第一部 【企業情報】

 

第1 【企業の概況】

 

1 【主要な経営指標等の推移】

(1) 連結経営指標等

 

回次

国際会計基準

移行日

第11期

第12期

決算年月

2022年10月1日

2023年9月

2024年9月

売上収益

(千円)

13,908,918

16,893,185

税引前当期利益

(千円)

354,662

3,343,266

親会社の所有者に帰属
する当期利益

(千円)

4,711

2,100,104

親会社の所有者に帰属
する包括利益

(千円)

489,736

2,230,360

親会社の所有者に帰属
する持分

(千円)

28,559,813

29,422,752

32,245,476

総資産額

(千円)

38,492,999

38,874,674

41,696,338

1株当たり親会社
所有者帰属持分

(円)

933.27

951.91

1,040.29

基本的1株当たり
当期利益

(円)

0.15

67.78

希薄化後1株当たり
当期利益

(円)

0.15

67.61

親会社所有者帰属持分
比率

(%)

74.2

75.7

77.3

親会社所有者帰属持分
利益率

(%)

0.0

6.8

株価収益率

(倍)

17,686.6

49.9

営業活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

3,084,975

3,013,338

投資活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

2,927,364

3,077,715

財務活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

2,995,282

37,857

現金及び現金同等物
の期末残高

(千円)

12,495,623

15,512,681

15,265,932

従業員数

(名)

419

465

683

[外、平均臨時
雇用者数]

[16]

[40]

[112]

 

(注)

1.

第12期より国際会計基準(以下「IFRS」という。)に基づいて連結財務諸表を作成しております。

 

2.

当社は従業員等へのインセンティブプランとして信託を通じて自社の株式を交付する株式報酬制度を導入しております。第11期以降の1株当たり情報の算定に用いられた期末発行済株式数及び期中平均株式数からは、本制度により信託が所有する当社株式の数を控除しております。

 

 

 

回次

日本基準

第8期

第9期

第10期

第11期

第12期

決算年月

2020年9月

2021年9月

2022年9月

2023年9月

2024年9月

売上高

(千円)

7,393,669

8,727,071

11,509,927

13,908,918

16,893,185

経常利益

(千円)

602,973

572,337

1,551,423

1,824,574

1,936,497

親会社株主に帰属する
当期純利益

(千円)

1,753,805

139,431

836,612

760,451

1,148,652

包括利益

(千円)

1,713,153

1,131,369

528,854

237,879

1,180,844

純資産額

(千円)

27,439,040

28,717,432

29,255,820

28,814,423

30,668,298

総資産額

(千円)

31,904,686

35,975,078

35,799,405

36,886,991

38,337,213

1株当たり純資産額

(円)

904.93

930.75

942.81

927.41

982.56

1株当たり当期純利益

(円)

57.79

4.58

27.38

24.82

37.07

潜在株式調整後

1株当たり当期純利益

(円)

55.19

4.41

26.57

24.39

36.98

自己資本比率

(%)

86.0

78.8

80.6

77.8

79.4

自己資本利益率

(%)

6.5

0.5

2.9

2.6

3.9

株価収益率

(倍)

47.2

418.8

68.7

109.6

91.3

営業活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

661,313

168,230

2,695,397

2,390,898

2,300,902

投資活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

1,969,487

13,476,394

2,323,050

1,719,624

3,077,715

財務活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

1,108,714

1,975,819

681,453

1,093,465

750,293

現金及び現金同等物
の期末残高

(千円)

24,137,073

12,804,730

12,495,623

15,512,681

15,486,161

従業員数

(名)

240

363

419

465

683

[外、平均臨時
雇用者数]

[―]

[―]

[16]

[40]

[112]

 

(注)

1.

第12期の諸数値につきましては、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けておりません。

 

2.

第10期の第3四半期連結会計期間において、企業結合に係る暫定的な会計処理の確定を行っており、第9期に係る各数値については、暫定的な会計処理の確定による取得原価の当初配分額の見直しが反映された後の金額によっております。

 

3.

「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第10期の期首から適用しており、第10期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

 

4.

当社は従業員等へのインセンティブプランとして信託を通じて自社の株式を交付する株式報酬制度を導入しております。第11期以降の1株当たり情報の算定に用いられた期末発行済株式数及び期中平均株式数からは、本制度により信託が所有する当社株式の数を控除しております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(2) 提出会社の経営指標等

 

回次

第8期

第9期

第10期

第11期

第12期

決算年月

2020年9月

2021年9月

2022年9月

2023年9月

2024年9月

売上高

(千円)

1,655,367

1,614,175

1,710,408

2,260,816

3,328,288

経常利益

(千円)

354,607

455,282

327,117

339,121

748,315

当期純利益又は当期純損失(△)

(千円)

1,658,831

274,459

86,270

144,835

697,533

資本金

(千円)

18,962

38,945

49,295

10,000

10,000

発行済株式総数

(株)

30,679,400

30,966,600

31,104,000

31,948,000

31,948,000

純資産額

(千円)

27,020,587

27,790,345

27,543,609

26,719,405

27,672,616

総資産額

(千円)

28,225,580

28,204,970

27,889,250

28,823,244

28,444,633

1株当たり純資産額

(円)

891.13

912.16

900.02

863.69

892.00

1株当たり配当額
(うち1株当たり中間
配当額)

(円)

(―)

(―)

(―)

(―)

(―)

1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失(△)

(円)

54.66

9.01

2.82

4.73

22.51

潜在株式調整後
1株当たり当期純利益

(円)

52.20

8.68

2.74

22.45

自己資本比率

(%)

95.7

98.5

98.8

92.7

97.2

自己資本利益率

(%)

6.2

1.0

0.3

2.6

株価収益率

(倍)

49.9

212.8

666.6

150.4

配当性向

(%)

従業員数
[外、平均臨時

雇用者数〕

(名)

64

78

88

110

120

[―]

[―]

[―]

[―]

[―]

株主総利回り

(比較指標:配当込みTOPIX)

(%)

(%)

58.25

(104.87)

40.96

(133.73)

40.21

(124.19)

58.12

(161.20)

72.33

(187.92)

最高株価

(円)

4,610

3,995

2,821

3,410

6,720

最低株価

(円)

1,346

1,670

1,691

1,583

2,345

 

(注) 1.1株当たり配当額及び配当性向については配当を実施しておりませんので、記載しておりません。

2.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第10期の期首から適用しており、第10期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

3.最高株価及び最低株価は2022年4月4日付の東京証券取引所の市場区分の見直しに伴い、同日以降は東京証券取引所(グロース市場市場)におけるものであり、2022年9月22日以降の株価につきましては、東京証券取引所(スタンダード市場)におけるものであります。また、2024年9月27日以降の株価につきましては、東京証券取引所(プライム市場)におけるものであります。それ以前は東京証券取引所(マザーズ)におけるものであります。

4.当社は従業員等へのインセンティブプランとして信託を通じて自社の株式を交付する株式報酬制度を導入しております。第11期以降の1株当たり情報の算定に用いられた期末発行済株式数及び期中平均株式数からは、本制度により信託が所有する当社株式の数を控除しております。

5.第11期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、1株当たり当期純損失であるため記載しておりません。

6.第11期の自己資本利益率及び株価収益率については、当期純損失であるため記載しておりません。

 

2 【沿革】

 

2012年10月

東京都新宿区に機械学習技術を用いたデータ解析事業を事業目的とした、株式会社AppResearch(資本金1,000千円)を設立

2013年2月

アルゴリズムモジュール(注1)「予測モジュール<Predictor>」を開発

2013年6月

本店所在地を東京都文京区本郷七丁目「東京大学産学連携プラザ」に移転

2013年11月

アルゴリズムモジュール「強化学習モジュール<Reinforcer>」を開発

2014年2月

本店所在地を東京都文京区本郷七丁目「東京大学アントレプレナープラザ」に移転

2014年3月

アルゴリズムモジュール「推薦モジュール<Recommender>」を開発

2014年8月

株式会社AppResearchから株式会社PKSHA Technologyに商号変更

2014年12月

アルゴリズムモジュール「異常検知モジュール<Detector>」を開発

2014年12月

アルゴリズムモジュール「テキスト理解モジュール<Dialogue_1>」を開発

2015年3月

アルゴリズムモジュール「画像/映像解析モジュール<Recognizer>」を開発

2015年10月

アルゴリズムモジュール「対話モジュール<Dialogue_2>」を開発

2015年10月

CRM領域のアルゴリズムソフトウエア(注2)「CELLOR(セラー)」をリリース

2016年10月

カスタマーサポート領域のアルゴリズムソフトウエア「BEDORE(ベドア)」をリリース

2016年10月

BERODE事業(自然言語処理技術を用いたカスタマーサポートソリューション)を会社分割により子会社化。東京都文京区本郷二丁目に株式会社BEDORE設立(現 連結子会社)

2016年12月

動画像認識領域のアルゴリズムソフトウエア「HRUS(ホルス)」(注3)をリリース

2016年12月

業務拡張のため、本社を東京都文京区本郷二丁目「本郷瀬川ビル」に移転

2017年9月

東京証券取引所マザーズ市場に株式を上場

2018年7月

株式会社Sapeetの株式を取得し子会社化(注5)

2019年7月

株式会社アイテック(注4)の全株式を取得し子会社化

2021年5月

株式会社アシリレラの株式を取得し子会社化

2021年6月

株式会社PRAZNAの全株式を取得し子会社化

2022年4月

子会社である株式会社BEDORE、株式会社PRAZNAをそれぞれ株式会社PKSHA Workplace、株式会社PKSHA Communicationに商号変更

2022年9月

東京証券取引所スタンダード市場に上場市場を変更

2023年1月

子会社である株式会社アシリレラを株式会社PKSHA Associatesに商号変更

2024年5月

株式会社トライアンフの株式を取得し子会社化

2024年9月

東京証券取引所プライム市場に上場市場を変更

 

(注1)「アルゴリズム」とは、コンピューター上における課題解決の手順・解き方をいい、「モジュール」とは、汎用性の高い複数のプログラムを再利用可能な形でひとまとまりにしたものであり、ソフトウエアを構成する個々の構成要素(機能ごとのプログラムのまとまり)をいいます。当社において「アルゴリズムモジュールとは、アルゴリズムを再利用可能な形でプログラムとしてひとまとまりにしたものと定義しております。

(注2)アルゴリズムモジュールを用いて構築されたソフトウエアを指します。

 

(注3)2018年10月に「PKSHA Vertical Vision(パークシャヴァーティカルビジョン)」から「HRUS(ホルス)」へと改称しております。

(注4)株式会社アイドラを含むグループ3社は、2020年1月1日付けで株式会社アイドラ及び昭立工業株式会社を消滅会社、株式会社アイテックを存続会社とする吸収合併を行っております。

(注5)株式会社Sapeetは、2024年10月29日付けで東京証券取引所グロース市場へと上場したことに伴い、連結子会社から持分法適用関連会社となっております。

 

3 【事業の内容】

当社グループ(当社、子会社13社、関連会社及び共同支配企業8社を中心に構成)は、「未来のソフトウエアを形にする」をコーポレートミッションに掲げ、社内で開発したアルゴリズムモジュールを用いて、様々な社会課題を解決し社会へ付加価値を提供すべく、さまざまな事業に取り組んでおります。
 技術分野としては、主に自然言語処理、音声認識、画像認識、機械学習/深層学習を中心にアルゴリズムモジュールを複数開発しております。アルゴリズムモジュールは、様々なソフトウエア及びハードウエア上に組み込まれ、動作いたします。当社グループは、それらの研究開発、ソリューション提供及びソフトウエアプロダクトの拡販を通じて、顧客企業の業務の自動化・半自動化を通じた業務効率化、又はサービス・製品の付加価値の向上、サービス自体のモデル革新の実現支援等を行っております。
 当社グループは、AI Research & Solution事業、AI SaaS事業から構成されており、セグメント情報はこれらの区分により開示されております。

 

(1)AI Research & Solution事業

アルゴリズム・知能化技術の事業化を行っており、パートナー企業のニーズに合わせて共同研究開発からソリューションの提供までを一気通貫で実施しております。また、連結子会社である株式会社アイテックでは、実オペレーションを通じた製品/サービス開発の一環で、IoT機器からリアル空間のデータをクラウド上に収集し顧客への価値提供を実現するサービスの開発を、駐車場機器の製造販売事業を通じて行っております。さらに、当連結会計年度において子会社化いたしました株式会社トライアンフでは、当社AI技術も活用しながら顧客企業の人事領域における戦略立案から実行までをワンストップで支援する、幅広いソリューションを提供しております。
 

(2)AI SaaS事業

AI Research & Solution事業におけるアルゴリズムの開発成果をもとに、汎用的なニーズに対応するソフトウエアプロダクトを販売しております。当事業は株式会社PKSHA Workplace、株式会社PKSHA Communication、株式会社PKSHA Associates(旧社名 株式会社アシリレラ)の3社で構成されており、自動応答エンジン「PKSHA Chatbot」や「PKSHA Voicebot」、FAQシステム「PKSHA FAQ」、RPAソフトなどのプロダクト群を展開しております。企業における「顧客接点」及び「社内業務」領域向けにソフトウエアプロダクトを提供することで、労働力不足を背景とした業務の自動化/高度化ニーズの高まりの中、人の業務を効率化し能力を拡張していく形で、ビジネス支援や課題解決のサポートをしております。

 

[アルゴリズムモジュールの内容と販売形態]

(1) 当社グループが提供するアルゴリズムモジュールについて

当社グループは技術分野としては、機械学習技術・自然言語処理技術・深層学習技術を中心にアルゴリズムモジュールを複数開発しております。当社の主なアルゴリズムモジュールは、以下のとおりであります。

アルゴリズムモジュール名

機能

利用用途(例)

テキスト理解モジュール

<Dialogue_1>

テキストデータの意味理解

例:テキスト内容を理解、テキストを 

    分類・類型化

社内文書からの特定文書の抽出

コールセンターログの分析・見える化

対話モジュール

<Dialogue_2>

自然言語処理技術での対話・応答の制御

例:最適な対話シナリオを選択、音声

    認識への拡張も可能

チャット上の自動対話

ロボットとの自動対話

画像/映像解析モジュール

<Recognizer>

画像・映像データ内の物体認識

例:カメラ等のイメージングデバイス

    の知能化技術

店頭カメラの自動認識機能

推薦モジュール

<Recommender>

レコメンデーションによる情報出しわけ

例:ユーザーの好みに合わせてコンテ

    ンツを推薦

ECサイト上の商品推薦

ウエブサイト上の情報推薦

予測モジュール

<Predictor>

時系列情報に対して未来予測を行う

例:過去の行動履歴からの行動予測

ECサイトのユーザーの購買予測

金融機関での与信スコアの構築

異常検知モジュール

<Detector>

異常値の検知

例:機器の故障検知、不適切コンテン

    ツの検知

工場の検品処理の自動化・半自動化

強化学習モジュール

<Reinforcer>

行動履歴から学習を行う

例:行動履歴を解析し行動を選択する

顧客シナリオの自動・半自動選択

行動選択の自動・半自動化

 

アルゴリズムモジュールの販売形態は、AI Research & Solution事業では、主に顧客企業が保有するソフトウエアもしくはハードウエアに組み込む形態、AI SaaS事業では、自社のソフトウエアに組み込みアルゴリズムソフトウエアとして販売する形態となっております。なお、収益構造は、いずれの場合でも同様に初期設定時に受領するイニシャルフィーと、設定後月額で受領するライセンスフィーの2つから構成されておりますが、AI Research & Solution事業では、当社グループのアルゴリズムモジュールを組み合わせたカスタマイズ開発を経て、アルゴリズムモジュールの利用が開始され、業務の一部に組み込まれることとなります。

 

(2) 当社グループが提供するアルゴリズムソフトウエアについて

当社グループはアルゴリズムモジュールを活用した複数のアルゴリズムソフトウエアを開発しており、各業界に付加価値を創造するために、AI SaaS事業では、アルゴリズムソフトウエアの販売という形態でサービス提供を行っております。なお、当社グループの代表的なソフトウエアは次のとおりであります。

 

「顧客接点」領域

 ユーザーから入力されたテキスト及び音声を認識し、当社グループが保有する業界固有表現辞書(日本語)と、システム構成を業界別に汎用的にすることで、これまで人手で行われていた接客・コールセンター・FAQ対応の自動化・半自動化を実現しております。製品としては連結子会社の株式会社PKSHA Communicationが提供する自動応答エンジン「PKSHA Chatbot」や「PKSHA Voicebot」、FAQシステム「PKSHA FAQ」などがあります。

 

② 「社内業務」領域

 業務関連の質問として入力されたテキスト及び音声を当社システムにて認識し、自動で回答することで、社内業務の効率化/高度化を実現します。さらには業務部門に特化した自動化ソフトウエアを提供することで、ビジネスプロセスの自動化や生産性向上を実現します。製品としては連結子会社の株式会社PKSHA Workplaceが提供する自動応答エンジン「PKSHA Chatbot」や 同じく連結子会社の株式会社PKSHA Associatesが提供するRPAソリューションなどがあります。

 

 

 

(3) アルゴリズムモジュールの技術的な特徴

当社グループがアルゴリズム開発に用いる機械学習技術について、特徴を以下のとおりご説明いたします。

機械学習技術とは、データを蓄積・活用しアルゴリズムの性能を向上させる技法のことであり、デジタルデータが急増している情報化社会において重要性が急速に高まっております。これまで、ソフトウエアはソフトウエア技術者が一行一行プログラミングを行うことにより作られるのが一般的でしたが、機械学習技術を用いると、データを活用して人が記述することが困難な複雑なソフトウエアプログラムをコンピューターにより自動的に記述することができます。

特に、画像認識、言語解析、音声認識などの人工知能技術分野のソフトウエアは、ソフトウエア技術者がプログラミングを行うことで地道に精度向上を図ってきた長い歴史がありますが、2012年に機械学習技術の研究分野で起こった技術革新以降、ソフトウエア技術者はアルゴリズムの大枠のみを記述すればよく、後は大規模なデータをソフトウエアに入力し学習させることで多くの変数の値が最適化されていくことを通じ、アルゴリズムの大部分をコンピューターにより自動的に記述することが可能になりました。また、このような手法で構築されるアルゴリズムは、旧来的な手法で構築されていたアルゴリズムよりも大幅に精度向上することがわかっており、近年様々な領域で研究と産業応用が進んでおります。

 

 [一般的なアルゴリズムと機械学習アルゴリズムの違い]


 

 

このように、機械学習技術とは、ソフトウエア技術者により一行一行全て記述される一般的なアルゴリズムとは異なり、データを集め、それを学習させることでパラメータ調整を行い、ソフトウエアを構築する技法になります。従って、よい機械学習アルゴリズムを開発するには、目的に沿ったデータを集めることが重要であり、また使えば使うほど(データが増加すればするほど)精度が向上していくという好循環構造を持ちます。当社グループはこの技術特性を正しく理解し、事業成長に効率的につながる事業展開の戦略・戦術を採用していくことを目指しております。

また、当社グループが開発しているアルゴリズムには自然言語処理技術や深層学習技術を用いたものもあります。自然言語処理技術とは、人間が日常的に使っている自然言語をコンピューターに処理させる一連の技術を指しますが、当社グループでは特に、機械学習技術を用いたアプローチを採用しており、自然言語を対象に機械学習技術を用いたアルゴリズムを事業対象としております。深層学習技術とは、機械学習技術の一分野であり多層のニューラルネットワークを用いた機械学習手法であり様々な分野でのアルゴリズムの精度が向上し、多様な分野で活用が進んでおります。この領域も当社グループは重要な技術領域と捉え技術開発・研究開発・製品化を進めております。

 

(4)事業の特徴

当社グループ事業の主な特徴としては、以下のとおりであります。

 

① パートナーシップ戦略:業界のリーディングカンパニーとの事業提携

当社グループが提供するアルゴリズムソフトウエアは、データを繰り返し学習しながらより自ら精度を高めていくソフトウエアであります。業界最大規模の教師データを持つ業界のリーディングカンパニーとの連携により、当該業界におけるソフトウエアを開発しております。それらの研究開発の中から、汎用性のある技術やノウハウをモジュール化し、ソフトウエアを開発し提供することに当社グループの強みがあり、当社グループの特徴があります。

 

② アルゴリズムソフトウエアならではの高い継続率

アルゴリズムソフトウエアはユーザーが使うとデータがアルゴリズムにフィードバックされ、アルゴリズムの精度が向上するという特徴を持ちます。その好循環のデータの流れがプロダクトの品質を高めるため、一般的なソフトウエアに比べ、高い継続利用率を維持することが可能となっております。

 

③ SaaSモデルとしての高い収益率

当社グループは、前述のとおり、複数のアルゴリズムソフトウエアを開発し、当ソフトウエアを主に月額課金の形態にて提供しております。解約率が低いことから、新規ユーザーの増加に従い収益がストック型で逓増するモデルとなっており、高い収益率を維持しております。

 

④ エンジニア・研究者の獲得・育成

機械学習技術/深層学習技術領域のアルゴリズム構築技術を有するアルゴリズムエンジニアや、莫大なトラフィックを捌くことができるソフトウエアエンジニアは、国内において多くないと考えております。当社グループの事業においては、エンジニア・研究者コミュニティへのアクセスをもとに、大多数を社員紹介によるリファラル採用を実現しております。また、エンジニアの働きやすい、また働きたい環境を整えることを通じて、エンジニアの獲得・育成を行っております。

 

⑤ 組織構造等

当社グループは、各業界が持つ自動化や高品質化のニーズに対するソリューションを、アルゴリズムモジュールの機能を「組み合わせる」ことで効果的・効率的に実現することを目指しており、そのために必要なアルゴリズムモジュール群を保有していること、及びエンジニア中心の組織構造を構築していることが、当社事業の独自性であると認識しております。

 

<事業系統図>

 


 

 用語解説

 本項「3 事業の内容」において使用しております用語の定義について以下に記します。

 

用語

用語の定義

アルゴリズム

コンピューター上における問題を解くための手順・解き方

モジュール

汎用性の高い複数のプログラムを再利用可能な形でひとまとまりにしたもの

アルゴリズムモジュール

アルゴリズムを再利用可能な形でプログラムとしてひとまとまりにしたもの

アルゴリズムソフトウエア

アルゴリズムモジュールを用いて構築されたソフトウエア

機械学習技術

人工知能技術の主要な研究分野。データを反復的に学習させ、そこに潜むパターンを見つけ出すことで、コンピューター自身が予測・判断を行うための技術・手法

自然言語処理技術

人間が日常的に使っている自然言語をコンピューターに処理させる一連の技術

ニューラルネットワーク

生物の神経ネットワークの構造と機能を模倣するという観点から生まれた、脳機能に見られるいくつかの特性を計算機上のシミュレーションによって表現することを目指した数学モデル

深層学習技術

ディープラーニング(Deep Learning、深層学習)。ニューラルネットワークにより機械学習技術を実装するための手法の一種。従来の機械学習技術では、教師データの特徴をどう数値化するかを人間が定義する必要があったが、ディープラーニングではアルゴリズムによって教師データの特徴を数値化できるため、複雑な特徴を表現することが可能

教師データ

機械学習を行う上で学習の元となるデータ

CRM

顧客関係管理(Customer Relationship Management(CRM))。顧客満足度と顧客ロイヤルティの向上を通して、売上の拡大と収益性の向上を目指す経営戦略/手法

AI

Artificial Intelligenceの略称。学習・推論・認識・判断などの人間の知能的な振る舞いを行うコンピューターシステム

IoT

Internet of Things の略称。コンピューターに限らず、家電製品や自動車等のハードウエア機器をインターネットに接続し、情報をやり取りすることで生まれるイノベーションの総称

エンジン

コンピューターを使用し、さまざまな情報処理を実行する機構

 

 

 

4 【関係会社の状況】

 

名称

住所

資本金又は

受入出資額
(千円)

主要な事業
の内容

議決権の所有
(又は被所有)
割合(%)

関係内容

(子会社)

 

 

 

 

 

株式会社PKSHA Workplace

(注)3

東京都文京区

2,500

AI SaaS事業

100.0

役員の兼任(1名)
業務委託
管理業務受託

 株式会社アイテック

(注)3、5

東京都文京区

10,000

AI Research & Solution事業

100.0

[100.0]

役員の兼任(1名)

業務委託

 株式会社PKSHA Associates

(注)3

東京都渋谷区

14,520

AI SaaS事業

100.0

役員の兼任(1名)

業務委託

管理業務受託

株式会社PKSHA Communication

(注)3、5

東京都文京区

1,000

AI SaaS事業

100.0

役員の兼任(1名)

業務委託

管理業務受託

株式会社トライアンフ

(注)3

東京都渋谷区

225,109

AI Research & Solution事業

100.0

[100.0]

役員の兼任(1名)

管理業務受託

その他8社

(関連会社及び共同支配企業)

 

 

 

 

 

PKSHA SPARXアルゴリズム

1号投資事業有限責任組合

東京都港区

5,300,000

AI Research & Solution事業

       50.0

PKSHA アルゴリズム

2号投資事業有限責任組合

東京都文京区

1,116,600

AI Research & Solution事業

50.0

株式会社ダイレクトクラウド

東京都港区

490,374

AI SaaS事業

20.6

[1.0]

アーニーMLG株式会社

福岡県福岡市

50,000

AI SaaS事業

40.0

その他3社

 

(注) 1.「主要な事業の内容」欄には、セグメント情報に記載された名称を記載しております。

2.有価証券届出書又は有価証券報告書を提出している会社はありません。

3.特定子会社であります。

4.「議決権の所有(又は被所有)割合」欄の[内書]は間接所有であります。

5.株式会社アイテック、株式会社PKSHA Communicationについては、売上高(連結会社相互間の内部売上高を除く)の連結売上高に占める割合が10%を超えております。

 

 

(単位:千円)

名称

株式会社アイテック

株式会社PKSHA Communication

売上高

 5,599,570

 4,336,723

経常利益

751,907

713,832

当期純利益

502,975

 421,823

純資産額

2,325,558

 6,098,924

総資産額

3,323,302

 7,561,266

 

(注) 主要な損益情報等は、日本基準に基づく金額を記載しております。

 

5 【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

2024年9月30日現在

セグメントの名称

従業員数(名)

AI Research & Solution事業

405

( 94)

AI SaaS事業

241

( 12)

全社(共通)

37

6)

合計

683

(112)

 

(注) 1.従業員数は就業人員であり、臨時従業員数は( )内に年間の平均人員を外数で記載しております。

     2.全社(共通)として記載されている従業員数は特定のセグメントに区分できない、管理部門に所属しているものであります。

   3.前連結会計年度末に比べ「従業員数」が218名、「臨時従業員数」が72名それぞれ増加しておりますが、業容の拡大に伴い期中採用が増加したこと、及び株式会社トライアンフが連結子会社となったことによるものであります。

 

(2) 提出会社の状況

2024年9月30日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

120

35.4

2.6

11,250

 

 

セグメントの名称

従業員数(名)

AI Research & Solution事業

79

AI SaaS事業

4

全社(共通)

37

合計

120

 

(注) 1.従業員数は、当社から子会社への出向者を除いた就業人員であります。

   2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

   3.全社(共通)として記載されている従業員数は特定のセグメントに区分できない、管理部門に所属しているものであります。

 

(3) 労働組合の状況

労働組合は結成されておりませんが、労使関係は安定しております。

 

(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

提出会社及び子会社は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年法律第76号)の規定による公表義務に基づく公表項目としてこれらを選択していないため、記載を省略しております。