当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は「われわれは在庫に関わる“人”、“もの”、“金”、“時間”、“情報”を最適化するITソリューションを提供し、限りある資源を有効活用することで、広く社会に貢献する。」を基本理念に掲げ、「世界中の無駄を10%削減する」というビジョン達成のために、小売業・卸売業・製造業の流通三層の在庫を最適化するための流通業向けAIサービス「sinopsシリーズ」を提供しております。
(2)経営環境
当事業年度におけるわが国経済は、資源及びエネルギー価格の高騰等による物価高、地政学リスクや不安定な為
替相場等、依然として不透明な状況が続いております。一方で、社会全体の変革を目的としたDX(デジタルトラン
スフォーメーション)推進が浸透しつつあり、小売業は益々多様化する消費者ニーズへの対応が求められており、
業務効率化のためのIT投資は今後増加していくものと予想されます。さらに、物流業界での「2024年問題」や、持
続可能な開発目標(SDGs)の採択に基づいた食品ロス削減運動も社会課題としての対応が急がれております。その
ため、バリューチェーンの最適化・食品ロス削減に貢献できる当社の需要予測・自動発注サービスに対するニーズ
が高まっております。
(3)経営戦略等
当社は、食品スーパーマーケット向けの導入実績が数多くある強みを活かし、需要予測型自動発注からDeCM全体の需要予測活用DX(注1)へ事業拡大することを目指します。食品スーパーの需要予測・在庫情報を卸・メーカーとデータ連携することで、食品スーパー向けには店舗業務の生産性を向上させるサービス、卸・メーカー向けには物流や生産計画を最適化するサービスを提供します。
①食品スーパーマーケットを中心とした食品小売業のシェア率40%(注2)を実現する。
②卸売業の物流を最適化する。
③製造業・原材料/包装資材業の生産計画を最適化し、「sinops」で食品流通業のディマンド・チェーン・マネジメントを実現
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社が目標とする経営指標は、シェア率、ARR(注3)、売上高、営業利益の4指標であります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社は、以下を重要な経営課題と認識しております。
①新規ユーザー獲得
事業領域拡大には、小売業の需要予測・在庫情報がコア技術として必須となるため、引き続き小売業のシェア獲得を目指して、需要予測型自動発注サービスに注力してまいります。特に注力している食品スーパーマーケット向けのシェア率は36.1%となり、2023年には食品ロス削減ソリューション市場シェア1位(注4)を獲得しました。この高いシェア率を活用し、他社とのサービス連携も進めております。
②既存ユーザーのアップセル・クロスセル
既存顧客がsinopsの導入効果を高め続けられるよう、従来のサポート体制に加えて顧客満足度向上に向けた施策を強化します。また、AI値引・惣菜・客数予測といった需要予測活用DXサービスを提供することでsinopsの付加価値をさらに高めてまいります。
③食品DeCMの構築
2023年はDeCM実現に向けて、伊藤忠商事株式会社と合同で「DeCM-PF(ディーシーエムプラットフォーム)」サービスを提供開始しました。機能の1つである「特売リードタイム長期化サービス」について、実証実験を既に実施している複数の小売業への2024年中の正式展開を目指します。今後、食品バリューチェーンの最適化に向けて、小売業の需要予測データをコアとして、複数のサービス展開や対象の商品カテゴリの拡大を進めてまいります。
④中長期成長に向けてコア技術を活用した事業領域拡大
食品DeCMの構築に限らず、中長期的な成長を維持するため、新市場獲得のための事業領域拡大を進めます。食品スーパーの人時改善を行うDXサービスを2023年から研究開発しており、需要予測・在庫管理情報を活用することで、さらなる人時改善サービスを提供できるよう中長期の事業として推進を開始しました。また、まずは食品向けDXサービスに注力しますが、食品スーパー以外の業態にもDeCMを拡大できるよう備えてまいります。
⑤サステナビリティ経営の推進
sinopsによる在庫最適化に取り組むことで、SDGs目標12「つくる責任・つかう責任」で謳われる食品ロス削減をはじめとした、サプライチェーン全体の無駄を削減します。また、東京都市大学との共同研究で、「小売業におけるsinops活用による食品ロス削減が環境に与える影響」を調査しています。sinops事業を推進することで、地球環境の維持・向上及び持続可能な社会の実現に貢献します。
(注1)DeCM全体の需要予測活用DXとは、需要予測・在庫情報データをサプライチェーン全体で活用することで、小売業務の深化やディマンド・チェーン・マネジメントの実現など、流通三層の最適化を目指すものです。小売業では値引きや勤怠管理など多岐にわたる業務を需要予測・在庫情報データをコアとして最適化します。卸売業・製造業では、需要予測・在庫情報データを活用することで、在庫・物流・生産計画を最適化します。
(注2)シェア率は、以下計算式で算出しております。
シェア率(%)=「sinops」導入企業の年間売上高計÷ターゲット企業の年間売上高計
※ターゲット企業とは、ダイヤモンド・チェーンストア「日本の小売業1000社ランキング」に掲載されている売上高400億円以上の小売業(百貨店、コンビニを除く。)。
(注3)Annual Recurring Revenueの略語。2023年12月末時点のMRR(Monthly Recurring Revenue)を12倍にして算出。MRRは対象月の月末時点における有償契約ユーザー企業に係る月額料金の合計額(一時収益は含まない)。
(注4)株式会社富士キメラ総研が2023年8月8日に発刊した「2023 SX/GXによって実現するサステナビリティ/ESG支援関連市場の現状と将来展望」の「需要予測や自動発注ツールを対象とした食品ロス削減ソリューション市場」においてシェア1位(2022年度実績)を獲得。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)ガバナンス
当社は「世界中の無駄を10%削減する」という経営ビジョンのもと、sinops事業を推進することによって流通三層の在庫を最適化し、社会及び環境へ貢献しております。そのため、サステナブルに成長するためのガバナンス体制に関しては、事業活動を推進するためのコーポレート・ガバナンス体制と同様となります。当社のコーポレート・ガバナンスの状況は「
(2)戦略
当社は、sinops事業を推進することで、小売店舗の食材廃棄ロスの抑制に貢献しております。また、高精度な需要予測をコアとして、物流の最適化を行うサービスを提供することで、トラック配車台数の最適化の取組みも開始しております。今後は、さらに川上の卸売業、製造業、包装資材業や原材料業に需要予測データの活用を拡大することで、「“人”、“もの”、“金”、“時間”、“情報”を最適化するITソリューションを提供し、限りある資源を有効活用することで、広く社会に貢献する。」という基本理念を推進いたします。
なお、当社は自社開発のソフトウェア企業であるため、中長期的な企業価値向上のためには様々な分野での優秀な人材の獲得及び生産性の高いチームづくりが必須となります。プロフェッショナル人材の育成及び獲得に努め、多様な人材が最大限に能力を発揮できるよう、働きやすい職場環境づくりを推進しております。
労働生産性の向上にむけて、健康経営宣言を策定し、労働安全衛生・メンタルヘルスに関して取り組むだけでなく、ハイブリッドワークの推進、柔軟な勤務スタイルを確立するための勤務時間変更、育児や介護のための制度を整えております。
(3)リスク管理
当社は、不測の事態または危機の発生に備え、「リスク管理規程」を定め、リスク管理委員会を設置し、リスクを網羅的に把握・管理する体制を構築しております。サステナビリティに関するリスクにつきましても、その他のリスクと同様に、当該規程に基づきリスク管理を行っております。また、企業として持続的に成長するために、リスク管理委員会におけるリスクテーマについても網羅的に把握し、リスク発生確率や重要性を加味して審議しております。
(4)指標及び目標
当社は、メンバー全員が最大限に能力を発揮できることが中長期的な企業価値の向上に向けた人材戦略において重要であると認識しており、働きやすい環境を整え、多様な人材が能力を発揮できる職場環境の確保に努めております。
事業拡大に伴い、メンバー数について、年間5%~15%増の成長を中長期的に目指しております。メンバー数、人件費の目標を設定し、達成に向けて進捗管理しております。この成長を維持するため、離職率、有休消化率や平均年収等を改善させるための定性的な取り組みも行っていきます。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1)事業環境について
① 市場環境について
当社は、第37期事業年度においては、売上高全体に占める食品スーパーマーケット向けの売上高の割合が70%以上と高い水準にあります。今後、食品スーパーマーケット業界以外での導入実績を増やすことでリスクを低減する方針ではありますが、当社が想定している事業展開が図れない場合には、当該業界の業況等によりIT・システムへの投資が減少する等した場合に、当社の事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
② 技術革新への対応について
当社は、需要予測・自動発注サービス分野において多くの導入実績がある強みを活かし、既存顧客のニーズを積極的に汲み取り、ユーザーエクスペリエンス(注)のさらなる向上に努めてまいります。また、技術の最新動向をキャッチアップし、効果的に事業に反映することで技術的優位性の強化を実現してまいります。しかしながら、当社の想定を超える革新的な技術や著しい市場環境の変化等が生じた場合に、当社が当該変化に適時に対応することができなかった場合には、当社の事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(注)ユーザーエクスペリエンスとは、製品・サービスの利用を通じてユーザーが得る体験を指します。
③ 新規業界への進出について
当社は、今後も持続的な成長と収益源の多様化を進めるために、食品スーパーマーケット業界以外の新規業界にも積極的に進出していきたいと考えております。しかしながら、新規業界へ進出した際には、その業界固有のリスク要因が加わると共に、新規業界での成功実績を積み上げていく過程では、その業界特有の商習慣をはじめとして様々な予測困難なリスクが発生する可能性があります。その結果、当社が想定している事業展開が図れない場合には、当社の事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 競合の変化について
当社の「sinops事業」の対象領域である需要予測・自動発注サービス領域においては、流通業の深刻な人手不足や食品ロスに対する注目度の高まりもあり、他社の新規参入により競合が激化する可能性があります。当社では引き続き顧客ニーズを汲み取った製品・サービスの提供を進める方針でありますが、競合企業の営業方針、価格設定及び提供する製品・サービス等は、当社が属する市場に影響を与える可能性があります。これらの競合企業に対して効果的な差別化を行うことができず、当社が想定している事業展開が図れない場合には、当社の事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)事業活動について
① 需要予測ロジックミスによる顧客への影響について
当社の需要予測・自動発注サービス「sinops」は、過去実績をもとに需要予測数を計算し、最低限必要と想定される発注数を発注勧告データとしてユーザー側に提供するサービスです。「sinops」はあくまで発注勧告数を提供するシステムであり、発注数の確定はユーザー側で行いますが、需要予測ロジックの計算式に誤りがあり、ユーザー側に異常な発注勧告数を提供し、ユーザー側における発注業務が円滑に実施できなくなる可能性があります。当社では「sinops」の需要予測ロジック精度向上のために継続的に研究開発を行うことはもちろん、過去実績がない商品の販売や異常気象等の特殊事情が発生した場合にはユーザーの手動発注に切り替える等の対策を講じております。このような対策にもかかわらず、ユーザーの発注業務への影響が広範囲に渡り、復旧に相当時間を要した場合、関連する損害についての賠償請求を受ける可能性や、当社の信頼性や企業イメージが低下し、顧客の獲得・維持が困難になる可能性があります。その結果、当社の事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
② 人為的ミス・外的要因等によるサービスの中断・品質低下について
当社が提供する製品・サービスに関して、人為的なミス、ハードウェアや通信回線の不具合等が発生した場合、これに起因して製品・サービスを継続的に提供できなくなること、又は製品・サービスの品質が低下すること等の重大なトラブルが発生する可能性があります。特に、当社の需要予測・自動発注サービスが、人為的ミスや当社がコントロールできない外的要因を起因としてユーザーに異常な発注勧告データを提供する、もしくは発注勧告データそのものを提供できなくなる等により、ユーザー側における発注業務が円滑に実施できなくなる可能性があります。当社では、前日中に一旦予備の発注勧告データをユーザー側に送る仕様とする等、突発的なトラブルによってユーザー側の発注業務に重大な影響を及ぼさないようにするための対策を講じておりますが、このような対策にもかかわらず、製品・サービスの中断・品質低下による影響が広範囲にわたり、復旧に相当時間を要した場合、関連する損害についての賠償請求を受ける可能性や、当社の信頼性や企業イメージが低下し、顧客の獲得・維持が困難になる可能性があります。その結果、当社の事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 特定の製品への依存について
第37期事業年度における売上高のうち、小売業向けサービスの売上高が70%以上を占めております。当社ではクラウド型AIサービス「sinops-CLOUD」等の新製品開発を積極的に進め、顧客のニーズに合った製品を提供し続ける対応を行っております。しかし、製品開発を計画通りに行うことができない、又は、主力製品以外の新製品が顧客に支持されない等の理由により、当社の製品が競争力を失った場合には、当社の事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 既存ユーザー企業の継続率及び単価向上について
当社のクラウドサービスは、サブスクリプション型のリカーリングモデルであることから、当社の継続的な成長には、新規顧客の獲得のみならず、既存顧客の維持及び単価向上が重要と考えております。
既存顧客の維持については、その継続率が非常に重要な要素であり、機能の追加開発やサポートの充実により、継続率の維持・向上を図っております。予算及び経営計画には、実績を基に一定の解約率を踏まえた継続率を見込んでおりますが、当社サービスの魅力の低下、競合他社に対する競争力の低下、追加機能やサポートに対する満足度の低下等により、当社の想定を大幅に下回る継続率となる可能性があります。
単価向上については、当社は、ユーザー企業あたりの利用サービス数の増加、既存顧客へのアップセルやクロスセルを促進する戦略をとっております。しかしながら、当社サービスが顧客ニーズに合致しないこと等により、想定した顧客単価の向上が実現しない可能性があります。
その結果、当社の事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ システム等に関するリスクについて
当社のクラウドサービスは、外部クラウドサーバのAmazon Web Services社が提供するサービス(以下、「AWS」という。)にて提供しており、AWSの安定的な稼働が当社の事業運営上、重要な事項となっております。当社ではAWSが継続的に稼働しているかを常時監視しており、障害の発生又はその予兆を検知した場合には、当社の役職員に連絡が入り、早急に復旧するための体制を整えております。しかしながら、システムエラー、人為的な破壊行為、自然災害等や当社の想定していない事象の発生によりAWSが停止した場合や、コンピュータ・ウイルスやクラッカーの侵入やその他の不具合等によりシステム障害が生じた場合、又はAmazon Web Services社との契約が解除される等によりAWSの利用が継続できなくなった場合には、顧客への損害の発生、当社の追加費用負担、又は当社ブランドの毀損等により、当社の事業及び経営成績に影響を与える可能性があります。
⑥ 情報の流出について
当社は、事業を展開する上で、顧客情報(個人情報を含みます。)やその他の機密情報を取り扱っております。当社の故意・過失又は悪意を持った第三者のサイバー攻撃等により、これらの情報の流出や消失等が発生する可能性があります。こうした事態が生じた場合、関連する損害についての賠償請求を受ける可能性や、当社の信頼性や企業イメージが低下し、顧客の獲得・維持が困難になる可能性があります。その結果、当社の事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 知的財産権について
当社は、保有する特許の保護、他社との差別化のための特許の獲得に努めていますが、これらが十分に行えない場合、関連する事業に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社は製品の開発・生産に必要な第三者の特許の使用許諾権の確保に努めていますが、将来、必要な許諾権が得られない可能性や不利な条件での使用を余儀なくされる可能性があります。いずれの場合も当社の業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
一方で、当社は、自動発注システムにおけるアプリケーション、ビジネスモデルに関する特許権、実用新案権又はサービスに係る商標権等の知的財産権の調査等は可能な限り対応しておりますが、第三者の知的財産権を完全に把握することは困難であり、当社が認識せず他社の知的財産権を侵害してしまう可能性は残されます。2023年12月31日現在まで当社では事業に関連した特許その他知的財産権に関わる訴訟を提起されたことはありませんが、当社の認識外で第三者の知的財産権を侵害してしまった場合や、将来、当社の事業に関連した特許その他の知的財産権が第三者にて成立した場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 受注損失の発生について
当社の導入支援サービスは、目標とする導入効果をユーザーと合意した上で導入支援プロジェクトの完了条件を決め、想定される難易度及び工数に基づいて見積りを作成し、適正な利益率を確保した上でプロジェクトを受注しております。導入効果の目標値については、ユーザーの実データをもとにした効果シミュレーション、自動発注対象範囲、遵守すべき運用ルール等を取り決めた上で設定しておりますが、全てのプロジェクトに対して正確に導入効果を見積ることは困難であり、想定以上に導入効果が出ない可能性があります。また、プロジェクト中にユーザーと目標値の認識違いが発生しないように、情報共有の徹底に努めておりますが、ユーザーとプロジェクトの完了条件に認識違いが発生する可能性があります。当初想定した利益率を確保するために、完了条件の認識合わせ・要員管理・進捗管理・予算管理等のプロジェクト管理を行っておりますが、予期せぬトラブルやスケジュール変更等により工数が大幅に増加し、受注損失が発生する場合があります。当社では導入支援サービスの分割検収を行うことで業績への影響を最小限に抑えるように努めておりますが、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 製品保証の発生について
当社は、将来のビジネス展開を考慮し、ユーザーの導入効果を出すことを最優先としております。そのため、すでに「sinops」を利用しているユーザーに対しても、さらに導入効果を向上させることを目的に、当社自らの判断で再度導入支援サービスを無償提供することがあります。ユーザーからの要望ではないため、契約上の義務が発生しているわけではありませんが、無償の導入支援サービスに係る見込原価に対して、製品保証が発生する場合があります。その結果、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑩ 固定資産の減損リスクについて
当社は各sinops-CLOUD製品を無形固定資産のソフトウエアとして計上しております。当該製品はクラウドサービス提供するために自社で開発したものであり、クラウド事業の資産としてグルーピングされるものでありますが、販売計画どおりにsinops-CLOUD製品の販売ができない場合等は想定どおりの収益を獲得できず、当該製品の開発に要したコストを回収することができなくなった場合、ソフトウエアの減損損失が発生する可能性があります。この事象が発生した場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)組織体制について
① 特定の役員・社員への依存について
当社は2023年12月31日現在、取締役6名(うち監査等委員3名)、従業員111名と組織規模が小さく、内部管理体制や業務執行体制も当該組織規模に応じたものとなっております。従って、当社の役員や従業員が病気や怪我等により業務を遂行する上で支障が生じた場合や転職等により人材が社外に流出した場合には、当社の業務に支障が生じる可能性があります。その結果、当社の事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
② 人材の確保・育成について
当社において優秀な人材の確保・育成及び定着は最重要課題であり、将来に向けた積極的な採用活動、人事評価制度の整備や研修の実施等の施策を通じ、社内リーダー層への幹部教育、新入社員及び中途入社社員の育成・定着に取り組んでおります。しかしながら、これらの施策が効果的である保証はなく、必要な人材を確保できない可能性があります。その結果、当社の事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 内部管理体制について
当社は、企業価値の継続的かつ安定的な増大を図るためにはコーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であり、同時に適切な内部管理体制の構築が必要であると認識しております。当社では、内部監査や内部通報制度への対応、さらには法令や社内規程等の遵守の徹底を行っておりますが、事業の急速な拡大により、十分な内部管理体制の構築が追いつかない事態が生じる場合には適切な業務運営が困難となり、当社の事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)その他
① 自然災害について
顧客の情報資産が格納されるサーバは複数箇所に分散管理することでリスクを分散させておりますが、データセンターやその周辺ネットワーク設備等に被害を及ぼす災害・事故等が発生し、情報資産の消失又はサービスの提供が維持できない状態に至った場合には、当社の事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
② 風評について
当社は、法令遵守違反等の不適切な行為が発覚した場合は速やかに適切な対応を図っておりますが、当社に対する悪質な風評がマスコミ報道やインターネット上の書き込み等により発生・流布した場合は、それが正確な事実に基づくものであるか否かに関わらず、当社の信頼性や企業イメージが低下し、顧客の獲得・維持が困難になる可能性があります。その結果、当社の事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当事業年度はパッケージ販売からクラウドサービス中心のストック型ビジネスへの構造転換に一定の目途がたち、ストック型売上が年間売上高の約70%となったことから、足下の堅調な業績による安定した財務体質を基盤に、中長期成長に向けた事業領域拡大のための研究開発を実施してまいりました。2020年より取り組みを開始した食品ディマンドチェーンマネジメント構築については、伊藤忠商事社と共同で「DeCM-PF(ディーシーエムプラットフォーム)」としてサービス提供を開始し、食品スーパーのDX深化に向けた人時改善サービスの研究開発も行いました。事業領域拡大には、小売業の需要予測・在庫情報がコア技術として必須となるため、小売業のシェア獲得を目指して、需要予測型自動発注サービスに引き続き注力してまいります。特に注力している食品スーパーマーケット向けのシェア率は36.1%(前年同期比1.9pt増)となり、この高いシェア率を活用し、他社とのサービス連携も進めております。
その結果、当社の導入実績は、2023年12月31日時点でARR(注1)は1,200,467千円(前年同期比16.6%増)、シェア率は19.7%(同0.9pt増)、契約企業数は113社(同10社増)、クラウドサービスの有償店舗数2,674店舗(同430店舗増)(注2)、クラウドサービスの有償アカウント数は10,376アカウント(同2,916アカウント増)(注3)に増加しております。当事業年度における売上高は1,728,828千円(前期比18.8%増)、営業利益は270,751千円(同20.6%増)、経常利益は269,684千円(同20.2%増)、当期純利益は206,222千円(同34.3%増)となりました。
(注1)Annual Recurring Revenueの略語。2023年12月末時点のMRR(Monthly Recurring Revenue)を12倍にして算出。MRRは対象月の月末時点における有償契約ユーザー企業に係る月額料金の合計額(一時収益は含まない)。
(注2)有償契約でクラウドサービスを利用している店舗数(旧レンタルサービス利用店舗を除く)。
(注3)有償契約しているクラウドサービス利用数(旧レンタルサービスを除く)。
②キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末と比べて469,734千円減少し、830,547千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は305,881千円(前期は193,176千円の収入)となりました。主な増加要因として、税引前当期純利益269,849千円、減価償却費84,751千円、契約負債の増加28,925千円があった一方で、主な減少要因として、法人税等の支払額99,688千円があったこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は751,206千円(前期は101,071千円の支出)となりました。主な要因は、定期預金の預入による支出500,000千円、無形固定資産の取得による支出138,968千円、投資有価証券の取得による支出101,167千円があったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果支出した資金は24,410千円(前期は217,364千円の支出)となりました。主な要因は、長期借入金の返済による支出28,750千円があったこと等によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
b.受注実績
当事業年度の受注実績を業務区分別に示すと、次のとおりであります。
|
業務区分 |
当事業年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
|||
|
受注高(千円) |
前期比(%) |
受注残高(千円) |
前期比(%) |
|
|
パッケージ販売業務 |
245,107 |
143.0 |
17,931 |
582.4 |
|
導入支援業務 |
347,156 |
122.8 |
67,407 |
106.5 |
|
サポート業務 |
333,719 |
102.5 |
150,327 |
98.4 |
|
クラウド業務 |
812,828 |
97.2 |
381,598 |
98.3 |
|
合計 |
1,738,811 |
107.6 |
617,264 |
101.6 |
(注)当社は「sinops事業」の単一セグメントであるため、業務区分別の実績を記載しております。
c.販売実績
当事業年度の販売実績を業務区分別に示すと、次のとおりであります。
|
業務区分 |
当事業年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
|
|
販売高(千円) |
前期比(%) |
|
|
パッケージ販売業務 |
230,255 |
103.2 |
|
導入支援業務 |
343,032 |
111.3 |
|
サポート業務 |
336,185 |
105.3 |
|
クラウド業務 |
819,356 |
135.5 |
|
合計 |
1,728,828 |
118.8 |
(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前事業年度 (自 2022年1月1日 至 2022年12月31日) |
当事業年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
株式会社日本アクセス |
177,567 |
12.2 |
175,656 |
10.2 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。
この財務諸表の作成にあたって、見積り、判断並びに仮定を用いることが必要となりますが、これらは期末日における資産・負債の金額、開示期間の収益・費用の金額及び開示情報に影響を与えます。ただし、これらの見積り、判断並びに仮定は、実際の結果とは異なる場合があります。
当社の財務諸表の作成にあたって重要な会計方針及び見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。
②経営成績の分析
当事業年度の売上高は1,728,828千円(前期比18.8%増)、営業利益は270,751千円(同20.6%増)、経常利益は269,684千円(同20.2%増)、当期純利益は206,222千円(同34.3%増)となりました。
(単位:千円)
|
|
前事業年度 |
当事業年度 |
増減額 |
増減率 |
|
売上高 |
1,455,177 |
1,728,828 |
273,651 |
18.8% |
|
売上原価 |
753,419 |
874,064 |
120,645 |
16.0% |
|
売上総利益 |
701,757 |
854,764 |
153,006 |
21.8% |
|
販売費及び一般管理費 |
477,219 |
584,012 |
106,792 |
22.4% |
|
営業利益 |
224,538 |
270,751 |
46,213 |
20.6% |
|
経常利益 |
224,374 |
269,684 |
45,310 |
20.2% |
|
当期純利益 |
153,496 |
206,222 |
52,726 |
34.3% |
(売上高)
クラウド売上高(過去の経営成績の分析におけるレンタル売上高を含めております。)は、既存クラウドユーザーのクロスセルが増加したことが主要因となり、819,356千円(前期比214,787千円増・35.5%増)となりました。パッケージ売上高は、大型食品スーパーの新規受注や既存ユーザーの店舗追加が主要因となり、230,255千円(前期比7,146千円増・3.2%増)となりました。導入支援売上高は、クラウドサービスの新規導入や既存ユーザーへのクロスセルが主要因となり、343,032千円(前期比34,812千円増・11.3%増)となりました。サポート売上高は既存ユーザーの店舗展開が進んだことが主要因となり、336,185千円(前期比16,905千円増・5.3%増)となりました。
その結果、当事業年度における売上高は1,728,828千円(前期比273,651千円増・18.8%増)となりました。
(売上総利益)
当事業年度は、クラウドサービスの展開に伴い、製造部門の人件費、外注費、クラウド利用店舗拡大に伴う通信費が増加したことが主要因となり、売上原価が前期比120,645千円増加(前期比16.0%増)となりました。その結果、売上総利益が854,764千円(前期比153,006千円増・21.8%増)となりました。
(営業利益・経常利益)
当事業年度は、クラウドサービス機能向上や「DeCM-PF」構築に向けた研究開発費の増加、事業拡大に伴う人件費や採用費の増加が主要因となり、販売費及び一般管理費が前期比106,792千円増加(前期比22.4%増)となりました。その結果、営業利益が270,751千円(前期比46,213千円増・20.6%増)、経常利益が269,684千円(前期比45,310千円増・20.2%増)となりました。
(当期純利益)
当事業年度における当期純利益は206,222千円(前期比52,726千円増・34.3%増)となりました。
なお、当社は「sinops事業」の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載を行っておりません。
③財政状態の分析
(資産)
当事業年度末における総資産は2,202,156千円(前事業年度末比196,466千円の増加)となりました。主な要因は、長期預金が500,000千円、社債の新規購入により投資有価証券が99,410千円、ソフトウエアが35,818千円増加した一方で、現金及び預金が469,734千円減少したこと等によるものであります。
(負債)
負債は434,821千円(前事業年度末比27,309千円の減少)となりました。主な要因は、1年内返済予定の長期借入金が28,750千円、未払法人税等が21,180千円、未払金が18,805千円減少した一方で、契約負債が28,925千円、買掛金が12,117千円増加したこと等によるものであります。
(純資産)
純資産は1,767,335千円(前事業年度末比223,776千円の増加)となりました。主な要因は、当期純利益の計上により繰越利益剰余金が203,862千円増加したこと等によるものであります。
④キャッシュ・フローの状況の分析
当事業年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
⑤資本の財源及び資金の流動性
資本の財源及び資金の流動性につきましては、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
当社の資金需要は、主として人件費、「sinops」の新製品開発にかかる研究開発費、知的財産の取得に係る費用及び運転資金であります。運転資金は原則として営業活動によるキャッシュ・フローによって賄われておりますが、状況に応じて直接金融並びに間接金融を利用していく方針であります。
該当事項はありません。
当社では、日々新しいサービス開発を目的とし、技術部において研究開発活動を行っております。
当事業年度においては、DCM構築を重点に行い、伊藤忠商事社と食品バリューチェーン最適化プラットフォーム「DeCM-PF」(ディーシーエムプラットフォーム)の機能の一つである「特売リードタイム長期化サービス」の提供を開始致しました。
当事業年度における当社が支出した研究開発費の総額は
なお、当社は「sinops事業」の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。