています。また、特に新商品では、少量販売や受注販売を活用して在庫リスクを抑えています。しかし、不測の事態により想定を超える滞留在庫が生じた場合には、棚卸資産に関して商品評価損を計上する結果、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

④ 物流業務の外部委託に関するリスク

当社は、インターネット通販において仕入先から納品される商品の在庫管理業務、商品の梱包、発送等に関する業務、顧客への商品受け渡し、商品代金回収業務等の物流業務を外部業者に委託しています。当社では外部委託業者と緊密に連携し、サービス水準の把握と向上を図っており、また、外部委託先との契約に基づき、直接的な損害は外部委託業者に賠償請求できます。しかし、外部業者のサービスの遅延及び障害等が発生し、当社に対する顧客の信用低下が発生した場合等においては、当社への損害賠償請求や当社の信用下落等によって、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 特定販売先への依存度に関するリスク

当社は、インターネット通販による消費者への直販を中心にしていますが、主要商品の『ほぼ日手帳』等一部の商品については卸販売を行っており、主要販売先は株式会社ロフトです。株式会社ロフトと当社との関係は良好ですが、株式会社ロフトの今後の営業方針等の変化によっては、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑥ 法的規制に関するリスク

当社は、コンテンツによって「場」をつくり、主にインターネット通販によって収益を得ています。そのため、著作権法等コンテンツ制作に関する各種法規制、特定商取引法、不当景品類及び不当表示防止法、食品衛生法等の物販に関する各種法規制、個人情報保護法等情報管理に関する法規制等に基づいて事業を運営しています。当社は各種法規制を遵守しており、現時点において重大な法的問題は生じていないものと認識しています。また、各種法規制を遵守すべく、適宜行政当局に相談するとともに、法務の体制強化を進めています。しかしながら、法規制における解釈、運用の変化や規制の強化、新たな規制の制定等により、より厳格な対応を求められる場合には、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) その他

 株式会社気仙沼ニッティングについて

当社の非連結子会社である株式会社気仙沼ニッティングは、ニット製品の企画、製造、販売を主な業務としています。気仙沼地域の人びとの手編みした高級ニット商品を、主にインターネット通販によって販売して収益を得ています。2011年3月の東日本大震災後、糸井重里が、「被災地、中でもご縁があった気仙沼で復興に役に立てるとしたら、収益事業を構想し実現して地域に引き継ぐことではないか」と考えたことから、この事業の構想が生まれ、2011年末に当社内のプロジェクトとして着手しました。発案した当初から「収益事業を立ち上げ、それをのちのち気仙沼の方々にお渡しする」ことを目標にしていましたので、収益化の目途が立った2013年6月に当社から分社しました。

現在の資本関係は、当社より20%出資、当社から社長として出向している社員が40%出資し、株式会社気仙沼ニッティングは当社の子会社となっています。

設立当初は、同社を継続的に収益が見込める会社に育てた上で、当社及び社員の保有する同社株式を気仙沼の方々に譲渡し、3年程度で当社の子会社ではなくすることを目指していました。同社事業は順調に推移していますが、地域の状況が当初想定と異なる進展をした面もあり、まだ地域の方々への株式譲渡には至っていません。経営についても同様に、3年程度で当社外の人材に同社社長を譲ることを目指していましたが、現在までに適切な人材が見つからず、後任は決まっていません。このように、資本関係及び社員の出向の解消は、当初想定より時間を要していますが、当社としては引き続き、同社を「気仙沼の方々にお渡しする」ことを目指しており、現在は過渡期と考えています。

同社との取引は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 関連当事者情報」に記載の通りです。

 

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものです。

 

(1) 経営成績の状況

当事業年度の経営成績は、次の表のとおりです。

 

前事業年度

(自 2016年9月1日

至 2017年8月31日)

当事業年度

(自 2017年9月1日

至 2018年8月31日)

対前期増減率

売上高

4,016,394

千円

5,037,940

千円

25.4

営業利益

500,858

千円

562,408

千円

12.3

経常利益

482,151

千円

567,409

千円

17.7

当期純利益

340,882

千円

389,457

千円

14.2

 

 

当社は、「夢に手足を。」つける会社であることを目指し、「やさしく、つよく、おもしろく。」を行動指針として、人びとに「いい時間」を味わってもらうため「場」を運営し、さまざまなコンテンツを提供しています。具体的には、ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」、ギャラリーショップの「TOBICHI」、「いい時間」を味わう商店街というコンセプトのイベント「生活のたのしみ展」、古典を学ぶ「ほぼ日の学校」、犬や猫と過ごす「いい時間」を軸にしたスマートフォン用写真SNSアプリ「ドコノコ」といった、人びとがよろこんで集まる「場」を築き、こうした「場」で商品を直接個人に販売する事業を営んでいます。主力商品の『ほぼ日手帳』並びにその他一部の商品及び書籍は、卸販売も行っています。『ほぼ日手帳』は年間売上の約6割を占めます。
 当事業年度における当社をとりまく事業環境として、個人のインターネット利用及びEC(電子商取引)利用が発展したことがあげられます。総務省によりますと、2017年の我が国のインターネット人口普及率は80.9%となりました。また経済産業省の調査では、2017年の日本国内のBtoC-EC市場規模は、16.5兆円(前年比9.1%増)まで拡大しました。当社の主力商品である手帳の市場規模は、民間の調査結果によりますと、2017年度では359億円(前年比0.8%増)と底堅い動きになっていると見られています。
 こうした環境のもと、主力商品の『ほぼ日手帳』は、当事業年度も例年通り2017年9月1日より、2018年版を当社ウェブ通販並びにロフト等の店頭で販売開始しました。新判型『ほぼ日手帳weeks MEGA』を2017年11月に、『ほぼ日5年手帳』を同年12月に、手帳と一緒に使う文具として『ひきだしポーチ』を2018年3月に投入し、それぞれ売上に寄与しました。また、米国のAmazon.com及び中国のWeChat上にそれぞれオフィシャルショップを開設するなど、海外ユーザーの拡大に努めました。これらの結果、販売部数は伸長し、『ほぼ日手帳』全体の売上は前年比15.7%増加しました。
 また、第2回「生活のたのしみ展」を2017年11月15日~19日に六本木ヒルズアリーナで、第3回を2018年6月7日~11日に恵比寿ガーデンプレイスで、それぞれ開催しました。これは、当社とスタイリスト、クリエイター、ブランド、企業が協同して、「生活のたのしみ」という切り口で、アパレル、生活雑貨、食品、アートといった多彩な商品をプロデュースし、商店街のように実店舗展開した販売イベントです。第3回ではワークショップやアトラクション、ミニライブなどお買いもの以外のたのしみも充実させ、「期間限定の商店街」から「街のフェス」へとめざす場のイメージを広げつつあります。第2回、第3回とも、2017年3月開催の第1回と比較して店舗数を倍増させ、会期を3日から5日に伸ばしました。5日間トータルで取引件数は第2回は約31,600件、第3回は約35,300件となり、売上に貢献しました。
 さらに、新商品『ほぼ日のアースボール』を2017年12月に発売しました。一般の地球儀とは異なる、軽くてやわらかい素材を使用し、専用アプリをインストールしたスマートフォンやタブレット端末をかざすと、AR技術により世界各国の写真や動画、テキストなどにアクセスできます。直販、卸共に、売上伸長に寄与しました。これらの結果、売上高は5,037,940千円(前期比25.4%増)となりました。

「生活のたのしみ展」の仕入れ販売など、原価率が相対的に高い商品が売上伸長を牽引したこと、商品構成の広がりに伴って商品評価損が発生したことから、売上原価が増加しました。また、販売費及び一般管理費においては、売上増に伴い、発送費が前年同期に比べ増加しました。さらに、中長期の成長に向けて人材採用及び外部人材への業務委託を積極化したこと、「生活のたのしみ展」の開催費用の発生等により販売費及び一般管理費が増加し、営業利益は562,408千円(前期比12.3%増)、経常利益は567,409千円(前期比17.7%増)となりました。繰延税金資産の計上に伴い法人税等調整額△48,431千円を計上し、当期純利益は389,457千円(前期比14.2%増)となりました。

 

上記の業績は、当社の運営する「場」が人と社会への肯定感に根ざした姿勢のコンテンツを活発に発信し、人びとがよろこんで集まったことによりもたらされたと考えています。当事業年度においては、さまざまな古典を学ぶ場となる「ほぼ日の学校」を2018年1月から開設し、第1期はシェイクスピアをテーマに、第2期は歌舞伎をテーマに、様々な社外講師による連続講座を開いています。さらに講座を収録した動画を配信する有料サービスも6月に開始しました。また、ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」では、読者投稿コンテンツ「観たぞ、平昌オリンピック!」や、起業家・投資家の孫泰蔵さんと糸井重里の対談などが、多くのユーザーを集めました。ギャラリーショップ「TOBICHI東京」では、人間国宝・志村ふくみさんの技術と精神を受け継ぐアトリエシムラの着物展示販売会、漫画家・松本大洋さんのデビュー30周年にちなんだ原画展とライブペインティングなどを開催し、「TOBICHI京都」は、2018年5月に移転オープンしました。犬や猫の写真SNSアプリ「ドコノコ」は2018年8月までに約21万ダウンロードを達成しました。

このように、当社は運営する「場」において、さまざまなコンテンツを提供しています。コンテンツとはクリエイティブの集積であり、読み物、キャラクター、画像、イベント、モノのかたちの商品、すべてがコンテンツであるととらえています。当社は、生活のたのしみとなるような「いい時間」を味わってもらう、そのためのコンテンツを作ったり、仕入れたり、育てたり、編集したりして、お届けしています。業績は、こうした活動の結果と考えています。
  なお、当社は単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。

 

 (生産、受注及び販売の状況)

当事業年度における販売実績は次のとおりです。なお、当社は単一セグメントのためセグメント別の記載はしていません。

 

内訳

販売高(千円)

前年同期比(%)

直販

3,113,084

123.0

卸売 (注)1.

1,536,044

134.4

商品売上 計

4,649,128

126.5

その他売上 (注)2.

388,811

113.6

売上 合計

5,037,940

125.4

 

(注) 1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、以下の表のとおりです。

相手先

前事業年度

当事業年度

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

株式会社ロフト

823,089

20.5

963,255

19.1

 

2.その他売上は主に送料売上、ライセンス収入等です。

3.上記の金額には、消費税等は含まれていません。

 

 

(2) 財政状態の状況の概要・分析

 

前事業年度末

(2017年8月31日)

当事業年度末

(2018年8月31日)

前年同期末増減

資産合計

4,228,428

千円

4,710,953

千円

482,524

千円

負債合計

1,236,484

千円

1,386,487

千円

150,003

千円

純資産合計

2,991,944

千円

3,324,466

千円

332,521

千円

 

 

(資産の部)

流動資産は、3,935,762千円と前年同期末に比べて412,427千円の増加となりました。これは主に現金及び預金の増加171,508千円と、売掛金の増加162,452千円によるものです。

有形固定資産は、148,790千円と前年同期末比21,601千円の減少となりました。これは主に減価償却によるものです。

無形固定資産は、42,071千円と前年同期末比21,383千円の増加となりました。これは主にソフトウェアの取得によるものです。

投資その他の資産は、584,329千円と前年同期末比70,315千円の増加となりました。これは主に投資有価証券の評価額の増加66,087千円によるものです。

(負債の部)

流動負債は、1,211,114千円と前年同期末に比べて131,410千円の増加となりました。これは主に買掛金の増加34,858千円と、未払金の増加47,106千円によるものです。

固定負債は、175,372千円と前年同期末に比べて18,593千円の増加となりました。これは主に退職給付引当金が11,851千円増加したことによるものです。

(純資産の部)

純資産の部は、3,324,466千円と前年同期末に比べて332,521千円の増加となりました。これは主に、利益剰余金の増加285,237千円によるものです。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

 当事業年度における現金及び現金同等物は2,082,003千円と前年同期末と比べ171,508千円の増加となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

 

前事業年度

(2017年8月期)

当事業年度

(2018年8月期)

前年同期末増減

営業活動による
キャッシュ・フロー

140,340

千円

316,383

千円

176,043

千円

投資活動による
キャッシュ・フロー

77,725

千円

△40,588

千円

△118,314

千円

財務活動による
キャッシュ・フロー

563,668

千円

△103,949

千円

△667,618

千円

 

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、316,383千円の純収入(前年同期は140,340千円の純収入)となりました。これは主に売上債権が162,452千円増加し、法人税等の支払額220,887千円があったものの、税引前当期純利益が572,847千円となったことによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、40,588千円の純支出(前年同期は77,725千円の純収入)となりました。これは主に無形固定資産の取得による支出30,829千円によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、103,949千円の純支出(前年同期は563,668千円の純収入)となりました。これは主に配当金の支払額104,147千円によるものです。

 

 

(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

2017年8月期

2018年8月期

自己資本比率

70.8%

70.6%

時価ベースの自己資本比率

286.5%

310.4%

キャッシュ・フロー対
有利子負債比率

インタレスト・カバレッジ・
レシオ

 

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

(注1)株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しています。

(注2)キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しています。

(注3)有利子負債は貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債(リース債務を除く)を対象としています。

 

 (資本の財源および資金の流動性について)

当事業年度末現在において、流動比率は325%、総負債額に対する現金及び現金同等物は1.5倍です。

当社は将来の経営環境への対応や将来の新規事業のために必要な資金を内部留保しています。

当社の運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入および販売活動に伴い生じる諸費用、人件費のほか、配当金や法人税等の支払いです。このほか、中長期的な成長に必要な人材への投資等についても、自己資金でまかなうことを原則としています。

主力商品である『ほぼ日手帳』の販売開始時期には、一時的な売上債権、仕入債務、たな卸資産等の増加があり、営業活動によるキャッシュ・フローの増減に影響を及ぼす可能性があります。

また、有価証券の取得・売却が生じた場合には、投資活動によるキャッシュ・フローの増減に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

5 【研究開発活動】

 該当事項はありません。