当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社の経営の基本方針は、先進的で高品質な音声技術を安定的に提供することにあります。企業理念として掲げる「エーアイは音声技術で社会に新しい価値をつくり続けます」を実現するために、独自の音声技術を駆使して様々な分野に新たな価値を提案し、挑戦することが重要であると考えております。
(2)経営戦略等
中長期的な企業価値の向上や競争力の強化に向け積極的に投資を行い、次世代音声合成エンジン開発、音声認識、翻訳との連携、対話ソリューション(多言語含む)を提供する予定であります。
具体的には、インバウンド需要に対応したセレンス社製品「CSDK」を用いたプロダクト開発による多言語対応製品の拡充、コンシューマー向けビジネスにおけるA.I.VOICEの積極展開、次期製品開発に向けた研究開発投資の継続が重要課題であると考えております。また、事業領域の拡大に向けて、ChatGPTとオルツ社の「LHTM-2」を活用したサービスの構築を進めてまいります。フュートレック社との資本業務提携においては、相互に開示できる情報の範囲が広がり、情報の伝達がスムーズになることで両社間での迅速かつ広範囲の人的交流、知的財産等を含めたノウハウの共有や、プロジェクトや共同開発の効率的かつ迅速な実行が可能となると考えております。その中で、「音声対話AIソリューションの実現」「営業連携の強化」「研究開発体制の向上」などを行ってまいります。
(3)経営環境
当社が属する音声合成市場におきましては、ウィズコロナの下で会社や学校ではテレワーク、在宅学習の取り組みが定着してきており、eラーニング資料・動画におけるナレーション作成といった法人向け製品の需要が見込まれております。また、コンシューマー向け製品では国内外でユーザーの裾野が広がってきており、SNSやメディア等での露出の機会も増えてきております。さらには、AI分野で注目を集める「ChatGPT」等の生成系AIを活用する動きやポストコロナに向けての経済活動の再始動の中でも今後ますます音声技術の業界が重要な役割を担っていくものと想定しております。当社が今後さらなる成長と発展を遂げるためには、様々な課題があると認識しております。上記を踏まえ、当社が対処すべき課題は下記のとおりであります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①新技術の研究開発
音声合成の利用が拡大してきたことに伴い、研究開発のスピードも加速しております。この数年、各分野で深層学習の研究が盛んに行われておりますが、音声合成分野においても、深層学習(DNN:Deep Neural Network)を活用した新しい音声合成技術の研究が進められており、競合他社との競争がますます激化してきております。当社においても、最新の技術をキャッチアップし、また、顧客ニーズの変化を捉え、新しい製品・サービスを市場に投入していくことが重要であると考えております。
②人材の確保及び育成
新しい技術、新しい製品・サービスを継続的に研究開発し、販売していくためには、優秀な人材の継続的確保が重要であると考えております。また、音声技術という特殊分野であるため、採用した研究者、開発者及び営業担当者の育成が重要であると考えております。
③安定収入の確保
当社の事業基盤はライセンスビジネスであり、音声合成エンジンの使用許諾を与えることにより、継続的に許諾料を頂くモデルであります。現在は、月額使用料、ロイヤリティ、継続的なクラウドサービスの利用、サポートサービス等で継続的な安定収入を確保しております。今後、事業を拡大していくにあたり、新規事業の開発及び安定的な収入を確保することが重要であると考えております。
④新しいマーケットの創出
音声合成が広く利用される様になり、今後、様々な分野において利用が進むものと考えておりますが、現在、確立されたマーケットは、電話の自動応答システム、防災行政無線、音声対話、eラーニング等、まだまだ限られたものであります。AI分野での活用を進めるとともに、個人分野でもユーザーの利用を広げ、更に、新しいマーケットを創出していくことが重要であると考えております。
⑤内部管理体制の充実
当社は、今後継続的に事業を拡大していくためには、コーポレート・ガバナンス機能の強化は必須であり、内部統制システムの適切な整備及び運用が重要であると考えております。また、成長のステージに応じて人的強化を行い、内部管理体制の構築を図ってまいります。
⑥ブランディング
当社の今後の成長のためには、音声合成技術を世の中に広めるとともに、「音声技術のエーアイ」「音声合成=AITalk®・A.I.VOICE®」と認知されるように、ブランディングしていくことが重要であると考えております。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
先進的で高品質な音声技術サービスを安定的に提供していくためには、健全な財務基盤の維持が重要であると考えており、営業利益率20%以上の維持を収益性の指標の一つとしております。
当社の経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、売上高、営業利益、当期純利益、営業利益率であります。
2024年3月期の目標値は、売上高650,000千円(前期比2.5%増)、営業利益22,000千円(同10.6%増)、当期純利益13,000千円(同20.6%減)、営業利益率3.4%であります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社は、サステナビリティを重要な経営課題と認識し、取締役会においてマテリアリティ(重要課題)の特定を行い、サステナビリティ基本方針を策定、2021年12月27日付け「事業計画及び成長可能性に関する事項」において公表いたしました。当社は、企業理念、行動規範に基づき、お客さま、取引先、株主・投資家、従業員、地域社会など全てのステークホルダーとの対話を尊重し、SDGsを含めた持続可能な社会の実現に積極的に取り組み、全てのステークホルダーから信頼され必要とされる企業を目指すため、「1. 音声技術で新しい社会価値の創造」「2. 人権の尊重・働きやすい職場環境・女性活躍の推進」「3. 社会からの信頼の獲得」に取り組んでまいります。
また、代表取締役社長を委員長とする内部統制委員会においてもサステナビリティ基本方針を各部会活動の重要な指針のひとつと位置付けることでコーポレート・ガバナンスにおけるサステナビリティの浸透を図り、適宜経営会議に部会からの報告を行うことにより各活動のモニタリングを行っております。
サステナビリティ基本方針に関する詳細は、
サステナビリティ基本方針
https://www.ai-j.jp/company/profile/csr/
(2)戦略
当社の認識する事業等のリスクのうち、サステナビリティ関連のリスクとしましては、音声合成業界の動向がございます。上記のサステナビリティ基本方針にあります「1. 音声技術で新しい社会価値の創造」では、さまざまなステークホルダーの要請に応じ、音声技術による、利便性の向上と社会課題の解決へ取り組むものでございますが、音声合成のeラーニング等の教材への利用や、多言語展開、音声認識技術との連携等を通じて、質の高い教育や高齢者福祉といった社会課題の解決を目指してまいります。
また、人材の確保及び育成につきましても、サステナビリティ関連のリスクとして認識しており、上記サステナビリティ基本方針においては「2. 人権の尊重・働きやすい職場環境・女性活躍の推進」として、社員一人ひとりがライフステージに応じて多様で柔軟な働き方を選択しながら安心して働き続け、能力を最大限発揮できる職場環境を目指しております。具体的な対応策としては、フレックスタイム制度、在宅勤務制度等の働きやすい環境の整備を行っております。
上記リスクに関する詳細は、「
(3)リスク管理
当社では、内部統制委員会にリスクマネジメント部会を設置するとともに、リスクマネジメント規程を制定し、リスクマネジメント推進体制を構築しております。サステナビリティ関連のリスクに関してもこの枠組みの中で把握され、リスクマネジメント部会でのリスク内容の調査、経営会議で共有及びリスクのコントロールに関する協議を行い、取締役会への報告を行っております。
当社のリスクマネジメントに関する詳細につきましては、「
コーポレート・ガバナンス報告書
https://www.ai-j.jp/ir/pdf/corporate-governance.pdf
(4)指標及び目標
当社は現在、サステナビリティ関連のリスク・機会を管理するための指標について、下記の人材の確保及び育成に関する指標以外については用いておりません。今後、当社において指標を定める目的や必要性を協議し、同業や同規模の企業の開示動向を注視しながら、必要な場合は指標の策定を検討してまいります。
当社では、上記において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する2023年3月末時点での実績は、次のとおりであります。
①女性活躍の推進
・従業員の女性比率 52.8%
・管理職の女性比率 35.7%
②子育て支援の推進
・過去1年間の育児休業制度の利用者数 6名(内、男性1名)
③働き方改革の推進
・過去1年間の月平均残業時間 5.63時間
・過去1年間の平均有給消化率 87.6%
・在宅勤務対象者割合 92.4%
上記指標に関しましては、十分な水準にあると認識しておりますため現在目標の設定はしておりませんが、引き続き実績の推移を注視し、適宜必要な指標や目標の設定を行ってまいります。
上記指標の詳細につきましては、毎年5月及び11月に公表しております「
決算説明会補助資料
https://www.ai-j.jp/ir/irnews/
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
①音声合成業界の動向について
音声合成業界は、古くは、電話の自動応答システムからスタートし、防災行政無線、カーナビゲーション、スマートフォンでの音声対話へと発展してまいりました。本格的に実用化されてからの歴史は浅く、まだ15年程であります。この間、急速に市場が発展しており、また今後新しい市場としては、観光分野、高齢化社会における福祉用途、大阪万博へ向けた外国人向け音声ガイダンス等々、様々な分野での拡がりが期待できます。
また、新型コロナウイルス感染症などの影響によりテレワーク等の働き方改革が進み、eラーニング等の教材における音声合成の利用が進んできております。今後はアフターコロナの動きの中で、観光業でのインバウンド需要がより高まっていくことが期待できます。
一方で、各市場が期待通りに拡大しない場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。具体的には、積極的な営業が困難になることにより、ロイヤリティ、Custom Voice、基本ライセンスといった法人向け製品の売上が伸び悩むと予想しております。
当該リスクの対応策として、eラーニング資料のナレーション作成や、ガイダンス音声の作成といった法人向け製品、コンシューマー向け製品の売上拡大を目的としたWEB広告出稿や独自ブランド「A.I.VOICE®」の販売、定期的にユーチューブ生放送を行い、コンシューマー向け製品の認知度向上を目指してまいります。また、生成系AIを活用したサービス構築や音声認識事業を主とするフュートレックとの業務提携を進めることで、音声周辺技術と連携した新たなマーケットの拡大を目指してまいります。
②技術革新による影響について
音声合成業界において、技術革新が進んでおります。当社が2020年5月より提供を開始しました音声合成エンジン「AITalk®5」は、音声処理部において従来の「波形接続型音声合成方式」とともに「DNNパラメトリック音声合成方式」を提供しております。現在、当該技術を用いた音声合成製品が各社から出されておりますが、読み上げ品質という点では言語解析が重要となり、読み間違いが少なく自然なアクセントで読めるという点で、現時点では優位性を確保しております。
しかしながら、当社の継続的な研究開発が停滞した場合、投資に対する十分な成果を得られず、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの対応策として、名古屋工業大学徳田・南角・橋本研究室との非タスク指向型対話音声合成に関する共同研究及び開発を行ってまいりましたが、一定の成果が得られたことから2023年3月末で終了いたしました。今後は新エンジンの開発に注力してまいります。
③競合他社による影響について
当社が提供する音声合成エンジン「AITalk®」の主な競合先は、HOYA株式会社(ReadSpeaker)、東芝デジタルソリューションズ株式会社(ToSpeak)となります。また、新興企業による事業参入も増えており、競争環境は激化しております。当社は音声合成に特化して事業を展開しており、研究開発、製品開発、販売、サポートを一気通貫で提供することにより、ユーザーの要望にも迅速かつ柔軟に対応し、シェアを確保しております。
しかしながら、競合他社企業のうち、大手企業は要員を拡充し、事業展開を加速した場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、「Google Cloud Platform(GCP)」の「Cloud Text-to-Speech」あるいは「Amazon Web Services(AWS)」の「Amazon Polly」等の大手企業がクラウドサービスプラットフォームの一部として提供している低価格なサービスにおいて、音声合成エンジンの日本語の品質・技術向上が図られた場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの対応策として、定期的に競合他社の動向を調査し、優位性を維持する体制整備を行ってまいります。
④業務提携による影響について
今後、日本語音声合成に加えて、音声認識、意図解釈、翻訳、多言語等と連携した利用が拡大するものと考えております。当社においては、日本語音声合成をコア技術と位置づけ、音声認識、意図解釈、翻訳、多言語等の連携技術については、海外メーカーとの連携や資本提携を含めた他社との業務提携を推進していきます。したがって、他社の状況や各国の知的財産制度、輸出規制等の政策による影響を受ける可能性があり、その結果、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの対応策として、業務提携先との友好な関係とコミュニケーションの維持を行うとともに、海外業務提携先に関する各国政策等の情報収集を適宜行ってまいります。
⑤人材の確保及び育成による影響について
当社は、音声合成という特殊な分野で研究開発、製品開発、販売、サポートを全て自社内で行っておりますが、2023年3月末現在、従業員数53名と少数精鋭で事業を展開しております。特に、研究者、開発者は、育成に時間を要することから、優秀な人材を確保するとともに、人材の流出を防止するための環境構築が重要であると考えております。
しかしながら、IT業界における人材獲得競争が激しく、計画通り人材の採用ができない場合、もしくは優秀な人材が流出してしまった場合、業務運営に支障をきたし、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの対応策として、フレックスタイム制度、在宅勤務制度等の働きやすい環境の整備、優秀な人材を確保すべく採用活動を計画的に行ってまいります。
⑥内部管理体制について
当社は、企業価値の継続的な向上のためには、コーポレート・ガバナンスが有効に機能することが重要であると認識し、適正な業務分担、財務報告の信頼性、法令遵守を徹底するため、内部管理体制の充実を図ってまいります。
しかしながら、業務の拡大に内部管理体制が追いつかない状況が発生した場合、適切な業務運営が困難となり、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの対応策として、管理部門スタッフ、内部監査担当の採用活動を計画的に行ってまいります。
⑦取引依存度の高い業界による影響について
本書提出日現在の当社の売上について、防災分野への依存度が大きくなっております。2023年3月度において、売上高に占める割合は10%以上となっており、今後、様々な理由により、同分野での売上高が減少した場合、当社の事業及び業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの対応策として、防災メーカーとの継続的、安定的な関係構築に努めてまいります。
⑧取引依存度の高い取引先による影響について
本書提出日現在の当社の売上について、株式会社NTTドコモへの依存度が大きくなっております。2023年3月期において、売上高に占める割合は17.0%となっており、今後、様々な理由により、株式会社NTTドコモとの取引が縮小した場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの対応策として、上記以外の売上を伸ばしていく営業体制の整備を行ってまいります。
⑨大規模災害による影響について
当社では、自然災害、事故等に備え、プログラム等の重要なリソースにつき、定期的にバックアップをとっております。
しかしながら、当社所在地近辺において、大地震等の自然災害が発生し、当社設備の損壊が発生した場合、研究開発及び製品開発が滞り、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの対応策として、テレワーク体制の整備を行ってまいります。
⑩システム障害による影響について
当社は、クラウドサービス「AICloud®」を提供しており、大手クラウドサービス事業者を利用し、冗長化構成をとり、また、外部へ委託し、24時間365日の有人監視を行うなど、システムの安定的な運用に努めております。
しかしながら、アクセスの集中による負荷の増加、あるいは、地震などの自然災害等、システムに予期せぬ障害が発生した場合、当社の事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの対応策として、バックアップデータを元に早期復旧する体制の整備を行ってまいります。
⑪情報セキュリティによる影響について
当社は、音声合成エンジンをライセンスするにあたり、顧客の機密情報を知りえる立場にあります。「情報セキュリティ基本方針」に基づき、情報の適切な管理に努めておりますが、コンピューターウイルス、不正アクセス等の理由により、これらの機密情報の漏洩や改竄などが発生した場合、顧客企業等から損害賠償請求や当社の信用失墜の事態を招き、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの対応策として、「情報セキュリティ基本方針」に基づいた監視体制の整備を行ってまいります。
⑫法的規制等について
当社は、メールアドレスを始めとする顧客情報を保有しており、「個人情報の保護に関する法律」の適用を受けております。これらの個人情報につきましては、「個人情報保護方針」に基づき適切に管理するとともに、「個人情報保護規程」を定めており、社内教育の徹底と管理体制の構築を行っております。当社は事業を遂行していくうえで、各種法令及び規制等の適用を受けておりますが、現状においては、当社の事業継続に著しく重要な影響を及ぼす法的規制等はないものと認識しております。
しかしながら、今後予期せぬ法令等の制定、既存の法令等の解釈の変更がなされた場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの対応策として、法令等の制定、改定を確認し、適宜社内の管理体制を見直してまいります。
⑬知的財産権等に関する侵害による影響について
当社は、第三者の知的財産権を侵害していないことの確認を、研究開発部門、製品開発部門が必要に応じて専門家に相談しながら進めておりますが、チェックが十分でない場合、認識不足等、何らかの不備により、第三者の知的財産権等を侵害する可能性があります。第三者からの損害賠償請求、使用差し止め等の訴えを起こされた場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの対応策として、専門家と連携し、知的財産権等に関する事前調査の徹底を行ってまいります。
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、各種感染症対策や新しい生活様式の定着、段階的な緩和措置により、経済活動は緩やかに持ち直しつつあり、5類移行に伴う大幅な制限緩和を見越した観光分野を中心とした社会経済活動の回復の兆しが見られました。一方で終わりの見えないウクライナ情勢や急激な為替変動による影響、諸物価全般の上昇、半導体の不足、金融市場の変動等、依然として先行きは不透明な状況が続いております。
当社を取り巻く環境においては、防災分野において、前期に引き続き「緊急防災・減災事業債」における地方交付税措置が、当初令和2年度までとされていたことに伴い、防災案件が2021年3月期までに集中したことによる反動に加え、半導体不足の影響によるメーカーの入札控え等により防災案件の売上が第2四半期までは低調に推移したものの、第3四半期以降、半導体不足も解消傾向が見られ、売上も回復の兆しが見られました。また、コロナ禍に伴う企業のテレワーク、学校のオンライン授業における e ラーニング教材・動画等のナレーション作成用途での「AITalk® 声の職人®」、「AITalk® 声プラス®」等のパッケージ製品の需要については落ち着きが見られ、期初計画を大幅に下回って推移したものの、年度末のキャンペーンにおいては堅調に推移し、パッケージ製品への底堅い需要が見られました。コンシューマー向け製品においては「A.I.VOICE®」シリーズの新キャラクターのリリースが一部来期へ後ろ倒しとなったことから大型の新規キャラクターがリリースされた前事業年度と比較して低調に推移しました。その結果、当事業年度の売上高および営業利益は前事業年度を下回る結果となりました。
当社は、Cerence社との協業により車載分野の拡大および多言語音声合成事業の拡大を目指すとともに、音声合成市場の拡大に資する生成系AIの活用を加速することを目的に、昨今注目を集める「ChatGPT」等の周辺技術を用いた法人利用可能な対話AIサービスの構築を進めております。
この結果、当事業年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
ⅰ.財政状態
(資産)
当事業年度末の資産合計は、前事業年度末と比較して38,581千円増加し、1,393,512千円となりました。
(負債)
当事業年度末の負債合計は、前事業年度末と比較して127,127千円増加し、202,453千円となりました。
(純資産)
当事業年度末の純資産合計は、前事業年度末と比較して88,547千円減少し、1,191,058千円となりました。
ⅱ.経営成績
当事業年度の売上高は633,998千円(前年同期比16.2%減)、営業利益は19,887千円(同82.3%減)、経常利益は22,409千円(同79.6%減)、当期純利益は16,367千円(同80.5%減)となりました。当社は音声合成事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりませんが、特性に応じた3つの区分別の売上高につきましては、法人向け製品280,545千円(同17.5%減)、法人向けサービス190,090千円(同6.3%減)、コンシューマー向け製品163,362千円(同23.6%減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末と比較して57,319千円増加し、1,236,795千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動の結果得られた資金は、18,158千円(前事業年度は130,558千円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動により支出した資金は、5,214千円(前事業年度は8,846千円の支出)となりま
した。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動により支出した資金は、44,375千円(前事業年度は43,594千円の支出)となりました。
③生産、受注及び販売の実績
ⅰ.生産実績
当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
ⅱ.受注実績
当社は、提供する主要なサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
ⅲ.販売実績
当社は音声合成事業の単一セグメントのため、当事業年度の販売実績をサービス区分別に示すと、次のとおりであります。
|
サービスの名称 |
当事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
前事業年度比(%)
|
|
法人向け製品 (千円) |
280,545 |
82.5 |
|
法人向けサービス (千円) |
190,090 |
93.7 |
|
コンシューマー向け製品 (千円) |
163,362 |
76.4 |
|
合計 (千円) |
633,998 |
83.8 |
(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前事業年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
当事業年度 (自 2022年4月1日 至 2023年3月31日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
株式会社NTTドコモ |
117,152 |
15.5 |
108,046 |
17.0 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社の当事業年度の財政状態及び経営成績は、次のとおりであります。
ⅰ.財政状態
(資産)
当事業年度末における流動資産は1,359,232千円となり、前事業年度末に比べ45,828千円増加いたしました。これは主に売掛金が13,629千円減少したものの、現金及び預金が57,319千円増加したことによるものであります。固定資産は34,280千円となり、前事業年度末に比べ7,247千円減少いたしました。これは主に有形固定資産が4,823千円、長期前払費用が2,044千円減少したことによるものであります。
この結果、総資産は、1,393,512千円となり、前事業年度末に比べ38,581千円増加いたしました。
(負債)
当事業年度末における流動負債は201,061千円となり、前事業年度末に比べ128,375千円増加いたしました。これは主に短期借入金が150,000千円増加したことによるものであります。固定負債は1,392千円となり、前事業年度末に比べ1,247千円減少いたしました。これは主にリース債務が717千円減少したことによるものであります。
この結果、負債合計は、202,453千円となり、前事業年度末に比べ127,127千円増加いたしました。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は1,191,058千円となり、前事業年度末に比べ88,547千円減少いたしました。これは主に自己株式が87,247千円増加したことによるものです。
この結果、自己資本比率は85.5%(前事業年度末は94.4%)となりました。
ⅱ.経営成績
(売上高)
当事業年度の売上高は633,998千円(前年同期比16.2%減)となりました。コロナ禍に伴う企業や学校のテレワーク、オンライン学習対応の用途での「AITalk® 声の職人®」、「AITalk® 声プラス®」等のパッケージ製品の需要について落ち着きが見られたことや、コンシューマー向けパッケージ「A.I.VOICE®」シリーズの新キャラクターのリリースが一部来期へ後ろ倒しになったこと等により、売上高は期初の予定から減少する結果となりました。
(営業利益)
当事業年度の営業利益は19,887千円(同82.3%減)となりました。売上高が期初の予定から減少したことによる影響が大きく、売上原価、販売費及び一般管理費の抑制を行い、費用としては30,327千円減少したものの、営業利益は期初の予定から減少する結果となりました。
(経常利益)
当事業年度の経常利益は22,409千円(同79.6%減)となりました。営業利益が期初の予定から減少したことによる影響が大きく、補助金収入3,300千円があったものの、事務所移転費用1,384千円の発生もあり、経常利益は期初の予定から減少する結果となりました。
(当期純利益)
当事業年度の当期純利益は16,367千円(同80.5%減)となりました。経常利益が期初の予定から減少したことによる影響が大きく、固定資産除却損および法人税等の計上額は前事業年度と比較すると減少しましたが、当期純利益は期初の予定から減少する結果となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社の当事業年度のキャッシュ・フローは、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、18,158千円(前事業年度は130,558千円の収入)となりました。これは主に、税引前当期純利益が22,295千円、減価償却費が9,336千円及び法人税等の支払額12,160千円、法人税等の還付額9,412千円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は5,214千円(前事業年度は8,846千円の支出)となりました。これは有形固定資産の取得による支出1,376千円、無形固定資産の取得による支出3,838千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は44,375千円(前事業年度は43,594千円の支出)となりました。これは主に、短期借入れによる収入150,000千円がありましたが、自己株式の取得による支出87,246千円、配当金の支払額17,688千円等によるものであります。
当社の資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりであります。
(資金需要)
当社の運転資金需要の主なものは、多言語のライセンス使用によるロイヤリティ支払や翻訳等のカスタマイズ開発の仕入、スタジオ収録費用の支払のほか、販売費及び一般管理費等に含まれる営業費用、研究活動における機能拡充・強化等に係る費用であります。
(財務政策)
当社の運転資金につきましては、手持資金(利益等の内部留保資金)で賄っております。自己資金で手当できない場合、借入による調達となりますが、借入先・借入金額・条件等は、所定の手続きにより承認後、資金調達を行うことになります。
当社は、2023年5月11日開催の取締役会決議に基づき、同日付で、株式会社フュートレックと資本業務提携契約及び同社の既存株主であるグローリー株式会社と公開買付応募契約をそれぞれ締結いたしました。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおりです。
当事業年度の研究開発活動は、「エーアイは音声技術で社会に新しい価値をつくり続けます」を企業理念に掲げ、「高品質、高付加価値を有する日本語音声合成エンジン」を実現すべく、日々研究・開発を積み重ねております。
当事業年度では、基礎研究として、「日本語音声合成エンジンAITalk®の品質向上」および「名古屋工業大学との共同研究」を実施しました。また、製品開発では、「コンシューマー向け音声合成ソフトウエアA.I.VOICE®に関する開発・キャラクターの拡充」に注力しました。当事業年度における当社の支出した研究開発費の総額は
なお、当社は音声合成事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
当事業年度の研究開発活動の状況は、以下のとおりとなります。
①AITalk®の品質向上
本研究においては、「日本語言語解析の精度向上」及び「DNNパラメトリック音声合成の品質向上」について、以下の研究を行いました。
ⅰ.日本語言語解析の精度向上
日本語言語解析の品質の基本となる言語辞書の継続的な品質向上のほか、より自然な言語的な表現の実現を目指し、DNN(ディープニューラルネットワーク)を利用した文中のアクセント境界・ポーズ位置および文末表現の推定技術の研究開発を実施しました。本技術を「ⅱ.DNNパラメトリック音声合成の品質向上」の研究成果と組み合わせることにより、合成音声の自然性の向上を実現します。
ⅱ.DNNパラメトリック音声合成の品質向上
当社の強みである日本語言語解析精度を維持しつつ、最新のニューラルボコーダ技術を取り入れることにより、高品質な音声合成の研究開発に取り組みました。本成果は、幅広い分野での活用を目指し、組み込み製品・パッケージ製品・クラウドサービスに展開していく見込です。
②名古屋工業大学との共同研究
昨年度から継続し、「ユーザーによる制御を可能とした音声対話システム向け音声合成の開発」を目的とし、名古屋工業大学との共同研究を実施しました。本研究の成果により、将来的に普及が見込まれる音声対話システムにおいて、場面に応じてより適した発話表現を有する自然な応答音声の提供が可能になることが見込まれます。本共同研究については一定の成果に達したため、当事業年度をもって終了としました。
③A.I.VOICE®に関する開発・キャラクターの拡充
2021年2月より、「コンシューマー向け音声合成ソフトウエアA.I.VOICE®」の販売を開始し、当初は、「琴葉茜・葵」、「伊織弓鶴」の販売を開始しました。当事業年度は、エディタ並びに既存ライブラリのバージョンアップのほか、法人向けIPコンテンツ対応音声合成サービスA.I.VOICE Biz®の販売を開始しました。新規キャラクターについては、「GUMI」、「咲ちゃん」、「栗田まろん」等を製品化しました。また、株式会社テクノスピーチと協業し、前事業年度の英語版ライブラリ「A.I.VOICE® Kotonoha Akane & Aoi English」に引き続き、中国語版ライブラリ「Kotonoha Talk®(A.I.VOICE®琴葉 茜・葵 中国語版」を開発、製品化しました。