第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社は、世の中にないオンリーワンの技術により、広く社会に貢献することを経営理念として掲げ、現在創薬、医療技術分野における先端技術の研究開発・実用化の促進に貢献することを中期経営方針として『オプティカル事業』及び『ライフサイエンス・機器開発事業』を推進しております。

 

(2) 経営環境等

(オプティカル事業)

世界の放射光施設やX線自由電子レーザー施設は約70か所あり、現在新設や増設等、高度化投資が盛んに行われております。また施設内にある実験ハッチを有するビームラインの数は1施設当たり平均約30本あり、1つのビームラインでおおよそ4~10枚のミラーが使用されており、これらがX線ミラーの潜在的な市場規模を構成しています。(平成27年6月19日、株式会社シード・プランニングによる調査「放射光用X線ミラー市場に関する調査」による)

特に、約10年前に当社のX線ナノ集光ミラーを上市した時点では、海外の放射光施設では今日のようなナノメートルレベルの高精度の表面形状のミラーの需要はわずかしかありませんでした。しかし世界の3大施設の1つである兵庫県にある大型放射光施設「SPring-8」で当社ミラーがはじめて採用され、その後も順調に納入実績を積んでまいりました。その後、当社ミラーを利用した最新の研究成果が発表されてからは、海外施設からの注文が急増し、今では当社ミラー売上の8割以上が海外受注分で占めるようになりました。

さらに現在の70か所のほか、新しい第4世代の放射光施設やX線自由電子レーザーなどの施設が約30施設建設中・計画中で順次完成しており、これら次世代の高度化施設の新設に伴い、高精度ナノ集光ミラーの需要拡大が予想され、今後それぞれの建設中の放射光施設のビームラインは2~3年ごとに5~6本のビームラインが随時立ち上がる予定で、少なくとも今後20年以上は需要が継続し、市場規模は拡大傾向にあると考えております。

 

(ライフサイエンス・機器開発事業)

ライフサイエンス・機器開発事業は、創業当初から続く当社の根幹事業であり、特に自動細胞培養装置の事業は、大手企業が次々に撤退するなか、当社は再生医療及びiPS細胞関連機器へと順次開発・製造を推進してまいりました。今後も自動細胞培養装置の事業を継続するためには、これまでのように絶え間ない自動化の技術開発と協力会社との連携による効率の良い生産体制の構築が必要であると考えておりますが、さらに独自の培養技術の研究開発を推進し、そのキーテクノロジーをもとにした汎用製品の開発が必要不可欠と考えております。

現在、iPS細胞の出現により再生医療や創薬の分野において新しい産業が創出されようとしておりますが、iPS細胞の産業化が進む現状で、その大量培養技術の確立が急務となっております。

そこで当社は、長年、産業技術総合研究所と共同開発している当社独自の浮遊培養技術「CELLFLOAT」をキーテクノロジーとして「3次元培養技術に関する研究開発」を推進し、急成長が予想される再生医療向けの周辺産業に関する自動細胞培養装置や培養容器などの商品開発を積極的に展開しており、平成28年9月には日本医療研究開発機構(AMED)に採択され、再生医療向けの3次元培養システムの商品化のために臨床研究を進めております。(研究テーマ「臨床試験を目指す3次元細胞培養システムを用いた革新的ヒト弾性軟骨デバイス創出」平成28.9-平成31.3)

また汎用製品の開発も積極的に進め、平成29年1月にはiPS細胞用の回転浮遊培養装置「CellPet 3D-iPS」や小片化装置「CellPet FT」上市してまいりました。さらに平成29年7月には本関連技術が、大阪大学等と戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン、経済産業省)に採択され、大阪大学医学部の協力を得て「CellPet 3D-iPS」をもとにiPS細胞の創薬や再生医療への展開に必要な大量培養技術の開発を加速しております。(研究テーマ「iPS細胞等幹細胞の高効率な継代作業を実現した3次元大量継代培養自動化技術の実用化開発」平成29.7-平成32.3)

 

(3) 対処すべき課題

① 事業活動に関わる課題

(オプティカル事業)

現有する生産設備だけではこれ以上の需要の伸びに対応することが困難であり、生産設備の効率化や増強、生産工程の見直し等を当事業での重要課題としてとらえております。

このため当社では、EEMナノ加工装置とMSI及びRADSIナノ計測装置等の生産設備の増設を積極的に進め、また海外競合他社に対する技術的優位性を維持するため、ナノ加工技術の効率化、高精度化を図るための研究開発を推進しております。

また世界各地の放射光施設では新しい第4世代の放射光施設により光源の強化が図られ、そのバージョンアップに対応するための新しい光学系の構築が求められており、回転楕円ミラーや形状可変ミラー等次世代放射光施設向けの新製品の開発・販売を推進しております。

なお、独自のナノ加工技術EEMとナノ計測技術RADSI及びMSIは世界に類を見ない高精度な原子レベルの自由曲面の加工を可能にするもので、最近では例えば半導体や宇宙ビジネスなど他の産業分野で使われる光学素子でも、従来技術では不可能な高精度化が望まれており、当社の表面創成技術はこれら分野においてビジネスを展開するための技術的ポテンシャルを有しております。そこで当社では放射光施設分野以外への市場開拓、企業との共同開発を積極的に進めてまいります。

また、当社ではナノ加工技術EEM以外にも大阪大学の表面加工技術であるプラズマCVMやCARE(触媒基準エッチング法)も技術導入し、実用化開発を進め、また新しい計測技術についても大阪大学と共同開発も積極的に進めており、成長分野への展開を図るうえで技術的ポテンシャルを上げ、選択肢を広げることにより有効的に新規参入する準備を進めております。

 

(ライフサイエンス・機器開発事業)

再生医療の拡大に伴い、その周辺産業の市場規模も拡大傾向にあり、その中で当社の対象市場となる自動細胞培養装置、培養容器(消耗品)及び再生医療・創薬用の各種細胞ソース等の市場も拡大すると予想されております。またiPS細胞による創薬への利用も研究開発が活発にされております。そこで当社は平成29年1月に上市したiPS細胞用の回転浮遊培養装置「CellPet 3D-iPS」や小片化装置「CellPet FT」をもとに商品展開を推進してまいります。

さらに近年オルガノイド(ミニ臓器)を作り出す技術は急速に進歩しつつありますが、当社の「CellPet FT」を使った培養が有効であると評価されており、今後オルガノイド培養に適用拡大を図ってまいります。

またこのように、当社としては当社独自の製品開発を積極的に進め、顧客を獲得し、市場の拡大に備えるために優秀な技術者の確保、生産体制の強化、保守サービスの構築が当事業での重要課題であると認識しております。このため当社では優秀な技術者の確保のために積極的な中途採用活動を展開する一方で、生産体制の強化や保守サービスの構築につきましては新たな協力会社との関係構築によって対応する方針であります。

 

② 技術開発体制の構築

当社の顧客の多くは、基礎研究に取り組んでいる研究機関・大学・企業の研究者で、この基礎研究の分野で当社が成長するには、最先端の技術動向のキャッチアップと継続的な技術開発を可能とする開発体制を構築し、継続的に付加価値を提供することが重要であると考えております。

このような認識のもと、オプティカル事業では国際学会での企業展示だけでなく、当社の製品や最新の技術紹介等を積極的に発信してまいります。また、ライフサイエンス・機器開発事業においては、独自に細胞培養センターを設け、ここをオープンイノベーションの拠点として最先端の技術開発に取り組んでいる研究機関や大学との共同研究や企業との事業連携を積極的に推進することに努めてまいります。また、その体制のもとで定期的な勉強会や講義を積極的に実施し、当社技術者の技術レベルの向上も図ってまいります。

 

③ 営業力の強化

当社の両事業とも、その事業規模を拡大させるためには営業力の強化が重要であると考えております。しかしながら、当社が取り扱っている製品は、コンサルティング営業ができるような技術知識が必要となるため、即戦力となる営業人材の確保は難しく、継続的な営業人材の確保と強化は特に重要な課題であると考えております。具体的には、技術者の社内ローテーションや製品に関連する物理学等の基礎学力を有している人材の採用活動を行い、加えて既存営業マンによる継続的な現場教育を推進し、営業力の強化に注力してまいります。

 

④ 内部管理体制の強化

ここ数年間の当社の急速な成長に伴い内部管理に関係する業務が多岐にわたって発生しておりますが、今後のさらなる成長のためには内部管理体制の一層の強化を図る必要があると認識しております。そのためには、内部管理の重要性に対する全社的な認識の強化を図るために、内部管理に精通した人材を採用し、また経理・人事・広報・法務等に精通した人材も積極的に採用活動を推進して、業務の有効性と効率性を高めてまいります。

 

 

2【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重大な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。当社は、これらリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針です。また、本書に記載した事項は事業等に関連するリスクを全て網羅するものではありませんので、この点ご留意下さい。

 

(1) 技術の陳腐化について

当社のオプティカル事業における製造技術は、大阪大学の独自の世界に類を見ない原子数個レベルの平坦さを実現する究極のナノ加工技術(ナノ加工技術EEMとナノ計測技術RADSI及びMSI)を基にしたもので、1ナノメートルレベルの形状精度を実現しております。本書提出日の現在においてこの状況に変化はありません。

しかしながら、将来において当社の製造方法と同等の精度レベル(本技術を超える精度は物理的に不可能)を実現する新たな製造方法が確立された場合には、価格面で影響を受け、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 国内外政府の施策とその影響について

当社のオプティカル事業の製品である放射光施設用のX線ナノ集光ミラー等は、放射光施設という専門性の高い施設等で使用されるもので、その施設の多くは公的研究施設、公的プロジェクトまたは大学等が別々に研究事業を運営しております。当社製品を利用したこれら施設ではナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い最先端の研究がおこなわれており、今後も技術向上を図り、より優れた研究成果を創出し、継続していくものと予想されます。

また現在国内では東北に新しい放射光施設の新設計画(SLiT-J)が計画されたり、また海外でも中国、欧州、アメリカ、ブラジルなど新設の計画が目白押しであり、少なくとも今後20年は世界的に需要が拡大傾向にありますが、将来国内外の政府の研究事業の実施方針において、その重要度が大きく変更された場合または制度の変更があった場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 日本国政府の施策とその影響について

当社のライフサイエンス・機器開発事業の製品である各種自動細胞培養装置は、再生医療等においてiPS細胞はじめとする各種細胞を培養するものであります。これらの製品は再生医療及び創薬の研究開発用として使用され、今後もこの分野での研究開発が進み、同時に市場が拡大するものと予想しておりますが、日本国政府の施策により、関連法令等が大幅に改正された場合、または研究開発活動が法規制により制限が加えられた場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 外注先について

当社のオプティカル事業は、当社でのEEMによるナノ加工の前工程である粗加工仕上げ工程について将来的には内製化も検討しておりますが、現在外注加工業者に委託しております。当社が外部委託先を選定するにあたっては事業の継続性を鑑み、良好な協力関係の構築・維持または高い品質管理能力を主な判断材料として慎重に選定しております。

しかしながら、今後需要が急拡大し外注先で対応しきれない場合や、また新しい外注委託先が増えこれらの管理が疎かになり、品質面及び納期面等において何らかの不具合が発生した場合には、当社の業務に支障をきたし、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 製品に関する不具合、クレームについて

当社が販売・開発する製品等に関し、ユーザー等から訴訟を提起され、または損害賠償請求を受けたことはありません。また、不具合が生じたとしても早期に発見し、かつ是正しうるよう、サポート体制を構築しておりますが、当社が販売した製品等に予期しがたい欠陥等が発生し、製品回収や損害賠償等が発生した場合、多大な損害賠償金及び訴訟費用が必要となること等により、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 製造装置について

当社のオプティカル事業は、独自に設計・製作した製造装置を使用しております。これら製造装置については、高品質な製品の製造を実現するために、停電対策や所要のメンテナンスを随時実施しておりますが、何らかの不具合が発生した場合や自然災害や突発的な事故により製造装置が稼働不能となった場合等には、当社の業務に支障をきたし、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

しかしながら、平成30年6月18日に発生いたしました大阪北部地震では、震源地に近かったにもかかわらず、地盤が強固(岩盤)なため大きな揺れの影響もなく、工程の遅れや不良の発生など製造に支障をきたす事案は起こりませんでした。

 

(7) 為替リスクについて

当社は海外輸出製品が多く、為替レートの変動は外貨建ての直接取引の売上高に影響を及ぼす可能性があります。

そのため、想定を超える為替レートの変動が生じた場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 輸出について

輸出にあたり、仕向地ごとの政治や経済情勢、さらには文化や習慣等について調査・把握に努めておりますが、もしそれらが要因となる予期せぬ事件、事故等の事象が発生した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 特定製品への依存について

当社の主力製品は、放射光施設用X線ナノ集光ミラー及びiPS細胞自動培養装置であります。このうち放射光施設用X線ナノ集光ミラーの平成30年6月期における売上高は当社全体の売上高の89.5%を占めております。今後につきましても、当面の間、放射光施設用X線ナノ集光ミラーが収益源になると予測しております。ただし市場の変化等によりこの市場の維持・拡大が見込めなくなった場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 業績の変動について

当社の製品であるX線ナノ集光ミラーは、その製造過程でナノ加工EEMとナノ計測RADSI及びMSIを仕様を満たすまで交互に何度か繰り返す必要があることから、製造工程は製品ごとに異なり、受注から出荷までの期間が1年程度かかります。また、稀にですが仕様を満たすために出荷予定月を過ぎることも起こり得ます。このような状況が生じた場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、X線ナノ集光ミラーの平均的な単価は約2,000~3,000万円と高額な製品であるため、特定の四半期業績のみによって通期の業績見通しを判断することは困難であります。

 

(11) 知的財産権

当社は新たな技術や独自のノウハウを蓄積し、知的財産権として権利取得するなど法的保護に努めながら研究開発活動を推進しています。また、仮に特許侵害が試みられたとしても同様の製品が製造されないよう独自のノウハウは公開しておりません。しかし、特定地域での法的保護が得られない可能性や、当社の知的財産権が不正使用される可能性があることは否めず、さらに人材移転や悪意を前提とする情報漏洩等により技術・ノウハウが外部に流出する可能性もあります。このような状況が生じた場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

他方、他社が有する知的財産権についても細心の注意を払っておりますが、当社が第三者の知的財産権を侵害していると司法判断された場合、当社の生産・販売の制約や損害賠償金の支払いが発生する可能性もあります。

 

(12) 情報管理

当社では、事業経営に関わる多岐に亘る重要機密情報を有しています。その管理を徹底するため、情報管理規程及び機密情報管理基準を制定し、従業員に対する教育を徹底しています。しかし、外部からのハッキングなど不測の事態による情報漏洩により、当社の信用失墜による売上高の減少または損害賠償による費用の発生等が起こることも考えられ、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 固定資産の減損

当社では、土地、建物、機械設備等多くの有形固定資産を保有しています。当該資産から得られる将来キャッシュ・フローの見積もりに基づく残存価額の回収可能性を定期的に評価していますが、当該資産から得られる将来キャッシュ・フロー見込額が減少し、回収可能性が低下した場合、固定資産の減損を行う必要が生じ、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) 特定人物への依存について

当社の事業活動にあたり、当社代表取締役社長である津村尚史は、経営方針、経営戦略の決定及び実行においてこれまで重要な役割を果たしております。当社は現在、取締役及び主要従業員への権限移譲並びに取締役会等における情報の共有を図り、同氏に過度に依存しない組織体制の構築を進めております。

しかしながら、何らかの理由により同氏の業務遂行が困難になった場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) 小規模組織であることについて(内部管理体制について)

本書提出日現在において、当社組織は、取締役6名(うち非常勤取締役2名)、監査役3名(うち非常勤監査役2名)、従業員35名と小規模であり、会社の規模に応じた相互牽制を中心とした内部管理体制や業務執行体制となっております。また、少人数であることから、各役職員への依存等の小規模組織特有の課題があると認識しております。

今後は事業の拡大に伴い、業務遂行体制の充実に努めてまいりますが、人的資源に限りがあるため、役職員に業務遂行上の支障が生じた場合、あるいは役職員が社外流出した場合には、当社の業務に支障をきたし、事業展開や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16) 配当政策について

当社の配当政策につきましては、当社の利益成長とそれを支える礎となる財務体質の強化が重要との認識から、業績の状況をベースに内部留保の充実と配当性向等とのバランスを図りながら、株主に対して積極的に利益還元を行うことを基本方針としております。

ただし、当面はコスト競争力の強化や生産能力向上のための設備拡充及び急成長市場での事業展開を実現するための今以上の研究開発体制の構築のための投資が重要になると考え、その原資となる内部留保の充実を図る方針であります。これらについてある一定の目処が立てば、安定的・持続的な配当による株主への利益還元政策を行う方針であるものの、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。

 

(17) 調達資金の使途について

当社の公募増資により調達しました資金の使途は、建築に着手しました第2開発センター(仮称)の社屋及びそこに設置する機械装置等への設備投資への充当を予定しております。しかしながら、当社を取り巻く外部環境や経営環境の変化に柔軟に対応するため、上記計画以外の使途に充当する可能性もあります。また、計画通りに資金を使用したとしても、期待通りの効果を上げられない可能性があります。そのような場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(18) 新株予約権行使による株式価値の希薄化について

当社は、当社役員及び従業員に対するインセンティブを目的として、新株予約権を付与しております。本書提出日現在、新株予約権による潜在株式数は89,000株であり、発行済株式総数5,775,000株に対する割合は1.5%となっております。これらの新株予約権が行使された場合には、当社の1株当たりの株式価値が希薄化することになり、将来における株価へ影響を及ぼす可能性があります。

 

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

業績等の概要

(1) 経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当事業年度における我が国経済は、政府による継続的な経済対策を背景に、企業収益の改善や個人消費が底堅く推移するなど緩やかな回復基調で推移しました。世界経済においては、中国及び新興国の経済成長の鈍化等の不確実性は存在するものの、景気は緩やかな回復傾向が見られました。

このような経済環境の中で当社は、オプティカル事業及びライフサイエンス・機器開発事業という独自の技術を利用した二つの事業により、前事業年度に続いて増収増益を実現いたしました。また、放射光施設用のX線ミラーの事業拡大のみならず、当社が得意とする表面加工技術や計測技術を応用し、半導体分野等その他産業分野における新事業の開拓にも注力してまいりました。

この結果、当事業年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a. 財政状態

当事業年度末における資産合計は、前事業年度末に比べ1,400,379千円増加し、2,523,347千円となりました。

当事業年度末における負債合計は、前事業年度末に比べ120,151千円減少し、418,033千円となりました。

当事業年度末における純資産合計は、前事業年度末に比べ1,520,530千円増加し、2,105,314千円となりました。

 

b. 経営成績

当事業年度の経営成績は、売上高、利益共に増加し、売上高は1,009,889千円(前期比26.0%増加)、営業利益243,622千円(前期比47.0%増加)、経常利益279,340千円(前期比39.9%増加)、当期純利益174,515千円(前期比34.3%増加)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

オプティカル事業は、売上高は903,661千円(前期比28.1%増加)、セグメント利益は522,227千円(前期比35.4%増加)となりました。

ライフサイエンス・機器開発事業は、売上高は106,227千円(前期比10.3%増加)、セグメント損失は100,575千円(前期はセグメント損失60,380千円)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ1,260,098千円増加し、当事業年度末には1,560,125千円となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果獲得した資金は91,823千円(前事業年度は211,070千円の獲得)となりました。これは主に、税前当期純利益252,571千円の計上、減価償却費56,807千円の計上、売上債権の増加241,044千円及び、前受金の減少134,088千円等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は38,305千円(前事業年度は114,564千円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出72,833千円及び保険積立金の解約による収入41,075千円等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果獲得した資金は1,206,006千円(前事業年度は55,141千円の使用)となりました。これは主に、株式の発行による収入1,331,887千円及び長期借入金の返済による支出115,966千円によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当事業年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 平成29年7月1日

 至 平成30年6月30日)

生産高(千円)

前年同期比(%)

オプティカル事業

163,137

145.0

ライフサイエンス・機器開発事業

51,531

98.8

合計

214,669

130.4

(注)1.金額は製造原価によっております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

b. 受注実績

当事業年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 平成29年7月1日

 至 平成30年6月30日)

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

オプティカル事業

1,076,277

531.1

706,987

132.3

ライフサイエンス・機器開発事業

73,212

74.4

4,673

12.4

合計

1,149,489

381.9

711,661

124.4

(注)1.金額は販売価格によっております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

c. 販売実績

当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 平成29年7月1日

 至 平成30年6月30日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

オプティカル事業

903,661

128.1

ライフサイエンス・機器開発事業

106,227

110.3

合計

1,009,889

126.0

(注)1.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 平成28年7月1日

至 平成29年6月30日)

当事業年度

(自 平成29年7月1日

至 平成30年6月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

FMB Oxford Limited

304,000

30.1

European x-ray free electron laser(Eu-XFEL)

210,820

26.3

SLAC National Accelerator Laboratory

133,824

16.7

(注)販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満のものについては記載を省略しております。

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。これらの財務諸表の作成においては、経営者による会計方針の選択と適用を前提とし、資産・負債及び収益・費用の報告金額に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や将来における発生の可能性等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 

②当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 経営成績等

1) 財政状態

(資産)

当事業年度末における流動資産は1,931,108千円となり、前事業年度末に比べ1,426,562千円増加いたしました。これは主に仕掛品が53,239千円減少した一方で、東京証券取引所マザーズ上場時の増資等により現金及び預金が1,260,098千円及び、売掛金が242,908千円増加したことによるものであります。固定資産は592,239千円となり、前事業年度末に比べ26,183千円減少いたしました。これは主に生命保険の解約や満期に伴う保険積立金の減少により、投資その他の資産が24,624千円減少したことによるものであります。

この結果、総資産は、2,523,347千円となり、前事業年度末に比べ1,400,379千円増加いたしました。

 

(負債)

当事業年度末における流動負債は292,284千円となり、前事業年度末に比べ6,353千円減少いたしました。これは主に前受金が97,238千円及び、1年内返済予定の長期借入金が10,956千円減少した一方で、未払法人税等が82,324千円及び、未払費用が9,483千円増加したことによるものであります。固定負債は125,748千円となり、前事業年度末に比べ113,797千円減少いたしました。これは主に長期借入金が105,010千円及び、繰延税金負債が12,056千円減少したことによるものであります。

 

(純資産)

当事業年度末における純資産合計は2,105,314千円となり、前事業年度末に比べ1,520,530千円増加いたしました。これは主に東京証券取引所マザーズ上場時の増資等により、資本金が673,007千円及び、資本準備金が673,007千円増加したことと当期純利益174,515千円の計上によるものであります。

 

2) 経営成績

(売上高及び営業利益)

当事業年度における売上高は、前事業年度に比べて208,077千円の増収で、1,009,889千円(前期比26.0%増加)となりました。これは、ライフサイエンス・機器開発事業の販売が伸び悩んだものの、オプティカル事業において、放射光施設及びⅩ線自由電子レーザー施設用のⅩ線ナノ集光ミラーをはじめとする各種高精度ミラーの海外からの受注増加により大幅な増収となったことによります。このことにより、売上総利益は前事業年度に比べ118,287千円増加し、751,914千円(前期比18.7%増加)となりました。また、事業の成長に伴う人件費の増加や、新たな技術開発に伴う研究開発費の支出などがあったため、当事業年度における販売費及び一般管理費は前事業年度に比べて40,355千円増加しましたが、当事業年度における営業利益は243,622千円(前期比47.0%増加)となりました。

 

(経常利益)

営業外収益では、経済産業省による戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)における補助金収入や生命保険の解約に伴う保険解約返戻金等を計上しました。また、営業外費用では、東京証券取引所マザーズへの上場に伴う株式公開費用や株式交付費等を計上しました。これらの結果、当事業年度における経常利益は279,340千円(前期比39.9%増加)となりました。

 

(当期純利益)

特別損失では、主にライフサイエンス・機器開発事業に用いる固定資産の減損損失を計上し、法人税等合計も増加しました。しかし、経常利益が増加したこと等により、当事業年度における当期純利益は174,515千円(前期比34.3%増加)となりました。

 

3) キャッシュ・フローの状況

当事業年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

b. 経営成績に重要な影響を与える要因

当社は、バイオ産業分野の基礎となる、放射光施設用X線ナノ集光ミラー及び細胞培養装置等の製造分野で事業を展開しており、これら分野における研究及び産業の発展状況が経営成績に大きな影響を与えます。事業別では、オプティカル事業が世界の放射光施設の建設動向に影響され、ライフサイエンス・機器開発事業がiPS細胞を含む細胞培養の研究及び事業化動向に影響されるといえます。

当社の海外売上高比率は7割以上を占め、現地通貨で取引することが多く、為替リスクを完全に排除することは困難であり、為替相場の変動も当社の業績に影響を与えます。

主要製品である放射光施設用X線ナノ集光ミラーと各種の細胞にあわせた自動培養装置が、当社の売上の大半を占めますが、両事業に利益率の相違があるため、事業別売上高比率の変動が売上総利益及び売上総利益率に影響を与えます。

 

c. 資本の財源及び資金の流動性

当社の運転資金需要のうち主なものは、製造のための材料及び部品の購入費、人件費や研究開発費のほか、借入金の返済や法人税等の支払いです。このほか、会社の成長に必要な設備投資等を含め、収入と支出のバランスを考慮して資金運用を実施することを主たる方針としています。

一方、販売には季節的要因の影響は少ないものの、販売先の決算月に納期を指定されることや製品の受注から完成までに1年前後の期間が必要であるため、受注及び販売の状況によっては一時的な売上債権、仕入債務、たな卸資産等の増減があり、営業活動によるキャッシュ・フローの増減に影響を及ぼす可能性があります。

運転資金及び設備投資資金については、原則として自己資金で賄うこととしておりますが、多額の設備投資資金が必要となった場合は、必要資金の内容に応じて金融機関からの借り入れや資本市場からの直接調達を検討する方針であります。

なお、当事業年度末の有利子負債残高は136,860千円となっております。

 

d. 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は、グローバルニッチトップのモノづくり企業を目指しており、事業活動の収益性を示す「売上高経常利益率」を重要な経営指標と位置付けて、その向上を目指しております。

 

e. セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(オプティカル事業)

国内につきましては、大型放射光施設「SPring-8」やX線自由電子レーザー施設「SACLA」等への販売が引き続き堅調に推移しました。

海外につきましては、ヨーロッパ、アジア及び北米など海外の放射光施設への販売が伸長しました。特に、ドイツにあるX線自由電子レーザー施設(European XFEL)向けを中心に長尺ミラーの販売が好調であり、アジアにおいては台湾、中国、韓国の旺盛な需要を背景として販売が伸びました。さらに、アメリカ、ブラジルの施設に対しても販売を行ってまいりました。

新しい第4世代の放射光施設の建設またはバージョンアップや、X線自由電子レーザー施設の建設が競い合って進んでいる状況にあります。このような状況の中、今後さらに高精度ミラーの需要増大が予想されることから、新工場の建築も含めた生産の拡大と効率化を引き続き図ってまいります。

この結果、売上高は903,661千円(前期比28.1%増加)、セグメント利益は522,227千円(前期比35.4%増加)となりました。

 

(ライフサイエンス・機器開発事業)

当社が独自に開発した培養方法であるCELLFLOAT®システムを用いた汎用型機器(CellPet 3D-iPS、CellPet FT)の販売について、立ち上げに時間を要する結果となりました。この要因は、従来のディッシュやフラスコを用いた静置培養と異なる当社独自の新しい培養方法であるCELLFLOAT®システムについて、技術的前評価は高かったものの、新しい培養技術のためユーザーにおける培養評価実験が必要不可欠であり、それに想定よりも時間を費やしたことによるものであります。

今後とも、ユーザーの皆様に本技術を広く周知しご理解いただけるように、引き続き地道な営業活動を進めてまいります。

一方で、機器開発事業におけるグラビア印刷試験機(GP-10)のOEM販売や、自動抽出装置及び水晶振動子ウエハ加工装置等の委託開発による売上が業績に寄与しました。

このような状況の中、中長期的にCELLFLOAT®システムを用いた汎用型機器の販売を行うとともに、今後は当社設立以来行っている機器開発事業に注力し、さらに、機器開発事業における新規事業分野の開拓に注力してまいります。また、機器開発事業は主に受注生産であることから、売上見込みが立てやすいという特徴があります。

この結果、売上高は106,227千円(前期比10.3%増加)、セグメント損失は100,575千円(前期はセグメント損失60,380千円)となりました。

 

 

4【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

5【研究開発活動】

当社は、「世の中にないオンリーワンの技術により製品を作り出し、広く社会に貢献する。」を経営理念とし、「日本の成長戦略の科学技術、特に創薬、医療技術のイノベーションの推進に寄与するシステムを提供する」という経営方針のもと、産学連携を中心に技術開発、製品開発を推進しております。現在、放射光施設用X線ナノ集光ミラー等の開発販売を推進するオプティカル事業及びiPS細胞やその他の創薬や再生医療等に関連した各種細胞培養装置を開発販売するライフサイエンス・機器開発事業の2つの事業を柱とし、研究開発活動はこれら事業の関連技術を中心に実施しております。

具体的には、平成25年に関西イノベーション国際戦略総合特区の研究事業に認定されたプロジェクト「放射光とシミュレーション技術を組み合わせた革新的な創薬開発の実施」(プロジェクト概要:ジェイテック(注1)の開発センターにおいて、実験設備などの整備を行う。タンパク質の解析等を行う高性能の「X線ナノ集光ミラー」の開発を目指す。)及び「先端医療技術(再生医療・細胞治療等)の早期実用化」(プロジェクト概要:臨床研究のための移植に有効な大型の軟骨組織等の細胞組織を培養することができる「全自動細胞培養システム」の開発を目指す。)を中心に研究開発を進め、現在本プロジェクト終了後も、X線ナノ集光ミラー及び各種細胞培養システムを中心に開発を推進しております。

当事業年度の当社の研究開発費は173,902千円であります。

(注1):ジェイテックは平成25年当時の当社社名であります。当社は平成28年5月に株式会社ジェイテックから株式会社ジェイテックコーポレーションへ商号変更を行っております。

 

(1) オプティカル事業

当事業年度のオプティカル事業においては、以下の研究開発を推進してまいりました。

 

① 放射光施設用X線集光ミラーの生産性の向上や高精度化を目指したナノ加工技術及びナノ計測技術に関する研究開発

本事業の主要製品であるX線ナノ集光ミラーは、放射光X線をある一定の角度で全反射させ、特定の一点にナノメートルレベルに集中(集光)させることが特長です。本ミラーによりナノメートルレベルに集光されたX線は、従来製品と比べ、様々な物質を短時間で、高精度、高分解能に分析することが可能となります。たとえば医薬品の開発において新たな製品の開発等に必要な観察や同定を行ううえで重要な役割を担っており、物質科学、生命科学、医学など様々な分野で幅広く利用され、医療・産業技術の発展に貢献しております。また最近は、基礎研究分野に加えて医療・バイオだけでなく、環境・エネルギー、化学、自動車など企業の素材や製品開発に活用され、産業利用ニーズが高まっております。

このようなX線ナノ集光ミラーを製造するためには、ナノメートルレベルの精細な表面加工技術が必要だけでなく、設計通りに加工されたことを確認するためのナノメートル精度の計測技術が必要不可欠となります。当社では大阪大学の超平坦化基盤技術であるナノ加工技術EEMとナノ計測技術RADSI及びMSIを、大阪大学より技術移転を受け、実用化に成功し、海外の競合他社では利用できない独自のナノ加工技術として確立しました。

しかし海外の競合企業でも研究開発が活発で、技術的優位性を保持するためには絶え間ない技術開発が必要不可欠であると考えております。

なお、本ナノ加工技術を実用化した事業により経済産業省の平成28年「はばたく中小企業・小規模事業者300社の生産技能部門生産性優良企業」に選定されました。

 

② 放射光施設向けの次世代商品の開発

当事業年度では下記の研究事業に申請・採択され、最近世界各地で計画されている次世代の放射光施設向けに対応した形状可変ミラーの実用化研究を推進し、商品化に成功しました。

 

・新規採択の研究事業

「回折限界下で集光径可変な次世代高精度集光ミラーの製造技術の開発」

(平成29年度兵庫県最先端技術研究事業(COEプログラム):兵庫県平成29年9月~平成30年3月)共同研究先:㈱ジェイテックコーポレーション、(財)高輝度光科学研究センター、(独)理化学研究所、大阪大学

現在世界各国で建設・稼働し始めている次世代放射光施設の高輝度化に伴い,同じ試料を同時に様々な分析手法で測定するために,集光径を自在に変えるミラーの需要が高まっており、大阪大学と理化学研究所はナノレベルで任意形状に変形できる形状可変ミラーを開発し,世界で初めて回折限界で集光径を自在に制御することに成功しました。

本研究事業では,当社はこの成果を基に大阪大学と理化学研究所の協力を得て、高精度形状可変ミラーの実用化のための製造技術を開発に成功し、平成30年4月に上市いたしました。

 

③ 第3の事業を目指した加工技術の研究開発

オプティカル事業に係る研究開発は、大阪大学の森勇藏名誉教授及び山内和人教授の長年の研究成果で、世界に類を見ない原子レベルの究極の加工技術を基にしたもので、自由な曲面をナノメートルレベルの形状精度で実現し、現在は放射光用X線ミラーだけでなく、その他産業分野にも適用を図るために大学及び企業と研究開発を進めております。

例えば、半導体分野で使用されるX線光学素子に関し、次世代装置では1ナノメートルレベルの形状精度が必要不可欠となり、本加工技術が唯一実現できるものであると評価され、分析装置や製造装置メーカーと研究開発を推進しております。

 

この結果、オプティカル事業に係る当事業年度の研究開発費は90,459千円となりました。

 

(2) ライフサイエンス・機器開発事業

事業年度のライフサイエンス・機器開発事業においては、以下の研究開発を推進してまいりました。

 

① 当社製品のiPS細胞用自動培養装置CellPetのバージョンアップ開発

平成25年に商品化に成功したiPS細胞用自動培養装置CellPetは、iPS細胞研究者のために毎日の煩わしい培地交換作業の自動化を実現した装置ですが、平成27年度 おおさか地域創造ファンド重点プロジェクト事業助成金を得て、ユーザーからの新しい要望に応えるために細胞観察機能等新機能を実現するためのユニット開発を実施してまいりました。当該事業年度では、バージョンアップしたCellPet Ⅱの追加の検証実験を実施してまいりました。

 

② 当社独自の3次元培養技術CELLFLOATを用いた「iPS細胞等の3次元大量培養技術の開発」

当社の3次元培養技術CELLFLOATは、平成17年より産業技術総合研究所と共同研究を推進してきた独自の回転浮遊培養技術であり、ディッシュやフラスコを用いた静置培養法と比べ、湿重量で5倍の細胞組織を形成し、培養時間も1/3に短縮し、100%正常細胞の培養が実現可能という研究成果を得ております。また、従来の3次元浮遊培養技術と比べ、閉鎖系(汚染リスク排除)で、細胞に対してストレスが適度で、栄養・酸素補給、排泄物除去などの効率性に優れており、3次元培養技術では有効な方法であると評価されております。

平成26年度から28年度まで戦略的基盤技術高度化支援事業(平成28年度中小企業経営支援等対策費補助金 経済産業省)に採択され、産業技術総合研究所、大阪大学と創薬スクリーニング用の3次元組織細胞を大量に培養可能な回転浮遊培養装置CellPet 3Dの開発とその3次元組織細胞を用いた創薬スクリーニング操作の自動化システムを開発してまいりました。(テーマ「iPS細胞等の3次元大量培養技術の開発」)

本事業ではさらに本大量培養技術の深堀り研究として、iPS細胞に特化したスフェロイド大量培養技術の開発も推進し、CellPet 3D-iPS及びCellPet FTの製品化に成功しました。

本装置を使った新しい継代培養技術は「JiSS」と名付け、従来のiPS細胞の継代培養に代わる画期的な培養技術として評価されており、昨年度さらに下記の助成事業に採択され、本3次元大量継代培養技術の実用化開発を推進し、当事業年度も研究開発を継続実施いたしました。

 

・今年度継続助成事業

「iPS細胞等幹細胞の高効率な継代作業を実現した3次元大量継代培養技術の実用化開発」

(戦略的基盤技術高度化支援事業 平成29年度中小企業経営支援等対策費補助金、経済産業省:平成29年9月~平成32年3月予定)共同研究先:大阪大学

再生医療への大きな期待により、国や企業が多額の研究費により難治性疾患治療法の確立が急務となっております。しかし、再生医療には高品質で大量のiPS細胞が必要ですが、現在iPS細胞は主に手作業で培養されており、生存率などの品質が低く、細胞の形質にバラつきが多く、また手間やコストもかかるのが現状です。

そこで、本研究では臨床現場に普及し易い低コストの大量継代培養自動化システムを構築し、品質、バラつき、コストを満足する細胞の提供を目指しております。

 

③ 再生医療等に用いるヒト軟骨デバイスの実用化のための3次元細胞培養システムの開発

平成25年から27年度まで京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区事業(課題解決型医療機器等開発事業、医工連携事業化推進事業)に採択され、横浜市立大学、大阪大学及び産業技術総合研究所と当社の3次元培養技術CELLFLOATを用いた再生医療向け3次元細胞培養システム(CELL MEISTER-3D)を試作開発してまいりました。(テーマ「再生医療等に用いるヒト軟骨デバイスの実用化のための3次元細胞培養システムの開発」)

CELL MEISTER-3Dは世界初の弾性軟骨デバイスを用いた再生医療の実現を目指し、臨床前研究を実施してまいりましたが、昨年度には新たに横浜市立大学と神奈川県立こども医療センターと共同で、下記の国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の委託研究事業に採択され、臨床研究を目指し、下記の本研究開発事業に採択され、大型の3次元培養技術の開発、培養ベッセルの試作開発及び本3次元細胞培養システムCELL MEISTER-3Dの改良等を実施し、当事業年度も研究開発を継続実施いたしました。

 

・今年度継続委託研究事業

「臨床試験を目指す3次元細胞培養システムを用いた革新的ヒト弾性軟骨デバイスの創出」

(産学連携医療イノベーション創出プログラム 日本医療研究開発機構(AMED):平成28年10月~平成31年3月予定)共同研究先:横浜市立大学、神奈川県立こども医療センター

本研究事業の一部は、平成28年4月に大阪大学吹田キャンパス内の産学共創本部B棟に開設いたしました当社独自の細胞培養センターへと引き継いでおります。再生医療等に用いる数十mm以上の大きさの弾性軟骨の大型組織細胞の培養を可能とする3次元細胞培養システムを開発して製品化の目途を立てており、来年以降の医師主導の治験を目指して準備を進めております。

さらに、弾性軟骨の大型化に伴い、膝・耳・鼻等対象疾患の拡大が期待でき、本研究を通じて再生医療の培養技術を習得し、当社の開発した3次元培養装置の販売だけでなく、システム全体のサービスも含めたトータルシステムの販売を目指しております。

 

なお、当細胞培養センターでは大学や企業と獲得した競争的資金で進める共同研究を推進するために、本技術を用いた細胞培養装置の培養評価や培養技術の開発だけでなく、大学や企業と様々な培養技術に関する共同研究を積極的に実施しております。

当細胞培養センターにおける研究開発は、ライフサイエンス・機器開発事業に含まれております。

 

その結果、細胞培養センターにおける研究開発費を含む本事業に係る当事業年度の研究開発費は83,443千円となりました。