当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、「私たちは品質にコミットし、安心・安全なICT社会の実現に貢献します」、「私たちはICT社会に貢献する人材を育成します」、「私たちは多くの価値を創り、お客様と共に歓びを分かち合います」を企業理念とし、提供サービスを通じて、豊かで安全なICT社会の実現へ貢献していく事を目指しております。
(2) 経営戦略等
当社グループは、品質向上のトータルサポート企業として、ソフトウェアテストをはじめ、品質コンサルティングやテスト自動化支援など、ソフトウェア開発の全工程で品質向上支援サービスを展開しております。
2024年5月には、さらなる成長を目指して中期経営計画を策定し、「ソフトウェアテスト市場の社会的価値を高めるバリューアッププラットフォーマーへ」という10年ビジョンの下、当社の誇るソフトウェアテストナレッジの普及と、テストツール事業・教育事業等の人に依存しないビジネスモデルの拡充によって、生産性の向上に注力してまいりました。
他方、外部環境に目を移すと、近年急速に進むAI技術の拡大は、短期的にはAI利用ニーズの高まりによる事業拡大の好機となる一方で、中長期的には企業による開発内製化の加速や、労働集約型ビジネスの代替につながり、業界全体にとって大きなリスクとなりつつあります。
当社グループでは、これらAIの拡大による事業機会の活用とリスク排除を目的に、当連結会計年度より「生成AIテスト設計ツール」の開発に着手し、当社独自のテスト知見や豊富なデータを活用することで、当年3月にプロトタイプの社内実装を開始するに至りました。併せて、近い将来、様々な競合他社がAIテストツール開発に追随してくる可能性が高いことから、生成AIテストツールへの開発投資をより積極的にすすめ、開発スピードの更なる向上によって、技術的アドバンテージを保持する必要があると判断し、当年2月、従来の「安定的な労働集約型ソフトウェアテスト事業を軸とする成長」から、「生成AIテストツール開発への積極投資」に基本方針を転換することといたしました。
今後は、中期経営計画に生成AIテストツール開発への積極投資方針を加味し、生成AIサービスを含むツールサービスや教育サービス等の拡大を通じて、業界全体の技術力向上と、豊かで安全なICT社会の実現に努めるとともに、当社グループの生産性向上を推し進め、より一層の企業価値向上に努めてまいります。
(3) 経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループが属する情報サービス業界において、米国の政策動向や中国経済の見通し、ウクライナ情勢や中東情勢等による為替や資源高の影響もあり、先行き不透明な状況は継続するものと予想されます。一方で人件費の上昇は当面継続するものと想定されることから、国内企業において生産性向上は喫緊の課題であり、リモートワーク、クラウド環境の導入、IoT、AI、5G、メタバースなどのDXに関連するIT投資や、企業防衛のためのセキュリティ対策投資へのニーズは増大し、情報サービス業界の市場の成長は底堅く継続するものと認識しております。
このような経営環境の中で、当社グループは今後更なる成長を実現する上で以下の事項を経営課題として重視しております。
①人的資本への投資拡大
当社グループが継続的に企業価値を向上させていくためには人的資本への効率的投資が経営上の最重要課題であると認識しております。特に現状ではPM層/ハイレイヤーの不足が主たるボトルネックとなっていると課題認識したうえで、これら人員の拡充のために、リファラル採用制度等の導入、充実した社内研修メソッドによる教育制度の充実、業界別ナレッジの蓄積による高スキル化及び外部人材の有効活用といった諸施策を積極的に展開し、成長阻害要因の排除と事業規模の拡大に努めてまいります。
②エンタープライズ領域拡大
デジタル技術の発展により、旧来の大規模基幹システムが大容量高速通信時代に対応できない等のシステム老朽化問題が発生しており、これに起因するシステム等の切り替えの作業「マイグレーション」の増加によって、特に歴史のある大手企業は多大な負担を強いられております。当社グループでは現状拡大を続けるソフトウェアテスト市場の中でも、これら基幹システムを指す「エンタープライズ系」領域の市場は、特に拡大可能性の高い最重点市場であると認識し、当市場の早期開拓を重要課題ととらえております。この開発拡大のために、経験豊富なPM層/ハイレイヤーの採用、専門部署の設置、エンタープライズ領域に強い外部企業との取引拡大及び業界固有(特に金融業界)ナレッジの蓄積を推し進め、参入障壁構築による価格競争の回避、案件規模の拡大及び利益率の向上を目指してまいります。
③知的財産の拡大
あらゆる要素がデジタル化されていく中で、従前の有形固定資産の設備投資に頼らず、知的財産への投資を通じてビジネスモデルを抜本的に変革し、高い利益率で新たな成長を実現する企業が現れてまいりました。一方で、これら新たなビジネスモデルにより既存ビジネスが破壊される事例(デジタルディスラプション)も増加しております。特に、近年急速に進むAI技術の拡大は、短期的にはAI活用ニーズの高まりによる事業拡大の好機となる一方で、中長期的には企業による開発の内製化の加速や労働集約型ビジネスの代替につながるなど、IT業界全体にとって大きなデジタルディスラプションリスクとなり得ると認識しております。
当社においても、今後これら外部環境の変化に対応しつつ高い利益率を維持するためには、知的財産への投資を拡大することが必須であると認識し、これを欠くことのできない重要課題の一つとして位置付けております。この推進のために、当社が強みとするソフトウェアテストのノウハウ、エンジニア教育ノウハウ及び各業界における固有ナレッジを基盤に、テスト自動化ツールT-DASH(※1)、クラウド型のセキュリティ対策サービスPrimeWAF(※2)、いつでもどこでも実機テストが出来るAnyTest(※3)、テスト管理ツールQualityTracker(※4)、ソフトウェア品質向上のためのプラットフォームQbook(※5)、教育サービスのバルカレ(※6)及び企業向けオンライン教育サービスのバルデミー(※7)等のツール及び教育サービスの拡大を進めるとともに、2025年3月に社内実装された生成AIテスト設計ツールTestScape(※8)の機能強化と、その他テストツールへの生成AI機能の拡大を目指してまいります。上記サービスを通じて当社グループの品質管理技術を業界に波及させ、業界全体の技術力及び信用力の向上を図ると共に、これら人に依存しないビジネスモデルの拡大によって当社グループの生産性向上も進めてまいります。また新規ソフトウェア開発や新技術企業とのアライアンスも積極的に行い、新たな企業価値の創造に努めてまいります。
④M&Aによる拡大と組織強化
加速するIT化、デジタル化の影響により今後も国内ソフトウェアテスト市場は高い成長率を維持するものと見込んでおりますが、それゆえに今後のIT人材の不足傾向も明らかであり、従前のままの拡大戦略を踏襲すれば機会損失のリスクも相応に高まるものと考えております。加えて気候変動リスクや地政学的リスクも近年大きく上昇しております。当社ではこれらのリスクに対応するために、M&Aによる事業ポートフォリオの更なる拡大が必須であると認識し、これを重要課題の一つに位置付けております。
近年当社グループは、「品質向上のトータルサポート企業」をスローガンとして掲げ、主にソフトウェアテスト事業を展開する「バルテス株式会社」、「VALTES Advanced Technology,Inc.」及び「株式会社ミント」、開発事業及びセキュリティ事業を展開する「バルテス・イノベーションズ株式会社」(2025年4月グループ企業の「バルテス・モバイルテクノロジー株式会社」が同「フェアネスコンサルティング株式会社」を吸収合併し、名称変更いたしました。)、主に開発事業を展開する「株式会社アール・エス・アール」、「株式会社シンフォー」及び「タビュラ株式会社」等、グループのサービス多面化と優秀なエンジニアの確保を目標に、M&Aによる業容拡大を続けてまいりました。
加えて2023年10月にホールディングス体制に移行したことで、M&Aでの拡大に適した水平的グループガバナンス体制の整備に注力し、個々の企業の自律的運営と経営効率化を推し進めております。今後も積極的なM&A展開とそれに適した体制整備によって、多角化型の事業ポートフォリオを拡大し、リスクに対するレジリエンス(耐性)とリスクに対応する力であるダイナミックケイパビリティ(自己変革能力)を向上させてまいります。
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※1 T-DASH |
非エンジニアでも“カンタン”にWebアプリケーションの動作確認を行うことが可能なテスト自動化ツール。 URL https://service.valtes.co.jp/t-dash/ 従来のソフトウェアテストの自動化を阻んでいた、メンテナンスコスト・技術的難易度に対し、T-DASHは、コードを書かず、”日本語”で作られたテストケースと、画面を定義することで自動化スクリプトを作成することができ、“回数無制限”でテストを自動実行することが可能なツール。弊社試算で手動テストと比較し、最大50%のコスト削減が可能。 |
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※2 PrimeWAF |
当社グループが展開するクラウド型のセキュリティ対策サービス。 URL https://security.valtes.co.jp/primewaf/ Webサイトを始めとしたWebアプリケーションに対する様々なサイバー攻撃を可視化、防御ができ、また非常に簡単に導入可能なクラウド型のWAFサービス。「WAF(Web Application Firewall)」は、一般的なファイアウォールでは防げないWebアプリケーションに対する不正な攻撃を防御するセキュリティシステムとして注目されている。 |
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※3 AnyTest |
当社グループが展開するクラウド上でモバイル端末実機を遠隔操作できるサービス。 URL https://service.valtes.co.jp/anytest/ エミュレーターではなく、実端末を国内のサーバーで管理しており、操作ラグが少なく、ストレスのないスムーズな遠隔操作が出来る。豊富な機種・OSのラインナップを有し、月額5,000円から利用可能。 |
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※4 QualityTracker |
当社グループが展開するクラウドベースでテスト実行時の進捗管理、テストケースの管理が可能になるツール。 URL https://service.valtes.co.jp/qualitytracker/ EVM(Earned Value Management)を採用し、工数=仕事量ベースで管理することにより、各テストの進行状況がリアルタイムで表示され、正確な進捗管理が可能。また、管理者のコスト削減にも大きな効果が期待されるツール。 |
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※5 Qbook |
当社グループが運営するソフトウェア品質向上のためのプラットフォーム。 URL https://www.qbook.jp/ “品質”を意味する「Quality」と、”知識の源”を意味する「book」に由来し、ソフトウェア開発やテストに関わる人に向けて、現場で役立つ情報を発信するWebサイト。日々の知識向上につなげるコラム提供やソフトウェア品質の勉強用書籍の検索など、品質のスキルアップや現場の仕事で活用できるコンテンツを掲載。 |
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※6 バルカレ |
当社グループが展開するテストの専門家が体系化したソフトウェアテストの教育サービス。 URL https://service.valtes.co.jp/s-test/education/ 「企業向け講座」「オープン講座」「e-ラーニング」の3つの教育メニューから構成され、多数のプロジェクト経験により培われた品質向上のノウハウを集約し、人材育成に役立てるコンテンツを提供。 |
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※7 バルデミー |
当社が展開するソフトウェアテストの企業向けオンライン教育サービス。 URL https://service.valtes.co.jp/valdemy/ より実践に近いプログラムと、バルテスの現役テストエンジニアによる添削コンテンツで、現場でもすぐに活用可能な実践的なスキル・技法の習得が可能なオンライン教育プログラム。 |
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※8 TestScape |
当社が自社実装する生成AIテスト設計ツール。 ソフトウェアテスト専門事業者として積上げた豊富な実績と独自のテスト進行基準「QUINTEE®」をベースに、仕様書/参考資料からテストケースを生成AIで自動作成。「テスト明細」、「テストマップ」、「機能確認動作一覧」といった中間生成物も併せて作成することからテストケース作成の過程・根拠の検証が可能。 |
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、売上高増加率、売上総利益率、人材の確保を重要な経営課題と認識していることから営業利益率を重視しております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが判断したものであります。
<サステナビリティに関する考え方>
当社グループは、企業理念である、安心・安全なICT社会を維持・発展、社会課題の解決に寄与するため、事業活動を通じて社会が求める高品質なサービスの提供と、加速し続けるICT社会の変化にイノベーションを起こすプロフェッショナルな人材育成が、持続可能な社会の発展に貢献できると考えております。
豊かな知見から生まれた教育プログラムと安心・安全なサービスの提供から、バルテスらしい形でサステナビリティを重視した経営にて「人と社会に品質を」を実践し、社会の持続的な発展に貢献してまいります。
(1)ガバナンス
ⅰ.基本的な考え方
当社グループは、ICT社会の加速する変化と持続可能な社会の実現を果たすため、当社取締役会の監督のもと、代表取締役が委員長となり、サステナビリティに係る取組や、環境・人権方針の策定、当社グループへの浸透と進捗状況のモニタリングを行うサステナビリティ委員会を設置しております。
また、取締役会において原則年1度、サステナビリティ委員会での議論や活動状況を報告し、取締役会のレビューを受け、当社グループ経営にフィードバックすることで意思決定の迅速化とガバナンスの両立を図ってまいります。
ⅱ.管理体制
なお、当社グループのガバナンスの管理体制につきましては、
ⅲサステナビリティ委員会での議論
1.サステナビリティに係る取り組み及び情報開示に関する事項
人的資本「人材育成方針」や「社内環境整備方針」及び方針に紐づく「指標及び目標」を検討
多様性 「女性管理職比率」「男性の育児休業取得率」「男女間賃金格差」を検討
2.サステナビリティの基本方針に関する事項
サステナビリティに係る重要方針決定(サステナビリティ方針、マテリアリティ、環境・人権方針など)
3.ESGに関するリスクと機会への対応に関する事項
ESG関連リスクとして想定されるものを検討(戦略、オペレーション、ファイナンス、コンプライアンス)
4.経営の重要課題(マテリアリティ)の特定、分析に関する事項
マテリアリティの特定、マテリアリティの指標及び目標設定、PDCAの仕組み構築
5.TCFD対応、気候変動に関する事項
気候変動に関するリスク・機会のフレームワークを策定と情報開示と透明性向上を検討
6.社会貢献活動に関する事項
金融、人材教育、地域貢献、災害支援、財団などあらゆる促進に向けた取り組み分野への支援を検討
(2)戦略
<人材の多様性の確保、人材育成の方針及び社内環境整備の方針と具体的な取り組み>
当社グループの優位性は、業界一と自負する独自の教育制度により、人材不足が激しく採用競争の厳しいIT業界において、新卒社員や若手のキャリアチェンジ組をエンジニアに育成し、高品質なサービスを提供できる体制が整っている点にあると考えております。
新卒・未経験者については2カ月間(320時間)、経験者であっても1カ月間(160時間)の研修期間を設けており、研修期間中は案件のアサインはなく、技術習得に専念をいたします。個人のスキルやポテンシャルに加え、当社グループの標準化されたテスト設計手法を身につけることで、安定的かつ高品質のサービス提供や、案件開始後のトラブルを未然に防ぐなどの効果を発揮しております。
当社グループが社内研修として実施しているコンテンツの一部は、ソフトウェア品質セミナーサービスや各種出版物として外部へ提供を行うなど、高いレベルのものであると自負しております。各種サービス、出版物の内容につきましては、
また、従業員のウェルビーイング向上にも意を配し、「環境」、「報酬」、「制度」の充実を行っております。
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環境 |
直請け構造のビジネスモデル、ホワイト企業認定、えるぼし認定、「バルテスいいね!プロジェクト」(共に働き続けたいと思える取組みやイベントの実施)、自社ツール利用による業務効率化、バルバー(社内バー)設置 等 |
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報酬 |
従業員向け譲渡制限付株式報酬付与、福利厚生サービス、確定拠出型年金制度 等 |
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制度 |
研修制度、産業保健師の活用、有休奨励日の設定、男性育休取得の推奨、オンボーディング制度、オンライン含む懇親会補助、フレックスタイム制度、若手社員向け住宅制度(JISEDAI手当) 等 |
これらを充実させることにより、従業員が働きやすいと思える環境を整え、人材の定着化を図ってまいります。
(3)リスク管理
当社グループのリスク管理においては重点リスクをコンプライアンス委員会にてモニタリング、評価・分析を行っております。サステナビリティ委員会とコンプライアンス委員会が連携することによりサステナビリティの課題を含む事業リスクについての対策の検討が可能となり、当社グループに必要な指示が迅速に行える体制となっております。また、マテリアリティの選定から分析に基づいたリスク管理についてサステナビリティ委員会において報告と議論を実施しております。管理体制の詳細は、
(4)指標及び目標
<人的資本に関する指標>
前述に記載のサステナビリティ戦略において、当社グループは、人的資本を最重要視しております。
人材教育においては、前述の入社後の研修に加え、当社グループ従業員がカリキュラムを自由に選択し、無償で利用できる「バルゼミ」と、当社グループのみならず業界全体の高品質化を図るべく「無償セミナー」を提供しております。
バルゼミに関しては、当社グループが創業以来培ってきた、ソフトウェアテスト、品質管理のノウハウを体系化したQUINTEE(注1)を活用し、ソフトウェアテストにおけるスキルやレベルに応じた多彩なカリキュラムを用意しており、さらに技術コンテンツだけでなく、対話や語学、構成力等のコンテンツを組み合わせることで、高品質なサービス提供に向けた育成をおこなっております。
カリキュラムは平均して年間10講座以上を新設しており、コマ数は400を超えるに至っています。通常、自己で負担し外部受講する品質の講座でありながらも、強制ではなく、スキルアップを目指した向上心の高い社員が自ら選択し、日常的に活用しております。
一方、無償セミナーに関しては、ソフトウェアの品質改善にとどまらず、業界のトレンド情報やマネジメント手法など、エンジニアが必要とする価値あるセミナーを無償で提供しています。
企業理念のひとつである「私たちはICT社会に貢献する人材を育成します」に基づき、業界のリーディングカンパニーとして、自社のノウハウの外部への発信をおこない定着化することで、別の企業理念にある「安心・安全なICT社会の実現に貢献します」を実現させていく所存です。
上述する人材教育に関する取組みついて、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は次のとおりであります。
(注1)「QUINTEE」とは、ソフトウェア開発の品質向上・生産性向上の知見を、ソフトウェアテストを主軸に体系化したバルテスのテストメソッドの呼称です。
「QUINTEE」はテストの国際規格ISO/IEC/IEEE 29119に準拠する形で作成されており、日本のソフトウェア開発における生産性の向上に寄与できるよう、当社がこれまでの経験から蓄えた知識を体系化しています。
当初、2026年3月期において「バルゼミ」講座数120講座、受講者数2,216人を目標としておりましたが、
QUINTEEをはじめとする当社がリリースするツールの研修機会が増加したことにより、2025年3月期の時点でこの目標を達成いたしました。
今後は、2027年3月期を新たな基準年度とし、改めて目標値を設定のうえ、人材育成に関する取り組みをさらに推進してまいります。
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指標 |
目標
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実績 |
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2023年3月期 |
2024年3月期 |
2025年3月期 |
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87講座 |
99講座 |
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1,620人 |
1,914人 |
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16件 |
12件 |
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1,050人 |
1,480人 |
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人材教育のみならず、従業員がいきいきと活躍できるような職場環境を目指し、女性従業員や障がいのある従業員の活躍促進、ワークライフバランスに配慮した各種の支援制度の整備(出産・育児・介護に関する支援制度、フレックスタイム制度、テレワークの活用等)、長時間労働の削減対策や有給休暇取得の促進等の取り組みを進めております。
当社では、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の
指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、次のとおりであります。
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指標 |
目標 |
実績 |
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2023年3月期 |
2024年3月期 |
2025年3月期 |
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81.1% |
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78.9% |
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50.0% |
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64.3% |
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 事業環境についてのリスク
① ソフトウェアテスト業務のアウトソーシングについて
当社グループは、メーカーやソフトウェアベンダーの顧客に対して、ソフトウェアテストの実施サービスや、その他ソフトウェアに関する品質向上支援サービスを提供しております。
従来、ソフトウェアテスト業務は顧客企業内で行われておりましたが、ソフトウェアテストに関する専門的知識を有しない一般の開発エンジニアによるテスト実行は効率が悪いため、テスト専門事業者に委託することが工数の短縮及び品質面の向上につながるとの認識が広がっていることや、国内IT産業におけるエンジニア不足によって貴重なリソースをテストではなく開発に集中させたいというソフトウェアベンダーが増えていること、またDXの拡大によって一般ユーザー企業の負担が増加し、受入テストや品質管理を、第三者機関としてテスト専門事業者に委託するケースが増えていることなどから、今後もソフトウェアテスト業務をアウトソーシングするニーズは拡大するものと認識しております。
当社グループは、品質向上のための情報サイトや、書籍、冊子の刊行を通して、品質の重要性や専門知識の必要性を発信し、アウトソーシングのメリットが認知されるように努力しておりますが、今後経済状況や顧客の経営方針の変化にて社内リソースでテストを行う内製化へ進んだ場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 法的規制に関するリスク
当社グループの事業収益には顧客企業内に当社グループの人員を常駐させる人材派遣業務によるものが含まれており、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(以下「労働者派遣法」という。)に基づき、厚生労働大臣の「労働者派遣事業」の許可を取得し、人材派遣を行っております。
労働者派遣法では、労働者派遣事業主としての欠格事由を同法第6条において、また、当該事業許可の取消事由を同法第14条において定めており、該当した場合には、厚生労働大臣が事業許可の取消、業務の停止を命じることができる旨を定めております。
現在、当社グループはこれらの法令に定める欠格事由及び取消事由に該当する事実はないものと認識しておりますが、労働者派遣法及び関係諸法令については、労働市場をとりまく状況の変化等に応じて今後も適宜改正されることが予想され、その改正内容によっては当社グループの事業が制約され、あるいは経済的負担が増加し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 海外事業展開について
当社グループは、ソフトウェアテスト事業において国内企業の海外展開のサポートと英語圏への事業範囲拡大を目的として積極的に展開する経営方針のもと、フィリピンに連結子会社VALTES Advanced Technology,Inc.を設立しております。
しかしながら、海外での事業活動においては、政治経済の変化における法律、規制の変更、雇用制度や労使慣行の相違、自然災害や為替変動など、予期せぬ影響を受ける可能性があり、このような場合には当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ 新規事業展開及びM&Aによる事業拡大について
当社グループは、「品質向上のトータルサポート企業」を目標としており、ソフトウェアテスト以外の領域においても積極的な事業展開を行い、新しい価値を創造する企業としてのブランドを醸成していくことが重要な課題であると認識しております。こうした課題に対応するため、収益の柱としてのソフトウェアテスト事業を拡大させる一方で、既存事業との関連性、収益性、社会性、従業員の士気向上への影響等を考慮した上で、新規事業への投資やM&Aによる事業拡大を進めております。現在、子会社のバルテス・イノベーションズ株式会社(2025年4月グループ企業のバルテス・モバイルテクノロジー株式会社が同フェアネスコンサルティング株式会社を吸収合併し、名称変更いたしました。)においては開発事業を、子会社VALTES Advanced Tecnology,Inc.においてはソフトウェアテスト事業をそれぞれ新規事業として展開しております。さらに近年は株式会社アール・エス・アール、株式会社ミント、株式会社シンフォー及びタビュラ株式会社をグループインするなど、M&Aによる水平的事業拡大にも注力しております。
今後も新規事業展開及びM&Aによる事業拡大を積極的に進めてまいりますが、状況によっては設備投資や人的投資等の追加施策の実施によって、利益率が低下する可能性があります。また、当初計画目標を達成できなかった場合は、それまでの投資が回収できず、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 価格競争について
当社グループは、ソフトウェアテスト業界において、これまで蓄積したソフトウェアテストに関するノウハウや特定業界におけるナレッジを活用して各種テストを行うことにより、他社との差別化を進めております。一方で、金銭などの決済を行う機能や個人情報管理などの機能を持たない、比較的シンプルなモバイルアプリケーションのソフトウェアテストにおいては、低価格提示を優位とする競合他社が発注先に選定されることがあります。
当社グループは、引き続き潜在市場が大きくかつ高い技術を必要とするエンタープライズ領域の拡大に注力することで競合他社との差別化と参入障壁の構築を進め、競合他社との価格競争回避を図ってまいりますが、顧客が発注先選定をする際の判断基準がコストである場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 他社との競合について
当社グループのソフトウェアテスト事業では、ソフトウェアテストに特化した専門会社として独自のノウハウを蓄積し、各テストを通じて、ソフトウェアの品質向上、開発プロセスの改善に努めております。
しかしながら、当社グループの競合他社が資本力、知名度、人材調達力などにおいて、当社グループより優れている場合があります。競合他社がその優位性を現状以上に活用してサービス提供に取り組んだ場合、当社グループが計画通りにサービス提供が出来ない、顧客企業の獲得・維持が出来ないことも考えられます。
当社グループは競合他社に先駆けてサービス提供を行い、ノウハウを蓄積して品質の高いソフトウェアテスト等を顧客企業へ提供する事を取り組んでおりますが、競合他社と比較して優位性を保てなくなった場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 大規模自然災害等の異常事態について
当社グループは、国内で複数の事業拠点、海外ではフィリピンにおいて事業を運営しております。大規模な自然災害や新型コロナウイルス感染症拡大のようなパンデミック等の異常事態が当社の想定を超える規模で発生し、事業運営が困難になった場合、当社グループの財政状態や経営成績等に大きな影響を与える可能性があります。
当社グループでは、事業復旧の早期化・省力化を図るため、オフィスの分散化や在宅勤務が可能なテレワークを導入しております。また、有事の際にはすでに定めている事業継続計画に基づき、事業リスクの最小化に向けた施策を推進してまいります。
⑧ 技術の進化や革新に対する適応
当社グループは主にソフトウェアテスト事業において、長年蓄えた専門的ノウハウによって顧客の信頼を獲得し、事業の拡大成長を続けております。一方でIT業界は急速に変化しており、近年急速に拡大するAI技術をはじめ、新しい技術やビジネスモデルが常に現れ、既存のビジネスモデルや業界に革命的な変化をもたらすデジタルディスラプションが発生する場合があります。当社グループがこれら急激な環境変化に適応できない場合、競争力の低下によって、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、これら変化への対応のために、生成AIテストツール技術を中心とした知的財産への投資拡大に注力するとともに、積極的なM&A展開とそれに適した体制整備によって、多角化型の事業ポートフォリオを拡大し、これらデジタルディスラプションリスクに対するレジリエンス(耐性)とダイナミックケイパビリティ(自己変革能力)を向上させてまいります。
(2) 事業内容についてのリスク
① 人材の確保について
当社グループでは、事業拡大に伴って優秀な人材の確保とその育成が重要な課題となっております。特にソフトウェアテスト事業及び開発事業においては、旺盛な顧客需要にこたえるべく恒常的に多数の従業員を確保する必要があり、外部リソースを活用した募集活動に留まらず、人事担当の増員によるアプローチ強化や、M&Aによる人材の確保にも努めております。またバルゼミを始めとした人材育成コンテンツ・メソッドを充実させ、人材の早期教育にも注力しております。
一方で、当社グループの属するソフトウェアテスト市場及びIT市場の拡大によって、競合他社との人材獲得競争が激化した場合は、当社グループの人材が外部に流出することや、人材確保に支障をきたすことも想定されます。このような事態が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 不採算プロジェクトについて
当社グループにおいては、顧客からソフトウェアテスト及びその他開発等を受託するにあたり、あらかじめサービスの対価や納期を定めた請負契約を締結する場合があります。当該契約を締結したプロジェクトについては、原則として受注金額が契約時に確定し、定められた納期までにプロジェクトを完成して納品する責任が当社グループに発生します。これらの受注にあたっては、発生が見込まれるコストと適正な利益を乗せたものを見積り金額として提示しております。また、受注後は進捗状況を監督する案件管理者を選任し、原則として社内関係者に週次で進捗状況及びプロジェクト終了までの見込み工数を報告することとしております。大規模プロジェクト等、リスクの高いプロジェクトについては、ソフトウェアテスト部・開発部会議において、受注前の見積り金額の妥当性や受注後の進捗状況をモニタリングし、プロジェクトに係る適正な利益を確保するよう努めております。
しかしながら、全てのプロジェクトに対して正確に必要コストを見積もることは困難であり、仕様変更や追加作業に起因する作業工数の増大等が発生する可能性があります。また、当社グループの提供するサービスにおいて、予期せぬ不具合等が発生し、手直し等の追加コストの発生や損害賠償が発生する可能性があります。この場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ サービスの契約不適合について
当社グループが提供するソフトウェアテスト事業及び開発事業には、顧客企業から受託するテスト業務及び開発業務があります。
顧客企業は、当社グループによるサービス提供の完了後に、委託業務における検収確認を実施した上で製品の発売、リリース等をしておりますが、発売、リリース後に不具合が発生する場合があります。
当社グループは受託案件においての契約不適合責任は、品質を保証するものではない旨、また受託規模の範囲において契約不適合責任を行う旨を契約書に記載し免責条項等を規定しております。しかしながら、何らかの事情により契約不適合責任あるいは損害賠償責任等を追及される可能性は否定できず、このような場合には当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ 主要顧客との取引について
当社グループは、主要顧客とは継続的で良好な関係を築いております。しかしながら、主要顧客の製品開発や社会環境の変化等の要因により、主要顧客との取引に著しい変動があった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ システムダウンや障害について
当社グループは、顧客へのサービス提供をインターネット環境に依存しております。自社設備や第三者が所有し運営する通信設備等のインターネット接続環境が良好に稼働するようにサーバーの二重化、冗長化、また脆弱性をついた攻撃への対策等を行っておりますが、災害や事故、ハッカー攻撃により、通信ネットワーク障害や、コンピューターウィルス被害があった場合には、受託業務が継続できなくなる可能性があります。このような場合には、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 情報管理について
当社グループの事業活動において、個人情報、顧客情報の取得及び顧客企業の機密情報を保有しております。これらの各種情報の取り扱い及び機密保持には細心の注意を払っており、不正なアクセス、改ざん、破壊、漏洩及び紛失などから守るための管理体制を構築するとともに、ファイルの持ち出しを禁止する情報漏洩防止ソフトウェア導入や脆弱性診断、アクセス管理などの技術的対策を実施、従業員への定期セキュリティ教育とセキュリティチェックの実施など、適切と考える安全処置を講じております。
しかしながら、万が一、情報漏洩等の事故が起きた場合には、顧客企業をはじめとするステークホルダーからの信頼を著しく低下させ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 顧客との紛争の可能性について
当社グループのサービスは製品・システムそのものの品質を保証しているわけではなく、当社グループが行ったサービスの範囲の中で責任を負う形態となっております。受託する契約においては、作業範囲、作業項目等を明確にした見積仕様書を作成し、当社グループの責任範囲の明示を行い、また顧客先でサービス提供する契約においては、契約書での作業概要明記などを行い管理しております。更にISMS(※)の取得やセキュリティ教育、当社グループ独自のマニュアル運用など顧客との意思疎通の円滑化、問題の早期発見などに努め、顧客との紛争が生じないように指導、管理しております。
しかしながら、当社グループが提供したサービスを経て販売する製品、システムの中に不具合があった場合や、当社グループ従業員による機密情報の漏えいや、器物破損等、顧客に多大な損害を与える様な事象が発生した場合において契約の解約、損害賠償請求等、顧客との紛争が発生する可能性があります。
※ISMSとは「情報セキュリティマネジメントシステム」の略です。当社はISMSの規格である「ISO/IEC 27001:2013」及び「JIS Q 27001:2014」への適合について証明を受けております。
⑧ 業績の下半期偏重について
当社グループが提供するソフトウェアテストサービスは、その提供対象となる顧客のサービス・製品などのリリースが下半期となることが多いため、当社グループの売上高及び利益についても下半期に偏重する傾向にあります。特に第1四半期においては、採用や教育、研修に力を入れることもあり、営業赤字となる可能性があります。
(3) 事業体制に関するリスク
① 代表者への依存について
代表取締役田中真史は、当社設立の中心人物であり、当社グループの事業活動全般において重要な役割を果たしており、同氏に対する当社グループの依存度は高くなっております。
当社グループは、同氏への過度な依存を回避すべく、経営管理体制の強化、経営幹部への教育、採用を進めておりますが、何らかの理由により同氏が当社グループの業務を継続することが困難となった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国の経済は、インバウンド需要の拡大等によって緩やかな回復基調にある一方で、米国の政策動向や中国経済の見通し、ウクライナ情勢や中東情勢等による為替や資源高の影響もあり、依然として先行きは不透明な状況が続いております。
当社グループが属する情報サービス業界は、行政によるデジタル化推進、クラウド環境の導入、IoT、AI、5G、メタバースなど、デジタルトランスフォーメーション(DX)に関連するIT投資を積極的に行う企業の増加や、セキュリティ需要の増加などを背景に、中長期的には市場規模の拡大が継続するものと見込まれます。特に近年急速に進むAI技術の拡大は、短期的にはAI利用ニーズの高まりによる事業拡大の好機となる一方で、中長期的には企業による開発の内製化の加速や、労働集約型ビジネスの代替につながり、業界全体にとって大きなリスクとなり得ると認識しております。
このような状況の下、当社グループの主力サービスであるソフトウェアテスト事業におきましては、潜在市場規模が大きく、かつ参入障壁の高いエンタープライズ系(注1)領域の開拓への注力を継続し、売上規模と利益率の向上に努めてまいりました。
また、上記AIの拡大による事業機会の活用とリスク排除を目的に、前期初より「生成AIテスト設計ツール」の開発に着手しておりましたが、創業以来ソフトウェアテスト専門事業者として積上げた豊富な実績データをもとに、開発は想定以上に順調に進み、当年3月にプロトタイプの社内実装を開始するに至りました。
併せて、近い将来様々な競合他社がAIテストツール開発に追随してくることが想定されるため、当年2月には、上記AI開発におけるアドバンテージ(当社独自のテスト知見を基盤とする)を今後も保ち続けるために、より積極的なAI開発投資の拡大と、スピードをさらに向上させる必要があると判断いたしました。そのため、従来の「安定的な労働集約型ソフトウェアテスト事業を軸とする成長」から、「生成AIテストツール開発への積極投資」へ基本方針を転換することを決定いたしました。
一方でソフトウェアテスト事業におきましては、近年の事業規模の成長スピードに組織体制が追い付かず、PM層/ハイレイヤーや営業人員の不足がボトルネックとなり、成長の停滞が見られるようになったため、これらボトルネックの解消に向けた組織改編及び採用施策の強化を推進してまいりました。これら施策による一定の効果は現れ始めているものの、まだ十分とは言えず、PM層/ハイレイヤー及び営業人員の採用が喫緊の重要課題となっております。
第4四半期においては上記施策の効果により、売上高が伸長したことに加え、販管費のコントロールも適切になされたことから、営業利益、経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益ともに、2月14日に修正開示いたしました業績予想を上回る実績となりました。
その結果、当連結会計年度の売上高は10,795,074千円(前期比4.2%増)となりました。各段階利益は、営業利益940,888千円(同12.2%増)、経常利益944,123千円(同11.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益589,094千円(同14.0%増)となりました。
(注1)エンタープライズ系
企業の業務システムや情報システム、金融機関、病院、鉄道など大規模かつ社会基盤を支える情報システムなどに含まれ、それらの中心となる制御システムの総称。
各セグメント別の経営成績は、以下のとおりであります。なお、当社は、当連結会計年度より、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等の注記)」に記載のとおり、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前連結会計年度との比較については、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しております。
[ソフトウェアテスト事業]
当事業においては、近年注力をしておりますエンタープライズ系領域案件を中心に業績は堅調に推移いたしました。従前どおり、上流工程·PMO(注2)·QMO(注3)や、大型マイグレーション(注4)案件への参画は順調に進みましたが、第3四半期に発生した一部大型案件の顧客都合による終了もあり、案件規模は縮小いたしました。一方で前期から取り組むボトルネック解消施策の効果が現れ始めたことで、案件数は増加傾向にあり、当第4四半期の収益拡大につながりました。その結果売上高は9,073,301千円(前期比0.8%増)となりました。また案件管理の徹底による売上総利益率の向上と販管費の適切なコントロールにより経営の効率化が進んだ結果、セグメント利益は1,071,452千円(同24.6%増)となりました。
(注2)PMO(Project Management Office)
組織内における個々のプロジェクトマネジメントの支援を横断的に行う部門や構造システム
(注3)QMO(Quality Management Office)
組織内における個々の品質管理の支援を横断的に行う部門や構造システム
(注4)マイグレーション
ソフトウェアやシステム、データなどを別の環境に移動したり、新しい環境に切り替えたりすること
[開発事業]
当事業においては、開発案件が順調に増加したことに加えて、タビュラ株式会社を新規連結したこともあり売上高は順調に拡大いたしました。一方で上半期に発生した不採算案件の影響や、同案件の対応のための組織強化コストの増加、タビュラ社のM&A手数料等の影響が大きく利益率は低下いたしました。その結果、外部顧客に対する売上高は1,506,122千円(前期比31.5%増)となり、セグメント損失は62,597千円(前年同期は13,593千円のセグメント利益)となりました。
[セキュリティ事業]
当事業においては、第4四半期は順調に売上拡大し、上半期不振をカバーするに至り、外部顧客に対する売上高は215,651千円(前年同期比0.8%増)となりました。一方で広告宣伝費等の増加により、セグメント利益は11,652千円(同65.5%減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末より176,133千円増加し1,916,852千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は603,226千円(前期比31.8%増)となりました。これは主に売上債権及び契約資産の増加額327,516千円、法人税等の支払又は還付額等による減少254,941千円があった一方で、税金等調整前当期純利益を914,123千円、減価償却費を100,340千円、のれん償却額を141,029千円計上したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は865,662千円(前期比0.7%増)となりました。これは主に連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出642,030千円、有形固定資産の取得による支出111,656千円、無形固定資産の取得による支出90,996千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により得られた資金は439,156千円(前期比29.7%減)となりました。これは主に短期借入金の借入700,000千円、長期借入金の返済による支出116,904千円、自己株式の取得による支出112,733千円、配当金の支払額81,023千円があったことによるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
該当事項はありません。
b.受注実績
当社グループが行う全ての事業は、受注から売上計上までの期間が短いため、記載を省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度のセグメント別の販売実績は、以下のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年4月1日 至 2025年3月31日) |
|
|
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
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ソフトウェアテスト事業 |
9,073,301 |
0.8 |
|
開発事業 |
1,506,122 |
31.5 |
|
セキュリティ事業 |
215,651 |
0.8 |
|
合計 |
10,795,074 |
4.2 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.連結損益計算書の売上高の10%以上を占める相手先はありません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績は、以下のとおりであります。
経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度に比べ432,655千円増加し、10,795,074千円(前期比4.2%増)となりました。これは主に、開発事業おける案件増加とタビュラ株式会社の新規連結によるものです。各報告セグメントの外部顧客に対する売上高の連結売上高に占める割合は、ソフトウェアテスト事業が84.0%、開発事業が14.0%、セキュリティ事業が2.0%となりました。
(売上総利益)
当連結会計年度における売上総利益は、前連結会計年度に比べ216,910千円増加し、3,210,613千円(同7.2%増)となり、売上総利益率は29.7%と前連結会計年度(28.9%)から0.8ポイントの増加となりました。これは主に、ソフトウェアテスト事業における案件管理の徹底による生産性向上の影響によるものです。
(営業利益)
当連結会計年度における営業利益は、前連結会計年度に比べ102,365千円増加し、940,888千円(同12.2%増)となり、営業利益率は8.7%と前連結会計年度(8.1%)から0.6ポイントの増加となりました。これは、売上高の増加及び売上総利益率の上昇によるものです。
(経常利益)
当連結会計年度における経常利益は、前連結会計年度に比べ96,081千円増加し、944,123千円(同11.3%増)となり、経常利益率は8.7%と前連結会計年度(8.2%)から0.5ポイントの増加となりました。これは、営業利益の増加によるものであります。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の特別利益の計上はありません(前連結会計年度の特別利益の計上もありません。)。
当連結会計年度は投資有価証券評価損30,000千円を特別損失に計上しました(前連結会計年度は投資有価証券評価損30,000千円を特別損失に計上しました。)。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ72,440千円増加し、589,094千円(同14.0%増)となりました。
財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は3,988,487千円となり、前連結会計年度末に比べ462,184千円増加いたしました。これは主に現金及び預金の増加176,294千円、売掛金及び契約資産の増加352,600千円によるものであります。固定資産は2,519,733千円となり、前連結会計年度末に比べ651,380千円増加いたしました。これは主に福岡オフィス移転等に伴う有形固定資産の増加88,093千円、のれんの計上等に伴う無形固定資産の増加554,804千円、投資有価証券の増加1,612千円、差入保証金の減少9,755千円によるものであります。
この結果、総資産は6,508,220千円となり、前連結会計年度末に比べ1,113,565千円増加いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は2,560,531千円となり、前連結会計年度末に比べ761,362千円増加いたしました。これは主に短期借入金の増加700,000千円、1年内返済予定の長期借入金の減少7,766千円、未払消費税等の増加75,438千円によるものであります。固定負債は685,706千円となり、前連結会計年度末に比べ85,063千円減少いたしました。これは主に長期借入金の減少83,926千円によるものであります。
この結果、負債合計は3,246,238千円となり、前連結会計年度末に比べ676,299千円増加いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は3,261,982千円となり、前連結会計年度末に比べ437,265千円増加いたしました。これは主に取得等による自己株式の増加90,446千円及び親会社株主に帰属する当期純利益589,094千円の計上に伴う利益剰余金の増加によるものであります。
この結果、自己資本比率は49.9%(前連結会計年度末は52.3%)となりました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、売上高増加率、売上総利益率、人材の確保を重要な経営課題と認識していることから営業利益率を重視しております。
当連結会計年度における売上高増加率は4.2%と前連結会計年度(14.4%)から10.2ポイントの低下、売上総利益率は29.7%と前連結会計年度(28.9%)から0.8ポイントの増加、営業利益率は8.7%と前連結会計年度(8.1%)から0.6ポイントの増加となりました。
引き続きこれらの指標について上昇するように取り組んでまいります。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況の分析
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、労務費及び外注費のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、M&A投資、設備投資及びソフトウェアの開発費用等によるものであります。
資本の財源及び資金の流動性について、当社グループは、運転資金については自己資金及び金融機関からの借入金を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は1,605,438千円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は1,916,852千円となっております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に際しては、連結決算日における資産及び負債の計上、当連結会計年度における収益、費用の計上については、過去の実績や現況に基づいた合理的な基準による見積り及び判断を行っておりますが、実際の結果は特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。
また、重要な会計方針等につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項 及び 重要な会計上の見積り」に記載のとおりであります。
④経営者の問題認識と今後の方針について
当社グループが高品質なサービスを継続的に提供していくために、「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の経営課題に対処することが必要であると認識しております。また、当社グループを取り巻く外部環境及び内部環境を適宜適切に把握し、市場におけるニーズを識別して経営資源の最適化に努めてまいります。
(株式譲渡契約)
当社は、2024年10月24日開催の取締役会において、タビュラ株式会社の発行済株式の全株式を取得して子会社化することを決議し、同日付で株式譲渡契約を締結いたしました。なお、株式譲渡は2024年11月8日付で完了しております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (企業結合等関係)」に記載のとおりであります。
(連結子会社間の吸収合併契約)
当社は2025年2月26日開催の取締役会において、完全子会社であるバルテス・モバイルテクノロジー株式会社を存続会社とし、同じく完全子会社であるフェアネスコンサルティング株式会社を消滅会社とする吸収合併(以下、
「本合併」といいます。)を実施することを決議し、同日で合併契約を締結しております。
なお、2025年4月1日付で吸収合併を実施し同日付で存続会社であるバルテス・モバイルテクノロジー株式会社の
商号を「バルテス・イノベーションズ株式会社」に変更しております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおりであります。
ソフトウェアテスト事業において、生成AIテスト設計ツール(TestScape)、ソフトウェアテストの進捗管理ツール(Quality Tracker)、クラウド型のセキュリティ対策サービス(PrimeWAF)、セキュリティ事業において、脆弱性の自動診断ツール(サイバー攻撃自動診断)、ペネトレーションテストシステムの開発を行いました。
当連結会計年度における研究開発費は