第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(経営方針)

 当社グループは、「日本を代表するプロデュースカンパニー」となることを目標に掲げ、MX事業及びEX事業を展開しております。

 MX事業では、顧客の企業としてのブランド価値や商品・サービスのブランド価値を高めるべく、ワンストップでソリューションを提供し、既成概念を打ち破るクリエイティブとビジネスソリューション、さらには、それらを実現するテクノロジーを駆使したアイデアを実装することを通じて、クライアントに貢献してまいります。

 EX事業では、エンターテインメント業界をアップデートするべく、アーティストのマネジメント及びプロデュース、マーチャンダイジング及びコンサートやイベントの企画・制作・運営、ファンクラブ運営、さらには、デジタルコンテンツの企画・制作・販売・配信を推進し、当社グループのクリエイティブやデジタル・テクノロジーを駆使した新しいエンタメの形を創出することで、ファンに貢献してまいります。

 

(経営戦略等)

 当社グループは、MX事業及びEX事業の2事業体制となっており、事業ごとに利益管理を行っておりますが、個々のプロジェクトは単発のものも多く、年度ごとの業績は比較的大きく変動します。事業ごとに利益率の差はありますが、次の経営方針を定めております。

 MX事業は、既存のマーケティング支援領域に加え、DX、Web3といったデジタルマーケティング支援領域を拡張します。また、アーティスト/イベントと連携した当社グループならではのタイアップ企画等、エンタメを組み込んだ提案力の強化でクライアントを獲得してまいります。

 EX事業は、ライブ収入、グッズ販売収入、ファンクラブ収入等の収入の創出と利益率の向上に努めます。また、デジタルマーケティングの知見を活かして、当社グループと契約するアーティストのファンの拡大、国内外を問わず新たなアーティストの獲得、さらには、他のエンタメ企業とのアライアンス推進による新規事業を創出します。

 MX事業及びEX事業は事業間のシナジーも生みやすく、当社グループとしてさらなる成長を目指します。

 

(経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)

 当社グループは、安定的な事業成長を通じて企業価値を向上することが重要であると考え、「(売上高-外注費)/売上高」で算定される利益率を、経営の重点指標としております。事業拡大により売上高のさらなる成長を図ると同時に、案件利益率の向上やクリエイターの稼働管理の徹底、ツアーやイベントの収益性を改善することにより、指標の向上を図ってまいります。

 

(経営環境)

 当社グループを取り巻く経営環境は、IT等を中心とした技術革新を背景にしたスマートフォンや動画メディアの普及により変化しております。このような中、2024年の日本の総広告費は約7.6兆円となり、そのうちインターネット広告は約3.6兆円と前年との比較では109.6%と成長を続け、マスコミ4媒体(テレビ・新聞・雑誌・ラジオ)の広告費も3年ぶりに前年を上回り、さらなる拡大が予想されます(出所:株式会社電通「2024年 日本の広告費」)。5Gの商用化により通信速度が向上することで情報量が急激に増加し、さらに顧客ニーズが多様化している中で、消費者から選ばれる商品・サービスとなるためには、既存広告媒体を中心とした広告手法にとらわれないマーケティング活動を行い、商品やサービスのブランド価値を高めていく必要があります。

 2024年のライブ市場規模は6,121億円となり、前年との比較では119.1%と増加し、過去最大を記録しました。また、2024年の動員数は、スタジアム・アリーナ公演の増加に伴い6,000万人に迫る5,938万人となり、前年との比較では105.4%と増加し、過去最高となりました(出所:一般社団法人コンサートプロモーターズ協会「2024年の調査結果について」)。

 

 

(優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題)

 当社グループは、前連結会計年度において債務超過となったため、2024年9月26日付で公表いたしました「上場維持基準(純資産基準)への適合に向けた計画(改善期間入り)について」に記載のとおり、東京証券取引所グロース市場の上場維持基準における「純資産の額」への適合に向けた計画を提出いたしました。そして、当社グループの収益力では債務超過を解消することが困難な状況であることから、当該計画に基づき、第三者割当による新株式及び新株予約権を発行し、上場維持基準への適合に向けて取り組んでまいりました。当該新株予約権の行使は、当初は計画に比して難航したものの、その後行使され、当連結会計年度末時点においては上場維持基準を充たすこととなりました。

 一方で、当連結会計年度においては売上高が著しく減少し、継続して重要な営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する当期純損失及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上し、今後の資金繰りが不透明であります。さらに、手元資金が不足している上、当該状況を解消するための抜本的な事業計画や資金計画が未作成であり、当社の会計監査人である監査法人アリアに提示できていないことから、2025年8月26日付で当連結会計年度の計算書類及びその附属明細書並びに連結計算書類において、同監査法人より会社法第436条第2項第1号及び会社法第444条第4項の規定に基づく監査について、意見不表明の監査報告書を受領いたしました。

 以上のとおり、当社グループは、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しており、このような状況に対して、事業の継続に向けたさらなる対策が必要となっております。また、上場維持基準への適合については、事業基盤の構築ができていないことから、純資産の額が正であることを維持するための対応が求められております。

 

(1)収益力の抜本的改善と財政状態の健全化対策

 当社グループでは、重要な赤字の継続と純資産額の減少が発生しております。提出日現在、これらの状況を解消するための収益力の抜本的改善は困難な状況でありますが、財政状態の健全化対策として、引き続き2025年1月6日付で発行した第8回新株予約権の行使による資金調達を行ってまいります。

 

(2)上場維持基準への適合に向けた取り組み

 当連結会計年度末時点において、当社グループは、上場維持基準における「純資産の額」に適合しております。2025年1月6日付で発行した第8回新株予約権について、残りの行使を実現することで、上場維持基準の維持に向けて対応してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、持続的な成長及び企業価値向上のため、効率性の優れた透明性の高い経営に努め、監査等委員会の監督のもと、法令遵守の徹底、適切な資源配分及び意思決定の迅速化等を図っていくことで、中長期的な企業価値の向上を目指しております。経営環境の変化に迅速に対応できる組織体制及び株主重視の公正で透明性のある経営システムを構築し、維持していくことが重要であると考えております。

 また、急速に変化し続ける経営環境に即応するため、外部環境の変化によるリスク及び機会を把握し、取締役会で対応策について協議しております。社会・環境の変化に伴うサステナビリティに関する取組についても、今後取締役会で取組内容を共有し、活動の推進を行ってまいります。

 

(2)戦略

 当社グループは、持続可能な社会への貢献及び自らの発展を実現させるため、人材を優先すべき資本の一つと位置付け、年齢、学歴、性別及び国籍等にとらわれず、各個人の能力に基づく採用を進めております。また、多様な人材が活躍できるように、働きやすい環境づくり及び人事制度の構築に継続的に取り組んでおります。当社グループでは以下の施策を講じておりますが、今後さらに多様性の確保に向けた社内環境整備を行ってまいります。

働きやすい環境づくり

人材育成・福利厚生

健康管理・促進

・柔軟な働き方の提供

(テレワークやフレックス制度等)

・新入社員研修の実施

・健康診断の実施

・男性の育児休業取得の推進

・リスキリング等、自分磨きに対する手当の支給

 

・有給休暇取得の推進

・コミュニケーション促進を目的としたランチ代に対する手当の支給

 

・社内通報窓口の設置

・上記以外の多様な福利厚生

 

 

(3)リスク管理

当社グループは、「リスク管理規程」等に基づき、取締役会やその他の社内会議等を通じてリスクの識別・評価・管理を行うためのプロセスを整備し、リスクの未然防止及び損失の最小化に努めております。また、必要に応じて弁護士、公認会計士、弁理士、税理士及び社会保険労務士等の外部専門家からアドバイスを受けられる体制を構築するとともに、内部監査及び監査等委員会監査を通じて、潜在的なリスクの早期発見に努めております。そのほか、サステナビリティ関連のリスクも把握し、取締役会において方針の立案及び施策の進捗状況管理を行っていく方針であります。

 

(4)指標及び目標

当社グループは、業務の質を高め、会社組織を強くするため、年齢、学歴、性別及び国籍等を区別することなく、従業員が自ら業務の進め方を適宜見直すことを推奨しており、それにより従業員一人ひとりの成長を促すことで、意欲と能力のある従業員が平等に活躍でき、管理職に登用される機会が得られるような働きやすい環境づくり及び人事制度の構築に努めております。最大限の能力を発揮できるように意欲と能力のある従業員を育成し、適切な人材を管理職として登用していく方針でありますが、現状、人材の多様性の確保を含む人材の育成方針や社内環境の整備方針に関する具体的な指標及び目標については定めておりません。

また、優秀な従業員が安定的に働けるように有給休暇取得率及び男性の育児休業取得率の向上を目指し、働きやすい環境づくりの構築等に努めております。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、有価証券報告書の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)景気の変動

 企業の広告宣伝・広報関連予算は企業の景況に応じて調整されやすく、景気動向に影響を受けやすい傾向にあります。当社グループの売上高は、当該予算に依拠する傾向が強いことから、今後景況感が悪化した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、短期的な不況に耐えうる財務体質の強化を目指しております。

 

(2)災害・事故等に関わるリスク

 企業の広告宣伝・広報関連予算は、自然災害、電力その他の社会的インフラの障害、通信・放送の障害、流通の混乱、大規模な事故、伝染病、戦争、テロ、政情不安、社会不安等が発生した場合、その影響を受けやすい傾向にあります。そのため、これらの災害・事故等が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、予期せぬ事態や複合的災害、感染症等が発生した場合も、当社グループの事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、当社グループは、情報収集体制を整え、従業員に対するテレワークの導入、原則出張の禁止、従業員の安全と健康を最優先した対応を徹底することにより、リスクの最小化を図っております。

 

(3)特定の取引先への依存

 当社グループは成長過程にあり、大型案件の受注や取引規模の拡大に至った際等、特定の取引先への依存度が高い状態になる傾向があります。そのため、大型取引先の方針の変更によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、当社グループは、特定の取引先からの受注や失注が業績に大きな影響を及ぼすことのないよう、さらなる新規顧客を獲得する努力をしております。

 

(4)大規模コンサートの開催による業績の変動

 大規模なコンサートを開催した場合、その期間の売上高が急増します。想定通りに開催できた場合は、売上高が急増しますが、予測が困難なビジネスのため、計画的な投資回収ができなかった場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、コンサートが中止された場合も、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、ファンの皆様に満足いただけるアーティストの出演やコンサートの運営により、影響の軽減に努めております。

 

(5)業績の変動要因

 当社グループは、顧客ニーズに応じて価格や利益率の異なる複数のサービスを組み合わせて提案しており、受注する案件ごとに提供するサービスや収益性が異なります。そのため、実際の受注案件の内容によっては、当社グループの売上高や売上総利益率が想定した水準から乖離する可能性があります。

 また、顧客のニーズによっては、収益性の低いサービスの提供を余儀なくされる場合があります。そうしたケースが多く発生した場合、想定した売上高から十分な売上総利益を確保できず、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、当社グループは、利益の確保を重視した営業活動を展開しており、目標の売上総利益を確保できるよう案件の組成に努めております。

 

 

(6)広告業界における取引慣行

 当社グループでは、一定期間にわたって取引先の営業活動を支援するリテナー取引においては、業務受託時に契約文書を締結しております。一方、スポット業務の受注等においては、業界慣習上、引合いから活動開始に至るまでの時間が極めて短期間で進行する場合があり、契約文書を締結しないまま業務を遂行する案件もあります。そのため、取引先との認識の食い違い等により当社グループの業務に対し取引先との取引が成立しない事態が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、当社グループは、契約文書を締結しない場合においても、注文書や受注に関するメールログ等の受注記録を必ず保存することにより取引先との間で受注内容の齟齬を生じさせない対応を徹底しております。

 

(7)人材の確保

 当社グループは、サービス領域の拡大により多様な顧客ニーズに対応した最適な提案が可能になり、顧客からの高い評価を得られております。顧客への迅速な対応と顧客にとってのコストメリットを得られるため、サービス領域を内製化する方針であることから、人材が最も重要な経営資源であると認識しております。そのため、当社グループが今後も事業を拡大し、成長を続けていくためには、優秀な人材のさらなる確保や定着が重要課題となります。しかしながら、人材マーケットの環境変化等により、優秀な人員の適時確保が困難になった場合や、人材が流出してしまう場合、当社グループの事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、当社グループでは、新卒採用・中途採用を積極的に実施するとともに、社内教育に注力することで、優秀な人材の確保や定着に努めております。

 

(8)内部管理体制の構築

 当社グループは成長過程にあり、業容拡大や新規事業展開に比して施策が順調に推移しない場合、不祥事や不測の事態の発生等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、業容拡大に伴う従業員の増加や新規事業展開に伴うリスク管理強化のため、コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の強化に努めております。

 

(9)知的財産権

 当社グループは社歴が浅く、万が一、当社グループが事業推進において第三者の知的財産権を侵害した場合、当該第三者から損害賠償請求や使用差止請求等の訴訟を提起される可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、社内教育の実施や顧問弁護士等による調査・チェックを実施し、第三者の知的財産権を侵害しない体制を構築しております。

 

(10)情報管理

 当社グループは、事業を推進していく中で、顧客の機密情報や個人情報を扱う機会があり、不測の事態によりこれらの情報が流出した場合、社会的信用やブランドイメージの低下、発生した損害に対する賠償金の支払い等により、当社グループの財政状態や業績に影響を与える可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、情報管理について必要な措置を講じており、その一環として2015年11月にプライバシーマークを取得しております。

 

(11)新規事業展開

 当社グループは現在までの事業活動を通して培ったノウハウを生かし、さらなる成長を目指して事業コンセプトそのものの検討から行う事業開発事業やアジアを中心としたインバウンド・アウトバウンドに関するブランディングサービスを中心とした海外事業等の関連・周辺事業への積極展開を推進していく予定であります。しかしながら、当該事業を取り巻く環境の変化等により、当初の計画通りの成果が得られない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクへの対応策として、新規事業展開に当たっては慎重な検討を重ねた上で取り組んでまいります。

 

 

(12)新株予約権の付与

 当社は、当社グループの役職員に対して新株予約権(ストック・オプション)を付与しており、将来的にも役職員のさらなるモチベーションの向上及び優秀な人材の確保のため、同様のインセンティブプランを実行することを検討しております。また、資金調達を目的として新株予約権を発行しております。そのため、既に付与されている新株予約権及び将来的に付与される新株予約権の行使がなされた場合、当社の1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。2025年6月30日現在これらの新株予約権による潜在株式数は7,580,800株であり、発行済株式総数20,427,500株の37.1%に相当しております。

 

(13)継続企業の前提に関する重要事象等

当社グループは、前連結会計年度において重要な営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する当期純損失及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上した結果、債務超過となりました。この点、当連結会計年度においては、新株予約権の行使等による資金調達により、債務超過は解消したものの、当連結会計年度において売上高が著しく減少し、継続して重要な営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する当期純損失及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上しました。また、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)(手元資金の減少)」に記載のとおり、当連結会計年度末日後に、多額な支払が発生した結果、手元資金が減少しております。

これらのことから、依然として継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。

当社グループでは、新たな経営陣のもと、これらの状況を解消するための取組をスタートさせております。また、現状進めている資金調達を進めるほか、新たな資金調達も検討してまいります。

 しかしながら、現時点においては、当該状況を解消するための対応策は実施途上又は検討中であることから、継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められます。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 なお、MX事業は、顧客ニーズに応じて複数のサービスを組み合わせて提供をしており、サービスごとに売上高や売上総利益率は大きく異なっているため、売上総利益の確保を重視しております。例えば、テレビCM枠の購入やタレントのキャスティング等の外注を要するテレビCM案件は、売上高は大きいものの、利益率が比較的低くなる傾向にあります。

 また、EX事業は、アーティストのマネジメント及びプロデュース、マーチャンダイジング及びコンサートやイベントの企画・制作・運営、ファンクラブ運営、さらには、デジタルコンテンツの企画・制作・販売・配信等のサービスを提供しており、同様にサービスごとに売上高や売上総利益率は大きく異なっているため、売上総利益の確保を重視しております。

 以上より、当社グループは、売上総利益の確保のために、MX事業においては、案件利益率の向上やクリエイターの稼働管理の徹底、EX事業においては、マーチャンダイジング及びツアーやイベントの利益率改善を推進しております。

 

① 経営成績の状況

 当連結会計年度における我が国経済は、行動規制の緩和によるインバウンド需要をはじめとする観光需要が回復する等、明るい兆しが見られました。しかしながら、不安定な国際情勢の長期化、世界的な物価上昇とそれに対処するための各国中央銀行による金融引き締めの継続、急激な為替の変動や中国経済の減速等、先行き不透明な状況が続いております。

このような状況下において、当社グループは、前連結会計年度における業績の大幅な悪化等を踏まえ、2024年9月26日開催の第12回定時株主総会において、経営体制を一新し、さらに2025年1月3日開催の臨時株主総会において、取締役を増員いたしました。また、前連結会計年度において多額の当期純損失を計上し、債務超過に至った経緯の精査を行いました。その結果、MX事業においては、人員面の大幅な見直し及び事業資金の確保の遅れが受注件数にも大きな影響を与えたこと、前連結会計年度において多額のセグメント損失を計上したEX事業においては、全面的な見直しを行い、計画的にリスクコントロールしながら投資判断を行う方針に転換したこと等に伴い、大幅な減収となりました。

 以上の結果、当社グループの当連結会計年度における売上高は319,062千円(前連結会計年度比84.7%減)、営業損失は561,214千円(前連結会計年度は営業損失1,840,223千円)、経常損失は684,530千円(前連結会計年度は経常損失2,021,554千円)、親会社株主に帰属する当期純損失は715,849千円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失3,028,783千円)となりました。

 

 セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

a.MX事業

 MX事業とは、マーケティング・トランスフォーメーション事業の略語で顧客の企業としてのブランド価値や商品・サービスのブランド価値を高めるべく、一般消費者へのイメージアップや認知度・購買意欲の向上等を図るためのソリューションを提供する当社グループの主力事業であります。MX事業では、顧客の顕在化したニーズだけではなく潜在的なニーズも引き出し、各ニーズに合うような様々なサービスを組み合わせた提案を行い、元請けから下請けに至る多段階構造ではなくワンストップでソリューションを提供し、既成概念を打ち破るクリエイティブとビジネスソリューション、それらを実現するテクノロジーを駆使したアイデアを実装してまいります。また、コンサルティング会社・広告会社・PR会社等の縦割りで進めていたビジネスを内製化により一気通貫することで、迅速な対応及び顧客へのコストメリットを創出することができ、企業や社会の挑戦に伴走いたします。

当連結会計年度においては、人員面の大幅な見直しを行ったことのほか、前連結会計年度における大型案件の受注件数をベースに、一定規模以上の案件の受注を予測していたものの、当該事業資金に充当する予定であった第8回新株予約権による調達資金に関して行使が想定どおりに進まなかったことに伴い、受注実績は当初の見込みを大きく下回り、売上高は大幅な減少となりました。

 この結果、売上高は315,129千円(前連結会計年度比73.7%減)、セグメント損失は40,590千円(前連結会計年度はセグメント利益98,234千円)となりました。

 

 

b.EX事業

 EX事業とは、エンターテインメント・トランスフォーメーション事業の略語でエンターテインメント業界をアップデートするべく、当社グループの主力事業領域であるクリエイティブやデジタル・テクノロジーを駆使し、新進気鋭のアーティストやクリエイターと連携しながら新しいエンタメの形を創出する事業であります。わが国においては、通信やデジタル・テクノロジーの発達で、リアル空間からデジタル空間をストレスなく、シームレスに行き来できるようになってきており、新しいエンターテインメントの形や次世代のエンターテイナーが次々と生まれようとしております。EX事業では、このような状況下において、当社グループが従来から有するブランディング・広告プロモーションやデジタル・テクノロジーの知見を駆使して、型にとらわれずジャンルレスに生きる次世代アーティスト・クリエイターがファンとの新たなコミュニケーションや関係を構築でき、スターになるためのプラットフォームを実現いたします。

当連結会計年度においては、前連結会計年度において多額のセグメント損失を計上したことから、全面的な見直しを行うとともに、計画的にリスクコントロールしながら投資判断に基づく運営を基本としたことに加え、当社グループと契約するアーティストが2024年7月のデビュー直後に解散したこと及び以前よりプロジェクトとして取り組んでいた当社独自IPであるアーティストのデビューを見送り解散したことに伴い、売上高は大幅な減少となりました。

 この結果、売上高は3,933千円(前連結会計年度比99.6%減)、セグメント損失は225,666千円(前連結会計年度はセグメント損失1,654,513千円)となりました。

 

② 財政状態の状況

(資産)
 当連結会計年度末における資産合計は1,886,964千円となり、前連結会計年度末に比べ1,511,024千円の増加となりました。これは主に、現金及び預金が1,612,354千円増加したことによるものであります。

 

(負債)
 当連結会計年度末における負債合計は1,631,928千円となり、前連結会計年度末に比べ190,965千円の減少となりました。これは主に、預り金が501,186千円増加したものの、買掛金が75,249千円、短期借入金が152,440千円、1年内返済予定の長期借入金が109,674千円、契約負債が96,214千円、長期借入金が221,874千円減少したことによるものであります。

 

(純資産)
 当連結会計年度末における純資産合計は255,036千円となり、前連結会計年度末に比べ1,701,989千円の増加となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純損失の計上により利益剰余金が715,849千円減少したものの、新株の発行等により資本金が1,206,767千円、資本剰余金が1,206,767千円増加したことによるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ1,612,354千円増加し、1,728,198千円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、296,053千円の支出(前連結会計年度は2,122,786千円の支出)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失713,858千円、売上債権及び契約資産の減少額222,828千円、立替金の減少額235,159千円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、18,503千円の収入(前連結会計年度は51,404千円の収入)となりました。これは主に、貸付金の回収による収入55,750千円、敷金及び保証金の差入による支出33,595千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、1,889,904千円の収入(前連結会計年度は990,369千円の収入)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出331,548千円、株式の発行による収入2,372,792千円によるものであります。

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 該当事項はありません。

 

b.受注実績

 当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

MX事業

243,613

27.4

119,208

62.5

EX事業

合計

243,613

27.4

119,208

62.5

(注)EX事業は、受注生産を行っていないため、受注実績は記載しておりません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(千円)

前年同期比(%)

MX事業

315,129

26.3

EX事業

3,933

0.4

合計

319,062

15.3

(注)1.当連結会計年度において、MX事業及びEX事業の販売実績が著しく減少しました。これは、MX事業においては、従業員が大量に退職したこと及び事業資金の確保の遅れに伴い受注実績が当初の見込みを大きく下回ったことによるものであります。また、EX事業においては、前連結会計年度において多額の営業損失を計上したことから全面的な見直しを行い、計画的にリスクコントロールしながら投資判断を行う方針に転換したことに伴い、進めていたアーティスト契約を全面的に解除したことによるものであります。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自  2023年7月1日

至  2024年6月30日)

当連結会計年度

(自  2024年7月1日

至  2025年6月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社ローソンエンタテインメント

481,724

23.1

株式会社海帆

79,955

25.1

株式会社大日本印刷

48,527

15.2

3.当連結会計年度の株式会社ローソンエンタテインメントに対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満のため記載を省略しております。

4.前連結会計年度の株式会社海帆に対する販売実績はございません。

5.前連結会計年度の株式会社大日本印刷に対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満のため記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、本項に記載した将来事象に関する予測・見通し等は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、それらには不確実性が内在し将来の結果とは大きく異なる可能性があります。

 

① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績の分析

(売上高)

売上高は319,062千円となり、前連結会計年度に比べ1,766,393千円の減少(前連結会計年度比84.7%減)となりました。これは主に、MX事業で人員面の大幅な見直し及び事業資金の確保の遅れが受注件数にも大きな影響を与えたこと、EX事業で前連結会計年度において多額のセグメント損失を計上したことから、全面的な見直しを行い、計画的にリスクコントロールしながら投資判断を行う方針に転換したことによるものであります。

 

(売上原価、売上総利益)

売上原価は300,417千円となり、前連結会計年度に比べ2,232,613千円の減少(前連結会計年度比88.1%減)となりました。また、売上総利益は18,645千円(前連結会計年度は売上総損失447,575千円)となりました。これは主に、売上高に占める一定の売上総利益を確保できるMX事業の案件売上の割合が多かったことによるものであります。

 

(販売費及び一般管理費、営業損失)

販売費及び一般管理費は579,859千円となり、前連結会計年度に比べ812,788千円の減少(前連結会計年度比58.4%減)となりました。その主な内訳は、業務委託費110,152千円、給与手当82,748千円及び販売促進費67,311千円であります。

この結果、営業損失は561,214千円(前連結会計年度は営業損失1,840,223千円)となりました。

 

(経常損失)

営業外収益は1,171千円となり、前連結会計年度に比べ1,982千円の減少(前連結会計年度比62.9%減)となりました。また、営業外費用は124,487千円となり、前連結会計年度に比べ59,998千円の減少(前連結会計年度比32.5%減)となりました。これは主に、上場維持基準を充たす(純資産の額が正である)ことを目的とした資本増強に関する費用負担が継続して発生したことによるものであります。

この結果、経常損失は684,530千円(前連結会計年度は経常損失2,021,554千円)となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純損失)

親会社株主に帰属する当期純損失は715,849千円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失3,028,783千円)となりました。これは主に、収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなったため減損損失6,975千円及び本社オフィスの賃貸借契約の一部中途解約のため解約違約金22,353千円を計上したことによるものであります。

 

b.財政状態の分析

「(1)経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社グループの資金需要のうち主なものは、売上原価並びに販売費及び一般管理費等の営業費であります。売上原価の主な内容は、原価部門における外注費及び労務費であります。販売費及び一般管理費の主な内容は、業務委託費、人件費及び販売促進費であります。

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金の調達は、役員借入及び金融機関からの短期借入を基本とし、長期運転資金の調達は、金融機関からの長期借入を基本としております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【重要な契約等】

(株式取得契約の解除)

当社は、2024年6月14日付で物販システム事業を営む株式会社ADOLOGIの株式を取得し、同社を持分法適用関連会社とする株式取得契約(以下、「本株式取得契約」という。)を締結しておりましたが、2024年12月5日開催の取締役会において、本株式取得契約を解除することを決議し、同日付で本株式取得契約を解除いたしました。

 

本株式取得契約を解除するに至った理由

本株式取得契約において、その株式取得資金は、2024年5月9日付で公表いたしました「第三者割当による新株式発行、第7回新株予約権の発行並びに親会社以外の支配株主、その他の関係会社、及び主要株主の異動に関するお知らせ」に記載の資金使途のうち、「新規事業進出のためのM&A資金」600,000千円を充当することとしておりました。また、「当該金額に満つるまでの第7回新株予約権の行使があり、資金が当社に用意できた」ことをクロージング条件としておりました。

しかしながら、2024年12月5日付で公表いたしました「第三者割当による新株式発行、第8回新株予約権の発行及び主要株主及び主要株主である筆頭株主及びその他の関係会社の異動に関するお知らせ」に記載のとおり、未行使となっている第7回新株予約権1,416個の全てを当社が取得し、消却することとなりました。

未行使となっている第7回新株予約権を消却することに伴い、本株式取得契約のクロージング条件の充足が不可能となることを踏まえ、本株式取得契約履行後、株式会社ADOLOGIの残りの株式を当社株式と簡易株式交換をすることも検討しておりましたが、当社グループの業績の悪化等に伴い、当社株式が大幅に下落した結果、以降の検討が双方で困難となり、本株式取得契約を解除することとなりました。

 

(投資契約)

当社は、2024年12月20日開催の取締役会において、第三者割当による新株式の発行の割当先である株式会社アベCと投資契約(以下、「本投資契約」という。)を締結することを決議し、同日付で本投資契約を締結いたしました。なお、本投資契約には役員指名権が付されており、株式会社アベCは2025年1月3日開催の臨時株主総会において、当社の取締役3名を指名しております。

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。