当中間連結会計期間において、当半期報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクの発生又は前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」についての重要な変更はありません。
文中の将来に関する事項は、当中間連結会計期間の末日現在において判断したものであります。
当社グループは、「技術を通じて、人々をもっと大切なことへ」というミッションのもと、「世界中の安全・安心を支える人が頼れるパートナーとなる」というヴィジョンを掲げております。労働人口の減少や高齢化による人手不足の深刻化が進む一方で、インフラ設備の老朽化による設備点検・維持業務の増加や、生活様式の変化に伴うEC化による宅配業務の増加など、労働力の供給不足及び需要と供給の不一致は社会的な課題となっています。これらの社会課題に対し、当社グループはコアである独自開発の制御技術とそれを利用した産業用ドローンの社会実装により、当社グループのミッション・ヴィジョンの実現を通じて解決を目指しております。
当社グループは、ドローン専業メーカーとして、黎明期に求められる概念検証(PoC)を通して「特化するべき用途」を明らかにし、特定した有用な用途について用途特化型機体を開発し、社会実装を実現するために用途特化型機体の量産体制の構築・販売を行っております。
ドローン市場を取り巻く環境は、オペレーションの効率化・無人化に向けたドローンを含むロボティクスの導入や脱炭素化・EV化の手段として、ドローンの有用性が認知されつつあり、世界的に利用が広がっております。加えて、地政学的リスクの高まりや不安定な世界情勢などから、経済安全保障やセキュリティへの関心が強くなっております。
当社は急速に変化する事業環境に対応しつつ、2024年2月に売上・収益力向上を重視した事業全体の改革を進めることを発表いたしました。具体的には、幅広く展開してきた市場、用途及び製品について、収益性の改善を目的とした「選択と集中」を行い、大幅な売上増加を前提としない黒字化を実現できるコスト構造へ転換すべく「リソースの最適化」を実施いたしました。「選択と集中」としては、小型空撮機体の強みを活かせる経済安全保障、脱中国製品が明確である日本の政府調達及び米国の点検・災害対応分野に注力いたします。加えて、物流分野としては、日本郵便株式会社との機体開発及び社会実装に向けた体制構築に注力いたします。リソースの最適化としては、注力事業領域に合わせた研究開発テーマの中止、日本国内の人員最適化及び連動する間接費用の削減を実現し、成長市場となる米国への再投資を進めております。
国内における直近の進捗としては、小型空撮分野にて、「選択と集中」での注力する領域である、防衛省を含めた政府調達への取り組みを進めております。防衛省及び経済産業省は防衛分野における民生先端技術の活用(デュアルユース)を推進しており、当社は2025年4月に、経済産業省を訪問したルッテNATO事務総長一行に日本のデュアルユース・スタートアップ企業として小型空撮ドローン「SOTEN」の紹介を行ったことで、防衛分野での注目を集めました。昨年度及び今年度において防衛装備庁から「SOTEN」を受注するなど、政府調達における受注実績を着実に積んでおり、今後も顧客からのフィードバックなどをもとに製品の機能改善を進め、さらなる需要創出を図ってまいります。また、官公庁等の主要顧客に加え、地方自治体におけるドローン活用の促進による需要拡大を見込み、取り組みを進めております。2025年3月に茨城県境町と包括連携協定を締結し、防犯を目的としたドローンによる夜間見守りの実証実験を実施し事業化を進めているほか、ドローンを用いた下水道点検業務の実施等を予定しております。同町との包括連携協定は、他自治体への横展開も見据えた取り組みであり、地方自治体における人手不足等の社会課題解決にドローンを活用する提案や実証実験等の取り組みを進めてまいります。その他、地方自治体に向けた取り組みとして、2024年下期より全国の複数の自治体と災害時等における支援活動等に関する協定の締結を積極的に進めており、地方自治体との連携強化に取り組んでおります。
物流分野においては、日本郵便株式会社と共同で開発を進めていた長距離飛行マルチユースドローン「PF4」の製品化に取り組み、2025年10月より量産を開始することを決定いたしました。物流用途に適した高い飛行性能とユーザー自身でペイロード交換が可能な取り付け機構を備える「PF4」は、物流分野以外にも広域の測量等別領域の顧客獲得も視野に入れて販促を行ってまいります。「PF4」はこれまでの開発期間で複数の実証実験や災害支援活動等に用いられており、今期においては、2025年6月にモンゴルでの郵便物のドローン配送試験に採用されております。機体の共同開発を行った日本郵便株式会社及び日本郵政キャピタル株式会社とは、2021年6月に資本業務提携を行っており、今後もドローン物流の社会実装の推進とドローン市場の拡大に向けて連携を進めてまいります。
海外ドローン市場においては、日本以上に経済安全保障への関心が高く、昨今の世界情勢の状況により転換期を迎えております。特に当社グループが展開を進めている米国ではNational Defense Authorization Actにより、ロシア製や中国製のドローンの政府調達が禁止されており、加えて、中国製ドローンメーカーのDJI社は、2022年10月より米国国防総省の「中国軍事関連企業」に指定されるなど、経済安全保障を強く意識した施策が行われております。当社グループはセキュリティが担保された国産ドローンを有しているのみならず、企業向け対応及び用途特化型をキーワードとしたポジショニング形成が可能であり、海外におけるセキュアなドローンへの需要にも適応することができる可能性が高く、当社製品は海外市場においても十分に競争力を持つ製品であると認識しております。
米国市場では官庁・社会インフラ関連企業にて利用されている中国製ドローンからのスイッチングを目指し、カリフォルニア州に当社子会社ACSL, Inc.を2023年1月に設立し、米国大手ドローンソフトウェア開発企業であるAuterion社や中国ドローンメーカーDJI社にて北米の企業向けドローン市場において大きな成果を発揮してきた、シンシア・ホァン(Cynthia Huang)がCEOを担っております。また、グローバルCTO兼ACSL, Inc.の取締役であるクリス・ラービ(Chris Raabe)が米国に駐在し、米国市場に向けた技術開発をリードしております。米国市場において、当社製品の販売、サポート、修理及びサービス支援を行うディストリビュータとして、Almo Corporation(DBA Exertis Almo)社をはじめとした合計25社以上と販売代理店契約を締結しており、これらディストリビュータを通じて、全米で販売を展開しております。当社は2023年11月に米国市場向けのSOTENの販売輸出許可を取得し、同年12月より販売を開始しており、2024年10月には、Almo Corporation社より500台の受注を獲得しております。この受注のうち一部は同年12月に納品を完了し、残数は順次出荷を予定しております。今期においては、2025年4月に米国最大規模の産業用ドローン専門の販売代理店であるDrone Nerds Inc.と販売店契約を締結し販売網の強化を行ったほか、2025年5月にテキサス州ヒューストンで開催された展示会「XPONENTIAL 2025」に出展し、「SOTEN」や新製品のペイロードカメラ等の販促活動を行いました。今後も米国市場のニーズに理解を深め、さらなる受注拡大に向けた取り組みを行ってまいります。
当社グループの研究開発投資は、短期的な利益を追うのではなく、海外展開も含め、中長期的な成長を実現するために戦略的かつ積極的に研究開発費を投下する方針を維持し、各種用途特化型機体の機体開発、量産体制の構築を進めるとともに、プラットフォーム技術の強化を行ってきました。なお、当社は、経済産業省令和4年度第2次補正予算「中小企業イノベーション創出推進事業」(SBIR事業)に係る事業者に採択され、「行政等ニーズに応える小型空撮ドローンの性能向上と社会実装」事業として新たな小型空撮ドローンの開発を進めており、当中間連結会計期間において、当該事業に係る研究開発費が238,737千円計上されております。
以上の結果、当中間連結会計期間の連結業績は、売上高975,874千円(前中間連結会計期間比52.4%減)、営業損失754,200千円(前中間連結会計期間は営業損失1,026,321千円)、経常損失45,201千円(前中間連結会計期間は経常損失963,279千円)、親会社株主に帰属する中間純損失271,816千円(前中間連結会計期間は親会社株主に帰属する中間純損失1,010,358千円)となりました。
当社はドローン関連事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。そのため、当社の販売実績を主な内訳別に区分した売上高の状況は次のとおりであります。
(注) 1.サービス提供の各段階に関して、実証実験として、顧客のドローン導入のニーズを踏まえて、課題解決のために当社のテスト機体を用いた概念検証(PoC)に係るサービスを提供しております。概念検証(PoC)を経て、顧客先の既存システムへの組み込みも含めた特注システム全体の設計・開発を行っております。
2.プラットフォーム機体販売においては、顧客先における試用(パイロット)もしくは商用ベースでの導入として、当社のプラットフォーム機体をベースにした機体の生産・供給を行っております。
3.用途特化型機体販売においては、特定の領域において量産が見込める機体について、量産機体の開発・生産・販売を行っております。
4.その他においては、機体の保守手数料や消耗品の販売に加えて、一般的に国家プロジェクトにおいて、受託先が収受する補助金等のうち、新規の研究開発を行わず、既存の当社の技術を用いて委託された実験を行うことが主目的のプロジェクトについての売上高を含んでおります。前中間連結会計期間においては、インド市場におけるArcV Holdings Private Ltd.への地上走行ロボット販売に係る売上高を含んでおります。
(資産)
当中間連結会計期間末における流動資産は3,868,894千円となり、前連結会計年度末に比べ8,888千円減少いたしました。これは主に現金及び預金が572,905千円増加した一方で、売掛金が366,774千円減少、商品及び製品が375,285千円減少したことによるものであります。固定資産は602,086千円となり、前連結会計年度末に比べ83,390千円減少いたしました。これは主にソフトウエアが41,376千円減少したことによるものであります。
この結果、総資産は4,470,980千円となり、前連結会計年度末に比べ92,279千円減少いたしました。
(負債)
当中間連結会計期間末における流動負債は811,175千円となり、前連結会計年度末に比べ1,318,516千円減少いたしました。これは主に短期借入金が904,341千円減少、未払金が401,769千円減少したことによるものであります。固定負債は3,113,687千円となり、前連結会計年度末に比べ874,725千円増加いたしました。これは転換社債型新株予約権付社債が874,725千円増加したことによるものであります。
この結果、負債は3,924,863千円となり、前連結会計年度末に比べ443,791千円減少いたしました。
(純資産)
当中間連結会計期間末における純資産合計は546,117千円となり、前連結会計年度末に比べ351,512千円増加いたしました。これは主に減資及び欠損填補、転換社債型新株予約権付社債の転換等により資本金が172,656千円増加、利益剰余金が1,432,251千円増加した一方で、資本剰余金が1,251,449千円減少したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は9.8%(前連結会計年度末は2.0%)となりました。
当中間連結会計期間における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ572,905千円増加し、1,816,485千円となりました。当中間連結会計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
営業活動の結果得られた資金は、57,636千円となりました。これは主に、税金等調整前中間純損失270,772千円を計上した一方で、売上債権の増減額による収入366,773千円、未払金の増減額による支出460,640千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は6,296千円となりました。これは有形固定資産の取得による支出6,424千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は522,977千円となりました。これは主に、短期借入金の増減額による支出904,341千円の一方で、転換社債型新株予約権付社債の発行による収入1,429,062千円によるものであります。
当中間連結会計期間において、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定について重要な変更はありません。
当中間連結会計期間において、当社グループが定めている経営方針・経営戦略等について重要な変更はありません。
当中間連結会計期間において、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更はありません。
当中間連結会計期間における研究開発活動の金額は、386,589千円であります。
なお、当中間連結会計期間において、当社グループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。
当中間連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。