第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

 一般的な業務効率化を目的としたシステムは、手軽でリスクが少ない方法として汎用パッケージシステムをクラウド上で利用する形態に進んでいきます。一方、個々の企業における「競争力の源泉の一つ」である独自の経営ノウハウ、独自の技術、独自の文化(生産方法や営業手法、経営管理方法、顧客サービス手法等)をシステムとして組上げ、最新技術を咀嚼しながらシステムを構築し運用していくことは簡単ではありません。当社は、顧客企業の「競争力の源泉の一つ」となる顧客独自の情報システム構築を実現すること、そして、その道がたとえ困難であっても一歩踏み出す勇気を持つこと、をポリシーとし、以下の経営理念として定めております。

 

「勇者たらんと。」 小さな僕等が持ち得るものは、一人一人の知恵と勇気と諦めない強い心だけだ。

          どんな時でも、「その一歩」が踏み出せるように。

          勇者たらんと。

 

(2)目標とする経営指標

当社は主力事業であるセキュアクラウドシステム事業を継続的に成長させ、エモーショナルシステム事業の収益力を確立することにより、持続的な企業価値の向上を目指しております。

2022年10月6日の東証グロース市場への上場を機に「営業利益率」を重要な経営指標に加え、「売上高」「営業利益」「営業利益率」を重要な経営指標に位置づけております。下記「(4) 経営環境及び優先的に対処すべき課題」を解決することにより、これらの経営指標の向上を図ってまいります。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

当社は、事業のコアである仮想化技術をベースとしつつ、顧客企業に差し迫っているリアルなニーズ(障害からの回復性、強靭性の確保:必須のレジリエンス、2025年の崖対策、DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応等)に対応した高品質な技術サービスを提供するとともに、技術サービスに付随する高付加価値な製品・商品を顧客へ販売することで、主力事業であるセキュアクラウドシステム事業の継続的な成長を目指しております。

また、エモーショナルシステム事業においては、「体験共有型VR装置」であるMetaWalkersⓇを市場に広めるため、販売パートナーの確保及び育成を進めております。新たな成長分野であるメタバース市場において、メタバースの構築サービスを企業向けに特化した形で提供し、MetaWalkersⓇと企業向けメタバースの2つのサービスを軸にエモーショナルシステム事業の拡大を目指しております。

 

(4)経営環境及び優先的に対処すべき課題

わが国経済は、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行きなど懸念材料はあるものの、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果により今後緩やかな回復基調が続くことが期待されます。

 情報通信業界は、規模や業種に関わらず企業のIT投資意欲は一段と高まり、需要の拡大傾向が続くものと思われます。人財不足による一層の業務効率化需要や、企業の事業拡大に伴う情報システムの拡張需要、競争力を高めるためのDX(デジタルトランスフォーメーション)関連需要などが旺盛です。2023年9月調査の日銀短観によると、2023年度のソフトウェア投資計画(全規模全産業)は前年比15.3%増と、高い伸びを示しています。

 経済産業省が「2025年の崖」と表現して警告してきた、老朽化した基幹システムの刷新問題は喫緊の課題となっています。クラウド化していない従来型の古い基幹システムを運用している企業は未だに多く、潜在的な基幹システムのクラウド化需要は潤沢と見ています。

また、警察庁の9月21日の発表資料「令和5年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について」によると、ランサムウェア感染などのサイバー攻撃被害は高水準で推移しています。サイバーセキュリティの問題は金融機関や港湾施設といった社会経済インフラの停止に加え、企業の大規模個人情報漏洩など国民生活に直結する大きな社会問題となりました。情報システムのレジリエンス(防御と回復の仕組み)を高める取り組みが、製造業界や医療業界などの各業界で始まっています。

当社はこの状況に対応し、強みであるシステム仮想化技術力を活かした事業展開を積極的に推進していきます。

 

セキュアクラウドシステム事業は、旺盛な需要に対応するため、本社近郊にエンジニア及びセールスエンジニアを集約する新オフィス「エンジニアハビタット」(総床面積480㎡)を開設し、採用活動を一層加速するとともに、中長期を見据えた技術教育の充実を図ります。「エンジニアハビタット」は2024年2月に稼働開始し、2026年9月期までに当社全体の従業員数を100名超の体制にする計画です。

首都圏においては、SaaS事業者やAI事業者などサービスプロバイダのクラウド基盤構築需要が拡大しているため、東京営業部の増員を行い、2024年1月より東京都内に営業拠点を設置して体制を強化していきます。

企業や公共団体のサイバーセキュリティ需要については、EDR(情報システムの不審挙動検知と対処を迅速化する仕組み)や、クラウド技術を利用して情報システムをダメージから早期に回復するBCP(事業継続計画)などレジリエンスソリューションの販売拡大に取り組みます。

そして、当事業年度に収束した特定案件(製造業向けのVDI構築案件)のような不採算プロジェクトの再発防止策を早急に実行し、採算性の改善に取り組みます。

 

エモーショナルシステム事業は、MetaWalkersⓇと企業向けメタバースの2本柱で売上と営業利益の拡大を図ります。

MetaWalkersⓇは、国内レジャー需要の回復に対応するため、販売代理店との協業を拡大し、遊園地や博物館への販売や、新規コンテンツの制作受託を積極的に推進します。大手通信事業者との協業では、イベント案件を通じた新規顧客開拓と通信ネットワークによるMetaWalkersⓇのサービス拡充に取り組みます。国策の国土強靭化計画に伴うVR需要については、防災関連の業界団体加盟やイベントなどを通じて販路やコンテンツ等を持つ企業との協業体制構築を進め、MetaWalkersⓇを活用した防災教育や災害シミュレーション分野の受注に取り組みます。

メタバースについては、当事業年度の企業向けメタバース初号機の導入実績を基に顧客ニーズを見極め、企業向けメタバース構築サービスを更に洗練させ、企業や自治体などの新規顧客開拓に繋げる方針です。

加えて、2023年12月にオープンした企業向けメタバースのデモンストレーション用Webサイトを潜在顧客と当社の接点として活用し、企業向けメタバースの受注を更に加速する予定です。

当社の対処すべき課題として以下の施策に取り組んでまいります。

 

 ①セキュアクラウドシステム事業の営業利益率の向上

 当社は2022年10月6日の東証グロース市場への上場を機に、「強い会社」を目指すため、主力事業であるセキュアクラウドシステム事業の営業利益率16%(※1)を2027年9月期までに達成するというKGI(経営目標達成指標)と、2つのKPI(重要業績評価指標)を設定しました。国内のシステムインテグレーター企業131社における営業利益率の平均値は7.3%(※2)であり、当社がKGIに設定した16%は、その上位5位に入る優良な利益水準です。

 KGIを達成するためには、ハードウエアやソフトウエア、クラウドサービスや当社の自社製品などのうち、付加価値の高いカテゴリの販売を増やしていくことが重要となります。そのため、当社は第一のKPI(重要業績評価指標)を「売上総利益率が25%以上の高付加価値製商品の売上高」と設定しています。製商品販売の高付加価化を図る戦略として、専門技術を要するVDI構築や基幹システムのクラウド化、レジリエンス構築(システム障害やサイバー攻撃に対する防御と回復の仕組み)に積極的に取り組みます。それらに付随する高付加価値製商品の販売を拡大することで営業利益率の向上を図ります。

 次いで、提案営業や受注後の構築に技術力が必要な高付加価値分野の商品の受注力、構築力を高めることが重要であるため、第二のKPIとして「セキュアクラウドシステム事業のエンジニア・セールスエンジニア数」を設定しています。このKPIを実現するための人財採用・育成戦略として、エンジニアとセールスエンジニアを集約する新オフィス「エンジニアハビタット」を2024年第2四半期に開設する予定です。「エンジニアハビタット」ではエンジニアとセールスエンジニアが集い、新たな技と知恵を生み出す、いわばエンジニアの生態系を構築します。2022年11月に設置した人財開発部は「エンジニアハビタット」における人財育成の推進役として、中長期的な人事・教育制度の整備を推進し、技術力とビジネス感覚を兼ね備えた次世代の人財の育成に取り組む予定です。

 

(※1)営業利益率は事業計画に基づき、全社費用配賦後の営業利益率を算定・記載しています。

(※2)売上高10億円以上のシステムインテグレーター131社の2019年8月以降の最新期決算

(変則決算を除く)の営業利益率。2022年9月上旬時点の民間調査会社による当社調べ。

 

 ②「必須のレジリエンス」 事業コンセプトの推進

 DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展や、コロナ禍を契機としたテレワークの普及により、社会のデジタル依存度が急速に高まっています。情報システムを構成するネットワークやデータベースサーバー類の障害等により、一部でもシステムが停止した場合には、想像以上に甚大な影響を生じ、ひいては社会問題にまで発展しかねません。ランサムウェアなどのサイバー攻撃により復旧困難な障害に陥ることも、近年多発しています。サイバー攻撃や人為的ミスなどによるデータの棄損や改竄に対して、100%防御することは不可能であり、インシデントの発生都度、多くの労力を使い緊急対処せざるを得ない現実があります。こうした中、企業経営者に求められていることは、前向きなデジタル化の推進と同時に、障害発生時に極力短時間でシステムを回復する「レジリエンス」の重要性を意識したシステムを構築することです。単に止まらない前提のシステムではなく、万が一止まっても速やかに回復できるシステム、つまり、回復のための選択肢を準備しておくことが必須です。これこそ事業の強靭化であり、その実現には、システム設計の熟慮とともに人的な運用体制まで含めた、高度なノウハウが必要となります。

 当社は独立系システム構築会社として様々なシステム障害対応の経験を有しており、それらのノウハウの蓄積と、メーカーを問わず優れた製品やサービスをいち早く検証し、組み合わせることで「レジリエンス」を更に発展させるよう活動しています。

 回復力と強靭化を意味する「レジリエンス」の重要性をすべての企業、自治体に向けて発信し、従来からの「基幹システムのクラウド化」と新しい「必須のレジリエンス」というコンセプトを二本柱として関連するサービスを拡張させることにより、セキュアクラウドシステム事業を発展させていくことは当社の重要課題です。

 「レジリエンス」は、喫緊に迫った2025年の崖を乗り越え、様々なDXを外連味なく実行可能にし、持続可能な企業成長を促すことになり、SDGsに対しても必須のキーワードとなります。

 

 ③優良顧客の獲得のための営業力の強化

 顧客のビジネス進展に応じて、システムに関する様々なご相談を当社に継続して行っていただけるロイヤルカスタマーの数を増加させることが、当社の安定的成長に欠かせない経営課題です。そのために、九州地場優良企業の開拓だけでなく、国内でも経済規模の大きい首都圏のロイヤルカスタマーの増加に対する営業力の強化に努めていきます。

 

 ④ストック型売上の拡大

 当社は、クラウド基盤構築の受託業務を主体とする会社であり、それらはフロー型の売上となりますが、保守などのストック型売上についても拡大を図っていきます。当社が構築したシステムの保守だけでなく、他社が構築したシステムについても当社が保守サービスを提供できるよう、他社構築システムのアセスメントと保守提供の体制を整備していきます。また、サブスクリプション型(月額料徴収型)のソフトウエア、クラウドサービスを組み合わせたハイブリッドクラウドシステムの構築・販売を推進することで、ストック売上高の拡大に努めます。

 

 ⑤セキュアクラウドシステム事業の不採算案件の予防

 不採算となった当期の特定案件(製造業向けVDI構築案件)の経験から得た知見を活かし、早急にプロジェクト管理の強化を図ります。特に大型案件については受注活動から納品に至るプロセスを見直して、重点的に不採算案件の予防に取り組みます。更に、エンジニア・セールスエンジニアの人財の採用と協力会社の開拓を推進し、大型案件を円滑に遂行する体制構築に努めます。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、本文の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

 当社は、事業のコアである仮想化技術をベースとしつつ、顧客企業に差し迫っているリアルなニーズ(障害からの回復性、強靭性の確保:必須のレジリエンス、2025年の崖対策、DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応等)に対応した高品質な技術サービスを提供するとともに、技術サービスに付随する高付加価値な製品・商品を顧客へ販売することで、主力事業であるセキュアクラウドシステム事業の継続的な成長を目指しております。

また、エモーショナルシステム事業においては、「体験共有型VR装置」であるMetaWalkersⓇを市場に広めるため、販売パートナーの確保及び育成を進めております。新たな成長分野であるメタバース市場において、メタバースの構築サービスを企業向けに特化した形で提供し、MetaWalkersⓇと企業向けメタバースの2つのサービスを軸にエモーショナルシステム事業の拡大を目指しております。

 

 企業活動には様々な業務システムが必要不可欠であり、サイバー攻撃を防御する仕組みや、サイバー攻撃のダメージからシステムとデータを回復するレジリエンスを備えたクラウド基盤の重要性が高まっている中で、当社の技術サービスを様々な企業・自治体に提供することにより、当社の持続的な発展を実現し、社会に貢献していきたいと考えております。また、引き続き多様な働き方の環境を整備し、社員一人ひとりの成長機会を充実させることで、優秀な人財の採用に努めます。

 

(1)ガバナンス

当社は、株主の皆様をはじめとする全てのステークホルダーの信頼に応え、業務執行における迅速かつ的確な意思決定と、より透明性の高い公正で効率的な経営体制を構築することによる企業価値向上の実現をコーポレート・ガバナンスの目的と考えており、この充実・強化を経営上の重要課題の一つと位置づけ、今後も、さらなる充実・強化に努める方針であります。

 

 詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載のとおりであります。

 

(2)戦略

当社の持続的な発展のためには、セキュアクラウドシステム事業の営業利益率の向上が重要な経営課題であると当社は考えています。その実現のためには、付加価値の高いカテゴリの販売を増やしていける、受注力、構築力の高い人財の確保が不可欠です。そのため、当社は人財の採用と育成及び社内環境整備等人的資本に対する積極的な投資を行う方針です。

人財採用に関しては、従来の中途採用を中心とした体系から、新卒採用と中途採用を組み合わせたよりバランスの取れた採用体系を構築し、育成に関しては、新たに採用した人財と既存の人財双方に対して資格手当制度と教育訓練制度を充実させていく方針です。また、社内環境整備においては、社員一人ひとりの働きやすさと成長を支援する仕組みとして、テレワークの活用を継続し、多様な働き方が可能な環境を整備するとともに、社員が新しい技術を実際に触れながら学べる環境を整備する方針です。

具体的な取組としては、以下を実施・計画しております。

 

①エンジニアハビタットの新設

セキュアクラウドシステム事業の技術開発拠点として「エンジニアハビタット」を新設します。(2024年2月予定)エンジニアとセールスエンジニアを集結することで、新たな技と知恵を生み出すビジネス感覚を備えた高スキル技術者の育成を促進します。

 

 ②東京都内への営業拠点の新設

首都圏顧客のさらなる獲得を実現するため、東京営業部の採用活動を継続し、人員拡充にあわせて東京都内に営業拠点を開設する予定です。(2024年1月予定)

 

③人財開発部の設置

当社は、2022年11月に人財採用・社内教育等を行う専任部署として人財開発部を設置しました。2023年11月より、当初の1名体制から2名体制とし、新卒・中途の採用活動を行い、社内教育計画の立案及び実施を行っています。

④人財採用チャネルの拡大

新卒・中途採用とも、複数の採用チャネルを利用し効率的な採用活動を行っています。

 

⑤リファラル採用、アルムナイ採用の積極的な活用

採用にあたっては、社内関係者からの紹介等リファラル採用、過去に当社で働いたことがある退職者を対象としたアルムナイ採用を積極的に活用する方針としています。

 

⑥キャリアに応じた研修の実施

新卒・中途の新入社員、既存社員等、各々のキャリアに応じた研修の実施を計画しています。

 

⑦資格手当制度の継続的な見直し

初等技術資格から高度専門資格へ持続的な技術向上を長期的に支援するため、毎月の給与に反映される資格制度を設けています。各ベンダーの資格手当は積上方式で支給され、取得時の受験費用も補助されます。

 

⑧小型クラウド基盤構築を通じたOJT機会の確保

当社では、エンジニア1人が1年間に担当するシステム構築回数が年間5.6件(2023年9月期実績)と多くのクラウド基盤構築案件を経験しています。そのため、経験が浅いエンジニアが入社した場合でも比較的短期間でシステム構築経験の回数を重ねて経験値が急速に上昇することが、当社の技術者育成の特長となっています。

 

⑨デュアルモニター、大画面モニターの利用推奨

当社では、生産性の向上や作業時のストレス軽減のため、全社的にデュアルモニターもしくは大画面モニターの利用を推奨しています。

 

(3)リスク管理

 当社では、持続的な成長を確保するため、「リスク管理規程」を制定しております。現在、リスク管理委員会は設置しておりませんが、毎週行う定例ミーティングや定例取締役会の場で、当社におけるリスクの評価、対策等協議を行っており、サステナビリティに関連するリスクにつきましても当該規程に基づきリスク管理を行っております。また、必要に応じて、弁護士、公認会計士、弁理士、税理士、社会保険労務士等の外部専門家の助言を受けられる体制を整えており、リスクの未然防止と早期発見に努めております。

 

(4)指標及び目標

 当社が定めた指標及び目標は以下のとおりです。

 

指標

目標

2023年9月期実績

売上総利益率が25%以上の高付加価値製商品の売上高(注)1.

1,000百万円

535百万円

エンジニア、セールスエンジニア数(注)1.

100名

36名

テレワーク可能な社員の比率

100.0%

100.0%

女性社員の比率

50.0%

29.6%

男性社員の育児休業取得率(注)2.

100.0%

100.0%

(注)1.詳細は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)経営環境及び優先的に対処すべき課題 ①セキュアクラウドシステム事業の営業利益率の向上」に記載のとおりです。

2.詳細は、「第1 企業の概況 5 従業員の状況」に記載のとおりです。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、当社の事業又は本株式への投資に関するリスクをすべて網羅するものではありません。

 

 (1)セキュアクラウドシステム事業遂行上のリスク

①半導体供給不足について

 新型コロナウイルス感染症の拡大により、データセンターやテレワーク需要による事業者向けコンピュータ機器の販売拡大、巣ごもり需要によるゲーム機等家庭用電子機器の販売拡大、車載システムの需要回復等を背景に、半導体の需要が増加しております。そのため半導体の供給不足が生じており、サーバーやネットワーク機器などハードウエア製品の不足が生じております。当社ではセキュアクラウドシステム事業にて取り扱うハードウエア製品に関して、半導体不足の影響による納期長期化を考慮し、顧客への発注時期早期化の働きかけや、当社から仕入先への先行発注を行うことにより、納期短縮に努めております。しかしながら、半導体不足が長期化することにより、納期遅延や調達価格の高騰となった場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

②シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社とのパートナー契約について

 シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社(本社:東京都千代田区霞が関三丁目2番1号 霞が関コモンゲート西館 23F)は米国Cloud Software Group ,Inc.社の連結決算対象法人です。Cloud Software Group ,Inc.社は、Citrix Systems ,Inc.社とTIBCO Software ,Inc.社の経営統合により設立された、全世界で40万社以上のユーザー企業と約1億人のユーザーを有するアメリカの大手IT企業です。Cloud Software Group ,Inc.社は、クライアント仮想化技術によってアプリケーションとデスクトップをオンデマンドサービスとしてセキュアに提供するソフトウエアやネットワーク機器であるCitrix製品の開発、販売などを手掛けています。

 当社は、2004年4月にシトリックス・システムズ・ジャパン株式会社とシトリックス・ソリューション・アドバイザー/プラチナ契約(コンサルタント又はリセラーとして、Citrix製品の販売に関する専門知識、サービスの提供、顧客の教育、技術的な実装とサポートを提供するパートナー契約の最上位レベル)を締結して以来、同社のパートナー企業としてCitrix製品を活用したプライベートクラウド構築に注力しております。従って、同社並びに同社製品の市場における訴求力が大きく低下した場合や、同社とのパートナー契約が更新できなかった場合等には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

③業界の動向について

 当社の属する情報通信サービス産業は、ネットワーク化の進む今日の社会においては必要不可欠なものとなっており、近年では、不正アクセス対策や情報漏洩問題対策、個人情報保護法対策としてのセキュリティ強化、モバイル端末やテレワークでの業務システム利用などを目的として、クラウド環境構築技術が活用されています。

 これらの社会情勢を背景に、今後の当業界は更なる発展を遂げると考えておりますが、企業のシステム投資に対する姿勢の変化や、今後当社の予測に反して相応の市場拡大を遂げない場合は、当社の事業運営及び業績に影響を与える可能性があります。

 

④技術革新について

 当社の属する情報通信サービス産業においては、技術革新の進捗が早く、それに応じて業界標準及び利用者ニーズが急速に変化します。当社はかねてより技術革新及び顧客ニーズの変化に対応すべく、積極的に最新の情報収集、技術の蓄積等を行っております。しかしながら、当社の対応力を上回る急激な技術革新が生じた場合、或いは当社が想定していない新技術が普及した場合、当社取扱製品やサービスの陳腐化・競争力の低下を引き起こし、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑤他社ソフトウエアの活用について

 当社のセキュアクラウドシステム事業は、多数のプラットフォーム案件においてCloud Software Group ,Inc.社のソフトウエアを活用した事業となっております。これは同社の前身の1社である米国のIT企業Citrix Systems ,Inc.社が日本進出前であった同社のメタフレーム(現VirtualApps)を当社が1998年10月より取り扱ってきた経験及び実績により、同社ソフトウエアを利用した仮想化システム構築のノウハウを当社が積み上げてきた結果であります。現在当社では、顧客ニーズに幅広く対応することを目的として、同社以外の複数社のソフトウエアを取り扱うことで、活用ソフトウエアの多様化を図っており、これらのソフトウエアを利用した仮想化システム構築実績も多数あります。しかしながら、当社が何らかの理由でCloud Software Group ,Inc.社のソフトウエアを利用できなくなった場合には、当社がこれまで培ってきたノウハウを活用できなくなることに伴う競争力の低下により、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑥競合の状況について

 当社の属する情報通信サービス産業においては、技術革新とともに既存技術の陳腐化が早いため、他社との差別化を図るためには高い付加価値をもった製品・サービスが求められます。

 競合先が多数存在する中、プライベートクラウド構築技術・セキュリティネットワーク構築技術においては、長年クラウド構築に特化した事業を行ってきた当社ならではの、独自に蓄積した実装・コンサルティング能力、ノウハウや実績において他社に対し優位性を有していると考えておりますが、競合先の技術力等の向上により当社の競争力が大きく低下した場合は、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑦プロジェクトの売上計上時期の変動あるいは収支の悪化について

 当社では、2022年9月期より、一定の要件を満たすプロジェクトにおいて一定の期間にわたり収益を認識しており、見積原価総額に対する発生原価の割合をもって売上高を計上しております。この原価総額の見積りには、顧客の要望が高度化・複雑化したこと、あるいは開発段階でのシステム要件の変更などにより、当初の見積り以上に作業工数が増加することで追加費用が発生し、原価総額が増加する可能性があります。その場合、当該会計年度又は当該四半期の売上高が過大に計上される可能性があり、金額の大きさによっては、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、プロジェクトは、想定される工数を基に見積もりを作成し受注をしております。そのため、当社は顧客との認識のズレや想定工数が大幅に乖離することがないように、工数の算定をしておりますが、この算定業務の大半が顧客企業とのヒアリング等で把握したデータの内容に依存する事から、完全に事前に工数や成果を見込むことは困難であります。そのため見積もり作成時に想定されなかった不測の事態等により、工数が増加し、プロジェクトの収支が悪化する場合があり、特にそれが大規模なプロジェクトの場合は、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑧外注管理体制について

 当社が事業展開する上で、顧客の業務分析及びシステム設計からシステムの開発(プログラミング)までを一括して行っており、その一部については協力会社への外注を活用しております。当社が事業を更に推進して利益を計上するためには、システム開発を含む大規模案件の受注数を増加させることが一つの方策として考えられますが、そのためには、有用な外注先企業の確かな選定と安定的な活用が必要となります。

 現在の外注管理体制としては、当社製造部門のプロジェクトマネージャーによる外注管理のもと、確かな外注先の選定を行うことができておりますが、今後外注先の選定が予定通りに進まない場合や管理体制が十分に機能しなかった場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑨顧客の機密情報管理体制について

 当社は、事業を遂行する上で顧客情報の取り扱いをしており、当該情報中には顧客の営業上・技術上の機密情報や個人情報(以下「機密情報等」といいます)が含まれております。当社では、機密情報等を適切に保護・管理することが重要であると認識しており、情報管理体制の整備及び従業員教育等を通じて、当社内部からの情報漏洩防止及び社外からの不正アクセス防止等に対して必要なセキュリティを施しております。また、外注先に対しても当社と同等の対策を求めており、過去に機密情報等の漏洩が起こった事実は認識しておらず、これらに起因するクレームや損害賠償請求を受けた事実もありません。しかしながら、万一、当社から機密情報等が外部に流出する事態が生じた場合には、顧客からの信用や社会的信用を喪失し、当社に対する損害賠償請求、その他責任の追及により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩仕入価格の変動について

 当社で取り扱っている一部のソフトウエア、ハードウエアについては、その仕入価格が為替の影響により変動する場合があります。当社では、仕入メーカー毎の価格見直しのタイミングを注視し、見積有効期限を短めに設定する等仕入価格の変動を売価に転嫁するよう対策を行っておりますが、急激な円安により仕入価格が大きく変動した場合には、プロジェクトの収支の悪化や価格高騰による競争力の低下により、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

 

(2)エモーショナルシステム事業遂行上のリスク

①エモーショナルシステム事業について

 エモーショナルシステム事業については、2023年9月期に営業損益が黒字転換したことを踏まえて、売上高と営業利益の拡大に向けて事業セグメントを継続する方針です。VR(Virtual Reality:仮想現実)やAR(Augmented Reality:拡張現実)関連技術は、今後も技術革新が拡がることが見込まれますが、同事業の技術の源泉となるVR/AR業界では技術革新が急速で、当社の技術が業界の技術革新に追いつかない場合や当社のコンテンツを含むMetaWalkersⓇが一般消費者の支持を得られない場合には、同事業の事業進捗が遅れることにより、当社全体の中長期的な業績向上が遅れる可能性があります。

 また、新技術等への対応のための開発投資やコンテンツ償却費等の支出が拡大した場合には、採算悪化による収益性の低下を招くとともに、事業継続の検討が必要になるなど、当社の事業及び業績・財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

②資産評価リスクについて

 エモーショナルシステム事業では、MetaWalkersⓇとして主にスクリーン等の本体設備及び上映コンテンツを提供しております。当事業年度末現在発生している資産については、収益性の低下に基づく簿価切下げを実施することにより、業績に影響を与える可能性があります。

 

 (3)全社のリスク

①人財の確保について

 当社の継続的な発展及び急速な技術革新に対応して、競争力のある製品及びサービスの提供を行っていくためには、優秀な人財の確保が不可欠となります。現時点では優秀な人財の採用、社内でのノウハウの共有等による人財教育により必要な人財は確保しております。更なる事業の拡大に伴い、人財採用・育成を担う専門部署として人財開発部を2022年11月に新設し、当社の魅力を継続的に情報発信するとともに、人財育成の支援と風通しの良い組織づくり、報酬の充実に努めております。人財採用の機会増進と在職人財の流出の防止に取り組むとともに、人財育成の強化を図る方針でありますが、当社の希求する人財が十分に確保できない場合、又は、現在在職中の人財が流出するような場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

②システム障害の影響について

 当社は、コンピュータシステムのバックアップにより安定的なシステム運用、災害対策を行っておりますが、地震や水害等の大規模広域災害、火災等の地域災害、サイバー攻撃等予測不可能な事由によりシステム障害が生じた場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

③当社製品・サービスの不具合等による影響について

 当社が提供する製品・サービスにおいては、納品前に十分な品質管理を行い、不具合(誤作動・バグ・検収遅延等)の発生を未然に防ぐ方策を図っております。しかしながら、万一、当該製品・サービスにおいて、当社に責務のある原因で不具合が生じた場合、無償対応や損害賠償責任の発生、顧客からの当社に対する信頼を喪失すること等により、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

④特定の人物への依存について

 当社代表取締役社長で創業者でもある冨田和久は、当社設立以来代表取締役社長を務め、豊かな知識、経験を基に、経営に関わる者として当社の経営方針や経営戦略・事業戦略の決定をはじめ、当社にとって重要な役割を果たしております。また、冨田和久は当社の筆頭株主として当事業年度末現在当社株式を980,000株(自己株式を除く発行済株式総数の15.12%)所有しております。

 現状において冨田和久が不測な事態を含め当社業務より離脱することは想定しておりませんが、同氏へ依存しない経営体制を整備するとともに、各分野での人財登用・育成を強化しています。未だ同氏への依存の度合いが高いと思われ、何らかの理由により同氏が現在の役割を遂行できなくなった場合や退職をした場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑤知的財産権について

 当社は、事業展開する上で、技術・ノウハウ・知的財産権等は重要な位置を占めるため、特許権の取得による保護を図るとともに、これらの保全管理については細心の注意を払っており、また同様に、他社の知的財産権の侵害をすることのない様、リスク管理に取り組んでおります。

 現在、当社が保有している知的財産権を侵害されている、あるいは、第三者から当社が権利侵害をしている旨の通知等を受領した事実はありませんが、今後、当該事実が生じる可能性は否定できません。この場合、第三者より知的財産権の使用料請求、損害賠償請求及び差止請求が発生する可能性があり、当社の信用低下及びブランドの毀損等により、当社の事業及び業績に重要な影響を与える可能性があります。

 

⑥法的規制について

 当社の事業運営において、現在、直接的な法的規制は存在しないと認識しておりますが、今後新たな法令等の制定や既存法令の解釈の変更等が行われる可能性があり、こうした場合に対応して、製品・サービス内容の変更や新たなコストが発生すること等により、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑦小規模組織であることについて

 当社は、当事業年度末現在、取締役6人、監査役4人、執行役員及び従業員54人と小規模な組織であり、現在の人員構成における最適と考えられる内部管理体制や業務執行体制を構築しております。当社は、今後の業容拡大及び事業内容の多様化に対応するため、人員の増強、内部管理体制及び執行体制の一層の充実を図っていく方針でありますが、これらの施策が適時適切に進まなかった場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑧配当政策について

 当社は、株主に対する利益還元を経営上の重要課題の一つと位置付けております。しかしながら、当社は、現在のところ成長過程にあるため、経営体質の強化及び将来の事業展開のための内部留保の充実に重点を置く必要があると考えており、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期については未定であります。

 

⑨新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

 当社は、当社役員及び従業員等に対するインセンティブを目的として新株予約権を発行しております。これらの新株予約権による潜在株式数は当事業年度末現在119,200株(2023年11月30日現在119,200株)であり、発行済株式総数6,583,500株の1.8%に相当しており、将来的にこれらの新株予約権が行使された場合には、当社の一株当たりの株式価値は希薄化し、株価形成に影響を与える可能性があります。なお、新株予約権の詳細は、後記「第4 提出会社の状況 1株式等の状況 (2)新株予約権等の状況」をご参照ください。

 

⑩自然災害やテロ、感染症等の発生について

自然災害やテロの発生、新型コロナウイルス等感染症の拡大により、一時的に事業活動を停止せざるを得ない状況となった場合、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社は、新型コロナウイルス感染症への対策として、役職員のテレワーク環境を整え、時差出勤やウェブ会議等の活用と社内での感染予防の徹底を実施しておりますが、新型コロナウイルスの感染拡大により、各報告セグメントに以下の影響を与える可能性があります。

 セキュアクラウドシステム事業においては、顧客のIT投資意欲低下や営業活動の縮小による受注減、各種プロジェクトの遅延、調達物品の納期遅延等の発生により、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 エモーショナルシステム事業においては、アミューズメント施設の休業、各種イベント中止等の長期化により受注が遅延し、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑪特定の取引先への依存度について

当社の取引先であるエヌ・デーソフトウェア株式会社は、介護事業者向けの業務支援システム「ほのぼの」シリーズをSaaSサービスとして提供しており、当社は同社のSaaSサービスのクラウド基盤構築を行っておりますが、当事業年度末における同社への販売実績が、総販売実績に対して45.1%と高い水準にあります。このため、同社の受注動向等は当社の業績に影響を与える可能性があります。

これに対して当社は、知恵と感性と勇気を振り絞り、コンピュータシステムによって新たな価値を顧客に提供することを志向することで同社との関係を強化するとともに、中堅企業、SaaS事業者及び公共団体等の新規顧客の開拓を目指し、当社の経営成績に及ぼす悪影響の軽減を図っております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末の資産の部は、前事業年度末に比べて69,801千円増加し、1,980,179千円となりました。これは主に、受取手形、売掛金及び契約資産の減少(前事業年度末に比べて454,016千円の減少)、現金及び預金の増加(前事業年度末に比べて400,103千円の増加)、預け金の増加(前事業年度末に比べて57,725千円の増加)、商品及び製品の増加(前事業年度末に比べて43,048千円の増加)、仕掛品の増加(前事業年度末に比べて5,106千円の増加)によるものであります。

 

(負債)

 当事業年度末の負債の部は、前事業年度末に比べて300,279千円減少し、718,832千円となりました。これは主に、買掛金の減少(前事業年度末に比べて280,340千円の減少)、長期借入金の減少(前事業年度末に比べて41,810千円の減少)、長期前受金の減少(前事業年度末に比べて34,179千円の減少)、前受金の増加(前事業年度末に比べて32,837千円の増加)、未払法人税等の増加(前事業年度末に比べて21,793千円の増加)によるものであります。

 

(純資産)

 当事業年度末の純資産の部は、前事業年度末に比べて370,081千円増加し、1,261,347千円となりました。これは、当期純利益205,502千円を計上したことによる利益剰余金の増加、新株発行による資本金及び資本剰余金の増加(前事業年度末に比べてそれぞれ103,369千円の増加)、自己株式の取得により42,158千円減少したことによるものであります。

 

②経営成績の状況

 当事業年度(2022年10月1日~2023年9月30日)におけるわが国経済は、緩やかな回復基調で推移しました。個人消費が持ち直し、高水準の企業収益を背景に、設備投資も増加しました。情報通信業界も高い水準で好調に推移しています。企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進展し、基幹システムの刷新需要により、従来型ITからクラウドへの移行も順調に進んでいます。企業のソフトウェア投資額も拡大の傾向です。

 このような事業環境の中、当社は「勇者たらんと。」の経営理念の下、積極的な事業展開を図りました。

 その結果、当事業年度における売上高は2,900,955千円(前事業年度比15.9%増)、営業利益は301,505千円(前事業年度比11.6%増)、経常利益は295,759千円(前事業年度比12.7%増)、当期純利益は205,502千円(前事業年度比11.9%増)となりました。

 

 セグメントごとの業績は次のとおりです。

 

(セキュアクラウドシステム事業)

 セキュアクラウドシステム事業においては、首都圏のSaaS事業者やAI事業者向けの需要増に応え、顧客開拓を進めました。レジリエンス対応の需要も含め、高度ノウハウを要する顧客を積極的にサポートし、高付加価値ハードウェア、ソフトウェアの販売増加に努めました。そして、企業に差し迫る「2025年の崖」対策の需要獲得に注力しました。また、前期よりスライドした特定案件(製造業向けのVDI構築案件)はエンジニアの集中投入と顧客及びメーカーとの連携により技術的な問題を解決し、システム構築を完了しています。

 その結果、セキュアクラウドシステム事業の売上高は、2,811,595千円(前事業年度比14.7%増)、営業利益は537,008千円(前事業年度比6.6%増)となりました。

(エモーショナルシステム事業)

 エモーショナルシステム事業においては、MetaWalkersⓇ(旧称:4DOH)における大手通信事業者との協業を継続して推進し、見込み顧客の拡大と複数のイベント案件を実行しました。また、国内のレジャー産業や博物館・科学館などの施設需要の回復を受け、遊園地向け新規コンテンツを販売しました。制作した新規コンテンツを複数地域に展開して販売拡大する営業活動も進めました。一方では、国土強靭化の国策で推進されている防災・減災需要を獲得するため、防災関連の業界団体を通じた販路開拓を推進しました。

 当事業年度に販売した企業向けメタバースの初号機は、導入先企業で一般向けの活用が始まりました。構築実績ができたことにより、企業向けメタバースの今後の受注活動にも弾みがついています。

 その結果、エモーショナルシステム事業の売上高は、89,360千円(前事業年度比73.1%増)、営業利益は16,544千円(前事業年度は営業損失3,561千円)となりました。

 

 なお、全社営業利益は、各セグメントの営業損益の合計から、報告セグメントに分配していない全社費用252,047千円を差し引いた数値となっています。全社費用は、主に報告セグメントに帰属しない一般管理費です。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動による資金の増加が385,321千円、投資活動による資金の減少が24,795千円、財務活動による資金の増加が97,302千円であったことにより、前事業年度末に比べ457,828千円増加し、1,117,934千円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により増加した資金は385,321千円(前事業年度は73,115千円の減少)となりました。これは主に、売上債権及び契約資産の減少451,962千円、税引前当期純利益の計上295,759千円、買掛金の減少280,340千円、法人税等の支払額69,832千円、棚卸資産の増加48,154千円等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により減少した資金は24,795千円(前事業年度は4,636千円の減少)となりました。これは、無形固定資産の取得による支出13,835千円、有形固定資産の取得による支出7,959千円、投資有価証券の取得による支出3,000千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により増加した資金は97,302千円(前事業年度は56,093千円の減少)となりました。これは、株式の発行による収入206,738千円、長期借入金の返済による支出51,818千円、自己株式の取得による支出42,158千円、上場関連費用の支払額15,459千円によるものであります。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当事業年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2022年10月1日

至 2023年9月30日)

前年同期比(%)

セキュアクラウドシステム事業(千円)

2,166,300

108.7

エモーショナルシステム事業(千円)

45,468

139.8

合計(千円)

2,211,768

109.2

(注)金額は販売価格によっております。

 

b.受注実績

 当事業年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

セキュアクラウドシステム事業

2,893,912

103.4

989,081

109.1

エモーショナルシステム事業

97,701

184.2

9,934

623.6

 

c.販売実績

 当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2022年10月1日

至 2023年9月30日)

前年同期比(%)

セキュアクラウドシステム事業(千円)

2,811,595

114.7

エモーショナルシステム事業(千円)

89,360

173.1

合計(千円)

2,900,955

115.9

(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前事業年度

(自 2021年10月1日

至 2022年9月30日)

当事業年度

(自 2022年10月1日

至 2023年9月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

エヌ・デーソフトウェア株式会社

919,610

36.7

1,309,089

45.1

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

この財務諸表の作成に当たりまして、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っていますが、見積りには不確定性が伴うため、実際の結果は、これらと異なることがあります。この財務諸表の作成にあたる重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1.財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」に記載しております。

 

②経営成績に重要な影響を与える要因

 経営成績に重要な影響を与える要因については「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境をはじめとした様々なリスクが存在していることを認識しております。当社が属する情報通信業界においては、技術革新のスピードが早いため、業界動向や環境変化等を把握しながら技術を堅実に積み重ねることで、高品質なサービスを提供し続けることができるよう対応してまいります。

 

③経営者の問題意識と今後の方針

 「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載した様々な課題を適切に対処することが必要であると認識しております。常に業界動向等の変化を捉えながら主力事業であるセキュアクラウドシステム事業の事業基盤の強化と、エモーショナルシステム事業の黒字転換を図るとともに、優秀な人財の確保をはじめとした内部管理体制の充実を図ることで、持続的な成長及び効率的な事業運営を実現させる所存であります。

 

④当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当事業年度におけるわが国経済は、緩やかな回復基調で推移しました。個人消費が持ち直し、高水準の企業収益を背景に、設備投資も増加しました。情報通信業界も高い水準で好調に推移しています。企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進展し、基幹システムの刷新需要により、従来型ITからクラウドへの移行も順調に進んでいます。企業のソフトウェア投資額も拡大の傾向です。

 このような事業環境の中、当社は「勇者たらんと。」の経営理念の下、積極的な事業展開を図りました。

 その結果、当事業年度における売上高は2,900,955千円(前事業年度比15.9%増)、営業利益は301,505千円(前事

業年度比11.6%増)、経常利益は295,759千円(前事業年度比12.7%増)、当期純利益は205,502千円(前事業年度比

11.9%増)となりました。

 当社の主力事業であるセキュアクラウドシステム事業においては、首都圏のSaaS事業者やAI事業者向けの需要増に応え、顧客開拓を進めました。レジリエンス対応の需要も含め、高度ノウハウを要する顧客を積極的にサポートし、高付加価値ハードウェア、ソフトウェアの販売増加に努めました。そして、企業に差し迫る「2025年の崖」対策の需要獲得に注力しました。また、前期よりスライドした特定案件(製造業向けのVDI構築案件)はエンジニアの集中投入と顧客及びメーカーとの連携により技術的な問題を解決し、システム構築を完了しています。

 その結果、セキュアクラウドシステム事業の売上高は、2,811,595千円(前事業年度比14.7%増)、営業利益は

537,008千円(前事業年度比6.6%増)となりました。

 一方、エモーショナルシステム事業においてはMetaWalkersⓇ(旧称:4DOH)における大手通信事業者との協業を継続して推進し、見込み顧客の拡大と複数のイベント案件を実行しました。また、国内のレジャー産業や博物館・科学館などの施設需要の回復を受け、遊園地向け新規コンテンツを販売しました。制作した新規コンテンツを複数地域に展開して販売拡大する営業活動も進めました。一方では、国土強靭化の国策で推進されている防災・減災需要を獲得するため、防災関連の業界団体を通じた販路開拓を推進しました。

 当事業年度に販売した企業向けメタバースの初号機は、導入先企業で一般向けの活用が始まりました。構築実績

ができたことにより、企業向けメタバースの今後の受注活動にも弾みがついています。

 その結果、エモーショナルシステム事業の売上高は、89,360千円(前事業年度比73.1%増)、営業利益は16,544千

円(前事業年度は営業損失3,561千円)となりました。

なお、全社営業利益は、各セグメントの営業損益の合計から、報告セグメントに分配していない全社費用

252,047千円を差し引いた数値となっています。全社費用は、主に報告セグメントに帰属しない一般管理費です。

 

 当社は、2024年9月期を規模拡大に舵を切るファーストステップとして位置づけ、セキュアクラウドシステム事業の人財採用と拠点開設への大型投資を計画しています。セキュアクラウドシステム事業を「必須のレジリエンス」という事業コンセプトのもと、障害やサイバー攻撃、自然災害等に対する情報システムの防御と回復の仕組みである「レジリエンス」を「基幹システムのクラウド化」と並ぶ、セキュアクラウドシステム事業の柱として発展させていきます。
 また、エモーショナルシステム事業については、MetaWalkersⓇの販売に加え、企業向けメタバース構築サービスを更に充実し、売上高と営業利益の拡大を図って参ります。

 

⑤キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容につきましては、「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要③キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 当社の主な資金需要は、各事業の営業活動に必要な商品の仕入、販売費及び一般管理費の営業費用並びに各種税金の納付等であります。これらの資金需要は、営業キャッシュ・フローから生じる自己資金、株式の発行による収入等によって賄っております。

 資金の流動性につきましては、経常運転資金に十分対応できる手元資金の確保に努めており、当期末現在の現金及び現金同等物は、1,117,934千円となっております。また、資金の流動性に支障をきたす事態の発生に備えて、金融機関との間で合計330,000千円の当座貸越契約を締結し、一定の流動性を維持できる体制を確保しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

相手先名称

契約の名称

契約締結日

契約内容

契約期間

シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社

シトリックス・ソリューション・アドバイザー/プラチナ契約

2004年4月1日

コンサルタント又はリセラーとして、Citrix製品の販売に関する専門知識、サービスの提供、顧客の教育、技術的な実装とサポートを提供するパートナー契約。

2023年3月に、Citrixの従来のパートナー契約制度である「Citrix Solution Advisor Partner Program」から「Cloud Software Group Fusion Partner Program」に名称が改訂となった。Citrix製品の販売店(リセラー)の序列は、上位のプラチナ(PLATINUM)と下位のシルバー(SILVER)の2区分となり、当社は上位のプラチナの認定を受けている。

 

2023年2月1日から
2024年1月31日

(注)

(注)資格者数等の諸条件を満たすことで、翌年の更新が可能となります。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。