第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

当中間連結会計期間において、新たな事業等のリスクの発生、又は、前事業年度の有価証券報告書に記載した事業等のリスクについての重要な変更はありません。

 

2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間末日現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績の状況

当中間連結会計期間における我が国経済は、雇用・所得環境の改善による緩やかな回復基調を示すものの、今後の政局運営方針の見通しや、米国の通商政策による景気の下振れリスク、あるいは物価上昇の継続、金融資本市場の変動等の影響には一層注意が必要であり、景気の先行きは依然として不透明な状況にあります。

 当社の主たる事業であるコミュニケーション事業を取り巻く環境は、認証や連絡通知分野を中心に再評価されており、企業のマーケティングやセキュリティ用途へと利用範囲が拡大しています。年間平均成長率は7~10%と安定した成長を続けており、特にアカウントの乗っ取りや情報漏洩・盗用に対する対策として、金融機関やECサイトなど高いセキュリティが求められる分野では、パスワード認証や本人確認の手段としてA2P(Application to Person)やSMSがより広く活用され、需要は拡大傾向にあります。SMSは開封率が90%以上と極めて高いことからも、企業のマーケティング活動や重要な通知手段の1つとしての有効性も改めて認識されています。一方で、限定された市場にキャリア系企業も含めた参入等による価格競争によって、昨年までは市場が荒れた状況となりましたが、事業者・利用者双方が再評価を進める中で冷静な取り組みへと回帰しています。加えて、モバイルデバイスの普及やキャッシュレス決済の拡大に伴うリアルタイム通知やキャンペーンメッセージの重要性が増しており、マーケティング領域でのSMS活用のさらなる拡大が期待されることからも、今後も市場は安定的な成長基調で推移していくと推測されます。

 当社は法人向けSMS配信事業を2010年に開始して以降、16年間にわたって日本で法人向けSMS配信市場を創造し、牽引してきたパイオニアとして、「コミュニケートするすべての人に、セキュアで最適なプラットフォームを提供する」というミッションの実現に取り組み、現在では5,300社を超えるグローバルIT企業や国内大手企業などさまざまな企業の方々にご利用いただいており、SMS市場ではトップシェアを競う企業に成長してまいりました。また、2025年2月10日には、「事業多様化と構造改革」をテーマとした中期経営計画[2025–2027]を発表しました。本計画では「超情報化社会におけるコミュニケート・プラットフォームカンパニー」を目指し、SMS単一事業からの脱却を図るとともに、①コミュニケーション事業、②ソリューション事業、③投資・インキュベーション事業の3つの事業セグメントにおいて事業領域の拡大を進め、収益構造の改革を目指すことを宣言いたしました。また本計画の中心には、「AIテクノロジー」を活用した新たなビジネスポジションの構築があります。海外企業との提携や協業を通じて事業の国際化を進めるとともに、新たなマーケティング戦略による事業領域の拡大、事業体制の再編を通じて、多様なメッセージサービスの展開やAI技術を活用した独自ソリューションの推進にも取り組んでおります。こうした取り組みの一環として、当社が保有する特許技術を活用しつつ、多様なコミュニケーション手段の拡充を目的に、2025年6月30日にフォーグローブ株式会社(以下、FG社という)の株式取得、及び同年7月17日を効力発生日とする株式交付(簡易株式交付)を行い、FG社を子会社化いたしました。中期経営計画[2025–2027]において、SMSに加えてLINEなど多様なコミュニケーションチャネルを活用したマルチチャネルサービスの構築を掲げておりますが、LINE社のパートナー制度の制約により、これまで単独での事業展開は困難でした。FG社のグループ化により、こうした課題を解消するとともに、FG社のLINEサービスの開発力と専門的な技術力、そして当社が持つ顧客基盤および通信インフラとのシナジーを活かし、マルチチャネルサービスの構築を加速させてまいります。なお、FG社は当第3四半期連結会計期間より連結範囲に含める予定です。

 また、2025年8月より、従業員の経営参加意識を高めるためアクリートグループ従業員持株会の運用を開始いたします。これにより、グループ一体となった中長期的な企業価値の向上を図ってまいります。

当中間連結会計期間においては、売上高が前年同期比で41.3%増となり、2018年7月の上場以来、中間連結会計期間の売上高として過去最高を記録しました。これは要因として大きく3つあります。まず1つは前述のA2P-SMS市場環境の好調により、当グループの主力事業であるコミュニケーション事業における国内SMS配信及び海外アグリゲーター経由のSMS配信がともに安定した成長を維持しているためです。次に、Viet Guys J.S.C.(以下、VGS社という)において売上が堅調に推移し、前年同期比で6.8%増となったこと、そして3つ目として、投資・インキュベーション事業における、株式会社ズノー・メディアソリューション(以下、ZMS社という)が前第4四半期連結会計期間より連結対象となり、また、株式会社ズノー(以下、ズノー社という)が当第1四半期連結会計期間より連結対象となり、売上増に寄与したことです。なお、当社の事業多様化戦略を推進するソリューション事業では、第1四半期連結会計期間に引き続きスクーミー事業の売上実績を計上しています。

次に事業利益ですが、売上高の増加に伴い、当社単体の売上総利益は前年同期比で26.2%増加いたしました。また、ズノー社及びZMS社の連結寄与により、営業利益は前年同期比で171.6%増、営業利益率も大きく改善しております。加えて、販売費及び一般管理費については、子会社の追加連結により一定の増加があったものの、前年同期比で19.7%の増加にとどまりました。これらにより、当中間連結会計期間における営業利益は231,230千円となりました。

以上の結果、当中間連結会計期間の業績につきましては、売上高は3,672,807千円(前年同期比41.3%増)、営業利益は231,230千円(前年同期比171.6%増)となりました。経常利益は235,810千円(前年同期比174.5%増)となり、親会社株主に帰属する中間純利益は123,297千円(前年同期比102.4%増)となりました。

 

報告セグメントごとの業績は次のとおりであります。

(単位:千円)

 

報告セグメント

調整額

連結損益計算書計上額

コミュニケーション事業

ソリューション事業

投資・インキュベーション事業

売上高

3,288,227

9,553

569,867

3,867,648

△194,840

3,672,807

セグメント損益

570,443

△75,344

44,557

539,656

△308,425

231,230

 

①コミュニケーション事業

 コミュニケーション事業はSMSをはじめとするメッセージングサービス事業活動を行う当社及び子会社にて構成されております。当セグメントにおける、各サービスの概況は以下のとおりであります。

a.SMS配信サービス

 国内SMS市場においては、国内SMS配信及び海外アグリゲーター経由の配信の双方で通数が前年同期比で成長し、売上拡大を牽引いたしました。具体的には、国内SMS配信通数が前年同期比155%、海外アグリゲーター経由の配信通数が同150%と大きく伸長しております。当社は中期経営計画[2025–2027]において、こうしたSMS配信に加え、LINEなどのSNSと連携した多様なメッセージングチャネルを活用したマルチチャネルサービスの構築を掲げております。2025年7月には、FG社との連携のもと、当社保有の特許技術を活用した新サービス「SMSコネクト for LINE」の提供を開始し、さらなる価値提供に取り組んでおります。今後も、国内外におけるSMS基盤を活かしながら、マルチチャネル化や新技術の導入を通じた差別化を図り、顧客基盤の拡大と収益源の多様化を推進してまいります。

b.海外(ベトナム)におけるメッセージングサービス

 海外におけるメッセージングサービスは、ベトナムの子会社であるVGS社を中心に展開しております。主力であるSMS配信サービスは、依然として一定の需要があり、安定した売上を維持しておりますが、同国市場はすでに成熟期傾向にあります。こうした環境のもと、OTT(Over The Top)やCDP(Customer Data Platform)といった新領域への展開を強化し、サービスの多様化及び収益機会の拡大を図っております。今後は、VGS社の独自の資本政策を尊重しつつ、事業国際化戦略に基づき、ベトナムにおける事業基盤を活かして、日本とベトナム間のサービス・業務両面における相互補完体制を構築することで、将来的な海外展開の足がかりとなるグループシナジーの創出を目指してまいります。

c.メール配信サービス

 当社の子会社である株式会社テクノミックスは、学校や自治体向けに「安心メール」などを提供し、地域社会や教育機関での安全確保や情報共有をサポートしています。これらのサービスは、緊急時に迅速な連絡を可能にし、保護者や住民との連携強化に貢献しております。さらに、既存のメール配信事業からの派生による、地域活動エコシステム型連絡網システムである「クラ部Link」の提供を開始し、販促活用を展開しております。また、当社が展開する「スクーミー事業」との連携も含め、既存顧客基盤を活かしたサービス領域の拡張と収益源の多様化を推進してまいります。

 

②ソリューション事業

 当中間連結会計期間においては、第1四半期連結会計期間に引き続き「スクーミー事業」の売上を計上しております。本事業は、株式会社スクーミーが製造するノーコードプログラミングによるIoTデバイス型教材である「スクーミー」の総販売代理事業です。今後は販売網の早期定着、及び学校教育や地域行政に知見を活かしたサービス展開を加速してまいります。また、音声・顔分析技術を活用した「ANOTHER AI(アナザーアイ)」については、2025年12月期内の販売開始を目標に、オンライン販売サイトを開設するとともに、無料体験の提供も開始する予定です。まずは、ボイスアナリティクスによるメンタルヘルス分析から販売を開始し、今後は提供サービスの拡充を図ってまいります。加えて、ダークウェブ診断サービス「DeepBlue」についても、2025年8月にホームページ上にてサービス概要を公開し、本格的な事業展開を開始しました。ランサムウェア等による情報流出の脅威が深刻化するなか、企業の情報セキュリティ対策支援ニーズに応える形で、パートナー企業との連携を進めております。これらの取り組みは、当社が掲げる中期経営計画[2025–2027]における「AIテクノロジーを活用した独自ソリューションの展開」及び「事業領域の拡大による企業価値の向上」という方針に沿ったものであり、「ANOTHER AI」による新たなAI活用サービスの創出に加え、「DeepBlue」、「スクーミー」といった既存・周辺領域における構造改革や収益源の多様化を通じて、事業ポートフォリオの拡充を図っております。

 

③投資・インキュベーション事業

 投資・インキュベーション事業では、有望な開発系やAIベンチャーへの戦略的な投資を通じて、当社内での活用やインキュベーション活動を推進し、投資先企業の成長支援と新たなビジネスチャンスの創出を目指しています。

 当中間連結会計期間においてはズノー社が連結対象となり、前第4四半期連結会計期間より連結対象となったZMS社とともに当社グループの業績拡大に貢献いたしました。両社は、それぞれ異なる領域で当社との連携を深めながら、事業シナジーの創出に取り組んでいます。ZMS社は、当社のコミュニケーション事業やソリューション事業と連携し、広告運用・クリエイティブ制作を通じたプロモーション支援を展開。顧客企業の集客や認知向上を支援するマーケティング機能としての役割を強めています。一方、ズノー社では、入札情報プラットフォーム「入札王」においてAI技術を活用したデータ構造化や検索性の向上を推進し、意思決定支援機能の高度化に取り組んでいます。こうして蓄積されたデータは、今後、当社のSMSやAIプロダクトの提案先選定やマーケティング活動に活用し、両社のプロモーション連携を強化していく計画であり、これによりシナジーの創出を目指しています。今後もアクリートグループ間での相互補完関係を深め、企業価値の向上を図ってまいります。

 

(2)財政状態の状況

資産、負債、純資産別の財政状態は以下のとおりです。
(資産)

当中間連結会計期間末の資産は、前連結会計年度末に比べて954,264千円増加し、4,542,825千円となりました。これは主に、ソフトウエア及びソフトウエア仮勘定277,529千円、投資有価証券240,687千円、短期貸付金及び長期貸付金136,175千円、商品101,696千円、前払費用91,879千円、のれん87,670千円の増加によるものであります。

(負債)

当中間連結会計期間末の負債は、前連結会計年度末に比べて175,687千円増加し、1,672,992千円となりました。これは主に前受金126,238千円、買掛金44,200千円、未払法人税等40,706千円、短期借入金20,000千円の増加に対して、1年内返済予定の長期借入金及び長期借入金100,173千円の減少によるものです。

(純資産)

当中間連結会計期間末の純資産は、前連結会計年度末に比べて778,577千円増加し、2,869,833千円となりました。これは主に、資本金90,970千円、資本剰余金408,992千円、非支配株主持分189,328千円、親会社株主に帰属する中間純利益の計上による利益剰余金の増加123,297千円の増加によるものであります。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

当中間連結会計期間における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の期末残高は、前連結会計年度末に比べて40,742千円減少し、1,430,409千円となりました。

当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果獲得した資金は303,107千円(前年同四半期は248,005千円の支出)となりました。収入の主な内訳は、税金等調整前中間純利益238,610千円、減価償却費62,111千円、売上債権の減少額78,383千円及び仕入債務の増加額49,157千円であり、支出の主な内訳は、棚卸資産の増加額101,696千円及び法人税等の支払額62,561千円であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は283,131千円(前年同四半期は18,525千円の支出)となりました。支出の主な内訳は、投資有価証券の取得による支出199,998千円及び無形固定資産の取得による支出113,075千円であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は48,018千円(前年同四半期は171,786千円の支出)となりました。収入の主な内訳は、株式の発行による収入180,400千円であり、支出の主な内容は長期借入金の返済による支出224,286千円であります。

 

(4)経営方針・経営戦略等

当中間連結会計期間において、当社が定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当中間連結会計期間において、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。

 

(6)研究開発活動

該当事項はありません。

 

3【経営上の重要な契約等】

当中間連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。