文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは「イノベーションをおこして、あらゆる人の可能性を最大化する」をミッションとして掲げております。
そして、イノベーションをおこすことによってすべての人が新たな可能性をみいだし、社会が持続的に成長し続ける未来の実現を目指してまいります。
(2) 中長期的な経営戦略等
当社グループの事業ドメインを、従来の事業ドメインである「価値ある道具(ツール)の提供」から「顧客に合わせた付加価値を提供」へ、事業ドメインを拡張し事業成長を目指してまいります。
この事業ドメインには、システムインテグレーションを行う大手SIer(注1)や業種特化したSIer、そしてコンサルティング会社など多くのプレイヤーが存在します。
これらのプレイヤーと同じ価値をお客様へ提供しても当社グループの存在価値が薄れるという考えより、国内では以下の差別化戦略を取っております。
・先進テクノロジ提供戦略
海外で評価の高い先進テクノロジを厳選し国内向けに提供します。ここで先進テクノロジとはAI等のテクノロジ自体だけでなく製品も含みます。
目利き力により筋の良い先進テクノロジを素早く発見し、他プレイヤーより先に顧客へ提案し差別化します。
ある程度の時間が経過すると、他プレイヤーも同じテクノロジを扱いはじめますが、当社グループは技術者集団から生まれたため、その先進性や本質を理解しています。よって顧客のビジネス課題を解決するために効果的に先進テクノロジを利用できます。また、日本顧客向けに追加機能の開発や利用しやすくサービス化した形でお客様へ提供し、他プレイヤーと差別化します。
・段階的拡大(ランド・アンド・エクスパンド)の販売戦略、顧客中心の営業戦略
当社の顧客は大企業が中心となっておりますが、当社の販売戦略として、最初は組織の一部に導入し、当該部署での成功体験を足掛かりとして、他部署への展開や全社的な標準システムとして顧客内での利用拡大を進めます。これを段階的拡大(ランド・アンド・エクスパンド)戦略と呼びます。大企業においては、ひとたび業務システムを導入すると、当該システム上で数千規模のプロジェクトが管理されることとなるため、簡単にはリプレイスすることができず、継続率が高いという傾向があります。結果的に顧客とは長いお付き合いとなり顧客を中心に考えた営業戦略を取ることができます。
今後はコンサルティングサービスを提供することで、より多くの大企業向けに標準ツールとして採用されるよう取り組みを進めてまいります。
・顧客専門チーム戦略
新しいシステム導入に際し、業界の独自の文化や商習慣など顧客自身では対処が難しい課題があります。当社は顧客ごとにプロジェクトチームを組んで、お客様自身では対処が難しい課題に対し、一緒に考え、解決策を企画し、実際に解決していくところまで一緒に行います。
実際に解決していくことを伴走支援やBPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)と呼びます。当社の伴走支援チームやBPOチームは、顧客の一員として顧客のビジネス課題の解決に顧客と一緒に取り組みます。
当社グループでは海外展開も実施しており、日本を除いた全ての国を市場としたグローバル市場に対し以下の戦略を取っております。
・Atlassianエコシステムを活用できる市場から攻める
グローバル市場では国内市場とは異なる営業戦略や商品戦略が必要です。つまり対象とする市場に対する知識、ノウハウが無いと全く戦えません。
幸いなことに、当社グループはグローバル市場においてAtlassian社のパートナーランキング上位をキープしており、Atlassian社に関連する市場(以下、Atlassianエコシステムと記載する)に詳しく、Atlassianエコシステムではリックソフトという名前が良く知られています。この有利な状況を利用し、Atlassianエコシステムから自社開発したプロダクトを海外展開する戦略をとってまいります。
(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
顧客への提案に係るライセンス販売、コンサルティング・環境構築・カスタマイズ・運用支援等のSI、システムの稼働環境を提供するマネージドサービス、自社開発したプロダクトから構成される「売上高」を重要な指標と位置付けております。
そして、事業拡大を推進し、継続的な成長及び企業価値の向上を実現していく上で利益を確保することは重要であり、「顧客数」「認定技術獲得数」及び「EBITDA」を重要な指標と考えております。
(4) 経営環境
昨今のデジタルトランスフォーメーション(注2)の流れの中で、製造業、金融・保険業、そして卸売・小売業など多くの業種にAI(注3)、IoT(注4)、AR/VR(注5)という新技術の波が押し寄せております。この流れの中で、このような新技術のソフトウェア開発においては、従来のウォーターフォール型開発(ソフトウェア開発にあたり、要件定義、設計、実装、テスト、リリースまでのサイクルを一回で行う開発手法。サイクルは一年以上に及ぶケースが多い。)から、アジャイル型開発(要件定義、設計、実装、テストのサイクルを短く設定し、市場環境の変化を受けて要件定義を柔軟に変更する前提で順次開発する手法。サイクルは通常2週間程度。)へと、ソフトウェア開発手法のトレンドが変化しつつあります。ウォーターフォール型開発においては、開発開始から開発完了までの作業工程を最初に確定できるため、要件定義が変わらない前提においては効率的な開発が可能となりますが、新技術の開発という領域においては、ライバル製品の出現等、市場環境の変化のスピードが速いため、ウォーターフォール型開発では開発したソフトウェアの競争力が損なわれる恐れがあります。これに対応する開発手法がアジャイル開発であり、敢えてサイクルを短く設定することによって市場環境に応じた臨機応変な開発を可能とするものであります。また、短いサイクルで臨機応変に開発を進めていくアジャイル開発が更に発展した概念として、開発チームだけではなく運用チームまで巻き込んで組織的にPDCAサイクルを回していくDevOpsという概念も近年広がっております。
当社グループが主に取り扱うAtlassian製品は、先進テクノロジの代表格となるもので、アジャイル開発やDevOpsを支える管理システムであります。
また、日本国内における先進テクノロジ導入は海外に対して遅れており、調査会社の調査によると、日本におけるアジャイル開発の浸透は、海外と比較して5年程度のタイムラグがあるものと推察され、アジャイル開発が国内に浸透していく流れの中で、国内におけるAtlassian社のソフトウェア導入は今後も進展していくものと認識しております。
(5) 事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループは継続的な成長を目指すため、対処すべき課題を以下のとおり設け、その実現のための施策を実施してまいります。
①事業基盤の強化、優秀人材の確保
会社の全体的な収益拡大を行うために、Atlassian製品及びWorkato製品やMiro製品などAtlassian製品以外の先進テクノロジの活用を促すことのできる優秀な営業部員に加え、デジタルトランスフォーメーション(DX)や人工知能(AI)といった先進テクノロジを積極的に取り入れ、これまでにない新たな顧客体験と価値創造を実現していくためにはコンサルティングや自社開発したプロダクトの製品ラインナップを拡充も含めた開発を担うことのできる高い技術力を伴う人材の確保が急務となっております。
当社グループは2023年8月にミッション・ビジョン・バリューを刷新いたしました。新しいミッションに紐づいた新人事制度は2024年3月より運用を開始しており、会社の成長とともに従業員の成長が実現できることを確信しております。また、従業員の多様な働き方に対応するためリモートワーク、フレックスタイム制や時短勤務制度といった制度を導入済みであり、個々人の成長とワークライフバランスを同時に実現をさせることにより、引き続き優秀な人材の獲得に努めてまいります。また、事業の安定化とお客様からの信頼度を高めることを兼ね、認定資格(「Atlassian Accreditations 」をはじめAWS等)の取得については、さらなる認定技術獲得数のアップに努めます。その他、要員規模の拡大に伴い法令対応してきた、産業医・衛生委員会の設置、メンタルヘルス対策をはじめ、適切な対策を施し従業員が安心して働ける健康的・衛生的な職場環境を築いてまいります。
②海外での売上拡大に向けてのマーケティング強化とブランド力の向上
自社開発したプロダクトに関しては、日本のみならず海外への売上拡大も見据えた製品開発(各種言語に対応等)を行っています。海外のライバル会社に負けない製品を開発するためクラウド技術とUI/UX力を強化させてまいります。海外子会社は当社の製品を「価値あるツール」として世界に広めるというブランド力の向上も担っております。
③収益基盤の多様化
当社グループは、Atlassian関連事業に特化し、Atlassianの担うプロジェクト管理ツール・コミュニケーションツール市場にて拡大するビジネススタイルを着実に実行し、今日の成長につなげてまいりました。同市場への依存度は当面の間高水準で推移していくと予測されます。従って、Atlassianの担う同市場に変化が生じた場合には、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。中長期的にはAtlassian製品以外(Workato製品、Miro製品等)の最先端のツールや新たな顧客体験の提供、価値創造を提案できるコンサルティング等、Atlassian製品に直接依存しない売上を高めていく必要があると考えております。あわせてグローバル市場で成長を続ける自社開発プロダクトについても、引き続き力を入れていきます。
④経営管理体制の強化
当社グループは、市場動向、競合企業、顧客ニーズ等の変化に対して素早くかつ柔軟な対応が可能な組織運営をするため、経営管理体制のさらなる強化を図ってまいります。また、企業価値を継続的に向上させるため、内部統制の構築、セキュリティ対策の強化、企業コンプライアンスなど全役員・従業員が高いレベルの意識を持って取組めるように努めてまいります。
注1.SIer
システムインテグレーターの略で、企業のシステム開発をコンサルティングから運用・保守まで一貫して請け負う企業を指します。主に顧客の経営課題をITで解決するサービスを提供します。
注2.デジタルトランスフォーメーション
2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱した概念で、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」。IoT、AI(人工知能)、ビッグデータ・アナリティクス(解析)など、デジタル技術を活用することで、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通じて価値を創出し、競争上の優位性を確立すること。
注3.AI
人工知能(artificial intelligence)。人工的にコンピューター上などで人間と同様の知能を実現させようという試み、あるいはそのための一連の基礎技術を指す。
注4.IoT
モノのインターネット(Internet of Things)。センサーやデバイスといった「モノ」がインターネットを通じてクラウドやサーバーに接続され、情報交換することにより相互に制御する仕組み。
注5.AR/VR
ARとは「拡張現実感」「Augmented Reality(オーグメンテッドリアリティ)」のことで、周囲を取り巻く現実環境に、情報を付加・削除・強調・減衰させることによって、人から見た現実世界を拡張するものと定義されている。
VRとは「Virtual Reality(バーチャルリアリティ)」のことで、「表面上は現実ではないけれど、その本質的な部分では現実」という意味で、実体験に限りなく近い体験を得ることができる。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
当社グループは、「イノベーションをおこして、あらゆる人の可能性を最大化する」ことをミッションとして掲げております。そして、イノベーションをおこすことによってすべての人が新たな可能性をみいだし、社会が持続的に成長し続ける未来の実現を目指してまいります。このため、サステナビリティを巡る課題への対応は経営の重要課題と認識しており、ミッションの実現に向けて全社を挙げて推進しています。今後、サステナビリティを巡る課題に適切に対応していくための体制整備を行い、基本方針の策定を検討してまいります。
当社グループでは、事業の持続的成長ならびにミッション実現に向けて人材の育成と労働環境の整備に努めております。
当社グループは2023年8月にミッション・ビジョン・バリューを刷新いたしました。
新しいミッションに紐づいた新人事制度は2024年3月より運用を開始しており、会社の成長とともに従業員の成長が実現できることを目指し刷新いたしました。また、従業員の多様な働き方に対応するためリモートワーク、フレックスタイム制や時短勤務制度といった制度を導入済みであり、個々人の成長とワークライフバランスを同時に実現させることにより、引き続き優秀な人材の獲得に努めてまいります。
当社グループでは、「リスク管理規程」等に基づき、発生する可能性のあるリスクの未然防止に関して管理体制を構築・維持し、発生リスクへの対応・抑止に係る機能を整備し、会社の事業計画及び業務運営の円滑な進展に資することに努めております。会社の日常のリスク管理体制については、代表取締役が指揮し、サステナビリティ関連のリスクを含めて定期的に経営会議にて検討し、必要に応じて取締役会メンバーによる議論の場を設けております。取締役会は連帯して当該管理体制の監督にあたることとなっております。
当社は、性別や年齢、国籍に関わらず、能力や適性に応じて、管理職への登用も含め、適材適所で配置していく方針です。人材の多様性の確保を含む人材の育成に関しては、性別や国籍等に紐づく具体的な指標等は定めておりませんが、従業員が最大限の力を発揮し活躍できるよう社内環境の整備に努めてまいります。
当社グループの事業において、リスクの要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しております。
なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内包しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。
(1) 事業環境に関するリスク
① IT投資動向の変化について
当社グループのビジネスは、企業を主要顧客としております。これまで、顧客企業のIT投資意欲の上昇を背景として、事業を拡大してまいりました。しかし、今後、国内外の経済情勢や景気動向等の理由により、顧客企業のIT投資意欲が減退するような場合には、新規顧客の開拓の低迷や既存顧客からの受注の減少等から、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、事業・顧客・地域(国内・海外も含め)の分散を図り、引き続き価値のある開発、改良を行い、お客様にとって付加価値の高いサービスを提供し続けることでリスクの低減に努めてまいります。
② 競合について
当社グループは、大手・中小を問わず競合企業が存在しております。また、海外には類似製品が存在しております。そのため、競合他社の技術力やサービスの向上、海外の類似製品の日本国内への市場参入により競争が激化するような場合には、当社グループが提案している営業案件の失注や製品販売及びサービス提供の契約の減少等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、引き続き顧客のニーズを汲んだ製品・サービスの提供を進める方針であります。ソフトウェア業界は、技術革新のスピードや顧客ニーズの変化が激しく、新しいサービスが逐次生み出されている中、当社も技術革新及び顧客ニーズの変化に対応すべく、積極的に最新情報の蓄積、分析及び獲得に取り組んでおります。
③ 「Atlassian製品」への依存について
当社グループのツールソリューション事業の大部分は、「Atlassian製品」を中心とした製品販売及びサービス提供であります。従いまして、当社グループの成長は「Atlassian製品」の売上に、大きく依存しております。当連結会計年度における売上高に占めるAtlassianライセンスの売上は78.4%となっております。
こうした現状を踏まえ、「Atlassian製品」以外のツールの提供(Workato、Miro等)といった新たな事業展開に努めておりますが、競合製品の登場、製品・サービスの陳腐化などによる競争力の低下により「Atlassian製品」の売上規模が縮小するような場合や、Atlassian社の経営戦略の変更、同社とのパートナー契約の解除事由に抵触し契約解除された場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。(契約内容は、[経営上の重要な契約等]を参照ください。)
当該リスクに対しては、引き続きAtlassian製品以外のツール提供(Workato、Miro等)やサービス提供の比率を高めてまいります。
④ 技術革新及び顧客ニーズの変化への対応について
当社グループが属するIT業界においては新技術の開発及びそれに基づく新商品の導入が頻繁に行われており、顧客ニーズの変化を含め、非常に変化の激しい業界となっております。そのため当社グループは、新技術や新製品を常に注視し、顧客ニーズの深い理解とその変化に対応するよう取り組んでおりますが、何らかの理由でこれらの対応が遅れた場合、当社グループが提供するサービスの競争力が低下する可能性があります。また、これらの対応のため予定していない投資が必要となった場合、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
当該リスクに対しては、最新の技術動向や環境変化を常に把握できる体制を構築するだけではなく、優秀な人材の確保及び教育等により技術革新や顧客ニーズの変化に迅速に対応できるよう努めてまいります。
⑤ 海外での事業展開について
当社グループは、グローバルでの事業展開が重要であると考えており、米国に子会社を設立し、自社ソフトの企画、開発、販売、サポートといった各種活動を行っております。米国子会社では適切な組織規模や人員配置等により、事業の拡大を図る方針でありますが、当社グループの想定どおりに事業展開が進まなかった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、当該事業の進捗や課題の状況を定期的に把握・管理することでリスクの低減に努めております。
⑥ M&A、資本業務提携について
当社グループでは、自社の成長をより加速させるために、M&A、資本業務提携等を実施してまいります。M&A、資本業務提携等について、対象企業の財務内容や契約関係等についての詳細な事前審査を行い、十分にリスクを検討した上で実施しておりますが、時期や発生可能性は不明であるものの、対象企業における偶発債務の発生や未認識債務の判明など事前の調査によっても把握できなかった問題が生じた場合や、事業展開が計画どおりに進まない場合、投下資本の回収が困難になる可能性があります。
当該リスクに対しては、投資前のデューデリジェンスの徹底及び事業計画の合理性の十分な検討を行うことで対応してまいります。
(2) 事業体制に関するリスク
① 人材の確保・育成について、並びに技術認定資格者確保について
当社グループは、今後も事業拡大を進めていくにあたり、エンジニアを中心に営業を含めた優秀な人材を確保するとともに、人材の育成が重要な課題であると認識しております。またAtlassianをはじめ、取扱う各ツールにおけるパートナーランク維持のため、認定技術(専門試験の資格取得)の獲得についても重要な指標と捉えております。これらに関して、当社グループは採用活動及び研修体制の充実等により人材流出の防止、資格保有者数の確保に努めております。しかしながら、必要とする人材の安定的な確保が出来なかった場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、積極的な採用活動を継続するほか、働き方改革の推進に継続的に取り組み、従業員の定着率向上に努めております。
② 外注先の確保について
当社グループのツールソリューション事業において、必要に応じて、システムの設計・構築、保守・運用等について協力会社に外注しております。現状では、有力な協力会社と長期的かつ安定的な取引関係を保っておりますが、協力会社において技術力及び技術者数が確保できない場合及び外注コストが高騰した場合には、サービスの円滑な提供及び積極的な受注活動が阻害され、当社グループの財務状況及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 情報管理体制について
当社グループは、業務に関連して多数の顧客企業の情報資産を取り扱っております。情報セキュリティ基本方針を策定し、役職員及び協力会社に対して情報セキュリティに関する教育研修を実施しているほか、ISO27001、ISO27017の認証を取得するなど、情報管理体制の強化に努めております。しかしながら、何らかの理由により重要な情報資産が外部に漏洩するような場合には、当社グループの社会的信用の失墜、損害賠償責任の発生等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、外部での事例等を取込んだ内容により従業員(協力会社要員含む)教育を強化するとともに、担当からの発信機会と従業員へ情報管理の重要性確認の機会を増やし、未然防止策を実施しております。
④ 特定人物への依存について
当社グループにおいて、創業者である代表取締役大貫浩は、当社グループの経営方針及び事業戦略を決定するとともに、ビジネスモデルの構築から事業化に至るまで重要な役割を果たしております。また、今後も当社グループの業務全般においては、同氏の経営手腕に依存する部分が大きいと考えられます。当社グループでは、取締役会等の重要な会議において役員及び部長の情報共有や経営組織の強化等により、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により同氏が業務執行を継続することが困難となった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) その他のリスク
① 経営計画と経営成績との乖離について
当社グループは、受注したライセンス金額やプロジェクトの規模や内容が予想と大きく乖離し、又は納入時期が変更等となって売上・収益の計上が翌四半期あるいは翌連結会計年度に期ずれする場合があります。売上・収益の計上時期の変更や期ずれした金額の大きさによっては各四半期あるいは連結会計年度において当社グループの経営計画と経営成績に乖離が生じる可能性があります。
② システムトラブルについて
当社グループの事業は、インターネットを経由して行われております。従いまして、インターネットに接続するための通信ネットワークに依存しております。アクセス数の急激な増加に伴う負荷の増加や外部からのサイバー攻撃、自然災害及び事故などによる予期しえないトラブルが発生し、大規模なシステム障害が起こるような場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、安定的なサービス提供のため、サーバー設備やセキュリティの強化等のシステム管理体制の整備を行っております。
③ 自然災害について
地震、火災等の自然災害や、戦争、テロ、感染症の流行(パンデミック)等により、当社グループにおいて人的被害又は物的被害が生じた場合、又は、外部通信インフラ、コンピュータネットワークに障害が生じた場合等の事由によって当社グループの業務の遂行に支障が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、上述のような災害等が発生した場合の事業への影響を最小限に留めるため、事業継続計画(BCP)を策定しております。有事の際の影響を最小限に留めるよう努めております。
④ 配当政策について
当社グループは、現時点では成長過程にあるため、事業拡大のための内部留保の充実を図ることが重要であると考えており、会社設立以来配当を行っておりません。しかしながら、株主に対する利益還元も経営の重要課題であると認識しております。今後の配当政策の基本方針につきましては、収益力の強化や事業基盤の整備を実施しつつ、当社を取り巻く事業環境を勘案し、内部留保とのバランスを取りながら検討していく方針であります。内部留保につきましては、M&Aを含め競争力の維持・強化による将来の収益力向上を図るための資金として、有効に活用する方針であります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状況、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、 「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、3月のマイナス金利終了後、物価高騰や自動車業界の大幅減産の影響を受け、一時的に低迷したものの、7月には日経平均終値が史上最高値を更新しました。原材料費の上昇や人手不足による投資の停滞が懸念されたものの、政府の経済対策や賃上げの浸透が徐々に効果を上げ、経済は緩やかな回復基調を維持し、2025年に向けた成長の土台が築かれた年となりました。
当社グループが属する情報サービス分野においては、人口減少や少子高齢化に伴い人手不足が恒常化する中、経済社会活動を維持・発展させていくため、単なる労働力の補完にとどまらず、革新的なサービスの創出を目的としたデジタル技術の活用が進んでいます。こうした流れのもと、生産性向上や持続可能な技術への投資を軸に、「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」の推進が加速。IoT、AI、クラウド、5G、RPA(ロボットによる業務自動化)、FinTech、エッジコンピューティングなどの先端技術を活用したIT投資の需要は引き続き堅調に推移しました。
このような状況の中で当社グループは、顧客ニーズや企業意識の変化による、問題や不安の解決に対して製品やサービスの可能性を新たな形にし、発信してまいりました。これらの利用状況は、順調に推移しております。
<製品・サービスについて>
・アトラシアン社が提供するSaaS「Atlassian Cloud(アトラシアン・クラウド)」のEnterprise(エンタープライズ)プラン利用企業限定の支援サービスを開始(2024年4月)
・アトラシアン社が提供する「Confluence」「Jira」などを利用する企業に向けた運用伴走支援サービス「サポートプラス」のプランメニューを刷新(2024年5月)
・クラウドマネージドサービス「RickCloud」のサービス内容拡充(2024年7月)
・ミロ・ジャパン合同会社と販売代理店契約を締結、同時に同社の最上位パートナーのPremier Partnerに認定(2025年2月)
<業務提携について>
・グロースエクスパートナーズ株式会社と、アトラシアン製品の販売・サービスの提供に関する業務提携に向けて基本合意(2025年3月)
<市場からの評価について>
・アトラシアン社が最も優れたパートナーを表彰する「Atlassian Partner of the Year Awards 2023」で、「クラウド移行部門」を受賞(2024年5月)
・『High-Growth Companies Asia-Pacific 2025』アジア太平洋地域の急成長企業500社に7年連続で選出(2025年3月)
また、社内においてもDXの推進、働き方改革の実施により、さらなる生産性の向上、コストダウン等を目指し、情勢に順応した社内改革を推し進めております。今後も全役職員が一丸となり、既存顧客の深耕と新規顧客の獲得による受注拡大に加えDXの推進を図ってまいります。
以上の結果、当連結会計年度の連結業績は、売上高9,043,848千円(前連結会計年度比20.7%増)、営業利益458,671千円(同31.1%減)、経常利益461,809千円(同31.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は355,518千円(同32.2%増)となりました。
なお、当社グループはツールソリューション事業の単一セグメントであるため、セグメント情報の記載を省略しております。
② 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ712,428千円増加し、6,678,254千円(前連結会計年度比11.9%増)となりました。主な要因は、現金及び預金が139,025千円、売掛金及び契約資産が231,862千円、前払費用が175,301千円増加したことによります。
(負債)
当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べ451,274千円増加し、3,649,236千円(前連結会計年度比14.1%増)となりました。主な要因は、買掛金が399,061千円、契約負債が68,280千円増加したことによります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べ261,153千円増加し、3,029,018千円(前連結会計年度比9.4%増)となりました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が355,518千円増加したことによります。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前期末と比べ139,025千円増加し3,296,981千円(前連結会計年度比4.4%増)となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動の結果、収入は377,301千円(前連結会計年度比276.3%増)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益461,809千円、契約負債の増加額68,280千円、及び仕入債務の増加額399,104千円があった一方で、売上債権の増加額232,175千円、前払費用の増加額175,309千円、及び法人税等の支払額127,112千円があったこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動の結果、支出は140,071千円(前連結会計年度比283.7%増)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出79,531千円、無形固定資産の取得による支出15,481千円、及び敷金及び保証金の差入による支出45,107千円があったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動の結果、支出は91,296千円(前連結会計年度は7,408千円の獲得)となりました。これは主に、自己株式の取得による支出が91,296千円があったこと等によるものであります。
当社グループで行う事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
当連結会計年度における受注実績をサービスごとに示すと、以下のとおりであります。
当連結会計年度における販売実績をサービスごとに示すと、以下のとおりであります。
(注) 1.最近2連結会計年度において、総販売実績の10%以上を占める販売顧客に該当するものはありません。
2.ライセンス&SIサービスに含まれるライセンス売上は、7,405,441千円(前年同期比122.1%)であり、うちオンプレミス型のライセンス売上は、3,447,211千円であります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当社グループの財政状況、経営成績及びキャッシュ・フローの状況分析は、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に当たっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、過去の実績などを勘案して合理的な見積りを行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものはありません。
(売上高)
売上高は、前連結会計年度に比べ1,552,382千円増加し、9,043,848千円(前連結会計年度比20.7%増)となりました。これは主に、ライセンス売上の案件の大型化に加えストック売上が順調に積み上がってきたことによるものであります。
(売上原価)
売上原価は、前連結会計年度に比べ1,420,446千円増加し、6,669,917千円(前連結会計年度比27.1%増)となりました。これは主に、売上増加に伴うライセンス仕入の増加によるものであります。この結果、売上総利益は2,373,930千円(前連結会計年度比5.9%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ338,885千円増加し、1,915,258千円(前連結会計年度比21.5%増)となりました。これは主に、給与手当及び支払手数料の増加によるものであります。この結果、営業利益は458,671千円(前連結会計年度比31.1%減)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
営業外収益は主に為替差益の減少により、前連結会計年度に比べ3,999千円減少し、8,139千円(前連結会計年度比32.9%減)、営業外費用は主に為替差損の増加により、前連結会計年度に比べ3,930千円増加し、5,001千円(前連結会計年度比366.9%増)となりました。この結果、経常利益は461,809千円(前連結会計年度比31.8%減)となりました。
(特別損益、親会社株主に帰属する当期純利益)
特別損益については、該当事項はありません。法人税、住民税及び事業税134,816千円の計上により、親会社株主に帰属する当期純利益は355,518千円(前連結会計年度比32.2%増)となりました。
財政状態の状況の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」をご参照ください。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について
そのため、当社グループは常に業界動向に留意しつつ、優秀な人材を確保し市場のニーズに合ったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行ってまいります。
当社グループは、Atlassianアプリケーション用のアドオンソフトを中心に自社開発ソフトウェアの研究開発に取り組んでおります。
当社グループの研究開発活動として、主に自社開発ソフトウェア(以下、本ソフトウェア)の開発及びその改良を行っております。本ソフトウェアは国内向けとグローバル向けの2種類存在します。国内向け本ソフトウェアは、Atlassian製品を利用する日本顧客が抱える日本独自の課題を解決する目的で開発しており、競合Atlassianパートナーとの差別化を図っております。グローバル向け本ソフトウェアは、当初国内ユーザー向けに開発されましたが、ユーザーインターフェースを英語に対応し、英語圏の海外ユーザーを増やしてきました。それにより現在では、国内ユーザーより海外ユーザーが多い状況となっています。このユーザー層の変化に追従するため、海外ユーザーから強く要望されるUI(ユーザーインターフェース)/UX(ユーザーエクスペリエンス)の改良開発、日本語と英語以外の言語対応を行い、より多くの海外ユーザーに使ってもらえるよう対応を図っております。
当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は
なお、当社グループはツールソリューション事業の単一セグメントであるため、セグメント情報の記載を省略しております。