文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、「世の中にないオンリーワンの技術により製品を作り出し、広く社会に貢献する」ことを経営理念に掲げ、各種産業分野の技術発展に寄与し、創薬や再生医療をはじめとした先端技術の研究及び実用化の促進に役立つことにより、「科学技術イノベーションの創出に貢献する製品開発を推進する」ことを経営方針に定め、『オプティカル事業』及び『ライフサイエンス・機器開発事業』を推進しております。
(2) 経営環境等
当事業年度における我が国経済は、企業収益や雇用環境の改善に伴い緩やかな回復基調で推移してまいりましたが、年明け以降、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行拡大により、景気が急速に悪化し厳しい状況となりました。当社の主要取引先である放射光施設を有する世界各国においても、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が大きく出ており、平常時の経済活動が出来ない状況となり、先行きが非常に不透明な状況となっております。
当社への影響としましては、主に国内販売を行うライフサイエンス・機器開発事業においては軽微と見込まれるものの、大半が海外販売であるオプティカル事業においては、海外への渡航制限が続いた場合や国際学会・展示会等の開催自粛が続いた場合には、営業活動に遅れが生じる可能性があります。しかしながら、研究者からの需要は依然として旺盛であり、商談におけるテレビ会議の活用が浸透しオンラインでの学会・展示会も行われてきていることから、今後は徐々に経営環境が回復してくるものと考えております。加えて、当社主力製品であるX線ナノ集光ミラーは、現地での設置はユーザーにて行うものであり納品時の渡航が必要でないことからも、営業手法の工夫や見直しにより十分対処可能であると考えております。
さらに、当社ミラーが使用される放射光施設や自由電子レーザー施設は、各国の最先端の科学技術の発展に寄与し新型コロナウイルス感染症の各種分析にも用いられるような施設であるため、ミラーの需要が減少するということは考えにくい状況であります。
現在、新しい第4世代の放射光施設の建設またはバージョンアップや、X線自由電子レーザー施設の建設が競い合って進んでいる状況にあり、特に中国において建設ラッシュが続いております。これら次世代の高度化施設の新設に伴い、今後さらに当社が得意とする高精度ミラーの需要増大が予想されます。
また、ライフサイエンス・機器開発事業においては、CELLFLOAT®システムを用いた汎用型機器から機器開発案件への売上構成のシフトが順調に進んでいることから、ライフサイエンス・機器開発事業における新規事業開拓にも注力してまいります。
(オプティカル事業)
世界の放射光施設やX線自由電子レーザー施設は約70か所あり、現在新設や増設等、高度化への投資が盛んに行われております。また施設内にある実験ハッチを有するビームラインの数は1施設当たり平均約30本あり、1つのビームラインでおおよそ4~10枚のX線ミラーが使用されており、これらがX線ミラーの潜在的な市場規模を構成しています。(2015年6月19日、株式会社シード・プランニングによる調査「放射光用X線ミラー市場に関する調査」による)
さらに現在の70か所のほか、新しい第4世代の放射光施設やX線自由電子レーザーなどの施設が約30施設建設中・計画中で順次完成しており、これら次世代の高度化施設の新設に伴い、当社が得意とする高精度X線ナノ集光ミラーの需要拡大が予想されています。今後それぞれの建設中の放射光施設は2~3年ごとに5~6本のビームラインが随時立ち上がる予定であることから、少なくとも新設後20年程度は需要が継続し、市場規模は拡大傾向にあると考えております。
放射光施設やX線自由電子レーザー施設は、基礎科学研究分野から、高度化医療、創薬や材料評価などの応用分野に加えて企業による産業利用にも活用されていますが、最近では新型コロナウイルス感染症に関する基礎研究が積極的に推進されております。これに伴い、より小さな試料やより高い空間あるいはエネルギー分解能による高度な分析が求められる状況が進んでおります。
重点施策としましては、国内外の放射光施設及びX線自由電子レーザー施設向けのナノ集光ミラー、高調波カットミラ-及び回折格子用ミラー等の需要に応えるために、2019年7月1日に完成した新社屋を活用し、従来と比べ生産能力の倍増を推進してまいります。また、次世代放射光施設(第4世代)のための高機能型X線集光ミラーとして開発した形状可変ミラーの拡販を進めるとともに、さらなる次世代向けの製品として、回転楕円ミラー、ウォルターミラー等の開発を推進してまいります。
(ライフサイエンス・機器開発事業)
ライフサイエンス・機器開発事業は、創業当初から続く当社の根幹事業であり、今後も自動細胞培養装置の事業を継続するためには、これまでのように絶え間ない自動化の技術開発と協力会社との連携による効率の良い生産体制の構築が必要であると考えております。さらに、独自の培養技術の研究開発を推進し、そのキーテクノロジーをもとにした汎用製品の開発が必要不可欠と考えております。
現在、iPS細胞の出現により再生医療や創薬の分野において新しい産業が創出されようとしておりますが、iPS細胞の産業化が進む現状で、その大量培養技術の確立が急務となっております。
そこで、産業技術総合研究所と長年にわたり共同研究を行ってきた当社独自の3次元浮遊培養技術「CELLFLOAT®」をキーテクノロジーとして「3次元培養技術に関する研究開発」を推進し、短期的には市場規模の伸びが小さいものの、中長期的に急成長が予想される再生医療向けの周辺産業に関する自動細胞培養装置や培養容器などの商品開発を積極的に展開してまいります。
重点施策としましては、中長期的には「CELLFLOAT®」をもとにした汎用型機器の販売を推進するとともに、短期的な戦略としては、水晶振動子ウエハ加工システムの開発をはじめとして順調に進んでいるライフサイエンス・機器開発事業に注力してまいります。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 事業活動に関わる課題
(オプティカル事業)
当社は、世界規模で拡大しております放射光施設並びにX線自由電子レーザー施設向けの高精度X線ミラーの需要に応えるため、生産施設の増強、生産工程の効率化、高精度化を進め、引き続き当事業での重要課題としてとらえております。
このため、独自のEEMナノ加工装置とRADSI及びMSIナノ計測装置等の生産設備の増設を積極的に進め、また海外の競合他社に対する技術的優位性を維持するため、現在のナノ加工技術の効率化、高精度化を図るための研究開発だけでなく、新しい製造技術の実用化開発を推進し、さらに前加工協力会社との技術提携等により生産工程の効率化を目指しております。
また、世界各地で第4世代の放射光施設の新設計画が進み、さらに既存の放射光施設でも第4世代へのバージョンアップにより光源の強化が図られ、それらに対応するための新しい光学系の構築が求められているため、回転楕円ミラー、形状可変ミラー、各種ウォルターミラー等の次世代放射光施設向けの新製品の開発・販売を推進しております。
なお、独自の表面創成技術であるナノ加工技術EEMとナノ計測技術RADSI及びMSIは世界に類を見ない高精度な原子レベルの自由曲面の加工を可能にするものであります。最近では次世代半導体や宇宙ビジネス、医療技術分野など成長産業分野で使われる光学素子において、従来の技術では不可能なナノメートルレベルでの高精度化が望まれており、当社の表面創成技術はこれら分野においてビジネスを展開するための技術的ポテンシャルを有しております。
そこで当社では、放射光施設以外への市場開拓を進め、各種産業分野の企業や研究機関との共同開発を積極的に進めて成果を上げつつあり、当社の第3の事業として成長を図ってまいります。
さらに、当社では現在のナノ加工技術EEM以外にも大阪大学の表面加工技術であるプラズマCVMやCARE(触媒基準エッチング法)を技術導入して実用化開発を進めており、また新しい計測技術についても大阪大学と共同開発を積極的に進めております。このように総合的な技術ポテンシャルを上げて選択肢を広げることにより、有効的に新規市場への参入、拡大を図ってまいります。特に当事業年度においてはプラズマCVM加工技術を水晶振動子ウエハの加工に適用し、その量産化システムの事業化に成功しております。
(ライフサイエンス・機器開発事業)
再生医療の拡大に伴い、その周辺産業の市場規模も拡大傾向にあり、その中で当社の対象市場となる自動細胞培養装置、培養容器(消耗品)及び再生医療・創薬用の各種細胞ソース等の市場も拡大すると予想されております。またiPS細胞による創薬への利用も研究開発が活発にされております。
当社では、設立当初より各種自動細胞培養装置のカスタム製品の製造販売を進めてまいりましたが、現在は汎用機器の製品開発に注力しており、当事業年度においては自動細胞培養装置「KB2000」をリリースいたしました。また、2013年1月に日本で初めてiPS細胞向けの自動細胞培養装置として「CellPet®」を販売いたしましたが、多様化するユーザーニーズに応えるために、後継機種として自動細胞培養装置「MakCell®」を開発いたしました。
さらに、長年にわたり産業技術総合研究所と共同開発してまいりました独自の3次元浮遊培養技術「CELLFLOAT®」を用いて再生医療の研究開発を推進し、現在では大阪大学医学部や横浜市立大学医学部と共同研究を進め、臨床研究を目指しております。あわせて、2017年1月に上市したiPS細胞用の回転浮遊培養装置「CellPet 3D-iPS®」や小片化装置「CellPet FT®」をもとに、近年急速に進歩しつつあるオルガノイド培養向け回転浮遊培養装置「CellPet®CUBE」や酸素透過型培養容器などの関連機器を積極的に製品開発し、今後は海外展開も図ってまいります。
このように、独自の製品開発を積極的に進めて顧客を獲得し、市場の拡大に備えるために優秀な技術者の確保、生産体制の強化、保守サービスの構築が重要課題であると認識しております。このため当社では優秀な技術者の確保のために積極的な中途採用活動を展開する一方で、生産体制の強化や保守サービスの構築につきましては、新たな協力会社との関係構築によって対応する方針であります。
② 技術開発体制の構築
当社の顧客の多くは基礎研究に取り組んでいる研究機関・大学・企業の研究者であり、この基礎研究の分野で当社が成長するためには、最先端の技術動向のキャッチアップと継続的な技術開発を可能とする開発体制を構築し、継続的に付加価値を提供することが重要であると考えております。
このような認識のもと、オプティカル事業では国際学会での企業展示だけでなく、当社の製品や最新の技術紹介等を積極的に発信してまいります。また、独自に細胞培養センターを設け、ここをオープンイノベーションの拠点として、最先端の技術開発に取り組んでいる研究機関や大学との共同研究や企業との事業連携を積極的に推進することに努めてまいります。また、その体制のもとで定期的な勉強会や講義を積極的に実施し、当社技術者の技術レベルの向上も図ってまいります。
③ 営業力の強化
当社の両事業において、その事業規模を拡大させるためには営業力の強化が重要であると考えております。しかしながら、当社が取り扱っている製品は、コンサルティング営業ができるような技術知識が必要となるため、即戦力となる営業人材の確保が難しく、継続的な営業人材の確保と強化が特に重要な課題であると考えております。具体的には、技術者の社内ローテーションや物理学等の基礎学力を有している人材の採用活動によって営業人材を確保し、加えて既存営業マンによる継続的な現場教育の推進によって営業力の強化に注力してまいります。
一方で、現在新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため世界各地で外出禁止・制限・自粛要請とソーシャル・ディスタンスの確保が求められ、展示会・学会などが世界中で中止を余儀なくされており、いつ従来どおりの開催ができるのか予測できない状況下ではありますが、オプティカル事業においては、今までの実績をもとにユーザーである世界の研究者とWEB会議などを通じて商談を進めております。また、今まで中止されていた学会においても、WEB配信での開催の検討が増えてきているため、積極的な学会発表や企業宣伝に努めてまいります。
ライフサイエンス・機器開発事業においても、オンライン商談、リモート営業などを推進しておりますが、全てをオンラインに切り替えるのではなく、新規ユーザーへの初回訪問と既存ユーザーへの提案について営業手法を分ける等、訪問とオンラインを組み合わせて有効に営業活動を進めてまいります。
④ 生産管理体制の強化
オプティカル事業において、需要が拡大しグローバルな競争に生き残っていくためには、生産管理の役割が大きくなってまいります。一方、ライフサイエンス・機器開発事業においては、ファブレスによる柔軟な生産体制にて事業を展開しております。
今後の量産化に向けて、それぞれの製造工程、生産管理や品質管理等における最適なチェック体制を構築し、安定した品質を維持する仕組みが必要不可欠となるため、生産管理体制を強化してまいります。
⑤ 内部管理体制の強化
ここ数年の当社の急速な成長に伴い、内部管理に関係する業務が多岐にわたって発生しておりますが、今後のさらなる成長のためには内部管理体制の一層の強化を図る必要があると認識しております。そのためには、内部管理の重要性に対する全社的な認識の強化を図るとともに、内部管理に精通した人材を採用し、また経理・人事・広報・法務等に精通した人材も積極的に採用することによって、業務の有効性と効率性を高めてまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。当社は、これらリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針です。また、本書に記載した事項は事業等に関連するリスクを全て網羅するものではありませんので、この点ご留意下さい。
(1) 技術の陳腐化について
当社のオプティカル事業における製造技術は、大阪大学独自の原子数個レベルの平坦さを実現する究極のナノ加工技術(ナノ加工技術EEMとナノ計測技術RADSI及びMSI)を基にしたもので、1ナノメートルレベルの形状精度を実現しております。本書提出日の現在においてこの状況に変化はありません。
しかしながら、将来において当社の製造方法と同等の精度レベル(本技術を超える精度は物理的に不可能)を実現する新たな製造方法が確立された場合には、価格面で影響を受け、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 国内外政府の施策とその影響について
当社のオプティカル事業の製品である放射光施設用のX線ナノ集光ミラー等は、放射光施設という専門性の高い施設等で使用されるもので、その施設の多くは公的研究施設、公的プロジェクトまたは大学等がビームライン(実験ハッチ)ごとに別々に研究事業を運営しております。当社製品を利用したこれら施設ではナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い最先端の研究がおこなわれており、今後も技術向上を図り、より優れた研究成果を創出し、継続していくものと予想されます。
また、現在国内では東北に新しい放射光施設SLiT-Jの建設計画(2023年供用開始予定)が具体化し、また海外では中国、欧州、アメリカ、ブラジルなどに第4世代の放射光施設の建設やバージョンアップの計画が進んでおり、今後少なくとも20年は世界的に需要が拡大傾向にあると判断しておりますが、将来国内外の政府の研究事業の実施方針において、放射光利用の重要度が大きく変更された場合、または制度の変更があった場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 日本国政府の施策とその影響について
当社のライフサイエンス・機器開発事業の製品である各種自動細胞培養装置は、再生医療等においてiPS細胞をはじめとする各種細胞を培養するものであります。これらの製品は再生医療及び創薬の研究開発用として使用され、今後もこの分野での研究開発が進み、同時に市場が拡大するものと予想しておりますが、日本国政府の施策により、関連法令等が大幅に改正された場合、または研究開発活動が法規制により制限が加えられた場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 外注先について
当社のオプティカル事業は、当社でのEEMによるナノ加工の前工程である粗加工仕上げ工程について、需要の拡大に対応するために内製化を進めておりますが、未だ多くを外注加工業者に委託しております。当社が外部委託先を選定するにあたっては事業の継続性を鑑み、良好な協力関係の構築・維持または高い品質管理能力を主な判断材料として慎重に選定しております。
しかしながら、今後需要が急拡大し外注先で対応しきれない場合や、また新しい外注委託先が増え、これらの管理が疎かになり、品質面及び納期面等において何らかの不具合が発生した場合には、当社の業務に支障をきたし、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 製品に関する不具合、クレームについて
当社が販売・開発する製品等に関し、ユーザー等から訴訟を提起され、または損害賠償請求を受けたことはありません。また、不具合が生じたとしても早期に発見し是正するべく、サポート体制を構築しておりますが、当社が販売した製品等に予期しがたい欠陥等が発生し、製品回収や損害賠償等が発生した場合、多大な損害賠償金及び訴訟費用が必要となること等により、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 製造装置について
当社のオプティカル事業は、独自に設計・製作した製造装置を使用しております。これら製造装置については、高品質な製品の製造を実現するために、停電対策や所要のメンテナンスを随時実施しておりますが、何らかの不具合が発生した場合や自然災害や突発的な事故により製造装置が稼働不能となった場合等には、当社の業務に支障をきたし、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 為替リスクについて
当社は海外輸出製品が多く、為替レートの変動は外貨建ての直接取引の売上高に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、想定を超える為替レートの変動が生じた場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 輸出について
輸出にあたり、仕向地ごとの政治や経済情勢、さらには文化や習慣等について調査・把握に努めておりますが、もしそれらが要因となる予期せぬ事件、事故等の事象が発生した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 特定製品への依存について
当社の主力製品は、放射光施設用X線ナノ集光ミラー及びiPS細胞自動培養装置であります。このうち放射光施設用X線ナノ集光ミラーの2020年6月期における売上高は当社全体の売上高の81.1%を占めております。今後につきましても、当面の間、放射光施設用X線ナノ集光ミラーが収益源になると予測しております。ただし市場の変化等によりこの市場の維持・拡大が見込めなくなった場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 業績の変動について
当社の製品であるX線ナノ集光ミラーは、その製造過程でナノ加工EEMとナノ計測RADSI及びMSIについて仕様を満たすまで交互に何度か繰り返す必要があることから、製造工程は製品ごとに異なり、受注から出荷までの期間が1年程度かかります。また、研究開発の要素の高い仕様の場合、出荷予定月を過ぎることも起こり得ます。このような状況が生じた場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
特に、当事業年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、仕様打ち合わせが中断したり、外注業者のシャットダウンにより出荷時期が予定より遅れる案件が散見されました。
なお、X線ナノ集光ミラーの平均的な単価は約2,000~3,000万円と非常に高額な製品であり、あわせて受注時期が偏る傾向にあるため、特定の四半期業績のみによって通期の業績見通しを判断することは困難であります。
(11) 知的財産権
当社は新たな技術や独自のノウハウを蓄積し、知的財産権として権利取得するなど法的保護に努めながら研究開発活動を推進しています。また、仮に特許侵害が試みられたとしても同様の製品が製造されないよう独自のノウハウは公開しておりません。しかし、特定地域での法的保護が得られない可能性や、当社の知的財産権が不正使用される可能性があることは否めず、さらに人材移転や悪意を前提とする情報漏洩等により技術・ノウハウが外部に流出する可能性もあります。このような状況が生じた場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
他方、他社が有する知的財産権についても細心の注意を払っておりますが、当社が第三者の知的財産権を侵害していると司法判断された場合、当社の生産・販売の制約や損害賠償金の支払いが発生する可能性もあります。
(12) 情報管理
当社では、事業経営に関わる多岐に亘る重要機密情報を有しています。その管理を徹底するため、情報管理規程及び機密情報管理基準を制定し、従業員に対する教育を徹底しています。しかし、外部からのハッキングなど不測の事態による情報漏洩により、当社の信用失墜による売上高の減少または損害賠償による費用の発生等が起こることも考えられ、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 固定資産の減損
当社では、土地、建物、機械設備等多くの有形固定資産を保有しています。当該資産から得られる将来キャッシュ・フローの見積りに基づく残存価額の回収可能性を定期的に評価していますが、当該資産から得られる将来キャッシュ・フロー見込額が減少し、回収可能性が低下した場合、固定資産の減損を行う必要が生じ、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(14) 特定人物への依存について
当社の事業活動にあたり、当社代表取締役社長である津村尚史は、経営方針、経営戦略の決定及び実行においてこれまで重要な役割を果たしております。当社は現在、取締役及び主要従業員への権限移譲並びに取締役会等における情報の共有を図り、同氏に過度に依存しない組織体制の構築を進めております。
しかしながら、何らかの理由により同氏の業務遂行が困難になった場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(15) 小規模組織であることについて(内部管理体制について)
本書提出日現在において、当社組織は、取締役6名(うち非常勤取締役2名)、監査役3名(うち非常勤監査役2名)、従業員42名と小規模であり、会社の規模に応じた相互牽制を中心とした内部管理体制や業務執行体制となっております。また、少人数であることから、各役職員への依存等の小規模組織特有の課題があると認識しております。
今後は事業の拡大に伴い、業務遂行体制の充実に努めてまいりますが、人的資源に限りがあるため、役職員に業務遂行上の支障が生じた場合、あるいは役職員が社外流出した場合には、当社の業務に支障をきたし、事業展開や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(16) 配当政策について
当社の配当政策につきましては、当社の利益成長とそれを支える礎となる財務体質の強化が重要との認識から、業績の状況をベースに内部留保の充実と配当性向等とのバランスを図りながら、株主に対して積極的に利益還元を行うことを基本方針としております。
ただし、当面はコスト競争力の強化や生産能力向上のための設備拡充及び急成長市場での事業展開を実現するための今以上の研究開発体制の構築のための投資が重要になると考え、その原資となる内部留保の充実を図る方針であります。これらについてある一定の目処が立てば、安定的・持続的な配当による株主への利益還元政策を行う方針であるものの、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。
(17) 調達資金の使途について
当社の公募増資により調達しました資金の使途は、2019年7月に完成しました新社屋及び、オプティカル事業にて使用する機械装置等への設備投資への充当を計画したものであります。しかしながら、当社を取り巻く外部環境や経営環境の変化に柔軟に対応するため、上記計画以外の使途に充当する可能性があります。また、計画通りに資金を使用したとしても、期待通りの効果を上げられない可能性があります。そのような場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(18) 新型コロナウイルス感染症について
2020年に入り世界的に流行している新型コロナウイルス感染症について、国内では非常事態宣言が解除されたものの、各国の経済活動が著しく制限されたことにより深刻な経済収縮が起こり、その収束時期は不透明な状況であります。日本を含む世界各国において感染症の拡大が長期化した場合は、営業活動の縮小、製造活動の遅延、製品出荷の遅延等により、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当事業年度における我が国経済は、企業収益や雇用環境の改善に伴い緩やかな回復基調で推移してまいりましたが、年明け以降、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行拡大により、景気が急速に悪化し厳しい状況となりました。当社の主要取引先である放射光施設を有する世界各国においても、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が大きく出ており、平常時の経済活動が出来ない状況となり、先行きが非常に不透明な状況となっております。
このような経済環境の中で当社は、オプティカル事業及びライフサイエンス・機器開発事業という独自の技術を利用した二つの事業により、営業基盤の強化と拡充に努めてまいりました。また、放射光施設用のX線ミラーの事業拡大のみならず、当社が得意とする表面加工技術や計測技術を応用し、半導体分野等その他産業分野における新事業の開拓にも注力してまいりました。
この結果、当事業年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a. 財政状態
当事業年度末における資産合計は、前事業年度末に比べ234,882千円減少し、2,636,664千円となりました。
当事業年度末における負債合計は、前事業年度末に比べ258,799千円減少し、165,099千円となりました。
当事業年度末における純資産合計は、前事業年度末に比べ23,917千円増加し、2,471,565千円となりました。
b. 経営成績
当事業年度の経営成績は、売上高、利益共に減少し、売上高は1,027,480千円(前期比20.1%減)、営業利益5,980千円(前期比98.6%減)、経常利益34,187千円(前期比93.1%減)、当期純利益16,356千円(前期比95.1%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
オプティカル事業は、売上高は833,087千円(前期比29.8%減)、セグメント利益は324,701千円(前期比54.6%減)となりました。
ライフサイエンス・機器開発事業は、売上高は194,392千円(前期比96.3%増)、セグメント損失は24,509千円(前期はセグメント損失58,977千円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ265,790千円減少し、当事業年度末には573,400千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は67,040千円(前事業年度は61,466千円の獲得)となりました。これは主に、前受金の減少80,839千円及び法人税等の支払額214,218千円による支出があった一方で、売上債権の減少260,551千円、仕入債務の増加40,632千円及び減価償却費93,086千円の計上による収入があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は262,250千円(前事業年度は731,557千円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出255,905千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は69,939千円(前事業年度は49,198千円の使用)となりました。これは主に、新株予約権の行使による株式の発行による収入7,733千円及び長期借入金の返済による支出77,500千円によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当事業年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当事業年度 (自 2019年7月1日 至 2020年6月30日) |
|
|
生産高(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
オプティカル事業 |
293,302 |
108.0 |
|
ライフサイエンス・機器開発事業 |
177,583 |
172.5 |
|
合計 |
470,885 |
125.8 |
(注)1.金額は製造原価によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b. 受注実績
当事業年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当事業年度 (自 2019年7月1日 至 2020年6月30日) |
|||
|
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
オプティカル事業 |
678,359 |
83.7 |
176,307 |
53.3 |
|
ライフサイエンス・機器開発事業 |
345,395 |
197.1 |
231,856 |
286.8 |
|
合計 |
1,023,755 |
103.9 |
408,164 |
99.1 |
(注)1.金額は販売価格によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c. 販売実績
当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当事業年度 (自 2019年7月1日 至 2020年6月30日) |
|
|
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
オプティカル事業 |
833,087 |
70.2 |
|
ライフサイエンス・機器開発事業 |
194,392 |
196.3 |
|
合計 |
1,027,480 |
79.9 |
(注)1.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前事業年度 (自 2018年7月1日 至 2019年6月30日) |
当事業年度 (自 2019年7月1日 至 2020年6月30日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
SLAC National Accelerator Laboratory |
383,719 |
29.9 |
- |
- |
|
Shanghai Eastern Scien-Tech Machinery Import & Export Limited |
229,700 |
17.9 |
- |
- |
|
National Synchrotron Radiation Research Center |
130,350 |
10.1 |
- |
- |
|
PAUL SCHERRER INSTITUT |
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国立研究開発法人理化学研究所 |
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(注)販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満のものについては記載を省略しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 財政状態
(資産)
当事業年度末における流動資産は1,211,809千円となり、前事業年度末に比べ395,618千円減少いたしました。これは主に未収還付法人税等が78,158千円及び仕掛品が68,163千円増加した一方で、現金及び預金が265,790千円及び第4四半期の売上が伸びなかったこと等により売掛金が255,181千円減少したことによるものであります。固定資産は1,424,855千円となり、前事業年度末に比べ160,736千円増加いたしました。これは主に新社屋の稼働等により建設仮勘定が604,612千円減少した一方で建物が614,763千円増加したこと、旧本社用地の購入により土地が68,409千円増加したこと、及び機械及び装置が43,235千円増加したことによるものであります。
この結果、総資産は、2,636,664千円となり、前事業年度末に比べ234,882千円減少いたしました。
(負債)
当事業年度末における流動負債は163,199千円となり、前事業年度末に比べ183,314千円減少いたしました。これは主に未払金が16,005千円増加した一方で、未払法人税等が126,073千円及び前受金が80,839千円減少したことによるものであります。固定負債は1,900千円となり、前事業年度末に比べ75,485千円減少いたしました。これは主に借入金の完済により長期借入金が62,500千円減少したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は2,471,565千円となり、前事業年度末に比べ23,917千円増加いたしました。これは主に当期純利益16,356千円の計上によるものであります。
b. 経営成績
(売上高及び営業利益)
当事業年度における売上高は、前事業年度に比べて258,079千円の減収で、1,027,480千円(前期比20.1%減)となりました。これは、ライフサイエンス・機器開発事業は増収となったものの、オプティカル事業において、放射光施設及びⅩ線自由電子レーザー施設用のⅩ線ナノ集光ミラーをはじめとする各種高精度ミラーにおける海外でのコロナ禍の影響により大幅な減収となったことによります。このことにより、売上総利益は前事業年度に比べ303,968千円減少し、637,159千円(前期比32.3%減)となりました。また、事業拡大に伴う人件費の増加、研究開発費の増加、及び新社屋の建設や引越しに関する費用等があったこと等により、当事業年度における販売費及び一般管理費は前事業年度に比べて126,558千円増加し、当事業年度における営業利益は5,980千円(前期比98.6%減)となりました。
(経常利益)
営業外収益では、経済産業省による戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)や、中小企業庁及び独立行政法人中小企業基盤整備機構によるものづくり・商業・サービス新展開支援補助金(ものづくり補助金)における補助金収入等を計上しました。また、営業外費用では、支払利息等を計上しました。これらの結果、当事業年度における経常利益は34,187千円(前期比93.1%減)となりました。
(当期純利益)
特別損失では、旧本社用地取得に伴う資産除去債務の整理等による固定資産除売却損を計上しました。また、前事業年度と比べて経常利益が大幅に減少し、法人税等の計上額も大幅に減少したこと等により、当事業年度における当期純利益は16,356千円(前期比95.1%減)となりました。
c. セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(オプティカル事業)
オプティカル事業においては世界各国への輸出取引を行っていることから、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大の影響が大きく出る結果となりました。特に、第4四半期頃からその影響が大きく表れてきました。
具体的な影響としては、中国やアメリカの施設の建設や研究計画の遅れに伴い受注が遅れたことや、中国(SSRF)、ブラジル(SIRIUS)、台湾(TPS)等の施設のシャットダウンにより最終仕様の決定が遅れたこと、グレーティング工程や多層膜工程の外注加工を依頼していたドイツのメーカーのシャットダウンにより製造が遅れたこと等があります。また、イタリアのメーカーに放射光施設向けの集光装置の製造を外注していた案件が新型コロナウイルス感染症の影響により出荷が遅延するということもありました。
当社製品は受注生産のため失注になることはありませんが、これらの影響により、売上が翌期にずれることとなりました。通期の売上高が期初の見込みに比べ大きく未達となりましたが、第4四半期に見込んでいた売上が達成できなかったことが大きな要因であります。
そのような状況の中、国内(施設:SPring-8、SACLA、NewSUBARU等)向けの販売が堅調に推移しました。これら国内向け販売につきましては、大半が第3四半期末である3月までに完了することが多いという特徴があります。
海外向け販売につきましては、アジア向けや北米向けが当初見込んでいたよりも減少した一方で、欧州向けの販売が伸長しました。特にスイス(施設:SwissFEL)、フランス(施設:ESRF)、ドイツ(施設:Eu-XFEL)向けの売上が業績を牽引する結果となりました。
この結果、売上高は833,087千円(前期比29.8%減)、セグメント利益は324,701千円(前期比54.6%減)となりました。
(ライフサイエンス・機器開発事業)
ライフサイエンス・機器開発事業においては、第4四半期に売上を見込んでいた水晶振動子ウエハ加工システムについて、外注先国内企業にて新型コロナウイルスの影響があったことにより開発が大幅に遅れ、売上が翌期にずれることとなりました。
そのような状況の中、再生医療分野における受託研究開発に係る売上のほか、水晶振動子ウエハ製造における関連装置の委託開発、iPS細胞用自動細胞培養装置KB2000、各種ガス検知装置、グラビア印刷試験機(GP-10)のOEM販売による売上が業績を牽引しました。
短期的な戦略として、CELLFLOAT®システムを用いた汎用型機器(CellPet 3D-iPS®、CellPetr FT®)から機器開発案件へ売上構成のシフトを図ってまいりましたが、水晶振動子ウエハ加工システムの開発をはじめとして順調に進んできております。引き続き、中長期的にはCELLFLOAT®システムを用いた汎用型機器の販売を推進するとともに、機器開発事業に注力し機器開発事業における新規事業分野の開拓に注力してまいります。
この結果、売上高は194,392千円(前期比96.3%増)、セグメント損失は24,509千円(前期はセグメント損失58,977千円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a. キャッシュ・フローの状況
当事業年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b. 資本の財源及び資金の流動性
当社の運転資金需要のうち主なものは、製造のための材料及び部品の購入費、人件費や研究開発費のほか、借入金の返済や法人税等の支払いです。このほか、会社の成長に必要な設備投資等を含め、収入と支出のバランスを考慮して資金運用を実施することを主たる方針としています。
一方、販売には季節的要因の影響は少ないものの、販売先の決算月に納期を指定されることや製品の受注から完成までに1年前後の期間が必要であるため、受注及び販売の状況によっては一時的な売上債権、仕入債務、たな卸資産等の増減があり、営業活動によるキャッシュ・フローの増減に影響を及ぼす可能性があります。
運転資金及び設備投資資金については、原則として自己資金で賄うこととしておりますが、多額の設備投資資金が必要となった場合は、必要資金の内容に応じて金融機関からの借り入れや資本市場からの直接調達を検討する方針であります。
なお、当事業年度末の有利子負債残高は2,613千円となっております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しています。これらの財務諸表の作成においては、経営者による会計方針の選択と適用を前提とし、資産・負債及び収益・費用の報告金額に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や将来における発生の可能性等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
(繰延税金資産)
繰延税金資産については、将来の利益計画に基づいて課税所得を見積り、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について計上しております。なお、当該課税所得を見積るにあたって前提とした条件や仮定に変更が生じこれが減少した場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。また、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
(受注損失引当金)
受注損失引当金については、損失発生の可能性が高く、かつ、事業年度末時点で当該損失額を合理的に見積ることができる受注製品について、翌事業年度以降の損失見込額を計上しております。損失の発生見込額については最善の見積りを行っておりますが、想定外の事象の発生等により、当初想定していなかった追加的な費用が生じることがあるため、実際の損失額は見積額と異なる可能性があります。
(固定資産の減損)
固定資産のうち減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。事業計画や市場環境の変化により、見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。
該当事項はありません。
当社は、放射光施設用X線ナノ集光ミラー等の開発販売を推進する「オプティカル事業」及び主に創薬、再生医療及びiPS細胞等に関連した各種細胞培養装置を開発販売する「ライフサイエンス・機器開発事業」の2つの事業を柱としておりますが、現在研究開発活動はこれら事業の関連技術を中心に実施しており、主にX線ナノ集光ミラーを中心としたX線光学素子及び独自の培養技術を用いた各種細胞培養装置を中心に開発を継続しております。
なお、研究開発費については、細胞培養センターで行っている各セグメントに配分できない基礎研究費用26,639千円が含まれており、当事業年度の研究開発費の総額は
(1) オプティカル事業
当事業年度のオプティカル事業においては、以下の研究開発を推進してまいりました。
① 放射光施設用X線集光ミラーの生産性の向上や高精度化を目指したナノ加工技術及びナノ計測技術に関する研究開発
・ナノ加工技術EEMとナノ計測技術RADSI及びMSIの高精度化、効率化を目指した研究開発
なお、このナノ加工・計測技術の実用化に成功した本事業について、2020年6月経済産業省により、世界市場のニッチ分野で勝ち抜いている企業や、国際情勢の変化の中でサプライチェーン上の重要性を増している部素材等の事業を有する企業を選定する「2020 年版グローバルニッチトップ企業100 選」に素材・化学部門で選定されました。これは、当社主力製品である「大型放射光施設及びX線自由電子レーザー施設などで用いられる放射光用X線ミラー」が評価されたことによるものであります。
・大気圧プラズマを利用したドライエッチング技術である「プラズマCVM」の実用化開発
・触媒表面基準エッチング技術である「CARE」の実用化開発
② 放射光施設向けの次世代商品の開発
・形状可変ミラーのアプリケーションのソフト開発
・回転楕円ミラー
・ウォルターミラー
③ 第3の事業を目指したX線ミラー及び加工技術の適用化開発
・半導体、宇宙分野でのX線ミラー及び回折格子等の適用化開発
・次世代フォトマスク基板での当社独自のEEMナノ加工技術の適用化開発
その結果、オプティカル事業に係る当事業年度の研究開発費は
(2) ライフサイエンス・機器開発事業
当事業年度のライフサイエンス・機器開発事業においては、以下の通りの機器開発や競争的資金・開発助成金を積極的に活用し、以下の研究開発を推進してまいりました。
① 各種自動細胞培養装置の開発
・MakCell(iPS細胞用の自動細胞培養装置CellPet®シリーズの後継機種)
・KB2000(100枚程度のプレートを同時培養可能な中規模の自動細胞培養装置)
② 再生医療関連の研究開発
・当該事業年度に採択されたステップアップ研究事業
「ヒト弾性軟骨デバイスを用いた頭頚部形態異常疾患に対する新規治療法の開発」(令和2年度「橋渡し研究戦略的推進プログラム」日本医療研究開発機構(AMED):2020年~2021年度)横浜市立大学、東京大学、神奈川県立こども医療センター、株式会社ジェイテックコーポレーション
・その他の共同研究
心筋細胞の前臨床研究(大阪大学医学部との共同開発)
③ iPS細胞関連の研究開発及び商品開発
・当事業年度中に終了した研究助成事業
3次元培養技術CELLFLOAT®を用いたiPS細胞等の3次元大量培養技術の開発(当事業年度継続の研究助成事業)
「iPS細胞等幹細胞の高効率な継代作業を実現した3次元大量継代培養技術の実用化開発」(戦略的基盤技術高度化支援事業 中小企業経営支援等対策費補助金、経済産業省:2017年9月~2020年3月)大阪大学医学部、大阪大学工学部、株式会社ジェイテックコーポレーション
・当事業年度に採択された新たな研究助成事業
iPS細胞等の大量細胞凝集塊分散技術の開発
「iPS 細胞等による分化製造プロセスにおける高効率な大量細胞凝集塊分散技術ならびに自動化装置の研究開発」(令和2年度「戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)経済産業省:令和2年度~令和4年度:3ヶ年):株式会社ジェイテックコーポレーション、大阪大学医学部、大阪大学工学部
・商品開発
CellPet® CUBE(オルガノイド培養向けに特化した培養装置)、酸素透過型の培養容器
④ その他当事業年度に採択された新たな助成研究事業
・「再生医療・創薬の実用化研究に寄与するiPS細胞等の培養ベッセル開発」令和元年度補正・令和二年度補正ものづくり・商業・サービス経営力向上支援補助金 全国中小企業団体中央会(経済産業省):令和2年度:株式会社ジェイテックコーポレーション
⑤ 第3の事業を目指した取組み
・水晶振動子ウエハ加工システム(PCVM加工装置、膜厚検査装置及び搬送ユニット)の機器開発
⑥ 医療機器の開発
医療機器の製造販売を目指し、大学や研究機関との共同研究を進めております。
・薬剤徐放デバイス製造装置(東北大学医学部)
・骨髄単核球分離装置(先端医療振興財団)
その結果、ライフサイエンス・機器開発事業に係る当事業年度の研究開発費は
また、当社の細胞培養センターでは、当事業年度は当社が開発した自動細胞培養装置KB2000、MakCell®や新しい培養容器の上市に向けた培養評価等の実施や、大阪大学医学部や横浜市立大学医学部との共同研究を実施しました。また、その他大学や企業と様々な培養技術に関する共同研究を積極的に実施してまいりました。