当社グループの経営方針、経営環境、及び対処すべき課題は、以下の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは「オプティカル事業」、「ライフサイエンス・機器開発事業」及び「その他事業(電子科学株式会社を含む)」の3つの事業を有しております。
(1) 経営方針
当社は、「世の中にないオンリーワンの技術により製品を作り出し、広く社会に貢献する」ことを経営理念に掲げ、各種産業分野の技術発展に寄与し、創薬や再生医療をはじめとした先端技術の研究及び実用化の促進に役立つことにより、「科学技術イノベーションの創出に貢献する製品開発を推進する」ことを経営方針に定めております。
(2) 経営環境等
当連結会計年度における世界経済は、継続的な物価の上昇や急激な為替変動に加えて、米国の政策動向、中国経済の低迷、中東やウクライナでの地域紛争などにより依然として景気への懸念事項が多く、先行き不透明な状況が続いております。
国内経済は、良好な企業業績を背景とした設備投資が引続き増加しており、賃上げによる実質賃金の改善によって個人消費も改善傾向にあり、堅調なインバウンド需要が加わって国内景気は緩やかな回復を続けております。
このような経済環境のもと当社グループは、オプティカル事業、ライフサイエンス・機器開発事業及びその他事業(電子科学株式会社を含む)という独自の技術を利用した3つの事業によって、高品質な製品提供と研究開発活動の強化に取り組み、経営基盤拡充と企業価値向上に努めてまいりました。
オプティカル事業においては、当連結会計年度は、国内市場ではSPring-8、SACLA、NanoTerasu、アジア市場では中国のSHINE(上海)、HALF(合肥)、IASF(深圳)、台湾のTPS、アメリカ市場ではLCLS、欧州市場ではEu-XFEL(ドイツ)、PSI(スイス)、ESRF(フランス)への売上が中心となり経営成績を牽引しました。世界各国において多くのアップグレードや新設を控えるに従い、ミラーの需要がこれまで以上に増大しておりますが、いずれの施設もより高い精度を実現するための綿密な設計検討に想定以上の時間を費やしたため、多くの案件で受注計画の変更や遅れが発生することとなりました。遅れて受注した案件については、生産計画の見直しにより一部の製品において大幅な工期短縮を果たしたものの、全体としては当初計画を下回る出荷数に留まり、売上高は前期比微減となりました。またセグメント利益につきましては人員増に伴う労務費の上昇などに伴い前期比減益となりました。
営業活動につきましては、国内外の主たる放射光分野の学会での発表を通じて、当社の研究・開発成果の進捗報告することによる当社技術のアピールに加え、光学全般を対象にした展示会においても当社の超精密加工・計測技術のアピールを継続的に展開しております。また、各国施設の研究者の訪日機会も増加し、商談のみならず共同研究の機会も確保され、売上向上を見据えた積極的な営業活動に努めてまいりました。
ライフサイエンス・機器開発事業おいては、機器開発事業はその重点分野として、各半導体材料を主たる対象としたナノ表面加工技術の装置化及び受注・販売活動を推進してまいりました。従来から継続している「プラズマ化学気相加工法(PCVM)」、「プラズマ援用研磨法(PAP)」、「触媒基準エッチング法(CARE)」に「電気化学機械研磨法(ECMP)」を加えた4つの新しい研磨プロセスによる拡販活動、潜在顧客の掘り起こし活動に注力してまいりました。その結果、設備導入を前提にした試作評価案件は大幅に増加し、そのうち、プラズマ援用研磨装置2台を受注し、売上に貢献しました。しかしながら、期初計画に沿った営業成果には至らず、実績は低調に推移する結果となりました。
一方、ライフサイエンス事業では「MakCell®」や各種CellPetシリーズが売上に貢献しました。しかしながら、自動培養装置や大型の細胞培養システムは、顧客の予算や方針変更により、期初計画に沿った受注・売上営業成果には至らず、実績は低調に推移する結果となりました。そのため事業としての収益は前期比減収減益となりました。
営業活動の状況につきましては、個別顧客訪問による営業活動やホームページからの問い合わせ対応だけでなく「SEMICON Taiwan 2024」、「SEMICON Japan 2024」、「SiC・GaN加工技術展」等半導体関連の専門性の高い展示会へ出展し、積極的な広報活動と新規顧客開拓を行ってまいりました。その結果、「プラズマ援用研磨法(PAP)」、「電気化学機械研磨法(ECMP)」を中心に複数企業からテスト加工の依頼を受け、試作と顧客評価を進めてまいりました。今後更なる技術のブラッシュアップと営業の展開力アップを図り、市場ニーズに合致した装置の提供と、販路拡大や顧客との共同開発等の実現によって売上拡大を推進してまいります。
ライフサイエンス事業におきましては、自動培養装置は営業活動や展示会、学術誌への寄稿に対する反響を受け、医療現場の労働環境改善という点から市場ニーズの高い製品であることを改めて認識しました。また、日本医療研究開発機構(AMED)の成果である単核球分離装置も新たな医療活動に貢献できる製品であることから今後は技術を前面に押し出した潜在顧客の掘り起こしを更に進めてまいります。
その他事業は子会社の電子科学株式会社であり、同社の売上構成は、装置販売(TDS:昇温脱離分析装置)及び大型工事・装置のメンテナンス業務・受託分析業務の3つに分かれますが、受注金額が大きくなる主力事業の装置販売及び大型工事において6件(販売先:韓国、中国、国内)の売上を計上したことにより昨年度実績を上回る結果となりました。また、装置販売につきましては、初の中国企業への納入実績を積むことができ、今後大きな市場となる中国企業への販売に向けて重要な一歩となりました。一方、事業拡大に向けての人員獲得及び積極的な研究開発投資によって費用が増加し、利益を圧迫する要因となりました。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループが10~20年先に目指すべき企業像を明確にした長期成長戦略「Innovation2030」の実現に向けて、当社グループが対処すべき課題として認識しています点は以下のとおりであります。
<当社グループ共通>
グループ共通の課題として事業成長や収益拡大を一層加速させるため、以下の事項について対処する必要があります。
① 人的資本の向上
2025年7月より新人事制度の役割等級制度へ移行いたします。従業員の意欲を高める新人事制度の導入によって成長の機会を創出してまいります。新人事制度においては社員の役割と評価基準を明確にし、従業員が自身のキャリアパスを描きやすくすることで、従業員個人のキャリア形成につなげるとともに組織としての人的資本の向上を図り、社員と会社の飛躍的な成長を目指します。
② 業務効率化・DX化
2026年7月より新基幹システム(クラウドERP)を導入し、各種業務の見える化、情報の一元化により業務効率化を進めてまいります。社員数や製造数が増加する中、旧来より属人的な業務や情報収集等を効率的に実施することにより、当社グループの強みでもある高精度な製品製造や研究開発により一層注力できる体制にいたします。経営判断に必要な情報を適時適切に活用することで迅速な意思決定に繋げ、効率経営へと生かしてまいります。
③ IR強化・株価向上
ステークホルダーへの情報開示や対話を強化し、当社グループの事業内容と成長性に対する理解を促進してまいります。併せて、サステナビリティを筆頭に見えない資産である非財務情報への適切な取組みを進め、企業収益の源であることをより強く意識し、企業価値の向上につなげてまいります。
また、当連結会計年度より個人投資家の皆様に当社ビジネスモデルの理解を深めていただくため、事業のポジショニングやマーケット環境、当社グループの強みと成長戦略をより分かり易く解説したIRプレゼンテーション動画の配信を順次スタートいたしました。今後は事業成長していくために、幅広いステークホルダーとの対話を積極的に進め、当社に対する期待や経営課題の把握に活かし、実効性のある取締役会を中心とした経営活動の実践によって企業価値の向上を図ってまいります。
④ 経営基盤の強化
受注生産型の事業を中心としている当社グループの強みを活かし、新製品・サービス・技術の創出による新規事業の展開と既存事業の深化によって他社との差別化を図り、資本・資産効率の向上やバランスの取れた成長投資によって、持続的成長と企業価値の最大化を実現いたします。人的資本の強化としては生産性向上への人材育成とその基盤となる人事制度整備などの実施、内部統制を意識したDX化や新基幹システムの導入などIT・デジタル化の推進、新たな収益基盤創出に向けた研究開発投資等を積極的、継続的に実施してまいります。中長期的に資本コストや市場評価を意識して健全な財務基盤を築き、信用力の向上を図ってまいります。
<オプティカル事業>
(生産性向上)
ミラーを製造する社内工程を前工程と後工程に明確に分離し、前工程を栃木生産技術センターで、後工程を本社で担えるよう生産体制を最適化してきた結果、社内リードタイムの大幅短縮の実現が確認できました。今後も一層の効率化を目指し、積極的に改善を行ってまいります。一方、社外工程の外注加工先におけるリードタイムの改善にはまだ充分に着手できておらず、特に当社の加工工程後に実施する刻線及び成膜の社外工程が全体のリードタイムに影響を及ぼしております。今後は調達先の拡大はもとより内製化も視野に入れ、リードタイムの短縮を図ってまいります。
(製品力・技術開発力の強化)
当社経営理念に基づき、学術機関との共同研究を進め、世の中にない新しい技術の開発とその実用化に取り組んできました。その成果は、放射光市場における最先端の研究領域において既に利用されており、当社でしか実現できない光学理論限界の精度で、様々な種類のミラーを製品として世界中に供給してまいりました。この姿勢は、当社が長年深く関わってきた放射光市場以外の半導体や宇宙分野といった新しい領域でビジネス展開するための推進力となっております。いずれの分野においても、精度と新規性の両観点において比類のない製品を提供することを理念としており、そのためには研究・開発の促進と製造装置の機能性向上が必要となるため、今まで以上に人材と設備の投資を積極的に行ってまいります。
(営業力の強化)
放射光市場においては、常に今より高精度を実現することと、新規性と進歩性を備えた製品を供給することで恒常的に技術優位性を有することで競争力を維持してまいります。一方、現在参入を目指す半導体市場においては、学術機関との共同研究や競争的資金の活用、積極的で効果的な経営資源投入を通して当社のものづくりの範囲を広げ、得られた成果を新規顧客のニーズにマッチした製品を開発することにより、収益拡大に貢献するアプローチを展開してまいります。
<ライフサイエンス・機器開発事業>
(生産性向上)
ライフサイエンス・機器開発事業はファブレスで装置を生産しておりますが、生産台数の増加や装置仕様に対する顧客からの厳しい要求に応えるためにも、新たなアウトソーシング先の開拓と育成に注力し、併せて、安定性、信頼性の向上に向けて、品質管理体制とリスクアセスメント体制の構築と強化を図ってまいります。
海外市場、特に商談数の多い中国、台湾市場への装置納入に備えて、現地でのメンテナンスが重要な業務となりますので、現地の業務パートナー開拓と育成を含めたサポート体制を確立してまいります。
(製品力・技術開発力の強化)
半導体関連のウェハ表面研磨を大学独自あるいは大学との共同研究によって得られる次世代の加工研磨技術の成果をもとに半導体ウェハ表面研磨の工業的実用化、特に大学初のチャンピオンデータの工業的かつ安定的な再現性について生産設備と機能性の両面から開発を推進してまいります。半導体素材は現在、Si、SiO2、SiC等のSi系ウェハが主流ですが、今後、GaN、Ga2O3、ダイヤモンド等の新たな素材へ変わりつつあり、プロセス開発を大学と共同でスタートさせております。
ライフサイエンス事業では、日本医療研究開発機構(AMED)のプロジェクトへの参画や製薬・創薬企業とのコラボレーションにより進めてきた脳梗塞治療に寄与する単核球分離装置の実用化及び同装置の認知症治療への適用開発を加速してまいります。
(営業力の強化)
国内外問わず、専門性の高い展示会出展を通じて得た見込み先やホームページからの問い合わせ先への訪問、ウェブ会議でのアプローチによる顧客開拓を推進するとともに、半導体関連や細胞培養関連に強いサプライチェーンの確立と販売網の強化、成長性高い営業展開の継続を支援する人的ネットワークの構築を進めてまいります。海外市場、特に中国、台湾市場等へのアプローチをより効果的に進めるために現地の商社や代理店等とのコラボレーション強化を図ってまいります。
<電子科学株式会社>
(生産性向上)
当事業年度より標準仕様品はアウトソーシング、特殊仕様品は社内生産の並行生産を開始しております。安定的かつ効率的な装置製造に向けて新規アウトソーシング先の確保に努めてまいります。また、サービス業務の対象地域拡大による収益拡大に向けた体制作りとして、人材の確保と海外業務に対応するパートナーの開拓及びその育成を強化していきます。
(製品力・技術開発力の強化)
顧客の研究部門など社外組織との共同研究による現有装置の機能強化や新たな機能の開発による付加価値の増大によって開発力を高め、製品力の強化を図ってまいります。
(営業力の強化)
新規市場として中国・米国・欧州での展開を推進しており、経済安全保障の問題への対策を講じながら、収益拡大につながる販売チャネルの確保に努めてまいります。販売促進ツールである製品総合カタログ、ウェブ広告やホームページの刷新に伴い、多言語化対応(日、英、簡体、繁体、韓国)を進め、広く認知度を高めるなど、営業力の強化に努めてまいります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取り組みは次のとおりであります。
なお、文中の将来に対する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ基本方針
「世の中にないオンリーワンの技術により製品を作り出し、広く社会に貢献する」の経営理念に基づき、グローバルニッチトップのモノづくり企業として、持続可能な開発目標(SDGs)やカーボンニュートラルの実現に寄与する高付加価値製品の開発と提供を通じて、環境、社会、経済のすべてにおいて持続可能な状態を実現する経営を目指します。
(2)ガバナンス
当社グループは、環境、社会、従業員、コンプライアンスなどのサステナビリティに関連する事項について、経営戦略室が事務局となっている経営会議において協議を行なっております。同会議での協議結果を踏まえ、必要事項については月次で開催される取締役会へ報告、審議することで最終的な意思決定機関を明確にしており、組織全体でサステナビリティ体制の推進を図っております。
(3)リスク管理
当社グループは「経営危機管理規程」や「コンプライアンス規程」を定めて、危機事態の発生に備え、日常的に適正業務の維持、推進に努めております。社内取締役を中心メンバーとしたコンプライアンス委員会の運営に加え、経営戦略室を事務局とした経営会議において、当社事業の運営に潜在しているリスクをコントロールするリスクマネジメントとリスクの顕在化によって被るダメージを極小化するクライシスマネジメントに取組む体制を整備・運用しております。各事業部門におけるリスクとクライシスの事象を常に認識して対策を講じており、必要に応じて取締役会へ報告する仕組みを構築しております。
(4)戦略
① 環境
当社製品を納入している国内の大型放射光施設「SPring-8」およびⅩ線自由電子レーザー施設「SACLA」におけるナノ領域での観察や制御は、カーボンニュートラルに資するグリーン分野において重要な研究開発要素であり、これまでにも蓄電池、燃料電池、触媒開発などで大きな成果を上げております。
当社はこのナノ領域での観察や制御の高精度化、効率化を実現するために、本施設で広く使われている当社X線ミラーのより一層の高精度化や新規開発につとめ、技術開発やイノベーションを支援し、理化学研究所(理研)放射光科学研究センターと高輝度光科学研究センター(JASRI)の持続可能な開発目標(SDGs)や2050年カーボンニュートラルの実現に向けた産官学利用者の研究開発活動の支援に対して、当社はその一助となるように環境にやさしい持続可能な産業をつくることの支援を通じて、我が国の持続可能な社会づくりに貢献してまいります。
また、当社グループの各事業におきましては、電力事業者から購入した電力のみで製造設備を稼働させており、エネルギー起源の二酸化炭素排出はございません。当社グループの各事業所における年間総使用電力量から換算した二酸化炭素排出量におきましても、法令に定められた「特定排出事業者」に該当する排出量の基準を大幅に下回っており、自然環境にやさしい事業を展開しております。
当社グループの各事業では外注加工業者の活用が多いことから、今後は取引先とも連携し、当社取扱い製品の製造着手からユーザーの手元にお届けするまでの自然環境負荷の数値化を検討し、事業活動全般において環境保全の社会活動へ貢献を果たしてまいります。
② 人的資本
当社グループでは、グローバル・ニッチトップ・イノベーターとして、当社グループの経営理念「世の中にないオンリーワンの技術により製品を作り出し、広く社会に貢献する」を体現することができる高い専門性と技術力、豊かな実務経験を有した人材を求めており、性別・国籍・採用経路等に関わらず、各人が能力を最大限に発揮することができる環境の整備に努めております。持続性のある高い成長率を実現するため、新たな人事制度導入に取組み、社内人材のモチベーションを高めるとともに、ハイレベルな外部人材の採用を円滑に進め、企業が成長するための源泉である人材の確保と育成に努めてまいります。
当社グループの各事業部門におきましては、その専門性を有していることが重要なことから理工系の技術職・研究職が採用の中心であるため、女性人材の絶対数が少なく、全体の労働者(役員、臨時雇用者を除く)に占める女性労働者の割合が18.96%、女性管理職の登用率は10%と低い状況となっております。女性が活躍できる雇用環境の整備を行ない、多様な働き方によって多様な人材が活躍できる環境整備に努めてまいります。
また、当社グループの成長性を一層高めるためには、研究開発力を維持・向上することが必須となりますが、そのためには高度人材の確保と併せて、高い技能を有した人材の育成が極めて重要となることから、即戦力且つ若手人材育成の担い手として、高い技量を有したシニア世代の人材登用にも力を入れております。
(5)指標及び目標
① 環境
当社グループは法令に定められた「特定排出事業者」には非該当であることから、現時点での具体的な目標値は定めておりません。エネルギーの使用状況については監視を続けており、当連結会計年度よりGHGプロトコルのSCOPE1及びSCOPE2の算定を開始いたしました。翌連結会計年度よりSCOPE3の算定を開始し、データの蓄積や削減目標の設定等検討していく予定です。当連結会計年度におけるSCOPE1及びSCOPE2の合計値は、327t-CO2となりました。
今後の中長期的な成長投資におきまして、設備の稼働率を高め、生産性を向上し、より付加価値の高い製品を作り出す投資を促進してまいりますが、環境への配慮が企業価値を高めることの認識を深め、環境負荷をより低減した装置開発に努めてまいります。
② 人的資本
当社グループでは、性別・国籍・採用経路等をもって、その職務内容や処遇に影響を及ぼすことがない人事制度を運用しておりますが、当社グループが展開する事業特性によって、理工系を先行する女性の比率が低い我が国の教育環境が影響し、女性社員の採用自体が難しい状況ではありますが、女性管理職の登用率目標を設定いたします。
また、社会全体の女性管理職登用を高めるための対応としまして、男性社員の育児休暇取得の促進がございます。当社グループの社員は30~40代の比率が高く、同制度の利用が見込まれることから促進するとともに、一時的な人員数の低下に悪影響を受けることがない販売・生産・研究開発体制の構築に努めてまいります。
ⅰ.女性管理職の登用率 :2025年6月期実績 10% 2027年6月期目標 20%以上
ⅱ.育児休業制度の取得率(男女):2025年6月期実績 0% 2027年6月期目標 90%以上
なお、育児休業制度の取得率は、育児・介護休業法に基づく算出方法(分母:雇用する男性労働者のうち、当連結会計年度に生まれた者、分子:当連結会計年度に育児休業を取得した者)によるものです。当連結会計年度に生まれ翌連結会計年度に取得する者が含まれるために取得率0%になることがあります。女性労働者につきましては、当社グループでは100%取得しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。当社グループは、これらリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針です。また、本書に記載した事項は事業等に関連するリスクを全て網羅するものではありませんので、この点ご留意下さい。
(1) 個別受注契約及び売上検収時期の変動について
当社グループの高精度ミラーや装置関係はユーザーごとによる個別受注契約が基本となり、販売単価が高額になること、かつ受注から売上検収までに長期間要する事業になります。受注契約時の見積り時に、期間、工数や金額を検討しておりますが、製品を製造している過程で、開発要素が多くなることや製造遅延等により見積りを上回る工数を要する内的要因と製造中にユーザーによる仕様の変更等の外的要因により、売上検収時期が変動する場合があります。計画通りに売上を計上するように努めてまいりますが、変動した場合には業績に与える影響が大きくなる可能性があります。
(2) 技術の陳腐化について
当社グループのオプティカル事業における製造技術は、大阪大学独自の原子数個レベルの平坦さを実現する究極のナノ加工技術(ナノ加工技術EEMとナノ計測技術RADSI及びMSI)を基にしたもので、1ナノメートルレベルの形状精度を実現しております。本書提出日の現在においてこの状況に変化はありません。
しかしながら、将来において当社の製造方法と同等の精度レベル(本技術を超える精度は極めて困難と考えられます)を実現する新たな製造方法が万が一確立された場合には、価格面で影響を受け、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 国内外政府の施策とその影響について
当社グループの主要事業であるオプティカル事業の製品である放射光施設用のX線ナノ集光ミラー等は、放射光施設という専門性の高い施設等で使用されるもので、その施設の多くは国内外の公的研究施設、公的プロジェクトまたは大学等がビームライン(実験ハッチ)ごとに別々に研究事業を運営しております。
現在、国内では東北において、新しい放射光施設NanoTerasuが完成し、2024年4月に稼働を開始いたしました。また、海外では中国、欧州、アメリカ、ブラジルなどに第4世代の放射光施設の建設やバージョンアップの計画が進んでおり、少なくとも今後20年程度は世界的に需要が拡大傾向にあると判断しております。ただし、国内外の研究事業者の多くは公的研究機関となりますので、研究事業の実施方針や制度等に大きな変更があった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 外注委託先について
当社グループのオプティカル事業は、社内加工によるナノ加工の前工程である研削や研磨等、ライフサイエンス・機器開発事業及び電子科学では社内工程の設計・開発以外の装置製造に関しては外注委託先へ依頼しております。
外部委託先については年次で事業継続性・製造能力・品質に関する評価を実施しておりますが、品質及び納期等において何らかの不具合を発生させる事象が確認された場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
特に、特殊な部品調達や加工を要する場合、代替先が少数であるため、特定の外注委託先への依存度が高い状況になっております。そのため、当社グループでは継続して、新しい外注委託先の開拓に努めております。
(5) 為替リスクについて
当社グループは、製品の海外輸出が多く、為替レートの変動は外貨建て直接取引の売上高に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、想定を超える為替レートの変動が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 輸出について
輸出にあたり、仕向地ごとの政治や経済情勢、さらには文化や習慣等について調査・把握に努めておりますが、もしそれらが要因となる予期せぬ事件、事故等の事象が発生した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 知的財産権について
当社グループは、新たな技術や独自のノウハウを蓄積し、知的財産権として権利取得するなど法的保護に努めながら研究開発活動を推進しています。また、仮に特許侵害が試みられたとしても同様の製品が製造されないよう独自のノウハウは公開しておりません。しかし、特定地域での法的保護が得られない可能性や、当社の知的財産権が不正使用される可能性があることは否めず、さらに人材移転や悪意を前提とする情報漏洩等により技術・ノウハウが外部に流出する可能性もあります。このような状況が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
他方、他社が有する知的財産権についても細心の注意を払っておりますが、当社が第三者の知的財産権を侵害していると司法判断された場合、当社グループの生産・販売の制約や損害賠償金の支払いが発生する可能性もあります。
(8) 有形固定資産及びのれんの減損について
当社グループでは、土地、建物、機械設備等多くの有形固定資産及び関係会社株式に関わるのれんを保有しています。当該資産から得られる将来キャッシュ・フローの見積りに基づく残存価額の回収可能性を定期的に評価していますが、当該資産から得られる将来キャッシュ・フロー見込額が減少し、回収可能性が低下した場合、有形固定資産及びのれんの減損を行う必要が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 製品に関する不具合、クレームについて
これまで当社グループが販売・開発する製品等に関し、ユーザー等から訴訟を提起され、または損害賠償請求を受けたことはありません。また、不具合が生じたとしても早期に発見し是正するべく、サポート体制を構築しておりますが、当社が販売した製品等に予期しがたい欠陥等が発生し、製品回収や損害賠償等が発生した場合、顧客からの信用失墜や受注減少のおそれが生じ、多大な損害賠償金及び訴訟費用が必要となること等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 情報セキュリティについて
当社グループは、事業に関わる技術情報、インサイダー情報や顧客情報等を保有しております。近年、クラウド化の推進や社内インフラの整備とセキュリティ強化に努めております。ただし、サイバー攻撃等でデータに障害が生じたり、情報が流出した場合には当社グループの信用や業績に影響を及ぼす可能性があります。
情報セキュリティ基本方針に則り情報セキュリティ委員会を設けて、社内教育の実施やIPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「SECURITY ACTION」二つ星を取得済みであり、さらに第三者保証の取得を視野に体制強化を図ってまいります。
(11) 人材について
グローバルニッチトップを掲げる当社グループでは、製造や研究社員は物理学や工学等理系の専門性の高い人材を確保する必要があります。社員教育などを通じて、技術や技能についても円滑な伝承に努めております。特に高度専門技術を担う人材は、採用市場において獲得競争が激化しており、研究開発人材の獲得に遅れが生じた場合、技術革新のスピードが鈍化する可能性があります。
(12) 自然災害・テロ及び感染症について
当社グループ及び当社グループ取引先の事業拠点や関係先が地震、豪雨、防風などの自然災害やテロなどによって甚大な被害を被った場合には復興に際して多大なる費用と時間を要することになります。加えて、当該事象が発生することで当社グループ及び当社グループ取引先の事業拠点が被害を受けることによって商取引の継続が困難となり、当社グループの経営成績に著しい悪影響を及ぼす可能性があります。また、感染症の発生によるパンデミックに至った場合には、当社グループ及び当社グループ取引先の従業員の安全確保と感染拡大防止のために行動が制限されることで、当社グループの事業活動に様々な制約を受ける可能性があります。
(13) 非財務情報の開示不足について
非財務情報におきましては、マテリアリティ(重要課題)やこれらのKPI等ターゲットを特定し、管理指標と目標を設定する等の情報開示が不足していることを認識しております。情報開示に向けて体制等整えているところではありますが、株価やファイナンスにおいて不利な条件等を負う可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、継続的な物価の上昇や急激な為替変動に加えて、米国の政策動向、中国経済の低迷、中東やウクライナでの地域紛争などにより依然として景気への懸念事項が多く、先行き不透明な状況が続いております。
国内経済は、良好な企業業績を背景とした設備投資が引続き増加しており、賃上げによる実質賃金の改善によって個人消費も改善傾向にあり、堅調なインバウンド需要が加わって国内景気は緩やかな回復を続けております。
このような経済環境のもと当社グループは、オプティカル事業、ライフサイエンス・機器開発事業及びその他事業(電子科学株式会社を含む)という独自の技術を利用した3つの事業によって、高品質な製品提供と研究開発活動の強化に取組み、経営基盤拡充と企業価値向上に努めてまいりました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a. 財政状態
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ120,608千円増加し、3,688,131千円となりました。
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ41,858千円増加し、912,604千円となりました。
当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ78,750千円増加し、2,775,527千円となりました。
b. 経営成績
当連結会計年度における経営成績は、売上高1,925,592千円(前期比4.2%減)、営業利益113,823千円(前期比60.2%減)、経常利益102,017千円(前期比67.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益60,348千円(前期比69.8%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
オプティカル事業は、売上高は1,234,131千円(前期比0.5%減)、セグメント利益は526,759千円(前期比11.5%減)となりました。
ライフサイエンス・機器開発事業は、売上高は220,642千円(前期比33.2%減)、セグメント損失は52,055千円(前期はセグメント損失25,659千円)となりました。
その他事業は、売上高は471,148千円(前期比5.2%増)、セグメント利益は41,111千円(前期比20.3%減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ102,149千円増加し、当連結会計年度末には712,379千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動の結果獲得した資金は286,478千円(前連結会計年度は62,651千円の獲得)となりました。これは主に、売上債権の減少124,442千円、税金等調整前当期純利益101,389千円、契約負債の増加65,710千円及びのれん償却額42,382千円による収入があった一方で、棚卸資産の増加121,948千円による支出があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は104,294千円(前連結会計年度は160,706千円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出103,659千円による資金減によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は79,911千円(前連結会計年度は75,526千円の使用)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出75,456千円による資金減によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年7月1日 至 2025年6月30日) |
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生産高(千円) |
前年同期比(%) |
|
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オプティカル事業 |
1,460,902 |
120.8 |
|
ライフサイエンス・機器開発事業 |
136,657 |
42.4 |
|
その他事業 |
427,965 |
121.6 |
|
合計 |
2,025,525 |
107.5 |
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 金額は販売価格によっております。
b. 受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年7月1日 至 2025年6月30日) |
|||
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受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
オプティカル事業 |
1,902,520 |
186.9 |
1,320,567 |
202.5 |
|
ライフサイエンス・機器開発事業 |
228,802 |
103.1 |
38,939 |
126.5 |
|
その他事業 |
320,727 |
88.1 |
5,327 |
3.4 |
|
合計 |
2,452,050 |
152.9 |
1,364,834 |
162.8 |
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 金額は販売価格によっております。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年7月1日 至 2025年6月30日) |
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販売高(千円) |
前年同期比(%) |
|
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オプティカル事業 |
1,234,131 |
99.5 |
|
ライフサイエンス・機器開発事業 |
220,642 |
68.5 |
|
その他事業 |
470,818 |
105.1 |
|
合計 |
1,925,592 |
95.8 |
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
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相手先 |
前連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
当連結会計年度 (自 2024年7月1日 至 2025年6月30日) |
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金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
国立研究開発法人理化学研究所 |
208,288 |
10.4 |
- |
- |
(注)販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満のものについては記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 財政状態
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は1,939,634千円となり、前連結会計年度末に比べ123,905千円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が102,149千円、仕掛品が98,171千円、原材料及び貯蔵品が35,795千円増加した一方で、売掛金が113,442千円減少したことによるものであります。固定資産は1,748,497千円となり、前連結会計年度末に比べ3,296千円減少いたしました。これは主に、のれんの償却が進んだことによって無形固定資産が44,396千円及び投資有価証券が3,081千円減少した一方、リース資産が44,550千円増加したことによるものであります。
この結果、総資産は3,688,131千円となり、前連結会計年度末に比べ120,608千円増加いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は493,038千円となり、前連結会計年度末に比べ79,852千円増加いたしました。これは主に、契約負債が65,710千円及びリース債務が10,692千円増加したことによるものであります。固定負債は419,566千円となり、前連結会計年度末に比べ37,993千円減少いたしました。これは主に、約定返済が進んだことにより長期借入金が75,456千円減少した一方、リース債務が38,313千円増加したことによるものであります。
この結果、負債合計は912,604千円となり、前連結会計年度末に比べ41,858千円増加いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は2,775,527千円となり、前連結会計年度末に比べ78,750千円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益を60,348千円計上したことによるものであります。
b. 経営成績
(売上高及び営業利益)
当連結会計年度における売上高は、1,925,592千円(前連結会計年度比4.2%減)となりました。これは主に、オプティカル事業において、放射光施設及びⅩ線自由電子レーザー施設用のⅩ線ナノ集光ミラーの売上が牽引するとともに、ライフサイエンス・機器開発事業及び子会社の電子科学株式会社の売上が寄与したことによります。この結果、売上総利益は1,178,776千円(前連結会計年度比5.9%減)となりました。また、販売費及び一般管理費は1,064,953千円(前連結会計年度比10.1%増)となり、当連結会計年度における営業利益は113,823千円(前連結会計年度比60.2%減)となりました。
(経常利益)
営業外収益では、役員報酬返納額や受取出向料等を計上しました。また、営業外費用では、為替差損や支払利息等を計上しました。これらの結果、当連結会計年度における経常利益は102,017千円(前連結会計年度比67.2%減)となりました。
(当期純利益)
当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は60,348千円(前連結会計年度比69.8%減)となりました。
c. セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(オプティカル事業)
当連結会計年度は、国内市場ではSPring-8、SACLA、NanoTerasu、アジア市場では中国のSHINE(上海)、HALF(合肥)、IASF(深圳)、台湾のTPS、アメリカ市場ではLCLS、欧州市場ではEu-XFEL(ドイツ)、PSI(スイス)、ESRF(フランス)への売上が中心となり経営成績を牽引しました。世界各国において多くのアップグレードや新設を控えるに従い、ミラーの需要がこれまで以上に増大しておりますが、いずれの施設もより高い精度を実現するための綿密な設計検討に想定以上の時間を費やしたため、多くの案件で受注計画の変更や遅れが発生することとなりました。遅れて受注した案件については、生産計画の見直しにより一部の製品において大幅な工期短縮を果たしたものの、全体としては当初計画を下回る出荷数に留まり、売上高は前期比微減となりました。またセグメント利益につきましては人員増に伴う労務費の上昇などに伴い前期比減益となりました。
営業活動につきましては、国内外の主たる放射光分野の学会での発表を通じて、当社の研究・開発成果の進捗報告をすることによる当社技術のアピールに加え、光学全般を対象にした展示会においても当社の超精密加工・計測技術のアピールを継続的に展開しております。また、各国施設の研究者の訪日機会も増加し、商談のみならず共同研究の機会も確保され、売上向上を見据えた積極的な営業活動に努めてまいりました。
この結果、売上高は1,234,131千円(前期比0.5%減)、セグメント利益は526,759千円(前期比11.5%減)となりました。
(ライフサイエンス・機器開発事業)
当連結会計年度においては、機器開発事業はその重点分野として、各半導体材料を主たる対象としたナノ表面加工技術の装置化及び受注・販売活動を推進してまいりました。従来から継続している「プラズマ化学気相加工法(PCVM)」、「プラズマ援用研磨法(PAP)」、「触媒基準エッチング法(CARE)」に「電気化学機械研磨法(ECMP)」を加えた4つの新しい研磨プロセスによる拡販活動、潜在顧客の掘り起こし活動に注力してまいりました。その結果、設備導入を前提にした試作評価案件は大幅に増加し、そのうち、プラズマ援用研磨装置2台を受注し、売上に貢献しました。しかしながら、期初計画に沿った営業成果には至らず、実績は低調に推移する結果となりました。
一方、ライフサイエンス事業では「MakCell®」や各種CellPetシリーズが売上に貢献しました。しかしながら、自動培養装置や大型の細胞培養システムは、顧客の予算や方針変更により、期初計画に沿った受注・売上営業成果には至らず、実績は低調に推移する結果となりました。
そのため事業としての収益は前期比減収減益となりました。
営業活動の状況につきましては、個別顧客訪問による営業活動やホームページからの問い合わせ対応だけでなく「SEMICON Taiwan 2024」、「SEMICON Japan 2024」、「SiC・GaN加工技術展」等半導体関連の専門性の高い展示会へ出展し、積極的な広報活動と新規顧客開拓を行ってまいりました。その結果、プラズマ援用研磨法(PAP)、電気化学機械研磨法(ECMP)を中心に複数企業からテスト加工の依頼を受け、試作と顧客評価を進めてまいりました。今後更なる技術のブラッシュアップと営業の展開力アップを図り、市場ニーズに合致した装置の提供と、販路拡大や顧客との共同開発等の実現によって売上拡大を推進してまいります。
ライフサイエンス事業におきましては、自動培養装置は営業活動や展示会、学術誌への寄稿に対する反響を受け、医療現場の労働環境改善という点から市場ニーズの高い製品であることを改めて認識しました。また、日本医療研究開発機構(AMED)の成果である単核球分離装置も新たな医療活動に貢献できる製品であることから今後は技術を前面に押し出した潜在顧客の掘り起こしを更に進めてまいります。
この結果、売上高は220,642千円(前期比33.2%減)、セグメント損失は52,055千円(前期はセグメント損失25,659千円)となりました。
(その他事業)
その他事業は子会社の電子科学株式会社であり、同社の売上構成は、装置販売(TDS:昇温脱離分析装置)及び大型工事・装置のメンテナンス業務・受託分析業務の3つに分かれますが、受注金額が大きくなる主力事業の装置販売及び大型工事において6件(販売先:韓国、中国、国内)の売上を計上したことにより昨年度実績を上回る結果となりました。また、装置販売につきましては、初の中国企業への納入実績を積むことができ、今後大きな市場となる中国企業への販売に向けて重要な一歩となりました。一方、事業拡大に向けての人員獲得及び積極的な研究開発投資によって費用が増加し、セグメント利益を圧迫する要因となりました。
この結果、売上高は471,148千円(前期比5.2%増)、セグメント利益は41,111千円(前期比20.3%減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a. キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b. 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製造のための材料、外注加工費及び部品の購入費、人件費や研究開発費のほか、借入金の返済や法人税等の支払いです。このほか、会社の成長に必要な設備投資やM&A投資等を含め、収入と支出のバランスを考慮して資金運用を実施することを主たる方針としています。
一方、販売には季節的要因の影響は少ないものの、販売先の決算月に納期を指定されることや製品の受注から完成までに1年前後の期間が必要であるため、受注及び販売の状況によっては一時的な売上債権、仕入債務、棚卸資産等の増減があり、営業活動によるキャッシュ・フローの増減に影響を及ぼす可能性があります。
運転資金、設備投資資金及びM&A投資資金については、原則として自己資金で賄うこととしておりますが、多額の設備投資資金やM&A投資資金が必要となった場合は、必要資金の内容に応じて金融機関からの借り入れや資本市場からの直接調達を検討する方針であります。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務の有利子負債残高は495,512千円となっております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
当社は、以下の金銭消費貸借契約については、特定の資産の譲渡・担保提供、出資比率維持義務及び財務制限条項が付されており、これらに抵触し借入先から請求があった場合には、期限の利益を喪失する可能性があります。
1.契約締結日
2021年5月24日
2.最終弁済期限
2031年5月31日
3.借入先
株式会社三井住友銀行
4.当連結会計年度末における債務残高
446,507千円
5.特定の資産の譲渡・担保提供
自己が保有している不動産について貸付人の事前承認なく、貸付人以外の第三者へ譲渡又は担保提供しないこと。
6.出資比率維持義務
電子科学株式会社への議決権割合を100%維持すること。
7.財務制限条項
①各決算期の末日における連結貸借対照表の純資産合計金額を直前決算期の同表の純資産合計金額の75%以上に維持すること。
②各決算期の末日における連結損益計算書の経常利益を2期連続で損失としないこと。
当社グループは、放射光施設用X線ナノ集光ミラー等の開発販売を推進する「オプティカル事業」、主に創薬、再生医療及びiPS細胞等に関連した培養技術の開発や各種細胞培養装置や次世代加工・研磨装置を中心とする各種自動化装置を開発・販売する「ライフサイエンス・機器開発事業」及び「その他事業(電子科学株式会社を含む)」の3つの事業を柱としております。現在の研究開発活動は、これら事業の関連技術を中心に実施しており、主にX線ナノ集光ミラーを中心としたX線光学素子、独自の培養技術を用いた各種細胞培養装置及び独自の加工・計測技術をもとにした各種加工・研磨装置等を中心に研究開発を継続しております。
さらに、昨年度に引き続き、競争的資金をもとに研究開発事業(委託研究事業、研究助成事業)を進め、製品化を目指しております。
なお、研究開発費については、細胞培養センターで行っている各セグメントに配分できない基礎研究費用10,591千円が含まれており、当連結会計年度の研究開発費の総額は
(1) オプティカル事業
当連結会計年度のオプティカル事業においては、以下の研究開発を推進してまいりました。
① 放射光施設用X線集光ナノミラーの生産性の向上や高精度化を目指したナノ加工技術及びナノ計測技術に関する研究開発
国内外で放射光施設の新設およびアップグレードが多く計画されており、それによって高精度の放射光用X線ミラーの需要が急増しております。当連結会計年度では特に、この需要増に対し品質および納期の観点で安定した供給ができるよう生産効率の改善を取り組み、一部の工程では15%の工期短縮を実現しております。今後も積極的に生産効率の向上を図り、売上の拡大を目指してまいります。
② 放射光施設向けの次世代商品の開発
形状可変ミラー、回転楕円ミラー、回転ウォルターミラー、チャネルカット結晶等、製品開発を進めてまいりました。特に当連結会計年度は、名古屋大学との共同研究において開発した新しい手法の形状可変ミラーの性能実証が完了し、学会や論文によって広く成果が報告されました。
③ X線光学素子の新しい事業展開を目指した計測・加工技術の適用化開発
これまで大阪大学との継続的な共同研究において、放射光用X線ミラーの生産性および精度の向上活動を進めてきましたが、当連結会計年度からは東京工芸大学との共同研究を新たに加え、これまで以上にサイズと開口数の大きなミラーの製造ができるよう研究開発を開始しました。今後は宇宙、半導体分野への展開を加速してまいります。
その結果、オプティカル事業に係る当連結会計年度の研究開発費は
(2) ライフサイエンス・機器開発事業
当連結会計年度のライフサイエンス・機器開発事業においては、以下の通り大学での先進的加工技術を用いた半導体機器開発や競争的資金(委託研究事業、研究助成事業)を積極的に活用した再生医療関連の研究等を推進してまいりました。以下、その概要について報告いたします。
① 汎用型自動細胞培養装置の開発
MakCell®(iPS細胞用の自動細胞培養装置CellPet®シリーズの後継機種)の量産化開発を完了し、製薬・創薬等の関連市場へのPRと本格販売を開始するとともに、食品・化粧品等の新たな市場への探索を開始しています。
② 再生医療関連の研究開発
<当連結会計年度継続の委託研究事業>
「ヒト弾性軟骨デバイスを用いた小児顔面醜形に対する新規治療法の開発」
令和5年度「橋渡し研究戦略的推進プログラム シーズF」日本医療研究開発機構(AMED):2023年~2027年度、研究代表機関:東京大学、橋渡し研究支援機関:大阪大学、その他参加機関:株式会社ジェイテックコーポレーション及びその他関連大学、医療機関、再生医療会社
本研究開発事業では、東京大学らと共同で鞍鼻症の小児患者の形成治療を目的としました再生医療等製品開発を推進しています。AMEDの中間審査において初期2年間の成果が認められ、2025~2027年度の事業継続が決定しました。現在、当初の計画通りに医師主導治験を実施するべく、倫理委員会や規制当局であるPMDAへの申請準備を進めており、順調に承認がなされると次年度第1四半期から当社で初めてとなります治験がスタートいたします。
③ 医療機器の開発
当社は、公益財団法人神戸医療産業都市推進機構と日本光電工業株式との共同研究のもと、2025年3月末まで製品化・実用化に資する脳梗塞治療用幹細胞分離機器の試作機器の更なる安定動作、再現性等を備える改良を実施してまいりました。現在、大阪府八尾市にある病院において2025年1月から神戸医療産業都市推進機構が中心となり実施しています自己幹細胞による認知症の症状改善を見込んだ自由診療の結果を注視しているところであり、改善傾向の結果が得られた場合において、幹細胞分離機器の病院への導入を早急に図る予定です。
④ 機器開発事業の取組み
<次世代加工・研磨装置の開発>
当社は独自の表面ナノ加工技術の開発に注力しており、主に半導体基板の次世代表面研磨装置としての商品化を進めております。
本独自の表面ナノ加工技術は、以前より進めている大阪大学の「プラズマ化学気相加工法(PCVM)」、「触媒基準エッチング法(CARE)」、「プラズマ援用研磨法(PAP)」、「電気化学機械研磨法(ECMP)」の4本柱で開発を推進しております。これらの加工技術は半導体材料であるSi、SiO2、SiC、GaN、LN/LT、単結晶ダイヤモンドなどを材料とした半導体基板の平坦化に適しています。ますます高精度化が要求される将来の半導体基板の加工・研磨技術として期待されており、ナノレベルの表面を創成する装置として商品化を進めております。
特に先行して製品化に成功した「プラズマ化学気相加工法(PCVM)」は水晶振動子用SiO2基板の厚みを均一に加工する量産加工システムとして本格販売へと進め、昨年度は国内及び台湾の顧客へ納入し、お客様の水晶振動子の量産に寄与しています。今後は本システムをパワーデバイスやMEMSに用いられるSOIウェハ向け等に用途拡大を進めてまいります。また、「プラズマ援用研磨法(PAP)」および「電気化学機械研磨法(ECMP)」はダイヤモンド、SiCの研磨において、加工速度、仕上げ面粗さとも従来の加工法に比べて優れた結果が得られており、お客様の実基材を用いた試作・評価を進めています。その結果、今年度はダイヤモンド研磨用PAP装置を国内顧客に2台納入いたしました。今後も試作評価とお客様の仕様・要望に応じたプロセス・装置の最適化を進め、市場への浸透を図っていきます。「触媒基準エッチング法(CARE)」につきましては、懸案であった触媒パッドの長寿命化に一定のめどがつき、来期より実用化を念頭に置いた顧客との本格的な試作評価を開始していきます。
その結果、ライフサイエンス・機器開発事業に係る当連結会計年度の研究開発費は
(3) その他事業
電子科学株式会社の昇温脱離分離装置(TDS)は当社のオプティカル事業の海外チャンネルを用い、営業の強化を図ってまいります。さらに、同社の装置製造はファブレス方式のため、当社のライフサイエンス・機器開発事業の生産体制と同方式であることから、今後は、当社の生産管理体制をもとに同社の体制を強化し、外注加工先の活用も含めて、製造の効率化を図ってまいります。
また、同社の分析技術と当社の自動化技術を融合し、特に半導体分野において、共同で新しい製品の企画、開発を進めてまいります。第一弾として水素量の計測に特化した昇温脱離水素分析装置「Cryo TDS-100H2」や現行装置に自動サンプルセット機能を追加した「TDS 1200ⅡALS」の共同開発に成功いたしました。
このように、当社とは営業面だけでなく、製造面や開発面でもシナジー効果が期待できます。
その結果、その他事業に係る当連結会計年度の研究開発費は