当社グループの経営方針、経営環境、及び対処すべき課題は、以下の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは「オプティカル事業」、「ライフサイエンス・機器開発事業」及び「その他事業(電子科学株式会社を含む)」の3つの事業を有しております。
(1) 経営方針
当社は、「世の中にないオンリーワンの技術により製品を作り出し、広く社会に貢献する」ことを経営理念に掲げ、各種産業分野の技術発展に寄与し、創薬や再生医療をはじめとした先端技術の研究及び実用化の促進に役立つことにより、「科学技術イノベーションの創出に貢献する製品開発を推進する」ことを経営方針に定めております。
(2) 経営環境等
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限が世界的に緩和へ向かい、我が国におきましても感染症法上の位置付けが「2類相当」から「5類感染症」へ移行したことに伴い、長く続いた経済・社会活動に対する制限が緩和され、概ね正常化に至っております。その一方で、コロナ禍による生活様式の変化や労働力不足に伴う賃金上昇、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う資源や食料品などの価格高騰の影響により世界的インフレが発生、インフレ抑制に向けた金融政策の影響による景気動向の先行き不透明感などによって世界経済の不確実性が高まっております。
このような経済環境のもと当社グループは、オプティカル事業、ライフサイエンス・機器開発事業及びその他事業(電子科学株式会社を含む)という独自の技術を利用した3つの事業によって、高品質な製品提供と研究開発活動の強化に取組み、経営基盤拡充と企業価値向上に努めてまいりました。
オプティカル事業においては、新型コロナウイルス感染症の影響による活動停滞が徐々に緩和され、国内外の放射光施設やX線自由電子レーザー施設においては通常稼働の状態に至っており、国内の次世代放射光施設NanoTerasuをはじめ、中国及び欧米の放射光施設のバージョンアップや新設の計画も順調に推移しております。
そのため受注環境も好転しており、特に中国では各主要都市において放射光施設及びX線自由電子レーザー施設の新設やバージョンアップが進められていることから、北京市の次世代放射光施設「HEPS」、上海のX線自由電子レーザー施設「SHINE」からは継続的な受注に至るとともに、立上げ計画中の合肥市や深圳市の関連施設から複数の問合せを受けております。また、欧州につきましては、エネルギー、半導体に関する最先端研究の活性化に伴い、スペイン、イタリア、フランスの中規模放射光施設においても高精度ミラーの需要が高まっており、現在進めている市場開拓の成果が順調に得られております。良好な市場環境を活かし、取引拡大に努めてまいります。
ライフサイエンス・機器開発事業おいては、重点新規事業分野として掲げる、各半導体材料を主たる対象としたナノ表面加工技術(触媒基準エッチング法(CARE)関連装置、プラズマ援用研磨法(PAP)、プラズマ化学気相化加工法(PCVM))を搭載した装置の商品化、受注及び販売活動を推進によって、独自の表面加工・研磨技術及び装置の開発推進、実用化へと展開を図ってまいりましたが、セミコン・展示会への出展や自社セミナーの開催などの効果もあり、当社技術を高く評価いただくユーザー数が徐々に拡大しております。今後も更に営業の展開力を高め、販路拡大や大手企業との共同開発契約締結に繋げるなど、各種半導体材料等の表面加工技術の実用化と高度化を図り、製品展開を推進してまいります。
ライフサイエンス関連事業を取巻く環境につきまして、昨今の長時間労働是正による労働環境改善が全ての業界の重要課題となっており、各研究機関においても自動培養装置導入への意欲が高まりをみせております。また東京医科歯科大学において、当社独自の3次元回転浮遊培養技術をもとに開発した当社の装置を用いて、iPS細胞由来のヒト腸管オルガノイド(HIO)の生成に成功されたことを受け、国内のみならず、海外のユーザーからも当社製品に関する問い合わせが拡大しております。
その他事業である子会社の電子科学株式会社においては、主力製品である昇温脱離分析装置(TDS)の需要が現在の半導体や液晶・カラーフィルター企業向けのみならず、鉄鋼、電機、自動車、水晶振動子等の様々な産業分野にも市場拡大が見込まれるため、既存製品の販売だけでなく、新しい製品の企画、創出に注力し、新たな市場に製品投入することで新規顧客の開拓を進め、収益力の拡大に努めてまいります。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 事業活動に関わる課題
(オプティカル事業)
・放射光施設関連
オプティカル事業の主なユーザーである国内外の放射光施設及びⅩ線自由電子レーザー施設はコロナ禍によって停滞していた研究活動が復調しており、ミラーの需要もコロナ禍前の状態に回復しております。
欧州、米国、中国では新設及び第4世代へのアップグレードに伴う新設ビームラインの中期的な開発計画が始動しており、すでに一部の施設からは各種ミラーの受託に至っております。その他の施設からも継続的に問い合わせを受けており、具体的な仕様の検討に着手しております。
一方、国内においても、大型放射光施設「SPring-8」やⅩ線自由電子レーザー施設「SACLA」だけでなく、2024年稼働予定の東北大学に隣接する次世代放射光施設(NanoTerasu)からの引合いも増え、受注も順調に推移しております。
このように世界規模で拡大している放射光施設及びⅩ線自由電子レーザー施設からのⅩ線ミラーの需要増大要求に的確に応えるため、生産設備の増強や生産工程の短縮化によって生産性の向上を図ることが重要課題であると認識しております。2022年11月に稼働を開始した栃木生産技術センターの生産能力を最大限活用し、前加工工程を依頼する外注加工先を含めて、全社の連携強化を図り生産工程全体の効率化を目指してまいります。
また、世界各地で放射光施設やⅩ線自由電子レーザー施設の新設や第4世代放射光施設へのバージョンアップにより光源性能の向上が伴うため、これまで以上に高い精度がミラーに要求されております。当社は主力製品とするナノ集光ミラーのさらなる高精度化を促進するとともに、新たな光学系の積極的な開発・販売も推進してまいります。
・半導体・宇宙等に関連する光学部品への展開
各種Ⅹ線ミラー(光学素子)は、従来技術では不可能であった表面形状の超高精度化を実現することができ、さまざまな産業分野においてビジネスを展開するための技術的ポテンシャルを有しております。
宇宙や半導体といった産業において光学部品は必要不可欠な存在であり、これらに対し、当社がこれまで大阪大学との共同研究で開発を進めてきたナノ加工技術(EEM、プラズマCVM、CARE)とナノ計測技術(RADSI、MSI)が精度的に十分活用できるレベルにあるため、特に高性能化傾向が強く量産化速度の高い半導体分野に参入する上で重要な要素の技術となります。
現在、宇宙ならびに半導体の露光、検査に関わる高精度光学部品の問い合わせを複数頂いており、テスト加工の受託や大手メーカーとの共同研究開発の締結なども進み、技術検討から開発・試作フェーズに進んでいる案件も多くあります。オプティカル事業の展開によって蓄積された光学素子に関連する知見と技術を活かし、半導体産業などでの利用が見込まれる光学素子製品を中心として、ミラー製品の需要に左右されない新たな事業の柱を構築してまいります。
<ライフサイエンス・機器開発事業>
・ライフサイエンス事業
新型コロナウイルス感染症が世界的に収束へ向かい、これまでの行動制限や様々な規制が緩和される中、生命科学の領域におきましても、働き方改革を実現するための長時間労働是正による労働環境の改善と景気回復に伴う人手不足の影響を受け、自動細胞培養装置を導入する機運が高まっております。そのような中、当社におきましても大型自動培養装置をはじめ、低価格の汎用型自動細胞培養装置「MakCell®」の引合いが増加しており、その地域は国内に止まらず、海外からの引合いも増加傾向にあります。このような環境の変化による国内外からのニーズ増加への対応を進め、積極的に営業活動を展開することで収益確保に努めてまいります。
また、2022年11月に東京医科歯科大学において、当社独自の3次元回転浮遊培養技術「CELLFLOAT®」をもとにした「CellPet3D-iPS®」を用いて、iPS細胞由来のヒト腸管オルガノイド(HIO)の生成に成功され、再生医療に大きな期待が寄せられております。当該製品に関しましても、これを契機に国内のみならず、海外のユーザーからも問い合わせが拡大しております。対象マーケットの幅を広げ、顧客ニーズを細胞培養に関わる新たな商品開発につなげるとともに、対応可能な商材の拡大を図り、ライフサイエンス分野の成長を促すことで、人類、社会の健やかな発展に寄与してまいります。
さらに、当社は「国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下AMED)」が募集する研究開発委託事業「令和5年度橋渡し研究プログラム(シーズF)」において、研究代表者である東京大学、橋渡し研究支援機関である大阪大学、そのほか公立大学、公立病院、再生医療企業とともに、ヒト小児の組織から再構築した弾性軟骨デバイスによる「小児鼻変形疾患」の治療法の開発課題を提案し、採択されました。今回の委託事業において当社は、弾性軟骨デバイス製造で必要不可欠となる3次元回転浮遊培養装置「CellPet 3D®」とその培養容器「SV-100」を用いた臨床製造に係る研究開発を担っております。今後、本研究開発の推進により再生医療等製品事業に係る知見を高め、再生医療分野における培養装置・システムならびに消耗品の販売ビジネスや新規支援ビジネス等の事業展開につなげてまいります。
また、医療機器の開発も積極的に進めており、特にAMEDからの競争的資金を受け、公益財団法人神戸医療産業都市推進機構及び日本光電工業株式会社と進めている、脳梗塞治療に寄与する幹細胞分離機器(医療機器)の共同開発も計画通り推進してまいります。
・機器開発事業
当社設立当初より各種自動細胞培養装置を開発してまいりましたが、その自動化設計技術を活かし、当社の高精度KB型集光ミラーを用いた集光装置や各種OEM製品の製品開発を手掛けてまいりました。
創業以来の装置開発で培った技術を活かし、新たな事業の柱として、独自の表面加工・研磨技術及び装置の開発推進、実用化へと展開を図ってまいりました。当連結会計年度におきまして、新たな事業への展開に一定の成果が得られ、半導体事業の展開に関連するプラズマ化学気相加工法(PCVM)装置とプラズマ援用研磨法(PAP)装置(いずれも試作機)の販売実績に繋がりました。
上記の両装置にナノ表面加工技術の触媒基準エッチング法(CARE)装置を加えた次世代研磨装置を主体として、半導体製造装置、半導体デバイスメーカー、次世代に向けた基礎研究開発分野への展開を図ることで、半導体ビジネスへの進出に注力し、中長期的な成長を支える技術基盤の強化を実現してまいります。
当連結会計年度の第2四半期末には「SEMICOM Japan 2022」へ出展をした結果、複数企業からテスト加工の依頼を受けております。展示会への出展だけでなく、自社セミナーの開催やホームページの見直しと活用などによって営業の展開力を高め、販路拡大や大手企業との共同開発契約締結に繋げるなど、各種半導体材料等の表面加工技術の実用化と高度化を図り、製品展開を推進してまいります。
ライフサイエンス・機器開発事業においては、ライフサイエンス分野や半導体分野における独自の製品開発を積極的に進めて顧客を獲得するとともに、市場の拡大に備えるために優秀な技術者の確保、生産体制の強化、保守サービスの構築が重要課題であると認識しております。
このため当社では、優秀な技術者の確保のために積極的な中途採用活動を展開する一方で、生産体制の強化や保守サービスの構築につきましては、電子科学株式会社や新たな協力会社との関係構築によって対応してまいります。
<電子科学株式会社>
電子科学株式会社は、超高真空環境下で試料を加熱することで放出される微量の気体成分(主に水素、水)を高精度に分析する昇温脱離分析装置(TDS)を製造・販売しており、半導体や液晶業界を中心に材料の研究や、製造工程の評価と品質管理において高い評価を得ておりますが、これまでの顧客層のみならず、鉄鋼、電機、自動車、水晶振動子等の様々な産業分野にも市場拡大が見込まれております。
今後は、電子科学株式会社の分析技術と当社の自動化技術との連携を行い、新しい製品の企画、創出に注力し、新たな市場に製品投入することで新規顧客の開拓を進め、収益力の拡大に努めてまいります。営業活動地域についても、対象マーケットの幅を広げ、当社のオプティカル事業の海外チャネルを活用して積極的に営業活動を推進し、新規顧客の開拓を進め、収益力の拡大を図ってまいります。
② 技術開発体制の構築
当社グループの顧客の多くは基礎研究に取り組んでいる研究機関・大学・企業の研究者であり、この基礎研究の分野で成長するためには、最先端の技術動向のキャッチアップと継続的な技術開発を行う体制を構築し、継続的に付加価値を提供することが重要であると考えております。
このような認識のもと、オプティカル事業では国内外で開催される国際学会での企業展示だけでなく、当社の製品や最新の技術紹介等を積極的に発信してまいります。また、ライフサイエンス・機器開発事業においては細胞培養センターを活用し、オープンイノベーションの拠点として、最先端の技術開発に取り組んでいる研究機関や大学との共同研究や企業との事業連携を積極的に推進してまいります。
③ 営業力の強化
当社グループにおいて、事業規模を拡大させるためには営業力の強化が重要であると考えております。しかしながら、取り扱う製品はコンサルティング営業ができるような技術知識が必要となるため、即戦力となる営業人材の確保が難しく、継続的な営業人材の確保と強化が重要な課題であると考えております。具体的には、技術者の社内ローテーションや物理学等の基礎学力を有している人材の採用活動によって営業人材を確保し、入社後は教育を担当する上司による継続的なOJTの推進によって営業力の強化に注力してまいります。
オプティカル事業においては、世界的に新型コロナウイルス感染症の影響が収束したことにより、世界各地で行動制限が解除され、展示会や学会なども従来どおり開催されるようになりました。特に海外については対面営業に加えて、営業効率を考慮し、新型コロナウイルス感染症禍で活用したWEB会議も併用して商談を有効に進めてまいります。また、我が国への入国制限が解除されたことによって海外の研究者が来日され、当社にて商談する機会も得られており、今後も状況に応じてより効率的な営業手法を選択して、高い効果が得られるよう努めてまいります。
ライフサイエンス・機器開発事業においても、訪問とWEB会議を組み合わせて有効に営業活動を進めてまいります。直近においては、これまでの活動成果が徐々に表れ、当社が開発した自動細胞培養装置に関して、台湾、中国、韓国からの問合せが増加しております。同事業につきましても、よりニーズの高い地域を選定した海外への展開を徐々に進めており、有力地域での販売網の確立に努めてまいります。
④ 生産管理体制の強化
オプティカル事業において、需要が拡大しグローバルな競争に生き残っていくためには、生産管理の役割が大きくなっており、組織力強化が重要であると考えております。
一方、ライフサイエンス・機器開発事業及び電子科学株式会社は、新規事業を含めて、ファブレスによる柔軟な生産体制にて事業を展開しており、協力企業との緊密な連携体制が重要であると考えております。
さらに、今後の量産化や顧客ニーズの増加に伴う受注増に向けて、それぞれの製造工程、生産管理や品質管理等における最適なチェック体制を構築し、安定した品質の製品を提供する仕組みが必要不可欠となるため、生産管理体制を強化してまいります。
⑤ 内部管理体制の強化
電子科学株式会社の子会社化などによって当社グループの規模が徐々に拡大するに伴い、内部管理に関係する業務が多岐にわたって発生しておりますが、今後のさらなる成長のためには内部管理体制の一層の強化を図る必要があると認識しております。そのためには、内部管理の重要性に対する全社的な認識の強化を図り、また、法務・財務・経理・人事・広報・情報システム等に精通した人材も積極的に登用することによって、業務の有効性と効率性を高めてまいります。
(1)サステナビリティ基本方針の策定
「世の中にないオンリーワンの技術により製品を作り出し、広く社会に貢献する」の経営理念に基づき、グローバルニッチトップのモノづくり企業として、持続可能な開発目標(SDGs)やカーボンニュートラルの実現に寄与する高付加価値製品の開発と提供を通じて、環境、社会、経済のすべてにおいて持続可能な状態を実現する経営を目指します。
(2)推進体制
①ガバナンス
当社は週次で社内取締役と社内監査役をメンバーとした会議体を設けており、当該会議体において、環境、社会、従業員、コンプライアンスなどのサステナビリティ情報関連事項について協議を行ない、必要事項については月次で開催される取締役会へ報告、審議することでサステナビリティ体制の推進を図っております。
②戦略
当社製品を納入している国内の大型放射光施設「SPring-8」およびⅹ線自由電子レーザー施設「SACLA」におけるナノ領域での観察や制御は、カーボンニュートラルに資するグリーン分野において重要な研究開発要素であり、これまでにも蓄電池、燃料電池、触媒開発などで大きな成果を上げております。
当社取引先の理化学研究所、放射光科学研究センターと高輝度光科学研究センターは今後も産官学におけるグリーンイノベーションを目指すさまざまな研究開発活動を一層推進するグリーンファシリティとすることを宣言されております。
これは持続可能な開発目標(SDGs)や2050年カーボンニュートラルの実現に向け、両施設が有する世界最高性能の光をグリーン成長戦略に示された各分野で使ってもらうとともに、グリーンイノベーションに資する新分野開拓のため、産官学利用者へ、従来にも増して強力な支援を目的として宣言されたものとなります。
当社はこのナノ領域での観察や制御の高精度化、効率化を実現するために、本施設で広く使われている当社X線ミラーのより一層の高精度化や新規開発につとめ、技術開発やイノベーションを支援し、理化学研究所(理研)放射光科学研究センターと高輝度光科学研究センター(JASRI)の持続可能な開発目標(SDGs)や2050年カーボンニュートラルの実現に向けた産官学利用者の研究開発活動の支援に対して、当社はその一助となるように環境にやさしい持続可能な産業をつくることを支援し、我が国のこれからの発展に貢献してまいります。
③リスク管理
当社は「経営危機管理規程」や「コンプライアンス規程」を定めることで、危機事態の発生に備え、日常的に適性業務の維持・推進に努めており、社内取締役を中心メンバーとしたコンプライアンス委員会の運営において、当社事業に潜在しているリスクをコントロールするリスクマネジメントとリスクの顕在化によって発生したクライシスによるダメージを極小化するクライシスマネジメントに取組む体制を整備・運用しております。各部門担当取締役が管掌する事業部門におけるリスクとクライシスの事象を常に認識して対策を講じており、必要に応じてコンプライアンス委員会へ報告するとともに、取締役会へも情報共有する仕組みを構築しております。
(3)人的資本
①人材育成方針
当社では、人事考課制度により業務実績や能力等を総合的に勘案し、適性がある者を管理職に登用しており、性別・国籍・採用経路等での選別は行っておりません。採用に際しても、当社業務の特殊性を鑑み、高い専門性と技術力、豊かな実務経験を有した人材を求めていることから、女性及び外国籍者の採用実績もあり、採用経路に関しては社員の大半が中途採用という状況となっております。
長期成長戦略「Innovation2030」に掲げた目標達成に向けて、高い成長性を実現するため新たな人事制度導入に取組み、社内人材のモチベーションを高めるとともに、ハイレベルな外部人材の採用を円滑に進め、企業が成長するための源泉である人材の確保と育成に努めてまいります。
社員が各人の将来に向かってキャリアパスを描ける社内制度を導入することで、営業力、製造能力、技術開発力を意欲的に高められる職場環境の実現に取組んでまいります。
②環境整備
当連結会計年度における女性社員の産休・育休取得率と男性社員の育休取得率及び復職率は100%となっております。その他、病気や怪我、高齢などを理由に要介護となった家族を介護する場合などにも休暇制度の利用のみならず、各社員の事情を考慮した柔軟な対応を推進することで、雇用の継続と働きがいのある職場環境作りに努めております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。当社グループは、これらリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針です。また、本書に記載した事項は事業等に関連するリスクを全て網羅するものではありませんので、この点ご留意下さい。
(1) 技術の陳腐化について
当社グループのオプティカル事業における製造技術は、大阪大学独自の原子数個レベルの平坦さを実現する究極のナノ加工技術(ナノ加工技術EEMとナノ計測技術RADSI及びMSI)を基にしたもので、1ナノメートルレベルの形状精度を実現しております。本書提出日の現在においてこの状況に変化はありません。
しかしながら、将来において当社の製造方法と同等の精度レベル(本技術を超える精度は物理的に不可能)を実現する新たな製造方法が確立された場合には、価格面で影響を受け、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 国内外政府の施策とその影響について
当社グループのオプティカル事業の製品である放射光施設用のX線ナノ集光ミラー等は、放射光施設という専門性の高い施設等で使用されるもので、その施設の多くは公的研究施設、公的プロジェクトまたは大学等がビームライン(実験ハッチ)ごとに別々に研究事業を運営しております。当社製品を利用したこれら施設ではナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い最先端の研究がおこなわれており、今後も技術向上を図り、より優れた研究成果を創出し、継続していくものと予想されます。
また、現在国内では東北において、新しい放射光施設NanoTerasuの完成(2023年完成・2024年稼働開始の予定)を間近に控え、また海外では中国、欧州、アメリカ、ブラジルなどに第4世代の放射光施設の建設やバージョンアップの計画が進んでおり、少なくとも今後20年程度は世界的に需要が拡大傾向にあると判断しておりますが、将来国内外の政府の研究事業の実施方針において、放射光利用の重要度が大きく変更された場合、または制度の変更があった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 日本国政府の施策とその影響について
当社グループのライフサイエンス・機器開発事業の製品である各種自動細胞培養装置は、再生医療等においてiPS細胞をはじめとする各種細胞を培養するものであります。これらの製品は再生医療及び創薬の研究開発用として使用され、今後もこの分野での研究開発が進み、同時に市場が拡大するものと予想しておりますが、日本国政府の施策により、関連法令等が大幅に改正された場合、または研究開発活動が法規制により制限が加えられた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 外注委託先について
当社グループのオプティカル事業は、当社でのEEMによるナノ加工の前工程である粗加工仕上げ工程について、需要の拡大に対応するために内製化を進めておりますが、未だ多くを外注加工業者に委託しております。当社が外部委託先を選定するにあたっては事業の継続性を鑑み、良好な協力関係の構築・維持または高い品質管理能力を主な判断材料として慎重に選定しております。
また、ライフサイエンス・機器開発事業及び電子科学につきましても、ユーザーへの提案から開発・設計は自社で実施しておりますが、その後の製造に関しては外部の協力業者に製造を委託するファブレス化を進めており、オプティカル事業と同様に外部委託先の選定に際しては品質、コスト、製造に要する期間など製造能力を主な判断材料にして選定を進めております。
外部委託先については年次で製造能力に関する評価を実施しておりますが、今後需要が急拡大し外部委託先では対応しきれない場合や、新しい外注委託先が増えることによって、品質面及び納期面等において何らかの不具合を発生させる事象が確認された場合には、当社の業務に支障をきたし、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 製品に関する不具合、クレームについて
当社グループが販売・開発する製品等に関し、ユーザー等から訴訟を提起され、または損害賠償請求を受けたことはありません。また、不具合が生じたとしても早期に発見し是正するべく、サポート体制を構築しておりますが、当社が販売した製品等に予期しがたい欠陥等が発生し、製品回収や損害賠償等が発生した場合、多大な損害賠償金及び訴訟費用が必要となること等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 製造装置について
当社グループのオプティカル事業は、独自に設計・製作した製造装置を使用しております。これら製造装置については、高品質な製品の製造を実現するために、停電対策や所要のメンテナンスを随時実施しておりますが、何らかの不具合が発生した場合や自然災害、突発的な事故により製造装置が稼働不能となった場合等には、当社グループの業務に支障をきたし、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 為替リスクについて
当社グループは、製品の海外輸出が多く、為替レートの変動は外貨建て直接取引の売上高に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、想定を超える為替レートの変動が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 輸出について
輸出にあたり、仕向地ごとの政治や経済情勢、さらには文化や習慣等について調査・把握に努めておりますが、もしそれらが要因となる予期せぬ事件、事故等の事象が発生した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 業績の変動について
当社グループの主力製品であるX線ナノ集光ミラーは、その製造過程でナノ加工EEMとナノ計測RADSI及びMSIについて仕様を満たすまで交互に何度か繰り返す必要があることから、製造工程は製品ごとに異なり、受注から出荷までの期間が1年程度かかります。また、研究開発の要素の高い仕様の場合、出荷予定月を過ぎることも起こり得ます。このような状況が生じた場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、X線ナノ集光ミラーの単価は非常に高額で3,000万円近くするものもあり、あわせて受注時期が偏る傾向にあるため、特定の四半期業績のみによって通期の業績見通しを判断することは困難であります。
また最近では、新型コロナ感染症やロシアのウクライナ侵攻などによる情勢の変化によって、世界的な資材価格の高騰と供給不足が発生したことで、製造に必要な部材の調達に影響を及ぼしております。今後、様々な自然現象や国家間の紛争発生リスクなどの影響を受け、当社グループ及び外注委託先において必要な部材の調達が困難となる状況が生じた場合、当社の経営に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 知的財産権について
当社グループは、新たな技術や独自のノウハウを蓄積し、知的財産権として権利取得するなど法的保護に努めながら研究開発活動を推進しています。また、仮に特許侵害が試みられたとしても同様の製品が製造されないよう独自のノウハウは公開しておりません。しかし、特定地域での法的保護が得られない可能性や、当社の知的財産権が不正使用される可能性があることは否めず、さらに人材移転や悪意を前提とする情報漏洩等により技術・ノウハウが外部に流出する可能性もあります。このような状況が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
他方、他社が有する知的財産権についても細心の注意を払っておりますが、当社が第三者の知的財産権を侵害していると司法判断された場合、当社グループの生産・販売の制約や損害賠償金の支払いが発生する可能性もあります。
(11) 固定資産の減損について
当社グループでは、土地、建物、機械設備等多くの有形固定資産を保有しています。当該資産から得られる将来キャッシュ・フローの見積りに基づく残存価額の回収可能性を定期的に評価していますが、当該資産から得られる将来キャッシュ・フロー見込額が減少し、回収可能性が低下した場合、固定資産の減損を行う必要が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 自然災害・テロおよび感染症について
当社グループ及び当社グループ取引先の事業拠点や関係先が地震、豪雨、防風などの自然災害やテロなどによって甚大な被害を被った場合には復興に際して多大なる費用と時間を要することになります。加えて、当該事象が発生することで当社グループ及び当社グループ取引先の事業拠点が被害を受けることによって商取引の継続が困難となり、当社グループの経営成績に著しい悪影響を及ぼす可能性があります。また、感染症の発生によるパンデミックに至った場合には、当社グループ及び当社グループ取引先の従業員の安全確保と感染拡大防止のために行動が制限されることで、当社グループの事業活動に様々な制約を受ける可能性があります。
(13) 東京証券取引所「プライム市場」の上場維持基準に適合しないリスクについて
当社は、東京証券取引所の市場区分見直しにあたり、株式流通時価総額がプライム市場の上場維持基準を満たしていなかったことから、同取引所へ上場維持基準の適合に向けた計画書を提出し、プライム市場に移行しましたが、2023年6月末時点において当該基準を満たしておりません。2025年6月期までに上場維持基準を満たすため、各種取組みを進めてまいりますが、財政状態及び経営成績並びに市場環境や経済情勢によっては2025年6月期までに当該基準を満たすことができず、プライム市場において当社株式の上場を維持することができない可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限が世界的に緩和へ向かい、我が国におきましても感染症法上の位置付けが「2類相当」から「5類感染症」へ移行したことに伴い、長く続いた経済・社会活動に対する制限が緩和され、概ね正常化に至っております。
このような経済環境のもと当社グループは、オプティカル事業、ライフサイエンス・機器開発事業及びその他事業(電子科学株式会社を含む)という独自の技術を利用した3つの事業によって、高品質な製品提供と研究開発活動の強化に取組み、経営基盤拡充と企業価値向上に努めてまいりました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a. 財政状態
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ237,986千円増加し、3,465,019千円となりました。
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ13,204千円減少し、986,110千円となりました。
当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ251,191千円増加し、2,478,908千円となりました。
b. 経営成績
当連結会計年度における経営成績は、売上高1,908,375千円(前連結会計年度比65.8%増)、営業利益306,672千円(前連結会計年度は営業損失71,221千円)、経常利益364,257千円(前連結会計年度は経常損失26,981千円)、親会社株主に帰属する当期純利益238,189千円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失32,127千円)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
オプティカル事業は、売上高は1,195,387千円(前連結会計年度比53.3%増)、セグメント利益は501,175千円(同104.2%増)となりました。
ライフサイエンス・機器開発事業は、売上高は324,885千円(前連結会計年度比23.7%増)、セグメント利益は1,533千円(同73.5%減)となりました。
その他事業は、売上高は388,102千円(前連結会計年度比257.6%増)、セグメント利益は86,696千円(前連結会計年度はセグメント損失60,973千円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ50,803千円増加し、当連結会計年度末には783,128千円となりました。
当連結会計年度における活動ごとのキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は210,359千円(前連結会計年度は284,185千円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益361,571千円に加え、のれん償却額42,382千円、仕入債務の増加55,686千円があった一方、売上債権の増加328,043千円があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は84,742千円(前連結会計年度は132,592千円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出77,958千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は75,504千円(前連結会計年度は273,583千円の使用)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出75,456千円によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2022年7月1日 至 2023年6月30日) |
|
|
生産高(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
オプティカル事業 |
1,056,805 |
110.4 |
|
ライフサイエンス・機器開発事業 |
326,091 |
111.6 |
|
その他事業 |
497,795 |
321.7 |
|
合計 |
1,880,691 |
133.9 |
(注)金額は製造原価によっております。
b. 受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2022年7月1日 至 2023年6月30日) |
|||
|
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
オプティカル事業 |
1,150,223 |
104.1 |
874,472 |
95.0 |
|
ライフサイエンス・機器開発事業 |
453,347 |
248.5 |
131,077 |
5,009.4 |
|
その他事業 |
436,329 |
160.3 |
239,499 |
125.2 |
|
合計 |
2,039,900 |
130.8 |
1,245,050 |
111.8 |
(注)金額は販売価格によっております。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2022年7月1日 至 2023年6月30日) |
|
|
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
オプティカル事業 |
1,195,387 |
153.3 |
|
ライフサイエンス・機器開発事業 |
324,885 |
123.7 |
|
その他事業 |
388,102 |
357.6 |
|
合計 |
1,908,375 |
165.8 |
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
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相手先 |
前連結会計年度 (自 2021年7月1日 至 2022年6月30日) |
当連結会計年度 (自 2022年7月1日 至 2023年6月30日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
Advanced Photon Source Argonne National Laboratory |
- |
- |
216,097 |
11.3 |
|
国立研究開発法人理化学研究所 |
230,565 |
20.0 |
209,631 |
11.0 |
(注)販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満のものについては記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 財政状態
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は1,677,316千円となり、前連結会計年度末に比べ375,920千円増加いたしました。これは主に、売掛金が328,388千円増加したことによるものであります。固定資産は1,787,703千円となり、前連結会計年度末に比べ137,933千円減少いたしました。これは主に、のれんの償却が進んだことによって無形固定資産が45,943千円減少し、繰延税金資産が60,055千円減少したことによるものであります。
この結果、総資産は3,465,019千円となり、前連結会計年度末に比べ237,986千円増加いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は451,434千円となり、前連結会計年度末に比べ65,780千円増加いたしました。これは主に、契約負債が75,955千円減少した一方で、仕入債務である買掛金が55,686千円、未払費用が32,450千円、未払法人税等が47,204千円増加したことによるものであります。固定負債は534,676千円となり、前連結会計年度末に比べ78,985千円減少いたしました。これは主に、約定返済が進んだことにより長期借入金が75,456千円減少したことによるものであります。
この結果、負債合計は986,110千円となり、前連結会計年度末に比べ13,204千円減少いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は2,478,908千円となり、前連結会計年度末に比べ251,191千円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益を238,189千円計上したことによるものであります。
b. 経営成績
(売上高及び営業利益)
当連結会計年度における売上高は、1,908,375千円(前連結会計年度比65.8%増)となりました。これは主に、オプティカル事業において、放射光施設及びⅩ線自由電子レーザー施設用のⅩ線ナノ集光ミラーの売上が牽引するとともに、ライフサイエンス・機器開発事業及び子会社の電子科学株式会社の売上が寄与しております。この結果、売上総利益は1,164,868千円(前連結会計年度比66.4%増)となりました。また、販売費及び一般管理費は858,196千円(前連結会計年度比11.3%増)となり、当連結会計年度における営業利益は306,672千円(前連結会計年度は営業損失71,221千円)となりました。
(経常利益)
営業外収益では、経済産業省による戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)における補助金収入等を計上しました。また、営業外費用では、支払利息及び投資事業組合運用損等を計上しました。これらの結果、当連結会計年度における経常利益は364,257千円(前連結会計年度は経常損失26,981千円)となりました。
(当期純利益)
特別損失を2,986千円計上いたしましたが、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は238,189千円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失32,127千円)となりました。
c. セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(オプティカル事業)
当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症の影響による活動停滞が徐々に緩和され、期中の出荷が例年に増して順調に推移いたしました。第4四半期において、一部ユーザー向けの製品につきまして、高精度製品への仕様変更の要望に対応したことによる納入計画変更の影響があったものの、国内向け(施設:SPring-8、SACLA、NanoTerasu)、中国向け(施設:HEPS、SSRF)、アメリカ向け(施設:APS、LCLS)、EU向け(施設:ESRF、Eu-XFEL)の売上が中心となり、当連結会計年度の経営成績を牽引いたしました。
短期滞在ビザ免除措置の停止など、一部の国では日本からの渡航に制限が継続している状態ではあるものの、国内外の放射光施設やX線自由電子レーザー施設においては通常稼働の状態に至っており、国内の次世代放射光施設NanoTerasuの建設をはじめ、中国及び欧米の放射光施設のバージョンアップや新設の計画も順調に推移しております。
そのため受注環境も好転しており、特に中国では各主要都市において放射光施設及びX線自由電子レーザー施設の新設やバージョンアップが進められていることから、北京市の次世代放射光施設「HEPS」、上海のX線自由電子レーザー施設「SHINE」からは継続的に受注するとともに、立上げ計画中の合肥市や深圳市の関連施設から複数の問合せを受けております。また、欧州につきましては、エネルギー、半導体に関する最先端研究の活性化に伴い、スペイン、イタリア、フランスの中規模放射光施設においても高精度ミラーの需要が高まっており、現在進めている市場開拓の成果が順調に得られております。
営業活動につきましては、国内ユーザーはもとより、中国を除いた海外ユーザーについても渡航による対面での営業活動を再開しております。中国の各施設に対しては渡航しての営業活動が再開に至っていないものの、現地の研究者が来日されることによる商談機会が確保されており、多方面に対して積極的に営業活動を進めております。
オプティカル関連の学会についてもオンライン開催からリアル開催に移行しており、学会参加を通じて様々な大学や放射光施設の研究者に向けて当社のミラー事業をアピールする機会を確保しております。
また、これまで培ってきた表面創生技術を活かして、高精度レンズ加工などの非ミラー品への展開も開始しており、収益機会の確保に努めてまいりました。
この結果、売上高は1,195,387千円(前期比53.3%増)、セグメント利益は501,175千円(同104.2%増)となりました。
(ライフサイエンス・機器開発事業)
当連結会計年度においては、ライフサイエンス・機器開発事業の重点新規事業分野として掲げる、各半導体材料を主たる対象としたナノ表面加工技術である触媒基準エッチング法(CARE)、プラズマ援用研磨法(PAP)、プラズマ化学気相化加工法(PCVM)を搭載した装置の商品化、受注および販売活動を推進してまいりましたが、第4四半期におきまして、プラズマ化学気相加工法装置1台とプラズマ援用研磨法装置2台を受注し、いずれも検収に至り、売上を計上いたしました。当社は新たな事業の柱として独自の表面加工・研磨技術及び装置の開発推進、実用化へと展開を図ってまいりましたが、当該受注と検収は当社技術を高くご評価いただいた結果であると考えております。
第2四半期末には「SEMICOM Japan 2022」へ出展をいたしましたが、その結果、複数企業からテスト加工の依頼を受けております。展示会への出展だけでなく、自社セミナーの開催やホームページの見直しと活用などによって営業の展開力を高め、販路拡大や大手企業との共同開発契約締結に繋げるなど、各種半導体材料等の表面加工技術の実用化と高度化を図り、製品展開を推進してまいります。
一方、ライフサイエンス機器では「MakCell®」、「CellPet3D-iPS®」など当社が開発した機器の他、大手製薬企業から受託した特注機器の売上が寄与いたしました。
その他、SPring-8における光源高度化に必要となる開発品の検証試験受託業務、グラビア印刷試験機(GP-10)用制御基板、水冷式冷却器や単核球分離装置用の消耗品関連による売上を計上いたしました。
この結果、売上高は324,885千円(前期比23.7%増)、セグメント利益は1,533千円(同73.5%減)となりました。
(その他事業)
その他事業は子会社の電子科学株式会社であります。電子科学の売上構成は、装置販売(TDS:昇温脱離分析装置)及び大型工事、装置のメンテナンス業務、受託分析業務の3つに分かれますが、受注金額が大きくなる主力事業の装置販売及び大型工事において5件(販売先:韓国、台湾、国内)の売上を計上したことにより昨年実績を大きく上回る結果となりました。装置販売につきましては設置・導入作業が必須となりますが、主なユーザー企業のある韓国及び台湾において、新型コロナウイルス感染症の影響による渡航制限が緩和されたため、現地での作業が可能となり、売上を計上するに至りました。
この結果、売上高は388,102千円(前期比257.6%増)、セグメント利益は86,696千円(前連結会計年度はセグメント損失60,973千円)となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a. キャッシュ・フローの状況
当事業年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b. 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製造のための材料及び部品の購入費、人件費や研究開発費のほか、借入金の返済や法人税等の支払いです。このほか、会社の成長に必要な設備投資やM&A投資等を含め、収入と支出のバランスを考慮して資金運用を実施することを主たる方針としています。
一方、販売には季節的要因の影響は少ないものの、販売先の決算月に納期を指定されることや製品の受注から完成までに1年前後の期間が必要であるため、受注及び販売の状況によっては一時的な売上債権、仕入債務、棚卸資産等の増減があり、営業活動によるキャッシュ・フローの増減に影響を及ぼす可能性があります。
運転資金、設備投資資金及びM&A投資資金については、原則として自己資金で賄うこととしておりますが、多額の設備投資資金やM&A投資資金が必要となった場合は、必要資金の内容に応じて金融機関からの借り入れや資本市場からの直接調達を検討する方針であります。
なお、当連結会計年度末における借入金である有利子負債残高は597,419千円となっております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 ⑴ 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
当社グループは、放射光施設用X線ナノ集光ミラー等の開発販売を推進する「オプティカル事業」、主に創薬、再生医療及びiPS細胞等に関連した培養技術の開発や各種細胞培養装置や次世代加工・研磨装置を中心とする各種自動化装置を開発・販売する「ライフサイエンス・機器開発事業」及び「その他事業(電子科学株式会社を含む)」の3つの事業を柱としております。現在の研究開発活動は、これら事業の関連技術を中心に実施しており、主にX線ナノ集光ミラーを中心としたX線光学素子、独自の培養技術を用いた各種細胞培養装置及び独自の加工・計測技術をもとにした各種自動化装置等を中心に研究開発を継続しております。
さらに、現在同時に3件の競争的資金をもとに研究開発事業(委託研究事業、研究助成事業)を進め、製品化を目指しております。
なお、研究開発費については、細胞培養センターで行っている各セグメントに配分できない基礎研究費用17,423千円が含まれており、当連結会計年度の研究開発費の総額は
(1) オプティカル事業
当連結会計年度のオプティカル事業においては、以下の研究開発を推進してまいりました。
① 放射光施設用X線集光ミラーの生産性の向上や高精度化を目指したナノ加工技術及びナノ計測技術に関する研究開発
<当連結会計年度継続の研究助成事業>
「X線測定・分析の高効率化に資する高精度2次元集光X線ミラーの製造法の開発」令和3年度「戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)」経済産業省2021年~2023年度、参加機関:株式会社ジェイテックコーポレーション、大阪大学、名古屋大学、宇宙科学研究所(JAXA)、アドバイザー:理化学研究所、高輝度光科学研究センター
② 放射光施設向けの次世代商品の開発
形状可変ミラー、回転楕円ミラー、回転ウォルターミラー、チャネルカット結晶等
③ X線光学素子の新しい事業展開を目指した計測・加工技術の適用化開発
大気圧プラズマを利用したドライエッチング技術である「プラズマ化学気相加工法(PCVM)」、及び「触媒表面基準エッチング法(CARE)」の実用化開発を実施し、半導体、宇宙分野での光学素子への適用化開発を進めております。
その結果、オプティカル事業に係る当連結会計年度の研究開発費は
(2) ライフサイエンス・機器開発事業
当連結会計年度のライフサイエンス・機器開発事業においては、以下の通りの機器開発や競争的資金(委託研究事業、研究助成事業)を積極的に活用し、以下の研究開発を推進してまいりました。
汎用型自動細胞培養装置の開発
MakCell®(iPS細胞用の自動細胞培養装置CellPet®シリーズの後継機種)の量産化開発を実施いたしました。
再生医療関連の研究開発
<当連結会計年度継続の委託研究事業>
「ヒト弾性軟骨デバイスを用いた小児顔面醜形に対する新規治療法の開発」
令和5年度「橋渡し研究戦略的推進プログラム シーズF」日本医療研究開発機構(AMED):2023年~2027年度、研究代表機関:東京大学、橋渡し研究支援機関:大阪大学、その他参加機関:株式会社ジェイテックコーポレーションを含む4社
<当連結会計年度継続の研究助成事業>
「iPS 細胞等による分化製造プロセスにおける高効率な大量細胞凝集塊分散技術ならびに自動化装置の研究開発」令和2年度「戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)」経済産業省:2020年~2022年度参加機関:株式会社ジェイテックコーポレーション、大阪大学医学部、大阪大学工学部
③ 医療機器の開発
<当連結会計年度継続の委託研究事業>
「治療機序に基づき最適化した効率的な脳梗塞治療用幹細胞分離機器の研究開発」令和3年度「橋渡し研究戦略的推進プログラム」日本医療研究開発機構(AMED):2021年~2023年度
研究代表機関:公益財団法人神戸医療産業都市推進機構、参加機関:株式会社ジェイテックコーポレーション、日本光電工業株式会社
本開発を通じて医療機器として脳梗塞治療用の幹細胞分離機器の製造販売を目指します。
<薬剤徐放デバイス製造装置(東北大学医学部から東京医科歯科大学に研究拠点を移動)>
第2相の治験での適用を目指し、上記装置を試作開発しました。
④ 機器開発事業の取組み
<次世代加工・研磨装置の開発>
一昨年にパイロットユーザーへ納入し、実績を上げました独自の「プラズマ化学気相加工法(PCVM)」を用いた水晶振動子ウエハの厚みを均一に加工する量産加工システムの拡販に向けた改良、開発を継続しました。今後は、国内外の水晶振動子メーカーに販売してまいります。
また、「触媒基準エッチング法(CARE)」を技術導入して実用化開発を進めてまいりました。本技術を用いてパワー半導体やSAWフィルタなど半導体デバイス向けの研磨装置の試作開発へと進めてまいります。
更に、昨年11月には大阪大学と「プラズマ援用研磨法(PAP)」に関するノウハウ供与契約を締結いたしました。PAPは大阪大学の独自研磨技術であり、本研磨技術はSiC、GaN、単結晶ダイヤモンドなどを材料とした半導体基板の平坦化に適する将来の技術として期待されていることから、実用化開発を推進して半導体分野への適用を図ってまいります。
その結果、ライフサイエンス・機器開発事業に係る当連結会計年度の研究開発費は
また、当社の細胞培養センターでは、当連結会計年度は当社が開発した自動細胞培養装置KB2000、MakCell®や新しい培養容器の上市に向けた培養評価等の実施や、大阪大学工学部、大阪大学医学部、東京大学医科学研究所、横浜市立大学医学部との共同研究を実施しました。また、その他大学や企業と様々な培養技術に関する共同研究を積極的に実施してまいりました。
(3) その他事業
電子科学株式会社の昇温脱離分離装置(TDS)は当社のオプティカル事業の海外チャンネルを用い、営業の強化を図ってまいりますが、さらに同社の装置製造は、ファブレス方式のため、当社のライフサイエンス・機器開発事業の生産体制と同方式で、今後は、当社の生産管理をもとに体制を強化し、製造の効率化も図ってまいります。
また、同社の分析技術と当社の自動化技術を融合し、特に半導体分野において、共同で新しい製品の企画、開発を進めてまいります。第一弾として水素量に特化した昇温脱離水素分析装置「Cryo TDS-100H2」や現行装置を元に自動サンプルセット機能を追加した「TDS-1200Ⅱ ALS」の共同開発を急いでおります。
このように、当社とは営業面だけでなく、製造面や開発面でもシナジー効果が期待できます。
その結果、その他事業に係る当連結会計年度の研究開発費は