文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
メルカリはCtoCマーケットプレイス「メルカリ」から始まり、「あんしんで頼れる」「誰でもカンタン」「使うほどワクワク」「ちょっといいことしてる気分の良さ」をお客さま体験として追求してきました。そこから生まれたお客さま同士の強固なネットワークを基盤として、物理的なモノだけでなく、信用やデジタルアセット、時間やスキルなど価値循環の対象を拡大し、お客さま体験を進化させ続けております。
よりサステナブルな社会への移行が求められる中、メルカリの事業が社会にもたらすポジティブインパクトは定量的にも示されております。メルカリが事業成長することがそのまま、サーキュラーエコノミーの体現であるともいえます。
私たちはこれからも、世界中のモノやコト、そして人の「まだ見出されていない価値」を引き出し、その価値を必要としている人へつなげていきます。有形・無形に限らずあらゆる価値が循環する「エコシステム」を通じて、世界中の人々の可能性を広げる(=Unleashする)存在でありたいと考えております。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、日本及び米国で事業展開をしており、各地域によって成長ステージが異なりますが、GMV(流通取引総額)及び売上収益の成長、また、コア営業利益(注)などの指標を通じて、企業価値の向上を図って参ります。
(注)営業利益からその他の収益/その他の費用等を控除した利益
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、以下の強みを背景に中長期的な経営戦略を立案しております。
当社グループの強み
① 中古品市場の拡大をけん引するCtoCマーケットプレイスのパイオニア
当社グループは、使いやすく楽しく、かつ安心・安全なCtoCマーケットプレイスの提供を通じて、フリマアプリ市場をつくり上げ、オフライン店舗やインターネットオークションに限定されない日本の中古品市場全体の拡大をけん引して参りました。2023年に実施した当社調査によると、フリマアプリ及びオークションサイトの利用経験者のうち当社サービスの利用者数が最も多く、他社のサービスを上回る支持を獲得しております。当社グループは、CtoCマーケットプレイスのパイオニアとしての圧倒的なポジショニングを活用することで、上記の中古品市場の高い市場成長を享受できる立場にあると自負しております。
更に、米国をはじめとする海外においても、個人による中古品売買のニーズは高く、「メルカリ」を通じて中古品市場の成長に貢献して参ります。
② エンゲージメントの高いユーザ基盤及びこれを通じて得られる高付加価値のデータ活用
出品者・購入者双方にとって簡単で使いやすく、楽しく夢中になれるユーザ体験を提供することで、「メルカリ」は高いユーザエンゲージメントを実現しております。「メルカリ」のMAUは2025年6月期第4四半期において約2,300万人であり、ユーザの取引情報やユーザ間における取引評価情報等、利用価値の高いデータを大量に収集することができます。これらのデータと当社が注力して取り組むAIをはじめとするテクノロジーの活用により、購入者の嗜好にあわせた商品提案等による購入転換率の向上や、売れやすい出品価格提案等による出品転換率の向上、カスタマーサポートの効率化等に取り組んでいます。
また、スマホ決済サービス「メルペイ」で提供するCreditサービスにおいて、「メルカリ」の利用実績に基づいた与信を提供するなど、既存のサービスにおけるユーザ体験の向上に加え、グループとしての成長に資する新規サービスの開発にもつなげております。
③ CtoC特有のネットワーク効果による高いロイヤルティの獲得
CtoCマーケットプレイスである「メルカリ」は、ネットワーク効果が強く働くサービスです。出品者・出品数の増加に伴い、購入したい商品が増えることで購入者・購入数が増加し、これにより商品の流動性が高まり、更に出品者・出品数が増加していきます。更に多くの出品者・購入者が高い頻度で「メルカリ」を利用しており、ネットワーク効果による自走的成長が促進されております。このようなネットワーク効果による出品者や購入者からの高いロイヤルティ獲得につながり、リピートユーザによる継続的な取引への参加が流通取引総額の成長に大きく貢献しております。また、ユーザの過去の取引評価の蓄積により、他のユーザが安心して取引を行うことができるとともに、ユーザ獲得競争において他の競合サービスへの流出を抑制する効果を有しております。更に、クレジットカード機能を有する「メルカード」の利用に伴うロイヤルティプログラムを開始するなど、ユーザ体験の向上に伴う高いロイヤルティの獲得に注力しております。
④ 高い収益性を実現するビジネスモデル
当社グループは、Marketplaceにおいて既に高い収益性を実現しております。この背景は、一定の事業規模に達するとその後の更なる事業規模拡大に際してコストを適切に管理できるというビジネスモデルにあります。具体的には、当社のコスト構造の相当の割合は広告宣伝費により構成されていますが、一般的にモバイルアプリの初期成長段階では売上高に占める広告宣伝費の割合は高くなるものの、ユーザ基盤が拡大し安定するにつれて広告宣伝費の比率を抑えることが可能になります。その結果高い収益性を実現することが可能となります。
更に、FintechにおいてCreditサービスの成長に伴い収益基盤が強化されるなど、メルカリグループにおける第2の収益の柱としての確立に向けた取り組みも進捗しております。
⑤ 価値創造を支える組織・企業文化
当社グループが掲げるミッション「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」の達成に向けて、世界中の多様なタレントが活躍できるボーダーレスな組織づくりを重要視しております。さまざまなバックグラウンドを持つ多様な人材が価値創造の源泉であると考え、「世界中の多様なタレントの可能性を解き放つ組織を体現」を大方針に据え、I&Dを推進しております。
また、ミッションを達成するための行動指針として「Go Bold」、「All for One」、「Be a Pro」「Move Fast」の4つを策定しており、経営判断から日々の業務まで、メルカリに関わるすべての意思決定を、本バリューに基づき行っております。
当社の具体的な経営戦略
2025年6月期は、「増益を伴うトップライン成長」「グループシナジーを中心とした事業拡大」を基本方針に掲げ、事業運営に取り組んで参りました。その結果、USにおいて通年で初の黒字化を達成するなど、主要三事業全てにおける収益性が高まり、中期方針であるコア営業利益の成長目標に対して、計画を大幅に上回る好調な初年度となりました。また、越境取引によるGMVが900億円を超え、「メルカード」の発行枚数が500万枚を突破するなど、「メルカリ」のお客さま基盤の活用によるグループシナジーが拡大しました。あわせて、「メルカリモバイル」や「メルカリNFT」等の新しいサービスの提供を開始するなど、更なるシナジーの創出に向けた種まきも行いました。
2026年6月期は、AI-Native Companyとしての組織基盤を構築し、プロダクトのコア体験強化とグループシナジーを中心とした事業拡大を通じて、グループとしての力強い成長を実現するとともに、中長期的な企業価値の向上を目指します。各事業の成長に伴い、連結売上収益2,000-2,100億円、連結コア営業利益280-320億円の達成を目指します。
① Marketplace:プロダクトのコア体験強化を最優先に進めつつ、越境取引を重点的に強化することで、GMV成長率 YoY +3-5%、コア営業利益は320-360億円を目指す
・主な施策
MarketplaceのGMVは1兆1,000億円を超える規模に到達しておりますが、潜在的な市場規模は大きく、更なる事業拡大が可能と考えております。2026年6月期は、目標の達成に向けて、安心・安全なマーケットプレイスの構築と出品者・購入者双方のプロダクトのコア体験の継続的な向上を目指します。また、エンタメホビーカテゴリーを中心に、越境取引の拡大にも取り組んで参ります。
② Fintech:日常のあらゆる決済・与信のシーンで選ばれるプロダクトへの基盤確立し、コア営業利益50-75億円を目指す
・主な施策
「メルカード」会員の増加を軸としたメルペイ利用者の継続的な獲得を推進しつつ、メインカード化の促進、「メルカードゴールド」への転換などにより、決済・与信利用の増加を目指します。
また、自社開発だけでなく、外部パートナーとの提携によるお客さまの利便性向上に資する機能拡張を実施します。
③ US:ブレイクイーブンを維持しつつ、プロダクトのコア体験強化やカテゴリー戦略による差別化により通期でのGMV YoYプラス成長を目指す
・主な施策
AIを活用したUI/UXのアップデートや不正対策強化により、圧倒的な使いやすさと安全性の実現を目指します。また、主要カテゴリーであるファッションを中心に、競争力のある配送プラン提供や信頼性を高める施策などを実施することで、ブレイクイーブンを維持しつつ、GMV YoYプラス成長を目指して参ります。
また、中期においても、原則として、増益を伴うトップラインの成長に取り組んで参ります。MarketplaceにおけるCtoCの安定成長と高い収益性の継続に加え、高成長が期待できる越境取引やBtoC、Fintech、USにおいて規律のある投資を行うことで、2027年6月期に向けた連結目標として、売上収益CAGR2桁成長、コア営業利益CAGR+25%以上の達成を目指します。事業成長を通じたミッションの達成に向けて、「メルカリ」の事業基盤を活用したグループシナジーの創出を強化することで、非連続的な成長を実現して参ります。
(4)会社の課題
① サービスの安全性及び健全性の確保
Eコマースサービスやソーシャルメディア等の普及と、それに伴う不正利用の巧妙化の流れを受け、インターネット上のサービスの安全性維持に対する社会的要請は一層高まりを見せております。当社グループは、安心・安全な取引の場を提供するため、サービスの安全性・健全性確保を最重要課題として、個人情報保護や知的財産権侵害品対策等に継続的に取り組んで参ります。
② 人材の育成
企業として持続的成長を続けるために、多様な視点とスキルを持つ人材がともに働きやすい環境を整え、イノベーションを生み出す基盤を強化し続ける必要があると考えております。「I&D Statement」として当社グループの考えを社外に公開、管理職に占める女性・外国籍比率を向上するなど、I&Dの推進に取り組んでおります。今後も、積極的な人材の抜擢・登用を通じて、当社グループの成長をけん引する新しいリーダーの輩出に取り組んで参ります。
③ 技術力の強化
当社グループはインターネット上でサービスを提供しており、サービス提供に係るシステムを安定的に稼働させることが事業運営上重要であると認識しております。アクセス数の増加を考慮したサーバー設備の強化、並列処理システムの導入等による負荷分散等、継続的にシステムの安定性確保に取り組んでいます。今後も、先進技術への投資に注力し、特にAIの積極活用により、サービスの利便性向上や、安全性及び健全性の維持・強化を推進して参ります。
④ 海外展開への対応
当社グループは、2014年に米国へ進出し、2019年には日本における「メルカリ」に出品された商品を海外から購入できる越境販売を開始するなど、海外展開にも着手して参りました。米国事業においては、コスト構造と事業戦略の見直しを実施し、収益性を確保しつつ、事業の再成長を目指しております。越境販売に関しては、順調に拡大を続けており、世界120ヶ国以上の国・地域のお客さまに越境販売を展開しています。今後も市場の機会を見極めながら、グローバルでの事業拡大を目指して参ります。
⑤ コーポレートガバナンスの強化
当社グループは、経営の監督機能及び内部統制機能の充実、コンプライアンス経営の徹底を通じて、企業価値の向上に努めることをコーポレートガバナンスの基本方針として定めています。2023年9月には指名委員会等設置会社に移行し、取締役会の監督機能を強化しながら、執行機能の迅速かつ果断な意思決定と事業推進を実現する体制を構築しています。引き続き、ステークホルダーのみなさまの信頼に応えるべく、経営の効率性、透明性を高め、企業価値の最大化と持続的な成長、発展に努めて参ります。
⑥ 内部管理体制の拡充並びにコンプライアンスの徹底
当社グループは今後もより一層の事業拡大を目指しており、社会的責任を果たし、持続的な成長と企業価値向上を図るために、当社グループの成長に見合った人材の確保、育成及びコンプライアンスの徹底を重要な課題と考えております。内部監査、法務、財務、経理、情報セキュリティ等、それぞれの分野で高い専門性や豊富な経験を有している人材を採用することに加え、社員に対する継続的な啓蒙活動及び研修活動を行うことで、更なる内部管理体制の強化を図るとともに、コンプライアンスの徹底に努めて参ります。
⑦ 財務規律の強化
当社グループが継続的に成長・拡大していくにあたっては、更なる収益基盤の強化・拡大と、それをレバレッジさせた資金調達力が必要になります。Marketplace・Fintech・USの主力3事業を、優先順位を意識した規律ある投資等の成長と収益のバランスをとった経営を行うことで、その基盤を整えて参ります。
1.サステナビリティ全般
メルカリは、事業を通じて環境や社会に貢献する「プラネット・ポジティブ」(注)を追求することで、物理的なモノやお金に限らずあらゆる価値がなめらかに循環する社会の実現を目指しています。
事業を通じて生まれた温室効果ガスの削減貢献量を算出した結果、「メルカリ」の算出対象カテゴリーで取引したことによって、2025年度は日米合計で年間推計約69万トンの温室効果ガスの排出を回避できたことがわかりました。
メルカリは、さまざまな取り組みを通じてリユースを推進し「捨てる」を減らすことで、限りある資源が大切に使われるサーキュラーエコノミーの実現に貢献します。
(注)「事業の成長を通じて地球環境に対してポジティブなインパクトを生み出し続けていく存在でありたい」というメルカリの企業姿勢を表現した、プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)という概念をベースにした当社グループの造語
(1)ガバナンス
マテリアリティごとの実行計画を執行役会にて毎年定めている事業計画に組み込み、事業戦略とマテリアリティへの取り組みをより一体的に推進しています。
マテリアリティごとの進捗状況のモニタリングは、事業計画の進捗と併せて執行役会にて四半期ごとに行われ、取締役会へ報告されます。本体制とプロセスを通じて、ESGの更なる推進を目指します。
(注)ESG委員会の分科会として実施していた「I&D Council」並びに「マーケットプレイスのあり方に関するアドバイザリーボード」は、各マテリアリティを推進する会議体として、引き続き定期的に開催いたします
(2)戦略
当社は、事業を通じて社会・環境課題の解決に貢献していく価値創造に関わるものと、持続的な成長のために必要な経営基盤に関わるものの両方の観点から、マテリアリティを定義しています。
メルカリグループのマテリアリティ
①個人と社会のエンパワーメント
誰もがやりたいことを実現し、人や社会に貢献するための選択肢を増やすことで、あらゆる人の可能性が発揮される世界を実現します。
②あらゆる価値が循環する社会の実現
事業を通じて環境や社会に貢献する「プラネット・ポジティブ」な企業を追求することで、物理的なモノやお金に限らずあらゆる価値がなめらかに循環する社会を実現します。
③テクノロジーを活用した新しいお客さま体験の創造
データ・AIなど、革新し続けるテクノロジーも活用しながら常にプロダクトを進化させ、なめらかな価値交換による新しいお客さま体験を創造していきます。
④中長期にわたる社会的な信頼の構築
コーポレートガバナンスの実効性向上とコンプライアンスの徹底による健全で透明性の高い意思決定プロセスを構築することで、社会の公器としての責任を果たし信頼を構築します。
安心・安全で公正な取引環境を実現し、更に業界全体での啓発・情報共有を行うことで、世界の健全なインターネットサービス環境の実現に寄与していきます。
⑤世界中の多様なタレントの可能性を解き放つ組織の体現
世界中の多様なバックグラウンドを持つ人材がポテンシャルを最大限に発揮して働ける環境を整えることで、持続的に成長できる企業としてあり続けます。
(3)リスク管理
当社では、サステナビリティ戦略を事業戦略と一致させ、マテリアリティごとの実行計画を毎年執行役会にて定める事業計画に組み込み、事業戦略とマテリアリティへの取り組みを一体的に推進しています。サステナビリティに関連するリスク及び機会は、マテリアリティごとの進捗状況として事業計画と併せて四半期ごとに執行役会でモニタリングされ、取締役会に報告しております。またサステナビリティに関するリスクは当社のリスク管理のプロセスに則り、全社的なリスク管理の枠組みの中で適切に管理されています。
(4)指標と目標
特定したマテリアリティごとのサマリ及び重点領域方針は以下のとおりです。
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マテリアリティ |
2025年6月期重点領域 |
2025年6月期サマリ |
2026年6月期重点領域 |
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①個人と社会のエンパワーメント |
・あらゆる人の可能性が発揮される世界の実現 |
フリマアプリ「メルカリ」の利用を通じて、22.1%のお客さまが「欲しい物を探すときに中古品から探すようになった」と回答するなど、中古品が「当たり前」の選択肢となる新たな消費行動が定着。 更に、大学で初めてメルカリShopsが活用され、自治体による取り組みも全国に拡大するなど、循環型の価値提供は社会全体へと拡大。 |
・あらゆる人の可能性が発揮される世界の実現 |
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②あらゆる価値が循環する社会の実現 |
・事業成長に伴うポジティブインパクトの拡大 ・グローバルでの価値循環の拡大 |
あらゆる価値が循環する社会の実現に向け、越境取引(台湾・香港)やデジタル資産の流通(NFT)の提供、時間・スキルを活かしたメルカリハロの登録者数が1,200万人を突破するなど、価値循環の対象と領域が拡大。また、算定対象の拡大により、ポジティブインパクト(CO2削減貢献量)は年間69万トンを突破。 |
・事業成長に伴うポジティブインパクトの拡大 ・グローバルでの価値循環の拡大 |
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③テクノロジーを活用した新しいお客さま体験の創造 |
・データ/AIによる機能革新 ・お客さま基盤を活用したイノベーションの創出 |
AIを活用し、商品画像からタイトルやカテゴリを自動提案する「出品サポート」機能を提供。あわせて、MyPageや検索機能、タブ構成の見直しなどホーム画面を全面的に刷新し、出品から購入までの導線をより直感的でスムーズな体験を実現。 |
・データ/AIを活用したなめらかなお客さま体験の提供 ・エコシステム拡大のための協業の推進 |
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④中長期にわたる社会的な信頼の構築 |
・安心・安全で公正な取引環境の実現 ・お客さま、ステークホルダー(社会、投資家、メディア等)からの信頼獲得
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安心・安全な取引環境の実現に向け、不正利用者の「徹底的な排除」とお客さまの「徹底的な救済」を掲げた対応方針を対外的に公開し、信頼性向上を推進。セキュリティ体制の強化により重大インシデントゼロを継続したほか、大学・行政・企業との連携を通じて社会的信頼の基盤を強化。 |
・安心・安全で公正な取引環境の実現 ・お客さま、ステークホルダー(社会、投資家、メディア等)からの信頼獲得 ・持続的成長を支える収益力強化 |
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⑤世界中の多様なタレントの可能性を解き放つ組織の体現 |
・多様なタレントの育成と抜擢 ・インクルージョン&ダイバーシティの体現 ・大胆な挑戦に向けた生産的な組織環境の構築
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新たなValue「Move Fast」の追加とHybrid Workstyleの導入により、組織のスピードと柔軟性を高める文化変革を推進。成長領域への再配置やAI Task Forceの立ち上げに加え、生成AIの活用で業務生産性も向上。取締役における女性比率も増加し、多様な人材の活躍が着実に進展。 |
・AIの活用による組織生産性の飛躍的な向上 ・多様なタレントの人材開発とI&Dの推進 |
詳細はサステナビリティサイト及びインパクトレポートで開示しています。以下サイトよりご覧ください。
2.TCFDに基づく開示
当社グループでは、気候変動問題を事業に影響をもたらす重要課題の一つと捉え、経営戦略に取り入れ、グループ全体で気候変動対策に積極的に取り組んでいます。このような背景から、2021年6月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明しました。
TCFD提言は、すべての企業に対し、「ガバナンス」「リスク管理」「戦略」「指標と目標」の4つの項目に基づく情報の開示を推奨しています。当社グループは、TCFD提言の4つの開示項目にそって、気候関連情報を開示しております。
(1)ガバナンス
気候変動の影響等のESGの観点は、執行役会の重要アジェンダの一つとして十分な議論の時間を定期的に確保し、経営の意思決定及び業務の執行プロセスに組み込む体制を構築しています。マテリアリティごとの進捗状況のモニタリングは、事業計画の進捗と併せて執行役会にて四半期ごとに行われ、取締役会へ報告されます。本体制とプロセスを通じて、ESG推進を行って参ります。
(2)戦略
昨年度に引き続き当社グループ全体を対象として、気候変動に関連する「移行リスク」「物理的リスク」「機会」を特定するためにシナリオ分析を実施しました。
シナリオ分析では、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)等の科学的根拠等に基づき2つのシナリオ(1.5℃/2℃シナリオ、4℃シナリオ)を設定し、当社グループの2030年以降の社会を考察しております。
シナリオ分析に基づく、気候変動に関連する主なリスクと機会は以下のとおりです。
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区分 |
気候変動が当社グループに及ぼす影響 |
顕在時期 |
事業インパクト |
当社の対応策 |
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リスク |
物理的リスク |
急性 |
自然災害の激甚化によるデータセンター等のダウン
自然災害の激甚化により、データセンターや電力会社が被災した場合、電気及びネットワークの中断、データセンターのダウン等を引き起こし、顧客(売り手・買い手)がオンラインで販売及び購入できなくなる |
中~長期 |
中 |
・操業停止期間を減少させるBCPの構築 ・災害復旧計画の検討 |
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移行リスク |
政策 ・ 法規制 |
各種規制や燃料価格上昇による商品の配送コストの増加
カーボンプライシングの導入、燃料価格上昇、クリーンエネルギー規制や、燃費規制、配送人件費の増加等による商品の配送コストの増加は、顧客(売り手・買い手)に影響を与え、マーケットプレイスで販売される商品の需要に影響する |
中~長期 |
小 |
・サプライヤーエンゲージメントの強化 ・環境負荷の少ない配送手段の拡大 |
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移行リスク |
評判 |
気候変動対応が不十分なことによる金融機関・投資家からの評判低下
投資家や金融機関から気候変動関連の対応や情報開示への要請が高まる中、暗号資産事業や越境取引の拡大等に対して対応が不十分であった場合、資金調達への影響が想定される |
中~長期 |
中 |
・情報開示の充実化 ・2030年までのScope1+2 100%削減 ・Scope 3における削減(SBT認定取得) ・配送事業者等とのサプライヤーエンゲージメントの強化 ・暗号資産事業の取引規模に応じたカーボン・オフセットの実施 |
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物理的リスク |
慢性 |
温暖化による冬物衣料の需要低下
温暖化により、マーケットプレイスで販売される冬物衣料の需要が低下することで売上に影響する |
中~長期 |
中 |
・他カテゴリーの需要強化 ・越境取引、BtoC取引等市場の拡大 |
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機会 |
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評判 |
環境意識の高まりによる、消費者選好の変化における競争力の強化
サステナブルな消費者行動の浸透に伴うメルカリ利用者の増加と、メルカリを利用する新たな動機(環境貢献)を創出 |
短~中期 |
大 |
・「捨てるをへらす」サステナブルな消費者行動の促進 |
事業/財務的影響評価
・大(30億円以上):事業戦略への影響または財務的影響が大きいことが想定される
・中(1億円以上、30億円未満):事業戦略への影響または財務的影響が中程度と想定される
・小(1億円未満):事業戦略への影響または財務的影響が小さいことが想定される
上記のとおり、当社グループの事業活動にとっては、気候変動に伴う環境意識の高まりや消費者行動の変化によって創出される市場機会の方が気候変動リスクがもたらす影響よりも大きいと評価しております。また、「環境意識の高まりによる、消費者選好の変化における競争力の強化」に関しては、サステナブルな消費者行動の浸透に伴うメルカリ利用者の増加と、メルカリを利用する新たな動機(環境貢献)を創出しうる機会と捉えております。
(3)リスク管理
当社グループでは、事業が気候変動によって受ける影響を把握し評価するため、シナリオの分析を行い、気候変動リスク・機会を特定しております。特定したリスクと機会は、ESGのガバナンス推進体制において管理しております。案件に応じて、取締役会に報告・提言を行うフローも構築しております。
(4)指標と目標
削減目標
Scope1,2:2021年を基準年とし、2030年までに100%削減*
Scope3:2023年を基準年とし、2030年までに付加価値当たりの排出量(原単位)51.6%削減(カテゴリー9が対象)
*90%削減目標にてSBT認定を取得。更に100%削減目標を独自に設定
2025年6月期(2024年7月〜2025年6月) GHG排出量実績
2025年6月期の当社グループ全体のGHG排出量は約26万トンで以下の結果となりました。Scope1+2について、第三者保証機関による保証手続きを踏まえた算定項目の見直しや、回収センター等の拠点増加による排出量の変動がありました。また、Scope3カテゴリー9(下流の輸送・配送)については、越境取引の増加により、排出量が増加しております。
2030年の目標達成に向け、引き続きアクションを実施して参ります。
(単位:トン)
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2024年6月期 |
2025年6月期 |
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Scope1 |
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Scope2 |
電気(マーケット基準) |
0 |
0 |
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電気(ロケーション基準) |
669 |
788 |
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熱供給 |
436 |
389 |
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合計※1 |
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Scope1+2 |
合計※2 |
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Scope3 |
カテゴリー1 |
37,640 |
48,109 |
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カテゴリー2 |
609 |
2,120 |
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カテゴリー3 |
450 |
435 |
|
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カテゴリー4 |
811 |
671 |
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カテゴリー5 |
39 |
53 |
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カテゴリー6 |
2,008 |
3,238 |
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カテゴリー7 |
350 |
492 |
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カテゴリー8 |
1,447 |
1,609 |
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カテゴリー9 |
176,400 |
201,230 |
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カテゴリー10 |
対象外 |
対象外 |
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カテゴリー11 |
対象外 |
対象外 |
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カテゴリー12 |
33 |
17 |
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カテゴリー13 |
対象外 |
対象外 |
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カテゴリー14 |
対象外 |
対象外 |
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カテゴリー15 |
0 |
対象外 |
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小計(Scope3) |
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合計(Scope1+Scope2+Scope3) |
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※1 電気(マーケット基準)と熱供給の合計
※2 Scope1とScope2合計※1の合計
Scope1,2及びScope3の算定対象カテゴリーについて、算定範囲の見直し及び算定の精緻化を行ったことに伴い、前年度の算定結果を一部修正しております。
3.人的資本・多様性に対する取り組み
(1)戦略
メルカリは、グループミッションの達成のために最も大切なことが「人」への投資だと考えています。それは、一人ひとりが成長し、バリューを最大限に発揮することこそ、ミッションを達成するための近道だと信じているからです。そしてその大方針として「世界中の多様なタレントの可能性を解き放つ組織を体現」することをマテリアリティに掲げています。
メルカリの人的資本・多様性に対する取り組みの詳細は以下の「FY2025.6 Impact Report」をご覧ください。
(2)指標と目標
メルカリでは、上記戦略において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、以下の指標を用いております。
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基本情報 |
連結社員数(注1) |
2,159人 |
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年齢層 |
20代: 14.3% / 30代 : 56.8% / 40代 : 25.8% / 50代:3.0% / 60代:0.1% (平均年齢:36.3歳) |
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平均年間給与 |
11,763,840円 |
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多様性に関する情報 |
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全体: (うち男性:87.6% 女性:12.4%) (外国籍:58.5%) |
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東京オフィスで働く社員の国籍数 |
53ヶ国 |
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育児休業・有給休暇に関する情報(注2) |
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育児休業等の取得割合 |
男性:84.8% 女性:100.0% |
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育児休業等の取得平均日数 |
男性:126.3日 女性:268.3日 |
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(男性:64人 男性定着率:83.1%) (女性:27人 女性定着率:87.1%) |
上記の情報は、注釈のない箇所については提出会社で雇用している労働者を対象にしています
(注)1.株式会社メルカリ、株式会社メルペイ、株式会社メルコイン、株式会社鹿島アントラーズ・エフ・シー、Mercari, Inc.(US)、Mercari Software Technologies India Private Limitedを含む。
2.子会社への出向者を含む株式会社メルカリ雇用の労働者を対象にしております。海外子会社においては現地の法律や文化的背景を踏まえ、収集するデータを限定しているため本項目の対象外としております。国内における状況につきましては、連結従業員数の大部分を株式会社メルカリの従業員が占めていることから、当社グループの状況は株式会社メルカリのデータにより十分に代表されると考えております。このため、国内子会社についても集計対象外としております。
<インクルージョン&ダイバーシティの体現について>
メルカリでは、ミッション達成においてInclusion & Diversityが欠かせないと考えております。世界中から集まった多様なタレントが活躍できる環境を整えることで、組織に多様な視点が備わり、「見落とし」が減少し、意思決定の質が向上すると信じております。
Inclusion & Diversityを推進する上で、「結果の平等ではなく、機会の平等」を最重視し、多様なタレントが採用や昇格において平等な機会を得られる「プロセス」にフォーカスしております。そのため、結果目標は設定しておりませんが、採用や昇格における候補者プールに目標を定め、継続的なモニタリングを実施しております。
このような考え方を前提に、取締役会体制においても多様性の確保を考慮して、構成することを基本方針としております。知識・経験・能力のバランスに加えジェンダーバランスに配慮し、指名委員会は原則として女性候補者を含めて選定しており、2025年6月期においては取締役における女性比率が増加しました。現在の当社取締役の女性比率は国際的に見ても高い水準であり、多様な年齢の取締役で構成されています。
・取締役会体制
・12名(女性7名、男性5名)
・女性比率:58.3%
・年齢構成
・平均年齢:52.6歳(2025年6月30日時点)
・40代:41.7%
・50代:41.7%
・60代:16.7%
<男女間賃金格差の是正アクションについて>
メルカリでは、組織内の男性と女性の平均賃金の差のみを示す「男女間の賃金格差」のほか、より状況を正確に把握するために、役割・等級や職種などによる差に起因しない「説明できない格差」(「unexplained pay gap」)も算出しています。属性に関わらない競争力のある報酬を実現するための仕組みの一環として、重回帰分析を使用した定期的な賃金格差のモニタリングを導入しております。
(1)2023年の是正措置以降、年2回の定期的なモニタリングを開始。
(2)全労働者における男女間賃金格差は昨年から1.32%縮小し、32.00%でした。
(3)Unexplained Gapは昨年から0.9%縮小、約1.4%継続しています。今後も±1%以内を目標に継続的にモニタリングと必要に応じてアクションを実施します。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。また、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの財政状態、経営成績等に与える影響の内容につきましては、合理的に予見することが困難であるものについては具体的には記載しておりません。
当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討したうえで行われる必要があると考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
(1)事業環境に関するリスク
① 業界の成長性について
当社グループは、個人間で簡単かつ安全に不要品を売買できるCtoCマーケットプレイス「メルカリ」を展開しております。近年の中古品市場の世界的な広がり、また、スマートフォンの高機能化及び普及拡大、Eコマース市場の拡大等を背景として、「メルカリ」の流通取引総額、ユーザ数等は拡大を続けており、今後もこの傾向は継続するものと認識しております。また、2024年3月には、ユーザがスキマ時間を活用して働ける求人プラットフォーム「メルカリ ハロ」の提供を開始し、スポットワーク雇用仲介事業に参入しました。構造的な人手不足への対応策として、多様な働き方の推進が急務となっている中、スポットワーク業界全体も拡大傾向にあり、「メルカリ ハロ」の登録者数は順調に増加しています。
株式会社メルペイでは「メルカリ」アプリを通じてスマホ決済サービス「メルペイ」及びクレジットカードサービス「メルカード」を提供しております。キャッシュレス決済市場の拡大を追い風に利便性の強化に取り組んでおり、決済分野における「メルペイ」の決済総額、利用者数は順調に拡大し、注力している与信分野においても「メルペイスマート払い(翌月払い・定額払い・分割払い)」の利用者数や利用残高、そして「メルカード」の発行枚数について順調に拡大しています。
更に、株式会社メルコインでは「メルカリ」アプリを通じて暗号資産取引サービスを提供しております。「メルカリ」で使わなくなったものを売って得た売上金・ポイントを使って、かんたんに暗号資産取引を始められることから、「メルコイン」の暗号資産取引口座開設数は順調に拡大しております。
しかしながら、中古品市場やEコマース、スポットワーク市場を制限するような法規制、景気動向、個人の嗜好等の変化等により、当該市場の成長が鈍化し、それに伴い当社グループの売上の大部分を占めるCtoCマーケットプレイス「メルカリ」全体の流通取引総額や注力する商品カテゴリーの流通総額が順調に拡大しない場合や、これらの要因によりユーザ離れが生じ、当社グループのビジネスモデルを長期的に維持できない場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 競合について
現在、多くの企業がスマートフォンを利用したCtoCサービスに参入しており、商品カテゴリーやサービス形態も多岐にわたっております。また、インターネットオークションやリサイクルショップも存在しており、中古品市場の競争環境は厳しさを増しております。更に、決済・金融関連事業についても、電子決済サービス、及びクレジットカードサービス、そしてそれらに関連するサービスを提供する複数の競合他社が存在しております。2024年3月に新規参入したスポットワーク市場は、近年急成長を続けており、市場の拡大に伴い競争環境も激化しています。
当社グループは、今後とも顧客ニーズへの対応を図り、サービスの充実に結び付けていく方針ではありますが、これらの取り組みが予測どおりの成果を挙げられない場合や、より魅力的・画期的なサービスやより競争力のある条件でサービスを提供する競合他社の出現等によって、当社グループが提供するサービスからのユーザ離れ、出品の減少、手数料水準の低下等につながる場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 法的規制について
当社グループが展開するCtoCマーケットプレイス「メルカリ」においては、出品者が商品を販売した場合、その販売で得られた売上金でポイントを購入し当該ポイントで商品を購入すること及びその販売で得られた売上金でポイントを購入せずに当該売上金の残高で商品を購入することを可能としています。そのため、株式会社メルペイは、資金決済に関する法律(以下、「資金決済法」という。)の第三者型前払式支払手段の発行者及び資金移動業者として登録を受けており、関連法、関連政令、内閣府令等の関連法令を遵守して業務を行っております。なお、現状において取消事由となるような事象は発生しておりません。
また、クレジットカードサービス「メルカード」の提供に加え、スマホ決済サービス「メルペイ」においては購入者にマンスリークリア取引及び分割払取引である「メルペイスマート払い(翌月払い・定額払い・分割払い)」や、少額融資サービス「メルペイスマートマネー」を提供しています。そのため、株式会社メルペイでは割賦販売法(以下、「割販法」という。)のクレジットカード番号等取扱契約締結事業者及び包括信用購入あっせん業者(認定包括信用購入あっせん業者としての認定を含む)並びに貸金業者としての登録を行っており、関連法、関連政令・省令等の関連法令等を遵守して業務を行っております。株式会社メルコインにおいては、暗号資産取引サービスの提供に当たり資金決済法に基づく暗号資産交換業者の登録を行っており、関連法、関連政令・省令等の関連法令の適用を受けています。なお、現状においていずれも取消事由となるような事象は発生しておりません。
求人プラットフォーム「メルカリ ハロ」においては、職業安定法の有料職業紹介事業者としての許可を得ており、同法のほか、労働基準法、最低賃金法、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律を遵守して業務を行っております。また、求人企業(パートナー)による法令遵守の支援にも努めております。なお、現状において取消事由となるような事象は発生しておりません。
米国においては、決済関連の規制対応のため、必要とされる州においてMoney Transmitter Licenseの申請を行っており、申請を行ったすべての州において既に取得が完了しております。
当社グループは、税務当局を含む規制当局の動向及び既存の法規制の改正動向等を踏まえ、適切に対応しておりますが、かかる動向を全て事前に正確に予測することは不可能又は著しく困難な場合もあり、これに適時かつ適切に対応できない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループが、これらの法規制等に抵触しているとして何らかの行政処分を受けた場合、及び新たな法規制の適用又は規制当局の対応の重要な変更等により、「メルカリ」の運営又はその他の既存若しくは新規の事業展開に何らかの制約が生じた場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ 自然災害等について
大地震、台風等の自然災害及び事故、火災等により、開発・運用業務の停止、設備の損壊や電力供給の制限、配送網の分断や混乱等の不測の事態が発生した場合には、当社グループによるサービス提供に支障が生じる可能性があり、ひいては当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。その他、気候変動に係るリスクについては、「サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
(2)事業に関するリスク
① サービスの健全性の維持について
当社グループが展開するサービスは、取引の場であるプラットフォームを提供することをその基本的性質としております。プラットフォームの健全性確保のため、当社グループでは、サービス内における禁止事項を明記するとともに、監視・通報制度の整備やブランド等の権利者との連携等により、偽造品その他の出品禁止物の排除に努めております。また、当社グループは、ユーザ間の取引において売買契約、役務提供契約又は雇用契約の当事者とはならず、また、サービスの利用規約においても、ユーザ間で生じたトラブルについて、当社グループは責任を負わず、当事者間で解決すべきことを定めております。
加えて、当社グループでは、万一ユーザ間の取引においてトラブルが発生した場合に備え、一定の条件を満たす取引については購入者・出品者の双方を対象に金銭的な損失を補償する「全額補償サポートプログラム」を2025年7月1日より導入しております。本プログラムにより、利用者が安心して取引できる環境を提供し、プラットフォームの安全性・健全性の向上とユーザ保護を図っております。もっとも、本プログラムの運用において想定を超える補償支出が生じた場合や、補償の範囲をめぐってユーザとの紛争が発生した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
しかしながら、当社グループのサービスにおいて、第三者の知的財産権、名誉、プライバシーその他の権利を侵害する行為、詐欺その他の法令違反行為等が行われた場合や、サービス内の不適切な行為を取り締まることができないことにより、プラットフォームの安全性及び健全性が確保できない場合には、当社グループ又は当社グループが提供するサービスに対する信頼性が低下し、ユーザ離れにつながる可能性があります。更に、問題となる行為を行った当事者だけでなく、当社グループもプラットフォームを提供する者としての責任を問われた場合、当社グループの企業イメージや信頼性が毀損され、ひいては当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 不正利用に関するリスクについて
当社グループが展開するマーケットプレイスでは、プラットフォーム上の取引においてクレジットカード決済による決済手段を提供しております。フィッシング詐欺といった不正なアカウント乗っ取りを防止するため、プラットフォームへのログイン時には多要素認証等により第三者による不正ログイン対策を強化しております。また、購入者による第三者のクレジットカード不正利用を防止するために本人認証サービス(EMV-3Dセキュア)の導入や、取引状況の人的監視及びシステム監視を行うことで総合的にリスクを判定し不正利用を防止しております。
しかしながら、プラットフォーム上における不正取引を防止できなかった場合、不正取引に関するユーザへの補填、当社グループの信用の下落等による損害が発生し、万が一損害が拡大した場合、業績及び今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
③ 海外展開に関するリスク
当社グループは、収益機会の拡大に向けて米国でも簡単で安全にさまざまなモノが売れるマーケットプレイス「Mercari」を展開しています。また、「メルカリ」の越境取引の展開国数も拡大しており、今後ともグループとして海外展開の強化を図っていく予定であります。
なお、海外展開にあたっては、広告宣伝費や人件費等の投資を今後も相当規模で行う可能性があります。また、言語、地理的要因、法制・税制を含む各種規制、経済的・政治的不安、文化・ユーザの嗜好・商慣習の違い、為替変動等のさまざまな潜在的リスク、事業展開に必要な人材の確保の困難性、及び展開国において競争力を有する競合他社との競争リスクが存在します。当社グループがこのようなリスクに対処できない場合、当社グループの海外展開に影響を及ぼす可能性があります。
④ システムについて
当社グループが展開するCtoCマーケットプレイス「メルカリ」及びその他のサービスの利用に際しては、ユーザのインターネット及びモバイルネットワークへのアクセス環境が不可欠であるとともに、当社グループのITシステムも重要となります。
当社グループは、システムトラブルの発生可能性を低減するために、安定的運用のためのシステム強化、セキュリティ強化を徹底しており、万が一トラブルが発生した場合においても短時間で復旧できる体制を整えております。また、当社の財務諸表におけるさまざまな財務数値は当社のITシステムから取得されており、これらは自社開発の複数の業務処理システムから構成されております。これらのシステム処理の適切性を担保するために適切な業務処理統制を整備・運用しております。
しかしながら、システムへの一時的な過負荷や電力供給の停止、ソフトウエアの不具合、マルウェアや外部からの不正な手段によるコンピューターへの侵入、自然災害、事故等、当社グループの予測不可能な要因によってシステムがダウンした場合や、当社グループのシステム外でユーザのアクセス環境に悪影響を及ぼす事象が発生した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態、適正な財務報告体制等に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、サービスの安定稼働及び事業成長のために、継続的にシステムインフラ等への設備投資が必要となります。当社グループの想定を上回る急激なユーザ又はトラフィックの拡大や、セキュリティ強化その他の要因によるシステム対応強化が必要となった場合、追加投資等を行う可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ AI技術について
当社グループは、CtoCマーケットプレイス「メルカリ」及びその他の事業において、AI技術を積極的に活用していますが、競合他社においてもAI技術の導入や活用が進みつつあります。こうした状況において、当社グループのAI技術の導入や活用が競合他社に比べて遅れた場合、サービスの利便性や品質で後れを取り、サービス競争力が低下することで、結果としてユーザ離れや流通取引総額の減少が発生する可能性があります。
また、AI技術を効果的に導入・運用するためには、専門人材の確保・育成や高品質なデータの整備が不可欠です。これらのリソースが不足したり、データが適切に管理されない場合には、AI技術の導入や改善の遅れにつながり、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
更に、AI技術の導入・運用には、セキュリティ上の脆弱性、プライバシー侵害、誤情報や偏見を含む出力、知的財産権の侵害といった、技術的及び倫理的なリスクも伴います。これらのリスクに対処するため、当社グループではAI技術に関するガバナンス体制の強化を進めていますが、万一これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの信用やブランド価値が損なわれ、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 訴訟等の可能性について
ユーザによる違法行為やトラブル、第三者の権利侵害があった場合等には、当社グループに対してユーザその他の第三者から訴訟その他の請求を提起される可能性があります。
一方、当社グループが第三者に何らかの権利を侵害され、又は損害を被った場合には、訴訟等による当社グループの権利保護のために多大な費用を要する可能性もあります。
このような場合には、その訴訟等の内容又は請求額によっては、当社グループの事業、業績、財政状態並びに企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 知的財産権に関するリスク
当社グループは、当社グループが運営する事業に関する知的財産権の取得に努め、当社グループが使用する商標・技術・コンテンツ等についての知的財産権による保護を図っておりますが、当社グループの知的財産権が第三者の侵害から保護されない場合、又は知的財産権の保護のために多額の費用が発生する場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが使用する技術・コンテンツについて、第三者から知的財産権の侵害を主張された場合、当該主張に対する防御又は紛争の解決のための費用又は損失が発生し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 事業基盤の拡充について
当社グループは、事業規模の拡大と収益源の多様化を実現するため、メルカリIDにより統合された当社グループのエコシステムの構築を含め、事業基盤の拡充や新規事業に取り組んでいく方針であります。今後も新規サービスの開始や第三者のサービスの導入等を行う可能性がありますが、エコシステムの構想は未だ初期段階であり、競合するサービスとの競争、収益性、規制上のリスク、オペレーションへの負荷、レピュテーションへの影響等、不確定要素が多く存在するため、当社グループの想定どおりにエコシステム構築が進捗しない可能性や、当社グループがエコシステムを構築した場合にも十分な利益を得ることができない可能性があります。
事業基盤の拡充や新規事業展開については、既存サービスとのシナジーやリスク等について企画及び開発段階において十分な検討を行うことによりリスク低減を図る方針であります。また、これら事業基盤の拡充及び新規事業展開に際しては、M&A、ジョイント・ベンチャー、資本業務提携及び投資活動も有効な手段であるものと認識しており、今後も検討を実施していく方針であります。
一方、事業基盤の拡充や新規事業展開においては、不確定要素が多く存在することから、当社グループがこれらを実施する場合には、当社グループの想定どおりに進捗しない、期待するシナジーが得られない又は提供するサービスの内容・性質に応じて新たなリスク要因が発生するなどの可能性があります。また、想定外の費用・のれんの減損等の負担や損失計上が発生し又はこれらの取り組みに付随した追加投資が必要となる可能性があります。更に、M&A等については、デュー・ディリジェンスの限界等から想定外の事象が発生するリスクを有しており、これらに起因して当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 第三者への依存について
当社グループは、ユーザにスマートフォン向けアプリを提供していることから、Apple Inc.及びGoogle LLCが運営するプラットフォームを通じてアプリを提供することが現段階の当社グループの事業にとって重要な前提条件となっております。また、当社グループは、ユーザの決済手段として、クレジットカード決済、コンビニ決済、ATM決済等の外部の事業者が提供するサービスを導入しています。したがって、これらの事業者の動向、事業戦略及び当社グループとの関係等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。更に、ユーザ情報(個人情報等含む)については、第三者が管理するデータセンターのサーバーで保管しています。このため、データセンターで有事が発生した場合、ユーザ情報が一部又は全体的に失われるリスクがあります。その結果、当社グループは法的責任やブランドイメージの低下を招く可能性があります。
配送については、ヤマト運輸株式会社や日本郵便株式会社等の配送業者に依存していることから、今後これらの配送業者について取引条件の変更、事業方針等の見直し及び配送状況の変化等があった場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは社内メール及び資料の管理にGoogle LLCが提供するGoogle Cloudを利用していることから、Google Cloudのサービスが何らかの理由で停止又は障害が発生した場合、当社グループの業務に支障をきたす可能性があります。更に、Google LLCのサービス利用に関する利用規約や方針の変更、セキュリティ上の脅威、データの漏えいや不正アクセスなどのリスクも考慮する必要があります。これらの要因が、当社グループの業務運営や情報管理に影響を与える可能性があります。
⑩ 決済・金融関連事業について
決済・金融関連事業について、今後、規制要件等の遵守のために多額の費用を要する、又は規制要件の追加等により当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、サービス、決済、金融関連事業が発展する過程で国内外において、送金、決済、電子商取引、割賦販売、貸金、暗号資産交換に係る業法に加え、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策や本人確認に係る法令など、さまざまな法規制の対象となる可能性があります。社内体制整備がサービスの成長速度に追いつかない等の理由により、万一、そうした法律又は規制上の義務に違反していることが判明した場合、罰金やその他の処分、業務停止命令等の制裁を受けたり、サービス変更を余儀なくされたりするおそれがあります。これらの事態は、当社グループの事業、業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、遵守すべき法規制の内容が将来大きく変更される可能性もあり、当該変更に対処するための社内体制を迅速に整備できない場合、当社グループの事業及び業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
更に、スマホ決済サービスやその他の決済・金融関連事業に関して、以下のさまざまな追加リスクが生じる可能性があります。
a.不正取引や取引の失敗への対応・顧客対応・委託先管理等に係る運用費・管理コストの増加
b.外部サード・パーティーへの支払い費用増加
c.インフラ構築に伴う資本コストの増加
d.ユーザ、プラットフォーム提携先、従業員又は第三者による潜在的な不正や違法行為
e.開示・報告義務の追加
⑪ 暗号資産交換業について
当社グループが顧客から預託を受けている暗号資産は、株式会社メルコインが管理するウォレット内に保管されており、外部の第三者による不正アクセスにより当該暗号資産が流出するリスク等に備えるため、秘密鍵管理体制やウォレット構造の構築においてさまざまな対策を講じておりますが、仮に不正アクセスにより暗号資産が流出した場合、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
⑫ スポットワーク雇用仲介事業について
スポットワーク雇用仲介事業では、履歴書の提出や面接の実施等一般的な選考過程を経ずに就労することから、クルー(求職者)の適切な本人確認及びパートナー(求人企業)の実態、求人に関する情報の適切な確認を徹底することが求められます。クルー及びパートナーの適切な情報の確認体制を構築しておりますが、パートナー及び求人審査の不備、クルー・パートナー間の連携に多大なトラブルが生じた場合、当社グループの事業及び業績、並びに企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
(3)会社組織に関するリスク
① 人材に関するリスク
当社グループは、当社グループ全体の事業戦略の立案及び実行について、当社グループの経営陣に相当程度依存しており、かかる経営陣が欠けた場合には当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループが今後とも企業規模を拡大し社会に求められるサービスを提供していくためには、スマートフォンのアプリ開発、設計等に関する技術的な専門性を有する人材をはじめ、セキュリティ部門、コーポレート部門やカスタマーサポート部門においても、当社グループの理念に共感し高い意欲を持った優秀な人材を確保することが必要不可欠であります。また、海外展開においては、現地の市場動向・ビジネスに精通した人材を確保していく必要があります。
当社グループは、規模拡大やサービス向上に必要な優秀な人材の確保のため、今後も必要に応じて採用活動を行っていく予定ではありますが、人材獲得競争の激化や市場ニーズの変化等により、想定どおりの採用が進まない等優秀な人材の獲得が困難となる場合や、現在在職する人材の社外への流出が生じた場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 事業体制及び内部管理体制について
当社グループは、今後の事業運営及び事業拡大に対応するため、当社グループの事業体制及び内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しております。事業規模に適した事業体制及び内部管理体制の構築に遅れが生じた場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、内部統制システムに本質的に内在する固有の限界があるため、今後、当社グループの財務報告に係る内部統制システムが有効に機能しなかった場合や財務報告に係る内部統制システムに重大な不備が発生した場合には、当社グループの財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。
③ 個人情報の管理について
当社グループは、CtoCマーケットプレイス「メルカリ」をはじめとするさまざまなサービス展開にあたって、住所、氏名、電話番号等の利用者個人を特定できる情報を取得しております。これらの個人情報については、プライバシーポリシーに基づき適切に管理するとともに、社内規程として個人情報保護規程を定め、社内教育の徹底と管理体制の構築及び改善を行っております。
当社グループは、利用者のプライバシー及び個人情報の保護に最大限の注意を払い、適切な情報管理を行っておりますが、何らかの理由で利用者のプライバシー又は個人情報が漏えいする可能性や不正アクセス等による情報の外部への漏えい又はこれらに伴う悪用等の可能性は皆無とはいえず、そのような事態が発生した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態並びに企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループが事業を運営する各法域における利用者のプライバシー及び個人情報の保護に係る法規制に改正等があった場合にも、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4)経営成績及び財政状態等について
① 経営成績について
当社は2013年2月に設立され、未だ歴史も浅く発展途上にあります。過年度の連結業績については、CtoCマーケットプレイス「メルカリ」の立ち上げ段階であったことや米国における「Mercari」や国内におけるスマホ決済サービス「メルペイ」等により、長らく親会社株主に帰属する当期純損失を計上しておりました。2022年6月期下期より、利益に対する考え方を経営方針に取り込み、成長と収益のバランスを意識した経営方針へと移行し、メルカリグループの収益力の強化に取り組んできました。2025年6月期からは、更に一歩進み、原則として、増益を伴うトップライン成長を目指すことに経営方針を変更したことに伴い、2023年6月期以降は、親会社の所有者に帰属する当期利益を計上しております。当社グループは、事業規模の拡大と収益源の多様化を図り、グループの将来利益の最大化につながる投資を行っており、今後も継続的に利益拡大していくことを企図しますが、経済の状況・当社グループをとりまく事業環境の状況等により、当社グループの業績計画及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは急速な成長過程にあるため、過年度の経営成績は期間業績比較を行うための十分な材料とはならない可能性があります。
流通取引総額、MAU(注)その他の指標については、当社グループ内において合理的と考える方法により算定したものであり、他社との比較可能性が必ずしもあるとは限らないことに加えて、上記のような事情から過去の数値が今後の動向を判断する十分な材料とはならない可能性があります。
(注)MAUは「Monthly Active Users」の略。1ヶ月に1回以上アプリ又はWEBサイトをブラウジングした登録ユーザの四半期平均の人数。
② 継続的な投資について
当社グループは、継続的な成長のため、認知度、信頼度を向上させることにより、より多くのユーザを獲得するとともに、既存のユーザを維持していくことが必要であると考え、会社設立以降積極的にプロダクトの改善や新規サービス開発のための人材確保や育成、マーケティング施策等に投資を行って参りました。今後も、規律を保ちながら、成長につながる投資を継続する方針であります。
しかしながら、事業環境の変化や広告宣伝効果が十分に得られない場合、コスト上昇等が生じた場合、投資が想定よりも長期に及ぶことにより計画どおりの収益が得られない場合等には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5)その他
株式の追加発行等による株式価値の希薄化について
当社グループは、役員及び従業員に対して、中長期的な企業価値向上に対するインセンティブとして新株予約権及び譲渡制限株式ユニット(RSU)の付与を行っており、今後も優秀な人材を採用し続けるために新株予約権及び譲渡制限株式ユニット(RSU)を利用する可能性があります。また、当社は、取得条項付転換社債型新株予約権付社債の発行をしております。上記の新株予約権の権利行使及び譲渡制限株式ユニット(RSU)の権利確定があった場合並びに当該取得条項付転換社債型新株予約権付社債が株式に転換された場合には、当社の株式が追加的に発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績等の状況
当社グループのミッションは、「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」です。このミッションの実現に向けて、当連結会計年度では、原則として、増益を伴うトップラインの成長を目指すという方針とグループシナジーの創出を意識した事業拡大により、通期連結売上収益200,000~210,000百万円、コア営業利益22,000~25,000百万円の達成に向けて取り組んで参りました。その結果、売上収益については主にMarketplaceやUSの売上収益の成長率が鈍化したことで、連結では192,633百万円となりましたが、コア営業利益は連結業績予想の上限である25,000百万円を大きく上振れ、27,574百万円となりました。
Marketplaceでは、AI/LLMを活用したUI/UXの刷新等のプロダクト施策を通じたCtoCにおける安定成長に加え、高成長領域である越境取引やBtoC、「メルカリ ハロ」の高い成長を目指し取り組んで参りました。越境取引やBtoCがトップラインの成長に寄与した他、期中でお客さま心理に影響を与えた不正利用についてもスピーディな対応によりGMV影響を最小限に抑えることで、Marketplaceの通期GMV(注1)は前年同期比4%増の11,209億円となりました。調整後コア営業利益率(注2)は、「メルカリ ハロ」への投資を含め38%と高い収益性を継続しております。「メルカリ ハロ」では、効率的な投資を行い、1年間でクルー登録者数、パートナー拠点数ともに大きく伸長しました。3月末で手数料無料キャンペーンを終了し、4月から手数料チャージを開始しております。
Fintechでは、債権残高の着実な積み上がりに伴い、当連結会計年度より、継続的な「増益」フェーズへの移行に向けて取り組んで参りました。「定額払い」債権の成長が牽引し、通期売上収益は前年同期比15%増(ポイント費用の一部が、売上収益からの控除となる会計処理を除くと前年同期比18%増)と高成長を継続するとともに、収益化を意識した経営を推進したことで、コア営業利益は45億円となりました。また、債権残高(注3)は2,481億円に達し、順調に成長する中、独自のAI与信を活かした厳格な与信コントロール等により債権回収率(注4)は99.3%と高い水準を維持し、成長とリスクマネジメントを両立した健全な成長を実現しています。更に、「メルカリ」内のみならず「メルカリ」外でもCreditサービスの拡大を目指し、「メルカード ゴールド」の提供も開始しました。
以上の結果、Japan Regionの当連結会計年度の業績は、売上収益149,807百万円(前年同期比8.5%増)、セグメント利益34,860百万円(前年同期比13.7%増)となりました。
USでは、「ブレイクイーブンにコミットしつつ、成長軌道への復帰」を目指しました。下期よりプロダクトのコア体験強化へフォーカスするとともに、手数料モデルの変更を実施した結果、第4四半期ではGMV成長率に改善の兆しが出ており、USの通期GMVは728百万米ドル(1,091億円。月次平均為替レート換算での積み上げ)、売上収益は36,418百万円(前年同期比16.6%減)となりました。セグメント利益は、プロダクトのコア体験強化によるユニットエコノミクスの改善に加え、マーケティング費用の効率化や更なる固定費の見直しにより、737百万円(前年同期はセグメント損失5,293百万円)となり当連結会計年度で黒字化を達成しました。
以上の結果、当連結会計年度のグループ業績は、売上収益192,633百万円(前年同期比2.8%増)、営業利益27,840百万円(前年同期比59.2%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益26,114百万円(前年同期比94.0%増)となりました。
(注)1.「Gross Merchandise Value」の略。流通取引総額のことを指す。「メルカリ ハロ」は含まず。
2.Marketplace・Fintech間の内部取引(決済業務委託に関わる手数料)を控除した数値を指す。
3.当期末時点における「メルペイスマート払い(翌月払い・定額払い・分割払い)」と「メルペイスマートマネー」の債権残高(破産更生債権等を除く)。
4.11ヶ月前に請求を行った「メルペイスマート払い(翌月払い・定額払い)」と「メルペイスマートマネー」の金額に対して11ヶ月以内に回収を完了した四半期累計の加重平均割合(破産更生債権等を除く)。
② 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における資産につきましては、前連結会計年度末に比べ41,990百万円増加し、543,763百万円となりました。
主な増減理由は以下のとおりです。
・現金及び現金同等物の主な増減理由は「キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
・営業債権及びその他の債権は、主に「メルペイスマート払い(翌月払い・定額払い・分割払い)」の利用増加に伴い、前連結会計年度末に比べ59,291百万円増加しております。
・使用権資産は、主に新規リース契約に伴い、前連結会計年度末に比べ5,086百万円増加しております。
・差入保証金は、主に「メルペイ」の供託金の返還に伴い、前連結会計年度末に比べ14,284百万円減少しております。
・その他の金融資産(非流動資産)は、主にグループ全体の財務効率向上を目的として、資金移動業における金銭供託の一部を国債供託に切り替えるため、国債(投資有価証券)を取得したことから、前連結会計年度末に比べ32,339百万円増加しております。
(負債)
当連結会計年度末における負債につきましては、前連結会計年度末に比べ14,495百万円増加し、444,122百万円となりました。
主な増減理由は以下のとおりです。
・営業債務及びその他の債務は、未払金の支払に伴い、前連結会計年度末に比べ6,511百万円減少しております。
・借入金(流動負債)は、主に翌月払い及び定額払い債権の流動化の変動により、前連結会計年度末に比べ8,528百万円増加しております。
・預り金は、主に「メルカリ」及び「メルペイ」の利用金額の増加に伴い、前連結会計年度末に比べ16,147百万円増加しております。
・社債及び借入金(非流動負債)は、主に社債の償還により、前連結会計年度末に比べ7,509百万円減少しております。
・リース負債は、主に新規リース契約に伴い、前連結会計年度末に比べ5,048百万円増加しております。
(資本)
当連結会計年度末における資本につきましては、前連結会計年度末に比べ27,495百万円増加し、99,640百万円となりました。
主な増減理由は以下のとおりです。
・資本金は、新株発行に伴い、前連結会計年度末と比べ827百万円増加しております。
・資本剰余金は、新株発行及び株式報酬取引等に伴い、前連結会計年度末と比べ806百万円増加しております。
・利益剰余金は、主に親会社の所有者に帰属する当期利益の計上に伴い、前連結会計年度末に比べ26,111百万円増加しております。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ44,969百万円減少し、当連結会計年度末には147,028百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により使用した資金は、11,949百万円(前連結会計年度は43,337百万円の使用)となりました。これは主に、税引前利益29,120百万円、社債償還益1,113百万円、営業債権及びその他の債権の増加額59,505百万円、営業債務及びその他の債務の減少額6,396百万円、預り金の増加額17,733百万円、差入保証金の減少額(供託金の返還による収入)14,280百万円、法人所得税の支払額4,096百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、31,364百万円(前連結会計年度は877百万円の使用)となりました。これは主に、投資有価証券の取得による支出30,454百万円、有形固定資産の取得による支出300百万円、敷金及び保証金の差入による支出606百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により獲得した資金は、504百万円(前連結会計年度は32,091百万円の獲得)となりました。これは主に短期借入金の純増加額2,065百万円、長期借入れによる収入46,200百万円、社債の償還及び長期借入金の返済による支出46,463百万円、リース負債の返済による支出1,312百万円によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性質上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
b. 受注実績
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性質上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年7月 1日 至 2025年6月30日) |
|
|
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
|
Japan Region |
149,807 |
108.5 |
|
US |
36,418 |
83.4 |
|
報告セグメント計 |
186,225 |
102.5 |
|
その他 |
6,407 |
113.5 |
|
合計 |
192,633 |
102.8 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第312条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果は特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載のとおりです。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績等の状況及び② 財政状態の状況」に記載したとおりであります。
③ キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載したとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
当社グループは、継続的な成長のため、認知度、信頼度を向上させることにより、より多くのお客さまを獲得し、また既存のお客さまを活性化させていくことが必要であると考え、会社設立以降広告宣伝等にコストを投下しており、今後も継続して国内外における広告宣伝等を進めていく方針であります。当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループのサービスを効果的に拡大していくための広告宣伝費及び開発に係る人件費であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。当社グループは、必要な資金を主に自己資金及び金融機関からの借入、社債の発行、債権流動化で賄っております。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループは、前記「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境、サービスの性質、国際事業展開、コンプライアンス等、様々なリスク要因が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。
そのため、当社グループは常に市場動向に留意しつつ、内部管理体制を強化し、優秀な人材を確保し、市場のニーズに合ったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行って参ります。
当連結会計年度において、重要な契約等の決定又は締結等はありません。
当社は2017年12月に、社会実装を目的として、研究開発組織であるR4D(アールフォーディー)を設立いたしました。R4Dでは、分野や立場を超えた産学官の協働による課題の発掘から社会実装まで、共通のゴールに向けた分野横断研究に取り組む(Co-Innovation)ことで、あらゆる価値が循環し、あらゆる人の可能性が広がる社会の実現を目指します。研究領域として、現在は、量子情報技術、Accessibility、Blockchain、Mobilityといった自然科学系のみならず、ELSI(Ethical, Legal and Social Issues)やコミュニケーション・言語学、LCAといった人文社会科学系の研究にも取り組んでいます。なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は
なお、当連結会計年度に実施した研究開発活動は、特定のセグメントに関連付けることができないため、セグメント別の記載を省略しております。