第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

 当社は、以下の経営理念を掲げ、経営の基本方針としております。

 

経営理念

未来への扉を。『家に価値タス』ことを通じて、地域とお客様に。

 

事業に取り組む基本姿勢及び事業を通じて実現したいこと

・私たちは、お客様の顕在ニーズと潜在ニーズを把握することに努め、リフォームの企画と仕上がりにこだわり続けることにより、持ち家を望むすべての人に、手の届く価格で、安心・清潔・実用的な住まいを提供する。

・私たちは、十分に活用されず地域に埋もれてしまっている家や、一般的な中古住宅市場では売りにくい家に対しても、潜在的な価値と需要を見出し、自ら買い取って付加価値を加えることで、中古住宅に新たな生命を吹き込む。

・私たちは、『家に価値タス』活動を通じて、地域とそこに暮らす人々の生活にひとつでも多くの『未来への扉』を提供し、土地開発を前提とした新築中心の日本の住まい方から、既存の家を再生して住みつなげるという新しい住まい方を提唱して、地域の活性化・発展を支援し続けていく。

 

(2) 経営戦略等

 当社グループは、将来的には年間販売件数1万件超を目指し、その通過点として第3次中期経営計画(2022年度から2024年度)を2022年5月に発表いたしました。

 当社グループを取り巻く環境は、仕入面・販売面共に大きなマーケットが存在すると判断しており、その様な外部環境の元で安定的に成長するためには、当社グループが良質なリフォーム済み中古住宅を供給する能力の拡充が重要な課題であると認識しております。一方、中古の戸建住宅は、雨漏り、白蟻、隣地との権利関係等の特有のビジネスリスクを有していることから、急速な成長を志向せず、提供する住まいの質と価値を維持・向上させながら成長することが重要であると判断しております。

上記より、第3次中期経営計画期間は、売上高及び営業利益*1の年平均成長率は10%とし、売上高1,340億円、営業利益175億円*1を目指してまいります。また、在庫回転率と営業利益率を高い水準で維持向上させるべく、資産効率性の指標であるROA(営業利益*1÷総資産の期首期末平均)を20%以上とすることを経営指標として定めております。さらに、資本効率性も高い水準を維持すべく、第3次中期経営計画期間の配当性向は40%以上*1と定めております。

*1 2024年5月25日に、当社が提起していた更正処分等の取り消しを求める第1審判決に敗訴したことに伴い、2024年3月期以降は、当社グループの計算方法と国税当局の主張する計算方法との差額を事後的に計算し、その差額(以下、「消費税等差額」という。)を販売費及び一般管理費に計上しております。第3次中期経営計画策定時点においては、上述の会計処理を行っていないため、第3次中期経営計画の営業利益、ROA、配当性向については、消費税等差額を調整した、「調整後営業利益」、「調整後ROA」、調整後親会社株主に帰属する当期純利益を基準とした「配当性向」と読み替えております。以下、「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の記述においては同様といたします。

なお、各調整金額については、「経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」の参考情報をご参照ください。

 第3次中期経営計画を達成するための成長戦略は以下の通りです。

① 新卒中心の採用・各種制度拡充を通じた従業員のリテンション強化・店長以上の人材の育成・輩出の継続

 当社グループの事業成長には、営業員の増加と生産性(営業員一人当たりの売買件数)の向上が必要だと考えております。

 営業員の増加については、採用・育成・リテンションが必要であり、採用については、これまでと同様に地元のために働き、貢献したいという新卒社員を中心に採用を継続してまいります。営業員の育成については、新卒社員の配属された店舗において店長が果たす役割が大きいため、各種研修を通じた店長級人材の育成に注力してまいります。リテンションについては、離職率の先行指標となるエンゲージメントサーベイの調査結果を活用しながら、各種人事制度の拡充を実施し離職率の低減に努めてまいります。

② BPRを通じた業務全体の最適化やシステム導入の検討による生産性の向上

 上述の通り当社グループの事業拡大には生産性(営業員一人当たりの売買件数)の増加が必要だと考えております。当社グループでは現在に至るまで、継続的な業務改善を通じた生産性の改善に努めてまいりました。今後より一層の生産性の向上を図るためには業務フロー全体の最適化が必要であるとの考えのもと、第3次中期経営計画期間中はBPR(Business Process Re-engineering:業務フローの抜本的な見直し)を推進してまいります。BPRの一環として、業務内容の見直しとスリム化された業務フローに基づいた各種システム導入を検討してまいります。

③ 住宅供給の重要なパートナーである工務店と大工の取り扱い能力の拡充

 当社グループは、中古住宅のリフォームをリフォーム協力会社に外注して施工しております。そのため、当社グループの事業成長にあたってはリフォーム協力会社及び実際に工事を行う大工のリフォーム工事の施工能力を確保することが不可欠です。従来、リフォーム協力会社に対しては、年に1回の施工能力の余力及び後継者の有無等に関するアンケート調査を実施しており、当面の施工能力に問題がない旨を確認できております。しかしながら、長期の成長を実現するうえでは、大工の高齢化が施工能力の制約となる可能性があるため、成長の制約にならないように先んじて打ち手を講じることで当該課題に取り組んでまいります。

④ 既存事業の成長加速に向けたM&Aの検討強化

 当社グループは、中古住宅再生事業でNo.1にポジショニングしており、当社グループのビジネスモデルの強み及び蓄積したノウハウを基に、既存事業である中古住宅再生事業の成長を加速させるためM&A等の検討も強化してまいります。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 売上高、営業利益、ROA及び配当性向を経営目標の達成状況を判断するための客観的な指標等とし、これらの向上を図ってまいります。達成状況につきましては、月次の取締役会及び経営会議、週次での商況モニタリング会議等で定期的にモニタリングを行ってまいります。

 

(4) 経営環境

 新型コロナウイルス感染症の沈静化に伴い、社会経済活動が正常化したものの、原材料価格の上昇による家計負担の増加から個人の消費需要減退の懸念など、景気の先行きは依然として不透明な状況が続くものと想定されます。

 当社グループが属する中古住宅再生事業におきましては、中長期的な視点では政府による中古住宅取得支援策の一層の充実等により伸長していくと見通しておりますが、国内経済や雇用・所得環境の不安や食料品・エネルギー価格の高騰による生活コストの上昇による可処分所得の目減りにより短期的には住宅購入意欲の減退も懸念されております。

 一方、当社グループの仕入物件の対象となる空き家におきましては、1978年には空き家数は268万戸、空き家率は7.6%であったものの、2023年には空き家数は900万戸、空き家率は13.8%となり、空き家数及び空き家率共に年々増加しており、今後も増加されるものと見込まれることから、(出典:総務省資料「令和5年住宅・土地統計調査 速報集計」)当社グループの仕入対象物件は増加すると見通しております。

 また、2021年3月19日に国土交通省が発表した「住生活基本計画(全国計画)」において既存住宅流通及びリフォームの市場規模を2018年時点の12兆円から2030年までに14兆円市場に、長期的目標として20兆円市場とすることを国家戦略として掲げていることからも、今後の成長産業として期待されております。実際に、日本における既存住宅の流通シェアは約14.5%(2018年)と、米国の81.0%、英国(イングランドのみ)85.9%、仏国69.8%と欧米諸国と比べて小さい状況であり、市場規模の拡大余地は十分にある市場となっております(出典:国土交通省「既存住宅市場の活性化について」(2020年5月7日))。並びに、首都圏のマンションのみの販売戸数は、新築マンションは45.5%、中古マンションは54.5%であり、中古マンションが新築マンションを上回っております(出典:公益財団法人東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2022年)」(2023年1月23日))。これは、住宅購入者は新築か中古という基準で住宅を購入するのではなく、安心、清潔、実用的な住宅を供給することができれば中古住宅の流通比率は向上できる余地があるという先行指標であると判断しております。

 一方、三大都市圏への人口の集中と地方都市の高齢化が懸念されておりますが、中古再生事業を行う競合他社や新築分譲会社、ホームビルダーが三大都市圏に集中する中で、当社グループは全国に事業展開を行い各地方都市で継続的に販売を行い成長しております。これは、上記の様に三大都市圏に不動産会社が集中した結果、地方都市での住宅購入の需要に対して供給が不足するという状況が生じていることが背景にあり、今後も地方都市における中古再生住宅のニーズは拡大すると見立てております。新卒採用を中心に、優秀な人材の採用と育成により生産性を高めつつ、店舗あたり人員を増やすことでエリア展開のメッシュを細かくし、未開拓エリアへの進出を継続的に実行することで、今後も三大都市圏に依存せず、地方都市を中心とした事業展開によって一層の事業拡大を図ってまいります。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

① サステナビリティ経営

 近年、サステナビリティ経営が企業の社会的責任として求められ、SDGsに代表される社会課題解決の取り組みにおいて企業が果たす役割がますます重要となっております。当社グループの中古住宅再生事業は、新築住宅建築と比較してCO2排出量や木材使用量を大幅に抑えていることから環境保護に寄与し、循環型経済の一翼を担う事業と認識しております。また今後、低コストで実現可能な住宅の省エネ性能向上のためのリフォーム工法を検討し、CO2排出量の削減に一層努めてまいります。

 空き家を再生して流通させることで、社会課題である全国の空き家問題の解決を図りながら、地域の活性化にも貢献できるものと考えております。また、当社の販売する住宅の平均販売価格は同エリアの新築の半額程度であり、従来持ち家に手が届かなかったお客様にも清潔・安心な住宅を提供しております。

 ガバナンス面に関しましては、少数株主利益の保護を意識し、お客様視点・経済合理性の観点からの経営判断に努めております。なお、2024年3月期のニトリとの取引金額は140百万円で、うち当社の物件に設置したエアコンが55百万円、また販促活用で利用するニトリ商品券が85百万円を占めております。

 2022年4月にはサステナビリティ委員会を設置しており、同委員会を中心に今後も社会課題の解決を堅実に図りながら、持続可能な成長の実現を目指すことをテーマに取り組んでまいります。

② 人材の確保と育成の強化

 当社グループでは、仕入物件の選定・調査・仕入、リフォームの企画、販売活動といった一連の工程を従業員が一気通貫で行う独自の体制を取っており、優秀な人材を確保・育成していくことが成長に向けたドライバーであると認識しております。また、全国各地の販売網に人材を供給するため、優秀な人材を全国的に採用する必要があります。継続して新卒の定期採用活動を行っている結果、2024年3月31日時点で在籍する新卒入社の従業員数は545名とグループ全体のうち半数以上が新卒定期採用により入社した社員となっております。また、社内教育・研修制度及び業績評価に連動した報酬制度並びにリフレッシュ休暇制度の充実・構築を図り、個々人の能力向上を促し、従業員一人一人の長所を活かし、モチベーションを高めながら成長をサポートできる仕組みを強化してまいります。

③ 生産性の向上

・エリアマーケティングの強化

 既存住宅流通市場に占めるシェアにエリア間でバラつきが見られることから、営業組織体制を更に細分化し、エリア特性に合わせた成長戦略を立案し実行できるようにすることで成長ポテンシャルの高いエリアの開拓を進め、持続的な成長を図ってまいります。

・従業員一人当たりの売買件数の向上

 当社グループでは、上記の通り一連の工程を従業員が一気通貫で行う独自の体制を取っております。そのため、従業員一人当たりの売買件数を生産性と定義し、この件数の維持向上が成長に向けた経営課題であると認識しております。

 また、当社グループは仕入後にリフォーム工事を行い、販売を行うことから、販売不動産の仕入計上から売上計上までに一定の期間を要しております。物件取得からお客様への引渡しまでの期間が長期化することは資金効率の悪化を招くと共に生産性を低下させる可能性があります。当社では、買取り後迅速にWEB上で物件情報を積極的に公開し、過去の営業活動時に取得した見込み顧客の情報に基づき、近隣の住宅を仕入れた際には当該顧客に個別にご案内を行っております。この取組みにより、リフォーム期間中の成約率の向上を図ってまいります。

 また、当社グループは保有物件が地理的に散在しているために、従業員の物件に移動する時間を短縮することが生産性向上の課題となります。そのため当社では、営業組織体制の細分化により、担当エリアを知悉したエリアマネージャーの立案に基づく新規出店を行い、各店舗の営業エリアの細分化を行っております。

 これらの取組みのほか、デジタル化及び業務改善の取組みを継続することで生産性の向上を図ってまいります。

・商品力の向上・管理の徹底

 当社は、仕入前に当社独自のチェックリストに基づいて営業担当者がリフォーム協力会社及び白蟻調査会社も交えた三者立会いによる入念な調査を可能な限り実施して品質の良いリフォーム済み中古住宅の販売を行っております。また、当社グループが事業展開する地域における旧耐震物件の新耐震適合化するためのリフォームの推進により、安心にお住まい頂く取り組みを行っております。この様な取組みを通じて、当社グループは、中古住宅も適切な調査とリフォームにより安心にお住まいいただけるという社会的認知度・お客様満足度を高め、既存住宅流通を活性化させるという社会的責任を担っていると自負しております。商品力を更に高めるためには、住宅という商品作りの担い手であるパートナー工務店ネットワークの維持・拡充が重要であるとの認識から、定期的な事例研究の場を設け、品質の高いリフォーム済み住宅の安定的な提供に全力を傾けてまいります。

・在庫回転率の向上

 当社グループは仕入後にリフォーム工事を行い、販売を行うことから、販売用不動産の仕入計上から売上計上までに一定の期間を要しております。物件取得からお客様への引渡しまでの期間が長期化することは財務体質の脆弱化を招くと共に営業現場の効率を低下させる可能性があります。そこで、買取決済後に速やかにリフォーム工事に着手できるようリフォーム協力会社と連携して商品化までの期間を短縮しております。またWEB上でリフォーム期間中の完成過程を積極的に公開し過去の営業活動時に取得した潜在的顧客の情報に基づき、近隣の住宅を仕入れた際には当該顧客に個別にご案内を行っております。これらの取り組みにより、リフォーム完了前の成約率を向上させ、在庫回転率の向上、財務体質の強化を引き続き図ってまいります。

・当社グループの認知度の向上

 当社は「買取りのカチタス」としてブランディング戦略を立て、2013年7月より地方部を中心にテレビCMやラジオCMを行っており、2013年10月以降、3ヶ月に一度継続的に社名認知度調査(毎回、テレビCM実施エリアを中心とした10道県をローテーションして1,100件に対しWEBアンケートにて実施)を実施しております。

 2024年2月調査では、テレビCM実施エリアに限れば44.1%の社名認知を獲得するに至りました。さらに「『家を売る先の会社』と言われてどこが思い浮かびますか?」との設問(選択肢を提示しない純粋想起による回答)に対しては、大手不動産会社を抑えて当社が10.7%と1位の想起を得ております。引き続き認知度向上のため地方エリアにおけるCMを始めとするプロモーションを継続的に強化してまいります。

④ 金融機関との安定した取引

 当社グループは、不動産仕入等に要する運転資金調達のため金融機関からの融資を必要としております。また、現状、当社グループの借入は主にシンジケートローンによる借入であることから、シンジケートを構成する各金融機関との良好な関係維持が重要であります。そのため、健全な財務状況の確保と迅速かつ正確な適時開示を行うことで金融機関との強固かつ良好なパートナーシップを築き、安定的かつ継続的な融資取引を図ってまいります。

⑤ 内部管理体制とコンプライアンスの強化

 当社グループは、取締役会による内部統制の構築及び監査役による業務監査を行うことで、常に法令等を遵守すると共に適切な経営が行われる管理体制を構築しております。しかし、多様化・複雑化する法令・制度及び社内規程等に抵触するケースが生じる可能性は否定できません。これらの違反等に対応するために、代表取締役社長、管理本部長、営業部長、常勤監査役、社外監査役、内部監査室室長、管理部長等が出席し、原則として毎月1回コンプライアンス委員会を開催しております。また管理担当役員をコンプライアンス担当役員に任命し、コンプライアンス担当役員、監査役を中心に法令等の遵守状況を定期的に確認するためのセミナーや業界団体の勉強会に参加してまいります。また、社内に向けても定期的にコンプライアンス事例の共有等を図りながら注意喚起を行うことで、企業全体としてコンプライアンス意識を醸成し、倫理観の高い組織風土を継続的に構築してまいります。

⑥ ニトリとの業務提携

 当社は、2017年4月に、ニトリとの間で、それぞれが有する技術、ノウハウ、商流・物流ネットワークその他経営資源を相互に利用し、両社の事業価値の最大化を図ることを目的に業務提携契約を締結しております。これまでの取り組みとしてニトリ製のエアコンを設置した住宅の販売や販売活動でのニトリ商品券の活用等を行ってまいりました。また、当社グループの販売用不動産に付加価値を付けると共に、お客様が購入後の生活空間をイメージし易くすることを目的として、ヴァーチャルでニトリの家具を設置し、その様子をWEB上でお客様が確認できるヴァーチャルホームステージングを実施しており、実際にお客様からのお問い合わせの増加並びに成約率向上等の効果が得られています。今後も、ニトリとの業務提携を通じたシナジー効果を発揮すべく、お客様の利便性向上及び両社のコストダウンに資する施策の具体化を進めてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループは、中古住宅再生事業を通じた社会課題の解決に取組み、持続可能な社会づくりに貢献することで、当社グループも持続的に成長できるものと考えています。

 具体的には、当社が買い取る住宅の約8割が空き家であり、日本で増加する空き家問題の解決に貢献しています。また、当社グループは都市郊外・地方都市で事業を営むことにより地域で雇用を創出しており、その結果、都心部への人口の一極集中を避けることに貢献しています。加えて、新築住宅に比べて約半額程度の価格で手ごろな住宅(アフォーダブルハウジング)の提供を通じて、お客様のより良い暮らしの実現に貢献しています。

 上記のように、資源の有効利用・人的資本の活用・地域経済の活性化・家計等の様々な観点において循環型社会の実現とウェルビーイングの向上を目指し、事業成長と社会課題の解決の両立を実現してまいります。

 

(サステナビリティ基本方針)

 ひとつでも多くの「より良い暮らし」を提供し続けることで、ステークホルダーの皆様に貢献し、サステナブルな社会の実現を目指してまいります。

 

(1)ガバナンス及びリスク管理

① ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティに関する取組を推進するため、2022年4月に「サステナビリティ委員会」(以下、「本委員会」という。)を設置いたしました。

 本委員会では、当社のサステナビリティ活動に関する全体計画の立案、進捗状況のモニタリング、達成状況の評価を行い、また取締役会に報告・提言を行っています。

 本委員会は、取締役会の監督のもと、代表取締役社長を委員長とし、取締役及びESG/サステナビリティ推進室長により構成されており、原則として四半期に1回開催いたします。

 本委員会は、環境・社会課題などの多岐にわたる経営課題に企業として継続的に対応していくための企業グループ横断的な組織として機能しております。具体的には、サステナビリティ課題への対応についての全体計画の立案、進捗状況のモニタリング、各部署への戦略立案や指示を行っております。

 

② リスク管理

 当社のリスク管理は、「リスク管理規程」に基づき、代表取締役社長が任命したリスク管理担当役員と各部門内の各種リスクの管理を行うリスク管理責任者が連携しながら、リスクを認識・評価し、適切な対応策を図るための全社的なリスクマネジメント体制を整備しております。リスク管理担当役員がリスクを認識・評価し、取締役会へ適切な対応策の報告を行い、その指示を受けます。

 事業上のリスクと機会の特定および評価にあたっては、経営戦略に大きな影響を与えると想定される重要リスクとその具体的な影響を検討し、定期的な経営環境動向のモニタリングにより、リスクの変化を把握するとともに、経営活動の進捗に基づいて戦略への影響を評価し、適時適切な対応を図っております。

 

(2)重要な戦略並びに指標及び目標

① サステナビリティ全般

イ)戦略

i.  サステナビリティに関する戦略

当社の戦略上重要なサステナビリティ上の課題(マテリアリティ)は以下のとおりです。

マテリアリティ

課題項目

社会的インパクトの創出

空き家問題の解決

手ごろな住宅の提供

商品品質の向上

引渡し後の不具合の抑制

お客様満足度の向上

販売物件の耐震性能向上

人的資本の質的・量的向上

BPR等による生産性の向上

働きやすい環境づくり

優秀な人材のリテンション

ダイバーシティの推進

持続的なパートナーシップによる地域コミュニティへの貢献

工務店など地域社会への経済便益還元

工務店の事業継続支援

環境負荷の低減

事業活動に伴うCO2排出量の抑制

断熱性能の向上

ii.  気候変動への取組みとTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への対応

 当社グループは、気候変動問題の重要性を認識し、当社グループのビジネスへの影響を分析し対応していくことが重要であると考え、2022年1月にTCFD提言への賛同を表明しました。TCFD提言に基づく情報開示を通じて、ステークホルダーの皆様との対話を進め、いただいたご意見を踏まえて今後も分析をさらに精緻化し取組みを深化させてまいります。

 TCFD提言に基づく開示は、当社HPに詳細を開示しており、開示書類では、TCFD提言により開示が推奨されている「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」として開示しております。

 なお、当社グループは、気候変動に伴うリスク及び機会を評価管理する指標として、Scope1、2、3のCO2排出量を算出しております。また、Scope1、2において2030年までのCO2排出原単位(売上当たりのCO2排出量)の削減目標を設定しております。Scope3における削減目標については今後検討してまいります。

 (詳細については当社ウェブサイト(https://katitas.jp/information/sustainability/)をご覧ください。)

 

iii.  インパクト創出に向けた取組み

 当社グループは、中古住宅再生事業を通じて「この街に、ひとつでも多くの喜びを。」というパーパスを実現したいと考えております。パーパスを実現するための長期アウトカムとして「循環型社会の実現」と「ウェルビーイングの向上」を位置付けております。このように当社グループが社会に創出するインパクトを関連付けたロジックモデルを以下のように整理しております。

短期

アウトカム

中期

アウトカム

長期

アウトカム

パーパス

バージンマテリアルの使用量削減

空き家問題の解決

循環型社会の実現

この街にひとつでも多くの喜びを。

CO2削減とネイチャーポジティブへの貢献

地方での雇用創出

地域経済の活性化

施工と企画にこだわった販売物件の品質向上

ウェルビーイングの向上

安くて品質の良い中古住宅流通量の増加

手頃な価格で住宅を提供(アフォーダブルハウジング)

 

上記のアウトカムを実現するための、当社の2024年3月期におけるアウトプットは以下の通りです。

中古住宅仕入件数(内、空き家件数)

地元で働きたい新卒採用

工務店への発注金額

耐震適合物件数

住宅販売件数

住宅ローン年収倍率

5,378件

(3,949件)

100名

17,368百万円

4,470件

5,535件

4.2倍

注1:上記の数字は、当社単体の数字です。

 

 上記のようなインパクトロジックモデルを基に、今後も当社グループは、社会課題の解決と事業成長を両立しつつ社会に与えるポジティブインパクトを創出してまいります。

 

ロ)指標と目標

 当社の戦略上重要なサステナビリティ上の課題(マテリアリティ)の指標と目標の詳細は、当社ウェブサイトより2023年8月に公表した「統合報告書 2023」をご覧ください。(https://ssl4.eir-parts.net/doc/8919/ir_material_for_fiscal_ym3/141059/00.pdf)

 

② 人的資本の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備方針

 今後の空き家増加および「安くて良い家」への確かなニーズの存在が見込まれるため、当社の成長戦略は、「営業員の増加」×「生産性(営業員一名あたりの売買件数)の向上」を掲げております。

イ)戦略

i.  営業員の増加

 当社の営業員は2024年3月31日時点では、622名(前事業年度末比4.4%増)となっております。

 当社の営業員の採用方針は、新卒採用を中心としております。これは、全国の地方の大学を卒業した学生が、地元地域のために働きたいという地元への貢献意欲と、地方には少ない業績成長を実現している上場企業という成長できる職場・安定した職場という条件面へのニーズを当社が満たすことから当社の採用計画に沿って優秀な学生を採用できると考えているためであります。

 当社が新卒採用を中心とした採用戦略としたのは2017年3月期であり、新卒採用を開始して以来着実に営業員数を増加することが出来ております。一方、当時の新卒入社社員が結婚・出産・育児といったライフイベントを迎える年齢層となってきていることから、ライフイベントも考慮した社員のリテンション施策が重要であると考えております。

 そのため、営業員の定着を目的とした各種取組み(引渡し後のお客様のお問合せ窓口の設置・シフト休の柔軟化・確定拠出年金の導入・エンゲージメントサーベイの定点観測)を実施しております。また、自社内の制度のみならず、社外のカウンセリングサービス・医療相談サービス等を導入しております。

 なお、営業員の増加については、社内的には新卒採用、中途採用の目標及び離職率の目標を設けながら運営しております。

ii.  生産性の向上

 当社の営業員の生産性は、営業員一名当たりの売買件数により測定しており、2024年3月期の生産性は17.9件となっております。

 当社の事業は、営業員一名が中古住宅の仕入~リフォームの企画~お客様への販売を一気通貫して担当しております。そのため、営業員に対する本部主導の研修プログラムと現場におけるOJTの両面による育成が重要となっております。当社における本部主導の研修プログラムは、入社時研修、階層別研修等、成功事例ナレッジ研修等を実施しております。また、現場におけるOJTについても本部主導で教育担当を選任し、かつ、月次での1on1面談の実施と面談結果の回収を行うことで現場任せにならない工夫を行っております。

 並びに、複数の業務を同時並行的に行う必要があることから、業務の平準化と簡素化を図るために、業務改善、BPR(Business Process Re-engineering)及び業務IT化をプロジェクト化して推進しております。

 なお、営業員の生産性につきましては、営業員の標準生産性の指標を設けながら運営しております。

iii.  女性社員の活躍の促進

 当社の営業員の成績上位20名には、女性の営業員が5割(10名)を占めております。これは、当社の中古住宅再生事業が売主の気持ちに寄り添ったコミュニケーションや家事の動線を意識したリフォーム企画等の観点から、女性社員が活躍しやすい事業であると考えております。そのため、女性営業員の定着、育成及び登用は、当社の事業成長において重要な課題であると認識しております。

ロ)指標と目標

女性の営業員の定着、育成及び登用に向けた目標及び実績は以下のとおりです。

i.  提出会社

指標

目標

実績

2030年正社員に占める女性比率

37以上

35.7

(2024年3月31日時点)

2030年まで管理職への登用者に占める女性比率

30以上

24.0

(2024年3月期)

 

 

 

 

ii.  連結子会社(リプライス)

指標

目標

実績

2030年正社員に占める女性比率

37以上

40.2

(2024年3月31日時点)

2030年までの管理職への登用者に占める女性比率

30以上

38.5

(2024年3月期)

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 また、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、必ずしもリスク要因に該当しない事項でも積極的に開示しております。なお、当社グループはこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の損失最小化に努めておりますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。以下の記載は、当社株式への投資に関する全てのリスクを網羅するものではありませんので、ご留意ください。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性がある全てのリスクを網羅するものではなく、実際の結果とは異なる場合があります。

 

(1) 経済情勢と不動産市況の動向について

 当社グループの属する不動産業界は、経済情勢、地価動向、金利動向、住宅税制等の影響を受けやすいという特性があります。一般に、経済情勢の悪化や所得の低下等により将来設計の先行き不安等の状況が生じた場合には、お客様の住宅購入意欲の減退につながり、不動産市況全体の販売価格が下落することで、当社グループの中古再生住宅も当初計画した販売価格よりも値下げして販売する可能性があります。当社グループの中古再生住宅は、市場価格の影響を受けにくい地方での取り扱いが多いものの、市況の影響により値下げ販売を行う物件が増加した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社は地方都市、リプライスは三大都市圏の郊外及び地方都市の中心部をターゲットエリアとしていますが、ターゲットとする地域の経済環境の悪化や、地方都市から都市部への人口流入や少子高齢化等による日本全体の人口動態、中古再生住宅に対する消費者志向の変化等の影響を受けます。当社グループの属する既存住宅流通市場の全体規模が、当社グループが見込むほどに成長しない場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 消費税等の増税について

 当社グループが取り扱う商品である中古再生住宅は、一般家庭で購入する最も高額な耐久消費財と言われていることから、消費税率の動向により需要が大きく左右される特性があります。消費税等は、住宅の土地・建物の建物部分に課されることから、経年により建物価格が償却された中古再生住宅は、新築住宅に比して消費税増税の影響は小さくなっております。しかしながら、消費税率が引き上げられた場合、家計の実質所得の目減りとなることから個人消費を抑制する要因として、お客様の住宅購入意欲の減退につながり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 住宅ローン金利の変動について

 当社グループの中古再生住宅を取得・保有するにあたっては、約8割のお客様が住宅ローンを利用されております。住宅ローンの金利は、経済情勢の変動や日銀の政策的な金利調整により大幅に変動する可能性があります。住宅ローンの金利が大幅に上昇した場合には、月々の住宅ローン支払い負担の増加や金利変動への不安感から、お客様の住宅購入意欲の減退につながる可能性や、金融機関からの住宅ローンの貸し付け条件が厳しくなる可能性があります。これらの事象が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 不動産に係る税制について

 当社グループの中古再生住宅を取得・保有するにあたって不動産取得税、固定資産税等の各種の租税公課が発生します。現在、国策として住宅の取得を推進しているため、不動産取得税の税率軽減措置や固定資産税の負担調整措置等の税負担の軽減措置が講じられております。しかしながら、上記の税負担の軽減措置が行われなくなった場合、住宅の取得・保有にかかる負担が増加することから、お客様の住宅購入意欲の減退につながり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 自然災害及び人為的災害等について

 当社グループの中古再生住宅は、地震・火災・水害等の自然災害や大規模な事故やテロ行為等による人為的災害により滅失又は毀損した場合には、販売不能になる又は販売価値が著しく低下する可能性があります。また、大規模地震対策特別措置法第3条第1項に定める地震防災対策強化地域として指定された地域での営業を行っていることから、当該地域にて自然災害が発生した場合には当社グループの中古再生住宅が販売不能又は販売価値が著しく低下する可能性があります。当社グループは、全国に事業展開を行っており、保有在庫を分散しているため在庫1件の損壊による影響は少ないと考えております。しかしながら、災害による損害が甚大に発生した場合や、災害等によりリフォーム協力会社・不動産仲介会社において事業を停止せざるを得ない状況が生じた場合等には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 感染症や伝染病等の流行による影響について

 感染症や伝染病等の流行により、本部機能の停止、店舗の営業活動の停止及び国内外での流通制限等により当社グループの事業活動に制限が生じる可能性があります。当社グループは、地方都市及び三大都市圏の郊外をターゲットエリアとしているため、人口密度や人の流れが都心部に比べて少ないため伝染病等の流行による影響は相対的に限定されるものと判断しております。しかしながら、感染者の拡大により社会的・政治的混乱の発生による経済活動に著しい停滞等が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 競合他社の参入について

 当社グループの属する不動産業界における主な法的規制は宅地建物取引業法であり、宅地建物取引業免許を有していれば参入することができます。現状では、大手の新築ハウスメーカー、大手不動産仲介会社、パワービルダー及びマンションリノベーション業者等は買取再販事業には積極的に参入しておりません。また、住宅を仕入れてリフォームして販売するというビジネスフローの中のステークホルダーであるリフォーム協力会社及び不動産仲介会社が中古住宅再生事業に参入した場合にも競合他社となりえますが、現状ではこれらの企業も積極的に中古住宅再生事業に参入しておりません。他方、リプライスがターゲットエリアとする三大都市圏の郊外及び地方都市の中心部については、競合他社が多いことから競争が激しくなりやすい市場といえます。今後、当社グループより知名度や資金力等の経営資源に優れた競合他社が参入した場合、当社グループの優位性が低下し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 中古住宅の仕入について

 当社グループが営む中古住宅再生事業においては、中古住宅を安価に仕入れることが重要となります。当社グループは、地方部での築年数の古い物件から都市部での築年数の浅い物件まで幅広い仕入とリフォームを行うノウハウを有しているものの、不動産市況や競争激化等による価格の変動、資金調達余力や労働力の不足、災害、風評被害等、何らかの事由により安定的に中古住宅の仕入が行えなくなる可能性や買取価格が上昇する可能性があります。当社グループは、安定的な中古住宅の仕入のために認知度の向上や不動産仲介会社との緊密な関係の構築を図っているものの、安定的な中古住宅の確保が困難になった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 棚卸資産の保有期間の長期化について

 当社グループでは、中古住宅の仕入前に周辺の住環境の調査や不動産仲介会社へのヒアリングによるニーズ調査等を実施して、住宅購入ニーズがあるとの調査を行った上で仕入を行っているものの、不動産市況が悪化した場合、価格や立地等のニーズ調査の認識を誤った場合、商品化の過程で当初想定していない瑕疵が発見された場合、リフォーム中に事故等が生じた場合、リフォーム協力会社が倒産した場合等において、棚卸資産の保有期間が長期化する可能性があります。当社グループは、長期化した棚卸資産について、販売可能見込価格までの低価損の計上や経過期間に応じた評価損の計上により未然に会計上の手当てを行っているものの、長期化した棚卸資産の保有比率が高まる場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 訴訟等について

 当社グループには、現段階において業績に重大な影響を及ぼす可能性のあるお客様との大きなトラブルはありません。また、物件1件当たりの住宅の価格は少額であり、訴訟となった場合でも訴額の金額的重要性は低いものと判断しております。しかしながら、当社グループの中古再生住宅は、中古住宅にリフォーム工事を行って販売するという商品特性から、契約不適合となる事由等により購入されたお客様とのトラブルが発生する可能性を内包しています。当社グループは、今後も継続して中古再生住宅の仕入前の物件の徹底した調査とリフォーム品質の徹底した管理によりお客様満足度の向上を図ってまいります。しかしながら、訴訟等が発生することで当社グループの信用を大きく毀損する可能性もあり、また、これに対応するための費用が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 国税当局からの更正処分等及び更正処分等の取消しを求める訴訟について

 当社グループは、国税当局より下記のとおり「消費税及び地方消費税の更正通知書並びに加算税の賦課決定通知書」に基づく更正処分等(以下、「更正処分等」という。)を受領しております。

対象会社

対象決算期

受領日

国税当局

更正処分等により

当期純利益に与えた

影響額

カチタス

2016年3月期から

2019年3月期まで

2020年4月28日

関東信越国税局

1,528百万円

カチタス

2020年3月期から

2021年3月期まで

2022年7月11日

関東信越国税局

1,739百万円

リプライス

2018年3月期から

2022年3月期まで

2023年4月27日

名古屋中税務署

903百万円

 

 当社グループは、国税当局からの更正処分等は到底承服できるものではないため、国税当局に対し更正処分等の取消しを求める訴訟(以下、「本件訴訟」という。)を提起し、現在係争中であります。

 本件訴訟については、2023年5月25日に東京地方裁判所より、国税当局の主張を認め、更正処分等の取消しの求めを棄却する旨の判決(以下、「原判決」という。)の言渡しを受けたため、当社は原判決を不服とする東京高等裁判所宛ての控訴を提起(以下、「本件控訴」という。)することを2023年6月8日開催の取締役会において決議し、以降、双方から主張を行い、2024年3月14日に結審し、2024年5月30日に東京高等裁判所より、当社の更正処分等の取消しの求めを棄却する旨の判決(以下、「控訴審判決」という。)の言渡しを受けました。

 なお、当社グループは、原判決の結果を受け、当社グループの従来の計算方法と国税当局が主張する計算方法との乖離する差額を算定し、2023年3月期までの差額については特別損失等として計上しております。また、2024年3月期より当社グループの従来の計算方法と国税当局が主張する計算方法との乖離する金額を事後的に算定し、販売費及び一般管理費として計上することとしており、消費税の納税も行うこととしているため、営業利益以下の段階利益への影響は生じない計算方法に変更しております。

 しかしながら、本件控訴の上告審において、当社グループの主張が認められず、国税当局の見解が認められた場合には、消費税の計算方法の修正を要する可能性があるため、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 会計及び税制について

 当社グループは、日本における会計基準及び法人税をはじめとした各種の税制が適用されております。日本における新たな会計基準の適用や新たな税制の導入又は既存の税制の廃止・変更によって、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、上述の「国税当局からの更正処分等及び更正処分等の取消しを求める訴訟について」以外にも税務申告における国税当局との見解の相違が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 人材の確保と育成について

 当社グループは全国展開を行っていることから全国での人材採用が必要となります。また当社グループの属する不動産業界での競争優位性を維持・向上させるためには不動産に関する専門的な知識を有し、事業成長のためにチームマネジメントを行うことのできる人材の確保が必要です。さらに仕入対象となる物件情報を入手するための不動産仲介会社への訪問から仕入対象物件の調査と選定、リフォームの企画、販売活動と一連の工程を当社グループの社員が一気通貫で行っていることから、確保した人材に対して一連の工程を高いレベルで実施する能力の育成が重要となっております。こうした観点から、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」にも記載のとおり、当社グループは、2013年4月採用以降、継続して新卒の定期採用活動を行っており、今後も安定した新卒採用と即戦力となる中途採用を並行して行うことにより、さらなる事業規模の拡大を図ってまいります。しかしながら、計画に基づく採用ができなかった場合、教育研修の成果が発揮されなかった場合及び短期間に多くの人材が流出してしまった場合等には、競争力が低下する可能性、人材を確保のための採用コストや報酬額の増加等が生じる可能性があり、その結果、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) 経営陣への依存について

 当社グループの戦略決定及び事業運営は、事業に関する豊富な経験と知識およびノウハウを有する現在の代表取締役及び業務執行取締役を中心とした経営陣による討議の結果、意思決定され、運営されております。当社グループでは組織的な経営体制の構築や人材育成を進めているものの、当該経営陣が当社グループから離脱する場合、代替的人材を迅速に確保することができない場合又は同水準のコストで確保できない可能性があり、その結果、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) 法的規制や免許・許認可事項について

 当社グループの単一セグメントにおいては、以下の様な法令等に基づいて事業を運営しており、これらの法的規制を受けております。

セグメントの名称

主な適用法令

中古住宅再生事業

宅地建物取引業法、建築基準法、都市計画法、不当景品類及び不当表示防止法、不動産の表示に関する公正競争規約、住宅の品質確保の促進等に関する法律、個人情報の保護に関する法律等

 

 当社グループは、上記の法令等を遵守し、現時点において法令違反等の事象は発生しておりません。当社グループでは、コンプライアンス担当役員及び管理本部を中心に研修等を行うことで、役職員に対するコンプライアンスの徹底を図っております。しかしながら、将来に何らかの理由により、法令違反の事象が発生した場合や、規制の強化や費用負担を招きかねない法令等の大幅改正が行われた場合、何らかの理由により免許、登録、許可の取消等の処分を受けた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、法的規制について、その有効期間が法令等により定められているものは下表のとおりであります。

(許認可等の状況)

会社名

免許・許可等

有効期間

関係法令

取消条項

株式会社カチタス

宅地建物取引業者免許

国土交通大臣(7)第5475号

自 2024年3月29日

至 2029年3月28日

宅地建物

取引業法

同法第5条

及び第66条

株式会社リプライス

宅地建物取引業免許

国土交通大臣(3)第7920号

自 2019年10月21日

至 2024年10月20日

宅地建物

取引業法

同法第5条

及び第66条

 

 

(16) 契約不適合責任について

 当社グループでは販売する中古再生住宅に対し、民法及び宅地建物取引業法の規定に基づき、引渡し後2年間の契約不適合責任を負っております。当社グループにおいては、品質管理を徹底するためにリフォーム工事が完工した際には、必ず独自のチェックリストを用いてリフォーム完了チェックを行っており、在庫1件当たりの契約不適合箇所の補修金額は少額となっております。また、工事保証引当金を計上することで契約不適合箇所の補修を含む将来の瑕疵の補修に要する費用を見込んでおります。しかしながら、新築時には他社が施工を行った物件を仕入れていることから初期施工の不具合や経年劣化による不具合等が潜んでいる可能性があります。当社グループから販売・引渡し後に多額の補修費用を要する契約不適合箇所が発見された場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(17) ブランドイメージの毀損による影響について

 当社グループのブランドは、当社グループの事業の成功にとって重要な要素です。当社グループのブランドイメージは、提供する中古再生住宅の欠陥・品質不良又はその風評、顧客からの苦情及び当社グループの従業員やリフォーム協力会社・不動産仲介会社等の第三者が関与する不適切行為その他事故等が生じた場合に損なわれる可能性があります。また、ネガティブなイメージは、従業員の就労状況への不満等、メディア報道又はインターネット若しくはSNSサイトへの不適切な書き込み等によっても生じる可能性があります。

 当社グループにとって好意的でない評判によりブランドイメージが毀損した場合には、その真偽にかかわらず、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(18) 国が進める中古住宅に関する各種施策による影響について

 当社グループの中古再生住宅は、自社で仕入前及び商品化後のチェックを重点的に行う等、品質の維持・向上に努めていると共に、引渡し後2年間の契約不適合責任を負っていることからも第三者によるリフォーム・耐震診断は一律には実施しておりません。特に当社は、買取内覧時に自社だけでなく、リフォーム協力会社及び白蟻調査会社の三者による立会検査を行っており、リフォームの際にも累計販売戸数7万件以上の中古住宅の再生販売を行ってきたリフォームのノウハウを明文化してリフォーム協力会社に開示し、リフォーム工事の品質を確保し、自社基準のインスペクションを実施しております。しかしながら、国が進める中古住宅に対する施策が、当社グループが想定する施策を超える内容となった場合等(例えば、中古住宅の流通時に全ての住宅に国が認定した第三者によるインスペクションの実施が義務化された場合、耐震診断の実施が義務化された場合、長期優良住宅制度や中古住宅の性能表示制度が義務化された場合、長期優良住宅制度や中古住宅の性能表示制度で求める品質基準が当社グループで標準としている中古再生住宅の品質基準と大幅に異なる基準に変更された場合、中古住宅の省エネ対策等が新築住宅と同等程度の省エネ基準を求められた場合、その他国が進める住宅取得促進の政策の中で中古住宅が除かれた場合等)は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(19) 気候変動について

 近年、気候変動が原因の一つとされる異常気象や自然災害が頻発しており、持続可能な社会の実現に向けて気候変動問題への取組みが重要な経営課題であると認識しております。当社グループは、日本の社会的なストック資源である中古住宅を、リフォーム済みの再生済み住宅として有効活用することを通じて、持続可能な社会の実現に貢献していると自負しております。しかしながら、全世界的な気候変動問題に対応するために、当社グループを取り巻く環境は大きく変化する可能性があります。

 移行リスクにおいては、省エネルギー規制や廃棄物処理に関する規制等の政策的な規制、炭素税導入等による炭素集約度の高い建材や部材等の調達コストの上昇や水道光熱費の上昇のリスクがあると判断しております。

 物理的リスクにおいては、高温多湿による住宅寿命の低下による中古住宅の仕入機会の減少、リフォーム協力会社が屋外で作業する際の作業効率の低下、空調コストの増加、自然災害の増加等のリスクがあると判断しております。

 当社グループでは、中古住宅再生事業そのものが気候変動問題の解決に寄与するビジネスモデルであると判断しているものの、これに加えて当社グループにおける直接排出(Scope1)及び間接排出(Scope2)を削減すべく非化石証書付き実質再生可能エネルギーの電力への切り替え等により気候変動リスクに対応を行っております。

 しかしながら、将来において環境規制の変更や気候変動の影響等により、さらに多くの対策コストが必要になった場合、あるいは想定外の経済・社会環境の変化が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(20) 個人情報等の管理について

 当社グループは、個人情報等、重要な情報を多数取り扱っております。当社グループにおいては、「個人情報の保護に関する法律」に基づき、社内規程の整備、管理体制の構築、外部からの侵入防止対策の実施等を講じると共に、役職員等に対して個人情報保護に係る研修を定期的に実施することで情報漏洩と不正使用を未然に防止するように努めております。しかしながら、人為的なミスや内外からの何らかの不正な方法で当社グループが保有する個人情報が漏洩したことにより、当社グループの信用力が低下した場合や多額の賠償責任を負った場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(21) リフォーム工事について

 当社グループの中古再生住宅は、リフォーム協力会社にリフォーム工事を外注して施工を行っております。これは、当社グループが全国に事業展開していることから、自社でリフォーム工事の施工部署を設けることによる人的コストや物件までの移動コストと外注コストを比較考量した結果です。当社は、リフォーム協力会社のリフォーム工事の品質管理のために「当社の求めるリフォーム品質の明文化」、「独自に制定したリフォーム発注フォーマットに則った工事発注」、当社及びリプライスでは、「工事担当部署の設置」及び「独自のチェックリストでのリフォーム完了チェック」を行うことでリフォーム協力会社のリフォーム工事の品質を確保しております。また、リフォーム工事担当部署及び営業現場である各店舗において、特定のリフォーム協力会社が業務過多で工期を遵守できないといった状況を未然に防止する目的から、新規のリフォーム協力会社の発掘を積極的に行っております。しかしながら、リフォーム工事を外注先に依存していることから、大工不足等により外注コストが増加した場合や、リフォーム工事の品質管理を十分に行わなかったこと等によりリフォームの品質すなわち販売物件の品質が低下した場合、工期が大幅に遅延した場合等には当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(22) 木材等の調達について

 当社グループの中古再生住宅のリフォーム工事では、柱、梁、羽柄材、ベニヤ、構造用合板等の木材等を利用しております。当社が行うリフォーム工事は、上述の柱や梁といった構造部分に対する工事は限定的なため、新築住宅の竣工に用いる木材使用量に比して当社のリフォーム工事で用いる木材使用量は約1/7程度となっております。

 上述の通り木材使用量が新築住宅の竣工に比して少ないことから、木材等の調達は当社グループでは行っておらず、リフォーム工事を発注するリフォーム協力会社が地元の木材店やホームセンター等の大手量販店で購入しております。そのため、リフォーム協力会社における木材等の調達が著しく遅延した場合や調達価格が著しく上昇した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(23) 資材等の調達について

 当社グループの中古再生住宅のリフォームに用いる資材(例えば、システムキッチン、トイレ、洗面台及びユニットバス、給湯器等の水回り資材。床材、クロス、木材及び接着剤等の内装資材。ペンキ、コンクリート及び敷石等の住宅外部用の資材)は、外部調達による方法で仕入れております。調達先の選定は、複数のメーカーと取引を行うことで特定少数の調達先に依存しないように努めております。しかしながら、調達先が何らかの事象により同時に受注・生産が停止して資材の調達が困難になった場合や資材の調達コストが著しく上昇して販売価格へ転嫁することが難しい場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(24) 多額の借入金、金利の変動及び財務制限条項への抵触について

 当社グループの負債純資産合計の内、外部金融機関からの借入金額が占める割合は2024年3月末時点で34.3%となっております。当社グループは、外部金融機関からの調達に過度に依存しない財務体質にすべく在庫回転率の向上を図ると共に、金利交渉を行い、市場金利の変動により支払利息が増加することを可能な限り低減することに努めております。しかしながら、当社グループの財政状態が悪化した場合等、何らかの理由により取引金融機関の融資姿勢が変更され取引が行われなくなった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社の借入金は変動金利であるため、経済情勢の変化等により市場金利が上昇した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。加えて、多額の負債は円滑な資金調達を妨げ、また事業への十分な支出を困難にする等、当社グループの事業に重要な影響を与える可能性があります。

 さらに、当社が締結している金銭消費貸借契約の中には、後記「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載した財務制限条項があり、これらに違反又は抵触する場合には、貸付人は当社の期限の利益を喪失させることができ、その場合、当社グループの財政状態及び資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。

 

(25) 親会社等との関係について

 当社は、2017年5月31日付でニトリから出資を受け入れ、2024年3月末時点でニトリは当社発行済株式総数の34.3%(議決権比率ベースでは34.3%)を保有するその他の関係会社に該当しております。また、当社はニトリの持分法適用関連会社となり、当社の取締役である白井俊之氏及び監査役である福田述氏はニトリから招聘しております。

 また、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」にも記載のとおり、当社とニトリは、業務提携契約を締結し、同契約に基づき、業務提携を開始しております。なお、ニトリとの取引については、他の企業の取引条件との比較等により取引条件の適正性等を確保する方針です。

 当社グループの経営方針、事業展開等の重要事項の意思決定において、現状、ニトリに対して事前承認を要する事項はなく、独立性・自律性は保たれていると認識しております。また、ニトリは当社株式を中長期にわたって保有する意向であると認識しております。しかしながら、将来において、ニトリにおける当社株式の保有比率に大きな変動があった場合、あるいはニトリの事業戦略が変更された場合やニトリとの業務提携が成功しなかった場合等には、当社株式の流動性及び株価形成、並びに当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの経営その他の事項に関するニトリの利益は、他の株主の利益とは異なる可能性があります。

 

(26) 買収(M&A)及び事業提携等について

 当社グループは、買収(M&A)や事業提携等の戦略投資を成長のための経営戦略の1つとして位置付けており、新規市場への参入や新領域事業の拡大等のために買収や事業提携等の戦略投資を実施する可能性があります。これらを行う際には、対象企業の詳細な調査を行い、十分にリスクを検討することとしておりますが、費用削減を含むシナジー効果が実現できない可能性、統合作業や費用等の増加、顧客・人材維持の失敗、対象企業の過大評価又は提携先へのノウハウ流出等、事前に十分把握できなかった問題が顕在化する可能性や、事業展開が計画どおりに進まない可能性があり、かかる場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(27) 中期経営計画について

 当社グループは2022年5月に第3次中期経営計画(2022年度から2024年度)を発表いたしました。その中で成長戦略としては、①新卒中心の採用・各種制度拡充を通じた従業員のリテンション強化・店長以上の人材の育成・輩出の継続、②BPRを通じた業務全体の最適化やシステム導入の検討による生産性の向上、③住宅供給の重要なパートナーである工務店と大工の取り扱い能力の拡充及び④既存事業の成長加速に向けたM&Aの検討強化を掲げています。

 しかしながら、当社グループがかかる目標を達成することができるかは、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載された事項を含む多くのリスクや課題の影響を受けます。

 中期経営計画を策定するための各種の前提が変化した際に、当社グループがかかる変化に対応した成長戦略又は事業運営を立案又は実行することができない場合には、中期経営計画を達成できない可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の沈静化に伴い社会経済活動が正常化したことにより、景気動向は緩やかに回復基調となっております。しかしながら、原材料や輸入物価の上昇による家計負担の増加から、個人の消費需要減退の懸念など、依然として景気の先行きは不透明な状況が続いております。

この様な状況の中、当社グループは、中低所得者層を主な顧客層として「新築」「中古」「賃貸」に代わる「第四の選択肢」を提供することを目指し、商品化が難しい築古の戸建物件を取扱い、そのままでは住むことが出来ない状態の物件にリフォームで価値を足して販売しております。

販売面においては、賃貸住宅にお住まいのファミリー層を中心に「低価格で高品質の住宅に住みたい」というニーズは底堅く、低価格帯の住宅を提供するなどの販売方針により、お客様のニーズに合った住宅を提供することで販売件数は前連結会計年度と比較して増加しました。また、原材料価格の上昇等のコスト負担の増加に伴い販売価格を見直した結果、 売上高は前連結会計年度と比較して増加いたしました。

仕入面においては、販売が堅調に進捗したことに加えて、在庫水準を適正水準に保つべく厳選した仕入れを行った結果、販売用不動産及び仕掛販売用不動産は、前連結会計年度末から減少しております。

利益面においては、都市郊外を中心に新築分譲の戸建住宅が値下げ販売されたことにより連動した値下げ・値引きを行った結果、売上総利益率は前連結会計年度比0.2ポイント低下いたしました。また、販売費及び一般管理費は、国税当局に対する裁判の第1審判決での敗訴に伴い、当社グループ従来の会計処理と国税当局が主張する計算方法との乖離する金額を算定し、消費税等差額として販売費及び一般管理費に2,085百万円を計上した結果、販売費及び一般管理費が前連結会計年度比18.3%増加いたしました。なお、当該消費税等差額の影響を除いた調整後販売費及び一般管理費は、前連結会計年度比2.0%の増加となりました。

 

(財政状態)

当連結会計年度の資産合計は、77,366百万円となり、前連結会計年度末の66,304百万円から11,062百万円増加、負債合計は、37,025百万円となり、前連結会計年度末の30,535百万円から6,489百万円増加、純資産合計は、40,341百万円となり、前連結会計年度末の35,768百万円から4,573百万円増加となりました。

(経営成績)

当連結会計年度の業績については、販売件数は7,169件(前連結会計年度比3.5%増)、売上高は126,718百万円(前連結会計年度比4.4%増)、営業利益は12,672百万円(前連結会計年度比9.9%減)、経常利益は12,321百万円(前連結会計年度比10.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は8,497百万円(前連結会計年度比39.5%増)となりました。

 なお、当社グループは中古住宅再生事業を単一の報告セグメントとしており、その他の事業については量的重要性が乏しいため、記載を省略しております。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べて13,299百万円増加して22,027百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の営業活動の結果得られた資金は9,502百万円(前年同連結会計年度は1,467百万円の支出)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益を12,305百万円計上し、仕入債務の増加額が376百万円、棚卸資産の減少額が1,891百万円あった一方、未払消費税等の減少額2,270百万円及び法人税等の支払額3,100百万円がそれぞれあったことによります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の投資活動の結果使用した資金は192百万円(前連結会計年度比125.8%増)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出71百万円、無形固定資産の取得による支出120百万円がそれぞれあったことによります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の財務活動により得られた資金は3,989百万円(前連結会計年度3,128百万円の支出)となりました。これは主に、長期借入れによる収入8,000百万円があった一方、配当金の支払額が4,041百万円あったことによります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社グループは生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

b.仕入実績

 当連結会計年度の仕入実績は、次のとおりであります。

 当社グループは中古住宅再生事業を単一の報告セグメントとしていることから、買取仕入と競売仕入の仕入方法別に記載を行っております。

セグメントの名称

仕入方法

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

仕入件数(件)

仕入高(百万円)

中古住宅再生事業

買取仕入

6,910

57,217

92.4

競売仕入

98

1,404

68.0

合計

7,008

58,622

91.6

(注)1.上記金額には、外注加工費は含まれておりません。

2.前年同期比は、仕入高の金額で比較を行っております。

 

c.受注実績

 当社グループは受注活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

d.販売実績

 当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。

 当社グループは中古住宅再生事業を単一の報告セグメントとしていることから、地域別の販売実績に分けて記載を行っております。

地域別

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

前年同期比(%)

販売件数(件)

販売高(百万円)

東京圏

933

21,236

98.2

名古屋圏

702

12,802

93.7

大阪圏

410

9,358

114.3

北海道

430

6,870

114.4

東北

958

15,204

103.0

関東

596

8,858

93.3

中部

1,152

18,734

120.2

関西

146

1,968

109.0

中国

562

9,004

100.6

四国

353

5,497

95.5

九州

927

16,017

108.3

その他

1,163

162.5

合計

7,169

126,718

104.4

 (注)1.総販売実績に対する割合が10%以上の相手先はありません。

2.上記は、総務省で定める地域区分の三大都市圏、都道府県毎に集計を行っており、当社グループの店舗別販売実績とは異なります。

3.前年同期比は、販売高の金額で比較を行っております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績等は、次のとおりであります。

 

(経営成績)

a.売上高、売上原価及び売上総利益

 当連結会計年度の売上高は、126,718百万円となり、前連結会計年度の121,341百万円から5,377百万円の増加(前連結会計年度比4.4%増)となりました。その主な要因は、堅調な需要を背景に、営業人員の増加によって供給件数を増やせたことと、市況の変動や高付加価値化により販売単価が上昇したことによります。

 当連結会計年度の売上原価は、98,904百万円となり、前連結会計年度の94,485百万円から4,418百万円の増加(前連結会計年度比4.7%増)となりました。その主な要因は、上記の通り市況の変動、特に三大都市圏の物件に関して仕入単価が上昇したことによります。

 以上の結果により、当連結会計年度の売上総利益は、27,814百万円(前連結会計年度比3.6%増)となりました。

 

b.販売費及び一般管理費、営業利益

 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、15,141百万円となり、前連結会計年度の12,795百万円から2,346百万円の増加(前連結会計年度比18.3%増)となりました。その主な要因は、給料手当及び賞与が441百万円、仕入拡大を目的としたWEB広告を中心に行い広告宣伝費が57百万円、並びに消費税等差額として租税公課が2,108百万円増加したことによります。

 以上の結果により、当連結会計年度の営業利益は、12,672百万円(前連結会計年度比9.9%減)となりました。

 

c.営業外損益、経常利益

 当連結会計年度の営業外収益は、受取手数料5百万円、受取保険金2百万円、受取賠償金6百万円及び受取割引料9百万円等の計上により、41百万円となりました。また、当連結会計年度の営業外費用は、支払利息228百万円及びシンジケートローン手数料98百万円等の計上により、392百万円となりました。

 以上の結果により、当連結会計年度の経常利益は、12,321百万円(前連結会計年度比10.9%減)となりました。

 

d.特別損益、税金等調整前当期純利益

 当連結会計年度の特別利益は、消費税等差額12百万円の計上により12百万円となりました。また、特別損失は、固定資産除却損8百万円、令和6年能登半島地震に伴う災害による損失7百万円及び災害復旧工事の支出に備えるため災害損失引当金繰入額13百万円を計上したことにより、28百万円となりました。

 以上の結果により、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は、12,305百万円(前連結会計年度比35.9%増)となりました。

 

e.親会社株主に帰属する当期純利益

 当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、8,497百万円(前連結会計年度比39.5%増)となりました。

 

(財政状態)

a.流動資産

 当連結会計年度末における流動資産は、75,334百万円となり、前連結会計年度末の64,505百万円から10,829百万円の増加となりました。これは主に、現金及び預金が13,299百万円増加した一方、販売用不動産及び仕掛販売用不動産が1,890百万円減少したことによります。

 

b.固定資産

 当連結会計年度末における固定資産は、2,031百万円となり、前連結会計年度末の1,798百万円から233百万円の増加となりました。これは主に、無形固定資産が100百万円、繰延税金資産が51百万円それぞれ増加したことによります。

c.流動負債

 当連結会計年度末における流動負債は、10,441百万円となり、前連結会計年度末の11,944百万円から1,503百万円の減少となりました。これは主に、買掛金が382百万円、未払法人税等が306百万円それぞれ増加した一方、未払消費税等が2,270百万円減少したことによります。

 

d.固定負債

 当連結会計年度末における固定負債は、26,583百万円となり、前連結会計年度末の18,590百万円から7,992百万円の増加となりました。これは主に、長期借入金が8,000百万円増加したことによります。

 

e.純資産

 当連結会計年度末における純資産は、40,341百万円となり、前連結会計年度末の35,768百万円から4,573百万円の増加となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益を8,497百万円計上した一方、剰余金の配当を4,043百万円行ったことによります。この結果、自己資本比率は52.1%となりました。

 

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

(経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況)

 当連結会計年度の事業計画に対する達成状況は以下のとおりであります。

 売上高は、当社グループが展開するエリアの中でも比較的販売単価の高い三大都市圏において販売件数が減少したことにより、計画比5,746百万円減(達成率95.7%)となりました。

 営業利益は、三大都市圏を中心とした新築住宅各社の在庫処分に対応するための値引きにより売上総利益は減少し、高いコスト意識を持ち運営を行いましたが、計画比544百万円減(達成率95.9%)となりました。

 

指標

2024年3月期

計画

実績

計画比(達成率(%))

売上高

132,464百万円

126,718百万円

△5,746百万円(95.7%)

営業利益

13,216百万円

12,672百万円

△544百万円(95.9%)

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

(キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容)

 キャッシュ・フローについては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

(資本の財源及び資金の流動性)

 当社グループの運転資金につきましては、内部資金または借入により資金調達しております。このうち、借入による資金調達は、限度額8,000百万円のコミットメントラインを含む総額34,500百万円のシンジケートローンを組成して調達しております。

 当連結会計年度末における長期借入金の残高は26,500百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は22,027百万円となっております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

(株式会社みずほ銀行等との借入契約)

 当社は2022年3月25日付で株式会社みずほ銀行をエージェントとする16の取引金融機関とシンジケートローンによる金銭消費貸借契約(以下、「本契約①という)を締結しましたが、本契約におけるトランシェA(コミットメントライン)は、2023年3月31日付で、貸付極度額が従前4,000百万円のところ8,000百万円に増額しております。更に、2023年11月28日付で株式会社みずほ銀行をエージェントとする7の取引金融機関と、シンジケートローンによる「金銭消費貸借契約」(以下、「本契約②」という。)を締結しました。

 主な契約内容は以下のとおりであります

 

(本契約①)

1.契約の相手先

株式会社みずほ銀行株式会社三菱UFJ銀行株式会社三井住友銀行株式会社りそな銀行株式会社静岡銀行株式会社足利銀行株式会社第四北越銀行株式会社西日本シティ銀行株式会社千葉銀行株式会社八十二銀行株式会社京都銀行株式会社京葉銀行、株式会社四国銀行、株式会社徳島大正銀行、第一生命保険株式会社、兵庫県信用農業協同組合連合会及び株式会社南都銀行

2.当初借入金額及び元本残高

区分

当初借入金額

元本残高(2024年3月31日現在)

トランシェB

15,200百万円

15,200百万円

トランシェC

 3,300百万円

 3,300百万円

3.借入枠

トランシェA(コミットメントライン):8,000百万円

4.返済期限

トランシェB:2027年3月31日

トランシェC:2027年3月31日

5.主な借入人の義務

(ア) 借入人の決算書四半期決算書等を定期的に提出すること

(イ) 借入人は以下の財務制限条項の各事項を遵守すること

(1) 純資産維持

 各決算期末における当社グループ会社の連結ベース及び当社単体ベースでの純資産の部(但し新株予約権がある場合は当該金額を除いて判定する)がそれぞれ直前の各決算期末における当社グループ会社の連結ベース及び当社単体ベースでの純資産の部の90%以上であること

(2) 利益維持

①各四半期の末日(累計)における連結の損益計算書に示される経常損益および当期損益が2四半期連続で損失とならないようにすること

②各年度の決算期の末日(累計)における連結の損益計算書に示される経常損益または当期損益のいずれか一方または両方が損失とならないようにすること。

 

(本契約②)

1.契約の相手先

株式会社みずほ銀行株式会社三菱UFJ銀行株式会社足利銀行株式会社千葉銀行株式会社八十二銀行株式会社京葉銀行及び株式会社四国銀行

2.当初借入金額及び元本残高

当初借入金額

元本残高(2024年3月31日現在)

8,000百万円

8,000百万円

3.返済期限

2028年11月30日

 

4.主な借入人の義務

本契約①に基本準じるが、本契約は、みずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社が株式会社みずほ銀行の依頼

に基づき、借入人の社会的インパクトをインパクト評価フレームワークを用いて評価し、株式会社日本格付研究所が当該インパクト評価フレームワークをポジティブ・インパクト金融原則に適合するものと認めることにより、借入金がMizuhoポジティブ・インパクトファイナンスとして選定されたことに基づくものであることから、新たに以下の義務が存する。

 借入人は、毎年3月の末日を基準日とするMizuhoポジティブ・インパクトファイナンスで設定したKPIに係る

 実績モニタリングのため、統合報告書またはそれに準ずるものを、発行後速やかにエージェントおよびエー

 ジェントを通じて全貸付人に提出すること。

 

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。