第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(経営方針)

 当社グループは、「Empower Data, Innovate the Business, Shape the Future.情報に価値を、企業に変革を、社会に未来を。」というビジョンを掲げており、社会に存在する様々なデータを活用することで、多くの企業にイノベーションをもたらし、その結果として、より良い社会を実現することを目指しております。現在、スマートフォンやIoTの普及により、日々生み出されるデータは加速度的に増加して、働き方改革等による業務の効率化のニーズも高まっております。当社グループは、この様々なデータ(ビッグデータ)を「新しい資源」として捉えており、この資源を活用して企業や社会に様々な価値をもたらすソフトウェア及びサービスの提供を行っております。

 

(当社グループの強みと経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)

・独自のテクノロジー

 当社グループは、創業以来、企業の情報活用に特化した独自の技術開発に取り組んできました。超高速集計、データの仮想統合、IoTデータのリアルタイム処理は代表的な特長的技術であり、当社グループの競争力の源泉となっています。それぞれ技術は高度で難解なものですが、「誰でも簡単」に利用することができ、素早く効果をあげられるようにシンプルで直観的に使用できるユーザーインターフェイス(UI)を備えたソフトウェア及びサービスとして提供しております。なお、研究開発活動及びソフトウェア開発のコア部分は、すべて自社グループ内で行っております。

 

・強力なビジネスチャネル

 当社グループの販売モデルは、パートナーを介した間接販売が主となっております。大都市圏で大企業や官公庁の大型案件を得意とするSIerや地方を拠点とするSIer、特定領域に特化したコンサルティングファームやクラウドシステムの構築を専業とするクラウドSIer等多くのパートナー企業と契約しており、日本全国のシステム開発案件をカバーするソリューション/サービス提供体制を構築しております。これにより、継続的な案件創出と営業コストの抑制が可能となり、効率的な販売活動が可能となっております。なお、2021年2月期に、当社グループのソフトウェア及びサービスの販売だけではなく、パートナーとともに新たな市場を開拓していくという考えのもとパートナー制度を改定しました。今後もパートナーとより良い関係を築き、双方のビジネスの発展に努めてまいります。

-契約パートナー数推移(注)                                 (社)

決算年月

2021年2月

2022年2月

2023年2月

2024年2月

2025年2月

契約パートナー数(累計)

486

535

547

587

621

(注)当社パートナー向けプログラム「WingArc1st Relationship Platform(WARP)」において、各契約カテゴリーでの期末時点における解約パートナーを除いた契約パートナー数の合計。

 

・厚いリカーリングレベニュー

 当社グループが提供するソフトウェア及びサービスについては、ソフトウェアライセンスや導入時のサービス提供等継続的な契約を前提としない取引と、ソフトウェアの保守サポート契約、サブスクリプション契約やクラウドサービスの利用契約のような継続的な契約を前提とした取引により構成されています。継続的な契約を前提とした取引は、導入企業が増加するにつれて年々売上収益が積みあがるリカーリングビジネスと呼ばれる収益モデルであり、これらのビジネスから得られる収益(リカーリングレベニュー)は、当社グループの収益の安定化と継続的な拡大に大きく貢献しております。

-リカーリングレベニュー                               (単位:百万円)

決算年月

2021年2月

2022年2月

2023年2月

2024年2月

2025年2月

ライセンス/サービス(注)1

6,966

7,657

8,884

9,844

11,213

リカーリング(注)2

11,318

12,175

13,464

15,908

17,494

売上収益合計

18,285

19,833

22,349

25,752

28,708

リカーリング比率

61.9%

61.4%

60.2%

61.8%

60.9%

(注)1.ソフトウェアライセンスや導入時のサービス提供等継続的な契約を前提としない取引に係る売上の合計。

2.保守、サブスクリプション(ソフトウェアの購入ではなく、利用期間に応じて料金を収受する契約形態)、クラウド等、継続契約を前提とした取引に係る売上の合計。

 また、当社グループは契約継続率をリカーリングビジネスの最も重要なKPIの一つとしております。高い契約継続率を維持することによって、既存の契約は最大限維持しつつ、新規契約を積み上げ、持続的な成長を実現してまいります。

-契約継続率(注)1

決算年月

2021年2月

2022年2月

2023年2月

2024年2月

2025年2月

契約継続率

93.8%

93.2%

95.6%

94.0%

93.7%

(注)1.「SVF」「invoiceAgent」「Dr.Sum」「MotionBoard」の保守契約において、当該期間の更新対象契約の総数に対して実際に契約が更新された金額ベースでの割合。

 

 上記の他、EBITDAを重要な指標としており、2025年2月期の目標数値及び実績は以下となります。

(単位:百万円)

 

目標数値

実績

増減

増減率

EBITDA

9,470

9,650

180

1.9%

(参考)売上収益

27,600

28,708

1,108

4.0%

 

 当社グループは、日本国外に拠点を置く多くの外資系ソフトウェアベンダーと異なり、自社内に営業、開発、サポートすべての機能を有しております。これにより、営業部門やサポート部門が収集した様々な顧客ニーズを開発部門が素早く製品化するといったことが可能となり、当社グループの強みの一つとなっております。

 

(経営環境)

 当社グループの主要な市場である国内ソフトウェア市場は、企業の業務効率化や競争力強化のためのDX投資が引き続き拡大。加えて総務省やデジタル庁が主導する2025年度末を移行期限とする「自治体情報システムの標準化」に関するシステム更新が各自治体で進んでおり、公共領域でのIT投資も活発になっております。

 このような状況のもと、我が国のソフトウェア市場は2023年度から年平均7.8%成長し、2028年度(予測)には3兆6,637億円となることが見込まれております(注1)。また、DXの進展に伴い、クラウドサービスの利用がコミュニケーション等でのフロント領域からより内部の業務システムに拡大し、さらにAIと様々なクラウドサービスの連携が進むことからクラウド市場は今後大きく拡大すると予想されており、2023年度から年平均10.9%成長し、2028年度(予測)には2兆9,078億円に達することが見込まれております(注1)。

(注)1.株式会社富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2024年版」ソフトウェア市場規模推移(ソフトウェア市場、SaaS/PaaS市場)

 

 

(成長戦略)

 新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、企業は働き方改革や新しい環境での競争力強化のため、DXに積極的に取り組んでおります。また、2022年1月にリモートワークやペーパーレスを後押しする改正電子帳簿保存法が施行(2024年1月本格施行)、2023年10月にはインボイス制度が導入され、企業間取引に関する文書の電子化が急激に進展しております。当社は、このような市場の大きな変化をチャンスと捉え、2022年1月に5か年の「中期経営方針」を発表しました。「企業のDXを推し進めるデータプラットフォームの実現」を柱に据え、主にクラウドビジネスでの大きな成長を計画しております。このプラットフォームをベースに、BDSは企業間取引の変革を実現する「企業間DX」、DEはデータの価値を最大限に高め、生産性の向上や新しいビジネスの創出に資する「企業内DX」に取り組んでまいります。当該期間中に当社が達成を目指す目標は以下となります。

 

<中期経営目標>

・クラウド成長率 40%(2022年2月期~2027年2月期平均)

・リカーリング比率 75%(2027年2月期)

 クラウド比率 40%(2027年2月期)

・EBITDA 120億円(2027年2月期)

(優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題)

(1)クラウドビジネスの拡大

 現在の当社グループの売上収益の大半は、ソフトウェアから生み出されておりますが、企業のDXへの取組みが広がる中、迅速な導入が可能で初期コストが低く、他のシステムとの連携が容易なクラウドサービスの市場は拡大しております。このような環境の中、当社は2022年1月に発表した「中期経営方針」でクラウドをベースとした「企業のDXを推し進めるデータプラットフォームの実現」を掲げ、2022年2月期から2027年2月期のクラウド売上の年平均成長率40%及び2027年2月期の全社売上に占めるクラウド売上比率40%を目標としております。なお、2025年2月期におけるクラウド売上の成長率は前期比22.5%、全社売上に占めるクラウド売上比率は18.3%であるため、目標達成に向けクラウドサービスの強化を進めてまいります。

 

・開発体制の強化

 当社グループでは、クラウドサービスに関する継続的な新機能の開発や性能向上のため、開発体制の強化を進めておりますが、優秀なエンジニアの獲得はますます難しい状況になっております。最先端技術への積極的な取組みや働き方改革を進め、エンジニアにとって魅力的な環境を提供するとともに、外部リソースも活用し、柔軟な開発体制を構築してまいります。

 

・アライアンスの推進

 当社グループが提供するクラウドサービスは、当社グループのみがサービスを提供するのではなく、様々な特徴を持つ企業と密に連携することで、スピーディに包括的なサービスを提供することを目指しております。今後もサービスレベル向上のため、様々な企業との連携を行ってまいります。

 

(2)リカーリングビジネスの拡大

 当社グループは、製品、サービスの一度限りの提供ではなく、継続的に顧客にサービス提供を行い、その対価をサービスの提供期間に応じて受け取る「リカーリングビジネス」を推進しております。「リカーリングビジネス」の利点は、業績の安定化、業績の予見性の向上、顧客とのリレーションシップの維持等ですが、一方で、顧客の維持管理コストの増加等のデメリットもあります。そのため、当社は「リカーリングビジネス」に特化した部署を組織し、上述したシステムによる効率的な顧客管理と専任チームによる離脱防止対策を行うとともに、顧客への追加商材の提案による売上の向上を目指しております。なお、2025年2月期における「リカーリングビジネス」に係る売上である「リカーリングレベニュー」の売上全体に占める比率(リカーリング比率)は60.9%であり、売上の拡大と共に当該比率の向上に努めてまいります。

 

・契約継続率の維持向上

 「リカーリングビジネス」は一度契約して頂いた顧客に如何に継続的にご利用いただくかが最も重要となるため、当社グループでは、「契約継続率」をKPIとしております。専門部署にて顧客の利用状況や課題をヒアリングし、きめ細かな対応を行うことにより、当該数値の維持向上に努めております。2025年2月期における「契約継続率」は93.7%となり、引き続き高い水準を維持しております。

 

(3)公共・自治体領域への進出

 総務省やデジタル庁が中心となり、人的・財政的負担を軽減し、地域の実情に即した住民サービスの向上に注力できるようにするとともに、新たなサービスの迅速な展開を可能とすることを目指し、各自治体の情報システムを標準化する取り組みが2025年度を目途に進められております。当社グループは、これまでも多くの自治体にソフトウェアやクラウドサービスを提供してまいりましたが、今後は新たな自治体向けソリューションを提供し、自治体職員の業務不可低減や自治体サービス向上に資する取り組みを行ってまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般

 当社グループは、「Empower Data, Innovate the Business, Shape the Future. 情報に価値を、企業に変革を、社会に未来を。」というコーポレートビジョンのもと、加速度的に増加する知識・情報といったデータの共有・活用によって、地域や年齢、性別、人種などによる制約を受けず、一人ひとりのパフォーマンスを最大化させる当社サービスの提供により、ヒトや組織がエンパワーされ、データ駆動型社会を形成し、社会課題の解決を推進してより良い社会を生み出していく再生的なシステムを創ることをサステナビリティ方針としています。

 

 この方針のもと、社会課題を解決するサービスを提供し続けるための「働き方イノベーション」「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」「BIG DATA活用」と、こうしたサービスを生み出す基盤となる「人権、DE&I」「環境マネジメント」「コミュニティ支援」の6つのマテリアリティを掲げて、ヒトと共に“データの力”で、より良い社会を創出します。

 

① ガバナンス

 当社グループのサステナビリティ方針のもと、ステークホルダーの期待に応えてより一層社会から信頼され必要とされる企業グループを目指し、中長期的な企業価値の向上につなげていくことを目的に2018年4月に「サステナビリティ推進委員会」を設置しました。同委員会はサステナビリティ担当役員を委員長として、代表取締役社長(CEO)、財務担当役員(CFO)、技術担当役員(CTO)、マーケティング担当役員(CMO)で構成されており、サステナビリティ方針に基づいた経営を実践するための方策やマテリアリティの特定、取り組みの推進とモニタリングを行い、定期的に取締役会に報告を行っています。

 

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② 戦略

 当社グループのビジョンを目指すため、主に組織の社会的責任に関するガイドラインであるISO26000に沿ってサステナビリティの活動を推進しております。「当社ステークホルダーにおける重要度」および「当社ビジネスにおける重要度」の2つの観点から優先順位付けを行った項目をプロットし、当社としてこれからの取り組みを一層強化する必要性がある課題として、「社会課題を解決するサービスの提供」および「ウイングアーク1stサービスを生み出す基盤づくり」を優先的に取り組む課題と特定しております。

 

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③ リスク管理

 当社グループでは、持続的な企業価値の向上のために、サステナビリティ項目を含めた全社横断的なリスクへの対応を行っています。特に、当社グループが最重要課題と捉えているマテリアリティを中心に、リスクおよび機会の特定・評価を実施し、リスクマネジメントの強化に取り組んでいます。

 リスクおよび機会の識別・評価においては、各部門が気候変動、人権、労働安全衛生などのサステナビリティ関連項目を抽出し、定量的・定性的な基準に基づいて重要度を評価しています。その評価結果は、サステナビリティ推進室を通じて、経営に関わる全てのリスクおよび機会を統括するリスク管理部門およびリスク・コンプライアンス委員会に報告され、取締役会による監督のもと、各種委員会にて対応策が協議・決定されます。

 

(2)気候変動への対応方針

 当社グループでは、気候変動への対応は経営上の重要課題の一つとして捉えており、国際的な枠組みである気候変動問題に関するパリ協定目標の実現に貢献するため、気候変動に対応する自社の目標を定め、事業を通して積極的に温室効果ガスを削減するための取り組みを進めてまいります。

自社の活動に伴う直接的な温室効果ガス排出量の削減はもちろんのこと、当社独自のテクノロジーにより、環境負荷低減に寄与するサービスを幅広く提供し、社会全体で温室効果ガスを削減する効果を高めることで実現させていきます。

 

① ガバナンス

 サステナビリティ推進委員会では、経営戦略、事業計画に関連する気候変動への対応を最重要課題の一つとして取組んでいます。2030年カーボンニュートラルに向けたリスクや機会について組織横断で構成された気候変動対策PJチームで定期的に検討・審議し、取締役会へ報告しています。

 

② 戦略

 当社グループの事業活動に影響を与える可能性がある気候関連のリスクと機会を、シナリオ分析によって特定し影響度を評価しました。移行リスクについては、当社グループの間接排出に当たるScope2は2030年までに100%再エネ化の予定にありますので、今後は直接排出であるScope1の排出量ゼロをめざしていきます。物理的リスクについては、影響の大きい事業拠点やデータセンターの被災などに備えるため、事業の安定運営のための適切な設備の確保を行い、リモートワーク体制も更に拡充してまいります。こうした状況のなか、当社グループにおいては製品・サービスの省エネ性能の更なる向上により、持続可能な社会の構築に向けてGHG排出量削減に貢献できるソリューション技術の研究・開発に注力してまいります。

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③ リスク管理

 当社グループでは、サステナビリティ推進委員会および気候変動対策プロジェクトチームが中心となり、気候変動に関連するリスク及び機会の洗い出しとシナリオ分析などの評価を年次で実施しています。

 影響度評価により特定されたリスク及び機会に対しては、サステナビリティ推進室および所管する関連部門との協議を経て、対応方針を年次で見直し、経営陣が参画するサステナビリティ推進委員会にて議論の上、対応の方向性を決定しています。その後、リスクアセスメントの結果は、サステナビリティ推進室から、サステナビリティに関連するリスク及び機会を統括しているリスク管理部門およびリスク・コンプライアンス委員会に報告され、取締役会の監督のもと、各種委員会において具体的な対応策を協議・決定しています。

 

④ 指標と目標

 当社グループは、2050年の社会のカーボンニュートラルの実現に貢献するため、Scope1, 2, 3を2030年までのネットゼロ目標にしています。

 Scope1+2の自社事業に伴う排出量については、使用電力の100%再エネ化などにより排出量をネットゼロにします。Scope3の事業活動に伴う間接的な排出量については、当社製品・サービスの提供を通じた環境負荷低減への寄与によりGHG排出量ネットゼロを目指してまいります。

(単位:t-co2)

GHG排出量実績

2022年度

2023年度

2024年度

Scope1:温室効果ガスの直接排出

8

11

14

Scope2:温室効果ガスの間接排出

873

676

166

Scope3:温室効果ガスの間接排出

5,297

8,664

6,644

排出量合計

6,178

9,351

6,823

SCOPE3内訳:

 

 

 

カテゴリー1:購入した製品・サービス

4,541

5,580

4,761

カテゴリー2:資本財

93

1,980

869

カテゴリー3:Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動

-

101

25

カテゴリー4:輸送、配送(上流)

-

-

-

カテゴリー5:事業から出る廃棄物

0

0

0

カテゴリー6:出張

455

771

741

カテゴリー7:雇用者の通勤

208

232

248

カテゴリー8:リース資産(上流)

-

-

-

カテゴリー9:輸送、配送(下流)

-

-

-

カテゴリー10:販売した製品の加工

-

-

-

カテゴリー11:販売した製品の使用

-

-

-

カテゴリー12:販売した製品の廃棄

-

-

-

カテゴリー13:リース資産(下流)

-

-

-

カテゴリー14:フランチャイズ

-

-

-

カテゴリー15:投資

-

-

-

売上当たりco2排出量(t-co2/百万円)

0.28

0.37

0.25

(注)1.各項目はウイングアーク1st(単体)における実績値であり、連結会社ベースでの定量データ取得・集計が現時点では困難なため、当社グループの実態を最も的確に反映すると考えられる単体ベースで開示しています。

2.表記「-」のカテゴリーについては、当社事業との関連性が低いと判断し、重要性の観点から算出しておりません。

 

(3)人的資本に対する取り組み

 当社グループは「Empower Data, Innovate the Business, Shape the Future. 情報に価値を、企業に変革を、社会に未来を。」というコーポレートビジョン達成のための戦略的な成長投資領域となるクラウド/DX人材の獲得と育成が不可欠と位置付けています。

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① 戦略

 当社グループは、データの価値を最大化し、ビジネスにイノベーションを起こすことで新しい未来を創るVision を掲げています。このVisionを実現するためには、私たち一人ひとりがお客様、パートナー、共に働く仲間の期待を超える結果を出し、信頼を獲得し、その信頼を原動力にさらなる新しいチャレンジを続ける必要があります。

 そのため、当社では社員一人ひとりを最大の資産と捉え、次の4つの方針を軸に、個人と組織が目標を一つにし、共に成長し続ける姿を目指しています。

 2024年には人的資本に関する情報開示の国際的なガイドライン「ISO 30414」の認証を取得し、「Human Capital Report」を公開しました。

(ご参考:https://corp.wingarc.com/sustainability/humanrights/human-capital-report.html)

 

基本方針

1.Vision/Core Value の浸透

 私たちが社会に対して何をもたらす存在であるか、そのVision を「Empower Data,

Innovate the Business, Shape the Future Future(情報に価値を、企業に変革を、社会に未来を)」と掲げています。また、Vision の実現にあたり、私たちの強みの源泉は「お客様との信頼」であると捉え、Core Value を「Build the Trust Trust(相手の期待を超える結果を出し、信頼される。)」としています。これらのVison とCore Value を全員に浸透させ、イノベーションマインドとチームワークを醸成するために、全ての役員と部門の目標(VDOKR ※Vision Driven Objective and Key Result )は社内に公開され、経営からの週次発信や社内有志によるセッションといった様々なインナーコミュニケーションを推進しています。

 

2.戦略的な人材投資と自律的な成長支援

 当グループでは戦略的な成長投資領域となるクラウド/DX 人材の獲得と人材育成を中長期的な成長に不可欠な要素と位置付けています。採用に関しては、マーケットの動向を注視し、外部競争力のある報酬水準を維持するとともに、情報発信や接触機会の創出により外部タレントのプールを独自に構築するなど、採用力強化に注力しています。また、人材育成に関しては、主体性を重視した研修制度やキャリアディベロップメント制度により個々の社員や部門ごとの課題に最適化した能力開発を行うとともに、全社横断的な取り組みとしてタレントマネジメントによる計画的な中核人材の選抜・育成を行っています。

 

3.多様な社員のパフォーマンスを最大化する働き方

 様々な生活スタイルやライフステージにある社員一人ひとりがパフォーマンスを最大化できるよう、フルリモートワーク、居住地選択の自由化、コアタイムのないスーパーフレックス制度など「圧倒的に働きやすい会社」を目指した制度拡充を行っています。また、社員がパフォーマンスを高める土台となる健康の維持・向上も非常に重要と考え、健康経営にも注力しています。健康経営に関する多様な取組みの結果、経済産業省と東京証券取引所が共同で東京証券取引所の上場会社の中から「健康経営」に優れた企業を選定する「健康経営銘柄2025」に選定されました。健康経営銘柄に選定されるのは、2023年に続き2回目となります。また、経済産業省と日本健康会議が顕彰する「健康経営優良法人2025(大規模法人部門:ホワイト500)」として5年連続認定されました。

(ご参考:https://corp.wingarc.com/sustainability/humanrights/wellness.html)

4.エンゲージメントの向上

 VisionやCore Value の浸透活動に加え、全社的に1on1 を導入することで定期的なメンバーとマネージャーの対話の機会を大切にしています。1on1 で日々の業務だけでなく目標やキャリアに関する対話を重ねることで、エンゲージメントを高めながら個人と組織が共に成長し、チャレンジを続けるサイクルを創出しています。

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② 指標と目標

 当社グループは、上記戦略において記載した人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いています。

 

項目(注)1

単位

2022年度

2023年度

2024年度

従業員数

705

776

819

男性

526

583

613

女性

179

193

206

男性比率

74.6

75.1

74.8

女性比率

25.4

24.9

25.2

女性管理職比率(注)2

12.2

11.9

11.6

平均勤続年数(注)3

4.5

5.0

5.5

離職率

7.8

3.1

4.9

ひと月あたりの平均残業時間

時間

20.0

19.7

18.6

有休取得率

72.2

70.2

74.0

育児休業取得率(男性)

53.8

85.7

80.9

育児休業取得率(女性)

100

100

100

健康診断受診率

100

100

100

在宅勤務制度利用者比率

100

100

100

ダイバーシティ研修受講率

98.9

98.7

98.9

(注)1.各項目はウイングアーク1st(単体)における実績値であり、連結会社ベースでの定量データ取得・集計が現時点では困難なため、当社グループの実態を最も的確に反映すると考えられる単体ベースで開示しています。

2.管理職はグループマネージャー職(課長職)以上を対象としています。

3.平均勤続年数は旧ウイングアーク1st株式会社を吸収合併した2016年6月以降で算出しております。

4.当社グループでは、人的資本に関する中長期目標として、2030年までに女性社員比率30%、女性管理職比率15%の達成を掲げています。その他の指標については、現時点で定量的な目標設定はしておりませんが、モニタリングを継続し、今後の目標設定を検討してまいります。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資家の投資判断上重要であると考えられる事項については、投資家の皆様に対する積極的な情報開示の観点から記載しております。また、以下の記載は当社株式の投資に関連するリスクのすべてを網羅するものではありません。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)情報通信業における技術革新等への対応について

 当社グループの属する情報通信業は、技術革新が絶え間なく起こり、これにより新しいソフトウェアやサービスが次々に生み出される、変化の激しい業界となっております。近年においても、生成AI、IoTなどの新しい技術が注目されておりますが、それらの新技術に対応したソフトウェアやサービスの提供ができるよう、当社グループとしても研究開発を続けております。しかしながら、これら新技術が普及せず、また、今後新しい技術への対応が遅れた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループの帳票・文書管理ソリューションの主力製品である「SVF」は、企業の基幹業務に必須である請求書や納品書等の帳票類の設計・運用を行うソフトウェア及びサービスであり、企業における帳票類の使用頻度が減少した場合には、これらの製品の需要が減少する可能性があります。

 

(2)競合について

 各種調査レポートによると、帳票市場及び電子帳票市場に位置づけられる「SVF」「invoiceAgent」及びビジネスインテリジェンス市場に位置づけられる「Dr.Sum」「MotionBoard」は、類似製品と競合する状態にあります。当社グループは、機能の強化や品質の向上を目的としてバージョンアップ製品の市場投入を継続的に行っていくことを予定しておりますが、当社グループの開発方針の策定に当たり市場動向を的確に捉えることができなかった場合には、競合製品に対し当社グループ製品の優位性が相対的に低下する、あるいは競合各社の価格戦略によりシェアが縮小する等、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)製品の不具合(バグ等)の発生可能性について

 当社グループは、新製品開発及び既存製品の性能向上、機能追加等の研究開発に当たり、品質管理の向上を念頭に置いて活動しており、品質管理部門の設置等により品質管理の徹底を図り、不具合等の発生防止に努めております。一般的にソフトウェアは高度化、複雑化すると不具合を完全に解消することは不可能と言われており、当社グループのソフトウェアにおいても、各種不具合が発生する可能性は否定できません。また、当社グループにて提供するクラウドサービスにおいても、同様に各種不具合が発生する可能性は否定できません。現時点まで当社グループの責任による不具合の発生により、業績に多大な影響を与えたことはありませんが、当社グループの製品やサービスに致命的な不具合が発生することにより、コストが発生するとともに、その不具合を適切に解決できない場合、当社グループの信用力が低下し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)製品開発について

 当社グループにおいては、技術部門を中心に開発計画を立案し、当該計画に基づき製品開発を進めております。しかしながら、「(3)製品の不具合(バグ等)の発生可能性について」に記載のとおり、ソフトウェア及びクラウドサービスには何らかの不具合が発生する可能性があり、顧客に販売するのに十分な品質が確保されていないと判断した場合、追加の開発・検証作業等を要することとなり、ソフトウェア及びクラウドサービスの販売開始時期が遅延し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。上記以外にも、市場のニーズに合致していない等の理由により当社グループの新製品が市場で受け入れられない場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、開発期間は長期間に及ぶこともあるため、その間の顧客の需要動向又は当社グループの販売戦略の変化、若しくは当初想定していた機能の実装が技術的に困難であることが明らかとなった場合等、当該製品の販売開始前に開発を中止することもあります。その場合には、開発に要したコストを回収することができなくなるため、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)販売方法等について

 「SVF」、「invoiceAgent」、「Dr.Sum」、及び「MotionBoard」といったソフトウェアの販売先はSIerが中心となっており、システム開発の過程において当社グループのソフトウェアを組み込む、若しくは当社グループのソフトウェアを利用してシステムを構築する形で使用されております。売上の大半を占めるSIerの法令違反や情報漏洩等により正常に事業活動を行うことが難しい場合や緊急事態宣言等経済活動の停止を伴う措置が講じられる場合等、SIerが十分に活動することが難しい場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、機能強化や品質向上を目的として当該製品のバージョンアップを継続的に行っていくことを予定しておりますが、このためにはSIerだけではなくエンドユーザーのニーズも適時・適切に把握することが必要になります。しかしながら、当社グループの販売先はSIerが中心となっていることから、直接エンドユーザーに販売する場合と比較してエンドユーザーのニーズを適時・適切に把握できない可能性があり、その場合には、市場動向を適切に把握できず、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。このような状況に対処すべく当社グループでは、営業、開発及びサポートのすべての部署でエンドユーザーと直接対話する機会を増やし、エンドユーザーとのニーズギャップ解消に努めております。

 また、当社グループの製品を販売するSIerと当社グループとの間では、原則として販売に係るパートナー契約を締結することとしております。パートナーにとっても販売メリットの高い製品、サービスを提供できるよう努めるとともに、パートナーとの相互協力により販売推進することを前提としてパートナーとの関係強化に努めておりますが、当社グループにとって重要なパートナーとの契約が解除された場合や、販売条件の大幅な変更を余儀なくされた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)クラウドサービスの提供について

 当社グループは、インターネット環境への接続が可能なユーザーを対象としたクラウドサービスの開発、運営を行っております。このため、クラウドサービスの前提となる利用契約が継続されない等により想定したリカーリングレベニューが得られない場合やサポートコスト等クラウドビジネスの運営に関する費用が事前の想定を上回って増加した場合、自然災害、戦争、テロ、事故等による通信インフラの破壊や故障、Amazon Web Services Inc.や株式会社セールスフォース・ドットコムといったクラウドサービスの運営に欠くことのできないアライアンスパートナー及び当社グループにおけるシステムダウンや障害、コンピュータウイルスやハッカーからの攻撃等により、当社グループが運営するクラウドサービスが正常に稼働しない状態となった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)経済情勢に関するリスクについて

 当社グループの収益の大部分は、現時点では、日本国内のエンドユーザーへの販売に依存していることから、当社グループのビジネスは、日本の経済状況により影響を受ける可能性があります。地政学的要因による国際的なサプライチェーンの混乱や資源価格の上昇、また米国及び中国を始めとした海外経済のリセッションの影響による日本経済の停滞、日本企業によるIT投資の大幅な減少、又はその他の市場環境の悪化は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)人材の確保及び育成について

 当社グループの事業運営は、経験豊富な経営陣や営業、開発等の専門人材に依存しており、人材の確保と育成が重要な課題であると考えております。また、業種や業務に特化したクラウドサービスの提供を進めるため、各業界に精通した人材の確保や顧客により直接的にアプローチするチームの組成、サービスごとのサポート体制の構築等有能な人材へのニーズは、さらに増加しております。

 当社グループは、今後も継続的に人材の確保・育成に努めていく方針でありますが、人材市場の需給逼迫等の事情により当社グループの必要とする人材をタイムリーに確保できない場合は、当社グループの事業及び将来戦略に制約を受けることとなり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)知的財産権及びその他第三者の権利侵害について

 当社グループのビジネス上、当社グループの開発した独自の方法や技術及び当社グループが開発し又はライセンスを受けている特許その他知的財産権は重要であり、当社グループの知的財産権が十分に保護されない場合には、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループでは、自社製品の企画、開発、販売及び他社製品の利用など、事業活動によって第三者の知的財産権、その他の権利を侵害しないようにあらかじめ調査を行い、必要に応じて実施許諾を受ける等の措置を講じております。しかしながら、第三者から知的財産権、その他権利を侵害したとして訴訟を提起される等、第三者との間に紛争が生ずることがないという保証はなく、第三者の権利を侵害したとして、多額の損害賠償金や和解金の支払又は代替的な技術の開発を余儀なくされた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)個人情報等の取扱いについて

 当社グループでは、事業において知り得た個人情報につき、個人情報保護規程を制定し、適切な管理・保護の徹底を図っております。この他、当社では、2007年5月に情報セキュリティマネジメントシステムの公的認証であるISO27001を取得し、ICカードによる執務室の入退室管理、社外に持ち出す可能性のあるノートパソコンのハードディスク暗号化等の対応策を実施する等、情報資産全般について、適切な管理・保護を行うように努めております。また、現在当社では全社員在宅勤務を原則としており、新たなセキュリティリスクとなっていることから、社内システムを強化するとともに、リモートワークに関するガイドラインを定め、社員に周知徹底し、情報の流出を防ぐ体制を整えております。

 しかしながら、万一個人情報が漏洩した場合、顧客から損害賠償を請求される、又は個人情報保護法に基づく罰金等が科される可能性があるほか、顧客からの信用や社会的信用が低下することにより、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)M&A、資本業務提携について

 「(1)情報通信業における技術革新等への対応について」に記載のとおり情報通信分野の変化は激しく、同業他社に対するM&Aや資本業務提携を実施することにより当社グループの事業領域を補完・強化していくことも、事業規模拡大のための有効な手段の一つであると位置づけております。M&A等の実行に際しては、対象企業に対して財務・税務・法務・ビジネス等に関する詳細なデューデリジェンスを行い、各種リスク低減に努める方針であります。但し、これらの調査で確認・想定されなかった事象が実行後に判明あるいは発生した場合や、買収後の事業環境の急変や想定外の事態の発生等により、当初期待していた投資効果が得られない場合は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。また、M&A等の結果、事業領域が変化することによって、当社グループの収益構造が変化する可能性があります。

 

(12)海外展開について

 当社グループはグローバルな事業展開を進めておりますが、海外市場への事業進出には、各国政府の法律又は規制への対応、保護貿易諸規則の発動、為替制限や為替変動、輸送・電力・通信等のインフラ障害、各種法律又は税制の不利な変更、移転価格税制による課税、社会・政治及び経済情勢の変化や我が国との関係の悪化、異なる商慣習による取引先の信用リスク、労働環境の変化や現地での人材を確保できないリスク等、海外事業展開に共通で不可避のリスクがあります。この他、投資の回収が当初の事業計画案どおりに進まないリスクや、撤退等のリスクがあります。これらリスクが発現し、当社グループの対応が遅れた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(13)財務報告に係る内部統制に関するリスクについて

 当社グループは、財務報告の信頼性に係る内部統制の整備及び運用を重要な経営課題の一つとして位置づけ、グループを挙げて管理体制等の点検・改善等に継続的に取り組んでおりますが、内部統制報告制度のもとで当社グループの財務報告に係る内部統制に重要な不備が発見される可能性は否定できず、また、将来にわたって常に有効な内部統制を整備及び運用できる保証はありません。さらに、内部統制には本質的に内在する固有の限界があるため、今後、当社グループの財務報告に係る内部統制が有効に機能しなかった場合や財務報告に係る内部統制に重要な不備が発生した場合には、当社グループの財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。

 

(14)のれん及びその他の無形資産の減損について

 2016年4月14日に旧ウイングアーク1st株式会社の全株式を取得した際に発生したのれん及びその他の無形資産は、その後の企業買収により発生したものを含め、当連結会計年度末現在それぞれ27,674百万円及び15,055百万円であり、合わせて当社グループの資産の62.4%を占めております。当該のれん及び一部の耐用年数を確定できない無形資産(商標権)については、償却を行わず、毎期又は減損の兆候が存在する場合には、その都度減損テストを実施し、当社グループの事業の収益性が低下したと認められる場合には減損損失を計上する必要が生じ、当社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、IFRS会計基準では、日本において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準と異なり、のれん及び耐用年数の確定できない無形資産の償却を行いません。そのため、当該のれん及びその他の無形資産について減損損失を計上した場合は、日本基準に比べて当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社グループにて実施しているのれん及び耐用年数を確定できない無形資産の減損テストについては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記13.のれん及びその他の無形資産(4)のれん及び耐用年数を確定できない無形資産の減損テスト」をご参照下さい。のれん及び耐用年数を確定できない無形資産の回収可能価額は、使用価値により算定しており、過去の経験と外部からの情報を基に、製品・売上形態ごとの新規案件売上及び将来の売上高成長率に関する経営者の主要な仮定を反映させて作成され、経営陣により承認された翌連結会計年度の予算及びその後1年の業績予測を基礎とする割引キャッシュフロー法(以下「DCF法」とする)に基づき算定しております。業績予測期間終了以降の継続価値は、予測期間終了後も永続的に発生することが期待される利益を割引計算する手法(永続法)を用いており、日本の長期的なインフレ率予想を勘案し成長率を1%に設定しております。

 当連結会計年度末における回収可能価額は、のれん及び耐用年数を確定できない無形資産が含まれる資金生成単位の資産の帳簿価額を90,117百万円上回っておりますが、割引率が12.8%上昇した場合、又は将来キャッシュ・フローの見積りが66.6%減少した場合、回収可能価額と帳簿価額が等しくなる可能性があります。

 また、当社グループでは、のれんの減損に係るリスクを低減するため、事業の収益力強化に努めており、主に以下の取組みを実施しております。

・リカーリングビジネスの拡大

ソフトウェアライセンスの保守、サブスクリプションやクラウドサービスの利用料等のリカーリングレベニューは、契約が継続される限りは毎年継続的に売上が計上され、契約数が増加すればその分売上も増加します。当社グループは、事業の安定と収益力の強化のため、このリカーリングビジネスの拡大を図っております。

・業種・業務に特化したソリューションの推進

当社グループは、単なるソフトウェアやクラウドサービスの提供ではなく、業種ごとのノウハウを組み合わせた顧客の業務に即したソリューションを提供しております。特にデータエンパワーメントソリューションは、製造業向けのIoT可視化ソリューションや金融業向けの営業生産性向上ソリューション等の提供により成長してまいりました。新ソリューションによるさらなる売上拡大のため、継続的な技術開発と業種ノウハウの蓄積に努めております。

 

(15)有利子負債への依存と資金調達について

 当社グループは、金融機関を貸付人とする借入契約を締結しており、有利子負債への依存度が比較的高い水準にあります。そのため、金融市場の急激な変化等により、当社グループの資金調達能力、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当該借入金につきましては、2016年4月に実施した当初借入額31,500百万円から返済が進んでおり、当連結会計年度末における連結有利子負債(一年内返済長期借入金及び長期借入金の合計)の残高は8,558百万円、資産合計に対する有利子負債残高の比率は12.5%となっております。

 また、当該借入金については複数の金融機関とシンジケートローン契約を締結しております。当該契約には財務制限条項が付されており、これに抵触した場合、貸付人の請求があれば同契約上の期限の利益を失うため、ただちに債務の返済をするための資金の確保が必要となり、当社グループの財政状態及び資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、上記の金融機関からの借入に関係した、金利上昇に係るリスクと財務制限条項への抵触による一括返済リスクに対応するため、主に以下の取組みを実施しております。

・収益性を重視した経営管理

当社グループは、事業の持続的成長のためリカーリングビジネスを推進するとともに、EBITDA及び親会社の所有者に帰属する当期利益を重要な経営指標としており、利益率の維持向上を図っております。

・財務バランスを意識した資金計画

当社グループの資金計画は、リカーリングビジネスにより安定している営業キャッシュ・フローをベースにしており、借入金の返済及び配当金の支払いを見込んだ上で、投資の計画を策定しております。投資及び財務キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローの範囲内となるよう管理し、手元資金の増加に努めます。

・金利条件及び財務制限条項に係る金融機関との交渉

 金融機関と随時交渉を行っており、経済環境や当社グループの事業の進捗状況を共有した上で、金利条件及び財務制限条項の削除及び縮小につき、協議しております。なお、2024年2月にはリファイナンスを実行し、金利条件を改善しております。

 

(16)新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

 当社は、当社グループ役員及び従業員に対するインセンティブを目的とし新株予約権を付与しております。2025年2月期末現在、新株予約権による潜在株式総数は281,000株であり、発行済株式総数34,932,870株の0.8%に相当します。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。

 

(17)伊藤忠商事株式会社及び東芝デジタルソリューションズ株式会社との関係について

 伊藤忠商事株式会社が親会社であるIW.DXパートナーズ株式会社は、2025年2月期末現在、当社の議決権の22.02%を保有しているため、伊藤忠商事株式会社は当社のその他の関係会社に該当いたします。同社とは2019年11月5日付で資本・業務提携契約を締結しております。当社は同社に対して当社ソフトウェア等の販売を行っておりますが、他の企業の取引条件との比較等により取引条件の適正性等は確保しております。

 また、東芝デジタルソリューションズ株式会社は、2025年2月期末現在、当社の議決権の13.27%を保有しているため、当社のその他の関係会社に該当いたします。同社とは2020年11月17日付で資本・業務提携契約を締結しており、同社の親会社である株式会社東芝から社外取締役1名を受け入れております。同社は当社の販売パートナーとして、当社ソフトウェア等の販売を行っておりますが、他のパートナー企業の取引条件との比較等により取引条件の適正性等は確保しております。

 なお、当社グループと伊藤忠商事株式会社及び東芝デジタルソリューションズ株式会社との事業領域は相違しており、当社の意思決定において両社による事前承認を必要とする事項等もないことから、当社の独立性及び自律性は保たれていると認識しております。

 しかしながら、将来において、何らかの要因により両社が経営方針や事業戦略(当社株式の保有方針も含む。)を変更した場合、当社株式の流動性及び株価形成等に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

1.経営成績等の状況の概要

 当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 当社グループは、「Empower Data, Innovate the Business, Shape the Future.情報に価値を、企業に変革を、社会に未来を。」というビジョンを掲げており、社会に存在する様々なデータを活用することで、多くの企業にイノベーションをもたらし、その結果として、より良い社会を実現することを目指しております。

 

 当社グループは、「データエンパワーメント事業」を単一の報告セグメントとしておりますが、提供しているソフトウェア及びサービスの性質により、企業の基幹業務を支える「帳票・文書管理ソリューション」と、様々なデータを活用し、今までにない新たな価値を生み出す「データエンパワーメントソリューション」の2つに売上収益を区分しております。

 

(1)経営成績の状況

 当連結会計年度(2024年3月1日~2025年2月28日)における我が国の経済環境は、好調な業績を背景とした企業の積極的な設備投資やインバウンド消費が堅調に推移するとともに、賃上げによる所得環境の改善で個人消費は回復傾向にあります。また、賃金上昇分のサービス価格への転嫁が進み、内需主導の緩やかな回復が続いている一方、海外では、米国での通商政策や中国での不動産市場の停滞、中東やウクライナでの地政学リスク等国内経済に大きな影響を与える様々なリスクが想定されます。

 

 当社グループが属する企業向けIT市場は、これまで大企業を中心に積極的なDX投資が行われてきておりましたが、クラウド化によるシステムの導入ハードルの低下といった要因から、今後は企業規模に関わらず既存システムの刷新やモダナイゼーション、生成AIの導入を本格化する動きが加速していくと予想されます。また、デジタル庁が主導しているデジタルガバメントは、クラウドバイデフォルトの原則のもと官公庁・自治体のシステムのデジタル化を強力に推し進めており、地方創生の手段としてこれらのデジタル基盤を用いた情報連携基盤の構築やデジタルサービスの拡充が期待されています。

 

 このような環境のもと、企業向けIT市場は、あらゆる産業で投資が継続し、2025年は前期比8.8%増と堅調に成長することが見込まれております(注1)。一方、クラウド市場は、クラウド移行が容易なシステムのクラウドマイグレーションのピークは過ぎたものの、レガシーシステムやスクラッチ開発したシステムのクラウドマイグレーションが本格化しています。さらに多くの業務で生成AIの利用拡大が見込まれていることから、クラウド市場は大きく成長すると想定されています。2025年のクラウド市場は前期比21.2%増と非常に高い成長が見込まれております(注2)

(注)1 IDC Japan, 2024年11月「国内IT市場 産業分野別/従業員規模別/年商規模別予測、2024年~2028年」(JPJ51513024)TABLE2 国内IT市場 産業分野別 支出額予測アップデート、2022年~2028年、企業分野小計

2 IDC Japan, 2025年2月「国内パブリッククラウドサービス市場予測、2025年~2029年」(JPJ52152425)TABLE 1 国内パブリッククラウドサービス市場 サービスセグメント(大分類)別 売上額予測、2024年~2029年

 

 このような事業環境のもと、当社グループは、帳票・文書管理ソリューション(BDS)、データエンパワーメントソリューション(DE)それぞれにおいて、積極的に投資を進めてまいりました。

 

◇帳票・文書管理ソリューション(BDS)

 業務の省力化や競争力の強化を目的として大企業を中心とした基幹システムへの投資が進んでいることに加え、企業内での帳票電子化のニーズは非常に強く、「SVF」「invoiceAgent」ともに強い需要が続いております。特に「invoiceAgent」は、電子化された帳票の活用ニーズや企業間取引電子化の引き合いが多いことから、今後の大きな成長が期待されております。本ソリューションでは、帳票をベースとした企業の基幹業務を変革するDXソリューションを提供してまいります。

 

 

2024年3月

電子帳票プラットフォーム「invoiceAgent」と製造業向け生産・販売・原価管理パッケージ「mcframe 7」がPeppol(注)対応で連携。取引先が異なるWeb請求システムを利用している場合でもPeppolに準拠して請求データのスムーズなやり取りを実現。

2024年5月

システムインテグレーションを核に様々なITサービスを展開する株式会社トライサーブの全株式を取得。当社グループのデジタル帳票基盤ソリューション及びデータ活用ソリューションとトライサーブの豊富なシステムインテグレーションの経験を融合し、自治体向けのクラウドサービスの開発、導入、運用を目的に共同で公共領域でのDXを推進。

2024年8月

電子帳簿保存法対応済み企業向け「プロレクチャー電帳法点検」サービスを提供開始。電帳法を遵守した適切な運用や今後のシステム連携・拡張による運用コストの最適化、そして法対応により増加した業務負荷軽減を支援。

2024年9月

統合帳票基盤サービス「invoiceAgent Enterprise Cloud」を11月1日より提供開始。日単位で数十万リクエストの帳票出力、数万ユーザーによる利用、数億ファイルの文書保管、さらに数十万件以上の受配信にスムーズに対応が可能。

2025年1月

株式会社BlueMemeが販売・サービス提供する「OutSystems」と「SVF」「invoiceAgent」が連携。業務システムごとに個別最適化される傾向が強い帳票運用コストを抑え、IT部門の業務負荷の軽減を実現。

(注) Peppol(Pan European Public Procurement Online)は、請求書(インボイス)などの電子文書をネットワーク上でやり取りするための「文書仕様」「運用ルール」「ネットワーク」のグローバルな標準仕様であり、OpenPeppol(ベルギーの国際的非営利組織)がその管理等を行っている。

 

◇データエンパワーメントソリューション(DE)

 クラウドサービスの浸透により企業規模に関わらず、多くの企業が様々なデータを保有するようになっています。一方、専任者の不在やシステム運用に関する問題から、蓄積されたデータを競争力向上のために活用できている企業は多くはありません。

 当社グループは、企業のデータ活用を促進させるため、当社グループのソフトウェア・クラウドサービスに、各業種の業務に精通しているスペシャリストのノウハウを組み合わせ、業種特有の業務を効率化する「業種・業務ソリューション」の提供を行っております。さらに、クラウドサービスの開発に力を入れており、クラウド上での大規模なデータ集計を可能とする「Dr.Sum Cloud」、様々なクラウドサービスと連携してデータの入力や可視化を実現し、業務アプリ的な使い方が可能な「MotionBoard Cloud」は大きく成長しております。本ソリューションでは、ビッグデータから新たな価値を生み出すDXソリューションを提供してまいります。

2024年4月

「Dr.Sum」、「MotionBoard」とクリックテック・ジャパン株式会社のデータレプリケーションツール「Qlik Replicate」が連携し、ERPのデータ活用コストを削減する「Data Activate Solution」を提供開始。ERPのデータ活用にかかる各種連携設計の負担削減を実現。

2024年6月

BIダッシュボード「MotionBoard」とコンテンツクラウド「Box」が連携。基幹システムのデータと図面や写真を含むBox内の非構造化データをMotionBoard上で統合・可視化。製造・建設現場における分析に寄与。

2024年7月

クラウドデータベース「Dr.Sum Cloud」が「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)(注)」において、 政府が求めるセキュリティ要求を満たしているクラウドサービスとして登録。

2024年10月

「MotionBoard」、「Dr.Sum」と株式会社セゾンテクノロジーが提供するクラウド型データ連携プラットフォーム「HULFT Square」間でデータを相互に連携するアプリケーションテンプレートを「HULFT Square」上で無償提供。データ連携スクリプトを利用することで、データ収集の自動化と、情報システム部門の工数削減、データ活用の促進を図る。

2024年11月

日本アイ・ビー・エム株式会社の「金融サービス向けデジタルサービス・プラットフォーム」にBIダッシュボード「MotionBoard」を連携。データの可視化や統一化、データ抽出業務、レポート業務の効率化を実現する「DSPデータ利活用BI機能」の提供を開始。

2024年11月

株式会社シムトップスと資本業務提携契約を締結。本提携により、従来の製品連携に加え、製造業への提案の拡大を図るとともに、現場から経営までデータに基づいた統合型ソリューションとして提供を開始。

2024年12月

株式会社スリーシェイクのクラウド型データ連携ツール「Reckoner」と「Dr.Sum」が連携。ノーコードでデータ収集から統合までのプロセス効率化を実現。

(注)1 ISMAP(Information system Security Management and Assessment Program)(通称:イスマップ)は、政府が求めるセキュリティ要求を満たしているクラウドサービスを予め評価・登録することにより、政府のクラウドサービス調達におけるセキュリティ水準の確保を図り、クラウドサービスの円滑な導入に資することを目的とした制度

 

 上記の他に、2024年4月に株式会社スマートバリューと共同で自治体向け公共施設予約システム「ラクリザ」のリリース及びさくらインターネット株式会社とのクラウド上でのシステムの構築、運用や維持管理を一括したサービス提供を目的とした業務提携契約の締結、2024年10月には自治体システム標準化に対応した自治体向け業務支援ソリューション「Govlong(ガブロン)」を提供開始しており、公共領域、自治体向けサービスの拡充を進めております。

 この結果、当連結会計年度の売上収益は28,708百万円(前期比11.5%増)、営業費用(その他の営業収益を控除後)は、人員の採用による人件費や外注・業務委託料の増加などで20,491百万円(前期比11.1%増)、営業利益は8,216百万円(前期比12.4%増)、税引前利益は8,253百万円(前期比13.0%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は5,929百万円(前期比9.6%増)となりました。

 

 また、当社グループは、上記のIFRS会計基準により規定された財務指標以外に、以下のEBITDAを重要な経営指標と位置付けております。

(単位:百万円)

決算期

2024年2月期

2025年2月期

増減

増減率

営業利益

7,309

8,216

907

12.4%

減価償却費及び償却費

(注1)

1,288

1,433

145

11.3%

EBITDA(注2)

8,597

9,650

1,052

12.2%

(注)1.2020年2月期より、IFRS第16号の適用により、オフィスの賃借契約に係る使用権を使用権資産として認識しており、当該資産に係る減価償却費も併せて計上しておりますが、EBITDA算出におきましては、「減価償却費及び償却費」からは当該使用権資産に係る減価償却費を除いております。

2.EBITDA=営業利益+減価償却費及び償却費

 

 EBITDAは、営業利益、減価償却費及び償却費の増加により9,650百万円(前期比12.2%増)と増加しました。

 当社グループは、「データエンパワーメント事業」を単一の報告セグメントとしておりますが、提供しているソフトウェア及びサービスの性質により、企業の基幹業務を支える「帳票・文書管理ソリューション」と、様々なデータを活用し、今までにない新たな価値を生み出す「データエンパワーメントソリューション」の2つに売上収益を区分しております。

 

≪ソリューション別売上収益≫                             (単位:百万円)

ソリューション区分

2024年2月期

2025年2月期

増減

増減率

帳票・文書管理

ソリューション

SVF

14,146

15,288

1,142

8.1%

invoiceAgent

2,095

2,273

177

8.5%

その他

251

1,199

948

376.4%

小計

16,494

18,761

2,267

13.7%

データエンパワーメント
ソリューション

Dr.Sum

3,063

3,398

334

10.9%

MotionBoard

3,652

3,760

107

2.9%

その他

2,541

2,787

245

9.6%

小計

9,258

9,946

687

7.4%

合計

25,752

28,708

2,955

11.5%

 

(帳票・文書管理ソリューション)

 当ソリューションは、企業の基幹業務に必須である請求書や納品書等の帳票類を設計・運用を行うソフトウェア及びサービスである「SVF」及び企業間取引の電子化を実現する「invoiceAgent」が主な構成要素となっております。

 「SVF」は、大企業や官公庁を中心とした基幹システムへの大型投資が継続したことにより、ライセンス/サービスは前期比13.2%増と前年を大きく上回りました。保守については一部解約があったものの好調なライセンス受注により、ほぼ前年並みの前期比1.1%増となりました。クラウドサービスについては、様々なクラウドサービスの帳票需要を取り込み、前期比18.8%増と前年を大きく上回りました。この結果、売上収益は15,288百万円(前期比8.1%増)となりました。

 「invoiceAgent」は、前年の大型案件の反動により、ライセンス/サービスは前期比69.7%減と前年を大きく下回りました。保守については、契約を順調に積み上げたことから、前期比15.4%増と前年を大きく上回りました。クラウドサービスについては、2024年1月の改正電子帳簿保存法の施行後も企業帳票のデジタル化がさらに進展していることから契約社数が順調に増加し、前期比41.8%増と前年を大きく上回りました。この結果、売上収益は2,273百万円(前期比8.5%増)と前年から増加となりました。

 「その他」は、新たに株式会社トライサーブの売上収益を連結したことから、前期比376.4%増と前年を大きく上回りました。

 この結果、当ソリューションの売上収益は18,761百万円(前期比13.7%増)となりました。

 

 

(データエンパワーメントソリューション)

 当ソリューションは、企業が保有するデータを統合・処理・分析・可視化することにより、業務の効率化や生産性の向上を実現するソフトウェア及びサービスである「Dr.Sum」「MotionBoard」が主な構成要素となっております。

 「Dr.Sum」は、データ活用の幅広い需要を取り込んだことからライセンス/サービスは前期比14.5%増と前年を大きく上回りました。保守については、前期比4.0%増と堅調に推移しました。クラウドサービスについては、大企業を中心に販売が好調に推移し、前期比47.5%増と前年を大きく上回りました。この結果、売上収益は3,398百万円(前期比10.9%増)となりました。

 「MotionBoard」は、前年の大型案件の反動により、ライセンス/サービスは前期比24.3%減と前年を大きく下回りました。保守については、契約を順調に積み上げたことから、前期比9.0%増と前年を上回りました。クラウドサービスについては、様々なサービスとの提携を通して着実に契約社数を積み上げた結果、前期比15.3%増と前年を大きく上回りました。この結果、売上収益は3,760百万円(前期比2.9%増)となりました。

 「その他」は、大企業を中心に導入サービスの需要が非常に強く、前期比9.6%増と前年を上回りました。

 この結果、当ソリューションの売上収益は9,946百万円(前期比7.4%増)となりました。

 

 また、当社グループが提供するソフトウェア及びサービスについては、ソフトウェアライセンスや導入時のサービス提供等継続的な契約を前提としない取引と、ソフトウェアの保守サポート契約、サブスクリプション契約やクラウドサービスの利用契約のような継続的な契約を前提とした取引により構成されています。継続的な契約を前提とした取引は、導入企業が増加するにつれて年々売上収益が積みあがるリカーリングビジネスと呼ばれる収益モデルであり、これらのビジネスから得られる収益(リカーリングレベニュー)は、当社グループの収益の安定化と継続的な拡大に大きく貢献しております。

 

≪契約区分別売上収益≫                                (単位:百万円)

契約区分

2024年2月期

2025年2月期

増減

増減率

ライセンス/サービス

9,844

11,213

1,369

13.9%

リカーリング

保守

10,579

10,880

300

2.8%

クラウド

4,283

5,245

962

22.5%

サブスクリプション

1,045

1,368

322

30.9%

小計

15,908

17,494

1,585

10.0%

合計

25,752

28,708

2,955

11.5%

(注)より詳細な情報につきましては、当社IRサイト(https://ir.wingarc.com/)財務情報ページ内の最新の「FACT BOOK」をご参照下さい。

 

(2)財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末における資産は、68,436百万円(前期末比2,486百万円増)となりました。流動資産は17,824百万円(前期末比2,550百万円増)、非流動資産は50,612百万円(前期末比63百万円減)となりました。流動資産の増加の主な要因は、現金及び現金同等物1,728百万円の増加、営業債権及びその他の債権781百万円の増加によるものです。非流動資産の減少の主な要因は、株式会社シムトップスの株式取得に伴う持分法で会計処理されている投資454百万円や株式会社トライサーブが連結子会社となったことに伴うのれん325百万円、有形固定資産の272百万円の増加があったものの、顧客関係・技術関連資産の償却に伴うその他の無形資産618百万円やその他の金融資産510百万円の減少があったことによるものであります。

 

(負債)

 当連結会計年度末における負債は、26,590百万円(前期末比262百万円減)となりました。流動負債は14,840百万円(前期末比1,491百万円増)、非流動負債は11,750百万円(前期末比1,754百万円減)となりました。流動負債の増加の主な要因は、契約負債1,092百万円の増加があったことによるものです。非流動負債の減少の主な要因は、借入金返済に伴う長期借入金1,409百万円の減少があったことによるものであります。

 

(資本)

 当連結会計年度末における資本は、41,846百万円(前期末比2,749百万円増)となりました。資本の増加の主な要因は、配当金の支払に伴う利益剰余金の減少3,018百万円、その他の資本の構成要素の減少428百万円があったものの、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上に伴う利益剰余金5,929百万円の増加によるものであります。

 

(3)キャッシュ・フロー

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、14,715百万円(前期末比1,728百万円増)となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果獲得した資金は、8,196百万円(前期は7,840百万円の獲得)となりました。これは主に、法人所得税の支払額2,621百万円の計上があったものの、税引前利益8,253百万円の計上、減価償却費及び償却費1,764百万円の計上、契約負債の増減額1,092百万円の計上があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は、1,657百万円(前期は1,600百万円の使用)となりました。これは主に、北九州拠点新設等に伴う有形固定資産の取得による支出390百万円、社内インフラ環境整備等に伴う無形資産の取得による支出429百万円、関連会社の取得による支出450百万円、子会社の取得による支出410百万円を計上したことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は、4,802百万円(前期は4,462百万円の使用)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出1,487百万円、配当金の支払額3,017百万円を計上したことによるものであります。

 

 

2.生産、受注及び販売の実績

(1)生産実績

 当社グループは、ソフトウェアの販売及びサービスの提供が主体であり、生産活動を行っていないため、該当事項はありません。

 

(2)受注実績

 当社グループは、ソフトウェアの販売及びサービスの提供が主体であり、受注生産を行っていないため、該当事項はありません。

 

(3)販売実績

 当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。

ソリューションの名称

当連結会計年度

(自 2024年3月1日

至 2025年2月28日)

金額(百万円)

前期比(%)

帳票・文書管理ソリューション

18,761

13.7

データエンパワーメントソリューション

9,946

7.4

合計

28,708

11.5

(注)1.当社グループの事業セグメントは、「データエンパワーメント事業」を単一の報告セグメントとしているため、ソリューション別の販売実績を記載しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年3月1日

至 2024年2月29日)

当連結会計年度

(自 2024年3月1日

至 2025年2月28日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

日本電気株式会社

1,910

7.42

1,904

6.63

 

 

3.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

(1)重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表はIFRS会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たっては、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるために、これらの見積りと異なる場合があります。

 なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性のある会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性のある会計方針」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しております。

 

(2)財政状態の分析

 当連結会計年度における財政状態の分析につきましては、「1.経営成績等の状況の概要 (2)財政状態の状況」を参照ください。

 

(3)経営成績の分析

 当連結会計年度における経営成績の分析につきましては、「1.経営成績等の状況の概要 (1)経営成績の状況」を参照下さい。

 

(4)キャッシュ・フローの分析

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「1.経営成績等の状況の概要 (3)キャッシュ・フロー」に記載しております。

 

(5)資本の財源及び資金の流動性

 当社グループにおける主な資金使途は人件費、研究開発費、外注・業務委託料等の営業費用、主に社内インフラ用のソフトウェア・サーバ等の設備投資、M&Aや出資に係る投資、借入金の返済、配当の支払となっております。これらの資金需要につきましては、営業キャッシュ・フローを源泉とする自己資金で賄っており、必要に応じて借入金等による資金調達を実施する方針としております。

 

(6)目標とする指標の分析

・EBITDA

(単位:百万円)

 

2024年2月期

2025年2月期

増減

増減率

EBITDA

8,597

9,650

1,052

12.2%

(参考)売上収益

25,752

28,708

2,955

11.5%

 EBITDAは、売上収益の増加及びコストコントロールが奏功したことにより、9,650百万円(前期比12.2%増)と前年を上回りました。

 

・契約継続率

 

2024年2月期

2025年2月期

増減

契約継続率

94.0%

93.7%

△0.3ポイント

 契約継続率は、顧客企業でのシステム終了等の影響により、0.3ポイントの減少となりましたが引き続き高い水準を維持しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

(株式会社三菱UFJ銀行等と締結しているタームローン契約)

当社は2024年2月26日付で株式会社三菱UFJ銀行をエージェントとするタームローン契約(以下「本契約)という。)を締結しております。当該本契約の主な契約内容は、以下のとおりであります。

 

① 契約の相手先

株式会社三菱UFJ銀行、その他2社

② 借入金額

タームローン 当初借入金額 10,000百万円

③ 返済期限

2031年2月末日を最終返済日とする分割返済

④ 利率

TIBOR(東京銀行間取引金利)+スプレッド

スプレッドは、タームローン契約において予め定められた料率

⑤ 主な借入人の義務

イ.借入人の決算書類を提出する義務

ロ.当該契約上の権利及び義務並びに地位は、他の当事者の書面による事前の同意なく、第三者に対して譲渡その他の移転、担保権設定その他の処分を行わないこと

ハ.財務制限条項を遵守すること

 

 当社の借入金について財務制限条項が付されており、当該条項に抵触した場合、当社は期限の利益を喪失し、借入先の要求に基づいて借入金を一括返済する可能性があります。

 当社の借入金に付されている財務制限条項は、以下のとおりであります。

・2024年2月期以降(2024年2月期含む。)借入人の各年度の決算期の末日における借入人の連結の貸借対照表における純資産の部の金額を、当該決算期の直前の決算期の末日又は2023年2月に終了する決算期の末日における借入人の連結の貸借対照表における純資産の部の金額のいずれか大きい方の75%の金額以上にそれぞれ維持することを確約する。

・2024年2月期及びその直前の2023年2月に終了する決算期以降(2023年2月期含む。)借入人の各年度の決算期に係る借入人の連結の損益計算書上の営業損益に関して、それぞれ2期連続して営業損失を計上しないことを確約する。

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、「データエンパワーメント事業」を単一の報告セグメントとしておりますので、セグメント別の記載はしておりません。

 

 当社グループは、主に企業向けソフトウェア及びサービスの開発に係る研究開発を行っており、市場の拡大や技術の進歩により多様化、高度化し、広汎な範囲にわたる顧客ニーズに応える製品を研究、開発し、提供することを基本方針としております。当連結会計年度における研究開発費は3,300百万円であります。

 

(1)研究の目的

 クラウド、ビッグデータ、IoT、AI、働き方改革といった市場の変化に対応した、当社グループ独自のソフトウェア及びサービスの開発を目的としております。

 

(2)主要な研究課題

 集計速度の向上やストリーミングデータのリアルタイム処理、紙文書の電子化、他のソフトウェア及びサービスとの連携等当社グループの事業方針を実現する上で必要となる技術開発に取り組んでおります。

 

(3)研究体制

 本社、札幌、新潟の各拠点の開発部門において、研究開発活動を行っております。

 

(4)研究成果

 研究開発活動の成果として、新機能や性能を向上させたソフトウェア及びサービスのリリースを随時行っております。