第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、企業理念において「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションの下、「ビジネスインフラになる」というビジョンを掲げています。このミッション、ビジョンの実現に向けて、さまざまなビジネス課題を抱える企業やビジネスパーソンの働き方を変え、DXを促進するサービスを展開しており、これらの事業活動の推進が社会課題の解決に寄与し、ひいては当社グループの株主価値及び企業価値の最大化につながるものと考えています。

 

(2)重視する経営指標と中期目標

2023年5月期から2025年5月期にかけての中期的な目標として、売上高成長と利益成長の両立を目指します。まず、最も重要な経営指標である連結売上高については、20%台以上の堅調な成長の継続を目指します。次に、重視する利益指標として、株式報酬関連費用や企業結合に伴い発生する費用を控除した調整後営業利益(注1)を採用し、各事業の売上高成長に向けた必要な投資を行いながらも、毎連結会計年度における調整後営業利益率の向上を目指します。利益率の向上を実現するに当たっては、2025年5月期における「Sansan」「Bill One」サービス合計(注2)の調整後営業利益100億円以上の計上と、Eight事業における通期での安定的な調整後営業利益の計上を目指します。

 

(注)1. 調整後営業利益:営業利益+株式報酬関連費用+企業結合に伴い生じた費用(のれん償却額及び無形資産の償却費)

2. Sansan/Bill One事業における「Sansan」「Bill One」の合計値であり、「その他」は除く

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

当社グループの事業や事業領域には次のような特徴があり、これらに基づいて中長期的な経営戦略を立案しています。

 

①広大な市場機会

新型コロナウイルス感染症による働き方の変化やDXへの意識改革、SaaSビジネスへの関心の高まり等によって、当社サービスに関連する市場は拡大が続いています。DX市場は2030年において5兆1,957億円(2020年比3兆8,136億円増)(注3)、国内SaaS市場は2024年には1兆1,178億円(2019年比5,162億円増)(注4)の規模に達すると予想されています。

また、名刺や請求書、契約書といった書類は、現在でも紙のままで日常的に利用されていてデジタル化が進んでおらず、業務効率化や有効活用の余地が大きく残されていると考えています。各サービスの潜在市場について、まず「Sansan」は、法人向けクラウド名刺管理サービス市場で83.1%(注5)のシェアを有していますが、日本国内の総労働人口を対象として捉えた場合、「Sansan」利用者数の割合は約3%(注6)に留まっており、潤沢な開拓余地が残されていると考えています。次に「Bill One」では、無料利用を含めた契約企業と、各契約企業に対して請求書を送付する企業で構成されるインボイスネットワークを構築していますが、2022年5月末時点におけるネットワーク参加企業数は、日本国内の企業の約2%(注6)に当たる4.1万社に過ぎないため、広大な開拓余地が存在していると考えています。

 

(注)3.「2022 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望 市場編、ベンター戦略編」富士キメラ総研

4.「ソフトウェアビジネス新市場 2020年版」富士キメラ総研

5.営業支援DXにおける名刺管理サービスの最新動向2022(2021年12月 シード・プランニング調査)

6.分母となる国内の総企業数及び従業者数は、総務省統計「2016年経済センサス活動調査」を基に算出

 

②アナログ情報のデータ化精度99.9%を実現する仕組みとテクノロジー

当社グループが提供する各サービスにおけるアナログ情報のデータ化精度は、サービスの本質的な品質・競争力に資するものであり、当社グループでは99.9%の精度を実現する仕組みとテクノロジーを有していることから、事業共通の強みとなっています。当社グループのサービスでは、機械学習等によって日々進化するテクノロジーと、人力の組み合わせによってアナログ情報のデータ化を行っており、創業以来、人力によるデータ入力を中心に、膨大な名刺をはじめとするアナログ情報をデータ化してきたことで、現在では、大量のアナログ情報を正確かつ効率的にデータ化する独自システムの開発・運営が可能となりました。この技術力と独自の仕組みが競争力の源泉であり、継続的なサービス品質・競争力の向上に向けて、新技術の開発やオペレーションの改善を追求しています。また、これらの仕組みやテクノロジーは、さまざまなビジネス分野で活用が可能であるという特徴を有しています。

 

③高い安定性を誇る財務・収益モデル

「Sansan」「Bill One」の課金モデルは、継続収入が見込めるサブスクリプション(月額課金)が中心となっており、安定的かつ継続的な事業成長が見込めるモデルです。また、サービスの月次解約率は直近12か月平均で1.0%以下に留まっており、契約当たり売上高の拡大に努めることで、顧客LTV(ライフタイムバリュー)の最大化を推進しやすいことから、魅力的なモデルであると捉えています。

 

具体的な当社グループの経営戦略は、以下の通りです。

 

(ⅰ)Sansan/Bill One事業のさらなる成長

「Sansan」は、コロナ禍において一定のマイナス影響を受けたものの、マーケティング活動から新規受注までの一連の業務プロセスが確立しており、堅調な成長が続いています。「Sansan」は国内の全企業を対象とするサービスであり、国内には大きな開拓余地が存在しています。今後のさらなる成長に向けては、営業やマーケティング活動におけるビジネス課題の解決に寄与する機能の普及・拡大を図ることで、「Sansan」のビジネスデータベースとしての価値向上を推進します。加えて、営業体制の強化による契約件数の拡大や、ユーザー企業の全社員によるサービス利用(全社利用)を前提とした新規顧客獲得や既存顧客の利用拡大の促進等についても継続的に取り組むことで、契約当たり月次ストック売上高のさらなる拡大を図ります。

また、「Bill One」についても、業種や規模を問わず、国内の全企業を対象とするサービスであるため、大きな開拓余地が存在しており、さらなる普及拡大に向けてさまざまな施策を積極的に実施していきます。具体的には、売上高の最大化に向け、営業活動やテレビCMを中心とした広告宣伝活動・マーケティング活動等の強化や、インボイス制度導入を見据えた請求書発行機能等の拡充に取り組みます。

 

(ⅱ)Eight事業の収益化

Eight事業では、300万人以上のユーザーネットワークを活用し、各種BtoBサービスのマネタイズを強化することで、事業成長に取り組みます。主には、採用関連サービスであるプロフェッショナルリクルーティング「Eight Career Design」を強化することで、事業全体で通期での調整後営業利益の黒字化を目指します。

 

(ⅲ)新たなサービスの創出と成長強化

企業の各種業務フローにおいては、効率性に関するさまざまな課題が山積しており、当社グループは、これまでの既存サービスで培った強みや知見を活かして、企業のDXを促進する新規サービスの創出に注力しています。具体的には、契約書や名刺作成等のビジネス分野でサービス提供を開始しており、これらの業務プロセスの確立や安定的な提供を図っていくほか、新たなサービスの創出に向けた取り組みを推進していきます。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループの対処すべき主な課題は以下の通りです。

 

①セキュリティリスクに対する管理体制の継続的な強化

当社グループは個人情報等の重要な情報資産を多く扱っており、情報管理体制を継続的に強化していくことが重要であると考えています。現在においても個人情報保護方針及び情報セキュリティ方針を策定した上で、情報資産を厳重に管理する等、個人情報保護に係る施策には万全の注意を払っていますが、今後も社内体制や管理方法の強化・整備を行っていきます。

 

②優秀な人材の採用・育成と多様性の確保

当社グループの持続的な成長のためには、多岐にわたる経歴を持つ優秀な人材を多数採用し、営業体制や開発体制、管理体制等を整備していくことが重要であると捉えています。当社グループの企業理念や事業内容に共感した優秀な人材が、高い意欲を持って働ける環境や仕組みの構築を進めるとともに、人材の多様性確保にも取り組みます。

 

③技術力の強化

アナログ情報を正確にデジタル化する技術は、当社グループの競争力の源泉であり、当社グループが手掛けるさまざまなサービスの成長を支える共通基盤でもあることから、継続的な改善、強化が重要であると考えています。優秀な技術者の採用や先端技術への投資・モニタリング等を通じて、国内を代表する技術者集団になるべく、技術力の向上に取り組みます。

 

また、当社グループでは、気候変動問題に関して、適切な体制の下で事業上のリスクや機会を把握・監督し、課題への対応力を高めていくことは、安定的な経済発展や生活の基盤確保等を目指して、低炭素経済、ひいては脱炭素社会への移行を進める上で極めて重要な取り組みであると捉えています。

 

このような考え方の下、当社は気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が公表する提言に賛同を表明しており、当該枠組みに基づく開示を以下の通り行っています。

 

(ⅰ)ガバナンス

当社グループでは、気候変動問題への対応を含めた、サステナビリティの実現に資する各種方針や重要事項等については、取締役会で審議し、決定しています。気候変動に関する課題への対応は、代表取締役の監督の下、IR室やオフィス戦略部、財務経理部等のコーポレート部門で構成される気候変動対応プロジェクトを設置し、検討しています。当該プロジェクトにおいて、検討、集計及び特定等がなされた気候変動に係る各種指標や事業上のリスク、機会といった事項は、取締役会が毎年報告を受け、監督しており、事業戦略や計画は、当該重要事項を考慮した上で決定しています。

 

(ⅱ)戦略

当社グループでは、気候変動による気温上昇を2℃未満に抑えた事業環境への対応力や適応力を強化するべく、主には、IPCCの共有社会経済経路・代表的濃度経路といったシナリオ(SSP1-2.6)を利用し、分析した上で、気候変動によってもたらされる事業上のリスクや機会を特定し、対応戦略の策定を行っています。各国で法規制が強化され、炭素税が導入されるといった移行リスクや機会に対しては、中長期的な視点をもって、GHG排出量の削減や再生可能エネルギーの利用方針を整備し、各種取り組みを推進することで対応します。また、当社サービスに係る移行リスクや物理的リスク、機会に対する対応策の多くは、既に成長戦略の一環として対応を進めている事項になりますが、今後は、電力をはじめとした各種利用サービスの多様化・適正化等によるコスト削減の取り組みについても検討を進めていきます。

 

(ⅲ)リスク管理

当社グループでは、各領域の管掌取締役と気候変動対応プロジェクトとの協議の下でシナリオ分析を行い、気候変動に関する事業上のリスクと機会を特定し、重要性の評価や財務影響の算出、対応策の検討を行っています。当該事項は年次で取締役会に報告され、取締役会は、これらリスクや対応策といった重要事項を考慮した上で、事業戦略や計画を決定しています。また、気候変動に関する重要なリスクは、内部監査等で実施する全社的なリスク分析の結果と統合し、管理しています。

 

(ⅳ)指標と目標

当社グループでは、気候変動に関する評価指標としてGHG排出量を選定しています。

 

直近2か年におけるGHG排出量の実績(注7)は下表の通りです。なお、スコープ3におけるGHG排出量実績の算出は現在検討を進めています。

項目

単位

前連結会計年度

当連結会計年度

スコープ1(注8)

t-CO2

154

187

スコープ2(注9)(マーケット基準)

t-CO2

371

480

スコープ2(ロケーション基準)

t-CO2

324

452

スコープ1+2(マーケット基準)

t-CO2

525

667

スコープ1+2 GHG排出量原単位

(売上高当たり)

t-CO2/億円

3

3

 

(注)7. Sansan株式会社単体の実績を集計しています。

8. 各オフィスにおけるガス消費量に係るGHG排出量を集計し算出しています。なお、ガス消費量は、消費量の把握が可能な一部オフィスにおける実績を用いてオフィス面積当たり消費量を算出した上で、当該数値にガス利用が可能な全オフィスの総面積を乗じて算出しています。

9. 各オフィスにおける電気消費量に係るGHG排出量を集計し算出しています。

 

各指標における目標設定については、将来的な開示の充実に向け、世界の動向や日本国内における法規制の状況といった外部要因に加え、当社の各事業における戦略や施策の進捗状況、リスクや機会といった内部要因を踏まえて、現在、総合的な検討を進めています。

 

 

なお、シナリオ分析の下に特定した具体的なリスクや機会の内容、財務影響、対応策等は下表の通りです。分析の対象期間として、現在から2030年までを中期、2050年までを長期として設定し、当社グループの全事業を対象範囲としています。

 

a.リスクの特定

シナリオ分析結果

リスクの

内容

リスクの種類

発現時期

財務影響

(年間)

対応策

各国で規制が強化され、炭素税が導入される

炭素税による税負担額の増加

移行リスク

(法規制)

中・長期

炭素税負担額

約1~3億円

中長期的な視点でのGHG排出量の削減

再生可能エネルギーの利用拡大

クリーンエネルギーへの需要増加等により、各種エネルギー価格が高騰する

営業費用(原価・販管費)の増加

移行リスク

(市場)

中・長期

費用増加額

約3~11億円

電力や原材料調達先の多様化・適正化によるコスト削減

環境意識の高まりから、紙媒体の利用が減少(デジタル化が加速)する

当社サービスの一部機能の重要性低下

移行リスク

(市場)

短・中期

対応済みであり、大きな財務影響は発生しない想定

デジタル利用を主軸とした機能や利便性のさらなる向上

気候変動による集中豪雨や洪水が一定の頻度で発生する

拠点の浸水や利用システムのダウンによるサービスの一部運営停止

拠点の浸水による保管書類の汚損等

物理的

リスク

(急性)

中・長期

利益影響額

約2~16億円

利用システム(サーバ)の冗長化

サービス拠点の分散

洪水対応等のマニュアル整備

 

b. 機会の特定

シナリオ分析結果

機会の内容

機会の種類

発現時期

財務影響

(年間)

対応策

環境意識の高まりにより、アナログ媒体からデジタル媒体への転換(DX)が加速する

気温上昇に伴う感染症リスクの高まりにより、非対面での事業活動が増加する

当社サービスの需要拡大

製品/サービス

中・長期

利益増加額

約4~27億円

デジタル利用を主軸とした機能や利便性のさらなる向上

営業体制・マーケティング施策の強化

各国で規制が強化され、炭素税が導入される

GHG排出量ゼロの達成による炭素税の非課税

強靭性

(レジリエンス)

中・長期

炭素税負担額

0円

中長期的な視点でのGHG排出量の削減

再生可能エネルギーの利用拡大

 

 

2【事業等のリスク】

 

以下において、当社グループの事業及び財務・経理の状況等に影響を及ぼす事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を記載しています。当社グループは、これらのリスクの発生可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ですが、当社グループの株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えています。

 なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。

 

(1)新型コロナウイルス感染症の流行について

 世界各国において新型コロナウイルス感染症は、依然流行したままであり、収束時期を見通すことは困難な状況となっています。新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するために、これまで国内においては緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が出される等、対策が講じられてきました。現在では、これらの対策は緩和されているものの、新たな変異株等の出現により再び同様の対策が実施された場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。具体的には、Sansan/Bill One事業において、企業の投資行動が慎重化すること等による「Sansan」の新規契約獲得ペースの鈍化や新規契約に係る一部の初期売上高の減少、対面での商談ができない等の営業活動の制約による商談数やリード数の減少等が生じる可能性があります。また、Eight事業においては、企業の採用活動の手控えによる採用サービスの成長鈍化等の可能性があります。

 

(2)インターネットの利用環境について

 当社グループはインターネット関連事業を主たる事業対象としているため、インターネットの利用環境は当社グループ事業の基本的な条件です。インターネットの利用に関する新たな規制の導入や弊害の発生、その他予期せざる要因により、今後、インターネットの利用環境に大きな変化が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)クラウド事業について

 クラウドとは、アプリケーション機能をインターネット経由で提供するサービスで、ソフトウエア販売における新しい方法・概念として認知され、浸透が進みつつあります。その一方で、今後、クラウドを扱う企業レベルの競争も激化する可能性があります。このような事業環境の下で、より画期的なコンセプトをもった他社の商品・サービスが出現した場合、またはクラウド自体の需要が当社グループの予測を大きく下回る場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)競合について

 当社グループは、機械学習等によって日々進化するテクノロジーと、人力の組み合わせによって名刺や請求書をはじめとしたアナログ情報のデータ化を行っていますが、創業以来、大量のアナログ情報を正確かつ効率的にデータ化する独自のシステムの開発・運営をし続けてきたことが競争力の源泉となっています。しかしながら、既存事業者との競争の激化や、新たな参入事業者の登場により競争が激化した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)技術革新への対応について

 当社グループは新技術の積極的な投入を行い、適時に独自のサービスを構築していく方針ですが、技術革新等への対応が遅れた場合や、予想外に開発費等の費用が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)個人情報の取り扱いについて

 当社グループは、当社グループ従業員の個人情報に加えて、当社グループが提供するサービスにおいてユーザーの個人情報、さらにはユーザーが保有する第三者の個人情報に関与するケースがあります。当社グループは個人情報の取り扱いに関する重要性を十分に認識し、個人情報保護マネジメントシステムを構築・運用し、個人情報の管理に最大限の注意を払っており、また、2005年4月に全面施行された「個人情報の保護に関する法律」や、当局となる個人情報保護委員会が制定した「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」の要求事項の遵守に努めています。当社は、2007年10月、「個人情報保護マネジメントシステム‐要求事項(JISQ15001:2017)」を満たす企業として、一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)より「プライバシーマーク」付与の認定を受け、その後2007年11月12日より2年毎に登録を更新しています。さらに当社グループは、全従業員に一般財団法人全日本情報学習振興協会が認定する個人情報保護士の資格取得を強く推奨しています。

 また、個人情報の取り扱いについては、国内の法令のみならず、EU一般データ保護規則(GDPR)をはじめとする海外における法令や規則(以下、「海外法令等」)の適用を受けることがあります。当社グループでは適用可能性のある地域について現地法律事務所等を通じて必要な調査を実施し、加えて海外法令等の動向調査レポート等を利用する等して、海外法令等の情報を適宜収集し、これらを踏まえた必要な対策を講じています。

 当社のサービスの提供に際しては、業務プロセスの一部を当社の責任において第三者となる業務委託先に再委託する場合があります。その場合においても、国内の法令及び海外法令等を遵守し、適切かつ合理的な方法で業務委託先の安全管理を行っています。

 しかしながら、上記の取り組みにも関わらず、自然災害や事故、外部からの悪意による不正アクセス行為及び内部の故意または過失による顧客情報の漏洩、消失、改ざんまたは不正利用等、万一、当社グループまたは当社グループの業務委託先から個人情報が漏洩した場合には、信用の失墜または損害賠償による損失が生じ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)法令について

 当社グループは、「(6)個人情報の取り扱いについて」に記載のほか、電気通信事業者として電気通信事業法及びプロバイダーとしてのプロバイダー責任制限法等の総務省所管の法令等や、有料職業紹介事業者として職業安定法をはじめとする厚生労働省所管の法令等、企業活動に関わる各種法令の規制を受けています。また、今後、国内において新たにプライバシー関連法規の制定やインターネット関連事業者を規制する新たな法律等による法的規制の整備が行われる可能性があります。さらに、インターネットは国境を超えたネットワークであるため、海外諸国からの法的規制による影響を受けることも想定されることから、これらが将来的に当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)知的財産権の侵害等について

 当社グループで開発・設計しているソフトウエアやプログラムは、当社グループが独自に開発・設計したものであり、当社グループは特許権侵害の調査等を特許事務所を通じて行っています。さらに、当社グループはサービスの名称等について商標の出願、登録を行う等、第三者の商標権を侵害しないように留意しています。

 しかしながら、第三者から特許権侵害や商標権侵害を理由とする損害賠償請求や差止請求を受ける可能性は完全には否定できず、その場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが保有している知的財産権が第三者により侵害された場合には、法的措置を含めた対応を要する等、当社グループの事業運営に影響が及ぶ可能性があります。

 

(9)広告宣伝活動等の先行投資について

 当社グループの手掛ける事業では、売上高拡大を目指すため、広告宣伝活動や開発活動、営業体制の強化等において一定の先行投資が必要となります。特に、サービスの認知度を高めるためのテレビCM等を中心とした広告宣伝投資は、「Sansan」「Bill One」の新規契約の獲得に直接的に寄与することから、これまでも積極的に実施しています。

 今後の広告宣伝活動については、その費用対効果を勘案しながら慎重に行っていく方針ですが、広告宣伝投資の方針によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)企業買収等の投資について

売上高成長をはじめとした事業拡大や競争優位性の強化等を目的に、企業買収や出資等を含めたさまざまな投資を実行しています。対象企業について事前に可能な限り詳細な審査を行い、十分にリスクを検討した上で投資を実行しますが、買収や出資後に事業展開等が計画通りに進捗しないこと等が生じた場合には当社グループの業績に影響を及ぼす場合があります。

 

(11)システムインフラ等への投資について

 当社グループは、事業の拡大に応じて、システムインフラ等への投資を実施、計画していますが、当社グループの想定を超える急激なユーザー数やアクセス数の増加、インターネット技術の急速な進歩に伴い、予定していないハードウエアやソフトウエアへの投資等が必要となった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)海外展開について

 当社グループは、高い成長を実現するため海外展開を進めていく方針ですが、海外においては、商習慣や事業環境の差異等を含め、国内での事業展開と比べて高いリスクが存在することは否めず、そのリスクに対応しきれない場合や国内と比較してマーケットの開拓や収益化が想定通り進まない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)経営管理体制の確立について

 当社グループは、業容の拡大及び従業員の増加に合わせて内部管理体制の整備を進めており、今後も一層の充実を図る予定ですが、適切な人的・組織的な対応ができずに、事業規模に応じた事業体制、内部管理体制の構築が追いつかない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)人材の育成及び確保について

 当社グループは、積極的に優秀な人材を採用し、社内育成等を行うことによって体制の拡充を図っています。しかし、適切な人材を十分に確保できず、あるいは在職中の従業員が退職等をした場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、Sansan/Bill One事業においては、今後の事業拡大に向け、特に営業人員の確保が必要となりますが、採用が計画通り進まなかった場合、あるいは営業人員の流出が生じた場合には、事業拡大の制約となり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)特定の人物への依存について

 当社代表取締役である寺田親弘は、当社の設立者であるとともに、大株主であり、経営方針や事業戦略の決定において重要な役割を果たしています。このため、当社グループは、同氏に過度に依存しない体制を作るために、取締役会等における役員間の相互の情報共有や経営組織の強化を図っています。しかし、現状において、何らかの理由により同氏が当社グループの業務を継続することが困難になった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)インセンティブの付与について

 当社グループは、役員及び従業員のモチベーション向上のためストックオプションを付与しており、本書提出日の前月末現在(2022年7月31日)、その数は3,659,920株、発行済株式総数の2.92%となっています。今後も、役員及び従業員のモチベーション向上のため、ストックオプション導入等のインセンティブプランを継続する方針です。なお、これらストックオプションが行使された場合、既存株主の株式価値を希薄化させる可能性があります。

 

(17)設備及びネットワークの安定性について

 当社グループの事業を支えるサーバーは、当社グループが契約するクラウドサービスプラットフォームで管理され、複数のサーバーによる負荷の分散、定期的なバックアップの実施等を図り、システム障害を未然に防ぐ取り組みを行っています。障害が発生した場合に備え、リアルタイムのアクセスログチェック機能やソフトウエア障害を即時にスタッフに通知する仕組みを整備し、また、障害が発生したことを想定した復旧訓練を実施しています。

 しかしながら、上記の取り組みにも関わらず、火災、地震等の自然災害や外的破損、人的ミスによるシステム障害、その他予期せぬ事象の発生により、万一、当社グループの設備及びネットワークの利用に支障が生じた場合には、サービスの停止等を余儀なくされることとなり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(18)サービス等の不具合について
 一般的に、高度なソフトウエアは不具合の発生を完全に解消することは不可能であると言われており、当社グループのアプリケーション、ソフトウエアやシステムにおいても、各種不具合が発生する可能性があります。

 今後も信頼度の高い開発体制を維持・構築していきますが、当社グループ事業の運用に支障をきたす致命的な不具合が発見され、その不具合を適切に解決できない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績に関する説明

 当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要は次の通りです。

 

①経営成績の分析

当社グループは、「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションの下、「ビジネスインフラになる」というビジョンを掲げ、クラウドソフトウエアにテクノロジーと人力によってアナログ情報をデジタル化する仕組みを組み合わせた手法を軸に、人や企業との出会いをビジネスチャンスにつなげる、働き方を変えるDXサービスを提供しています。

 

具体的には、企業の営業活動や請求書業務、契約書業務等に対して、デジタルトランスフォーメーション(DX)を促進するサービスを展開しており、昨今の新型コロナウイルス感染症による働き方の変化やDXへの意識改革、SaaSビジネスへの関心の高まり等によって、DX市場は2030年に5兆1,957億円(2020年比3兆8,136億円増)(注1)、国内SaaS市場は2024年に1兆1,178億円(2019年比5,162億円増)(注2)の規模に達すると予想されています。当社が提供する営業DXサービス「Sansan」は、法人向け名刺管理サービス市場において83.1%のシェア(注3)を占めており、同市場は当社サービスの成長等につれて、2013年から2020年にかけて13倍に拡大しています。また、当社が提供するクラウド請求書受領サービス「Bill One」は、クラウド請求書受領サービス市場においてNo.1の売上高シェア(注4)を獲得しており、2021年度の同市場は、前連結会計年度と比べて226.0%増加しています。

 

当連結会計年度の経営成績は以下の通りです。

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前連結会計年度比

 

 

 

 

売上高

16,184

20,420

+26.2%

売上総利益

14,192

17,904

+26.2%

営業利益

736

631

△14.2%

経常利益

375

968

+158.3%

親会社株主に帰属する当期純利益

182

857

+369.7%

 

当連結会計年度においては、継続的な売上高の成長の実現に向け、人材採用をはじめとした営業体制の強化のほか、「Sansan」や「Bill One」、キャリアプロフィール「Eight」の機能拡充等に取り組みました。

また、2021年12月1日を効力発生日として、普通株式1株につき4株の割合をもって株式分割を行ったほか、2021年10月8日に公表の通り、新市場区分「プライム市場」の選択を株式会社東京証券取引所に申請し、2022年4月4日の新市場区分一斉移行後の当社の市場区分は、プライム市場となりました。

 

以上の結果、当連結会計年度における売上高は前連結会計年度比26.2%増、売上総利益は前連結会計年度比26.2%増、売上総利益率は前連結会計年度と同じ87.7%となり、コロナ禍における一定のマイナス影響を受けたものの、総じて堅調な実績となりました。一方で、営業利益は前連結会計年度比14.2%減となりましたが、これは、積極的な人材採用を進めたことで人件費が前連結会計年度比で2,013百万円増加したことに加え、マーケティング活動の強化によって広告宣伝費が前連結会計年度比で145百万円増加したこと等によるものであり、中長期的な売上高の成長実現に向けた戦略を推進した結果です。また、経常利益は前連結会計年度比158.3%増、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比369.7%増となりましたが、これは2021年7月19日公表の通り、投資有価証券売却益979百万円を営業外収益に計上したこと等によるものです。

 

(注)1.「2022 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望 市場編、ベンター戦略編」富士キメラ総研

2.「ソフトウェアビジネス新市場 2020年版」富士キメラ総研

3.「営業支援DXにおける名刺管理サービスの最新動向2022」(2021年12月 シード・プランニング調査)

 4. デロイト トーマツ ミック経済研究所「驚異的な成長が見込まれるクラウド請求書受領サービス市場の現状と将来」(ミックITリポート2022年7月号)

 

 

セグメント別の業績は以下の通りです。

なお、当連結会計年度より、各プロダクトへの資源配分を最適化し、プロダクト毎の成長促進を図る目的で経営管理体制の整備を行ったことから、従来の「Sansan事業」について、「Sansan」及び「Bill One」等の複数のプロダクトを含めた事業として「Sansan/Bill One事業」に変更しています。

 

(ⅰ)Sansan/Bill One事業

当事業セグメントには、営業DXサービス「Sansan」やクラウド請求書受領サービス「Bill One」等のサービスが属しています。

当連結会計年度におけるSansan/Bill One事業の成績は以下の通りです。

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前連結会計年度比

 

 

 

 

売上高(注5)

14,605

18,105

+24.0%

「Sansan」

14,519

17,214

+18.6%

「Sansan」ストック

13,811

16,349

+18.4%

「Sansan」その他

707

865

+22.3%

「Bill One」

84

826

+878.1%

その他

1

64

+4,414.0%

営業利益

5,278

5,725

+8.5%

 

 

 

 

「Sansan」

 

 

 

契約件数

7,744件

8,488件

+9.6%

契約当たり月次ストック売上高

162千円

170千円

+4.9%

直近12か月平均月次解約率(注6)

0.63%

0.62%

△0.01pt

「Bill One」

 

 

 

MRR(注7)

20

117

+479.7%

有料契約件数

239件

853件

+256.9%

有料契約当たり月次売上高

84千円

137千円

+63.1%

直近12か月平均月次解約率(注6)

0.49%

 

(注)5. 外部顧客への売上高及びセグメント間の内部売上高または振替高の合計値

6. 各サービスの既存契約の月額課金額に占める、解約に伴い減少した月額課金額の割合

7. Monthly Recurring Revenue(月次固定収入)

 

a.「Sansan」

「Sansan」の契約件数及び契約当たり月次ストック売上高のさらなる拡大に向け、クラウド名刺管理サービス「Sansan」を「営業を強くするデータベース」をコンセプトに、営業DXサービス「Sansan」へ刷新しました。具体的には、2023年6月からの利用開始に向け、「Sansan」上で100万件以上の企業情報が閲覧できる企業データベースのほか、名刺だけではなくメール署名等の接点情報を蓄積し可視化できる機能の開発に取り組みました。これらの接点情報と企業データベースを組み合わせることで、接点のない企業の情報も含めた利用企業ならではのデータベースを「Sansan」上に構築することができるようになります。新型コロナウイルス感染症の影響によって新規契約の獲得に一定のマイナス影響が生じたものの、営業体制の強化等が奏功し、中堅・大企業の新規契約獲得が進んだ結果、「Sansan」の契約件数は前連結会計年度末比9.6%増、契約当たり月次ストック売上高は前連結会計年度比4.9%増となりました。また、直近12か月平均の月次解約率は、既存顧客の利用拡大に対する継続的な取り組みを行った結果、前連結会計年度比0.01ポイント減の0.62%となり、低水準を維持しました。

この結果、「Sansan」売上高は前連結会計年度比18.6%増、うち、固定収入であるストック売上高は前連結会計年度比18.4%増、その他売上高は前連結会計年度比22.3%増となりました。

 

b.「Bill One」

「Bill One」の高成長継続に向け、人材採用をはじめとした営業体制の強化や機能拡充等に取り組んだ結果、中堅・大企業の新規契約獲得が進み、有料契約件数は前連結会計年度末比256.9%増、有料契約当たり月次売上高は前連結会計年度比63.1%増となりました。

この結果、「Bill One」売上高は前連結会計年度比878.1%増となりました。また、2022年5月におけるMRRは前年同月比479.7%増、ARR(注8)は1,407百万円となり、目標としていたARR10億円を大幅に上回りました。

 

(注)8. Annual Recurring Revenue(年間固定収入)

 

c. その他

既存サービスで培った強みや知見、ノウハウ等を活かして、クラウド契約業務サービス「Contract One」等の立ち上げに注力しました。

この結果、その他売上高は前連結会計年度比4,414.0%増となりました。

 

以上の結果、Sansan/Bill One事業の売上高は前連結会計年度比24.0%増となりました。セグメント利益は、主には「Bill One」のさらなる成長実現のための投資を強化したことから、前連結会計年度比8.5%増となりました。

 

(ⅱ)Eight事業

当事業セグメントには、キャリアプロフィール「Eight」のほか、ログミー株式会社が提供する書き起こしメディアのサービスが属しています。

当連結会計年度におけるEight事業の成績は以下の通りです。

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前連結会計年度比

 

 

 

 

売上高(注5)

1,582

2,213

+39.9%

BtoCサービス

296

286

△3.6%

BtoBサービス

1,286

1,927

+49.9%

営業利益

△754

△386

 

 

 

 

「Eight」

 

 

 

「Eight」ユーザー数(注9)

292万人

310万人

+18万人

「Eight Team」契約件数

2,253件

2,819件

+25.1%

 

(注)9.アプリをダウンロード後、自身の名刺をプロフィールに登録した認証ユーザー数

 

2022年4月に、名刺アプリであった「Eight」を「名刺管理に、転職に」をコンセプトとしたプロダクトへ刷新しました。具体的には、「Eight」上にキャリア形成に役立つ情報を集約したキャリアタブの機能を搭載することで、ユーザーが効率的に情報取得することができるようにしました。

 

a. BtoCサービス

サービスの機能拡充等に取り組んだ結果、「Eight」ユーザー数は前連結会計年度末比18万人増の310万人となりましたが、BtoCサービス売上高は前連結会計年度比3.6%減となりました。

 

b. BtoBサービス

2022年5月には当連結会計年度で2回目となる大型ビジネスイベント「Climbers」を開催する等、各種BtoBサービスのマネタイズ強化に取り組んだ結果、BtoBサービス売上高は前連結会計年度比49.9%増となりました。また、「Eight Team」の契約件数は前連結会計年度末比25.1%増となりました。

 

以上の結果、Eight事業の売上高は前連結会計年度比39.9%増、セグメント損失は前連結会計年度と比較して367百万円縮小しました。

 

 

②財政状態の分析

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前連結

会計年度末比

 

 

 

 

資産合計

24,310

26,292

1,982

負債合計

11,725

14,199

2,473

純資産合計

12,584

12,093

△491

負債純資産合計

24,310

26,292

1,982

 

(資産)

 当連結会計年度末における総資産は26,292百万円となり、前連結会計年度末に比べ、1,982百万円増加しました。これは主に、現金及び預金の増加3,043百万円及び売掛金の増加185百万円、投資有価証券の売却による減少2,082百万円によるものです。

 

(負債)

 当連結会計年度末における負債合計は14,199百万円となり、前連結会計年度末に比べ、2,473百万円増加しました。これは主に長期借入金の新規借入による増加1,668百万円及び顧客企業から契約期間分の料金を一括で受領すること等による前受金の増加1,479百万円、1年内返済予定の長期借入金の減少608百万円、短期借入金の減少200百万円及び繰延税金負債の減少571百万円によるものです。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産額は12,093百万円となり、前連結会計年度末に比べ、491百万円減少しました。これは主に、投資有価証券の期末評価に伴うその他有価証券評価差額金の減少1,536百万円、新株予約権の行使による資本金の増加113百万円及び親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加857百万円によるものです。

 

③キャッシュ・フローの分析

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前年同期比

 

 

 

 

営業活動によるキャッシュ・フロー

3,011

3,123

111

投資活動によるキャッシュ・フロー

△551

△1,014

△463

財務活動によるキャッシュ・フロー

△2,902

909

3,811

現金及び現金同等物の期末残高

12,223

15,245

3,021

 

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は15,245百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,021百万円増加(前年同期比24.7%増)しました。当該増加には資金に係る為替変動による影響3百万円が含まれています。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は3,123百万円(前年同期は3,011百万円の収入)となりました。主な資金増加要因は、税金等調整前当期純利益の計上908百万円、非現金支出となる減価償却費の計上768百万円、持分法による投資損失の計上609百万円並びに前受金の増加1,479百万円等であり、主な資金減少要因は、投資有価証券売却益979百万円の計上、売上債権の増加183百万円等によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は1,014百万円(前年同期は551百万円の支出)となりました。これは主に投資有価証券の取得による支出2,555百万円、関係会社株式の取得による支出500百万円、無形固定資産の取得による支出453百万円及び有形固定資産の取得による支出468百万円等の支出、投資有価証券の売却による収入3,224百万円等の収入によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果得られた資金は909百万円(前年同期は2,902百万円の支出)となりました。これは主に長期借入金の借入による収入3,250百万円及び株式の発行による収入209百万円等の収入、短期借入金の純減少200百万円及び長期借入金の返済による支出2,190百万円等の支出によるものです。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社グループは、提供するサービスについて生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載はしていません。

 

b.受注実績

 当社グループは、受注から役務提供の開始までの期間が短いため、受注実績に関する記載は省略しています。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の外部顧客への販売実績をセグメント毎に示すと、次の通りです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年6月 1日

至 2022年5月31日)

前年同期比(%)

Sansan/Bill One事業

(百万円)

18,104

+24.0%

Eight事業

(百万円)

2,204

+39.6%

合計

(百万円)

20,309

+25.5%

(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しています。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りです。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。

①重要な会計方針及び見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成に当たって、重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しています。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載の通りです。なお、新型コロナウィルス感染症の影響については、今後の広がり方や収束時期等を正確に予測することは困難な状況にありますが、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う経済への影響が2022年5月末まで続くとの仮定の下、繰延税金資産の回収可能性等の会計上の見積りを行っています。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要」に含めて記載しています。

 

③資本の財源及び資金の流動性

当社グループは、認知度の向上及びユーザー数の拡大をすべく、積極的に広告宣伝活動を実施しました。今後も広告宣伝投資を継続して実施する方針です。当社グループの資金需要の一定割合は広告宣伝投資であり、必要な資金は自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本方針としています。なお、これらの資金調達方法の優先順位等に特段方針はなく、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に検討を行う予定です。

 

④経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」をご参照ください。

 

⑤経営者の問題意識と今後の方針に関して

経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

4【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

5【研究開発活動】

 該当事項はありません。