第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

 当社グループは、「生活者と企業をより密接に結ぶコミュニケーションの創造に努め、より豊かな社会生活の一助となることで、社会貢献を実現します。」を経営理念として掲げ、クライアントのパートナーとして、価値のあるサービスを提供し続けるとともに、社会、株主、顧客、従業員等の全てのステークホルダーに対する責任を果たしていくために、継続的な企業価値の増大を図ることを目標としております。

 当社グループでは、TV等のマスコミュニケーション4媒体以外の全ての「コミュニケーション領域」を対象にプロモーション活動を行っていくとともに、実際の販売現場における販売までを行うという独自のビジネスを行っております。これまでの実績に加え、時代の変化を捉えつつ、クライアントへ最適なプロモーションを提案できるような人材の採用・育成に努め、様々なプロモーション実績を重ねていくことにより、「総合プロモーション企業」として、総合的なプロモーションの提供に努めてまいります。

 

(2) 経営戦略等

 当社グループは、企画力向上や最新テクノロジーの情報収集によって、当社グループが実施するイベントプロモーションの効用をより高めていくだけでなく、デジタル、PR、キャンペーン等の周辺ソリューションを拡大、深化させることで、相乗効果による経験価値の最大化を図ることを経営戦略としております。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、営業基盤の指標として、売上高とそれに直接紐づく売上総利益を、重要な経営指標として位置付けており、継続的な事業拡大と収益力の向上を図っております。

 

(4) 経営環境

 当社グループが主な事業としているイベントプロモーション事業を取り巻く2024年(1~12月)の日本の総広告費は、通年で7兆6,730億円(前年比104.9%)となり、2021年から4年連続で成長し、3年連続で過去最高を更新しました。日本の広告市場は、好調な企業収益や消費意欲の活発化、世界的なイベント、インバウンド需要の高まりなどに支えられ、「インターネット広告費」を中心に「マスコミ四媒体広告費」、「プロモーションメディア広告費」3つ全てのカテゴリーが成長しました。インターネット広告費は、3兆6,517億円(前年比109.6%)となり、前年より3,187億円増加しました。SNS上の縦型動画広告をはじめ、コネクテッドTVなどの動画広告需要が一層高まり、市場全体の拡大に寄与しました。マスコミ四媒体広告費は、2兆3,363億円(前年比100.9%)と3年ぶりに前年超えとなりました。またプロモーションメディア広告費は1兆6,850億円(前年比101.0%)と前年に続き増加しました。特に、人流がコロナ禍前に戻ったこともあり、屋外や交通、POP、イベント・展示・映像ほかといったリアルな場面での成長が目立ちました。(「2024年日本の広告費」株式会社電通調べ)

 このような中、当社グループでは、M&Aの加速によるソリューションの多様化及び人的資本投資の加速を重点施策として展開をしてまいりました。

 当連結会計年度の事業面においては、イベント開催数が前年比11.2%増加する等、当社グループの主力事業であるイベント領域で伸長があったこと、及び新規連結子会社の影響もあり売上高は大きく増加しております。業種別では、情報・通信、食品業界を中心に昨年実績を超過、オーガニックでも前期比で増収を確保しました。また、利益面では、採算性の改善を推し進めた結果、人的資本投資等を拡大しながらも増益となりました。

 なお、当社の事業はソリューションの多様性を活かすと共に、最新かつ最先端のコンテンツをプロモーションに実装できるか、そして、それらがいかに総合的にプランニングされているかが事業の競争優位性に直結するため、M&Aによって当社グループの情報収集力を高め、事業基盤を一気に拡大させることを重要な戦略としております。そのため、ここ1年間で既存ビジネスの周辺領域の会社を3社M&Aするとともに、AIやIP等の最先端分野をはじめ、様々な分野においてCVC設立以降4社に投資を実行してきました。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループが対処すべき主な課題は、以下のとおりであります。

 ①人材の確保及び育成

 当社グループがお客様に対して提供する体験価値は、人でしか創り出せないものであると考えております。よって、当社グループにおいて人的資本は重要な位置づけとなります。

 このため、評価・報酬や人材の採用、育成といった人事制度全般に関して、採用競争力を強化し、従業員の安定的な就業を実現すると共に多様なニーズに対応するための人的資本投資を進めることで業界トップの待遇、働きやすさの実現を目指しております。

 人固有の感性が企業の競争力の源泉の一つとなるとの考えから、職位別、専門別研修はもちろんのこと、従業員の感性を養い、より豊かな想像力を育むために、リベラルアーツに特化した研修や既存の枠組みに囚われない自由な発想やアイデアが生み出される環境を整え、未体験を開拓し、全ての人の経験にできる人材の育成を図ってまいります。

 

②M&Aの推進

 当社グループの事業は、ソリューションの幅を広げつつ、いかに最新かつ最先端のコンテンツをイベントに実装できるか、それらが統合的にプランニングされているかが事業の競争優位性に直結するため、M&Aによって当社グループの情報感度をさらに高め、ソリューションの幅や事業基盤を一気に拡大させることを重要な戦略としております。

 

③販売チャネルの拡大

 当社グループは大手広告会社からの受注を事業基盤としながらも、メーカーやサービス業等のクライアントからも案件を直接受注しておりますが、この直接受注の割合をさらに高めることを目標としております。販売チャネルの多様化は、事業の安定性を高めるだけでなく、業界やポジショニング等において多様なクライアントと協業させていただくことで、当社の提案力、商品力の向上に、より磨きをかけてまいります。

 

④組織体制の更なる強化

 当社グループはクライアントに対してグループ全体として、より高水準のサービスを提供するために、担当者個人の知識や経験によるノウハウや制作スタイルに過度に依拠することなく、組織としてのノウハウの蓄積を進めるとともに、組織的なナレッジシェアリングシステム、営業活動の「見える化」等、社内のインフラ整備を進め、個人の能力を組織として補完できるように内部管理体制の強化を行うと共に、AIを積極的に活用することで、労働生産性を向上させ、組織改革を行なってまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 まず、当社グループにおける経営ビジョンである「心の豊かさを分かち合える生きる喜びに満ちた世界の実現」のためには、サステナビリティの実現が重要な経営課題であると認識しております。

 デジタル化の進行に伴って新たに生じている社会課題に対して、当社グループが提供する体験価値の果たすべき期待役割は大きく、実際に当社グループが請け負う案件においても、シンポジウムやイベントなどを通じて種々の社会課題の認知獲得や解決を図る案件は増加しております。

 また、当社グループとしても、未来のこどもたちのためにコミュニケーションの力を活かして平和な社会づくりに取り組む一般社団法人にも参加しており、同財団主催で、国際機関や行政機関の認証や後援を受けて実施する、こどもたちが多彩な視点から社会課題を議論し合うシンポジウムについても、当社グループが様々な点から協力させていただく等、当社グループの事業活動及びサービスがサステナビリティの実現の一助となるべく事業を行っております。

 なお、当社グループの事業の特性上、気候変動問題が重要な影響を及ぼすことは当連結会計年度においては想定しておりませんが、一方で人的資本に関しては重要な課題と認識しております。

 

(1)ガバナンス

 当社グループでは、サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視、または管理するための過程、統制及び手続等の体制をコーポレート・ガバナンスの体制と区別しておりませんが、当社グループが置かれている経営環境を踏まえ、サステナビリティに関連するリスク及び機会については重要性に応じて経営会議で識別・監視し、適宜、取締役会への報告を行う体制としております。

 詳細は、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 重要課題(マテリアリティ)への対応をはじめとしたサステナビリティへの取り組みについても、この体制の下で運営しております。

 

(2)リスク管理

 当社グループでは、リスク管理をサステナビリティ実現や内部統制のための重要な手段として認識しております。具体的には、社会情勢やステークホルダーからの要請を把握し、当社の中長期的な経営戦略との整合性を図りながら、当社グループにおけるリスク管理の観点からも重要課題(マテリアリティ)の識別を経営会議にて実施します。必要に応じて、適宜、取締役会への報告を行います。

 

(3)人的資本に関する「戦略」

 当社グループがお客様に対して提供する体験価値は、人でしか創り出せないものであると考えております。よっ

て、当社グループにおいて人的資本は重要な位置づけとなります。

 このため、評価・報酬や人材の採用、育成といった人事制度全般に関して、採用競争力を強化し、従業員の安定

的な就業を実現すると共に多様なニーズに対応するための人的資本投資を進めることで業界トップの待遇、働きや

すさの実現を目指しております。

 人固有の感性が企業の競争力の源泉の一つとなるとの考えから、職位別、専門別研修はもちろんのこと、従業員

の感性を養い、より豊かな想像力を育むために、リベラルアーツに特化した研修や既存の枠組みに囚われない自由

な発想やアイデアが生み出される環境を整え、未体験を開拓し、全ての人の経験にできる人材の育成を図ってまい

ります。

 

 

(4)指標及び目標

 当社グループでは、上記において記載した人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は次の通りとなります。

 

指標

目標

2025年度実績

管理職に占める女性労働者の割合

2028年4月までに20.0

12.3

労働者の男女間の賃金の差異

2028年4月までに75.0

69.7

 

 

3【事業等のリスク】

 以下においては、当社グループの事業展開等に関して、リスク要因となる可能性があると考えられる、主な事項を記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資家の投資判断上重要であると考えられる事項については、投資家の皆様に対する、積極的な情報開示の観点から記載しております。以下の記載は、本株式の投資に関連するリスクの全てを網羅するものではありませんのでご留意ください。

 なお、本項中の記載内容については、特に断りが無い限り、本書提出日現在の事項であり、将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものです。

 当社グループでは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ですが、本株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項目以外の記載内容も併せて慎重にご検討ください。

 

(1) 事業内容に係るリスクについて

①社会情勢とそれに伴うリスクについて

 一般的に企業が支出する広告費は、景気の影響を受けやすい傾向にあります。当社グループが主として属するプロモーション業界は、不況下にあっても比較的削減されにくく変動の少ない販売促進費が原資となる領域ではありますが、国内市場における景気後退及びそれに伴う需要の縮小は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、このリスクに対し、受注クライアントの属性を大手広告会社、外資・その他広告会社、直接クライアント取引と3属性に分類し、受注バランスを管理しつつ特定の受注クライアント属性に過度に依存することの無いよう取り組んでおり、安定的な受注が確保できる状況の維持に努めておりますが、不測の事態により安定的な受注が確保できない状況が生じた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②プロモーションの実施に関する業界の慣行について

 プロモーションの実施は、企画・制作・運営及び管理等、各段階によって構成されております。その受注形態に関わらず、制作作業に入る前に企画段階があり、企画を立案し関係者との打合せを経て、制作段階・本番の運営段階に進みます。その制作段階や本番の運営段階(開催期間中)に主催者からの追加発生、仕様変更の要請が行われる場合や屋外プロモーションにおける天候変化によって、直前の実施内容の変更等が行われる場合があります。また、主催者側の広告費削減や広告会社変更等により、当社グループ受注分が無くなることもあります。

 前述のとおり、プロモーションは制作や運営段階で当初の内容や金額が変動するケースがあります。

 当社グループは、このリスクに対し、制作受注管理システムを構築し、受注前の案件についても、状況をデータ管理し、そのデータを集計した結果を、隔週開催される営業報告会議において提出し、全部門長が確認することで、部門ごとの受注額、利益額、受注見込額、利益見込額の把握に努めております。また、営業報告会議において、予算に対し大幅な乖離が見られた場合は、経営会議にて営業支援策を決定するなど、業界慣行から生じる不確実性の排除に努めておりますが、不測の事態が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③プロモーション実施期間及び売上計上時期の変動について

 当社グループの手掛けるプロモーションには、主催者である企業の新製品の発表、販売促進を目的としたものも多く、その新製品が製造販売に許認可を要する場合、その許認可の下りるタイミングが遅れることにより、発売開始の時期が予定より遅延することもあります。また、主催者の商品開発の遅延や生産体制構築の遅延等が原因で発売開始時期が予定より先送りになる、更に発売自体が中止となる可能性もあります。これにより、当社が予定しているプロモーションが遅延する、あるいは中止となる可能性があります。

 当社グループは、顧客からの業務完了確認書の受領をもって売上を計上しておりますが、セールスプロモーションは上記の理由により、売上計上の元となるプロモーションの実施時期が、当社グループの予定に対し大幅に遅延、または実施自体が中止となった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④個人情報漏洩に関するリスクについて

 当社グループは、キャンペーンの応募はがき等で消費者の住所、氏名等の個人情報を取り扱っております。また、ブロードバンド加入申込書において、顧客の氏名、住所等を記入した申込書を獲得する等、個人情報を記載した書類を大量に取り扱っております。当社は、2006年8月にPマーク(プライバシーマーク)の認証を取得したほか、定期的に情報セキュリティ委員会を開催し、同委員会による定期的なチェックや継続的な部門ごとの自己チェック等、個人情報の保護には細心の注意を払っております。しかしながら、当社が保有する個人情報等につき、漏洩、改ざん、不正使用等が生じる可能性は、完全に排除されているとはいえません。

 従いまして、これらの事態が起こった場合、適切な対応を行うための相当なコストの負担、当社への損害賠償請求、当社の信用の低下等によって、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑤競合について

 当社グループは、総合的なプロモーション活動をする企業の中では、30年超の社歴及びそれに基づく経験・知識を基にした業務遂行能力について、優位性を持っていると認識しております。しかしながら、今後において、資本力、マーケティング力、高い知名度や専門性を有する企業等の参入及び事業拡大が生じる可能性があります。

 当社グループとしては、競争激化の環境においても十分な収益を獲得すべく、今後の広告において必要不可欠となるインタラクティブ(インターネットを中心とした双方向のコミュニケーションを獲得するための総合的なプロモーション)領域を得意とする協力会社との提携やクリエイティブな領域に特化した専門部署の設置など、制作力、企画力の充実に努めており、競合他社に対して十分な比較優位性を保っております。しかしながら、プロモーション業界のさらなる構造の変化やインタラクティブ領域等における高い専門性を有した企業の参入等により、当社グループの優位性が相対的に低下した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥不良品の発生及び製造物責任について

 当社グループは、プレミアムグッズの制作において、主として中華人民共和国の工場に発注しております。外注工場の選定においては、過去の実績や品質管理体制を十分精査した上で決定しているほか、当社グループ社員が現地工場において随時検品を行うなど、万全の体制の下で不良品発生防止に努めております。しかしながら、万一不良品が発生した場合には、取引先からの返品・交換や損害賠償、信用失墜などにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦自然災害に係るリスクについて

 当社グループは、主としてプロモーション業界に属しておりますが、2011年3月11日に発生した東日本大震災のような自然災害等が発生し、消費者の消費マインドが冷え込むことや、クライアントの生産活動が停滞すること及び広告活動の自粛ムード等が生じ、クライアント企業の広告費予算及び販売促進費予算の執行に影響を与えた場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧売上の季節変動について

 当社グループが実施する案件は、大型案件が増加傾向にあることから、受注や完了の時期により四半期単位での変動が大きくなる傾向があります。

 

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

通期計

売上高

構成比

売上高

構成比

売上高

構成比

売上高

構成比

売上高

構成

(千円)

(%)

(千円)

(%)

(千円)

(%)

(千円)

(%)

(千円)

(%)

2024年4月期

3,135,402

18.50

5,166,104

30.49

3,965,111

23.40

4,678,147

27.61

16,944,764

100.00

2025年4月期

3,949,155

19.42

4,701,054

23.12

5,126,302

25.21

6,558,610

32.25

20,335,121

100.00

 

⑨特定販売先への依存

 当社グループを含むイベントの制作を行う会社は、一定部分を大手広告代理店から受注しております。

 当社グループは、幅広いイベント制作を手掛けておりますが、イベントの主催者は、イベントの実施を大手広告代理店に発注することが比較的多くなります。大手広告代理店より発注量の手控えがあれば、当社グループに影響を及ぼす可能性があります。

⑩疫病発生に係るリスクについて

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、外出自粛や行動制限が強制され、イベントの自粛や流通店舗の閉鎖など当社グループの事業遂行にも大きな影響が及び、ここ2期は当社グループの経営成績も大きな影響を受けてました。現在は、新型コロナウイルス自体は落ち着いておりますが、今後新型コロナウイルスが改めて流行した場合、または未知の疫病が発生した場合には、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響が及ぶリスクがあります。

 

(2) 当社グループの組織体制に係るリスクについて

①人材の確保及び育成について

 当社グループは、今後想定される事業拡大に伴い、受注規模に応じた人材の確保が必要であると考えております。プロモーションにおける提案業務では、高い企画力を有する人材を要求されることから、適切な人材を確保するとともに、育成を行っていく必要があります。当社グループは、これまで個人の能力に依存していた制作・企画力を補完するため、マニュアルや社内データベースの整備等、組織として能力を補完する体制を整備し、一定の質を有する人材の確保と育成に努めていく方針ではありますが、必要な人員の確保及び育成が計画通りに進まなかった場合、競争力の低下や今後の事業拡大に制約が生じる可能性があり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

②派遣・請負スタッフに関する業務上トラブルの発生について

 派遣・請負スタッフによる業務遂行に際して、スタッフの過誤による事故や、スタッフの不法行為により訴訟の提起又はその他の請求を受ける可能性があります。当社グループは、スタッフの作業に当たり、事故を未然に防ぐために管理体制を整えておりますが、上記トラブルによる訴訟内容及び請求金額によっては、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③特定人物への依存について

 当社の創業者である代表取締役社長の河村康宏は、当社グループの経営方針や事業戦略の立案・決定及びその遂行において、重要な役割を果たしております。当社グループでは、取締役会及び経営会議等における役員及び幹部社員の情報共有を行い、経営管理体制の強化、経営幹部の育成等を図ることにより、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めておりますが、何かしらの理由により、同氏が当社グループの業務を継続することが困難となった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) その他のリスクについて

①新株予約権の付与及び株式の希薄化について

 本書提出日現在において、新株予約権の目的たる株式の総数は91,300株であり、発行済株式総数に対する比率は1.9%に相当しております。将来、これら新株予約権が行使された場合には、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。

 

②法令違反等の発生に関する影響について

 当社グループは、法令等諸規則が遵守されるよう、役職員に対するコンプライアンスの徹底等を行っておりますが、こうした対策が必ずしも有効に機能するとは限りません。法令違反等が発生した場合や新たな法令の制定・法令の改正等が行われた場合、事故や不正等を役職員が起こした場合、損失の発生、行政処分や当社グループの信頼が損なわれる等により、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末における資産合計は14,482百万円(前連結会計年度末11,623百万円)となり、前連結会計年度末と比較して2,858百万円増加しました。主な要因は、現金及び預金が1,064百万円、受取手形、売掛金及び契約資産が1,351百万円増加したことによるものであります。

 

(負債)

 当連結会計年度末における負債合計は5,453百万円(前連結会計年度末3,375百万円)となり、前連結会計年度末と比較して2,078百万円増加しました。主な要因は、買掛金が799百万円、未払法人税等が400百万円増加したことによるものであります。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は9,028百万円(前連結会計年度末8,248百万円)となり、前連結会計年度末と比較して780百万円増加しました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益を876百万円計上したことによるものと、剰余金の配当173百万円により、利益剰余金が702百万円増加したことによるものであります。

 この結果、自己資本比率は61.4%(前連結会計年度末は70.6%)となりました。

 

②経営成績の状況

 当連結会計年度(2024年5月1日~2025年4月30日)における国内経済は、インバウンド需要の増加や賃上げ等の一方で、物価上昇の影響や米国の新政権発足に伴う関税の引き上げ方針を発端とする世界経済の悪化が懸念され、先行きに対する不透明感が増しています。

 2024年(1~12月)の日本の総広告費は、通年で7兆6,730億円(前年比104.9%)となり、2021年から4年連続で成長し、3年連続で過去最高を更新しました。日本の広告市場は、好調な企業収益や消費意欲の活発化、世界的なイベント、インバウンド需要の高まりなどに支えられ、「インターネット広告費」を中心に「マスコミ四媒体広告費」、「プロモーションメディア広告費」3つ全てのカテゴリーが成長しました。インターネット広告費は、3兆6,517億円(前年比109.6%)となり、前年より3,187億円増加しました。SNS上の縦型動画広告をはじめ、コネクテッドTVなどの動画広告需要が一層高まり、市場全体の拡大に寄与しました。マスコミ四媒体広告費は、2兆3,363億円(前年比100.9%)と3年ぶりに前年超えとなりました。またプロモーションメディア広告費は1兆6,850億円(前年比101.0%)と前年に続き増加しました。特に、人流がコロナ禍前に戻ったこともあり、屋外や交通、POP、イベント・展示・映像ほかといったリアルな場面での成長が目立ちました。(「2024年日本の広告費」株式会社電通調べ。)

 このような中、当社グループでは、M&Aの加速によるソリューションの多様化及び人的資本投資の加速を重点施策として展開をしてまいりました。

 当連結会計年度の事業面においては、イベント開催数が前年比11.2%増加する等、当社グループの主力事業であるイベント領域で伸長があったこと、及び新規連結子会社の影響もあり売上高は大きく増加しております。業種別では、情報・通信、食品業界を中心に昨年実績を超過、オーガニックでも前期比で増収を確保しました。また、利益面では、採算性の改善を推し進めた結果、人的資本投資等を拡大しながらも増益となりました。

 なお、当社の事業はソリューションの多様性を活かすと共に、最新かつ最先端のコンテンツをプロモーションに実装できるか、そして、それらがいかに総合的にプランニングされているかが事業の競争優位性に直結するため、M&Aによって当社グループの情報収集力を高め、事業基盤を一気に拡大させることを重要な戦略としております。そのため、ここ1年間で既存ビジネスの周辺領域の会社を3社M&Aするとともに、AIやIP等の最先端分野をはじめ、様々な分野においてCVC設立以降4社に投資を実行してきました。

 

 これらの結果、当連結会計年度の売上高は20,335百万円(前年同期比20.0%増)、売上総利益3,893百万円(同12.2%増)、営業利益1,277百万円(同5.6%増)、経常利益1,267百万円(同2.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益876百万円(同79.5%増)となりました。

 

 なお、当社グループはプロモーション事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載は省略しております。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末と比較して929百万円増加し、6,113百万円となりました。営業活動による資金の増加1,673百万円、投資活動による資金の減少445百万円、財務活動による資金の減少293百万円などによるものです。

 

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と、それらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、1,673百万円(前連結会計年度末1,541百万円の増加)となりました。主な要因は、税金等調整前当期純利益1,368百万円、仕入債務の増加額599百万円、長期未収入金の減少額283百万円による資金の増加があった一方で、売上債権及び契約資産の増加額1,057百万円による資金の減少があったことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、445百万円(前連結会計年度は42百万円の減少)となりました。主な要因は、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による収入175百万円による資金の増加があった一方で、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出303百万円、投資有価証券の取得による支出141百万円、定期預金の増加額90百万円、関係会社株式の取得による支出65百万円による資金の減少があったことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動による資金の減少は、293百万円(前連結会計年度は312百万円の減少)となりました。主な要因は、配当金の支払による支出173百万円、長期借入金の返済による支出88百万円による資金の減少があったことによるものです。

 

④制作、受注及び販売の実績

a.制作実績

当連結会計年度の制作実績は、次のとおりであります。

事業の名称

当連結会計年度

(自 2024年5月1日

至 2025年4月30日)

前年同期比(%)

プロモーション事業(千円)

16,441,134

22.0

合計(千円)

16,441,134

22.0

 (注) 当社グループはプロモーション事業の単一セグメントであるため、セグメント別の制作実績の記載はしておりません。

 

b.受注実績

 当社グループの受注実績は、制作段階及び運営段階等において当初の内容や金額が変動することが多いことから、受注残高の正確な把握が困難なため、受注実績の記載を省略しております。

 なお、当社グループでは社内の制作受注管理システムにより、案件の進捗度合いの正確な把握に努めております。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。

事業の名称

当連結会計年度

(自 2024年5月1日

至 2025年4月30日)

前年同期比(%)

プロモーション事業(千円)

20,335,121

20.0

合計(千円)

20,335,121

20.0

 (注)1.当社グループはプロモーション事業の単一セグメントであるため、セグメント別の販売実績の記載はしておりません。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりで

  あります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年5月1日

  至 2024年4月30日)

当連結会計年度

(自 2024年5月1日

  至 2025年4月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社電通

2,042,190

10.0

 (注)前連結会計年度における株式会社電通の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合につきましては、

    100分の10未満であるため、記載を省略しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に準拠して作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりましては、当連結会計年度末時点の資産・負債及び当連結会計年度の収益・費用を認識・測定するため、見積りを使用する必要があります。経営者はこれらの見積りについて過去の実績などを勘案し合理的に判断しておりますが、結果として見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと実績が異なる場合があります。当社グループが採用しております会計方針のうち、重要なものにつきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、以下のとおりであります。

(売上高)

 当連結会計年度は、販促イベントが回復し、情報通信、食品関係の引き合いを多く受注したことに加え、新規M&Aにより連結子会社となった2社が売上に寄与しました。

 これらの結果、売上高は、20,335百万円(前年同期比20.0%増)となりました。

 

(売上原価、売上総利益)

 当連結会計年度は、売上高が堅調に推移したことにより、売上原価は、16,441百万円(同22.0%増)となりました。この結果、売上総利益は3,893百万円(同12.2%増)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

 当連結会計年度は、来期以降に向けた人的資本投資の増加により、販売費及び一般管理費は、2,616百万円(同15.7%増)となりました。この結果、営業利益は1,277百万円(同5.6%増)となりました。

 

(営業外収益、営業外費用及び経常利益)

 当連結会計年度は、営業外収益につきましては、有価証券利息7百万円等により、40百万円(同34.2%増)となり、営業外費用につきましては、為替差損20百万円等により、50百万円(同553.6%増)となりました。

 この結果、経常利益は1,267百万円(同2.8%増)となりました。

 

(特別利益、特別損失及び税金等調整前当期純利益)

 当連結会計年度は、特別利益につきましては、段階取得に係る差益54百万円、負ののれん発生益46百万円等により、104百万円(前年は発生なし)となりました。

 特別損失につきましては、固定資産除却損2百万円により、2百万円(同99.4%減)となりました。

 この結果、税金等調整前当期純利益は1,368百万円(同65.9%増)となりました。

 

(法人税、住民税及び事業税、法人税等調整額及び親会社株主に帰属する当期純利益)

 法人税、住民税及び事業税を541百万円、法人税等調整額を△44百万円計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は876百万円(同79.5%増)となりました。

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載の通り、事業内容、海外での事業展開に伴うリスク等、様々な要因の変化の影響を受ける可能性があります。このため、優秀な人材の採用と組織体制の整備、内部統制システムの強化等により、これらのリスク要因に対応するように努めてまいります。

 経営戦略の現状と見直しについては、クライアント各社は、インターネットの普及に伴い、従来のマスメディア4媒体のみの広告効果には疑問を呈しつつ、「マスメディア×インターネット」や「マスメディア×インターネット×イベント」等といった、統合マーケティングコミュニケーションへとマーケティング予算をシフトさせており、今後も流れは加速すると考えております。よって、広告市場におけるプロモーション領域の重要性は増していくと考えられます。

 マスメディア自体の効果が相対的に弱まり、クライアント各社が総合的なプロモーションへと予算をシフトさせることは、大手広告会社が従来取り扱ってこなかったプロモーション領域へ進出することにもつながっております。そういったことからもプロモーション業界は、今後も継続的に発展していくものと考えております。一方で、大手広告会社各社がプロモーション専業部門の設置・子会社の再編等、プロモーション領域の強化を行うといったように、今後のプロモーション領域においては、限られた市場の中でのシェア争いという新たな局面を迎える可能性があります。

 上記の現状を踏まえ、当社グループは、そのような市場環境下においても優位性を保つ手段として、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」にも記載しておりますが、従前の市場に縛られず事業領域を拡大する等の施策を実行してまいります。

 当社グループは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、売上総利益を重要な指標として位置付けております。当連結会計年度は、主力事業であるイベント領域においては、あらたに連結子会社化した2社の影響を除いた場合、売上高・利益ともに堅調に推移し、売上総利益率は上昇しています。

 経営者の問題意識と今後の方針について、当社グループの今後の成長のためには、当社グループの経営方針に基づき、クライアントへのサービス内容の向上を常に考え、信頼を向上させていくことが不可欠であると考えております。そのためには、今後の事業規模の拡大に合わせて適時に人員補充を進め、これと併せて組織体制の整備を進めていくことが重要と認識しております。

 具体的には、優秀な人材の採用を積極的かつ適時に行うとともに、教育研修制度を充実させ、幅広い知見を具備した人材の育成を図っていく所存であります。同時に、組織としてのノウハウの蓄積、組織的なナレッジシェアリングシステム、営業活動の「見える化」等、社内のインフラ整備を進め、個人の能力を組織として補完できるように内部管理体制の強化を行うと共に、組織改革を進めてまいります。

 

(資本の財源及び資金の流動性についての分析)

 キャッシュ・フローにつきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、イベントやセールスプロモーションの制作費ならびに人件費をはじめとする販売費及び一般管理費であり、原則として自己資金でまかないますが、一時的な運転資金を効率的に調達するために、当座貸越を利用する場合がございます。

 今後、既存事業の事業成長の推進と併せて、積極的に新規事業の創出などに取り組んで参りますが、その折に必要となる資金に関しましては、資金需要の必要性に応じて、柔軟に資金調達を実施致します。

 

5【重要な契約等】

 当社は、2024年9月10日付で、株式会社シネブリッジの株式(追加取得した議決権53.0%)を追加取得することについて、株式譲渡契約を締結し、2024年9月17日をもって株式会社シネブリッジの株式を追加取得いたしました。また、2024年9月24日付で、株式会社マックスプロデュースの株式(議決権100.0%)を取得することについて、株式譲渡契約を締結し、2024年9月30日をもって株式会社マックスプロデュースの株式を取得いたしました。

 詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (企業結合等関係)」に記載の通りであります。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。