第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針・経営戦略

当社は「ビッグデータ×人工知能で世界を進化させる」という経営理念のもと、インターネット上に氾濫するビッグデータを収集・解析するとともに研究開発を進めることで、新しい価値を創造し世界を進化させるためのサービスの創出に取り組んでおります。

 

(2)経営環境

当社の既存サービスで活用されている「ビッグデータに付加価値を付ける機械学習」や「AI」等の技術は、汎用性が高く、さらなる学習効果によって既存分野や新分野で以下のような活用が期待できるものと考えており、さらなる市場拡大が期待されております。

 

ビッグデータ・AIの活用領域の拡大

既存分野での活用期待

User Insight

・Webサイト訪問者の属性分析をさらに迅速化・高度化することで、訪問者毎にサイト内容が変化するリアルタイムパーソナライゼーション(注1)を実現し、CVR(注2)の向上を図る

Social Insight

・SNS上でのやり取りを自動化し、マーケティングオートメーション(注3)を図る

Support Chatbot

・カスタマーサポート等の問い合わせ業務の自動化(チャットボット(注4))

その他AI技術に期待されている活用方法の一例

・大規模言語モデルを利用した、音声による機器操作

・金融分野での相談の自動化、ポートフォリオ作成支援

・画像解析による状況判断支援システム

・動画・静止画・音声データのローコスト制作

(注1)訪問者の閲覧履歴をもとに、好みの近い消費者が買っている等、その訪問者が購入する可能性が高い商品を即時に推奨するもの。

(注2)Conversion Rateの略であり、Webサイトの訪問者数に対し、そのサイトでの商品購入や会員登録等を行った人数の割合で、Webサイトの投資対効果を計る指標のこと。

(注3)マーケティングの各プロセスにおけるアクションを自動化するための仕組みやプラットフォームのこと。

(注4)Webサイト、メッセージアプリやSNSアプリ等の利用者とコミュニケーションを行うサポート業務支援システムのこと。

 

これらの市場の拡大にともなって、今後さらに高度化とともに多様化する顧客ニーズへの対応力が求められるものと認識しております。当社は、これまで培ってきた知見や実績に基づく技術開発力を生かすことで競争優位性を保ち、多様化する顧客ニーズに対応したサービスの開発を進めてまいります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① 優秀な人材の確保と育成

当社は、事業の安定的・継続的成長のためには、当社の企業文化及び企業理念に合致した志向性を持ち、当社事業を今まで以上に拡充できる高い専門性を有する優秀な人材の確保が不可欠であると認識しております。特に、AIエンジニア、データサイエンティストの採用・育成は重要な課題であると認識しております。あわせて、既存人材の能力及び技術の向上も重要な課題と考えております。優秀な人材の確保と能力の底上げのため、今後も長期的なキャリアパスを見据えた研修制度の充実、教育体制の整備を進めていく方針であります。

 

② 内部管理体制の強化

当社が今後さらなる業容を拡大するためには、業務運営の効率化やリスク管理のための内部管理体制の強化が重要な課題であると認識しております。このため、今後も業務運営上のリスクを把握してリスク管理を適切に行える体制整備に努め、財務報告に係る内部統制システムの整備をはじめとして、定期的な内部監査の実施によりコンプライアンス体制を強化するとともに、監査役監査の実施によるコーポレート・ガバナンス機能の充実等を図っていく方針であります。

 

③ システムの強化

当社の展開する事業は、膨大なデータを高速に処理する必要があるため、解析ツールの運用に関わるシステムの安定稼働及びセキュリティ管理体制の構築が重要であると認識しております。当社事業の成長スピードや市場環境の変化に対応し安定した事業運営を行うためには、サーバー設備の強化、並列処理システムの導入等による負荷分散が必要となります。今後も、中長期的視野に立った設備投資を行い、システムの安定稼働及びセキュリティ管理体制の維持構築に取り組んでいく方針であります。

 

④ セキュリティの継続的な向上

当社システムの安定稼働及び継続利用のためには、セキュリティ管理体制の構築、維持が重要であると認識しております。当社は、ISO/IEC 27001(ISMS認証)、ISO/IEC 27017(ISMS認証)を取得し、全社員に情報管理に関する研修を実施しております。今後も継続してセキュリティ管理体制の強化に取り組んでいく方針であります。

 

⑤ 認知度及びブランド力の向上

当社はこれまで、提供サービスの機能優位性に拠る形での営業活動に専念してまいりました。その結果として、現在、幅広い業種、企業に当社製品を導入いただき、継続的な取引による確固たる顧客基盤の構築を実現することができていると考えております。一方で、さらなる成長を続けていく上では、当社及び当社サービスの認知度やブランド力を向上させ、新規案件を獲得していくことが重要であると考えております。今後は広告宣伝活動による積極的な販売促進活動に取り組み、認知度及びブランド力のさらなる向上に努める方針であります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(サステナビリティ方針)

株式会社ユーザーローカルは、コンプライアンスや事業を通じた社会課題解決に積極的に取り組み、サステナブルな経営を推進してまいります。

私たちは、「ビッグデータ×人工知能で世界を進化させる」という理念を掲げ、AIをより身近で誰もが使えるものにすること、デジタル化の恩恵を誰もが受けることのできる社会にしていくことを目指しています。そのためには、いつもユーザーの視点に立って考え、技術者だけでなく誰もが使いやすく汎用性が高い、データをリアルタイムに活用できるサービスを提供することが大切だと考えます。私たちの企業活動により、皆さまがデータとAI技術を活用し、新しい価値を創造していけるよう貢献していきます。

また、ステークホルダーの皆さま(お客様、株主の皆さま、社員、取引先等)をはじめ、社会の皆さまから信頼される企業であり続けるために、未上場時からガバナンスの強化と充実に取り組んでいます。昨今の地球環境問題、社会的課題に対しても積極的に向き合い、持続可能な社会を皆さまと共に実現して行きたいと考えます。

 

当社が持続的に取り組むべき重点課題の具体的な取り組みとして、「格差の解消」「人材の育成」「テクノロジーによる社会課題の解決」「情報管理の安全性・信頼性」の4つのマテリアリティを設定しています。これらの継続的な取り組みを通じて持続可能な社会に貢献していきます。

 

a.格差の解消

誰もがデータを活用し、AIにより仕事や生活により良い影響を受けることができ、すべての人が等しくAI技術の恩恵を享受できる将来を目指していきます。

 

b.人材の育成

高度なAI人材を発掘・育成するための社内外の取り組みにより、テクノロジーの普及・進展やビッグデータを活用したAI分析の領域の発展に貢献していきます。

 

c.テクノロジーによる社会課題の解決

企業をはじめ、政府、教育機関等のあらゆる領域で活用できる汎用性の高いサービスを継続的に提供していくことにより、人々のより便利で豊かな生活に貢献していきます。

 

d.情報管理の安全性・信頼性

当社では、安心で安全なサービスを提供できるようにデータの管理や、情報セキュリティを徹底しています。また、情報管理をサポートするための汎用性の高いサービスを提供することにより、安全で便利な情報技術社会の確立に貢献していきます。

 

(1)ガバナンス

当社は、サステナビリティの実現に向けた方針や重要事項について、取締役会で審議し、決定しています。

 

(2)リスク管理

当社は、代表取締役をはじめ各部より代表が参加するリスク管理委員会において、会社を取り巻くリスクの特定・分析・評価をするとともに、発生可能性や影響度の大きさに応じた適切なリスク対応を進め、その内容について取締役会に報告する体制を整えております。また、全社員に向け、必要な指示、啓発、教育活動などを推進し、リスク管理の強化やリスクの逓減を図っております。

 

(3)戦略

〈人的資本に関する戦略〉

当社は、人材が当社の企業価値向上の源泉であると認識しており、「ビッグデータ×人工知能で世界を進化させる」という経営理念に基づく持続的な企業経営の実現に向け、継続的に人的資本への投資を行っております。多様な価値観や専門性を持った社員それぞれが最大限に能力を発揮するため、社員教育や能力開発に注力するとともに、働きやすい環境を整備することが持続的な成長における重要テーマであると考えております。

当社における人材育成に関する方針及び社内整備に関する方針は、次のとおりであります。

 

■教育方針

当社は、「ビッグデータ×人工知能で世界を進化させる」という経営理念の実現に向け、社員の能力開発が経営における重要テーマと考えております。当社のビジョンである経営理念や、行動規範である5つのバリューに基づいて事業を牽引する次世代リーダーを育成していくため、従業員一人ひとりが自身の自己成長意欲を高め、自己研鑽に努めていきます。全社研修、各部毎の育成プログラム、マネジメント育成プログラムといった各研修を実施しています。

また、高齢化社会等による社会構造の変化、AIやロボット導入により人に求められる能力が変化している中、社会ニーズにあわせた従業員のアンラーニング、リスキリングを目指します。

 

■社内環境整備方針

当社の人権方針、経営理念、行動規範である5つのバリューに基づき、従業員が高いパフォーマンスを長期的に発揮できるよう、労働安全衛生関連法令、社内の労働安全衛生規程等を遵守し、健康で安全に働ける快適な環境づくりに取り組んでまいります。

 

健康管理の基本方針

・従業員は、自身の健康を最優先し、心身の健康保持増進に努める。

・会社は、従業員一人ひとりの能力を十分に発揮できるよう、快適な職場環境を整える。

・健診結果やストレスチェック等の個人情報の適正利用と管理徹底を図り、産業医と連携し従業員の健康管理を推進する。

 

■従業員エンゲージメント向上施策

当社では従業員の資産形成を支援するとともに、会社に対する帰属意識の醸成、各従業員の業績貢献による中長期的な企業価値向上を目的とし、以下の制度を導入しております。

 

・譲渡制限付株式付与制度

当社の従業員に対して、当社企業価値の持続的な向上を図るインセンティブを与えること等を目的とし、譲渡制限付株式を付与することにより、長期の業績に対する貢献意欲を高めております。

 

・働きやすい環境の整備とストレスチェック

年に一度、全社員を対象として実施しているストレスチェックの結果について、健康リスクは全国平均と比較して、低い状態となっております。これらは仕事量の負担が適正であること、従業員が業務をコントロールできる環境であることや社内における双方の支援が高いことによるものです。今後も、エンゲージメントを高めるため、働きやすい環境の維持・向上を目指します。

 

・多様な研修の実施

当社では、教育方針に基づく人材育成のための施策として、以下に記載する各種研修制度を実施しています。また、その他の勉強会支援や書籍購入費負担等の制度も導入しています。

 

・新入社員研修

・セキュリティ研修

・コンプライアンス研修

・ソーシャルメディア研修

・プログラミング研修

・インサイダー研修

・マネージャー育成研修

・マーケティング研修

・その他IT研修

 

(4)指標及び目標

当社は、若手職員や女性社員の管理職としての活躍を推進するなど、年齢や性別にかかわらず活躍できる職場作りに取り組んでおります。管理職における女性比率は25%となっており、今後も当比率を維持・向上させていくことを目標とします。

また、その他サステナビリティに関する取り組みや実績につきましては、当社ウェブサイト(https://esg.userlocal.jp/)上で公開しております。

3【事業等のリスク】

当社の事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、下記のとおりであります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上重要であると考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下のとおり記載しております。

当社はこれらのリスクの発生可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針であります。なお、当社は適切なリスク管理を実施することで、以下のリスクの発生可能性を一定程度の低水準まで抑制できると考えており、これらのリスクが顕在化する可能性や時期、顕在化した場合に当社の経営成績等に与える定量的な影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため具体的には記載しておりません。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性のあるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

(1)経済動向について

当社の提供するサービスは、顧客のマーケティング分析ツールや、業務支援ツールとして活用されております。このため景気低迷期においては、顧客業績の悪化に伴う費用削減の結果、利用者数が減少する可能性があります。このような状況においては、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

当社では、当社を取り巻く事業環境等の動向に注視し、景気低迷期における財政状態及び経営成績に与える影響の抑制に努めております。

 

(2)機密情報の管理体制について

ビッグデータの解析にあたり収集される情報の中には、個人情報が含まれるケースがあるものと認識しております。また当社の提供する解析結果については、顧客の経営戦略上極めて機密性の高い情報が含まれているものと認識しております。万が一これらの機密情報の漏洩が生じた場合には、当社ビジネスの根幹への信頼性が揺らぐため、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

当社では、収集したデータの社内での機密性確保並びに漏洩防止について、必要な暗号化やアクセス制限等を行うことにより情報漏洩のリスクの回避に努めております。

 

(3)システムトラブルの発生リスク

当社の事業は、提供サービスの基盤をインターネット通信網に依存しております。何らかの障害により大規模なシステムトラブルが顕在化し、復旧遅延が生じた場合は、当社の財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

当社では、コンピュータウィルスへの感染、ネットワークへの不正侵入、サイバー攻撃等の妨害行為によるシステムダウン、大地震や火災等の自然災害発生によるシステム障害等、顧客へのサービス提供が妨げられるようなシステムトラブルを回避すべく、外部業者によるシステムサーバーの管理・監視体制の構築や、バックアップ、システムの二重化等により未然防止策を実施しております。

 

(4)情報取得への制限リスク

当社は、SNS等により日々大量に生成されるインターネット上のビッグデータを、当社が顧客に提供するソフトウエアを通じて自動的に収集しております。

しかしながら、SNS等の運営者側の方針転換や、法的規制の強化により、情報の自動収集に制限が加わったり、禁止されたりする可能性があります。現在入手できているデータを取得できなくなることでサービスの品質が低下したり、情報の収集に対して追加コストが発生したりする場合等には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

このような事象が生じた場合には、当社は独自の方法により同様のデータの入手に努めてまいります。

 

(5)知的財産権管理について

当社はこれまで、著作権を含めた知的財産権に関しては、他社の知的財産権を侵害したとして損害賠償や使用差止めの請求を受けたことはなく、知的財産権の侵害を行っていないものと認識しております。

しかしながら、当社の事業領域において第三者が保有する知的財産権を完全に把握することは困難であり、当社が認識せずに他社の特許を侵害してしまう可能性は否定できません。この場合には当社に対する損害賠償や使用差止め等が行われることにより、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

加えて、当社で提供するサービス基礎技術については、機密性を確保するために特段特許等の申請は行わない方針としております。そのため、人員の引き抜き等により当社の技術が他社に流出し、同様のサービス展開が行われる可能性があり、また当該漏洩が生じていたとしても当社では認識できない可能性があります。当該基礎技術の漏洩が生じた場合は、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社では、全役職員に対して機密保持に係る覚書を締結するとともに、競合他社のサービス内容についても定期的に確認することで、未然防止並びに事実把握に努めております。

 

(6)当社ビジネスモデルについて

当社は顧客にとっての使いやすさを追求した、ビッグデータを処理し、活用するためのプラットフォームの提供を行っております。このため当該ツールは、顧客業種に依存しない汎用性の高いサービスとなっていることに加え、SaaS形態での提供となっていることから顧客側において大規模なシステム環境を構築する必要もなく、容易に導入できる仕組みとなっております。本書提出日現在では、こうした使いやすさが評価され、化学・化粧品、自動車・電気、新聞・メディア、小売、情報・通信、金融、サービス、食料品といった幅広い業種・企業等との取引実績を有しております。

本提供マーケティング分析ツールは、継続して活用することでマーケティング改善の効果確認ができ、働き方改革を推進する業務支援ツールは、多くの顧客が継続的な取引先となっているものと認識しておりますが、SaaSによる提供となっていることから、解約自体は容易に可能であります。

したがって、①当社の提供するサービスが継続的に顧客ニーズに応えられない場合や、②技術革新により競合他社がより良いサービス提供を行う場合等においては、顧客離れが生じ当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

なお、こうしたリスクの具体的な内容は以下のとおりと認識しております。

① 顧客需要の変化について

当社の提供サービスは、顧客に関わるビッグデータを解析しその結果をレポートとして提供することで、顧客の意思決定をサポートしております。当該解析結果については、顧客の使いやすさを重視し直感的に理解しやすい形で提供しております。

しかしながら、これらの解析結果が顧客の期待する水準に届かなかった場合は、提供サービスひいては当社に対する信用が揺らぐことにより顧客が減少し、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

なお、当社の属するビッグデータ解析に係るビジネス領域は、比較的新しい分野であると認識しております。そのため、今後当社及び競合他社の提供する解析サービスの活用が一般化されるにつれて、顧客にとってより付加価値の高いサービス提供が求められるようになるものと認識しております。こうしたニーズへの十分な対応ができない場合や、競合他社が先んじて顧客ニーズをつかむ場合等には、当社顧客が減少することにより、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。当社では、日々顧客にとってのユーザビリティを追求することで、この需要の変化に迅速に対応してまいります。

 

② 技術革新について

当社はビッグデータ解析関連技術に基づいて事業を展開しており、大量のデータに付加価値を付ける機械学習やAI活用において新たな技術開発に積極的に取り組んでおります。何らかの理由により新たな技術やサービスへの対応が遅れた場合は、競合他社に対する競争力が結果として低下する恐れがあり、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当社では、今後も本業界の先駆者となるべく新技術の検討・開発に努めてまいります。

 

(7)当社事業成長の前提

当社事業は、ビッグデータの蓄積と当該データをもとにしたAIによる継続学習が前提となります。そのため、顧客企業の拡大によってより多くのデータ解析を行うことが、付加価値の創出や新サービスの開発といった当社事業成長の源泉において非常に重要な位置を占めております。足許の状況といたしましては、上述の(6)に示したように幅広い業種・企業等から継続的にデータを取得しているため特段問題は生じておりませんが、今後何らかの理由により顧客離れが生じた場合、十分かつ最新のデータ蓄積が行われなくなることによって当社サービスの付加価値が低下し、結果的に当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当社では、より付加価値の高いサービスを提供できるよう、今後も機械学習やAI等の技術開発に積極的に取り組んでまいります。

 

(8)事業規模の拡大に伴うリスク

当社の人員は102名(2024年6月末現在)に留まっており、小規模会社であると認識しております。現状は本規模に合わせた社内管理体制を敷いておりますが、今後の成長に伴う事業規模の拡大によっては、以下のようなリスクがあるものと認識しております。

① 人材確保・維持について

当社事業の拡大に伴い、技術者の追加採用、サービスの販売を行う営業員の増強、管理部機能強化のための経営管理に特化した人材採用等が必要となる可能性があります。一方で、インターネット関連ビジネスにおいては人材の流動性が高いため、このような人材が機動的に確保できない場合や既存人員が退職してしまう可能性があると認識しております。計画どおりの人員が育成・確保できない場合は当社事業拡大の制約要件となり、当社の成長戦略ひいては財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当社では、人材育成プログラムの確立や、十分なインセンティブプランの設定等により、人材の育成・確保に努めてまいります。

 

② 内部管理体制の充実について

当社は、当社の企業価値を最大化するためには、コーポレート・ガバナンスの充実を経営上の重要課題の一つであると位置づけております。今後、事業の急速な拡大等により、十分な内部管理体制の構築が追いつかない状況が生じた場合には、適切な業務運営が困難となり当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当社では、業務の適正性及び財務報告の信頼性を確保するため、これらに係る内部統制が有効に機能する体制を構築、整備、運用しております。

 

③ 情報システムの拡充について

今後顧客の増加や提供サービスの拡充に伴って、サーバーへの追加投資等により当社のシステムインフラを増強する可能性があります。一般的に追加システム投資を行う場合や、新たなシステムへの切り替えを行う場合、バグや不具合の発生等により一時的に十分なサービス提供ができなくなることがあります。万が一当該システム拡充に際して提供サービスに不具合が生じた場合は、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社では、十分な要件設計やテストの実施並びに必要に応じた並行稼働による対応等によって、そのような事象が生じないよう努めてまいります。

 

(9)新規事業推進に係るリスク

当社では今後、当社提供サービスの基礎であるビッグデータの解析・可視化技術(ペルソナの創出技術並びにヒートマップによるアクセス解析技術等)を活用して、既存分野並びに新規分野における新サービス開発を継続的に展開していく方針です。(なお、現状期待している新サービス分野については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)経営環境」をご参照ください。)

しかしながら、各新規事業は現状構想段階であり、結果的に実現しない又は実現したとしても十分な収益が獲得できず撤退する可能性があります。当社といたしましては事前に十分な検証を行った上で開発等を開始する方針ではありますが、結果的に新規事業に失敗した場合、コストのみが計上されることから当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)気候変動について

気候変動の問題は国内外に大きな影響を及ぼしております。当社においても、気候変動に伴う電力のコスト増などにより、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社では、社会の一員として持続可能な社会の実現に向けた責任を果たすため、環境方針を定め、グリーンエネルギー100%のデータセンターの利用や、社内の省エネルギー化に取り組んでおります。今後とも気候変動リスクへの対応を進めてまいります。

 

(11)不測の事態の発生によるリスク

地震、台風、洪水、津波等の自然災害、感染症の世界的流行、停電・電力不足、金融、資本市場等の混乱による経済危機、暴動、テロ等による政治の混迷など、国内外において不測の事態が発生した場合は、当社の財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当社の経営業績等の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当事業年度におけるわが国経済は、緊迫する中東及びウクライナ情勢や、物価の高騰の影響を受け、国内外において依然として先行きは不透明な状況にあります。その一方で、AIが社会に与える影響への関心の世界的な高まりや、業務効率化等のための「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の推進が引き続き社会的に強く意識されています。これに伴い、当社の提供するビッグデータ・AIを活用したクラウドサービスへのニーズも高まっているものと認識しております。

このような状況のもと、当社のコアプロダクトであるSaaS形式で提供するマーケティング支援サービス「User Insight」、「Social Insight」、AIを活用した顧客サポート業務の自動化サービス「Support Chatbot」の品質向上及び販売促進に注力してまいりました。

研究開発活動においては、ビッグデータ分析やAIの技術を用いてあらゆる課題を解決するため、主に①自社AIアルゴリズム拡充、②既存サービスへのAIアルゴリズム実装、③AIサービスの新規開発に重点的に取り組んでまいりました。特にAIサービスの新規開発では、ChatGPTなど対話型AI・生成AIとのサービス連携や、新型コロナウイルスの感染拡大により顕在化した課題の解決に向けた商品開発を積極的に進めてまいりました。安定的な基幹システムの構築やAIエンジニア、データサイエンティストの育成にも引き続き注力し、サービス品質のさらなる向上を図っております。

また、営業活動においては、サービスの販売を行う人員を増員するとともに、営業管理体制やカスタマーサクセス体制の強化を行うことにより、事業拡大に向けた新規取引先の開拓等の販売促進活動に努めてまいりました。

以上の取り組みの結果、当事業年度の実績は、売上高3,907,679千円(前期比18.8%増)、営業利益1,728,000千円(前期比25.9%増)、経常利益1,720,151千円(前期比26.7%増)、当期純利益1,185,536千円(前期比24.2%増)となりました。

なお、当社はデータクラウド事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

② キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、前事業年度末と比較し1,309,724千円増加し、7,676,580千円となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、1,545,204千円の収入(前年同期は1,313,447千円の収入)となりました。これは主に、税引前当期純利益1,720,151千円の計上、株式報酬費用152,266千円の計上、法人税等の支払いによる支出382,470千円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、198,800千円の支出(前年同期は28,034千円の支出)となりました。これは主に、差入保証金の差入による支出177,312千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、36,679千円の支出(前年同期は238,220千円の支出)となりました。これは主に、新株予約権の行使による株式の発行による収入27,076千円、配当金の支払63,755千円によるものであります。

 

(2)生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

② 受注実績

当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

③ 販売実績

当事業年度の販売実績は、次のとおりであります。なお、当社はデータクラウド事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2023年7月1日

至 2024年6月30日)

前期比(%)

データクラウド事業(千円)

3,907,679

18.8

合計(千円)

3,907,679

18.8

(注)主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

販売実績の総販売実績に対する割合が10%を上回る相手先がないため、記載を省略しております。

 

(3)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する分析・検討内容は、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

① 重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りに関しては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる可能性があります。

当社の財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。

 

② 財政状態の分析

(資産)

当事業年度末の資産合計は、前事業年度末に比べて1,623,447千円増加し、8,835,192千円(前事業年度末は7,211,745千円)となりました。

流動資産は、前事業年度末に比べ1,399,875千円増加して、8,210,117千円(同6,810,242千円)となりました。これは主に、現金及び預金の増加1,309,724千円によるものであります。

固定資産は、前事業年度末に比べ223,572千円増加して、625,075千円(同401,502千円)となりました。これは主に、差入保証金の増加166,950千円によるものであります。

 

(負債)

当事業年度末の負債合計は、前事業年度末に比べて238,830千円増加し、1,110,342千円(同871,512千円)となりました。これは主に、前受金の増加53,865千円、未払法人税等の増加184,054千円によるものであります。

 

(純資産)

当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末に比べて1,384,617千円増加し、7,724,850千円(同6,340,233千円)となりました。これは主に、利益剰余金の増加1,121,650千円、自己株式の減少141,861千円によるものです。

 

③ 経営成績の分析

(売上高)

当事業年度における売上高は、前年同期比18.8%増の3,907,679千円(前年同期は3,288,826千円)となりました。これは主に、当社サービスに関する認知度の向上、基幹システム拡張・強化によるパフォーマンスの向上及び営業活動の成果によるものであります。

 

(販売費及び一般管理費・営業利益)

当事業年度における販売費及び一般管理費は、前年同期比9.6%増の1,840,614千円(同1,679,791千円)となりました。これは主に、さらなる収益獲得を目的とした広告宣伝費及び研究開発費が増加したことによるものであります。これにより、当事業年度における営業利益は、前年同期比25.9%増の1,728,000千円(同1,372,366千円)となりました。

 

(営業外損益・経常利益)

当事業年度における営業外損益は、営業外収益は216千円(同102千円)、営業外費用は8,065千円(同14,884千円)となりました。その結果、当事業年度における経常利益は、前年同期比26.7%増の1,720,151千円(同1,357,584千円)となりました。

 

(特別損益・税引前当期純利益・法人税等・当期純利益)

当事業年度における特別損益は、特別損失が0千円(同100,450千円)となりました。その結果、当事業年度における税引前当期純利益は、前年同期比36.8%増の1,720,151千円(同1,257,133千円)となりました。

当事業年度における法人税等(法人税等調整額を含む)の合計は534,614千円(同302,781千円)となりました。その結果、当事業年度における当期純利益は、前年同期比24.2%増の1,185,536千円(同954,352千円)となりました。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社は、事業運営上必要な資金を確保するとともに、経済環境の急激な変化に耐えうる流動性を維持する事を基本方針としております。

運転資金、サーバー等の設備投資資金については、営業キャッシュ・フローで獲得した自己資金で賄うことを基本とし、必要に応じて資金調達を実施いたします。

なお、当事業年度末において借入金の残高はなく、現金及び預金の残高は7,676,580千円となり、事業運営上必要な資金及び資金の流動性は確保されていると認識しております。

 

⑤ キャッシュ・フローの分析

各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

⑥ 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社は「第2 事業の状況 3事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境、事業内容、法的規制等、様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。

そのため、当社は常に業界動向に留意しつつ、優秀な人材を確保し市場のニーズに合ったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行ってまいります。

 

⑦ 経営戦略の現状と見通し

当社は、「ビッグデータ×人工知能で世界を進化させる」ことを企業理念として掲げ、これまで培ってきたビッグデータ解析の知見と実績をAIと組み合わせることで、幅広い事業を展開しております。

今後の方針としましては、引き続き市場の拡大が見込まれる当該事業領域へ経営資源を投入することで中長期の持続的な成長を目指してまいります。具体的には、付加価値の高いサービス提供や優秀な人材の確保・育成といった当社の強みを生かしつつ、①自社AIアルゴリズム拡充、②既存サービスへのAIアルゴリズム実装、③AIサービスの新規開発の3点に注力し、さらなるサービス品質の向上と安定的な事業運営に努めてまいります。

2025年6月期につきましては、これに加え、当事業年度にリリースしました新製品への積極的投資や、生産性向上等を目的とした本社移転に伴う地代家賃の増加、移転関連費用が発生することを予定しております。今後の課題につきましては、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社は各種データ活用に関する研究開発を進めております。当社の各種データ解析・活用ツール開発業務への貢献を目的とし、新規サービスの開発及びサービスの機能強化に向けて研究開発を行っております。当事業年度の研究開発に要した費用の総額は130,381千円であります。

当社の事業は、データクラウド事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。