第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものです。

 

(1) 会社の経営の基本方針

<行動指針>

当社は、「やさしく、つよく、おもしろく。」を行動指針としています。

[やさしく]

私たちの会社が社会に受け入れられるための前提となるものです。

相互に助け合うということ、

自分や他人を「生きる」「生かす」ということです。

 

[つよく]

企画やアイデアやコンテンツを、

会社として、組織として「実現」「実行」できること、

現実に成り立たせることです。

 

[おもしろく]

新しい価値を生み出し、コンテンツとして成り立たせるということです。

「ほぼ日刊イトイ新聞」や「TOBICHI」のように

「場」を生み出し、人が「場」に集まる理由です。

これがほぼ日の強みです。

 

 

ほぼ日は、この言葉の順番もたいせつにしています。

まず「やさしく」が、おおもとの前提にあり、

「やさしく」を実現する力が「つよく」です。

その上に、新しい価値となる「おもしろく」を

どれだけ生み出せるかが、ほぼ日の特徴です。

 

 

 

<社是>

これまで述べた基本方針にのっとり、当社は「夢に手足を。」つける会社を目指します。


夢には翼しかついていない。
足をつけて、 歩き出させよう。
 
夢に手足を。
そして、手足に夢を。
 

 

 

 

(2) 中長期の経営戦略と対処すべき課題

当社では、会社の未来の姿を時間的に遠いほうから「遠景」「中景」「近景」の3つに分けて考えています。会社がどこに向かおうとしているのか(遠景)、途中でどうなっていたら順調だと判断するか(中景)、遠景に向けて今、どちらに一歩を踏み出すか(近景)、の道標にしようというものです。

「遠景」は、創業者である代表取締役社長の糸井重里が引退し、次世代経営陣が率いるチームが生き生きと事業を運営している姿です。糸井と当社がよきライバルとなり、お互いにおもしろいから「じゃあ、手を組もう」といったかたちで仕事ができるようになる未来像をイメージしています。

「遠景」に至る道程の途中の段階である「中景」は、「『いい時間』を提供する場をつくり、育てている」姿です。国内外問わず今よりも幅広い属性のたくさんのお客様とお付き合いしている姿をイメージしています。それには、コンテンツを生み出す力や仕入れる力、そして届ける力も、今よりつよくなっている必要があります。また、情報セキュリティのリスク増大や個人情報保護の関心の高まり、インターネット通販の浸透と環境変化にも注意を払っています。こうした事業環境を踏まえると、上記のように「場」が今よりも広がるには、それを支える土台も強化しなくてはなりません。ITシステムに関する技術力は、今後も大切な課題であり続けると考えています。

さらに、「やさしく、つよく、おもしろく。」が社内に浸透し、実践され続けるよう、たゆまぬ組織づくりが必要だと考えています。

当社を取り巻く市場環境においてはスマートフォンの普及などによりインターネットの利用時間が増加しているほか、経済産業省の調査では2022年の日本国内のBtoC-EC市場規模は、22.7兆円(前年比9.91%増)と拡大し、内訳として物販系分野では前年比5.37%と伸長しています。一方で、国際的な情勢不安による燃料価格や原材料費の高騰及び外国為替相場の変動など、先行き不透明な状況が続くものと思われます。

このような環境の中、当社は「いい時間」を提供するためのコンテンツを、種類と量を増やし新しい場を生み育てていけるように取り組んでいきます。

 

これらの状況を踏まえた具体的な課題は、次のとおりです。

 

①「場」の立ち上げと育成

当社は「ほぼ日刊イトイ新聞」の他に「ドコノコ」「生活のたのしみ展」「ほぼ日の學校」といった、「場」を立ち上げてきました。今後も魅力的なオリジナルコンテンツの幅を広げるよう、これらの「場」を育て、さらに新しい「場」も立ち上げ、「やさしく、つよく、おもしろく。」の姿勢で複数の「場」を運営する企業になることを目指しています。社外のクリエイターの方々にとってもコンテンツを生む新しい「場」となり、より多くの生活者に楽しんでいただけるよう、新しいサービスの開発を進めていきます。

 

②多様な人材の確保及び育成と組織づくり

今後想定される事業拡大や新サービスを実現するには、継続的な人材の確保及び育成と、当社の考え方や価値を生む仕組みが定着するような組織づくりが重要だと考えています。当社は新卒採用や、コンテンツを生み出す力や届ける力を強化するため職種を限定せず募集をした「ほぼ日の大開拓採用」を実施し、多様な人材の確保に努めています。今後も「やさしく、つよく、おもしろく。」が社内に浸透し、実践され続けるよう、人材の確保及び育成と組織づくりに優先的に取り組んでいきます。

 

③インターネット環境変化への対応

総務省の情報通信白書によると、インターネットは2022年の国内利用率(個人)が84.9%と、情報化社会の基盤となっています。この基盤の上には、利便性故に様々なサービスが展開されており、利用するデバイスや、アクセスする環境も多様化が進んでいます。当社も黎明期からコンテンツをご提供する「場」としてインターネットを活用してきましたが、今後のサービスの展開にあたっては、日に日に高まる情報セキュリティのリスクへの対応及び、多くの国、地域で導入が加速している個人情報保護制度への準拠など、生活者の場所やアクセス手段にかかわらず、いつでも安心してたのしんでいただける「場」であり続けられるよう、組織的、技術的な対応を進めていきます。

 

④経営基盤の強化

当社は小規模組織です。今後想定される事業拡大や新規事業を実現するため、経営陣の能力、組織運営、内部管理、様々なステークホルダーとの関係、機動的な財務運営等を継続的に高め、経営基盤の強化を図っていきます。

 

⑤市場の拡大

「ほぼ日刊イトイ新聞」で開発した商品コンテンツは、自社のウェブサイトのインターネット通販で販売を重ね、同時に他の販路にも展開して、より多くの生活者に楽しんでいただくことが重要だと考えています。国内では既存販路の強化や新規販路の開拓、海外に向けては自社の外国語コンテンツ強化や主要国に適した販路開拓等を通して顧客を広げ、関係づくりを進めていきます。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものです。

 

(1) ガバナンス

当社は、中長期的な企業価値の向上の観点から、サステナビリティを巡る課題への対応は経営の重要な課題であると認識しています。サステナビリティに関する重要な課題がある場合には、取締役会において必要な決定を行うこととし、当該決定に基づき対応を行うこととしています。

 

(2) リスク管理

当社は、リスク発生の可能性と対策について必要に応じて会議体を設置し、全社的なリスクに関する課題・対応策を検討しています。

情報セキュリティに関するリスク管理においては、当社の情報セキュリティ活動の推進と対応対策に関する決定を担当する情報安心委員会を2週間に一度開催し、検討・協議しています。協議された方針や課題などは、必要に応じて社内や取締役会へ共有され、適切なリスクマネジメントに向けた対応を行っています。

 

(3) 戦略

当社は、新しい価値を生み出し、人びとが集う「場」をつくり、「いい時間」を提供するコンテンツを企画、編集、制作、販売する会社であるために、事業の土台となる情報セキュリティの強化やほぼ日に関わるすべての人々の多様性を尊重し、誠実な事業活動を行うことを大切にしています。

 

①情報セキュリティについて

 当社はEC事業やサービス運営に社内外の情報システム機器及びサービスを利用しています。これらのサービスの可用性を高い状態で維持するため、定期・不定期のシステムメンテナンス枠を設けて、ソフトウエアのアップデートを行うとともに、外部専門家による診断テストを適宜実施し、既知の脆弱性への対応と潜在的な脆弱性の発見・対策に努めています。主要なシステム及びネットワークの冗長化を行い単一障害点を作らない設計とし、より大規模な障害に備えて、独自のBCP(事業継続計画)を策定しています。

また、グローバルで事業を行うために必要な顧客、取引先及び当社内の機密情報や個人情報を保護するため、2021年11月に国際標準規格であるISMS認証(ISO/IEC27001)を取得し、情報の管理体制を整備するとともに、ITによるセキュリティ及び施設セキュリティの強化、従業員教育等の施策を実行しています。

 

②人的資本について

(人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針)

当社では性別、年齢、国籍、価値観などの違いのある人々の多様性が、新たな発想・アイデアとなり、企画・商品を含むあらゆるコンテンツを生み出す源泉となっています。

このことから、社内に異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観が存在することが、会社の継続的な成長を確保する上での強みとなり得るとの認識に立ち採用活動を進めています。また、社内における女性、外国人、中途採用者の活躍促進を重視するとともに、その重要性が継続的に社内に浸透するよう人材の育成についても取り組んでいます。

(社内環境整備に関する方針)

当社は従業員が仕事と家庭生活を両立できる、働きやすい職場・環境づくりを目指しています。

多様なニーズやスタイルに合わせるため、その日の業務によって場所を選べるフリーアドレスを採用することで、協働しやすいオフィスづくりを志向しています。また、コアタイムなしのフレックスタイムの導入や、いつでも在宅勤務を含めたリモートワークを出来るインフラの整備を実施しており、女性も男性も、出産や育児、介護などをしながら安心して働き続けられるように、働く場所・時間などの選択肢を増やす取組みを実行しています。

 

(4) 指標及び目標

人材の育成及び社内環境整備に関する方針についての指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績は下記のとおりです。

 

指標

実績(2023年度末)

目標(2028年度末)

管理職に占める女性労働者の割合

40.0%

40.0%

男性社員の育児休業取得率

対象者なし

50.0%

女性社員の育児休業取得率

100.0%

80.0%

 

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあり、必ずしもリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から開示しています。これらのリスクについては、その発生可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針です。

なお、文中にある一部将来に関するリスクについては、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、将来において発生可能性のあるすべての事項を網羅するものではありません。

 

(1) ブランドに関するリスク

① ブランド力の低下

当社は、ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」で糸井重里のエッセイ「今日のダーリン」をはじめとする様々なコンテンツを1998年6月より毎日更新し、高品質のコンテンツをつくり続けて、ウェブサイトとして独自の位置づけと信頼を得てきました。主力商品『ほぼ日手帳』はウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」から独立したブランドとして認知されています。「ドコノコ」「生活のたのしみ展」「ほぼ日の學校」といった新しい「場」も立ち上げてきました。今後もコンテンツを生む力を強化し、ウェブサイト及び商品のブランド価値を高めていきます。そのために、経営方針に則って事業を運営していきますが、生活者の志向の変化等をきっかけに当社のブランド価値が低下した場合、サイトへの訪問数や販売数量の低下により、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

② 新サービスに関するリスク

当社は、より多くの顧客に喜んでいただき、持続的な成長を図るため、生活雑貨の販売イベント「生活のたのしみ展」、AR技術を活用した専用アプリと連動する地球儀『ほぼ日のアースボール』、映像配信を中心とした「ほぼ日の學校」等の新しいサービスや商品の開発を進めています。適切な人材配置や、新サービスの損益管理を通して、リスクをコントロールしていますが、予測困難な問題が発生して計画通りに進まない場合には、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 組織に関するリスク

① 人材投資

当社は、長期的な事業継続と成長を目指して経営しています。そのために人材投資を強化しており、短期的な財務成果より投資を優先することがあります。新卒採用や、コンテンツを生み出す力や届ける力を強化するため職種を限定せず募集をした「ほぼ日の大開拓採用」を実施するなど、採用手法や育成機会を多様化し、人材投資の効果向上を図っていますが、人材の確保や能力開発が計画通りに進まない等の場合、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

② 代表取締役社長CEO兼CCOへの依存について

創業者であり代表取締役社長CEO兼CCOの糸井重里は、当社全体の経営方針や経営戦略の立案をはじめ、社会的な知名度と信頼、広い人脈による関係構築、新規事業の構想、毎日のエッセイ「今日のダーリン」執筆等、当社の事業活動上重要な役割を果たしています。代表取締役社長CEO兼CCOに依存しない組織的な経営体制を見据え、各取締役の業務執行区分を明確化するなど体制の構築を進めていますが、何らかの事情により代表取締役社長CEO兼CCOが業務を継続することが困難になった場合、一時的に事業推進力が停滞し、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 組織風土の維持、強化

当社では、内発的動機と自己管理を基礎にした組織風土が、高品質のコンテンツやサービスを生む源となっています。そのため、組織風土の維持強化を念頭において、採用、人材育成、組織開発を進めていますが、急激な組織拡大等により、こうした組織風土が十分機能しなくなると、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

④ 小規模組織であること

当社の組織体制は小規模であり、業務執行体制もそれに応じたものになっています。今後の事業展開に応じて、採用・能力開発等によって業務執行体制の充実を図っていきますが、当社の事業領域の環境や競合状況が急変する場合、対応に要する経営資源が不十分なために、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) インターネット環境等に関するリスク

① インターネットを取り巻く環境について

当社は、ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」の運営を事業の中核に据えています。また、新しい事業もすべてインターネットとの連動を前提にしています。メディアとして紙媒体や放送と比べて低コストでリアルタイムに発信でき、地域を問わず多くのユーザーとつながることができるメリットは、1998年の開設当時から変わりません。そのため、インターネットのさらなる発展が、当社事業の成長にとって重要だと考えています。一方、技術進展が早い領域であり、例えばユーザーが利用する機器も急速に変化します。そのため当社では、インターネット技術動向の情報収集及び技術力の向上刷新を図っていますが、こうした変化への対応が不十分な場合、ユーザーの訪問数、購買者数の減少等を通じて、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

② インターネット通販の利用動向

当社は、オリジナル企画商品を販売しており、売上高の約7割がインターネット通販によるものです。インターネット通販には、サイトを訪れた顧客に、商品の作り手とユーザー双方のエピソードを紹介し、その商品の魅力を詳しく伝えられるという、他の販路にはないメリットがあります。当社では、国内外のインターネット通販利用動向に関する情報を収集し、自社ECの強化や外部ECへの展開を図っていますが、何らかの予測困難な要因により、インターネット通販利用動向が急激に変化し、その対応が不十分な場合、ユーザーの訪問数、購入者数の減少等を通じて、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

③ システムトラブル

当社は「ほぼ日刊イトイ新聞」のコンテンツの配信、「ほぼ日ストア」でのEC事業、「ほぼ日の學校」などのサービス運営に社内外の情報システム機器及びサービスを利用しています。個々のサービスの可用性を高い状態で維持するため、定期・不定期のシステムメンテナンス枠を設けて、ソフトウエアのアップデートを行うとともに、外部専門家による診断テストを適宜実施し、既知の脆弱性への対応と潜在的な脆弱性の発見・対策に努めています。また、予見できない障害の発生に備えて、主要なシステム及びネットワークの冗長化を行い単一障害点を作らない設計とし、より大規模な障害に備えて、独自のBCP(事業継続計画)を策定し、障害が発生しても事業を短時間で再開するための準備を行っています。しかしながら、悪意を持った外部からの標的型攻撃、人為的過誤、自然災害などにより、システムの障害が発生し、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

④ 情報セキュリティに関するリスク

当社は、グローバルで事業を行うために必要な顧客、取引先及び当社内の機密情報や個人情報を保持しています。これらの情報の外部流出や破壊、改ざん等がないように、当社は管理体制を構築し、ITによるセキュリティ及び施設セキュリティの強化、従業員教育等の施策を実行し、2021年11月に国際標準規格であるISMS認証(ISO/IEC27001)を取得しました。個人情報の定義や保護のために求められている管理レベルは、国・地域で施行される法令により異なることから、当社が適用を受ける法令を理解し、要求される管理レベルを実践することが求められます。しかしながら、これらの情報セキュリティリスク対策にも関わらず、外部からの標的型攻撃や過失、盗難等により、これらの情報の流出、破壊もしくは改ざんまたは情報システムの停止等が引き起こされる可能性があります。このような事態が生じた場合には、信用低下、被害を受けた方への損害賠償等の多額の費用の発生または長時間にわたる業務の停止等、更に適用される法令の過失認定により課せられる罰金などにより、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 (4) 商品開発と販売に関するリスク

① 特定商品への依存度に関するリスク

『ほぼ日手帳』は、売上高の約6割を占め、当社の主要商品となっています。手帳市場動向に関する民間の調査によりますと、手帳市場全体の販売高はやや減少しています。近年のリモート勤務の広がりもあり、スケジュールをデジタルで管理する人が増加する一方で、プライベートな内容や日々感じたことをアナログの手帳に記録するといった用途も増加し、手帳の需要は新しい形に変化していると言われています。『ほぼ日手帳』は「LIFEのBOOK」をコンセプトにした自由度の高い手帳であり、足元の市場動向は堅調です。ただし、将来、市場動向が悪化し、また特定の仕入先への依存はないものの、仕入数量の減少や遅延等を通じて『ほぼ日手帳』の売上が減少する場合は、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

② 四半期の変動に関するリスク

当社の主力商品『ほぼ日手帳』は、商品の性質上、例年秋から冬に多く購入され、春から夏には販売が低調になる季節性があります。当社では、手帳の閑散期に販売を補う商品や市場の開拓を図っていますが、当社の業績は四半期毎に大きく変動します。このため四半期毎の一定期間で区切った場合、期間毎の業績は大きく変動します。

2023年8月期の四半期毎の売上高及び営業利益(損失)は、次のとおりです。

 

第1四半期

(2022年11月30日)

第2四半期

(2023年2月28日)

第3四半期

(2023年5月31日)

第4四半期

(2023年8月31日)

通期

(2023年8月31日)

売上高

2,665,471千円

1,773,830千円

1,081,171千円

1,297,950千円

6,818,424千円

売上

構成比

39.09%

26.02%

15.86%

19.04%

100.0%

営業利益(損失)

685,742千円

243,271千円

△250,036千円

△89,307千円

589,670千円

 

③ 商品評価損に関するリスク

当社は、市場を創造することを方針として、付加価値の高い独自商品を開発し、新販路を含む幅広い市場開拓を図っています。また、特に新商品では、少量販売や受注販売を活用して在庫リスクを抑えています。しかし、不測の事態により想定を超える滞留在庫が生じた場合には、棚卸資産に関して商品評価損を計上する結果、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

④ 物流業務の外部委託に関するリスク

当社は、インターネット通販において仕入先から納品される商品の在庫管理業務、商品の梱包、発送等に関する業務、顧客への商品受け渡し、商品代金回収業務等の物流業務を外部業者に委託しています。当社では外部委託業者と緊密に連携し、サービス水準の把握と向上を図っており、また、外部委託先との契約に基づき、直接的な損害は外部委託業者に賠償請求できます。しかし、外部業者のサービスの遅延及び障害等が発生し、当社に対する顧客の信用低下が発生した場合等においては、当社への損害賠償請求や当社の信用下落等によって、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 商品調達コストに関するリスク

当社が取り扱う商品の調達価格及び調達に係る費用は、原材料費や燃料価格の高騰、外国為替相場の変動による影響、輸送費用の高騰により上昇する可能性があります。当社では、最適な価格での仕入れを実現するために必要に応じ仕入先の検討を行うほか、積載効率の改善を図り、また定期的に販売価格の見直しを行っていますが、商品調達コストの上昇が販売価格の見直しに先行する場合には、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑥ 海外での販売に対するリスク

当社は、北米・中米や中華圏をはじめとした海外市場にも事業を展開しています。今後も、海外市場における販売に力をいれていきますが、これらの海外市場への販売には、予期しない法律または税制の変更、不利な政治または経済要因、テロ、戦争、その他の社会的混乱等のリスクが内在しています。事前に調査、把握して対処するよう努力していますが、これらの事象が起これば、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 法的規制に関するリスク

当社は、コンテンツによって「場」をつくり、主にインターネット通販によって収益を得ています。そのため、著作権法等コンテンツ制作に関する各種法規制、特定商取引法、不当景品類及び不当表示防止法、食品衛生法等の物販に関する各種法規制、個人情報保護法等情報管理に関する法規制等に基づいて事業を運営しています。当社は各種法規制を遵守しており、現時点において重大な法的問題は生じていないものと認識しています。また、各種法規制を遵守すべく、適宜行政当局に相談するとともに、法務の体制強化を進めています。しかしながら、法規制における解釈、運用の変化や規制の強化、新たな規制の制定等により、より厳格な対応を求められる場合には、当社の事業及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

 文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものです。

(1) 経営成績の状況

当事業年度の経営成績は、次の表のとおりです。

 

前事業年度

  (自 2021年9月1日

   至 2022年8月31日)

当事業年度

(自 2022年9月1日

至 2023年8月31日)

対前年同期比

(増減額)

対前年同期比

(増減率)

売上高

5,907,938

千円

6,818,424

千円

910,485

千円

15.4

営業利益

275,287

千円

589,670

千円

314,383

千円

114.2

経常利益

290,745

千円

584,757

千円

294,011

千円

101.1

当期純利益

205,708

千円

411,910

千円

206,201

千円

100.2

 

 

当社は、「夢に手足を。」つけて、歩き出させる会社であることを目指し、「やさしく、つよく、おもしろく。」を行動指針として、新しい価値を生み出し、人びとが集う「場」をつくり、「いい時間」を提供するコンテンツを企画、編集、制作、販売する会社です。コンテンツとはクリエイティブの集積であり、読みもの、動画、商品、キャラクター、イベント、すべてがコンテンツであるととらえています。具体的には、創刊から25年間毎日更新をしているウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」、さまざまなアーティストやブランドとつくるイベント「生活のたのしみ展」、人に会い、話を聞くことから、誰もがたのしく学べる場である「ほぼ日の學校」、渋谷PARCOでさまざまな「表現」を提供する場である「ほぼ日曜日」、ギャラリーショップの「TOBICHI」、犬と猫と人間をつなぐ写真SNSアプリ「ドコノコ」といった「場」をつくり、ほぼ日手帳をはじめとした生活にまつわる商品や動画や読みものなどのコンテンツを国内外へお届けしています。

当事業年度における当社をとりまく事業環境として、EC市場規模の拡大があげられます。経済産業省の調査によると、2022年の日本国内のBtoC-EC市場規模は、22.7兆円(前年比9.91%増)と拡大し、内訳として物販系分野では前年比5.37%と伸長しています。また、越境EC購入額は日本・米国・中国の3か国間における市場規模がいずれの国でも増加しています。

当社は当事業年度において、主力商品の『ほぼ日手帳 2023』を例年通り2022年9月1日より、4月はじまり版の『ほぼ日手帳2023 spring』を2023年2月1日より販売開始しました。『ほぼ日手帳』はこれまでも、幅広いユーザーの手にとってもらえるようにブランド、IPやアーティストとのコラボレーションを実施してきました。当事業年度においては「ONE PIECE magazine」とコラボレーションした1日1ページの手帳本体やカバーが大きな反響を呼び、新たなユーザーの増加につながりました。今後も取組み先と当社の双方がより多くのユーザーに出会えるようなコラボレーションに取り組んでいきます。また、欧米での『ほぼ日手帳』への関心の高まりを受け、ほぼ日手帳関連のコンテンツやSNSの英語対応を強化し、販路の拡大を進め、英語版手帳本体のラインナップを大幅に拡充しました。これらの結果、海外売上高の前期比は直販売上で31.1%増、卸売上で44.4%増と北中米、ヨーロッパを中心に大きく伸長し、『ほぼ日手帳』における海外売上高の構成比率は47.7%(前期比1.7pt増)と上昇しました。8月には直販ECサイトの言語、通貨、決済手段の対応範囲を広げるDtoC越境EC向けサービスを導入しました。今後もユーザーにとって購買しやすい環境を整えることで、海外売上高の伸長を促進していきます。

 

新たに企画した手帳本体とカバーが一体となった張り手帳『ほぼ日手帳 HON』の発売もあり、新型コロナウイルス感染症等の影響で減少していた手帳販売部数は、2023年版手帳では増加に転じ約82万部となりました。

結果として『ほぼ日手帳』全体の売上高は国内外ともに手帳本体・カバーが好調に推移し、前期比28.3%増(国内24.2%増、海外33.1%増)となりました。

 


 

手帳以外の商品の売上高は前期並で推移しました。寝具を扱うブランド「ねむれないくまのために」が好調に推移したほか、4月29日から7日間「生活のたのしみ展」を新宿で開催しました。前回より開催期間を1日増やし、約70の店舗や企画が集まり、販売総額は過去最大となりました。一方で、アパレル関連の売上が減少しました。

これらの結果、売上高は6,818,424千円(前期比15.4%増)となりました。

売上原価については、『ほぼ日手帳』の売上構成比率が上昇した結果、売上原価率は43.1%(前期比1.3pt減)となりました。販売費及び一般管理費については、物流プロセスの見直し等でコスト削減に努めた一方で、海外直営販路での売上増加及び販売手数料率の引き上げによる販売費用の増加に加えて、国際物流コストの上昇により、物流費用が増加しました。

その結果、当事業年度の営業利益は589,670千円(前期比114.2%増)、経常利益は584,757千円(前期比101.1%増)、当期純利益は411,910千円(前期比100.2%増)となりました。

その他の事業活動として、動画サービス「ほぼ日の學校」(アプリ及びWEBで提供)では、「人に会おう、話を聞こう。」をコンセプトに、新しい学びの「場」をつくることを目指し、有名無名問わず様々なジャンルの講師による授業を配信しています。侍ジャパン前監督の栗山英樹さんや、作家の京極夏彦さん、連続起業家の孫泰蔵さんなど、2023年8月末までに300本以上の動画を公開しました。さらに夏休みには自由研究をテーマに、小学生とSDGsについて考えるリアルなイベントも行い、活動の幅を広げています。また全日本空輸株式会社(以下ANA)と業務提携を続け、ANAのお客様へ動画コンテンツを提供しています。ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」では俳優の大泉洋さんとの対談「まったく、大泉洋ってひとは。」や、美術館の常設展示を紹介する「常設展へ行こう!」が多くの方に読まれました。また、ほぼ日のさまざまな商品を生配信で紹介する「ほぼ日LIVEコマァ~ス」を開始したほか、LINEアカウントメディアなどの外部媒体でアーカイブの人気記事を配信しています。活字以外のメディアでもたくさんの方に楽しんでもらえるよう、オーディオブック「聞く、ほぼ日。」やYouTubeチャンネル「ほぼべりTUBE」など、音声や動画としてのコンテンツ提供にも力を入れています。

渋谷PARCO「ほぼ日曜日」では、7月1日から8月後半まで絵本作家・キャラクターデザイナーのコンドウアキさんのこれまでの作品を展示する「コンドウアキのおしごと展 作家生活20周年記念」を開催しました。200点以上の直筆原画の展示、絵本をイメージしたカフェスペース、キャラクターグッズのショップは多くの方で賑わいました。また、「TOBICHI」ではJR木次線・出雲坂根のジオラマを展示し鉄道にまつわるマンガを集めた「ジオラマと鉄道マンガ展 がんばれ!山を登る列車・木次線」などのイベントを開催しました。

このように、当社は運営する「場」において、生活のたのしみとなるような「いい時間」を過ごしていただけるよう、コンテンツを作り、編集し届けています。業績はこうしたすべての活動の結果だと考えています。

なお、当社は単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しています。

 

 (生産、受注及び販売の実績)

当事業年度における販売実績は次のとおりです。なお、当社は単一セグメントのためセグメント別の記載はしていません。

 

内訳

販売高(千円)

前年同期比(%)

直販

4,804,628

115.4

卸売 (注)1.

1,486,778

121.8

商品売上 計

6,291,407

116.8

その他売上 (注)2.

527,017

101.0

売上 合計

6,818,424

115.4

 

(注) 1.主要な相手先別の販売実績は、総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先がいないため、記載を省略しています。

2.その他売上は主に送料売上、サービス売上、ライセンス収入等です。

 

(2) 財政状態の状況の概要・分析

 

前事業年度末

2022年8月31日

当事業年度末

2023年8月31日

前事業年度末比増減

資産合計

5,315,235

千円

5,847,553

千円

532,317

千円

負債合計

1,451,667

千円

1,647,253

千円

195,586

千円

純資産合計

3,863,568

千円

4,200,299

千円

336,731

千円

 

(資産の部)

流動資産は、4,360,324千円と前事業年度末に比べて360,565千円の増加となりました。これは主に商品の増加499,821千円、売掛金の増加81,314千円、前渡金の増加41,581千円、現金及び預金の減少245,206千円によるものです。

有形固定資産は、291,329千円と前事業年度末に比べて42,407千円の減少となりました。これは主に減価償却による減少57,706千円、建物の取得による増加8,936千円、工具、器具及び備品の取得による増加6,363千円によるものです。

無形固定資産は、417,741千円と前事業年度末に比べて100,140千円の増加となりました。これは主に自社システムや「ほぼ日の學校」などのソフトウエア取得による増加85,776千円、ソフトウエア仮勘定の増加92,316千円、減価償却による減少77,820千円によるものです。

投資その他の資産は、778,158千円と前事業年度末に比べて114,018千円の増加となりました。これは主に長期前払費用の増加43,211千円、投資有価証券の時価評価額の増加42,376千円、繰延税金資産の増加17,191千円によるものです。

(負債の部)

流動負債は、1,430,869千円と前事業年度末に比べて172,827千円の増加となりました。これは主に買掛金の増加34,239千円、未払金の増加20,247千円、未払法人税等の増加78,368千円、賞与引当金の増加31,626千円によるものです。

固定負債は、216,383千円と前事業年度末に比べて22,759千円の増加となりました。これは主に退職給付引当金の増加14,927千円、その他に含まれる長期未払費用の増加10,182千円によるものです。

(純資産の部)

純資産の部は、4,200,299千円と前事業年度末に比べて336,731千円の増加となりました。これは主に利益剰余金の増加307,524千円と、その他有価証券評価差額金の増加29,018千円によるものです。

 

 

(3) キャッシュ・フローの状況

 当事業年度における現金及び現金同等物は1,373,312千円と前年同期末と比べ245,206千円の減少となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

 

前事業年度

2022年8月期)

当事業年度

2023年8月期)

対前年同期

(増減額)

営業活動による
キャッシュ・フロー

201,608

千円

162,658

千円

△38,950

千円

投資活動による
キャッシュ・フロー

△255,079

千円

△292,329

千円

△37,249

千円

財務活動による
キャッシュ・フロー

△106,836

千円

△106,927

千円

△91

千円

 

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、162,658千円の純収入(前年同期は201,608千円の純収入)となりました。これは主に税引前当期純利益584,757千円、減価償却費の計上171,013千円による増加要因と棚卸資産の増加478,181千円、売上債権の増加81,314千円による減少要因によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、292,329千円の純支出(前年同期は255,079千円の純支出)となりました。これは主に有形固定資産の取得15,299千円、無形固定資産の取得185,059千円、長期前払費用の取得80,760千円によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、106,927千円の純支出(前年同期は106,836千円の純支出)となりました。これは主に配当金の支払額104,439千円によるものです。

 

(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

2022年8月

2023年8月

自己資本比率

72.7%

71.8%

時価ベースの自己資本比率

148.2%

144.8%

キャッシュ・フロー対
有利子負債比率

インタレスト・カバレッジ・レシオ

 

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

(注1)株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しています。

(注2)キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しています。

(注3)有利子負債は貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債(リース債務を除く)を対象としています。

 

(資本の財源及び資金の流動性について)

当事業年度末現在において、流動比率は305%、総負債額に対する現金及び現金同等物は0.8倍です。

当社は将来の経営環境への対応や将来の新規事業のために必要な資金を内部留保しています。

当社の運転資金需要のうち主なものは、商品の仕入及び販売活動に伴い生じる諸費用、人件費のほか、配当金や法人税等の支払いです。このほか、中長期的な成長に必要な人材への投資等についても、自己資金でまかなうことを原則としています。

主力商品である『ほぼ日手帳』の販売開始時期には、一時的な売上債権、仕入債務、棚卸資産等の増加があり、営業活動によるキャッシュ・フローの増減に影響を及ぼす可能性があります。

また、有価証券の取得・売却が生じた場合には、投資活動によるキャッシュ・フローの増減に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。この財務諸表の作成にあたり、経営者による会計方針の選択・適用、当事業年度末日における資産及び負債、会計年度における収益及び費用並びに開示に影響を及ぼす見積りを必要としています。これらの見積りに関しては、過去の実績等を勘案して合理的に見積りを行っていますが、見積り特有の不確実性のため実際の結果とは異なる場合があります。

当社の財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。