第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社は、「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」を企業ビジョンとし、デジタル化が進んでいない既存の産業をインターネットにより効率化し、最終顧客に対して一層の便益を提供していくことを通して、社会へ貢献してまいります。

 

(2)経営戦略等

 今後の中長期的な方向性としては、全国の顧客に対して印刷、広告、物流をはじめとするBtoBの各種サービスをEC、SaaS(注1)等の形式で提供していくことにより、国内におけるBtoBプラットフォームの主力企業に成長し、また国内の事業で培ったノウハウをもとに、海外への事業展開を図ってまいります。具体的な経営戦略は以下のとおりであります。

 

(ⅰ)当社の企業ビジョンと事業展開方針

①当社の経営ビジョンと事業概要

 当社は、上記の企業ビジョンの下、顧客ニーズと提携会社の余剰キャパシティ(注2)を繋ぐプラットフォームの運営を行っております。併せて、顧客のマーケティングおよび物流管理を支援するSaaS事業を運営しております。

 

②当社サービスの意義:産業にもたらす変革

 印刷や物流をはじめとする20世紀に築かれた産業は、資本を持つ大企業が莫大な費用を投じて製造設備を購入し、その製造キャパシティを営業が販売し、過剰に販売した部分を繋がりのある下請けに回すといった、大企業を頂点とする多重下請けのピラミッド型の産業構造を作り上げました。しかし、インターネットの普及及び技術革新により、既存産業におけるサプライヤー(注3)を統合するコストが大幅に低下しました。当社は、この多重下請け構造下にある中小印刷会社や中小運送会社をインターネットで結びつけ、仮想的に巨大な供給キャパシティを持ち、ECサイトを通じて直接発注者と繋げるシェアリングプラットフォームを創出することで、1社が製造から販売まで全ての機能を持つ産業形態ではなく、サプライヤーと顧客の需給を効率良く結び付ける21世紀型の産業形態の在り方を提示したいと考えております。当社が産業にもたらす変革の例は以下のとおりでありま

す。

・垂直統合から水平統合への変革

(例)印刷業界:自社グループ内で、営業部門、印刷工場、研究開発部門等を保有する垂直統合の形態から、プラットフォームにより各社が保有する印刷工場を水平統合する形態への変革

・自社グループ1社での設備投資から、水平統合による巨大なキャパシティへの変革

・ピラミッド型の多重下請け構造からネットワーク型のプラットフォームへの変革

(例)運送業界:顧客から受注を行う大手運送会社が中小運送会社に実際の運送を委託する多重下請け構造からの変革

 

③BtoBのプラットフォームとしてのユニークなポジショニング

 当社は、事業者と事業者を繋ぐBtoBのプラットフォームとして既存産業の革新を実現するという、ユニークなポジショニングを目指しております。

プラットフォーム価値を拡大するためには、テクノロジー(インターネット関連技術、プラットフォームの構築技術)、マーケティング(顧客の集客力)及びオペレーション(プラットフォームの運営力)の各要素を高い次元で有機的に連携することが必要であり、当社は、各要素の高度化と連携に向けた施策に継続的に取り組んでまいります。

 

(ⅱ)当社の企業価値の源泉

① 当社の企業価値の源泉:顧客数×ARPU(注4)

 当社は、顧客からの信頼の総和であり、プラットフォームとしての価値でもある売上高と、顧客及びサプライヤーへの付加価値の総和である売上総利益(当社は、売上高からサプライヤーに仕入代金を支払った残りを売上総利益として計上)の最大化を重視した経営を行っております。売上高を構成する顧客数×ARPUの最大化と、提供するサービスの高付加価値化及びサプライヤーの生産性向上による売上原価の低減により実現される売上総利益率の最大化を目指す方針であります。

 

② 高い定着性を有する顧客基盤がもたらす安定的な収益基盤

 当社の顧客の特徴は、1回の利用で終わるのではなく、複数回の注文を行って頂ける点にあると考えております。当社ではリピート率又は注文回数を管理しておりますが、直近の「ラクスル」及び「ノバセル」の状況は下記のとおりであります。

 

年間購入者数

(年間合計)

1人当たり

注文回数(年平均)

1件当たり

注文単価(年平均)

2017年7月期

185,107人

3.55回

11,423円

2018年7月期

251,833人

3.64回

11,572円

2019年7月期

315,335人

3.85回

12,806円

2020年7月期

347,492人

3.75回

14,725円

2021年7月期

406,032人

3.90回

17,019円

 

(ⅲ)プラットフォーム「ラクスル」の戦略

① 需要・供給双方にWin-Winな自律的成長モデル

 当社は、プラットフォーム「ラクスル」の運営を通じ、ユーザー(顧客)とサプライヤーをエンパワメント(注5)することで、サプライヤーの増加、当社プラットフォームのキャパシティの拡大、ユーザーの増加、取引量の増加、さらなるサプライヤーの増加という、自律的な成長モデルの実現を目指しております。

 

② 供給サイド:ファブレス(注6)モデルによる柔軟な供給と資本効率の高い生産体制の実現

 当社プラットフォームのサプライヤーに対する付加価値は、余剰キャパシティの活用による稼働率、生産性の向上にあると考えております。これにより、当社は印刷という装置産業において、シェアリングによる仮想印刷工場を作り、設備投資を行わずにスケール可能な資本効率の高いビジネス展開を実現しております。また、工場投資が不要なため、生産キャパシティの拡張をスピーディーに行うことができ、売上の急成長にも耐えられる生産体制を構築しております。規模の拡大に対応可能な印刷キャパシティを確保し、アセットライトモデル(注6)として、高い資本効率性の実現が可能となります。

 

③ 需要サイド:ファブレスモデルによる固定費削減で潜在市場を開拓

 当社プラットフォームのユーザーに対する付加価値は、小ロットから低コストで発注が可能なため、中小企業・個人事業主等の顧客が裾野広く利用できる点にあると考えております。当社は一般の印刷会社に比べ、小ロットの印刷を低価格で提供しております。それは、「ギャンギング」(多面付け印刷)を行うことで一般的な印刷会社に比べて大幅なコストダウンを実現しているためです。当社はインターネットで全国から毎日数千の注文を受注し、同じ紙質、同じ部数の注文を多く抱えており、1つの印刷用版で複数の顧客の印刷物をまとめて印刷することが可能になることで、製版コストを複数社で按分し、1社あたりのコストを大幅に下げることが可能となっております。特に固定費の比率が高い小ロットの印刷物は既存の印刷会社に比べ競争力の高い価格で提供できるようになり、小ロット・低価格という新しい印刷市場を生み出しております。これが、特定顧客への依存度が低く、高い定着性を有する顧客基盤の獲得に繋がっていると考えております。

 

④ 集客支援サービス

 当社の大きな特長は、印刷に限らず、中小企業・個人事業主が多い「ラクスル」の顧客の集客活動(マーケティング活動)を支援する点にあります。印刷物のデザインから、新聞折込、ポスティング、ダイレクトメール等の配布手配までをオンライン上で手軽に行うことができます。例えば、新聞折込やポスティングは、当社のウェブサイト上で、オンラインの地図上からチラシを配布したい地域と配布希望日を選択すると、自動的に配布枚数と料金が算出されるようになっており、パソコンの操作が苦手な人でも直感的な操作で注文することができます。新聞折込は、新聞の銘柄を指定することも可能となっております。

 既存の広告代理店では数百枚程度の小ロットのチラシの配布の場合、単価が低すぎるために営業のコストを回収できず、対応は難しいとされてきました。当社は、ほとんどのプロセスをEC化することで人件費を中心とした営業費用をなくし、小ロットでも低単価で配布できるようにしました。これにより、これまで予算が足りず新聞折込やポスティングを使えなかった、中小企業・個人事業主のマーケティング活動を可能にしました。当社は、この集客支援サービスを展開することにより、ARPUの最大化を図っております。当該サービスを展開するメリットは、印刷物の販売だけではなく販売促進目的の配布サービスを提供することによる顧客単価の上昇、注文件数の増加、ユーザーとの関係性強化、リピート率の上昇等であります。

 

⑤ 継続的な業務改善を可能にするリアル・オペレーション・ノウハウ

 当社は、プラットフォームの運営者でありながら、生産オペレーション面での学習と研究開発を目的として、提携印刷会社と顧客の間のサプライチェーンに直接関与することで、売上原価の低減による売上総利益率の継続的な改善を図っております。具体的な施策は下記のとおりであります。

(a)自社保有印刷機の活用

・最新設備を提携印刷会社へ試験導入(3台を貸与)

・ギャンギング(多面付け印刷)による小ロット印刷の効率化

・実機運用を通じて最適な運用プロセスを設計し、他の提携印刷会社へも展開

(b)資材の共同購買

(c)新資材の積極開発

(d)物流網の最適構築

 

〔用語説明〕

(注1)

SaaS

 

Software as a Serviceの略。インターネットを通じて顧客にソフトウェアを提供すること。

(注2)

キャパシティ

 

生産能力や処理能力のこと。当社の場合、提携印刷会社が保有する印刷機の生産能力、提携運送会社が保有する運送トラックの配送能力を指す。

(注3)

サプライヤー

 

材料や部品等の供給者のこと。当社の場合、提携印刷会社や配布業者、提携運送会社等を指す。

(注4)

ARPU

 

Average Revenue Per Userの略。 1顧客あたりの平均売上金額であり、単価×購入頻度で計算される。

(注5)

エンパワメント

 

自律性を尊重しつつ、支援し力を付けること。

(注6)

ファブレス、アセットライトモデル

 

製造設備、製造工程を保有せずに製造業としての活動を行うこと。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、上記「(ⅱ)当社の企業価値の源泉」に記載のとおり、売上高及び売上総利益を重要な経営指標と位置づけ、各経営課題に取り組んでおります。営業利益および当期純利益については、外部環境変化に対して経営をコントロールするための指標と位置付けるとともに、中長期的な拡大を目指しております。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社は「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」を企業ビジョンとし、デジタル化が進んでいない既存の産業をインターネットにより効率化し、大企業中心に垂直統合で成立していた産業構造を、プラットフォーム中心の水平分業された産業構造にアップデートするため、以下の課題に取り組んでまいります。

 

① 国内印刷EC市場の拡大

 当社の主力事業であるラクスルセグメントが属する国内印刷EC市場は、当社の調査によると2012年度から2018年度までの年平均成長率が10%超、また2019年度の市場規模は1,000億円に拡大していると想定されます。EC化率の継続的な上昇を背景に急速な成長を続ける国内印刷EC市場の中で、リーディングカンパニーの1社として市場を牽引する立場であり続けることが当社の成長においても重要であると考えております。

 

② サービスの認知度向上、新規ユーザーの獲得

 当社が今後も高い成長率を持続していくためには、当社サービスの認知度を向上させ、新規ユーザーを獲得することが必要不可欠であると考えております。従来より、積極的な広報活動に加え、インターネットを活用したマーケティング・広告活動、大手企業との提携等により認知度向上に向けた取り組みを行ってまいりましたが、今後、これらの活動をより一層強化・推進してまいります。

 

③ 顧客ニーズ充足を意識した商品ラインナップ拡充

 当社における顧客基盤の拡大に伴い、顧客ニーズも多様化いたします。当社は、多様化する顧客ニーズを的確に捉え、一般的にロングテールといわれる購買頻度の少ない商品も含めた取扱商品の拡大を推進するとともに、新規カテゴリへの拡張、更なる顧客基盤の拡大へと繋げていくことが重要であると考えております。印刷事業においては、新たに販促・ノベルティ印刷に特化したサービスを開始したほか、集客支援サービスを中心に短納期商材の充実を図る等、商品ラインナップの拡充を継続的に進めております。

 

④ 事業拡大と収益性向上を両立した事業運営

 当社の事業モデルの特長の一つに、自社では印刷工場を有することなく全国の印刷会社と提携し、各会社における印刷機の非稼働時間を活用することで、ファブレス型の生産体制を採用している点があります。事業基盤が拡大するにつれて提携印刷会社数及び一会社当たりへの発注量も増えていきますが、提携印刷会社との綿密なコミュニケーション及び協業により、事業が拡大していく中でも低価格かつ安定した品質の商品を継続して提供してまいります。

 

⑤ 取引データの蓄積・解析体制の強化

 当社事業での取引の情報は、日々当社データベースに蓄積されております。注文情報や商品構成等、ユーザーの動きを把握し、PDCAサイクルを高速で回せる仕組みを整備しておりますが、より高度なデータ活用を行っていく必要があると考えております。例えば、どのような顧客がどのような商品をどのような単価で注文したか、というECサイトならではの情報をビッグデータとして蓄積し、独自に解析することで、サービスレベルとユーザーのロイヤリティを向上させていくことが今後のサービス拡充においては必要不可欠であると考えております。そのため、取引を通じて取得するデータの整備とこれを独自に解析していくための体制構築に取り組んでまいります。

 

⑥ 情報管理体制の強化

 当社は、ユーザーの個人情報を中心とした情報資産を多く預かっており、その情報管理を強化していくことが重要であると考えております。現在、個人情報保護方針及び情報セキュリティ関連規程に基づき管理を徹底しておりますが、今後も社内教育・研修の実施やシステムの整備等を継続して行ってまいります。

 

⑦ システムの安定性強化

 当社はインターネットを介したサービス提供を行っているため、そのシステムを安定的に稼働させることが重要になります。そのために、突発的なアクセス増加にも耐えられるようなサーバー設備の強化や、システム安定稼動のための人員確保、教育・研修の実施等に努めてまいります。

 

⑧ 組織体制の整備

 当社の継続的な成長には、事業拡大に応じて多岐に亘るバックグラウンドの優秀な人材を採用し、組織体制を整備していくことが重要であると考えております。当社の理念に共感し、高い意欲を持った優秀な人材を採用していくために、積極的な採用活動を行っていくとともに、従業員が中長期で働きやすい環境の整備、人事制度の構築を実施してまいります。

 

⑨ 新型コロナウイルス感染症拡大による外部環境変化への対応

 当社は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う、印刷、広告および物流需要の喪失への対応を喫緊の課題と考えております。需要の後退局面においても十分な利益を確保可能な体制を確立するために、収益性の改善およびコストコントロールの強化を進めております。また需要回復後の再成長に向けて、サービスの開発、改善、ならびにマーケティングへの投資を継続的に実施してまいります。

 

2【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもリスク要因には該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

(1)事業環境に関するリスク

① 国内印刷EC市場について

 当社の主力事業である印刷事業が属する国内印刷EC市場は、当社の調査によると、2012年度から2018年度までの年平均成長率が10%超、また2019年度の市場規模は1,000億円に拡大していると想定されます。今後もEC化率の継続的な上昇を背景に、同市場は成長を続けるものと当社では考えております。しかしながら、上記の予測通りに国内印刷EC市場が拡大しなかった場合には、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社は印刷で成長し獲得した顧客基盤とシェアリング基盤を活用し、販促サービスの拡張による既存顧客ARPU向上、紙以外の商材を中心としたオリジナル商品の追加による顧客基盤の拡大により対象市場及び収益拡張を推進しております。

 

② 競合他社の動向について

 現在、当社の主力事業である印刷事業においては、国内で印刷ECサービスを展開する競合企業が複数存在しており、一定の競争環境があるものと認識しております。他に優れたビジネスモデルの競合会社が現れた場合等には、既存事業者や新規参入事業者を含めた競争の激化により、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社は幅広い顧客ニーズに対応できる商品ラインナップの拡充を進めるとともに、積極的なマーケティング活動やカスタマーサポートの充実、提供サービスの拡大及び品質向上に取り組んでおり、今後もユーザー目線に立ってサービスをより充実させていくと同時に、知名度向上に向けた取り組みを積極的に実施してまいります。

 

③ 登録ユーザーの獲得について

 当社の主力事業である印刷事業の売上高は、当社の提供するサービスの登録ユーザー数、登録ユーザーの利用率、登録ユーザーの平均購入額により変動し、事業の成長は登録ユーザー数の順調な増加に依存しております。また、当社はマーケティング手法別に効果測定を行いつつ、新規ユーザーの獲得、既存ユーザーへの追加販売、既存ユーザーの離脱防止を図る施策を継続的に実施しております。上記に挙げたような各種事業KPIについてはこれまで安定的に推移・改善してきておりますが、社会・経済情勢による顧客ニーズの変化、他の事業者との競合の激化、当社のマーケティング手法が効果的でない等の要因によって当社の登録ユーザー数の伸びが従来と比べて低いものとなった場合には、売上高の増加ペースが鈍ること、もしくはマーケティング費用が上昇することにより、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、前年度以前の顧客獲得コストとの比較を常に行い、新規の顧客獲得手法を継続的にトライアルすること等により登録ユーザー数の増加ペースを維持、拡大するための取り組みを推進しております。

 

④ システムトラブルについて

 当社の事業は、インターネットを介して行われており、そのサービス基盤はインターネットに接続するための通信ネットワークに依存をしております。安定的なサービス運営を行うために、サーバー設備等の強化や社内体制の構築を行っておりますが、アクセスの急激な増加等による負荷の拡大、地震等の自然災害や事故等により予期せぬトラブルが発生し、大規模なシステム障害が起こった場合には、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社は、監視システムの利用に加えて組織的・人的な対策と多層防御による技術的対策に取り組んでおります。

 

 

⑤ 印刷事業への依存について

 当社の売上高は、主力事業である印刷事業への依存が大きくなっております。国内印刷EC市場が拡大していることに加え、ユーザー数の増加やサービスの拡充等により、今後も印刷事業は拡大していくものと考えておりますが、当社の運営する「ラクスル」の利用者の減少や市場規模の縮小等の要因により印刷事業の売上高が減少した場合には、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、プラットフォームを展開する産業を継続的に拡大し、広告業界のプラットフォーム「ノバセル」、物流業界のプラットフォーム「ハコベル」の他、今後においても中長期的に複数の産業への展開を推進してまいります。

 

⑥ シェアリングエコノミー形態による生産体制について

 当社の主力事業である印刷事業について、当社は自社工場を保有せず、印刷会社をはじめとするサプライヤーをネットワーク化する、いわゆるシェアリングエコノミー形態による生産体制を構築しております。各社における原材料等の調達価格高騰や各社の経営状況の変化等によって、提携による業務委託等の継続ができなくなった場合には、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、一部の印刷資材については、集中購買により安価に提供する体制を整備し、定期的なコミュニケーション等によるサプライヤーとの良好な関係の構築に努めることで、生産体制の安定化を図っております。

 

⑦ 配送コストについて

 当社が運営する「ラクスル」では、商品販売に際し運送会社に商品配送業務を委託しており、ユーザーの利便性向上を目的とし、一部商品を除き無料での配送サービスを提供しております。今後配送コストが上昇した場合、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、複数の運送会社の使い分けの実施等により、委託価格の安定化を図っております。

 

(2)事業体制に関するリスク

① 優秀な人材の獲得・育成について

 当社は、今後の企業規模の拡大に伴い、当社の理念に共感し高い意欲を持った優秀な人材を継続的に採用し、強固な組織を構築していくことが重要であると考えております。今後、積極的な採用活動を行っていく予定でありますが、当社の求める人材が十分に確保・育成できなかった場合や人材流出が進んだ場合には、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社は、社員が働きやすさとやりがいを持って働けるよう、事業の成長を通して本人が挑戦し成長できる環境を作り、魅力的な人事制度の構築を継続的に推進してまいります。また、当社サービス品質の向上にはソフトウェア開発のためのエンジニアの確保が重要であると認識しており、日本国内での採用活動に加えて、日本国外において開発拠点を設立し、継続的に開発力の強化のための施策を推進してまいります。

 

② 内部管理体制の構築について

 当社の継続的な成長のためには、コーポレート・ガバナンスが適切に機能することが必要不可欠であると認識しております。事業が急速に拡大することにより、コーポレート・ガバナンスが有効に機能しなかった場合には、適切な業務運営を行うことができず、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、各社内規程及び法令遵守を徹底してまいります。

 

③ 情報セキュリティについて

 当社は、厳重な情報セキュリティ管理体制において自社内の機密情報を管理するとともに、事業の一環として得意先から預託された機密情報や個人情報の収集・保管・運用を行っております。万一当社の従業員や業務の委託会社等が情報を漏洩又は誤用した場合には、当社が企業としての社会的信用を喪失し、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、プライバシーマーク及びISMS(注1)を取得し、社内で運用する他、従業員研修を繰り返し実施する等、これらの情報管理には万全な方策を講じております。

 

 

④ 印刷機等を提携印刷会社に貸与していることについて

 当社は生産オペレーション面での学習と研究開発を目的として、提携している印刷会社に対して当社の所有する印刷機を合計3台貸与しており、当該印刷会社のオペレーターはこれら印刷機を使用し、実際の印刷物製造を行っております。貸与印刷機に対しては一部保険を付保する等して破損・滅失等のリスクを減じる取り組みを行っておりますが、貸与先印刷会社における故意もしくは過失による破損・滅失又は地震等の天変地異による破損・滅失等、当該保険の適用対象外となるような事象が発生した場合には、これらによって当社が経済的な損失を被り、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、これら事業用の印刷機はその大きさや重量の関係上、転用が必ずしも容易ではなく、また、その輸送及び設置にも相当程度の費用が発生し得るところ、上記印刷会社の倒産等により当該印刷機を他の印刷会社等へ貸与する必要が生じた場合には、その受入れ先印刷会社の確保、当該印刷機の輸送及び設置等に伴って多額の費用が発生し、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、生産管理担当の責任者による貸与先印刷会社への定期的な訪問等、生産状況や経営状況の把握に努めております。

 

⑤ 投融資について

 当社は、今後の事業拡大のために、国内外を問わず出資、子会社設立、合弁事業の展開、アライアンス、M&A等の投融資を実施する場合があります。投融資については、リスク及び回収可能性を十分に事前評価し決定してまいりますが、投融資先の事業の状況が当社に与える影響を確実に予想することは困難な場合もあり、投融資額を回収できなかった場合や減損処理が必要となった場合には、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、出資等の案件について、当社の目指すビジョンとの整合を確認し、ビジネスモデルを十分に検討した上で判断するとともに、出資後は定期的なモニタリングを継続実施してまいります。

 

 〔用語説明〕

(注1)

ISMS(アイ・エス・エム・エス):Information Security Management Systemの略

 

情報セキュリティ管理の国際標準に基づき定められた情報セキュリティマネジメントシステムの適合性評価制度。継続的に情報セキュリティリスクを管理しリスク回避や軽減を図り、この認証基準に適合したマネジメントシステムを構築・維持できている企業や団体が第三者機関により認証される。

 

(3)法的規制に関するリスク

① 訴訟等について

 当社が事業活動を行うなかで、顧客、取引先又はその他第三者との間で予期せぬトラブルが発生し、訴訟に発展する可能性があります。かかる訴訟の内容及び結果によっては、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、多大な訴訟対応費用の発生や当社の社会的信用の毀損によって、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、法令及び契約等の遵守のため、コンプライアンス規程を定めて社内教育やコンプライアンス体制の充実に努めております。

 

② 個人情報の保護について

 当社は、会員登録情報をはじめとする個人情報を保有しており、「個人情報の保護に関する法律」の適用を受けております。何らかの理由でこれらの個人情報が外部に流出し、悪用されるといった事態が発生した場合には、当社の財政状態及び経営成績並びに企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、個人情報保護方針及び個人情報保護規程を定めており、社内教育の徹底と管理体制の構築を行っております。

 

③ インターネット及び運送事業に関連する法的規制について

 当社が運営する事業は、「電気通信事業法」、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」、「特定商取引に関する法律」、「プロバイダ責任制限法」、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」といった法規制の対象となっております。また、当社が運営する「ハコベル」は、「貨物利用運送事業法」の対象となっており、当社は「第一種貨物利用運送事業」の登録を受け、国土交通省の監督の下、事業を営んでおります。今後新たな法令の制定や、既存法令の強化等が行われ、当社が運営する事業が規制の対象となる等制約を受ける場合には、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、今後法令違反等が発生することで「第一種貨物利用運送事業」の許認可が停止又は取消しとなった場合は、当社が運営する「ハコベル」の継続が困難となり、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクを踏まえ、当社は、これらの法規制を遵守した運営を行ってきており、今後も社内教育の継続的な実施や管理体制強化を推進してまいります。

(4)その他

① 配当政策について

 当社は株主還元を適切に行っていくことが重要であると認識しており、剰余金の配当については、内部留保とのバランスを考慮して適切な配当の実施をしていくことを基本方針としております。しかしながら、本書提出日現在では事業も成長段階にあることから内部留保の充実が重要であると考え、配当を行っておらず、今後の配当実施の可能性及び実施時期については未定であります。

 

② 株式価値の希薄化について

 当社は、新株予約権制度及び譲渡制限付株式報酬制度を採用しております。当該制度は、当社の役員、従業員及び社外協力者に対して、経営成績向上に対する意欲の向上及び経営参画意識の向上等に有効な制度と認識しており、今後も当該制度を活用する可能性があります。また、当社は、2024年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債の発行をしております。これらの新株予約権の行使、譲渡制限付株式報酬制度に係る新株式の発行ならびに当該転換社債型新株予約権付社債が株式に転換された場合には、既存の株主が保有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。

 

③ 新型コロナウイルス感染症の拡大について

 新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界経済の減速に伴う消費活動の停滞が長期化した場合や、当社従業員に感染が広がった場合ならびに業務の委託会社等が事業活動を縮小または休止される事態が発生した場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 このようなリスクの対応策として、当社では従業員の感染を防止するために、職域接種による任意のワクチン接種の実施、時差出勤や在宅勤務の実施、出社割合の調整、徹底した衛生管理を行い従業員の安全、健康を第一に考えながら、業務への支障を可能な限り抑えつつ感染症拡大防止に寄与する取り組みを実施しております。

 

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

① 経営成績の状況

 当事業年度のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の全世界的な拡大が続くなか、当事業年度中においては首都圏や関西圏等を対象に断続的に緊急事態宣言が発令され、依然として景気の先行きが不透明な状況にあります。このような状況の中、当社は、「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョンの下、主に印刷・集客支援のシェアリングプラットフォーム「ラクスル」、テレビCM・動画の広告プラットフォーム「ノバセル」、物流のシェアリングプラットフォーム「ハコベル」を運営してまいりました。

 「ラクスル」では、引き続きノベルティ等の商品ラインナップの拡充とともに、主力のチラシ印刷においては「注文翌日午前中に商品が届く」といったお急ぎの印刷需要に応えるサービスを開始し、顧客の利便性向上に努めております。「ノバセル」ではテレビCMの効果分析ツールである「ノバセルアナリティクス」の機能を拡充するとともに、株式会社ADKマーケティング・ソリューションズとの業務提携を通じ、更なる顧客の獲得に努めております。また、「ハコベル」においても、登録車両台数の増加により運送キャパシティを確保するとともに、配送業務管理ツールである「ハコベルコネクト」を通じ、顧客の配車業務のデジタル化推進のための機能拡充に努めております。さらに、いずれの事業でも将来を見据え、登録ユーザー数増加や認知度向上に向けた広告宣伝投資を行っております。

 以上の結果、当事業年度の売上高は30,261百万円(前事業年度比40.8%増)、営業利益は220百万円(前事業年度は営業損失244百万円)、経常利益は130百万円(前事業年度は経常損失368百万円)、当期純利益は160百万円(前事業年度は当期純損失494百万円)となりました。

 セグメント毎の状況は、次のとおりであります。

 

ラクスルセグメント

 「ラクスル」においては、需要拡大に向けテレビCM等の広告宣伝投資を集中的に行い、新規顧客の獲得が進 みリピート購入数も堅調に推移いたしました。また、継続して発注費用の見直しを図ったことで利益率の増加につながりました。この結果、売上高は20,311百万円(前事業年度比24.4%増)、セグメント利益は2,140百万円(前事業年度比59.7%増)となりました。

 

ノバセルセグメント

 「ノバセル」においては、新規顧客の増加及び放映案件の大型化に伴い業績が好調に推移いたしました。引き続き顧客の新規開拓に注力するとともに、効果分析ツール等の提供を通じ継続利用の促進に努めております。この結果、売上高は6,719百万円(前事業年度比135.4%増)、セグメント利益は9百万円(前事業年度比84.4%増)となりました。

 

ハコベルセグメント

 「ハコベル」においては、各企業が輸送コストの増大に課題を抱えている中で積極的な提案活動を行ったことにより、顧客基盤は引き続き順調に拡大しております。また登録ドライバー数の増加によるキャパシティの拡大にも努めました。この結果、売上高は2,939百万円(前事業年度比34.5%増)、セグメント損失は114百万円(前事業年度はセグメント損失370百万円)となりました。

 

② 当期の財政状態の概況

a. 流動資産

 当事業年度末における流動資産は16,916百万円となり、前事業年度末に比べ1,106百万円減少いたしました。これは主に現金及び預金が2,003百万円減少したことに加え、売上高の拡大に伴い売掛金が765百万円増加、前払費用が160百万円増加したことによるものであります。

 

b. 固定資産

 当事業年度末における固定資産は4,999百万円となり、前事業年度末に比べ3,643百万円増加いたしました。これは主に関係会社株式が3,415百万円増加、繰延税金資産が157百万円増加したことによるものであります。

 

c. 流動負債

 当事業年度末における流動負債は5,068百万円となり、前事業年度末に比べ2,662百万円増加いたしました。これは主に買掛金が692百万円増加、1年内返済予定の長期借入金が長期借入金からの振替により1,287百万円増加、未払金が271百万円増加、未払法人税等が134百万円増加、未払消費税等が194百万円増加、短期借入金が40百万円減少したことによるものであります。

 

d. 固定負債

 当事業年度末における固定負債は8,851百万円となり、前事業年度末に比べ1,321百万円減少いたしました。これは主に長期借入金が1年内返済予定の長期借入金へ振替わったことにより1,287百万円減少したことによるものであります。

 

e. 純資産

 当事業年度末における純資産合計は7,996百万円となり、前事業年度末に比べ1,195百万円増加いたしました。これは主に譲渡制限付株式報酬としての新株式発行等により資本金が300百万円、資本準備金が300百万円増加したことに加え、株式報酬費用の計上により新株予約権が420百万円増加、さらに当期純利益を160百万円計上したことによるものであります。

 この結果、自己資本比率は34.1%(前事業年度末は34.5%)となりました。

 

③ 当期のキャッシュ・フローの概況

 当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ2,003百万円減少し、当事業年度末には13,447百万円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は1,539百万円(前事業年度は126百万円の使用)となりました。これは主に、税引前当期純利益が105百万円となった一方、減価償却費で197百万円、株式報酬費用で612百万円計上したことに加え、売上債権が761百万円増加、仕入債務が692百万円増加したことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は3,618百万円(前事業年度は283百万円の使用)となりました。これは主に、関係会社株式の取得による支出3,432百万円、無形固定資産の取得による支出129百万円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果得られた資金は75百万円(前事業年度は9,956百万円の獲得)となりました。これは主に、新株予約権の行使による株式の発行による収入が115百万円あったことによるものであります。

 

(2)生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

 当社で行う事業は、インターネットを利用して、顧客と提携先の印刷会社や広告代理店、運送会社を繋ぐプラットフォーム事業であり、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

② 受注実績

 当社で行う事業は、インターネットを利用して、顧客と提携先の印刷会社や広告代理店、運送会社を繋ぐプラットフォーム事業であり、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

③ 販売実績

 当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2020年8月1日

至 2021年7月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

ラクスル

20,311,809

124.4

ノバセル

6,719,089

235.4

ハコベル

2,939,226

134.5

 報告セグメント計

29,970,125

140.2

その他

291,086

234.0

合計

30,261,212

140.8

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績は、総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先がいないため、記載を省略しております。

 

(3)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この財務諸表の作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社が財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

② 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 売上高

 当事業年度の売上高は、30,261百万円(前事業年度比40.8%増)となりました。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、「ラクスル」及び「ノバセル」において、企業の販促・広告宣伝投資を削減又は延期する傾向がありましたが、当事業年度においては回復基調が鮮明となりました。

 

b. 売上原価、売上総利益

 当事業年度の売上原価は、23,109百万円(前事業年度比39.5%増)となりました。この結果、売上総利益は7,151百万円(前事業年度比45.1%増)となりました。当社は、売上総利益の指標を「プラットフォームの価値を示す、付加価値の総和」として最重要の指標と位置付けております。セグメント毎に利益率が異なるため全社合計での絶対額の増加及び対前事業年度末比の増加率を重視しております。

 「ラクスル」においては、引き続きパートナーネットワークを拡大させるとともにアルゴリズムを用いた商材や繁閑に応じた最適発注を可能としました。「ノバセル」においては、利用社数、平均放映月数、平均単価が増加し、売上総利益を押し上げる要因となりました。また「ハコベル」においても、運送会社への発注アルゴリズムを最適化するとともに、案件の選別を実施したことが売上総利益の増加に寄与しました。

 

c. 販売費及び一般管理費、営業利益

 当事業年度の販売費及び一般管理費は、6,931百万円(前事業年度比34.0%増)となりました。これは主に、「ラクスル」において登録ユーザー数増加に向けた広告宣伝投資を積極的に行ったことによるものであります。なお、新型コロナウイルス環境下での広告効率を考慮し2020年4月以降抑制しておりましたが、当事業年度においては需要回復を見越した投資を実施いたしました。この結果、営業利益は220百万円(前事業年度は営業損失244百万円)となりました。

 

d. 経常利益

 当事業年度において営業外収益が20百万円、営業外費用は110百万円発生しております。営業外費用の内訳で主なものは支払利息32百万円、株式報酬費用消滅損64百万円であります。この結果、経常利益は130百万円(前事業年度は経常損失368百万円)となりました。

 

e. 特別損益、当期純利益

 当事業年度において固定資産除却損7百万円、関係会社株式評価損16百万円の発生により特別損失24百万円を計上しており、税引前当期純利益は105百万円となりました。また繰延税金資産の計上により法人税等調整額で184百万円を計上した結果、法人税等合計で△54百万円、当期純利益は160百万円(前事業年度は当期純損失494百万円)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの分析・検討内容ならびに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 キャッシュ・フローの分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要」をご参照ください。

 当社の資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。

 当社は、継続的な成長のため、認知度の向上及びユーザー数の拡大に努めてまいりました。積極的に広告宣伝投資を実施することにより新規ユーザーを獲得するとともに、高い定着性を有する顧客基盤を構築すべく、今後もシステム開発を継続してを行う方針であります。これらの資金需要につきましては、必要な資金を自己資金、金融機関からの借入、社債の発行及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本方針としております。

 なお、当事業年度末においては13,447百万円の現金及び預金を有しており、自己資本比率も34.1%と適正水準を維持しており財務健全性は高い状態にあります。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境の変化、シェアリングによる生産体制、人材の確保・育成、法的規制、自然災害等のリスク、情報システムリスク、訴訟に係るリスク等、様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。

 また、新型コロナウイルス感染症の拡大により、国内経済は先行きが不透明な状態が続いており、当社においては2022年7月期においても引き続き一定の需要低下が継続すると仮定しておりますが、今後状況が変化した場合には、当社の経営成績に重要な影響を与える要因であると認識しております。

 そのため、当社は、外部環境の変化に留意しつつ、内部管理体制を強化し、優秀な人材を確保することで、経営成績に重要な影響を与える可能性のあるリスク要因を分散、低減し、適切に対応を行ってまいります。

 

4【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

5【研究開発活動】

 該当事項はありません。