第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

 一般的な業務効率化を目的としたシステムは、手軽でリスクが少ない方法として汎用パッケージシステムをクラウド上で利用する形態に進んでいきます。一方、個々の企業における「競争力の源泉の一つ」である独自の経営ノウハウ、独自の技術、独自の文化(生産方法や営業手法、経営管理方法、顧客サービス手法等)をシステムとして組上げ、最新技術を咀嚼しながらシステムを構築し運用していくことは簡単ではありません。当社は、顧客企業の「競争力の源泉の一つ」となる顧客独自の情報システム構築を実現すること、そして、その道がたとえ困難であっても一歩踏み出す勇気を持つこと、をポリシーとし、以下の経営理念として定めております。

 

「勇者たらんと。」 小さな僕等が持ち得るものは、一人一人の知恵と勇気と諦めない強い心だけだ。

          どんな時でも、「その一歩」が踏み出せるように。

          勇者たらんと。

 

(2)目標とする経営指標

当社は主力事業であるセキュアクラウドシステム事業を継続的に成長させ、エモーショナルシステム事業の収益力を確立することにより、持続的な企業価値の向上を目指しております。

2022年10月6日の東証グロース市場への上場を機に「営業利益率」を重要な経営指標に加え、「売上高」「営業利益」「営業利益率」を重要な経営指標に位置づけております。下記「(4) 経営環境及び優先的に対処すべき課題」を解決することにより、これらの経営指標の向上を図ってまいります。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

当社は、事業のコアである仮想化技術をベースとしつつ、顧客企業に差し迫っているリアルなニーズ(障害からの回復性、強靭性の確保:必須のレジリエンス、2025年の崖対策、DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応等)に対応した高品質な技術サービスを提供するとともに、技術サービスに付随する高付加価値な製品・商品を顧客へ販売することで、主力事業であるセキュアクラウドシステム事業の継続的な成長を目指しております。

また、エモーショナルシステム事業においては、「体験共有型VRシアター」である4DOHを市場に広めるため、販売パートナーの確保及び育成を進めておりますが、営業損益において赤字を解消できなかったことを踏まえ、2022年9月期より、固定費を抑制して全社収益に与える影響を好転させ、事業セグメントを継続しております。

 

(4)経営環境及び優先的に対処すべき課題

わが国経済全般の見通しは、2022年10月25日付内閣府月例経済報告において「先行きについては、ウィズコロナの新たな段階への移行が進められる中、各種政策の効果もあって、景気が持ち直していくことが期待される。ただし、世界的な金融引締め等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、供給面での制約、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある。」という先行き予想が出されています。

当社の属する情報通信業界は、企業のデジタルトランスフォーメーションに向けた戦略的IT投資や、経済産業省が「2025年の崖」と表現して警告してきた古い情報システムの刷新需要の高まり、働き方の変化を踏まえたセキュリティ対策の見直しの動きや、企業の人材不足による一層の業務効率化需要などにより企業経営者のIT投資に向けた意識が高まっています。2022年9月の日銀短観によるとソフトウエア投資額の計画値が全産業平均で前年度比17.8%増と、企業のIT投資意欲は高い水準で推移しています。

ランサムウェアや不正アクセスなどのサイバー攻撃の脅威の高まりから、製造業を中心に、サプライチェーン全体でのセキュリティ対策の必要性が顕在化しており、サイバー攻撃を防御する仕組みや、サイバー攻撃のダメージからシステムとデータを回復するレジリエンスを備えたクラウド基盤の重要性が高まっています。このような変化を踏まえ、当社のセキュアクラウドシステム事業は「必須のレジリエンス」という事業コンセプトのもと、回復力と強靭化を意味する「レジリエンス」を、「基幹システムのクラウド化」と並ぶセキュアクラウドシステム事業のもうひとつの柱として、引き続き発展させて参ります。

エモーショナルシステム事業は、営業損益において赤字を解消できなかったことを踏まえ、固定費を抑制して事業セグメントを継続しており、メタバース分野への応用を前提とした4DOHの技術開発及び製造販売と、4DOHを活用したイベント運営サービスの事業の推進により、黒字転換を図って参ります。

当社の対処すべき課題として以下の施策に取り組んでまいります。

 

 ①セキュアクラウドシステム事業の営業利益率の向上

 当社は2022年10月6日の東証グロース市場への上場を機に、「強い会社」を目指すため、主力事業であるセキュアクラウドシステム事業の営業利益率16%(※1)を2027年9月期までに達成するというKGI(経営目標達成指標)と、2つのKPI(重要業績評価指標)を設定しました。国内のシステムインテグレーター企業131社における営業利益率の平均値は7.3%(※2)であり、当社がKGIに設定した16%は、その上位5位に入る優良な利益水準です。

 KGIを達成するためには、ハードウエアやソフトウエア、クラウドサービスや当社の自社製品などのうち、付加価値の高いカテゴリの販売を増やしていくことが重要となります。そのため、当社は第一のKPI(重要業績評価指標)を「売上総利益率が25%以上の高付加価値製商品の売上高」と設定しました。製商品販売の高付加価化を図る戦略として、レジリエンスソリューションの自治体のシステム強靭化や関東圏中堅企業の事業継続(BCP)災害復旧(DR)需要に対して、Dell Technologies社製のバックアップ統合製品であるDP4400を中心とした高付加価値なレジリエンスソリューションの販売を推進するとともに、企業のDXとデータ活用の需要に対してシトリックス製品を核とした基幹システムのクラウド化ソリューションの販売拡大と、ETL製品(データの抽出、変換、格納)によるデータ利活用への対応強化に努めていきます。

 次いで、提案営業や受注後の構築に技術力が必要な高付加価値分野の商品の受注力、構築力を高めることが重要であるために、第二のKPIとして「セキュアクラウドシステム事業のエンジニア・セールスエンジニア数」を設定しました。このKPIを実現するための人材採用・育成戦略として、専任の人事担当を採用し、中途採用・新卒採用の推進と人材採用チャネルの拡大を図るとともに、システム構築を担当するエンジニアと顧客提案を担当するセールスエンジニアを社内育成する中長期的な人事・教育制度の整備に努めていきます。

 

(※1)営業利益率は事業計画に基づき、全社費用配賦後の営業利益率を算定・記載しています。

(※2)売上高10億円以上のシステムインテグレーター131社の2019年8月以降の最新期決算

(変則決算を除く)の営業利益率。2022年9月上旬時点の民間調査会社による当社調べ。

 

 ②「必須のレジリエンス」 事業コンセプトの推進

 DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展や、コロナ禍を契機としたテレワークの普及により、社会のデジタル依存度が急速に高まっています。情報システムを構成するネットワークやデータベースサーバー類の障害等により、一部でもシステムが停止した場合には、想像以上に甚大な影響を生じ、ひいては社会問題にまで発展しかねません。ランサムウェアなどのサイバー攻撃により復旧困難な障害に陥ることも、近年多発しています。サイバー攻撃や人為的ミスなどによるデータの棄損や改竄に対して、100%防御することは不可能であり、インシデントの発生都度、多くの労力を使い緊急対処せざるを得ない現実があります。こうした中、今、企業経営者に求められていることは、前向きなデジタル化の推進と同時に、障害発生時に極力短時間でシステムを回復する「レジリエンス」の重要性を意識したシステムを構築することです。単に止まらない前提のシステムではなく、万が一止まっても速やかに回復できるシステム、つまり、回復のための選択肢を準備しておくことが必須です。これこそ事業の強靭化であり、その実現には、システム設計の熟慮とともに人的な運用体制まで含めた、高度なノウハウが必要となります。

 当社は独立系システム構築会社として様々なシステム障害対応の経験を有しており、それらのノウハウの蓄積と、メーカーを問わず優れた製品やサービスをいち早く検証し、組み合わせることで「レジリエンス」を更に発展させるよう活動しています。

 回復力と強靭化を意味する「レジリエンス」の重要性をすべての企業、自治体に向けて発信し、従来からの「基幹システムのクラウド化」と新しい「必須のレジリエンス」というコンセプトを二本柱として関連するサービスを拡張させることにより、セキュアクラウドシステム事業を発展させていくことは当社の重要課題です。

 「レジリエンス」は、2025年の崖を乗り越え、様々なDXを外連味なく実行可能にし、持続可能な企業成長を促すことになり、SDGsに対しても必須のキーワードとなります。

 

 ③優良顧客の獲得のための営業力の強化

 顧客のビジネス進展に応じて、システムに関する様々なご相談を当社に継続して行っていただけるロイヤルカスタマーの数を増加させることが、当社の安定的成長に欠かせない経営課題です。そのために、九州地場優良企業の開拓だけでなく、国内でも経済規模の大きい関東圏のロイヤルカスタマーの増加に対する営業力の強化に努めていきます。

 

 ④ストック型売上の拡大

 当社は、クラウド基盤構築の受託業務を主体とする会社であり、それらはフロー型の売上となりますが、保守などのストック型売上についても拡大を図っていきます。当社が構築したシステムの保守だけでなく、他社が構築したシステムについても当社が保守サービスを提供できるよう、他社構築システムのアセスメントと保守提供の体制を整備していきます。また、サブスクリプション型(月額料徴収型)のソフトウエア、クラウドサービスを組み合わせたハイブリッドクラウドシステムの構築・販売を推進することで、ストック売上高の拡大に努めていきます。

 

 ⑤エモーショナルシステム事業の黒字化

 エモーショナルシステム事業は、営業損益において赤字が継続している状態であることから、黒字化を当社の喫緊の重要課題としています。そのために2023年9月期は固定費の低減を継続しつつも4DOHを活用したイベント運営サービスの展開を推進し、早期の事業成長のためメタバースやシニア市場などの新たな需要に向けた研究開発と市場開拓に努めていきます。

 

2【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、当社の事業又は本株式への投資に関するリスクをすべて網羅するものではありません。

 

 (1)セキュアクラウドシステム事業遂行上のリスク

①半導体供給不足について

 新型コロナウイルス感染症の拡大により、データセンターやテレワーク需要による事業者向けコンピュータ機器の販売拡大、巣ごもり需要によるゲーム機等家庭用電子機器の販売拡大、車載システムの需要回復等を背景に、半導体の需要が増加しております。そのため半導体の供給不足が生じており、サーバーやネットワーク機器などハードウエア製品の不足が生じております。当社ではセキュアクラウドシステム事業にて取り扱うハードウエア製品に関して、半導体不足の影響による納期長期化を考慮し、顧客への発注時期早期化の働きかけや、当社から仕入先への先行発注を行うことにより、納期短縮に努めております。しかしながら、半導体不足が長期化することにより、納期遅延や調達価格の高騰となった場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

②シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社とのパートナー契約について

 シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社(本社:東京都千代田区霞が関三丁目2番1号 霞が関コモンゲート西館 23F)は米国Citrix Systems,Inc.社の連結決算対象法人です。

 Citrix Systems,Inc.社は、クライアント仮想化技術によって、アプリケーションとデスクトップをオンデマンドサービスとしてセキュアに提供するためのソフトウエアやネットワーク機器の開発、販売などを手掛けるアメリカの大手IT企業であります。同社は全世界で40万社以上のユーザー企業と約1億人のユーザーを有しており、同社が提供するソリューションは2021年度に年間売上高32億1千万ドルに達しております。なお、Citrix Systems,Inc.社は米国NASDAQ市場に上場しておりましたが、TIBCO Software Inc.との合併により、2022年9月30日付で上場廃止となっております。

 当社は、2004年4月にシトリックス・システムズ・ジャパン株式会社とシトリックス・ソリューション・アドバイザー/プラチナ契約(コンサルタント又はリセラーとして、Citrix製品の販売に関する専門知識、サービスの提供、顧客の教育、技術的な実装とサポートを提供するパートナー契約の最上位レベル)を締結して以来、同社のパートナー企業としてCitrix製品を活用したプライベートクラウド構築に注力しております。従って、同社並びに同社製品の市場における訴求力が大きく低下した場合や、同社とのパートナー契約が更新できなかった場合等には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

③業界の動向について

 当社の属する情報通信サービス産業は、ネットワーク化の進む今日の社会においては必要不可欠なものとなっており、近年では、情報漏洩問題対策や個人情報保護法対策としてのセキュリティ強化、モバイル端末やテレワークでの業務システム利用などを目的として、クラウド環境構築技術が活用されています。

 これらの社会情勢を背景に、今後の当業界は更なる発展を遂げると考えておりますが、企業のシステム投資に対する姿勢の変化や、今後当社の予測に反して相応の市場拡大を遂げない場合は、当社の事業運営及び業績に影響を与える可能性があります。

 

④技術革新について

 当社の属する情報通信サービス産業においては、技術革新の進捗が早く、それに応じて業界標準及び利用者ニーズが急速に変化します。当社はかねてより技術革新及び顧客ニーズの変化に対応すべく、積極的に最新の情報収集、技術の蓄積等を行っております。しかしながら、当社の対応力を上回る急激な技術革新が生じた場合、或いは当社が想定していない新技術が普及した場合、当社取扱製品やサービスの陳腐化・競争力の低下を引き起こし、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑤他社ソフトウエアの活用について

 当社のセキュアクラウドシステム事業は、多数のプラットフォーム案件においてCitrix Systems,Inc.社のソフトウエアを活用した事業となっております。これは、日本進出前であった同社のメタフレーム(現VirtualApps)を当社が1998年10月より取り扱ってきた経験及び実績により、同社ソフトウエアを利用した仮想化システム構築のノウハウを当社が積み上げてきた結果であります。現在当社では、顧客ニーズに幅広く対応することを目的として、同社以外の複数社のソフトウエアを取り扱うことで、活用ソフトウエアの多様化を図っており、これらのソフトウエアを利用した仮想化システム構築実績も多数あります。しかしながら、当社が何らかの理由でCitrix Systems,Inc.社のソフトウエアを利用できなくなった場合には、当社がこれまで培ってきたノウハウを活用できなくなることに伴う競争力の低下により、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑥競合の状況について

 当社の属する情報通信サービス産業においては、技術革新とともに既存技術の陳腐化が早いため、他社との差別化を図るためには高い付加価値をもった製品・サービスが求められます。

 競合先が多数存在する中、プライベートクラウド構築技術・セキュリティネットワーク構築技術においては、長年クラウド構築に特化した事業を行ってきた当社ならではの、独自に蓄積した実装・コンサルティング能力、ノウハウや実績において他社に対し優位性を有していると考えておりますが、競合先の技術力等の向上により当社の競争力が大きく低下した場合は、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑦プロジェクトの売上計上時期の変動あるいは収支の悪化について

 当社では、2022年9月期より、一定の要件を満たすプロジェクトにおいて一定の期間にわたり収益を認識しており、見積原価総額に対する発生原価の割合をもって売上高を計上しております。この原価総額の見積りには、顧客の要望が高度化・複雑化したこと、あるいは開発段階でのシステム要件の変更などにより、当初の見積り以上に作業工数が増加することで追加費用が発生し、原価総額が増加する可能性があります。その場合、当該会計年度又は当該四半期の売上高が過大に計上される可能性があり、金額の大きさによっては、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、プロジェクトは、想定される工数を基に見積もりを作成し受注をしております。そのため、当社は顧客との認識のズレや想定工数が大幅に乖離することがないように、工数の算定をしておりますが、この算定業務の大半が顧客企業とのヒアリング等で把握したデータの内容に依存する事から、完全に事前に工数や成果を見込むことは困難であります。そのため見積もり作成時に想定されなかった不測の事態等により、工数が増加し、プロジェクトの収支が悪化する場合があり、特にそれが大規模なプロジェクトの場合は、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑧外注管理体制について

 当社が事業展開する上で、顧客の業務分析及びシステム設計からシステムの開発(プログラミング)までを一括して行っており、その一部については協力会社への外注を活用しております。当社が事業を更に推進して利益を計上するためには、システム開発を含む大規模案件の受注数を増加させることが一つの方策として考えられますが、そのためには、有用な外注先企業の確かな選定と安定的な活用が必要となります。

 現在の外注管理体制としては、当社製造部門のプロジェクトマネージャーによる外注管理のもと、確かな外注先の選定を行うことができておりますが、今後外注先の選定が予定通りに進まない場合や管理体制が十分に機能しなかった場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑨顧客の機密情報管理体制について

 当社は、事業を遂行する上で顧客情報の取り扱いをしており、当該情報中には顧客の営業上・技術上の機密情報や個人情報(以下「機密情報等」といいます)が含まれております。当社では、機密情報等を適切に保護・管理することが重要であると認識しており、情報管理体制の整備及び従業員教育等を通じて、当社内部からの情報漏洩防止及び社外からの不正アクセス防止等に対して必要なセキュリティを施しております。また、外注先に対しても当社と同等の対策を求めており、過去に機密情報等の漏洩が起こった事実は認識しておらず、これらに起因するクレームや損害賠償請求を受けた事実もありません。しかしながら、万一、当社から機密情報等が外部に流出する事態が生じた場合には、顧客からの信用や社会的信用を喪失し、当社に対する損害賠償請求、その他責任の追及により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩仕入価格の変動について

 当社で取り扱っている一部のソフトウエア、ハードウエアについては、その仕入価格が為替の影響により変動する場合があります。当社では、仕入メーカー毎の価格見直しのタイミングを注視し、見積有効期限を短めに設定する等仕入価格の変動を売価に転嫁するよう対策を行っておりますが、急激な円安により仕入価格が大きく変動した場合には、プロジェクトの収支の悪化や価格高騰による競争力の低下により、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

 

(2)エモーショナルシステム事業遂行上のリスク

①エモーショナルシステム事業について

 エモーショナルシステム事業については、営業損益において赤字を解消できなかったことを踏まえて、固定費を抑制することで全社収益に与える影響を好転させ、事業セグメントを継続する方針です。VR(Virtual Reality:仮想現実)やAR(Augmented Reality:拡張現実)関連技術は、今後も技術革新が拡がることが見込まれますが、同事業の技術の源泉となるVR/AR業界では技術革新が急速で、当社の技術が業界の技術革新に追いつかない場合や当社のコンテンツを含む4DOHが一般消費者の支持を得られない場合には、同事業の事業進捗が遅れることにより、当社全体の中長期的な業績向上が遅れる可能性があります。

 また、新技術等への対応のための開発投資やコンテンツ償却費等の支出が拡大した場合には、採算悪化による収益性の低下を招くとともに、事業継続の検討が必要になるなど、当社の事業及び業績・財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

②資産評価リスクについて

 エモーショナルシステム事業では、4DOHとして主にスクリーン等の本体設備及び上映コンテンツを提供しております。当事業年度末現在、棚卸資産として計上している本体設備は発生しておりませんが、今後発生した場合は、収益性の低下に基づく簿価切下げを実施することにより、業績に影響を与える可能性があります。

 

 (3)全社のリスク

①人材の確保について

 当社の継続的な発展及び急速な技術革新に対応して、競争力のある製品及びサービスの提供を行っていくためには、優秀な人材の確保が不可欠となります。現時点では優秀な人材の採用、社内でのノウハウの共有等による人材教育により必要な人材は確保しております。更なる事業の拡大に伴い、積極的に優秀な人材を確保し、育成の強化を図る方針でありますが、当社の希求する人材が十分に確保できない場合、又は、現在在職中の人材が流出するような場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

②システム障害の影響について

 当社は、コンピュータシステムのバックアップにより安定的なシステム運用、災害対策を行っておりますが、地震や水害等の大規模広域災害、火災等の地域災害、サイバー攻撃等予測不可能な事由によりシステム障害が生じた場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

③当社製品・サービスの不具合等による影響について

 当社が提供する製品・サービスにおいては、納品前に十分な品質管理を行い、不具合(誤作動・バグ・検収遅延等)の発生を未然に防ぐ方策を図っております。しかしながら、万一、当該製品・サービスにおいて、当社に責務のある原因で不具合が生じた場合、無償対応や損害賠償責任の発生、顧客からの当社に対する信頼を喪失すること等により、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

④特定の人物への依存について

 当社代表取締役社長で創業者でもある冨田和久は、当社設立以来代表取締役社長を務め、豊かな知識、経験を基に、経営に関わる者として当社の経営方針や経営戦略・事業戦略の決定をはじめ、当社にとって重要な役割を果たしております。また、冨田和久は当社の筆頭株主として当事業年度末現在当社株式を849,600株(自己株式を除く発行済株式総数の13.9%)所有しております。

 現状において冨田和久が不測な事態を含め当社業務より離脱することは想定しておりませんが、同氏へ依存しない経営体制を整備するとともに、各分野での人材登用・育成を強化しています。未だ同氏への依存の度合いが高いと思われ、何らかの理由により同氏が現在の役割を遂行できなくなった場合や退職をした場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑤知的財産権について

 当社は、事業展開する上で、技術・ノウハウ・知的財産権等は重要な位置を占めるため、特許権の取得による保護を図るとともに、これらの保全管理については細心の注意を払っており、また同様に、他社の知的財産権の侵害をすることのない様、リスク管理に取り組んでおります。

 現在、当社が保有している知的財産権を侵害されている、あるいは、第三者から当社が権利侵害をしている旨の通知等を受領した事実はありませんが、今後、当該事実が生じる可能性は否定できません。この場合、第三者より知的財産権の使用料請求、損害賠償請求及び差止請求が発生する可能性があり、当社の信用低下及びブランドの毀損等により、当社の事業及び業績に重要な影響を与える可能性があります。

⑥法的規制について

 当社の事業運営において、現在、直接的な法的規制は存在しないと認識しておりますが、今後新たな法令等の制定や既存法令の解釈の変更等が行われる可能性があり、こうした場合に対応して、製品・サービス内容の変更や新たなコストが発生すること等により、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑦小規模組織であることについて

 当社は、2022年9月30日において、取締役7人、監査役3人、執行役員及び従業員53人(うち管理部門16人)と小規模な組織であり、現在の人員構成における最適と考えられる内部管理体制や業務執行体制を構築しております。当社は、今後の業容拡大及び事業内容の多様化に対応するため、人員の増強、内部管理体制及び執行体制の一層の充実を図っていく方針でありますが、これらの施策が適時適切に進まなかった場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑧配当政策について

 当社は、株主に対する利益還元を経営上の重要課題の一つと位置付けております。しかしながら、当社は、現在のところ成長過程にあるため、経営体質の強化及び将来の事業展開のための内部留保の充実に重点を置く必要があると考えており、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期については未定であります。

 

⑨新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

 当社は、当社役員及び従業員等に対するインセンティブを目的として新株予約権を発行しております。これらの新株予約権による潜在株式数は当事業年度末現在309,600株(2022年11月30日現在214,400株)であり、発行済株式総数6,152,800株の5.0%(2022年11月30日現在の潜在株式数は214,400株、発行済株式総数は6,488,300株であり、その割合は3.3%)に相当しており、将来的にこれらの新株予約権が行使された場合には、当社の一株当たりの株式価値は希薄化し、株価形成に影響を与える可能性があります。なお、新株予約権の詳細は、後記「第4 提出会社の状況 1株式等の状況 (2)新株予約権等の状況」をご参照ください。

 

⑩有利子負債への依存と金利変動の影響について

 当社は、長期の運転資金を金融機関からの借り入れに依存しており、当事業年度末における有利子負債残高は117,909千円、総資産額は1,910,378千円であり、有利子負債依存度は6.2%となっております。なお、有利子負債残高は長期借入金(1年以内に返済予定のものを含む)の合計額です。金融情勢の変化等により金利が上昇した場合には、当社の経営成績等に影響が及ぶ可能性があります。

 

⑪自然災害やテロ、感染症等の発生について

自然災害やテロの発生、新型コロナウイルス等感染症の拡大により、一時的に事業活動を停止せざるを得ない状況となった場合、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社は、新型コロナウイルス感染症への対策として、役職員のテレワーク環境を整え、時差出勤やウェブ会議等の活用と社内での感染予防の徹底を実施しておりますが、新型コロナウイルスの感染拡大により、各報告セグメントに以下の影響を与える可能性があります。

 セキュアクラウドシステム事業においては、顧客のIT投資意欲低下や営業活動の縮小による受注減、各種プロジェクトの遅延、調達物品の納期遅延等の発生により、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 エモーショナルシステム事業においては、アミューズメント施設の休業、各種イベント中止等の長期化により受注が遅延し、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑫特定の取引先への依存度について

当社の取引先であるエヌ・デーソフトウェア株式会社は、介護事業者向けの業務支援システム「ほのぼの」シリーズをSaaSサービスとして提供しており、当社は同社のSaaSサービスのクラウド基盤構築を行っておりますが、当事業年度末における同社への販売実績が、総販売実績に対して36.7%と高い水準にあります。このため、同社の受注動向等は当社の業績に影響を与える可能性があります。

これに対して当社は、知恵と感性と勇気を振り絞り、コンピュータシステムによって新たな価値を顧客に提供することを志向することで同社との関係を強化するとともに、中堅企業、SaaS事業者及び公共団体等の新規顧客の開拓を目指し、当社の経営成績に及ぼす悪影響の軽減を図っております。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末の資産の部は、前事業年度末に比べて342,690千円増加し、1,910,378千円となりました。これは主に、受取手形、売掛金及び契約資産の増加(前事業年度末に比べて276,067千円の増加)、商品及び製品の増加(前事業年度末に比べて190,145千円の増加)、現金及び預金の減少(前事業年度末に比べて133,192千円の減少)、前払費用の増加(前事業年度末に比べて15,120千円の増加)、繰延税金資産の減少(前事業年度末に比べて4,154千円の減少)によるものであります。

(負債)

 当事業年度末の負債の部は、前事業年度末に比べて183,329千円増加し、1,019,112千円となりました。これは主に、長期前受金の増加(前事業年度末に比べて140,998千円の増加)、長期借入金の減少(前事業年度末に比べて51,818千円の減少)、前受金の増加(前事業年度末に比べて51,066千円の増加)、未払金の増加(前事業年度末に比べて23,852千円の増加)、買掛金の増加(前事業年度末に比べて14,999千円の増加)によるものであります。

(純資産)

 当事業年度末の純資産の部は、前事業年度末に比べて159,360千円増加し、891,266千円となりました。これは、当期純利益183,715千円を計上したことによる利益剰余金の増加、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当事業年度の期首から適用したことによる利益剰余金の24,289千円減少、自己株式の取得により65千円減少したことによるものであります。

 

②経営成績の状況

 当事業年度(2021年10月1日~2022年9月30日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が残る中でワクチン追加接種等の各種政策の効果により持ち直しの動きが見られましたが、半導体供給不足の継続やウクライナ情勢による原材料価格の上昇、世界的な金融引き締めが続く中での円安の進行などにより経済活動への影響が懸念される、先行き不透明な状況が継続しました。

 当社の属する情報通信業界は、半導体供給不足の懸念は依然としてあるものの、デジタル化等の流れを受けたソフトウエア投資増加の動きが見られ、競争力の向上のためのDX(デジタル・トランスフォーメーション)に向けた企業の投資意欲が活発です。

 自治体、教育機関などの公共分野や関東圏の企業において、サイバー攻撃やシステム障害への耐性を高める投資や、自然災害等に対する事業継続計画(BCP)を見直しの機運が、「必須のレジリエンス」という事業コンセプトを推進する当社のセキュアクラウドシステム事業の追い風となっています。

 メタバース(ネットワーク上の仮想空間)が社会課題の解決手段や企業のDXの一環として注目を集めており、当社のビジネスチャンスの拡大につながると当社は考えています。当社では2022年1月に設置したメタバース推進部が中心となり、3D仮想空間の構築経験やクラウドIT基盤構築などの当社がこれまで蓄積したノウハウを活かして協業体制の構築やメタバースソリューションのプロトタイプ開発を進めています。

 このような事業環境の中、当社は自治体や教育機関などの公共分野や中堅企業へのレジリエンス(障害やサイバー攻撃に対する防御と回復の仕組み)に対応したクラウド基盤構築サービスの販売など「必須のレジリエンス」という事業コンセプトを推進し、関東圏の顧客開拓においては、東京に本社を置くIT企業との協業を進め、プライベートクラウドとパブリッククラウド(Citrix Cloud)を組み合わせたVDIなどの先進的なハイブリッドクラウドを顧客に導入するなど、協業を起点とした販売拡大にも取り組みました。関東の中堅企業向けのクラウド基盤構築やSaaS事業者の旺盛なクラウド基盤拡張需要についても関東圏の協力会社を開拓して生産力を高めて対応に取り組みました。

 その結果、当事業年度における売上高は2,503,247千円(前事業年度は2,165,368千円)、営業利益は270,275千円(前事業年度は230,780千円)、経常利益は262,380千円(前事業年度は230,709千円)、当期純利益は183,715千円(前事業年度は164,808千円)となりました。

 セグメントごとの業績は次のとおりです。

 

(セキュアクラウドシステム事業)

 関東圏の大手SaaS事業者向けクラウド基盤関連の販売や自治体や教育機関などの公共分野や関東圏の中堅企業向けレジリエンスソリューション販売が堅調に推移した結果、セキュアクラウドシステム事業の売上高は、2,451,638千円(前事業年度は2,151,966千円)、営業利益は503,904千円(前事業年度は466,841千円)となりました。

(エモーショナルシステム事業)

 4DOHを活用したイベント運営サービスの販売を積極的に推進した結果、エモーショナルシステム事業の売上高は、51,608千円(前事業年度は13,402千円)、営業損失は3,561千円(前事業年度は営業損失29,693千円)となりました。

 

 なお、全社営業利益は、各セグメントの営業損益の合計から、報告セグメントに分配していない全社費用230,067千円を差し引いた数値となっています。全社費用は、主に報告セグメントに帰属しない一般管理費です。

 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当事業年度の期首から適用しており、各数値については当該会計基準等を適用した後の数値となっているため、対前年同期増減率は記載しておりません。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動による資金の減少が73,115千円、投資活動による資金の減少が4,636千円、財務活動による資金の減少が56,093千円であったことにより、前事業年度末に比べ133,192千円減少し、660,106千円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により減少した資金は73,115千円(前事業年度は232,446千円の増加)となりました。これは主に、売上債権及び契約資産の増加292,463千円、税引前当期純利益の計上262,380千円、棚卸資産の増加67,039千円、前受金の増加52,160千円、未払金及び未払費用の増加28,110千円等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により減少した資金は4,636千円(前事業年度は14,923千円の減少)となりました。これは、無形固定資産の取得による支出4,636千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により減少した資金は56,093千円(前事業年度は80,930千円の減少)となりました。これは、長期借入金の返済による支出56,028千円、自己株式の取得による支出65千円によるものであります。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当事業年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2021年10月1日

至 2022年9月30日)

前年同期比(%)

セキュアクラウドシステム事業(千円)

1,993,365

エモーショナルシステム事業(千円)

32,522

合計(千円)

2,025,887

(注)1.金額は販売価格によっております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

3.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当事業年度の期首から適用しており、各数値については当該会計基準等を適用した後の数値となっているため、前年同期比は記載しておりません。

 

b.受注実績

 当事業年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

セキュアクラウドシステム事業

2,798,624

117.2

906,764

201.4

エモーショナルシステム事業

53,027

392.1

1,592

912.3

合計

2,851,651

118.7

908,357

201.7

(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

c.販売実績

 当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2021年10月1日

至 2022年9月30日)

前年同期比(%)

セキュアクラウドシステム事業(千円)

2,451,638

エモーショナルシステム事業(千円)

51,608

合計(千円)

2,503,247

(注)1.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当事業年度の期首から適用しており、各数値については当該会計基準等を適用した後の数値となっているため、前年同期比は記載しておりません。

2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前事業年度

(自 2020年10月1日

至 2021年9月30日)

当事業年度

(自 2021年10月1日

至 2022年9月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

エヌ・デーソフトウェア株式会社

825,382

38.1

919,610

36.7

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

この財務諸表の作成に当たりまして、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っていますが、見積りには不確定性が伴うため、実際の結果は、これらと異なることがあります。この財務諸表の作成にあたる重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1.財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」に記載しております。

 また、新型コロナウイルス感染症について、感染拡大の収束時期を見通すのは困難な状況であります。そのため、当社では、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響は2023年9月期の一定期間にわたり続くものと仮定し、固定資産の減損、繰延税金資産の回収可能性などの会計上の見積りを行っております。

 

②経営成績に重要な影響を与える要因

 経営成績に重要な影響を与える要因については「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境をはじめとした様々なリスクが存在していることを認識しております。当社が属する情報通信業界においては、技術革新のスピードが早いため、業界動向や環境変化等を把握しながら技術を堅実に積み重ねることで、高品質なサービスを提供し続けることができるよう対応してまいります。

 

③経営者の問題意識と今後の方針

 「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載した様々な課題を適切に対処することが必要であると認識しております。常に業界動向等の変化を捉えながら主力事業であるセキュアクラウドシステム事業の事業基盤の強化と、エモーショナルシステム事業の黒字転換を図るとともに、優秀な人材の確保をはじめとした内部管理体制の充実を図ることで、持続的な成長及び効率的な事業運営を実現させる所存であります。

 

④当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が残る中でワクチン追加接種等の各種政策の効果により持ち直しの動きが見られましたが、半導体供給不足の継続やウクライナ情勢による原材料価格の上昇、世界的な金融引き締めが続く中での円安の進行などにより経済活動への影響が懸念される、先行き不透明な状況が継続しました。

 当社の属する情報通信業界は、半導体供給不足の懸念は依然としてあるものの、デジタル化等の流れを受けたソフトウエア投資増加の動きが見られ、競争力の向上のためのDX(デジタル・トランスフォーメーション)に向けた企業の投資意欲が活発です。

 自治体、教育機関などの公共分野や関東圏の企業において、サイバー攻撃やシステム障害への耐性を高める投資や、自然災害等に対する事業継続計画(BCP)を見直しの機運が、「必須のレジリエンス」という事業コンセプトを推進する当社のセキュアクラウドシステム事業の追い風となっています。

 メタバース(ネットワーク上の仮想空間)が社会課題の解決手段や企業のDXの一環として注目を集めており、当社のビジネスチャンスの拡大につながると当社は考えています。当社では2022年1月に設置したメタバース推進部が中心となり、3D仮想空間の構築経験やクラウドIT基盤構築などの当社がこれまで蓄積したノウハウを活かして協業体制の構築やメタバースソリューションのプロトタイプ開発を進めています。

 このような事業環境の中、当社は自治体や教育機関などの公共分野や中堅企業へのレジリエンス(障害やサイバー攻撃に対する防御と回復の仕組み)に対応したクラウド基盤構築サービスの販売など「必須のレジリエンス」という事業コンセプトを推進し、関東圏の顧客開拓においては、東京に本社を置くIT企業との協業を進め、プライベートクラウドとパブリッククラウド(Citrix Cloud)を組み合わせたVDIなどの先進的なハイブリッドクラウドを顧客に導入するなど、協業を起点とした販売拡大にも取り組みました。関東の中堅企業向けのクラウド基盤構築やSaaS事業者の旺盛なクラウド基盤拡張需要についても関東圏の協力会社を開拓して生産力を高めて対応に取り組みました。

 その結果、当事業年度における売上高は2,503,247千円(前事業年度は2,165,368千円)、営業利益は270,275千円(前事業年度は230,780千円)、経常利益は262,380千円(前事業年度は230,709千円)、当期純利益は183,715千円(前事業年度は164,808千円)となりました。

 当社の主力事業であるセキュアクラウドシステム事業は、関東圏の大手SaaS事業者向けクラウド基盤関連の販売や自治体や教育機関などの公共分野や関東圏の中堅企業向けレジリエンスソリューション販売が堅調に推移した結果、セキュアクラウドシステム事業の売上高は、2,451,638千円(前事業年度は2,151,966千円)、営業利益は503,904千円(前事業年度は466,841千円)となりました。

 一方、エモーショナルシステム事業においては、4DOHを活用したイベント運営サービスの販売を積極的に推進した結果、エモーショナルシステム事業の売上高は、51,608千円(前事業年度は13,402千円)、営業損失は3,561千円(前事業年度は営業損失29,693千円)となりました。

 

 当社は、セキュアクラウドシステム事業を「必須のレジリエンス」という事業コンセプトのもと、回復力と強靭化を意味する「レジリエンス」を企業、自治体に向けて発信し、「基幹システムのクラウド化」と並ぶ、セキュアクラウドシステム事業の柱として発展させていきます。また、エモーショナルシステム事業については、固定費を抑制することで、全社収益に与える影響を好転させるとともに、メタバース分野への応用を前提とした4DOHの技術開発及び製造販売と、4DOHを活用したイベント運営サービスの事業の推進により、黒字転換を図って参ります。

 

⑤キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容につきましては、「第2 事業の状況 3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要③キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 当社の主な資金需要は、各事業の営業活動に必要な商品の仕入、販売費及び一般管理費の営業費用並びに各種税金の納付等であります。これらの資金需要は、営業キャッシュ・フローから生じる自己資金、金融機関からの借入等によって賄っております。

 資金の流動性につきましては、経常運転資金に十分対応できる手元資金の確保に努めており、当期末現在の現金及び現金同等物は、660,106千円となっております。また、資金の流動性に支障をきたす事態の発生に備えて、金融機関との間で合計330,000千円の当座貸越契約を締結し、一定の流動性を維持できる体制を確保しております。

 

 

4【経営上の重要な契約等】

相手先名称

契約の名称

契約締結日

契約内容

契約期間

シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社

シトリックス・ソリューション・アドバイザー/プラチナ契約

2004年4月1日

コンサルタント又はリセラーとして、Citrix製品の販売に関する専門知識、サービスの提供、顧客の教育、技術的な実装とサポートを提供するパートナー契約。上位から順にプラチナ(PLATINUM)、ゴールド(GOLD)、シルバー(SILVER)のランクがある。プラチナ(PLATINUM)パートナーの中で特に専門性(Citrix Specialization)を認定されたパートナーは、プラチナプラス(PLATINUM PLUS)として、パートナーの中でも最上位に序列され、当社は2021年3月に認定を受けている。

 

2022年2月1日から
2023年1月31日

(注)

(注)資格者数等の諸条件を満たすことで、翌年の更新が可能となります。

 

5【研究開発活動】

 該当事項はありません。