当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社の経営の基本方針は、先進的で高品質な技術を安定的に提供することにあります。企業理念として掲げる「テクノロジーで皆が幸せな社会を創り出す」を実現するために、独自の技術を駆使して様々な分野に新たな価値を提案し、挑戦することが重要であると考えております。
(2)経営戦略等
音声事業においては、音声収録に関する受託業務が減少する見通しであることから、オーディオブック・音のAI検査等の新規注力分野での案件増大を目指しております。AI音声合成・音声認識技術を併せ持つ企業としての付加価値を創出し新たな売上の核を目指し、研究開発の加速とリソースの選択と集中を実施してまいります。
CRM事業においては、現在企画・企画開発中の新サービス「Visionary Cloud」の正式リリースを行い、売上と収益性の向上を目指しております。
また、合併による更なるコストの見直しとリソースの適正配分を行い営業利益率低下から回復する元年と位置付け、全社的に徹底的な支出の見直しと効率的組織運営を目指します。
(3)経営環境
当社グループは、AITalk®、vGate ASRを始め音声合成および音声認識システムの開発・販売を行う音声事業と、自社のCRMシステム Visionaryの開発・販売を行うCRM事業を中核事業と位置づけ、両事業の強化により企業価値の向上を図ってまいります。当社グループが今後さらなる成長と発展を遂げるためには、様々な課題があると認識しており、下記の事項を対処すべき課題として取り組んでまいります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 音声事業
AI音声の利用が拡大してきたことに伴い、研究開発のスピードも加速しております。この数年、各分野で深層学習の研究が盛んに行われておりますが、音声分野においても、深層学習(DNN:Deep Neural Network)を活用した新しい音声合成技術の研究が進められており、大手グローバル企業を始めとした競合他社との競争がますます激化してきております。当社においても、最新の技術をキャッチアップし、また、顧客ニーズの変化を捉え、新しい製品・サービスを市場に投入していくとともに、周辺技術を含めた音声のトータルソリューションを提案していくことが重要であると考えております。
② CRM事業
当社のCRM事業は、ECサイトとリアル店舗との関連強化及び顧客データの効果的活用等、デジタルトランスフォーメーション推進の時流により、市場は更に拡大するものと考えられます。当社では同事業の拡大を目的として、開発投資を行い、新商品「Visionary Cloud」の追加機能開発を進めておりますが、競合他社も機能改善に取り組んでいます。当社では、お客様の要望と市場の動向を的確に把握し、「Visionary Cloud」を競合先商品に対して競争力の高い商品として、多くのお客様に提供できる体制の構築を早期に実現できるよう努めてまいります。
③ 人材の確保及び育成
当社グループの音声事業、CRM事業を含むソフトウエア業界は、常に先進的な技術を取り入れ、技術開発を継続するために、専門的な知識を有する技術者の確保が重要です。しかし、近年ソフトウエア業界のみならず多くの分野でIT技術者が需要に対して不足している状況です。当社では、組織及び個人の目標や就業条件を設定し、一人ひとりがライフスタイルに合った勤務形態を選択できる環境を整えることによりモチベーション向上を図り、優秀な技術者の獲得及び社員の育成に注力してまいります。
④ 内部管理体制の充実
当社グループは、今後継続的に事業を拡大していくためには、コーポレート・ガバナンス機能の強化は必須であり、内部統制システムの適切な整備及び運用が重要であると考えております。また、成長のステージに応じて人的強化を行い、コーポレート・ガバナンスのより一層の充実を図り、内部統制システムの強化及びその運用の更なる徹底に努めてまいります。
⑤ 情報セキュリティ対策の強化への取組み
2024年3月、当社の一部サーバ等の機器が外部からの不正アクセスを受け、社内システムに障害が発生しました。その後、外部専門調査会社による安全性の確認調査等を行いつつ、段階的な復旧を経て、開発・リリース作業を再開しております。今回のシステム障害で得た、外部専門調査会社による調査の結果や外部専門家の知見を活かしたセキュリティ対策に取り組むとともに、社内システムのセキュリティ体制やセキュリティツールの見直し、従業員への情報セキュリティに関する知識向上に向けた教育等、情報セキュリティ対策のさらなる強化に努めてまいります。
⑥ ブランディング
当社の今後の成長のためには、音声合成・音声認識技術を中心とした音声関連技術を世の中に広めるとともに、「音声技術のエーアイ」「音声合成=AITalk®・A.I.VOICE®」「音声認識=vGate ASR」「CRM=Visionary」と認知されるように、ブランディングしていくことが重要であると考えております。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
先進的で高品質な音声技術サービスおよびCRMサービスを安定的に提供していくためには、健全な財務基盤の維持が重要であると考えており、当社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は、売上高、営業利益、当期純利益、営業利益率であります。特に、営業利益率を収益性の重要な指標の一つとしておりますが、2024年10月の株式会社フートレック社との合併により利益構造が変化したことから、具体的な目標値については、今後検討してまいります。
なお、2026年3月期の目標値は、売上高1,800百万円(前期比21.1%増)、営業利 益48百万円(前期比56.0%減)、親会社株主に帰属する純利益15百万円であります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社グループは、先進技術で社会の役に立つサービスを追求し続けることをビジョンとしており、気候変動問題を含めた持続可能な社会を実現するための諸課題への取り組みとしてサステナビリティを重要な経営課題と認識し、取締役会においてマテリアリティ(重要課題)の特定を行い、サステナビリティ基本方針を策定、2021年12月27日付け「事業計画及び成長可能性に関する事項」において公表いたしました。当社グループは、企業理念、行動規範に基づき、お客さま、取引先、株主・投資家、従業員、地域社会など全てのステークホルダーとの対話を尊重し、SDGsを含めた持続可能な社会の実現に積極的に取り組み、全てのステークホルダーから信頼され必要とされる企業を目指すため、「1. 音声技術で新しい社会価値の創造」「2. 人権の尊重・働きやすい職場環境・女性活躍の推進」「3. 社会からの信頼の獲得」に取り組んでまいります。
また、代表取締役社長を委員長とする内部統制委員会においてもサステナビリティ基本方針を各部会活動の重要な指針のひとつと位置付けることでコーポレート・ガバナンスにおけるサステナビリティの浸透を図り、適宜経営会議に部会からの報告を行うことにより各活動のモニタリングを行っております。内部統制委員会のうち、コンプライアンス部会においても、コンプライアンス行動指針20か条において地球環境の保全を人類共通の最重要課題の一つとして企業活動における地域や地球環境の保全に配慮して行動することを定め、部会活動の指針の一つとしております。
サステナビリティ基本方針に関する詳細は、当社ウェブサイトをご参照ください。
サステナビリティ基本方針
https://www.ai-j.jp/company/profile/csr/
(2)戦略
当社グループの認識する事業等のリスクのうち、サステナビリティ関連のリスクとしましては、技術動向がございます。上記のサステナビリティ基本方針にあります「1. 音声技術で新しい社会価値の創造」では、さまざまなステークホルダーの要請に応じ、AI音声技術による、利便性の向上と社会課題の解決へ取り組むものでございますが、音声合成のeラーニング等の教材への利用や、多言語展開等を通じて、質の高い教育や高齢者福祉といった社会課題の解決を目指してまいります。そのほか、学校における修学旅行等の企業訪問の積極的な受け入れや、当事業年度におきましてはSDGs推進私募債発行を行い、地域社会に貢献する取り組みを行っております。
また、人材の確保及び育成につきましても、サステナビリティ関連のリスクとして認識しており、上記サステナビリティ基本方針においては「2. 人権の尊重・働きやすい職場環境・女性活躍の推進」として、社員一人ひとりがライフステージに応じて多様で柔軟な働き方を選択しながら安心して働き続け、能力を最大限発揮できる職場環境を目指しております。具体的な対応策としては、フレックスタイム制度、在宅勤務制度等の働きやすい環境の整備を行っております。
上記リスクに関する詳細は、「
(3)リスク管理
当社グループでは、内部統制委員会にリスクマネジメント部会を設置するとともに、リスクマネジメント規程を制定し、リスクマネジメント推進体制を構築しております。気候変動リスクをはじめとするサステナビリティ関連のリスク及び機会に関してもこの枠組みの中で把握され、リスクマネジメント部会でのリスク内容の調査、経営会議で共有及びリスクのコントロールに関する協議を行い、取締役会への報告を行っております。
当社グループのリスクマネジメントに関する詳細につきましては、「コーポレート・ガバナンス報告書」をご参照ください。
https://www.ai-j.jp/ir/pdf/corporate-governance.pdf
(4)指標及び目標
当社グループは現在、サステナビリティ関連のリスク・機会を管理するための指標について、下記の人材の確保及び育成に関する指標以外については用いておりません。気候変動につきましても、当社グループの事業の特性上、温室効果ガス排出との関連が少ないことから、現時点において重要な影響がないと認識しております。今後、当社グループにおいて指標を定める目的や必要性を協議し、同業や同規模の企業の開示動向を注視しながら、必要な場合は指標の策定を検討してまいります。
当社グループでは、上記において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する2025年3月末時点での実績は、次のとおりであります。
①女性活躍の推進
・従業員の女性比率 32.0%
・管理職の女性比率 17.5%
②子育て支援の推進
・過去1年間の育児休業制度の利用者数 2名(内、男性1名)
③働き方改革の推進
・過去1年間の月平均残業時間 9.50時間
・過去1年間の平均有給消化率 75.4%
・在宅勤務対象者割合 82.5%
上記指標に関しましては、2024年10月における株式会社フュートレックとの合併により、当社における女性社員・管理職の割合が2024年3月末と比較して低下しております。当社グループでは、人的資本をサステナビリティに関する重要課題として、当社グループで働く一人ひとりの可能性が引き出される組織づくりに向けて取り組んでおりますが、本報告書提出日現在において、具体的な指標及び目標を定めておりません。今後、具体的な取り組みを実行するとともに、当社グループで働く一人ひとりの可能性が引き出される組織づくりと関係性が深い指標の目標の設定、並びにその開示について検討してまいります。
上記指標の詳細につきましては、毎年5月及び11月に公表しております「決算補足説明資料」をご参照ください。
https://www.ai-j.jp/ir/irnews
以下において、当社グループの事業の状況及び経理の状況等に関する事項のうち、リスク要因となる可能性があると考えられる主な事項及びその他投資者の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる事項を記載しております。ただし、以下の記載は当社グループの事業等に関するリスクを全て網羅するものではありませんのでご留意下さい。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社の株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載内容も併せて、慎重に検討したうえで行われる必要があると考えております。
(1)技術動向について
当社グループの音声事業は、AIの実用化の世界規模で技術開発が活発に行われている分野です。また当社グループのCRM事業ではマイクロサービスアーキテクチャによる自社商品の開発を継続して行っております。当社グループでは、これら事業に対して新しい技術の自社開発や市場からの導入、技術力向上に有効な協業などの対策を講じております。しかし画期的な技術やサービスが急速に拡大した場合、技術の方向性によっては、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)競合について
当社グループにおける各事業、製品においては、国内外に当社グループと競合する有力な事業者が存在しております。当社グループでは、製品においては独自技術の開発や他社との協業等により差別化を図っております。
経営面ではビジネスモデルの工夫により差別化を図っております。しかしながら、既存の事業者または新規参入の事業者との競合によって、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクの対応策として、定期的に競合他社の動向を調査し、優位性を維持する体制整備を行ってまいります。
(3)知的財産権について
当社グループでは、第三者との間の知的財産権に関する紛争を未然に防止するため、新しい製品やサービスの開発の際には調査を行い、また、必要に応じて先行特許調査を依頼し、弁護士の助言を得ながら製品の開発、ライセンスを実施しておりますが、第三者との知的財産権に関する紛争を完全に防止することは事実上不可能であります。当社グループでは、特許権等の知的財産権の取得、弁護士等の専門家との連携等により知的財産権に関する紛争の防止に努めておりますが、第三者と知的財産権に係る紛争が生じた場合、当該紛争に対応するために多くの人的または資金的負担が当社グループに発生するとともに、場合によっては損害賠償請求、ライセンス料等の支払請求や製品等の差止の請求等を受ける可能性があり、当社グループの事業や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)品質管理について
当社グループでは、特にソフトウエア開発に関して、コードレビュー、テスト等の品質チェックを徹底し、不具合を発生させないための諸施策を実施しておりますが、バグ等の不具合の発生を完全に防止することはできません。当連結会計年度末において当社グループの責任による不具合の発生により、顧客の事業に影響を与えるような大きな事象は発生しておりませんが、このような事象が発生した場合、不具合収束にかかる費用の負担、当社グループに対する信用低下等から、当社グループの事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)組織体制/人材について
当社グループでは、各業務において精通した従業員を配置し組織構成しております。当社グループの事業戦略を成し遂げるには、事業の立案・進捗をつかさどる役員を含む管理職と高度なスキルを有する技術者が必要であります。グループ運営力を拡大・強化し、成長を遂げていくために、必要とされる人材の確保と育成を積極的に進めてまいりますが、昨今のあらゆる分野で技術者の需要が増えている中、求める人材の採用が進まなかった場合は、当社グループの事業に支障をきたす可能性があります。
(6)企業買収、グループ会社の設立及び業務提携に関するリスク
当社グループでは、将来の企業成長において必要と考える技術開発や市場の獲得のために、企業買収、新会社の設立、出資を伴う業務提携等により当社グループの増強を進めてまいります。前述の施策については十分な事前調査及び検討を実施してまいりますが、それらの事業が計画どおりに進捗しない場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(7)情報セキュリティについて
当社グループでは、研究開発・販売・会計などのビジネスプロセスに関する機密情報や、顧客やその他関係者に関する機密情報を電子データとして保有しております。これらの電子データに関し、ハッカーやコンピュータウィルスによるサイバー攻撃やインフラの障害、天災などによって、個人情報の漏洩、サービスの停止などが発生する可能性があります。特にサイバー攻撃はますます高度化、複雑化し、情報技術の脆弱性を突かれ、攻撃を受けた場合、当社ネットワークへの不正アクセスやウェブサイト・オンラインサービスの停止などが発生する可能性があります。このような事態が起きた場合、重要な業務の中断や、顧客やその他関係者に関する個人情報・営業機密などの機密データの漏洩、製品の情報サービス機能などへの悪影響のほか、損害賠償責任などが発生する可能性もあります。ISMSおよびプライバシーマークを取得し、万全を期しておりますが、想定外の事態によりサービスの停止、あるいは情報資産が流出する可能性はゼロではなく、このような事態が発生した場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります
(8)コンプライアンスについて
当社グループでは、四半期毎に開催される内部統制委員会において内部統制状況の点検を行い、さらに適宜コンプライアンスについての教育を行っております。また、内部監査によりグループ内での内部統制システムの継続的な強化を図っております。このようにグループ一丸となり法令遵守を徹底してまいりますが、予測できない法令等への抵触や不正行為が発生した場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(9)音声事業における契約について
当社グループの音声事業における音声認識技術においては、NTTテクノクロス株式会社、株式会社ATR-Promotions、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)より音声認識に関するソフトウエア等の使用許諾を受けております。また、音声合成技術においては、外国語音声合成に関して、Cerence社を始めとした海外企業とアライアンスを組んでおります。各社とはパートナーとして確固たる関係を築いておりますが、契約取消に抵触するような重大な違反等が発生した場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)多額なのれんの発生と減損リスクについて
当社グループは、企業結合の際に生じたのれんを保有しており、一定期間で償却を行っております。当該のれんについては将来の超過収益力を適切に反映しているものと判断しておりますが、事業環境の変化等により減損処理が必要となった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概況は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、観光需要の回復やイベント開催の再開を背景に、経済活動は持ち直しの動きを見せております。特にインバウンド需要が堅調に推移し、宿泊・飲食・運輸を中心としたサービス業において個人消費の回復が見られるとともに、企業では人手不足や業務効率化への対応として、省人化・自動化を目的とした設備投資が活発化しております。一方で、急激な為替変動やエネルギー・原材料価格の高止まりを背景とした物価上昇が継続しており、ウクライナや中東地域における地政学的リスクの高まりや米国による関税政策の動向や中国経済の減速などの外的要因が先行きに対する不透明感を強める要因となっております。慢性的な人手不足やサイバー攻撃の増加などの課題も引き続き経済活動に影響を及ぼしており、内外の動向を注視しつつ、慎重な対応が求められる状況であります。
当社グループを取り巻く環境においては、株式会社フュートレックとの合併が2024年10月1日付で効力を発し、音声合成に加え、音声認識、CRMの事業領域を取り込んだ企業として新たな体制での事業運営を開始いたしました。これに伴い、音声合成技術と音声認識技術を統合したSDK「SLFramework(仮)」評価版の提供を開始し、法人顧客に向けたより高度な音声ソリューションの展開に取り組んでおります。
音声事業においては、AI音声合成における法人向け分野においては、「AITalk6 Server」、「AITalk6 声の職人」、「AITalk6 Custom Voice」など、音声合成エンジンAITalk6を用いた製品ラインナップの拡充を進めるとともに、防災・消防分野を中心としたライセンス販売やオーディオブック分野の売上、クラウドサービス「コエステーション」の売上が堅調に推移しました。加えて、AI音声認識技術を応用した「vGate Aispect®(音のAI検査)」の最新版をリリースし、実証実験も進めております。また、コンシューマー向け分野においては、「琴葉姉妹10周年記念ライブKotonoHarmony2024」の開催や新規キャラクターの展開に加えてA.I.VOICE2の売上が堅調に推移しました。
CRM事業においては、合併により取得したCRMソリューション「Visionary」について、当社として新たにその提供を開始するなど、法人顧客の多様なニーズに対応する体制を強化しております。
今後も、事業ポートフォリオの拡大を進め、音声合成技術のみならず、音声認識やCRM、各事業領域の相互補完的な活用を図り、総合的なサービス提供体制の構築を進めてまいります。また、これらの取り組みを通じて、法人・個人それぞれの市場動向に応じた製品・サービスの提供を実現し、持続的な成長を目指してまいります。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
なお、2024年10月1日以降の当社グループの事業内容を前提に開示すべきセグメント情報について検討を行い、当社グループの事業セグメントを「音声事業」、「CRM事業」、「その他事業」の3区分とすることといたしました。詳細は「第5 経理の状況 注記事項 (セグメント情報等)」をご覧ください。
ⅰ.財政状態
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は、2,960,214千円となりました。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、442,165千円となりました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は、2,518,048千円となりました。
なお、当連結会計年度は連結財務諸表の作成初年度であるため、前年同期との比較分析は行っておりません。
ⅱ.経営成績
当連結会計年度の経営成績につきましては、売上高は1,486,037千円、営業利益は109,035千円、経常利益は130,185千円、親会社株主に帰属する当期純損失は15,689千円となりました。
セグメントごとの当連結会計年度の売上高と営業利益につきましては、次のとおりであります。
(音声事業)
売上高は1,160,434千円、営業利益は106,818千円となりました。
(CRM事業)
売上高は288,933千円、営業損失は2,983千円となりました。
(その他事業)
売上高は36,669千円、営業利益は5,201千円となりました。
なお、当連結会計年度は連結財務諸表の作成初年度であるため、前年同期との比較分析は行っておりません。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の期末残高は、1,588,951千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、101,734千円となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は245,079千円となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は382,066千円となりました。
③生産、受注及び販売の実績
ⅰ.生産実績
当社グループは生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
ⅱ.受注実績
当社グループは、提供する主要なサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
ⅲ.販売実績
当連結会計年度の販売実績をサービス区分別に示すと、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度は連結財務諸表の作成初年度であるため、前年同期との比較分析は行っておりません。
|
サービスの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
前年同期比(%)
|
|
法人向け製品 (千円) |
885,621 |
- |
|
法人向けサービス (千円) |
411,413 |
- |
|
コンシューマー向け製品 (千円) |
189,003 |
- |
|
合 計 (千円) |
1,486,037 |
- |
(注)当連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
|
|
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
国立研究開発法人情報通信研究機構 |
221,923 |
14.9 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、次のとおりであります。
ⅰ.財政状態
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は、2,121,682千円となりました。その主な内訳は、現金及び預金が1,588,951千円、売掛金が308,044千円であります。
当連結会計年度末における固定資産は、836,167千円となりました。その主な内訳は、のれんが509,671千円、前払金が203,634千円であります。
当連結会計年度末における繰延資産は、2,364千円となりました。その内訳は、社債発行費が2,364千円であります。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は、356,158千円となりました。その主な内訳は、買掛金が148,718千円、契約負債が36,110千円であります。
当連結会計年度末における固定負債は、86,007千円となりました。その主な内訳は、社債が75,000千円であります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は、2,518,048千円となりました。その主な内訳は、資本剰余金が1,405,303千円、利益剰余金が1,214,545千円であります。
この結果、自己資本比率は79.6%となりました。
なお、当連結会計年度は連結財務諸表の作成初年度であるため、前年同期との比較分析は行っておりません。
ⅱ.経営成績
(売上高)及び(営業利益)
当連結会計年度の売上高は1,486,037千円、営業利益は109,035千円となりました。これは主に、株式会社フュートレックとの合併が2024年10月1日付で効力を発し、音声合成に加え、音声認識、CRMの事業領域を取り込んだことによります。
(経常利益)
当連結会計年度の経常利益は130,185千円となりました。これは主に、海外との取引に伴う為替予約の時価評価により発生した為替差益10,473千円と顧客都合による開発中止に伴う違約金収入14,617千円の発生等によります。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
親会社株主に帰属する当期純損失は15,689千円となりました。これは主に、合併効力発生日(2024年10月1日)において、既存投資分を公正価値で再評価を実施し、その際に発生した差額143,980千円を段階取得に係る差損として計上したことによります。
なお、当連結会計年度は連結財務諸表の作成初年度であるため、前年同期との比較分析は行っておりません。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、101,734千円となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失が19,663千円、減価償却費が22,949千円、仕入債務の増加額116,187千円、売上債権の増加額113,255千円、段階取得に係る差損143,980千円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は245,079千円となりました。これは主に、関係会社株式取得のための前払金の支出203,634千円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は382,066千円となりました。これは主に、自己株式の取得のための預け金の増加額174,550千円等によるものであります。
(資金需要)
当社グループの運転資金需要の主なものは、多言語のライセンス使用によるロイヤリティ支払や翻訳等のカスタマイズ開発の仕入、スタジオ収録費用の支払、業務委託費の支払のほか、販売費及び一般管理費等に含まれる営業費用、研究活動における機能拡充・強化等に係る費用であります。
(財務政策)
当社グループの運転資金につきましては、手持資金(利益等の内部留保資金)で賄っております。自己資金で手当できない場合、借入による調達となりますが、借入先・借入金額・条件等は、所定の手続きにより承認後、資金調達を行うことになります。
(1)株式会社フュートレックとの吸収合併契約等
当社は、音声関連技術の事業展開の拡大と研究開発の強化と事業の多角化を目的として、2024年5月14日開催の取締役会において、2024年10月1日を効力発生日として両社の合併を決議し、当社を吸収合併存続会社、フュートレックを吸収合併消滅会社とする吸収合併(以下「本合併」)に係る合併契約を締結いたしました。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」をご参照ください。
(2)株式会社Lapis Liveの子会社化
当社は、広いキャラクターIP事業展開とコンシューマー事業の多角化を目的として、2025年3月26日開催の取締役会において、株式会社Lapis Liveの株式を取得し、子会社化することについて決議し、2025年4月1日付で完全子会社化いたしました。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」をご参照ください。
研究開発活動においては、「声とともに便利で楽しい未来を創造する。」をビジョンに掲げ、音声事業とCRM事業において研究開発を進めております。
当連結会計年度においては、音声合成技術の開発、音声認識技術の開発、「音のAI検査」技術の開発、Visionary Cloudの開発等を実施いたしました。
当連結会計年度における研究開発費の総額は
当連結会計年度の研究開発活動の状況は、以下のとおりとなります。
音声事業
音声事業の研究開発内容
①AITalk®の品質向上
日本語音声合成エンジンAITalk®の品質向上として、「日本語言語解析の精度向上」及び「DNN音声合成の品質向上」について、以下の取り組みを実施しました
ⅰ.日本語言語解析の精度向上
日本語言語解析の品質の基本となる言語辞書の継続的な品質向上、機械学習を用いた読み分け処理の高精度化などに取り組みました。これらの取り組みは、「ⅱ.DNN音声合成の品質向上」の研究成果と組み合わせることにより、合成音声の自然性の向上を実現します。
ⅱ.DNN音声合成の品質向上
最新のニューラルボコーダ技術を取り入れた高品質な音声合成の研究開発として、音響特徴量を生成するニューラルネットワークの改善を実施し、更に自然な音声を生成できるようになりました。本成果は、AITalk®6製品・サービスで利用していきます。
②AITalk®6製品・サービスの開発
新世代DNN音声合成エンジン「AITalk®6」の製品・サービスの開発を実施し、サーバー型エンジン「AITalk®6 Server」、法人向けナレーション作成ソフト「AITalk®6声の職人®」、希望の話者のAI音声化を実現する法人向けサービス「AITalk® Custom Voice®」の最新版の提供を開始しました。
③コンシューマー向け音声合成ソフトウエアA.I.VOICE®2の開発
2023年12月より発売開始したコンシューマー向け音声合成ソフトウエア「A.I.VOICE®2」の開発を行い、「タンゲコトエ」、「紡乃世詞音」、「RIA」、「青山龍星」、「夜語トバリ」、「式狼縁・式大元」、「羽ノ華」、「音街ウナ」、「来果」などのキャラクターの販売を開始しました。
④音声認識技術の開発
音声合成・音声認識を一体化した「組み込み型音声対話フレームワーク」の開発を行い、評価版の提供を開始しました。これは、アプリケーションやサービスに対して音声での入出力を可能にする組み込み型SDKで、音声合成と音声認識のユーザー単語辞書の共通化などの特徴があります。また、音声認識の基本性能を向上させるための音声認識モデルの開発を実施しました。
⑤「音のAI検査」技術の開発
製品や機器の発する音を機械学習させることで、その異常音を検知して故障や劣化などを即座に検出する「音のAI検査」技術の開発を行い、Windows版およびLinux版SDKの最新版を開発しました。また、このSDKを利用して「音のAI検査」をより簡単にご利用いただくための異常検知ソフトウエア「vGate Aispect®」の最新版の提供を開始しました。
音声事業の研究開発体制
音声事業の研究開発活動は、当社の音声ビジネスグループ及び株式会社ATR-Trekにて実施しております。当社では、音声合成の研究開発並びに製品・サービス開発、音声認識、音のAI検査のシステム開発とこれらを用いた製品・サービス開発を実施しております。株式会社ATR-Trekでは、音声認識、音のAI検査の要素技術の研究開発を実施しております。
CRM事業
CRM事業の研究開発内容
Visionary Cloudの開発
今後のデジタルマーケティング市場でのさらなる事業拡大を目指し、当社が独自に開発・提供する統合型CRMソリューションVisionaryのマルチテナント版であるVisionary Cloudの開発を行いました。すでに基礎的な開発は完了し、会員管理基盤として複数社で活用されており、当連結会計年度は、汎用的な商品として多くのお客様にご利用いただくための追加機能の開発を継続しました。