第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)経営方針

当社は、「未来のソフトウエアを形にする」をコーポレートミッションに掲げ、アルゴリズム領域の技術を用いた「各種ソフトウエア・ハードウエアを知能化する技術」の研究開発と社会実装を通じて、未来のソフトウエアとしてのアルゴリズムを自ら形にすることで様々な社会問題を解決すべく、また近未来のポストデジタル情報社会へ向けて価値を創造すべく事業展開してまいります。

 

(2)経営環境等

当社は、下記の4つのステップでデジタル技術が社会に普及していくと考えており、知的な処理を行う未来のソフトウエアが社会に普及していくと考えております。技術的には、2012年の機械学習技術の研究分野で起こった技術革新すなわち「深層学習技術」の登場を機に、インターネットに接続されたソフトウエアが、このような技法により構築されるアルゴリズムに置き換わりはじめており、ソフトウエアが以前よりも知的な処理を行うようになってきていると考えております。現在はアルゴリズムの時代の黎明期にあると考えており、今後、より知的な処理を行うソフトウエアが増加し社会に普及していくと考えております。特に近年のChatGPTをはじめとする大規模言語モデルの飛躍的な性能向上により、アルゴリズムの時代の進展は力強さを増していると考えております。

 


 

(3)対処すべき課題等

当社グループの対処すべき特に重要な課題は、以下のとおりであります。

① 開発体制の強化

安定的かつ着実な事業拡大を図る上では、既存クライアントの契約を継続することや案件数等が増加した場合においても、収益率を高水準に維持し、かつ顧客サービスのパフォーマンスを維持・向上することが重要であると考えております。

そのためには、さらなる優秀な人材の確保及び開発プロセスの改善、社内におけるノウハウの共有や教育訓練等が不可欠であるため、優秀な人材を積極的に採用するとともに、開発プロセスを継続的に見直し、社内におけるノウハウの共有や教育訓練等を実施し、より強固な開発体制の構築に努めてまいります。

 

営業体制の強化

不可逆な労働力減少や在宅勤務による労働環境の変化によって、今後も当社グループ製品へのニーズは高まるものと考えております。

当社グループは、今後の事業拡大に合わせて充分な体制を維持強化すべく、営業人材の積極的な採用、並びにグループ間でのノウハウのシェアに取り組んでまいります。

 

 

③ 社内環境の整備

品質・価格・納期・安心・安全すべての面で、高いレベルの価値と満足を提供することを使命としており、永続的な会社発展のためには従業員が働きやすい環境をつくることが不可欠であると考えております。

業務の効率化や従業員が安心して働くことのできる職場環境を整えることにより従業員がより働きやすい環境をつくるように取り組んでまいります。

 

④ 内部管理体制の強化

当社グループは事業内容の進化、グループ会社の増加により、事業・組織両面での成長を続けている段階にあって、グループ全体での業務運営の効率化やリスク管理のための内部管理体制の強化が重要な課題であると考えております。このため、当社及び子会社・関連会社との適切な連携を前提としたバックオフィス業務の整備を推進し、経営の公正性・透明性を確保するため、企業規模の拡大に適う、より強固な内部管理体制の構築に取り組んでまいります。

 

⑤ 情報管理体制の強化

当社グループはシステム開発やシステム運用、又はサービス提供の遂行過程において、機密情報や個人情報を取り扱う可能性があり、その情報管理を強化していくことが重要であると考えております。現在、情報管理規程等に基づき管理を徹底しておりますが、今後も社内教育・研修の実施やシステムの整備などを継続して行ってまいります。

 

⑥ システムの安定性の確保

当社グループは、インターネット上でクライアントにサービスを提供しており、システムの安定稼働の確保は必要不可欠となっております。そのため、安定性の高いサービスを提供する上では、顧客及びトラフィック等を考慮したサーバ増設等の設備投資やサーバ管理を行っていくことが重要であり、今後も引き続きシステムの安定性確保及び効率化に取り組んでまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社グループは「人とソフトウエアの共進化」というビジョンのもと、自然言語処理技術・機械学習/深層学習技術を活用したAI Research & Solution事業及びAI SaaS事業を推進しております。

当社グループにとってのサステナビリティとは、ビジョンに基づく事業活動を通じて、人とソフトウエアが相互に関わり合いながら共に進化をしていく新たな関係性を提供し、社会問題化する日本の労働人口不足を解決することによって、持続可能な社会の実現を追求していくことと考えております。

 

(1) ガバナンス

当社は、サステナビリティ関連に関して対応すべき重要な事項がある場合には、取締役会へ報告をし、審議対応を行うこととしております。取締役会での議論と意思決定のうえ、事業活動及び企業活動へ反映してまいります。

 

(2) 戦略

人的資本に関する戦略

当社グループは、多様な背景を持つ優秀な人材の採用と育成に注力し、フレキシブルな勤務制度と快適なオフィス環境を提供することで社員のワークライフバランスと組織の生産性向上を図っております。また、AI Research & Solution事業におけるソリューション提供及びAI SaaS事業におけるサービス提供による収益確保を継続するため人材採用市場での認知度向上、人事制度の整備、社内教育の充実を進め、中長期的な企業価値の拡大を目指しております。

① 人材育成

性別や国籍にとらわれることなく、幅広い経歴を持つ優秀な人材の採用に注力し、若年層に対する積極的な投資を進めております。また、個々の能力に応じた適切な登用と処遇を行い、社員の育成に力を入れつつ、個々の才能を活かした組織の強化を図っております。さらに、半期ごとの評価制度を通じて、スキル向上とキャリアパス支援を行い、一人ひとりが自己実現を果たせるよう取り組んでおります。

② 社内環境整備

従業員の最大限のパフォーマンス実現を目指し、生産性の高い快適なオフィス環境を整えております。リモートワーク、オフィス勤務問わず効率的に業務を遂行し、円滑なコミュニケーションが行えるような施策を展開しております。エンジニアイベントやハッカソンなど、社員参加型プログラムを積極的に推進し、互いに触発しあえる環境の中で、イノベーションを促進する文化を目指しております。

③ 多様な働き方

当社グループは勤務体系の多様化により社員のワークライフバランスを支援し、長期的なキャリア構築を促しております。具体的には裁量労働制などの柔軟な勤務制度も導入するなどし、各ライフステージに応じた働き方を可能にしております。

 

(3) リスク管理

 当社は、リスク管理委員会を設置しており、経営管理本部と連携する形で、当社及び子会社のサステナビリティに関する事項を含むリスクの特定及び評価、モニタリングを行っております。年に1回以上、リスク管理委員会を開催し、代表取締役、経営管理本部長を中心としたメンバーでリスクの重大性の検討を実施し、必要に応じて取締役会へ報告をすることとしております。

 

(4) 指標及び目標

人的資本に関する指標及び目標

当社グループにおきましては、AI Research & Solution事業とAI SaaS事業の両セグメントにおいて業容拡大を進めており、特に、優秀な機械学習/深層学習領域等のアルゴリズムモジュールの設計と導入を行うアルゴリズムエンジニアと、インフラやアプリケーション制作等のソフトウエア開発を行うソフトウエアエンジニアの採用・育成が重要と考えております。

上記のとおり人材投資は当社グループにとって重要と認識しておりますが、現時点において、当社グループの組織及び事業の変化が著しいため、具体的かつ合理的な指標を提示することは難しいと考えております。今後は、グループ全体で人材育成及び社内環境整備等について、共通の認識と目標設定ができる体制作りを目指してまいります。

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある 事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、 投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項につきまして、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下 のとおり記載しております。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性がある全てのリスクを網羅することを保証するものではありません。

 

(1) 景気動向及び業界動向の変動による影響

企業を取り巻く環境や労働人口減少に伴う企業経営の効率化などの動きにより、当社グループの関連市場は今後急速に拡大すると予測されるものの、企業の景気による影響や別の各種新技術に対する投資による影響を受ける可能性があります。当社グループにおいては、経済情勢の変化に伴い事業環境が悪化した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(2) 人材の確保及び育成

当社グループは、事業の拡大に伴い、積極的に優秀な機械学習/深層学習領域等のアルゴリズムモジュールの設計と導入を行うアルゴリズムエンジニアと、インフラやアプリケーション制作等のソフトウエア開発を行うソフトウエアエンジニアの獲得・確保・育成を進めております。しかしながら、事業規模の拡大に応じた当社グループ内における人材育成、外部からの優秀な人材の採用等が計画どおりに進まず、必要な人材を確保することができない場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) コンプライアンス体制

当社グループは、今後企業価値を高めていくためにはコンプライアンス体制が有効に機能することが重要であると考えております。そのためコンプライアンスに関する社内規程を策定するとともに適宜研修を実施し、周知徹底を図っております。しかしながら、これらの取組にも関わらずコンプライアンス上のリスクを完全に解消することは困難であり、今後の当社グループの事業運営に関して法令等に抵触する事態が発生した場合、当社グループの企業価値及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 情報管理

当社グループは、その業務の性格上、顧客側で保有している機密情報(経営戦略上重要な情報等)に触れる場合があります。情報の取扱いについては、情報管理規程、個人情報保護管理規程等を整備し、適切な運用を義務づけております。このような対策にも関わらず当社グループの人的オペレーションのミス等、その他予期せぬ要因等により情報漏洩が発生した場合には、当社グループが損害賠償責任等を負う可能性や顧客からの信用を失うことにより取引関係が悪化する可能性があり、その場合は当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) システム障害等

当社グループがクラウドで提供しているソフトウエアの大半は、サービスの基盤をインターネット通信網に依存しております。したがって、自然災害や事故によりインターネット通信網が切断された場合には、サービスの提供が困難となります。また、予想外の急激なアクセス増加等による一時的な過負荷やその他予期せぬ事象によるサーバーダウン等により、当社グループのサービスが停止する可能性があります。これまで当社グループにおいて、そのような事象は発生しておりませんが、今後このようなシステム障害等が発生し、サービスの安定的な提供が行えないような事態が発生した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(6) 法的規制・制度動向による影響

現在、日本国内においてインターネットに関連する主要な法規制は電気通信事業法となっておりますが、インターネット上の情報流通やEコマースのあり方についても様々な議論がなされている段階であります。当社グループが営むインターネット関連事業そのものを規制する法令はありませんが、今後、インターネットの利用者や関連するサービス及び事業者を規制対象とする法令等が制定されたり、既存の法令等の適用が明確になったり、あるいは何らかの自主的なルール化が行われた場合、当社グループの事業が制約され、事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 技術革新への対応

当社グループが事業を展開するインターネット関連業界においては、技術革新のスピードや顧客ニーズの変化が速く、それに基づく新機能の導入等が行われております。当社グループのサービスは、当社グループの機械学習技術/深層学習技術・自然言語処理技術と当社グループの独自データを組み合わせることにより、今後も競争力のあるサービスを提供できるように取り組んでおります。なお、近年では大規模言語モデルが飛躍的な性能向上を見せておりますが、当社グループでは独自の関連技術を組み合わせてソリューション化して顧客に提供しております。当社は顧客からの紹介等のインバウンドでの取引受注が大半であり、また高い顧客継続率を維持しておりますが、予想以上の急速な技術革新や代替技術・汎用的な競合商品の出現等により、当社グループのサービスが十分な競争力や付加価値を確保できない場合等には、新規受注の減少や顧客継続率の低下により当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 知的財産権におけるリスク

当社グループによる第三者の知的財産権侵害の可能性につきましては、調査可能な範囲で対応を行っておりますが、当社グループの事業領域に関する第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当社グループが認識せずに他社の特許を侵害してしまう可能性は否定できません。この場合、ロイヤリティの支払や損害賠償請求等により、当社グループの事業展開、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(9) 特定の人物への依存

当社グループの代表取締役 上野山勝也は、経営戦略、事業戦略、開発戦略等当社グループの業務に関して専門的な知識・技術を有し、重要な役割を果たしております。当社グループでは取締役会等において役員及び社員への情報共有や権限委譲を進めるなど組織体制の強化を図りながら、経営体制の整備を進めており、経営に対するリスクを最小限にしております。しかしながら、同氏が当社グループを退職した場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 新規事業

当社グループのアルゴリズムモジュール及びソフトウエアは、商品特性ゆえに幅広い産業に対して提供することが可能であります。今後も引き続き、金融、小売やコールセンター市場のみならず、他の産業向けにも積極的に参入し、新サービス及び新規事業に取り組んでまいります。これによりシステムへの投資や人件費等、追加的な支出が発生し、利益率が低下する可能性があります。また、新規事業の拡大・成長が当初の予測どおりに進まない場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(11) 新株予約権の行使による株式価値の希薄化

当社グループでは、当社グループの役員及び従業員等に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しており、2024年11月末における発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は0.34%となっております。これらの新株予約権が行使された場合には、当社グループの株式が発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。

 

(12) 配当政策

当社グループは、設立以来配当を実施した実績はありませんが、株主に対する利益還元を重要な経営課題として認識しております。しかしながら、当社グループは現在、成長過程にあると考えており、内部留保の充実を図り、将来の事業展開及び経営体質の強化のための投資等に充当し、なお一層の事業拡大を目指すことが、株主に対する最大の利益還元につながると考えております。将来的には、各期の経営成績及び財政状態を勘案しながら株主に対して利益還元を実施していく方針ではありますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。

 

(13) M&A、出資等について

2019年7月に子会社化した株式会社アイテック、2021年5月に子会社化した株式会社PKSHA Associates、2021年6月に子会社化した株式会社PKSHA Communication、2024年5月に子会社化した株式会社トライアンフは、いずれも今後、当社グループの業績に大きく貢献するものと見込んでおります。しかしながら、事業環境の変化等により当初の想定を下回る場合、のれんの減損処理等が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

※当社グループは当連結会計年度(2023年10月1日から2024年9月30日まで)より、従来の日本基準に替えてIFRSを適用しており、前連結会計年度の数値をIFRSに組み替えて比較分析を行っております。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

当社グループは、「未来のソフトウエアを形にする」というミッションのもと、自然言語処理、画像認識、機械学習/深層学習技術を用いたアルゴリズムの研究開発、ソリューション提供、プロダクトの拡販による社会実装を進めております。

AI Research & Solution事業では、アルゴリズム・知能化技術の事業化を行っており、パートナー企業のニーズに合わせて共同研究開発からソリューションの提供までを一気通貫で実施しております。また、実オペレーションを通じた製品/サービス開発の一環で、IoT機器からリアル空間のデータをクラウド上に収集し顧客への価値提供を実現するサービスの開発を、モビリティ事業(駐車場機器の製造販売事業)を通じて行っております。

AI SaaS事業では、AI Research & Solution事業におけるアルゴリズムの開発成果をもとに、汎用的なニーズに対応するプロダクトを販売しております。企業における「顧客接点」及び「社内業務」領域向けにソフトウエアプロダクトを提供することで、人の業務を効率化し能力を拡張していく形で、ビジネス支援や企業の課題解決を実現しております。

当連結会計年度は、深刻化する人材不足とAIの技術進化による顧客ニーズの高まりを背景に、顧客基盤の拡大、及びAI Research & Solution事業とAI SaaS事業の両輪での事業拡張を目指す成長戦略のもと、当社内の事業間連携の強化及び顧客への未来提案を推進してきた結果、AI Research & Solution事業におけるソリューション案件数、並びにAI SaaS事業におけるプロダクトの導入社数及び年間経常収益の積み上げを着実に実現しております。また、今後の成長に向けて優秀な人材の採用を進めるとともに、ソフトウエアプロダクトの強化や研究開発などの先行投資に注力してまいりました。さらに、当連結会計年度において、人事ソリューションを提供する株式会社トライアンフ(以下「トライアンフ」という。)を子会社化いたしました。トライアンフの有する人事領域の専門性と当社AI技術を活用したソリューションの高度化、AI SaaSの人事領域における機能拡張等を通じて、当社グループの事業規模を一層拡大させてまいります。

この結果、当連結会計年度の売上収益は16,893,185千円(前年度比21.5%増)となりました。これは主に、AI Research & Solution事業におけるソリューション案件の獲得とAI SaaS事業におけるプロダクトの販売が拡大したこと、及びトライアンフが連結業績に寄与したことによるものであります。また、モビリティ事業につきましても前年度比で堅調に推移しております。

事業利益は3,148,895千円(前年度比266.7%増)となりました。これは主に売上収益が増加したことに加えて、第2四半期会計期間において、過年度に計上した信託型ストックオプション関連損失について、支払実務の進捗に伴う金額精緻化により差益(342,631千円)が発生したことによるものであります。

税引前当期利益は3,343,266千円(前年度比842.7%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は2,100,104千円(前年同期は4,711千円)となりました。これは事業利益の増加に加えて、持分法による投資損益及び投資有価証券運用損益が改善したこと等によるものであります。

なお、前年同期において、特殊要因として信託型ストックオプション関連損失(事業利益段階:1,083,800千円、その他の費用:361,888千円)が計上されております。

 

 セグメント別の経営成績は次のとおりであります。

 
(AI Research & Solution事業)
 AI Research & Solution事業につきましては、生成AIの出現に伴って当社の強みである自然言語処理技術の適応範囲が拡張しており、パートナー企業からのニーズに対応したアルゴリズムソフトウエアの研究開発やソリューション案件が継続して増えていることから、売上は堅調に推移いたしました。また、モビリティ事業において、顧客である駐車場運営会社の新規駐車場開設への投資意欲が改善しており、前年度比で駐車場機器の販売が増加しているとともに、子会社化したトライアンフも連結業績へ寄与しております。

 この結果、売上収益は10,008,806千円(前年度比27.7%増)、セグメント利益は1,956,217千円(前年度比262.7%増)となりました。

 
(AI SaaS事業)
 AI SaaS事業につきましては、AI SaaSの導入による業務の高度化・自動化を進めるニーズが拡大している環境の中で、自動応答エンジンを中心にAI SaaSの新規受注とライセンスの積み上げを進めてまいりました。AI SaaS事業下にある連結子会社間及び事業間での連携を推進し、新規顧客の獲得及び既存顧客への相互送客等を通じて売上並びに利益の成長に繋げております。

 この結果、売上収益は7,031,959千円(前年度比15.8%増)、セグメント利益は2,495,122千円(前年度比50.6%増)となりました。

 

② 財政状態の状況

資産の状況

当連結会計年度末における資産合計は41,696,338千円となり、前連結会計年度末に比べ2,821,664千円増加いたしました。主な増加要因は、のれんが1,528,532千円、その他の金融資産が1,435,427千円増加したことによるものであります。

 

負債の状況

当連結会計年度末における負債合計は9,363,281千円となり、前連結会計年度末に比べ57,184千円減少いたしました。主な減少要因は、借入金(非流動)が408,930千円、借入金(流動)が257,660千円、契約負債が161,808千円、繰延税金負債が116,948千円増加したものの、営業債務及びその他の債務が1,023,919千円減少したことによるものであります。

 

資本の状況

当連結会計年度末における資本合計は32,333,057千円となり、前連結会計年度末に比べ2,878,848千円増加いたしました。主な増加要因は、利益剰余金が2,099,840千円、資本剰余金が550,989千円増加したことによるものであります。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は15,265,932千円(売却目的で保有する資産へ220,228千円振替後)となり、前連結会計年度末に比べ246,748千円減少いたしました。
 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動による資金の増加は3,013,338千円(前年同期は3,084,975千円の増加)となりました。主な増加要因は税引前当期利益3,343,266千円、減価償却費及び償却費1,701,300千円、主な減少要因は法人所得税の支払額1,441,064千円、営業債務及びその他の債務の減少額983,572千円であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動による資金の減少は3,077,715千円(前年同期は2,927,364千円の増加)となりました。主な減少要因は子会社の取得による支出1,320,924千円、その他の金融資産の取得による支出1,187,660千円、無形資産の取得による支出609,545千円であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動による資金の増加は37,857千円(前年同期は2,995,282千円の減少)となりました。主な増加要因は借入れによる収入1,800,000千円、主な減少要因は借入金の返済による支出933,410千円、リース負債の返済による支出712,436千円であります。

 

(資本の財源及び資金の流動性について)

当社グループの資金需要のうち主なものは、当社グループの成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金であります。これらの資金需要に対して当社グループでは、主として手元の資金及び金融機関からの借入金によって資金を確保しております。
 

 ④ 生産、受注及び販売の状況

a. 生産実績

生産実績においては、当社グループの業務形態上、重要性が乏しいため記載を省略しております。

 

b. 受注実績

提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

c. 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

AI Research & Solution事業

9,929,718

26.7

AI SaaS事業

6,963,467

14.7

合計

16,893,185

21.5

 

(注)セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

 ① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づいて作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については「第5 経理の状況」に記載のとおりであります。

また、連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (5) 重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 売上収益

当連結会計年度の売上収益は、16,893,185千円となりました。これは主に、新規案件の獲得及びアルゴリズムライセンスの積み上げ、各種プロダクトの拡販が進んだこと、及びトライアンフが連結業績に寄与したことによるものであります。

 

b. 売上原価、売上総利益

当連結会計年度の売上原価は、8,361,553千円となりました。これは主に、事業規模拡大に伴う人員増加により人件費・外注費等が増加したことによるものであります。
 以上の結果、当連結会計年度の売上総利益は、8,531,631千円となりました。

 

c. 販売費及び一般管理費、事業利益

当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、5,382,736千円となりました。これは主に、事業規模拡大に伴う人員増加により人件費・採用教育費等が増加したことによるものであります。
 以上の結果、当連結会計年度の事業利益は、3,148,895千円となりました。

 

d. その他の損益、営業利益

当連結会計年度のその他の収益は、119,067千円となりました。これは主に、信託型ストックオプション関連損失戻入益によるものであります。一方で、その他の費用は、32,268千円となりました。これは主に、支払手数料によるものであります。
 以上の結果、当連結会計年度の営業利益は、3,235,694千円となりました。

 

e. 金融損益、持分法投資損益、親会社の所有者に帰属する当期利益

当連結会計年度の金融収益は、122,714千円となりました。これは主に、純損益を通じて公正価値で測定する金融資産の評価益によるものであります。一方で、金融費用は、38,827千円となりました。これは主に、支払利息によるものであります。また、23,685千円の持分法による投資利益を計上しております。
 以上の結果、当連結会計年度の税引前当期利益は、3,343,266千円となり、法人所得税費用1,240,558千円を計上したこと等により、親会社の所有者に帰属する当期利益は、2,100,104千円となりました。

 

 ③ キャッシュ・フローの状況

各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要」をご参照ください。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループの将来の財政状態及び経営成績に重要な影響を与えるリスク要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

 

(3) 並行開示情報

「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(第7章及び第8章を除く。以下「日本基準」という。)により作成した要約連結財務諸表、要約連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更は、次のとおりであります。

なお、日本基準により作成した要約連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けておりません。

また、日本基準により作成した要約連結財務諸表については、千円未満を切り捨てて記載しております。

 

① 要約連結貸借対照表

 

 

(単位:千円)

 

前連結会計年度

(2023年9月30日)

当連結会計年度

(2024年9月30日)

資産の部

 

 

 流動資産

19,215,561

19,533,284

 固定資産

 

 

  有形固定資産

1,371,518

1,443,771

  無形固定資産

11,453,384

12,318,616

  投資その他の資産

4,846,526

5,041,541

  固定資産合計

17,671,429

18,803,929

 資産合計

36,886,991

38,337,213

負債の部

 

 

 流動負債

5,069,969

4,200,677

 固定負債

3,002,598

3,468,238

 負債合計

8,072,568

7,668,915

純資産の部

 

 

 株主資本

28,644,637

30,388,823

 その他の包括利益累計額

46,100

67,491

 新株予約権

91

24,066

 非支配株主持分

123,593

187,916

 純資産合計

28,814,423

30,668,298

負債純資産合計

36,886,991

38,337,213

 

 

 

② 要約連結損益計算書及び要約連結包括利益計算書

要約連結損益計算書

 

 

(単位:千円)

 

前連結会計年度

(自 2022年10月1日

至 2023年9月30日)

当連結会計年度

(自 2023年10月1日

至 2024年9月30日)

売上高

13,908,918

16,893,185

売上原価

6,984,298

8,523,403

売上総利益

6,924,619

8,369,781

販売費及び一般管理費

5,205,129

6,121,045

営業利益

1,719,489

2,248,736

営業外収益

171,962

58,355

営業外費用

66,878

370,594

経常利益

1,824,574

1,936,497

特別利益

1,626,998

438,627

特別損失

1,545,442

17,814

税金等調整前当期純利益

1,906,129

2,357,310

法人税等

1,119,052

1,197,856

当期純利益

787,076

1,159,453

非支配株主に帰属する当期純利益

26,625

10,800

親会社株主に帰属する当期純利益

760,451

1,148,652

 

 

要約連結包括利益計算書

 

 

(単位:千円)

 

前連結会計年度

(自 2022年10月1日

至 2023年9月30日)

当連結会計年度

(自 2023年10月1日

至 2024年9月30日)

当期純利益

787,076

1,159,453

 その他の包括利益合計

△549,197

21,391

包括利益

237,879

1,180,844

(内訳)

 

 

 親会社株主に係る包括利益

211,253

1,170,043

 非支配株主に係る包括利益

26,625

10,800

 

 

③ 要約連結株主資本等変動計算書

前連結会計年度(自 2022年10月1日 至 2023年9月30日)

 

(単位:千円)

 

株主資本

その他の
包括利益累計額

新株予約権

非支配株主持分

純資産合計

当期首残高

28,256,520

595,297

1,462

402,540

29,255,820

当期変動額

388,117

△549,197

△1,370

△278,946

△441,397

当期末残高

28,644,637

46,100

91

123,593

28,814,423

 

 

当連結会計年度(自 2023年10月1日 至 2024年9月30日)

 

(単位:千円)

 

株主資本

その他の
包括利益累計額

新株予約権

非支配株主持分

純資産合計

当期首残高

28,644,637

46,100

91

123,593

28,814,423

当期変動額

1,744,185

21,391

23,975

64,322

1,853,875

当期末残高

30,388,823

67,491

24,066

187,916

30,668,298

 

 

 

④ 要約連結キャッシュ・フロー計算書

 

 

(単位:千円)

 

前連結会計年度

(自 2022年10月1日

至 2023年9月30日)

当連結会計年度

(自 2023年10月1日

至 2024年9月30日)

営業活動によるキャッシュ・フロー

2,390,898

2,300,902

投資活動によるキャッシュ・フロー

1,719,624

△3,077,715

財務活動によるキャッシュ・フロー

△1,093,465

750,293

現金及び現金同等物の増減額(△は減少)

3,017,057

△26,520

現金及び現金同等物の期首残高

12,495,623

15,512,681

現金及び現金同等物の期末残高

15,512,681

15,486,161

 

 

⑤ 要約連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更

前連結会計年度(自 2022年10月1日 至 2023年9月30日)

(持分法適用の範囲の変更)

PKSHAアルゴリズム2号投資事業有限責任組合、PKSHAアルゴリズム2号有限責任事業組合及び株式会社Mellowは、株式又は出資持分の取得に伴い、当連結会計年度より持分法の適用範囲に含めております。

 

(会計方針の変更)

(時価の算定に関する会計基準の適用指針の適用)

「時価の算定に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第31号 2021年6月17日。以下「時価算定会計基準適用指針」という。)を当連結会計年度の期首から適用し、時価算定会計基準適用指針第27-2項に定める経過的な取扱いに従って、時価算定会計基準適用指針が定める新たな会計方針を将来にわたって適用することとしております。これによる連結財務諸表に与える影響はありません。

 

当連結会計年度(自 2023年10月1日 至 2024年9月30日)

(連結範囲の変更)

当連結会計年度より、株式の取得に伴い、株式会社トライアンフ他1社を連結の範囲に含めております。

 

(持分法適用の範囲の変更)

当連結会計年度において、会社清算に伴い、関連会社1社を持分法の適用範囲から除外しております。また、当連結会計年度において、株式の取得に伴い、関連会社1社を持分法の適用範囲に含めております。

 

 

(4) 経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報

前連結会計年度(自 2022年10月1日 至 2023年9月30日)

「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記」の「37.初度適用」をご参照ください。

 

当連結会計年度(自 2023年10月1日 至 2024年9月30日)

(のれんの償却)

日本基準では合理的に見積られたのれんの効果が及ぶ期間にわたって定額法により償却しておりましたが、IFRSでは償却せずに毎期減損テストを行っております。

この結果、IFRSでは日本基準に比べて、連結損益計算書の「販売費及び一般管理費」が580,189千円減少しております。

 

 (持分法で会計処理されている投資)

持分法適用被投資企業の純損益及びその他の包括利益の金額に、日本基準とIFRSでは相違があります。また、持分法で会計処理されている投資に関連するのれん相当額については、日本基準では効果が発現すると合理的に見積られる期間にわたって規則的に償却しておりましたが、IFRSでは償却せず、のれん相当額を含む投資全体の減損テストを実施しております。さらに、持分法で会計処理される対象の範囲が日本基準とIFRSで一部異なっております。

この結果、IFRSでは日本基準に比べて、連結損益計算書の持分法による投資利益が311,628千円増加しております。

 

(未払有給休暇)

日本基準では未払有給休暇を計上しておりませんでしたが、IFRSでは負債計上し、その他の流動負債に含めております。

この結果、IFRSでは日本基準に比べて、連結財政状態計算書の流動負債が408,999千円、連結損益計算書の「売上原価」が27,254千円それぞれ増加し、「販売費及び一般管理費」が1,336千円減少しております。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、「未来のソフトウエアを形にする」ことを目指し、自然言語処理、音声認識、画像認識、機械学習/深層学習等の技術を用いた新たなアルゴリズム及びソフトウエアの研究開発に取り組んでおります。
 社内体制は、東京大学や東北大学の助教を経験していたメンバーを始め、アカデミック領域において高い専門性を有するメンバーを中心に研究開発を行っております。

当連結会計年度における当社グループの研究開発活動の金額は149,700千円であり、特にAI Research & Solution事業関連では、大量文章を参照し質問に応じた適切な回答文章を生成する技術や、より人間らしい対話応答を実現する技術、そして車両番号認証機械用カメラの試験等の研究開発を行っております。