当社グループの企業理念は「新しい価値の創造と機会の拡大」の追求であり、それはCreation Of New Value And New Opportunities の頭文字を取り「Convano(コンヴァノ)」と名付けられた社名にも込められております。
この企業理念に基づき、従来の常識や既成概念にとらわれず課題にチャレンジし続けることで、一般的に高価格かつ施術に時間がかかるため、限られた人だけがする贅沢品と考えられていたネイルサービスを、「手軽、リーズナブル、安定品質」を実現する業界唯一のポジションを構築してまいりました。
今後は「ネイルで世界を変える」のビジョン実現のため、またネイル業界全体の発展に貢献するためにも、更なるブランド認知の促進を図り、より多くの方々に「ジェルネイル」を経験していただくべく、新規ユーザーの開拓並びに雇用機会の創出に取り組んでまいります。
当社が属するネイル業界は、コロナ禍により一時的に市場規模が減少したものの、現在は回復基調に転じております。また、ネイルを普段使いする利用者の比率及び1人当たりの平均利用回数も緩やかに伸びていく見通しがあり、短期的に大幅な市場成長は見込めないものの、中長期的には未だ成長余地のある市場となっています。
一方で国内の構造的な人手不足を背景とする採用難及び雇用維持に伴う人件費の上昇、不動産賃料の高騰などのコスト増加は、ネイル業界においても大きな影響を与えております。
競争環境においては、参入障壁の低さからも、「安価・短時間」を売りにする小規模事業者の出店が増加傾向にあります。一方、「リーズナブルさ・スピード」と「品質・仕上がりの安定感」を両立しているのは当社のみであり、独自のオペレーションによるポジションと優位性を確立している業界唯一のネイルサロンであると認識しております。そのため、参入企業が増えている中においても、当社はシェアの拡大を目指せるものと考えております。
当社は主要財務指標として、全社及び各事業の売上収益、営業利益、EBITDA及びその成長率を重視しています。また独自のオペレーションによる高い生産性が当ビジネスモデルの根幹であるため、各ネイリスト別の施術時間や顧客の店舗での滞在時間など、様々な時間の動向を注視しております。さらに予約によるご来店が大半であるため、予約手段の割合や、予約可能数に対する予約率、キャンセル率などの動向を事業上の重要な指標として注視しております。
当社は、2025年3月期から2027年3月期までを事業再構築フェーズとして位置づけ、足元の利益よりも成長のための投資を優先し、その後の飛躍的な成長を遂げるための基盤作りを行います。そのために、新規出店を最小化しつつ、既存店舗の収益性向上を目的とした、人材・情報・財務の各領域の基盤を整えるための投資を実施します。当該フェーズにより、当社が展開するネイルサロン「ファストネイル」のベストプラクティスを確立し、新規店舗の拡大を実施して、事業規模の拡大を目指してまいります。
① ネイリストの定着率向上による店舗稼働率の改善
当社グループは、ネイリスト人数の不足による店舗の生産性低下を早急に対処すべき経営課題として認識しております。当年度において、ネイリストの採用及び育成について重点的に投資を行ってまいりました。ネイリストの求人応募数は増加したものの、その後の定着率が当初の想定よりも芳しくありません。ネイリストの定着は教育環境・職場環境の改善が必要であるとの認識のもと、採用後の定着率改善に努めてまいりますが、ある程度の長い期間が必要と思われます。当該改善により人員不足が解消されれば、店舗の座席数を十分に活用出来ると共に予約の一部を断っていた状況が改善し、店舗の生産性向上に資するものと考えております。
また、店舗の老朽化やカスタマーサポート体制が不十分であることが、お客様の満足度低下のみならずネイリストの離職要因にもなっていると想定しています。よって今後は、店舗設備の改修とカスタマーサポート体制への必要な投資も行っていきます。
② 基幹システム及び予約システムの改善
本社の業務システムについては、システムを活用した効率的な業務フローが構築・運用されておらず、未だに手作業による非効率な体制となっております。店舗の業務システムにおいては老朽化が進んでおり、店舗のオペレーションが一気通貫で管理できるものではなく、各種KPI管理や業績管理も非効率な運用のままとなっております。そのため、本社及び店舗の基幹システム等のITインフラの構築とDX化を実施していく予定でございます。
また、ネイル事業における新規お客様の集客は、他社広告媒体に依存している状況であるため、2024年1月から3月にかけては新規顧客数の減少に苦戦しました。自社媒体での集客によるお客様獲得単価の減少及び自社集客力の強化を実施する必要がございます。そのため、アプリケーションの大規模修繕及びSNSやデジタル広告での情報発信の強化に努めてまいります。
③ お客様単価の向上
当社のネイル事業は低価格帯で効率的なオペレーションを強みとしておりますが、高品質で高単価なサービス提案機能が著しく低下している側面がございました。現状の低価格帯のネイル市場の競争環境は激化しており、2024年1月から3月にかけてはお客様の来店単価の低下に苦戦しました。高品質で高単価な提案型サービスの事業モデルを構築していく必要がございます。2024年度においては提案型サービスの運用を開始しており、今後は当該オペレーションの強化と各店舗への展開を進めてまいります。
④ 経営基盤の強化
当社は持続的な企業価値向上を目指すにあたり、機動的かつ実行力のある経営体制の構築が必要であると認識しております。当年度において雇用型の執行役員制度に加え、委任型の執行役員制度を導入することで、経験豊富な専門家人材を執行役員として登用いたしました。今後は経営意思決定の迅速化を目的とした経営会議体の再設計や必要な経験・スキル・マインドを持つ人材の登用による役員構成の見直し及び中長期的な企業価値向上を目的としたインセンティブの導入等を行っていく予定でございます。
当社グループが、ネイル事業を展開しこれまで成長を遂げてきた背景には、様々な経歴、価値観、性別等を問わない「人材の多様性」が不可欠でありました。今後も企業理念に基づき、「従来の常識や既成概念にとらわれず課題にチャレンジし続ける会社」として成長し続けていくために、当たり前に女性が活躍する職場の環境づくりとして、女性社員の採用強化、キャリアアップ支援により女性社員の活躍を推進するとともに、人材の多様化による組織力向上を図ってまいります。なお、長期継続就労の実現に努め、柔軟なライフステージの変化を意識した、勤務形態を可能にする人事制度の導入と育児の両立に向けた社内セミナーの開催などを行っていく方針であります。また、育児休業からの復職時には、人事担当者及び復帰予定の部署における統括責任者との面談を実施し、長く働きやすい職場環境を整備してまいります。
なお、本文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内在しているため実際の結果と異なる可能性があるとともに、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
当社グループは、事業においてサステナビリティマネジメントを推進するにあたり、明確な意思決定手続きを定めております。当社グループにおけるコンプライアンス経営、環境経営、社会貢献活動に関わる事項については、取締役、監査役及び関係する責任部署の上長など、社内横断的なメンバーで構成される経営会議が活動を推進しております。具体的に、経営が必要とするサステナビリティに関する重要事項の意思決定にあたっては、経営会議で審議され、重要事項は取締役会に報告されます。
人口の約半分を占める女性のニーズをキャッチするために、店舗づくりから経営判断に至るまで女性の視点が活かされ、各部署、店舗において女性が活躍していることを前提といたします。
① 女性活躍の阻害要因である、アンコンシャス・バイアス払拭のための継続的な教育を実施
② 仕事と育児の両立支援など、女性がライフイベントを経ながら就業を継続するための制度・環境の整備
③ 男女ともに仕事も育児も楽しめる、育児休暇を取得しやすい風土の醸成
④ ロールモデルの事例共有による女性のリーダーシップを醸成、育休復帰後も平等な役員登用及び管理職への抜擢
⑤ 長時間労働を前提としない管理職としての働き方を構築
当社グループは、リスク管理規程を制定し、社長を委員長とする社内横断的なコンプライアンス委員会を設置してリスク管理を行なうこととしております。
また、社内相談窓口の設置や従業員へのヒアリング及びアンケート等を実施し、リスクの識別、課題認識の徹底を図っております。
(4) 指標及び目標
① 指標 計画は2023年4月1日から2026年3月31日までの3年間といたします。
② 目標 当社グループとして目指すべき将来像を検討しつつも、女性管理職比率に関しては2026年3月31日まで引続き80%以上を継続いたします。
なお、2024年3月31日時点における当社グループの女性管理職比率は、95%です。
以下において、当社グループの事業展開上のリスクとなる可能性が考えられる主な事項を記載しております。当社グループはこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の予防及び発生した場合の迅速な対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項記載事項及び本項以外の記載内容も併せて慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
なお、本文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内在しているため実際の結果と異なる可能性があるとともに、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
当社が属しているネイル産業は2008年頃までに急成長してきましたが、その当時と比較すると現在は伸び率も鈍化しており、ほぼ成熟期に移行し始めたものと思われます。また、当社がサロンを主に出店している関東地区は競争が激化しており、過当競争である可能性も否定できません。他業界と比較するとネイルサロン事業は投資コストや法規制などにおいて参入障壁が低く、個人商店の開業も含めて当面、継続して出店が発生するものと考えられます。
当社といたしましては、ファストネイルブランドの特徴と強みを一般消費者に、より一層アピールすることによる潜在需要の掘り起こしを強化してまいりますが、競合状態がさらに激化した場合には、既存店舗の売上が減少し当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
・サービスのスピードと効率性重視による低単価な顧客単価と市場競争の激化
当社は、手軽で低価格帯のネイル店舗をコンセプトに3,500円(税抜)から9,000円(税抜)までの7ラインで価格設定をしており、平均的な顧客単価は4,500円~5,000円で、ネイル業界では低価格帯に位置します。また、短時間でのサービスを強みにしており、自社アプリで、ご来店前にデザインを選んでいただくことで、ご来店後のデザイン選定の時間を短縮し、受付担当とネイリストの完全分業制により、ネイリストがお客様の施術にのみ集中できる体制を整えています。しかしながら、このような効率性とスピードを重視したオペレーションに特化した結果、高品質で高単価なサービスの提案機能が著しく低下するという副作用が生じております。
また、新型コロナウイルスによる需要減で市場全体のお客様単価が減少しており、中長期的な市場価格の低迷は避けることができない事態であると想定しております。加えて低価格帯のネイルサロンは競合数が劇的に増加しており、創業当時はブルーオーシャンでありましたが、現在ではレッドオーシャンとなっていると認識しております。
そのため、当社としては、これまでのコンセプトを打開し、高品質で高価格な商材の提案力の強化等によりお客様単価の上昇に踏み込む予定です。
・新規お客様獲得力における他社掲載媒体への依存
当社のネイル事業において、新規お客様獲得数は減少傾向にあります。今後のネイル市場において、限られた広告宣伝だけではお客様の心をつかむことが難しくなってきており、時代に合った効果的な手法への対応が必要であります。当社のネイル事業の2024年3月期における広告媒体別お客様動態によると、新規お客様のうち7割程度(2023年4月1日から2024年3月31日までの事業期間)が他社広告媒体経由で予約がなされており、自社媒体での集客(自社Web、アプリ、電話、直接来店等での予約)は3割程度に留まっています。
現状、ネイル事業における新規お客様の集客は他社広告媒体に依存していると言わざるを得ない状況であり、広告掲載費の変動リスクが伴う状況下、また、ネイル客単価も成熟期への移行による低下が想定されることから、お客様獲得単価の減少及び自社集客力の強化を当社の重要課題として捉えています。
なお、SNSやデジタル広告による情報発信は行っていますが、人材不足によりテストマーケティングが不十分であり、拡散力やデザイン性に乏しく、十分な成果に繋がっておりません。また、お客様との接点となるツールも現状はアプリのみであり、予約までのフローも市場の変化に合わせた対応が不十分であると認識しております。
そのため、当社としては、集客導線においては、美容プラットフォーム・自社サイト・アプリケーションの役割・機能を最適化の上で、新規顧客・既存顧客の予約経路のマルチ化を進めていき、これまでの美容予約プラットフォームによる集客に加えて、自社集客の広告投資比率を高めるための体制強化や施策について実施していく予定です。
当社は、今後、店舗展開を行う上で新たな人材の確保が不可欠となりますが、ネイル業界特有の事情で女性比率が高く、結婚、出産等のライフステージの変化により、平均勤続年数が短く、離職率が高い傾向にあります。ネイリストの技術向上、労働環境の改善・充実を今後も図っていく方針ですが、給与相場の上昇、求人費用の増加、労働力需要の増加などに伴い、採用環境が悪化した場合、あるいは退職者数が想定を大きく上回った場合、当社が必要とする従業員を適切なコストで確保することができなくなり、新規出店の遅延や既存店の売上減少など業績に影響を及ぼす可能性があります。
・ネイリスト不足による店舗収益性の低下、機会損失の増加
当社のネイル事業において、ネイリスト人数の不足による店舗の生産性低下を重要な経営課題として認識しております。現状はネイリスト数の不足により、既存店舗の座席数を十分に活用できておらず、また、お客様からの予約の一部を断らざるを得ない状況であり、本来各店舗が生み出せる最大収益を十分に実現できておりません。加えて、ネイリストの不足は機会損失を生み出すだけでなく、お客様対応の手薄化及び現場での教育不足により、お客様満足度の低下に繋がる可能性があります。しかしながら、これまで、労働人口の変化やネイル業界等の市場変化に合わせた採用・教育・配置戦略の変更が戦略的に行われていなかったことが原因であります。また、ネイリストに長く活躍してもらうための職場環境や就労制度、働き方の柔軟性・多様性について検討が不足しておりました。そのため、当社としては、これまでの人事戦略の抜本的な見直しを行うと共に、ネイリストの採用及び教育の拡充や強化に向けた施策を実施していく予定です。また、ネイリストに長く活躍してもらうための職場環境や就労制度、働き方の柔軟性・多様性について検討を進めてまいります。
当社の基本的な出店方針は、主要駅を基軸とし特定の出店地域ごとに店舗数を拡大していく方式であり、各地域における有力不動産業者や商業施設ディベロッパーなどからの情報に基づき、立地条件、賃貸条件、売上予測、投資採算性などを慎重に検討し、出店地を決定しております。しかしながら、当社のニーズに合致した物件が必ずしも確保できるとは限らず、また仮に確保できたとしても不動産賃料の高騰などにより計画された店舗収益を確保できない可能性もあり、新規出店が計画通り行われず、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社では初期投資を抑えた出店を基本戦略としておりますが、新規出店時には内装工事や什器備品、販売促進に伴う費用が一時的に発生するため、大量の新規出店、期末に近い時点での新規出店は、その期の利益を押し下げる要因となります。また、賃貸物件による出店を基本としているため、出店時には賃貸人に対して敷金及び保証金を預け入れます。契約に際しては、物件所有者の信用状況の確認などを行い、検討しておりますが、賃貸人の経営状況によっては、当該店舗における営業に支障が生じ、契約満了による退店をした際に敷金及び保証金などの全部又は一部が返還されない可能性があります。
また、当社側の都合により不採算店舗の契約を中途解約する場合など、締結している賃貸借契約の内容によっては、敷金及び保証金などの全部又は一部が返還されない場合があり、当社の財務状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、第11期連結会計年度末における総資産に占める敷金及び保証金の割合は5.5%となっております。
当社は会員登録の際にお客様から頂く情報、採用した従業員の情報など、多数の個人情報を保有しており、社内規程に則った管理に努めております。しかしながら、個人情報が外部へ漏洩するような事態が発生した場合には、法令違反、損害賠償などにより、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社はインターネット回線を通じてオーダーシステム、予約システム、ホームページなどを専門の外部業者が所有するレンタルサーバーにて、また、売上管理、原材料の受発注、電子帳票類の保管などを、自社内のサーバーにて運用しております。データのバックアップや予備機の設置、定期的なウイルスチェックなどの対策を講じておりますが、災害や機械の故障、回線業者側の不具合など、不測の事態によってシステム障害が発生した場合には、店舗の運営に支障をきたし、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
・店舗オペレーションシステムやデータ分析システムの老朽化
当社のネイル事業において、重要となるネイルサロンにおける業務システムは10年以上前に導入されたシステムが中心であり、十分な改修や見直しの投資がされてこなかったことから老朽化が進んでおります。また、顧客管理・販売管理・シフト管理・予約管理等の店舗業務を一気通貫で管理できる機能が実装されておらず、店舗運営の非効率さへと繋がっております。また、多店舗管理で重要となるKPI管理や業績管理のためのBIシステムが古く、管理業務の非効率化や、分析業務の不足による判断の遅れに繋がっております。
そのため、当社としては、店舗オペレーションに組み込む基幹システム・データインフラ・BIシステム等の構築を実施していく予定です。
当社は、事業に必要な資金を金融機関からの借入により調達しており、借入金利が上昇した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、第11期連結会計年度末における総資産に対する借入金の割合は13.6%となっております。
のれん及び無形資産の商標権は、当社の資産の相当な部分を占めます。旧㈱コンヴァノの買収により発生したのれん及び無形資産の商標権は、当連結会計年度の末日現在それぞれ650,260千円、488,000千円であり、合わせて当社の総資産の37.9%を占めています。IFRSのもとでは、のれん及び無形資産の商標権は償却の対象とはならず、毎年及び減損の兆候があると認められた場合にはその都度、減損テストが実施されます。また、当社の有形固定資産も、帳簿価額を回収することができない可能性を示す事象や状況変化があった場合には減損テストが実施されます。
外部環境の著しい変化などにより当社の店舗収益が悪化し、事業計画において計画したものと業績が大きく乖離した場合、有形固定資産、のれん及び無形資産の商標権について減損損失を計上することとなり、当社の財政状態及び業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社は関東、関西、東海、中国、九州地区に店舗を展開しております。これらの地区において天候不順や異常気象が発生した場合には、客数が減少し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、地震や台風などの天変地異により、特定の店舗に留まらず、ある程度のエリアの店舗に跨ってお客様の来店や従業員の出勤が困難になった場合、若しくは店舗の破損・停電・道路の寸断などによって営業が困難になった場合には、店舗の売上が大幅に減少することが考えられます。さらに被害の程度によっては、修繕費などの多額の費用が発生する可能性があり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 感染症の影響について
日本国民の多くがその免疫をもっていない新型コロナウイルス等の感染症が国内で拡大した場合、お客様や従業員が感染リスクに晒され、店舗の営業や本社の業務遂行に支障をきたすほか、感染拡大防止のための外出自粛要請等による消費マインドの低下、臨時休業等により営業自粛等の対応を行わざるを得なくなった場合、当社グループの事業及び業績に重大な影響を与える可能性があります。
また、従業員への感染による、店舗の休業や本社の業務の一時的な閉鎖、物流の遅延による店舗の営業への支障、風評被害によるブランドイメージの低下など、当社グループの事業及び業績に重大な影響を与える可能性があります。
当社の展開する「ファストネイル」は、来店前の予約手段や広告宣伝の多くをインターネットに依存しております。そのため、商標などの不正使用や、ソーシャルメディアの急激な普及に伴うインターネット上の書き込み、悪意のあるクチコミ投稿などによる風評被害が発生・拡散した場合、その内容の正確性にかかわらず、当社の事業、業績、ブランドイメージ及び社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社の競合他社に対する風評被害であっても、ネイル産業全体の社会的評価や評判が下落することにより、当社の事業、業績、ブランドイメージ及び社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
当社は設立が2013年であり、未だ成長途上にあるため、さらなる事業拡大に対応する上での必要な経験等が十分に蓄積されていないと考えております。よって、今後の事業及び経営成績を予測する上で見込みと異なる推移となった場合は、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
当社は、今後の事業展開や成長を支えるためにも内部管理体制のより一層の充実を図っていく方針でありますが、事業の拡大及び人員の増加に適時適切に組織的な対応ができなかった場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
・本社の専門人材の不足、デジタル化の遅れ
当社の本社従業員は、これまで内部での異動が中心であったため、マーケティングや情報システム、ファイナンス、経営企画機能等の各種専門性の高い人材が不足しております。また、ITインフラの整備やDX化が遅れており、紙面による業務が中心であり、業務システムについても価格の低さを優先して導入してきた結果、システムを活用した効率的で最適な業務フローが構築運用されておらず、人の手作業による生産性や品質が低い構造となっております。
そのため、当社としては、筋肉質な経営管理体制の構築に向けた人材の最適配置及び中途採用も含めた必要人材の補強、DXの推進に関する必要な投資について実施していく予定です。
当社の事業は、その性質上、顧客からの仕上がり品質やサービスに対するご指摘、ご不満などのクレームを受ける可能性があります。また、お客様に店舗に直接ご来店いただくことから、店舗において何らかの重大な事故などが発生した場合、当社の事業、業績、ブランドイメージ及び社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
・店舗老朽化やCS体制の不足による顧客満足度の低下
当社のネイル事業において、2024年3月現在、店舗数は61店舗(直営店)にまで拡大しておりますが、主要エリアの店舗以外では出店後の経年劣化に応じた店舗内装等の補修が十分に行われてきておりませんでした。そのため、開店から10年近い店舗が半数以上を占める中で、店舗の老朽化が進み、お客様に気持ちよくサービスを受けて頂けない店舗環境の改善が課題となっておりました。また、カスタマーサポートの体制が不十分で、お客様からの問合せ窓口が不明瞭であり、かつ迅速な問合せ対応を行えなかったことから、インターネット上の悪評価の口コミへと繋がっており、お客様の離反へと繋がっております。
このような環境は、お客様のみでなく、働くネイリストにおいてもモチベーション低下や退職の要因に繋がっており、当社の人材不足解消のためにも重要な課題として認識しております。
そのため、当社としては、これまでの徹底したコストコントロールによる方針を転換し、顧客満足度を高めるために店舗設備やカスタマーサポート体制へ必要な投資について実施していく予定です。
当社は、新型コロナウイルスの影響による資金繰りの悪化により、当連結会計年度において、長期資金の借入及び当座貸越契約の締結等により、2024年3月末現在、当社の有利子負債は408,330千円(短期借入金50,004千円、長期借入金358,326千円でいずれも運転資金名目)となっております。対して、2024年3月末の手元現預金は923,101千円となります。
今後の経営方針の検討において事業戦略と合わせて財務戦略の重要度が高いことから、2023年9月より各金融機関と今後の経営方針及び足元の資金繰りについて協議を行ってまいりました。当社の経営方針の変更については一定のご理解を頂きましたが、現状の事業規模に対する運転資金の借入過大な状態に対しては改善に向けた対応を要請されております。合わせて、現状の手元資金を成長資金として投資することについては、当社の経営方針及び事業計画を基にその必要性を説明の上で、継続的に協議を進めております。
上述の通り、当社としては運転資金の借入過大な現状を解消すべく引き続き銀行との厳正な協議を継続しておりますが、当該状況を解消すべく資本政策の実行等による財務基盤の安定化に向けた取り組みを検討しております。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー (以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い、個人消費並びに設備投資の回復基調を受けて景気は緩やかに持ち直しの動きが見られました。景気の先行きについては、雇用・所得環境が改善する下で、政府の各種政策の効果もあり、緩やかな回復が継続していくことが期待される一方で、地政学的リスクの長期化や資源・原材料価格の上昇、世界的な金融引き締めの影響や中国経済の先行きは不透明な状況が続いております。
当社グループの属するネイル業界におきましても、原材料の高騰などからサービス価格を見直す動向があり物価上昇による消費者の節約志向の高まりや人材獲得の競争化等により、依然として厳しい経営環境で推移しました。
このような環境下の中、当社グループは既存店舗の稼働向上のため、引き続き予約枠の適正化による機会損失の低減、顧客単価の向上施策に注力している一方で、従業員の待遇改善や人員不足解消に向けた積極的な採用教育活動の実施など、将来に向けた投資などで費用が増大したことにより、当連結会計年度は赤字となりました。
店舗展開ではファストネイルブランドにて、4月にららぽーと門真店(大阪府門真市)とジ・アウトレット湘南平塚店(神奈川県平塚市)、7月に博多マルイ店(福岡市博多区)の直営3店舗を新規出店し、6月には大宮店(さいたま市大宮区)を移転し、駅直結のコクーンシティさいたま新都心店としてオープンしました。また、4月にはフレンテ笹塚店(東京都渋谷区)を商業施設の改装に伴い、リニューアルオープンしました。ファストネイル・ロコモデルのフランチャイズ展開では、静岡県に1店舗を新規出店、7月に大名店(福岡県)が移転し、志免店としてオープンしました。
以上の結果、当連結会計年度における当社グループの業績は、売上収益は2,589百万円(前連結会計年度比11.1%増)、営業損失は59百万円(前連結会計年度は36百万円の営業損失)、税引前損失は70百万円(前連結会計年度は43百万円税引前損失)、親会社の所有者に帰属する当期損失は199百万円(前連結会計年度は親会社の所有者に帰属する当期損失34百万円)となりました。
セグメント別の業績は次のとおりであります。
(店舗数)
(注) ( )内はフランチャイズ店舗であり内数であります。
(新規出店、移転、閉店)
(業績)
(単位:百万円)
(業績)
(単位:百万円)
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ524百万円増加し、923百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動の結果得られた資金は336百万円(前連結会計年度比196百万円の収入増)となりました。これは主に、減価償却費及び償却費を261百万円計上したことなどによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は81百万円(前連結会計年度比40百万円の支出増)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出を56百万円、敷金及び保証金の支出18百万円を計上したことによるものであります。
財務活動の結果得られた資金は269百万円(前連結会計年度は79百万円の支出)となりました。これは主に、株式の発行による収入を1,017百万円計上した一方で、短期借入金の返済による支出△750百万円計上したことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
当社グループで行う事業は提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、仕入価格によっております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1.主要な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合について は、総販売実績の10%以上の相手先が無いため記載を省略しております。
2.調整はセグメント間の相殺消去であります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社の連結財務諸表は、国際会計基準審議会によって公表されたIFRSに基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たっては、決算日における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような経営者の見積り及び予測を必要としております。
人件費の高騰に加えて原材料やエネルギー価格、物流コストなど様々な物価高の影響は、2024年4月以降も一定期間継続するものと見込まれるものの、その影響は限定的であると仮定し、会計上の見積りを行っておりますが、現時点ですべての影響について予測を行うことは困難な状況であるため、収束時期等によって変動する可能性があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度末における資産、負債及び資本の状況は以下のとおりであります。
(単位:百万円)
(資産)
流動資産は、前連結会計年度末に比べ526百万円増加し、1,154百万円となりました。これは主に、現金及び現金同等物が524百万円増加したことなどによるものであります。
非流動資産は、前連結会計年度末に比べ60百万円減少し、1,847百万円となりました。これは主に、繰延税金資産が107百万円減少した一方で、使用権資産が39百万円増加したことなどによるものであります。
その結果、資産合計は前連結会計年度末に比べ466百万円増加し、3,002百万円となりました。
(負債)
流動負債は、前連結会計年度末に比べ557百万円減少し、687百万円となりました。これは主に、短期借入金が700百万円減少したことなどによるものであります。
非流動負債は、前連結会計年度末に比べ195百万円増加し、671百万円となりました。これは主に、長期借入金が158百万円増加したことなどによるものであります。
その結果、負債合計は前連結会計年度末に比べ362百万円減少し、1,358百万円となりました。
資本合計は、第三者割当による増資及び当期損失の計上などにより前連結会計年度末に比べ828百万円増加し、1,644百万円となりました。
当社の経営成績に重要な影響を与える要因につきましては「第1 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しておりますのでご参照ください。
(ⅲ) 経営戦略の現状と見通し
当社の経営方針・経営戦略の現状と見通しにつきましては「第1 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しておりますのでご参照ください。
① 資金需要
主として運転資金、設備投資、長期借入金の返済、法人税等の支払に資金を充当しております。
運転資金のうち主なものは、人件費、地代家賃、材料費等であります。
設備投資は主に、ネイルサロン「ファストネイル」の新規出店にかかる有形固定資産の取得、敷金及び保証金の差入等であります。
② 資本の財源
営業活動によるキャッシュ・フローにより得た資金を基本としておりますが、運転資金につきましては、状況に応じて取引銀行から短期借入れを行っております。
③ 資金の流動性
・当座貸越契約
当社は、取引銀行3行との間で貸越極度額合計550百万円の当座貸越契約を締結しております。
当連結会計年度末において、当該契約に基づく借入はありません。
・金銭消費貸借契約
当社は、取引銀行2行との間で借入極度額合計250百万円の金銭消費貸借契約を締結しております
当連結会計年度末において、当該契約に基づく借入の残高は208百万円であります。
・劣後特約付金銭消費貸借契約
当社は、新型コロナウイルス感染症の影響により毀損した財務基盤の中長期的な安定を図り、将来の業績拡大を見据えた事業展開を推進するため、2021年3月31日付で株式会社商工組合中央金庫と劣後特約付金銭消費貸借契約を締結し、200百万円の借入を実行しております。
(1) 金銭消費貸借契約
(2) 劣後特約付金銭消費貸借契約
特記事項はありません。