(1)会社の経営の基本方針
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、国内外における博多ラーメン専門店「一風堂」「IPPUDO」を中心とした複数ブランドの飲食店の展開を中核に、食材の生産、教育、商品開発、製造、流通、販売までを一貫して手がける事業モデルの実現に向け、複数の事業をグローバルに展開しております。
当社グループは創業の精神である、「食を通して新しい価値を創造し「笑顔」と「ありがとう」とともに世界中に伝えていく。変わらないために変わり続ける。」をグローバルに実現することを目指すとともに、より高いレベルでの顧客満足の獲得と更なる企業価値の向上に尽力し、顧客及び株主等のステークホルダーの利益最大化の実現に努めてまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループが重要視している経営指標は、売上高・営業利益・営業利益率・ROEであります。
(3)中長期的な会社の経営戦略、経営環境と優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①国内事業基盤の強化
既存店の収益性向上が重要であるとの認識のもと、従来の人口密集地や集客力の高い商業施設に加え、都心部近郊の中商圏やロードサイドへの出店を積極的に行うとともに、将来の収益性の低下が見込まれる店舗や、不採算店舗の戦略的閉店も進め、より高い収益体質へと改善していきます。さらに、プラントベースラーメンを常時提供する一風堂新宿ルミネエスト店などの新コンセプト店舗の開発に取り組みます。
商品においては、主力商品であるラーメンの継続的な改善を行うとともに、定期的に新商品を発売し顧客の来店促進につなげてまいります。また、植物由来のプラントベースラーメンの販売や、食の多様化、原材料調達リスクの分散、持続可能な社会の実現のための商品開発を継続的に行ってまいります。
併せて人財不足や人件費の高騰を見据えて店舗レイアウト及び厨房オペレーションの自動化と効率化を図り、飲食事業として総合的な次世代の食の在り方を追求してまいります。
②海外事業の拡大
海外では、経済の成長が続き、中間所得者層の増加に伴う消費意欲の向上により、飲食市場は拡大を続けております。日本食への「健康」「おいしさ」「文化」等の観点から関心は高く、今後も市場が拡大していくものと見込んでおります。
その中で当社は、直営エリアにおいては、フラッグシップ店の出店やセントラルキッチン等の導入コストがかかる初期フェーズを経て、店舗拡大フェーズへと移行しております。不安定な経済情勢を踏まえ、新規出店を遅らせておりましたが、再開することに加え、今まで培ってきたそれぞれの市場に合わせた商品開発や店舗開発、世界規模においてのブランド力の更なる向上に努め、事業拡大を加速させていきます。
また、ライセンス事業においては、主にアジアの現地のパートナーの資本力、マーケティング力、ネットワーク力を活用し、引き続き事業拡大を目指していきます。
③商品販売事業の拡大
販売先としましては、規模が見込める国内の主要スーパー並びに、百貨店・空港等のお土産需要が見込まれる商圏、自社サイトを通じてEC市場での規模拡大を目指します。
海外においても一風堂関連商品に対して関心が高い水準にあることから、随時海外各市場においても同商品の導入を進めてまいります。
④人財の採用と教育
当社グループの競争力の源である店舗運営力の向上のためには、人財の育成こそが他社との差別化にもつながると考えており、国内外問わず、人財採用の強化及び従業員満足度の向上を継続して行ってまいります。
日本のみならず、各先進国においても人口の高齢化や少子化の傾向は見受けられ、人財の確保において業界を問わず競争は激化しております。当社グループは、給与のベースアップ等により総報酬額の引き上げを行うとともに、働き方の多様性を確保するために、地域限定社員や契約社員の採用を推進しております。また、充実した研修制度により、継続的な雇用を実現するとともに、高いサービスレベルの維持と向上を図っております。さらには、グローバル人財を育成し、研鑽を積んだスタッフを海外に派遣することで、日本の接客レベルを全世界で実現してまいります。当社グループとしては、このような人財育成の取り組みを顧客満足度の最大化のための重要課題としてとらえ、全事業においてクオリティの高い商品及び接客を提供できるよう、継続的に従業員の教育を行ってまいります。
また、労働環境の改善の観点から、ITシステムの入れ替えによる店舗業務の自動化及び有給休暇取得の施策を進めております。AIやロボティクス技術導入による労働環境の改善も併せて検討しており、当社グループの人財がより働きやすい、将来に希望を持てる労働環境の構築とグローバルな人財の獲得に向けて投資を行ってまいります。
⑤衛生面の強化
近年、食の安心や安全に対する社会的なニーズは高まっております。日本における2021年6月のHACCP完全制度化等、原材料や提供商品のみならず、製造工程や物流の過程においても食の安全性に対しての取り組みは必須となっております。当社グループでは、専門対策部署を設置し、工場から物流、店舗での保管や提供方法等、顧客へ商品が最終的に提供されるまでの全ての工程において最新の法令を遵守し、顧客に安全な食をお届けするべく、衛生管理マニュアルに基づき衛生管理・品質管理に努めております。
⑥食習慣の多様化
リモートワーク等の働き方の変容や、食品技術の向上に伴い、消費者の食習慣に変化の兆しが見られます。テイクアウトやデリバリーに加え、中食や冷凍食品の需要が非常に高まっており、この傾向は当分継続されると見込まれます。同時に、環境負荷の低減や持続可能な社会の実現を目指す世界的な取り組みは、食の市場に新たな需要を生み出しており、食に関する価値観の多様化や技術革新は今後一層加速していくと見込まれます。
当社グループにおいては、国内、海外ともにテイクアウトやデリバリーを継続するとともに、海外においてはクラウドキッチンの拡大をしております。また、既に展開している中食やEC事業の強化に加え、ラーメン自動調理機「Yo-Kai Express」事業への商品の供給ならびに開発を行うことで、顧客の来店以外での収益強化に努めます。
さらには、新しい食の提案として植物由来のプラントベースラーメンを国内及び海外で販売するなど、今後も多様化するニーズに応えるべく、ご来店いただいたお客様に向けてより一層満足いただけるよう、商品の開発および、改善をしてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(気候変動を含むサステナビリティに関する取組)
(1)ガバナンス
当社グループは、環境・社会・ガバナンス等の中長期的なESG課題に経営レベルで継続的に議論し、対応をするため、「サステナビリティ委員会」(以下、同委員会)を2023年3月に新たに設置いたしました。同委員会は代表取締役社長兼CEOを委員長とし、原則年に4回開催され、議論するテーマに応じて事業部の責任者を招集し、全社的に課題を検討いたします。また、同委員会にて審議された内容は取締役会にも報告され、取締役会はグループのESG課題解決に向けた対応の進捗をモニタリングいたします。
・当社サステナビリティ推進体制

・サステナビリティ委員会構成
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役割 |
担当 |
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委員長 |
代表取締役社長兼CEO |
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委 員 |
常勤監査等委員、(株)力の源カンパニー取締役、 CHIKARANOMOTO GLOBAL HOLDINGS PTE. LTD.取締役、(株)渡辺製麺取締役 各1名 |
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事務局 |
法務部、IR室 |
(2)戦略
初年度のシナリオ分析として、SDGsの目標達成年である2030年時点を想定し、現状を上回る気候変動対策が行われず異常気象の激甚化が想定される「4℃シナリオ」と、脱炭素に向けてより野心的な気候変動対策の実施が想定される「1.5℃シナリオ(一部2℃シナリオも併用)」を参考に、定性・定量の両面から考察を行いました。
・シナリオの世界観
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項目 |
2℃以下シナリオ |
4℃シナリオ |
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参照シナリオ |
(2℃シナリオ) IEASustainableDevelopmentScenario、IPCCRCP2.6
(1.5℃シナリオ) IEANetZeroEmissionsby2050 |
(4℃シナリオ) IEAStatedPoliciesScenario、IPCCRCP8.5 |
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対象年 |
2030年時点 |
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想定される世界観 |
2100年時点において、産業革命時期比で1.5℃未満の平均気温上昇が想定されるシナリオ。カーボンニュートラル実現を目指し、気候変動問題を抑制するために現状以上の厳しい政策・法規制等が敷かれる |
2100年時点において、産業革命時期比で3.2℃~5.4℃(約4℃)の平均気温上昇が想定されるシナリオ。気候変動問題を軽減するための積極的な政策法規制等は敷かれず、異常気象の激甚化が顕著に表れる |
・シナリオ分析の結果、想定されたリスク・機会と当社対応
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将来 世界像 |
リスク・機会 |
想定される 発生時期 |
想定される財務的影響 |
自社戦略 |
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短期 |
中期 |
長期 |
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移行 リスク |
(リスク/機会) |
● |
● |
● |
中 |
・環境保全型農業で生産されたお米を使用 ・一部を除く当社グループ店舗では、洗浄して再利用をするエコ箸を採用 |
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(リスク/機会) ・環境負荷軽減の観点から、畜産物の流通量が減少する一方で、エシカル消費に対応したレシピ開発により、新たな顧客創出に繋がる |
● |
● |
● |
中 |
・プラントベースフードの開発、販売 ・外食版サプライチェーンマネージメントの導入発注から商物流支払い登録までの一元管理によりコスト削減を図る |
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(リスク) ・再生可能エネルギー導入に伴い、オフィスや営業所においてエネルギーコストの増加や設備投資コストが発生する |
● |
● |
● |
大 |
・オフィス/店舗でのLED照明活用 ・こまめな節電活動 |
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(リスク) ・廃棄物を抑制するために、食品ロスに関する法規制が強化された場合、対応コストが増加する |
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● |
● |
中 |
・消費期限がより長くなるよう工夫して梱包された食材の仕入れや、トッピングには使わない部分のチャーシューを活用したメニューの販売、料理の残量を計測し残量削減に取り組む ・残渣やラードなど、食品廃棄物を元にしたバイオディーゼル技術への貢献による収益機会の増加 |
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(リスク) ・プラスチック製容器やカトラリーの使用に関する規制が生じ、代替品への変更などの対応コストが増加する |
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● |
● |
中 |
・化石燃料を原料としたプラスチック製品を紙製品やセルロースファイバーを使用したものに順次切り替え、プラスチック使用量を減少 |
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(リスク) ・化石燃料(ガス)の使用規制に伴い、現行の調理器具、調理方法が使用できなくなり、新たに対応コストが増加する |
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● |
● |
小 |
・IH機器等の燃料を使用しない機器の導入によりガス使用量を減少 |
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(リスク) ・炭素税の導入により、電気・ガスの使用等により排出したGHG排出量に応じて、課税コストが増加する |
● |
● |
● |
中 |
・再生可能エネルギー導入等により、GHG排出量を減らし、税負担軽減を図る |
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将来 世界像 |
リスク・機会 |
想定される 発生時期 |
想定される財務的影響 |
自社戦略 |
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短期 |
中期 |
長期 |
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物理 リスク |
(リスク) 異常気象の激甚化により、以下が発生することにより支出の増加および収益機会の損失が発生する ・サプライチェーンの寸断による、原材料調達難や出荷の停止 ・異常気象に伴う来客数の減少 ・オフィス、店舗、工場の被災による営業活動の停止 |
● |
● |
● |
中 |
・取引先と連携を取り、仕入先や取引する地域を増やすことで安定を図る ・販売チャネル等の見直しを行い、収益安定を図る ・BCPの策定により、営業活動停止リスクを最小限に抑える |
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(リスク) ・熱波および干ばつの影響により原材料(農作物)生産量が減少し、調達難やコスト増加が発生する |
● |
● |
● |
大 |
・取引先と連携を取り、仕入先や取引する地域を増やすことで安定を図る |
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(リスク) ・平均気温の上昇に伴う、空調コストの増加および冷蔵、冷凍庫への設備費用が増加する ・平均気温の上昇に伴い、食品の保存環境に影響を及ぼし、消費期限が短縮され、食品ロスや提供方法の変更など対応コストが発生する |
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● |
● |
大 |
・再生可能エネルギーの導入を含む、水道光熱費削減の取り組みを実施する |
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(リスク) ・降水パターンが変化することで、原材料(農作物)の安定した調達が困難となり、対応コストが発生する ・畜産飼料となる小麦などの食物の生育不良に伴い、畜産の流通量減少などが発生し、調達コストが増加する |
● |
● |
● |
大 |
・外食版サプライチェーンマネージメントの導入 発注から商物流支払い登録までの一元管理によりコスト削減を図る ・使用する部位を増やすことで、仕入量の安定を図る |
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(リスク) ・海産資源の生態系の変化により、漁獲量の減少及び原料価格の上昇が生じる |
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● |
● |
小 |
・仕入先の増加、事前に仕入量を予約する |
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(リスク) ・害虫が発生することで、原材料(農作物)の安定した調達が困難となり、対応コストが発生する |
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● |
● |
中 |
・取引先と連携を取り、仕入先や取引する地域を増やすことで安定を図る |
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(リスク) ・節足動物の生育地域拡大に伴い、マラリア等の感染症増加や気温上昇による国内の感染症流行状況が変化し、来客数の減少や店舗運営に影響が生じる。また、畜産を媒介とした感染症の増加によって、原材料の流通に影響が発生する |
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● |
● |
中 |
・乾麺タイプのプラントベース白丸・赤丸の販売開始ECサイトにて各種限定商品やオリジナル商品の国内外での販売 |
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・財務インパクトの試算
リスクとして想定された一部項目※について、当社事業への影響を定量的に計るため財務インパクトの試算を行いました。
(※)将来予測値および自社実績値から定量的な分析が可能と判断したもの
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リスク項目 |
試算内容 |
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炭素税の導入 |
当社GHG排出量および将来の炭素税価格から試算 |
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電力価格の増減 |
当社電力使用量および将来の電力価格から試算 |
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空調使用量の増加 |
当社電力使用量および将来の電力価格・空調使用量増加率から試算 |
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洪水・高潮による 年平均被害リスク |
治水経済調査マニュアル(国土交通省)に基づき、拠点ごとに災害による被害額を |
シナリオ分析の結果、当社事業継続に重大な影響を及ぼすリスクは想定されませんでした。ただし、4℃シナリオおよび1.5℃シナリオの両シナリオにおいて、気候変動による異常気象の増加は想定されており、国内外に広く店舗を展開する当社事業においては物理的な被害を受ける可能性が高いだけでなく、当社商品の原材料である小麦をはじめとした農作物や畜産の生育状況に影響を与えるため、最も重大なリスクとなると想定をいたしました。
今後、シナリオ分析の結果を基に店舗展開や調達面など、現状の事業戦略で考慮すべき要素について検討を重ねるとともに、プラントベースフードの開発や商品製造時の残渣の有効活用など、「食を通して新しい価値を創造し『笑顔』と『ありがとう』とともに世界中に伝えていく。」ことを創業の精神に掲げる企業として、社会や環境に貢献できる取り組みを積極的に行ってまいります。
(3)リスク管理
当社グループでは、気候関連リスクについて、サステナビリティ委員会にてリスクの抽出を行ってまいります。サステナビリティ委員会にて審議・特定されたリスクは取締役会に報告され、その他事業リスクと相対的な評価を行い、全社的なリスク管理プロセスと統合をしてまいります。また、取締役会にて自社の事業活動に大きく影響を及ぼすと評価された重要なリスクについては、取締役会にてその対応方針を検討するとともに、関連部署に指示を行い、その進捗については取締役会が定期的なモニタリングを行ってまいります。
(4)指標及び目標
当社グループでは、自社事業活動により発生する温室効果ガス排出量について、環境経営推進を測るための指標としております。該当年度は算定可能な国内事業所にてScope1、Scope2の算定を行いました。今後、算定範囲の拡大やScope3の算定を検討するとともに、パリ協定で掲げられた目標を参考に、中長期的な目標を検討してまいります。
・自社事業活動における温室効果ガス排出量
(人的資本に関する方針)
当社グループの競争力の源である店舗運営力の向上のためには、人財の育成こそが他社との差別化にもつながると考えており、国内外問わず、人財採用の強化及び従業員満足度の向上を継続して行ってまいります。
(1)戦略
①採用方針
日本のみならず、各先進国においても人口の高齢化や少子化の傾向は見受けられ、人財の確保において業界を問わず競争は激化しております。当社グループは、給与のベースアップ等により総報酬額の引き上げを行うとともに、働き方の多様性を確保するために、地域限定社員や契約社員の採用を推進しております。
②人材育成に関する方針
充実した研修制度により、継続的な雇用を実現するとともに、高いサービスレベルの維持と向上を図っております。さらには、グローバル人財を育成し、研鑽を積んだスタッフを海外に派遣することで、日本の接客レベルを全世界で実現してまいります。当社グループとしては、このような人財育成の取り組みを顧客満足度最大化のための 重要課題としてとらえ、全事業においてクオリティの高い商品及び接客を提供できるよう、継続的に従業員の教育を行ってまいります。
③多様な人材が活躍できる社内環境整備に関する方針
労働環境の改善の観点から、ITシステムの入れ替えによる店舗業務の自動化及び有給休暇取得の施策を進めております。AIやロボティクス技術導入による労働環境の改善も併せて検討しており、当社グループの人財がより働きやすい、将来に希望を持てる労働環境の構築とグローバルな人財の獲得に向けて投資を行ってまいります。
(2)人的資本に関する指標と目標
当社グループにおける、国内外問わず、人財採用の強化及び従業員満足度の向上を継続的に行っていくという方針及びその社内環境整備に関する方針に関する指標としては、人財採用計画人数、女性管理職比率、賃金格差等がありますが、現時点においても一定程度の水準を達成していることと、新型コロナウィルスによる行動規制がようやく撤廃されたことから、今後のグローバルでの人財採用の状況や国内と海外の相違を踏まえ、グループ全体としての適切な目標の設定をすべく検討を継続してまいります。
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指標 |
目標 |
実績 |
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有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は、以下のとおりです。なお、文中における将来に関する事項は本書提出日現在において当社グループが判断したものでありますが、当社株式投資に関するすべてのリスクを網羅するものではありませんのでご留意下さい。
(1)国内外食業界の動向ならびに競争激化について
当社グループの属する国内外食産業市場は、人口の減少や高齢化並びに少子化の影響もあり市場規模の拡大に大きな期待ができない状態にあるなか、多種多様な業態の参入により競争が激化しております。また、コンビニエンスストアを中心とする中食との競争も激化しております。これらの競合の動向や外食市場の縮小等により、来客数が減少した場合には、当社グループの売上高及び営業利益が減少する可能性があります。
(2)国内外における業績の季節変動等について
当社グループは、創業以来、飲食店の経営を中心に事業を展開しており、主たる事業は、外食店舗運営事業であります。従って、当社グループの業績は外食産業に対する消費者のニーズの変化、当該業界での競争激化の影響を大きく受ける傾向にあります。
加えて、当社グループの店舗の売上高及び業績は、1年を通して一定ということではなく、季節によって変動する傾向があります。具体的には、国内においては、春休み(3月)、ゴールデンウィーク(5月)、夏休み(7~8月)及び年末年始(12~1月)などの繁忙期に売上高が増加する一方、梅雨シーズンなどの閑散期には売上高が落ち込む傾向があります。海外においても、展開する国ごとの気候・天候、特有のイベント、休暇、生活習慣等により売上高が変動します。
また、繁忙期に台風、酷暑、厳寒などの天候の悪影響が及んだ場合や新規出店が閑散期と重なり、かつ多数出店することによるオープン時の一時費用の負担割合が売上高に比して高くなった場合には、当社グループの売上高及び営業利益が減少する可能性があります。
(3)国内店舗展開と出店戦略について
当社グループは、国内においては、主に直営による店舗展開を行っており、今後も立地、賃借条件、店舗の採算性などを勘案し積極的に出店を行っていく方針であります。しかしながら、当社グループの出店条件に合致する物件が出店計画数に満たない場合や、工事等の遅れによりオープンが遅延した場合には、当社グループの売上高及び営業利益が減少する可能性があります。
(4)海外事業展開について
当社グループは、欧米・アジア地域を中心に積極的に店舗展開を進めております。進出国における政情、経済、法規制、慣習等といった特有のカントリーリスクが当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、海外においては当社グループ子会社が運営する直営店舗のほかに、当社とライセンス契約を締結した現地パートナー企業が店舗を運営する形態がありますが、パートナー企業の業績の悪化並びに出店計画の遅れ等が生じた場合、店舗売上やロイヤリティ収入が減少すること等により当社グループの売上高及び営業利益が減少する可能性があります。
(5)商標権について
当社グループの各店舗等において使用する名称・商標等については、その使用に先立ち、外部の専門家を通じて第三者の商標権等を侵害していないかについて確認し、侵害のおそれのある名称は使用を避け、かつ、可能な限り当社グループにおいて商標を取得することを基本方針とし、これら使用権の確保及び第三者の権利侵害の回避に努めております。しかしながら、当社グループの運営する店舗の名称や商品の内容、店舗デザイン等が模倣されることによるブランド力の低下や第三者の有する先行商標との類似等の理由により、第三者から当社グループへの商標権の侵害等にかかる損害賠償、商標の使用停止などの請求があり、仮にこれらの請求が認められた場合には、当社グループの売上高及び営業利益が減少する可能性があります。
(6)敷金・保証金・建設協力金について
当社グループでは、出店に際して賃貸人に対し敷金、差入保証金及び建設協力金を支払っております。賃貸借契約の時点で賃貸人の資産状況等を審査しておりますが、賃貸人の財政状態の著しい悪化等により、敷金、差入保証金及び建設協力金の一部又は全部が回収不能になった場合は、当社グループの経常利益及び当期純利益が減少し、財政状態にも影響を及ぼす可能性があります。
(7)海外店舗展開における営業権(キーマネー)について
当社グループが出店する欧州の一部の国においては、店舗物件の取得の際に、多額の営業権(キーマネー)の支払いが発生することがあります。キーマネーとは、出店しようとする店舗物件の前の運営者(前テナント)が設定する当該店舗に紐付いた権利であり、当該店舗への出店において、前テナントからの譲受が必要となります。その価格は、店舗立地、賃貸借契約の残存期間、店舗の過去の業績、家賃、近隣における取引事例などを勘案したうえで、前テナントとの交渉により確定します。なお、当社グループが移転、退店する場合には、キーマネーを譲渡し、投資資金の回収に充てることとなります。
その価格の増減により、出店時の投資額の増加や、退店時の譲渡価格の減少が生じ、当社グループの財政状態にも影響を及ぼす可能性があります。
(8)原材料の調達環境リスクについて
当社グループでは、原材料の調達については、外食企業として、食の安心・安全を第一と考え、良質な食材の調達に努めております。しかしながら、疫病や天候不順、世界的な需給バランスの変動、各国における輸入制限等の規制により、必要量の原材料確保が困難な状況が生じることや仕入価格が高騰し、当社グループの営業利益が減少する可能性があります。
(9)各種法的規制等について
当社グループでは、ラーメン店を中心に複数の飲食店を運営しており、「食品衛生法」、「労働基準法」、「食品表示法」、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」、「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」、「独占禁止法」、「中小小売商業振興法」等の多岐にわたる法的規制を受けております。重大なコンプライアンス上の問題が発生した場合や、法的規制の改正に対応するための新たな費用が発生する場合には、当社の売上高及び営業利益が減少する可能性があります。
(10)アルバイト就業員に対する社会保険加入義務化について
当社グループは、国内においては、店舗において多数のアルバイト就業者を雇用しており、社会保険加入の要件を満たすアルバイト就業者においては、全てに加入を義務付けております。しかしながら、今後、アルバイト就業者への社会保険適用範囲の拡大などの法改正が実施された場合、社会保険料負担の増加等により、人件費が上昇し当社グループの営業利益が減少する可能性があります。また海外においても、医療保険制度等の変更等によって、社会保険料ほか各種負担金が増加することで、当社グループの営業利益が減少する可能性があります。
(11)店舗の衛生管理について
当社グループでは、食品衛生とは、安心・安全な商品をお客様に提供することと考えております。各店舗での適正な食材管理並びに衛生管理を徹底するとともに、衛生専門部署を設置し清潔な店舗づくりに努めております。しかしながら、当社グループにおいて、万一、食中毒などの重大な衛生上の問題が発生した場合には、当社グループの売上高の減少等、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(12)固定資産の減損会計について
当社グループは、すでに減損会計を適用しておりますが、今後当社グループが保有する固定資産を使用する店舗の営業損益に悪化が見られ、回復が見込まれない場合や、固定資産の市場価格が著しく低下した場合には、当該固定資産について減損損失を計上することにより、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(13)有利子負債依存度について
当社グループは、出店資金を主に銀行借入により調達しております。当連結会計年度末における当社グループの有利子負債は2,717百万円であり、有利子負債依存度は15.7%となっております。
現在は、変動金利と固定金利を組み合わせる形で、長期借入金により資金を調達しております。銀行借入時の金利は低金利の状況が当面は継続するものと想定され、一定期間においては金利変動による影響は軽微であると考えておりますが、金利動向及び金融情勢等により当社グループの経常利益が減少し、事業展開にも影響を受ける可能性があります。
なお、有利子負債残高は、短期借入金、長期借入金(1年以内返済予定を含む)、短期及び長期リース債務(1年以内返済予定を含む)の合計額であります。
(14)為替変動リスクについて
当社グループは、グローバルに事業展開を図っており、海外子会社からのロイヤリティ収入等の外貨建売上債権が発生するほか、特に新規エリアへの進出時には、設備投資資金として海外子会社への貸付金が発生するため、決算期末における換算差額が為替差損益として発生します。また、連結財務諸表作成時には、海外連結子会社の財務諸表は、決算時又は期中平均の為替レートで換算されることとなります。
当社グループでは、設備投資資金に係る借入金の一部を外貨建てとし、海外子会社に貸付を行うほか、海外子会社への投資資金の一部の貸付金をデット・エクイティー・スワップ等の手法により出資に切り替えるなどの方法で、為替差損の発生リスクの軽減を図っておりますが、今後、為替レートが大きく変動した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(15)特定人物への依存について
当社グループの経営方針及び事業戦略は、ファウンダー(創業者)である代表取締役会長兼Founder河原成美に依存する部分が相応にあります。当社グループでは組織規模の拡大に応じた権限委譲を進めると共に、役員及び幹部社員による情報の共有化等を通じて経営組織の強化を図るなど、ファウンダーに過度に依存しない経営体制の整備を進めておりますが、今後何らかの理由によりファウンダーが当社グループの経営執行を継続することが困難となった場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(16)人財の確保及び育成について
当社グループは、積極的な国内外への出店を行っており、人財の育成と人財確保を積極的に行っていくことが重要であります。当社グループの理念を理解し、賛同した人財の確保が重要となっており、新卒採用だけでなく中途採用、アルバイトからの社員登用も含めて人財の獲得を進めてまいります。したがって、人財確保ならびに人財育成が順調に進まない場合には、店舗におけるサービスレベルの維持や店舗展開が計画通りできず、当社グループの売上高及び営業利益が減少する可能性があります。
(17)SNS等の利用に伴う風評被害について
SNSやインターネットを利用した不適切な情報発信に伴う被害として、飲食店の従業員による不適切な情報発信のほか、昨今では、店舗に来店した顧客による迷惑行為の配信が増加しております。当社グループでは、従業員に対し、情報発信に係るガイドラインを設ける等の対策をしておりますが、従業員や顧客による不適切な情報発信がなされた場合には、当社グループが運営するブランドの価値が棄損され、当社グループの売上高及び営業利益が減少する可能性があります。
(18)自然災害等のリスクについて
当社グループは、国内外において店舗及び工場を運営しており、地震や台風等の自然災害により、店舗営業、工場生産、物流といった諸機能が停止状態に陥った場合、商品供給ができない可能性があります。また、動物特有の感染症や伝染病等が発生した場合、客数の減少、仕入コストの上昇、安全衛生の強化施策費の増加等により、当社グループの売上高及び営業利益が減少する可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(2023年4月1日から2024年3月31日まで)における世界経済は、ロシア・ウクライナ情勢やイスラエル・パレスチナ情勢に起因する原材料価格及びエネルギー価格の上昇や、労働人口の減少等による人件費の上昇、世界的な根強いインフレに伴う金融引き締めによる景気減速懸念等、先行きが不透明な状況が継続しております。
当社グループの属する外食産業について、国内においては、新型コロナウイルス感染症の法令上の位置づけが変更され、人流の回復や、入国規制の解除に伴うインバウンドの回復により、経済活動が活発になっている一方で、原材料及びエネルギー価格の上昇や人件費の上昇、昨年から続く円安、物価高騰に伴う景気減速の懸念等、引き続き厳しい経済状況にあります。海外においては、地政学的な不安定要素において、原材料及びエネルギー価格の高騰が懸念されるとともに、インフレに伴う金融引き締めによる景気減速が懸念され、引き続き注視が必要な状況にある点は国内と同様であります。
このような状況のもと、当社グループでは、「変わらないために、変わり続ける」という企業理念に基づき、国内においては、新規出店や全国各地のイベント等への出店、コラボ商品・期間限定商品の販売等により販売機会を拡大してまいりました。このほか2023年10月には、より一層のブランド力・商品価値向上を行いお客様にいつまでも楽しんでいただくことを目的に、8年ぶりに看板商品である「白丸元味」、「赤丸新味」、3年ぶりに「からか麺」のリニューアルと価格改定を実施しております。また海外においては、期間限定やデザートなど新メニューの導入や既存のメニューの見直しなど商品戦略を強化することにより集客を図るとともに、原材料価格高騰等を反映した販売価格改定、さらにDX施策によりコスト削減を行うことにより収益の改善を行っております。商品販売につきましては、国内では引き続き一風堂関連商品のB2B営業の強化を行うとともに、海外では食の多様性に対応しているラーメン商品として「プラントベース白丸・赤丸」乾麺タイプの輸出販売の拡大に取り組んでまいりました。
上記の取り組みを実施する中、当連結会計年度末の店舗数はライセンス形態での展開を含め、当社グループ合計で287店舗(国内145店舗、海外142店舗、前期末比国内6店舗増、海外5店舗増)となりました。
以上の結果、当連結会計年度における財政状態、経営成績は以下のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ248百万円減少し、17,229百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ1,877百万円減少し、7,959百万円となりました。
当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,629百万円増加し、9,269百万円となりました。
b.経営成績
当連結会計年度の経営成績は、売上高31,776百万円(前期比21.7%増)、営業利益3,296百万円(前期比44.5%増)、経常利益3,489百万円(前期比50.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,186百万円(前期比34.2%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
国内店舗運営事業につきましては、売上高13,982百万円(前期比21.7%増)、セグメント損益は1,416百万円の利益(前期比127.2%増)となりました。
海外店舗運営事業につきましては、売上高14,322百万円(前期比21.9%増)、セグメント損益は1,788百万円の利益(前期比20.0%増)となりました。
商品販売事業につきましては、売上高3,471百万円(前期比20.8%増)、セグメント損益は459百万円の利益(前期比14.2%増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、5,575百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,699百万円減少しました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動の結果、獲得した資金は3,934百万円(前連結会計年度は2,852百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益3,059百万円の計上、減価償却費876百万円及び減損損失388百万円等の非資金的費用の計上があった一方で、法人税等の支払額340百万円を計上したこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動の結果、支出した資金は2,406百万円(前連結会計年度は967百万円の支出)となりました。これは主に、定期預金の払戻による収入209百万円があったものの、定期預金の預入による支出1,257百万円、新規出店等に伴う有形固定資産の取得による支出1,172百万円があったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動の結果、支出した資金は3,561百万円(前連結会計年度は71百万円の支出)となりました。これは主に、短期借入金の純減少2,360百万円、長期借入による収入2,321百万円、長期借入金の返済による支出2,733百万円、配当金の支払660百万円があったこと等によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月 1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
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国内店舗運営事業(千円) |
- |
- |
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海外店舗運営事業(千円) |
- |
- |
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商品販売事業(千円) |
1,060,868 |
130.9% |
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合計(千円) |
1,060,868 |
130.9% |
(注)1.金額は、製造原価によっております。
2.国内店舗運営事業及び海外店舗運営事業は、店舗運営が主であり生産を行っておりません。
3.当連結会計年度における生産実績の著しい変動の要因は、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおり
であります。
b.仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月 1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
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国内店舗運営事業(千円) |
3,792,925 |
136.7% |
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海外店舗運営事業(千円) |
3,497,423 |
109.5% |
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商品販売事業(千円) |
1,023,798 |
100.3% |
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合計(千円) |
8,314,147 |
119.0% |
(注)1.金額は、仕入価格によっております。
2.当連結会計年度における仕入実績の著しい変動の要因は、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおり
であります。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年4月 1日 至 2024年3月31日) |
前年同期比(%) |
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国内店舗運営事業(千円) |
一風堂 |
10,353,278 |
129.4% |
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その他 |
3,629,562 |
104.0% |
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小計 |
13,982,840 |
121.7% |
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海外店舗運営事業(千円) |
IPPUDO |
12,794,120 |
127.1% |
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その他 |
1,528,757 |
90.7% |
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小計 |
14,322,878 |
121.9% |
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商品販売事業(千円) |
3,471,211 |
120.8% |
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合計(千円) |
31,776,930 |
121.7% |
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(注)1.当社の主要顧客は個人のため、主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は作成しておりません。
2.当連結会計年度における販売実績の著しい変動の要因は、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおり
であります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき、作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
なお、固定資産の減損処理につきましては、「3.事業等のリスク(12)固定資産の減損会計について」の記載に関連する会計処理であり、会社運営・業績に重大な影響を及ぼす可能性のある事項として認識しております。
②当連結会計年度の財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ248百万円減少し17,229百万円となりました。これは主に、現金及び預金が826百万円減少したこと、売掛金が238百万円増加したこと、棚卸資産が56百万円増加したこと、有形固定資産が96百万円増加したこと、投資有価証券が108百万円増加したこと、敷金及び保証金が112百万円増加したこと等によるものであります。
(負債)
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ1,877百万円減少し7,959百万円となりました。これは主に支払手形及び買掛金が67百万円増加したこと、有利子負債が2,721百万円減少したこと、未払金が112百万円増加したこと、未払法人税等が277百万円増加したこと等によるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ1,629百万円増加し9,269百万円となり、自己資本比率は53.8%となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が2,186百万円増加したこと、新株予約権の行使により資本金及び資本剰余金が47百万円増加したこと、為替換算調整勘定が193百万円増加したものの、配当金の支払いによる利益剰余金が662百万円減少したこと、自己株式を159百万円取得したこと等によるものであります。
経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度の売上高は31,776百万円(前期比21.7%増)となりました。
国内については、新規に12店舗を出店したほか、定借満了した店舗、将来の収益性低下が見込まれる店舗、不採算の店舗等の戦略的閉店を6店舗行った結果、前期比6店舗増加いたしました。このほか、全国各地のイベント等への出店、コラボ商品・期間限定商品の販売等の実施により販売機会を拡大したことにより、人流の回復やインバウンド需要をタイムリーに取り込むことができ、売上の獲得につながりました。また、2023年7月の価格改定のほか、2023年10月に看板商品である主要メニューについて商品力を強化するリニューアル及び原材料や人件費に起因する原価上昇に見合った価格改定を行ったことも客単価の上昇を通じて売上の獲得につながっております。また、一風堂関連商品のB2B販売においてコンビニエンスストア期間限定商品や機内食商品が好調でありました。海外については新規メニューの導入や既存の看板メニューの見直しを行うことにより集客を確保しつつ価格改定を実施したことが売上の獲得につながったほか、円安傾向が継続していることも売上の増加要因であります。以上の結果、国内店舗運営事業の売上高は前期比21.7%増、海外店舗運営事業の売上高は前期比21.9%増、商品販売事業の売上高は前期比20.8%増となりました。
(営業損益)
当連結会計年度の営業利益は3,296百万円(前期比44.5%増)となりました。
国内店舗運営事業、海外店舗運営事業ともに、店舗スタッフのシフトコントロール、モバイルオーダーやタブレットオーダー導入等のDX施策を実施いたしました。また、不採算店舗の閉店を実施したほか、売上高が増加したことに伴い国内店舗運営事業、海外店舗運営事業ともに増益となりました。
商品販売事業においても、主力の一風堂関連商品の販売強化が奏功し、増益となりました。
(経常損益)
当連結会計年度の経常利益は3,489百万円(前期比50.3%増)となりました。これは主に、為替差益や賃貸収入等の営業外収益374百万円を計上した一方で、支払利息48百万円及び賃貸収入原価119百万円等の営業外費用を計上したことで、営業利益3,296百万円から192百万円の増加となりました。
(税金等調整前当期純損益)
当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は3,059百万円(前期比64.2%増)となりました。これは主に、減損損失及び固定資産除却損等により特別損失を433百万円計上したことにより、経常利益3,489百万円から429百万円の減少となりました。
(親会社株主に帰属する当期純損益)
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は2,186百万円(前期比34.2%増)となりました。これは、法人税、住民税及び事業税及び法人税等調整額を873百万円計上したことによるもので、税金等調整前当期純利益3,059百万円から873百万円の減少となりました。
セグメント別の業績の概況
<国内店舗運営事業>
国内店舗運営事業につきましては、「一風堂」ブランドにおいて11店舗、「五行」ブランドにおいて1店舗出店した一方で、「一風堂」ブランドにおいて3店舗、「RAMEN EXPRESS」ブランドにおいて3店舗閉店したことから、当連結会計年度末の店舗数は145店舗(前期末比6店舗増)となりました。また、「RAMEN EXPRESS」4店舗について「一風堂」への業態変更を行っております。
新型コロナウイルス感染症の法令上の位置づけが変更されたことによる人流の回復や、入国規制の解除に伴うインバウンドの回復に対して、上記の出店数の増加や全国各地でのイベントへの出店、「太つけ麺」や「味噌赤丸」等の期間限定商品、コラボ商品等の販売を実施したことによりタイムリーに需要を取込むことができ集客につながりました。特に2024年2月には、1994年に出店し一風堂を全国の皆様に知っていただくきっかけとなった新横浜ラーメン博物館に約3ヶ月間の期間限定で出店して行ったコラボ商品や限定商品の販売が好評を博しました。一方、2023年7月の価格改定のほか、2023年10月には看板商品である主要メニューのリニューアルにより商品力の強化を行いつつ、価格改定を実施いたしました。これにより商品価値を損なうことなく原材料高騰や人件費上昇による原価上昇に見合った価格転嫁を実施でき、2021年3月比で客単価が約15%上昇いたしました。このほか、モバイルオーダーやタブレットオーダーの導入等、DX施策を推進することで原価低減による利益率の改善を継続的に図ってまいりました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は13,982百万円(前期比21.7%増)となりました。セグメント損益は、客単価の上昇や経費見直し等を実施したことで、1,416百万円の利益(前期比127.2%増)となりました。
<海外店舗運営事業>
海外店舗運営事業につきましては、シンガポールに3店舗、フランスに2店舗、台湾に2店舗、中国に3店舗、マレーシアに2店舗、タイに2店舗、ベトナムに1店舗、インドネシアに1店舗、フィリピンに1店舗、香港に1店舗(合計18店舗)出店した一方で、中国で6店舗、香港で3店舗、ベトナムで2店舗、マレーシアで1店舗、台湾で1店舗(合計13店舗)閉店したことから、当連結会計年度末の店舗数は142店舗(前期末比5店舗増)となりました。
各エリア総じて、インフレの影響により原材料価格の高騰や賃金・物流費の上昇等に見舞われる中、価格改定による客単価上昇を図りつつ、経費等の抑制による原価低減を継続的に行うことで利益率改善を図ってまいりました。また、上記の出店や戦略的閉店のほか、期間限定商品の販売やデザートメニューの導入、看板主要メニューの見直し等により顧客のニーズにきめ細かく対応することで集客を増加させるとともに、国内同様にDX施策導入による業務効率の向上による原価低減を図ってまいりました。さらに、為替レートが円安傾向で推移していることも売上の増加につながっております。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は、客単価の上昇や期中を通し想定為替レートより円安にて推移したことにより、14,322百万円(前期比21.9%増)となりました。セグメント損益は1,788百万円の利益(前期比20.0%増)となりました。
<商品販売事業>
商品販売事業につきましては、コンビニエンスストアにおける「冷だしとんこつラーメン」や「極豚骨らぁめん」等の販売や、小売店等における冷凍タイプの「白丸元味」、「赤丸新味」の販売、2022年12月より国際線の機内食に採用されている「一風堂プラントベースラーメン~プラとん(Pla-ton)」好調な販売を継続しております。また、2023年8月に麺の製造工程で発生する端材を利用したクラフトビール「KAEDAMA ALE」の販売を開始いたしました。このように主力の一風堂関連商品のB2B営業を強化し、商品ラインナップの充実及び販売チャネルの拡大を行ってきたことが売上増加につながっております。海外では、利益率が高く、前連結会計年度に好調に推移した「プラントベース白丸・赤丸」乾麺タイプの日本からの輸出が、計画より遅延いたしました。そのため、セグメント全体の利益率低下に影響しました。引き続き、国内外共に一風堂関連商品の販売チャネル拡大を図ってまいります。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は3,471百万円(前期比20.8%増)、セグメント損益は459百万円の利益(前期比14.2%増)となりました。
キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
(キャッシュ・フロー)
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
(資本の財源及び資金の流動性)
当社グループ資金需要は主に出店資金と事業活動に必要な運転資金であります。これらの資金調達は営業活動によるキャッシュ・フローや銀行借入等の方法により行っております。
当連結会計年度においては、金融機関より短期借入金140百万円、長期借入金2,321百万円を調達しております。また、期末日現在の現金及び現金同等物の残高は5,575百万円であり、当座貸越契約の未実行残高は1,010百万円であります。
経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、ラーメンを中心とした日本の食文化を世界に伝えるべく、国内外ともに新規出店を進めており、売上高・営業利益・営業利益率・ROEを経営指標とし、各指標の向上を目指しております。
各指標の進捗状況は下記のとおりであります。
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2022年3月期 |
2023年3月期 |
2024年3月期 |
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売上高 |
19,398百万円 |
26,116百万円 |
31,776百万円 |
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営業利益又は営業損失(△) |
1,050百万円 |
2,281百万円 |
3,296百万円 |
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営業利益率 |
5.4% |
8.7% |
10.4% |
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ROE |
36.2% |
28.5% |
25.9% |
経営者の問題認識と今後の方針について
当社グループは創業の精神である、「食を通して新しい価値を創造し「笑顔」と「ありがとう」とともに世界中に伝えていく。変わらないために変わり続ける。」をグローバルに実現するために、ひとりのお客様に一杯のラーメンを通じて、真心をこめて商品やサービスを提供しております。2024年3月31日現在では日本国内にて145店舗、欧米やアジアを中心に海外14の国と地域で142店舗、合わせて287店舗を展開しております。そのために、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」で記載した課題を克服し、今後もラーメンとともに「笑顔とありがとう」を伝え、顧客満足度向上への取り組みに注力してまいります。加えて、出店数を増加させることで事業を拡大させ、顧客価値向上とともに企業価値を高め、ステークホルダーの利益最大化の実現にも努めてまいります。
(1)店舗運営に関する契約(国内)
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相手先 |
株式会社STAY DREAM 他9社 |
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契約内容 |
当社が所有するノウハウ、システム、商標等を用いて「一風堂」を設置、運営する権利を許諾。 |
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ロイヤリティ |
加盟金ならびに売上高に一定の料率を乗じた額 |
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契約期間 |
5年間(自動更新) |
(2)店舗運営に関する契約(海外)
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相手先 |
RAMEN CONCEPTS LIMITED |
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契約内容 |
当社が所有するノウハウ、商標等を用いて「一風堂、IPPUDO EXPRESS等のラーメン・レストラン」を設置、運営する権利を許諾。なお、当該権利の再許諾が可能。 |
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テリトリー |
中国・香港・マカオ |
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ロイヤリティ |
売上高に一定の料率を乗じた額 |
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契約期間 |
10年間(自動更新) |
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相手先 |
IRR SDN.BHD. |
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契約内容 |
当社が所有するノウハウ、商標等を用いて「一風堂ラーメン・レストラン」を設置、運営する権利を許諾。 |
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テリトリー |
マレーシア |
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ロイヤリティ |
売上高に一定の料率を乗じた額 |
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契約期間 |
7年間(自動更新) |
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相手先 |
IPPUDO PHILIPPINES INC. |
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契約内容 |
当社が所有するノウハウ、商標等を用いて「一風堂ラーメン・レストラン」を設置、運営する権利を許諾。 |
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テリトリー |
フィリピン |
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ロイヤリティ |
売上高に一定の料率を乗じた額 |
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契約期間 |
6年間(自動更新) |
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相手先 |
FOODXCITE COMPANY LIMITED |
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契約内容 |
当社が所有するノウハウ、商標等を用いて「一風堂ラーメン・レストラン」を設置、運営する権利を許諾。 |
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テリトリー |
タイ |
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ロイヤリティ |
売上高に一定の料率を乗じた額 |
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契約期間 |
6年間(自動更新) |
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相手先 |
Singapore Myanmar Investco Ltd. |
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契約内容 |
当社が所有するノウハウ、商標等を用いて「一風堂ラーメン・レストラン」を設置、運営する権利を許諾。 |
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テリトリー |
ミャンマー |
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ロイヤリティ |
売上高に一定の料率を乗じた額 |
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契約期間 |
5年間(自動更新) |
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相手先 |
STG Food Industries 5 Pty Ltd |
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契約内容 |
当社が所有するノウハウ、商標等を用いて「一風堂ラーメン・レストラン」を設置、運営する権利を許諾。なお、当該権利の再許諾が可能。 |
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テリトリー |
ニュージーランド |
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ロイヤリティ |
売上高に一定の料率を乗じた額 |
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契約期間 |
7年間(自動更新) |
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相手先 |
STG Food Industries 5 Pty Ltd |
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契約内容 |
当社が所有するノウハウ、商標等を用いて「一風堂ラーメン・レストラン」を設置、運営する権利を許諾。なお、当該権利の再許諾が可能。 |
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テリトリー |
オーストラリア(クイーンズランド州及び西オーストラリア州) |
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ロイヤリティ |
売上高に一定の料率を乗じた額 |
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契約期間 |
7年間(自動更新) |
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相手先 |
Pizza 4PS Corporation |
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契約内容 |
当社が所有するノウハウ、商標等を用いて「一風堂ラーメン・レストラン」を設置、運営する権利を許諾。 |
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テリトリー |
ベトナム |
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ロイヤリティ |
売上高に一定の料率を乗じた額 |
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契約期間 |
5年間(自動更新) |
(3)技術援助契約
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相手先 |
龍大食品集団有限公司 |
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契約品目 |
中華麺、ラーメン用スープ、チャーシュー、餃子など |
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契約内容 |
日式ラーメン店向けの中華麺、ラーメン用スープ、チャーシュー、餃子などの製造にかかる技術指導、並びに当該技術指導の対象となる商品について「一風堂」その他当社保有の商標を使用する権利を許諾。 |
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テリトリー(製造、発売及び販売を許諾する地域) |
中国(台湾を除く) |
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ロイヤリティ |
売上高に一定の料率を乗じた額 |
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契約期間 |
3年間(自動更新) |
該当事項はありません。