当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下の通りです。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、企業理念において「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションの下、「ビジネスインフラになる」というビジョンを掲げています。このミッション、ビジョンの実現に向けて、さまざまなビジネス課題を抱える企業やビジネスパーソンの働き方を変え、DXを促進するサービスを展開しており、これらの事業活動の推進が社会課題の解決に寄与し、ひいては当社グループの株主価値及び企業価値の最大化につながるものと考えています。
(2)重視する経営指標と中期目標
2023年5月期から2025年5月期にかけての中期的な目標として、売上高成長と利益成長の両立を目指します。まず、最も重要な経営指標である連結売上高については、20%中盤以上の堅調な成長の継続を目指します。なお、従来は2023年5月期から2025年5月期にかけての連結売上高の目標を20%台以上の成長としていましたが、2023年5月期の堅調な実績を受け、目標値を変更しています。
次に、重視する利益指標として、株式報酬関連費用や企業結合に伴い発生する費用を控除した調整後営業利益(注1)を採用し、各事業の売上高成長に向けた必要な投資を行いながらも、毎連結会計年度における調整後営業利益率の向上を目指します。利益率の向上を実現するに当たっては、2025年5月期における「Sansan」「Bill One」サービス合計(注2)の調整後営業利益100億円以上の計上と、Eight事業における通期での安定的な調整後営業利益の計上を目指します。
(注)1. 調整後営業利益:営業利益+株式報酬関連費用+企業結合に伴い生じた費用(のれん償却額及び無形固定資産の償却費)
2. Sansan/Bill One事業における「Sansan」「Bill One」の合計値であり、「その他」は除く
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループの事業や事業領域には次のような特徴があり、これらに基づいて中長期的な経営戦略を立案しています。
①広大な市場機会
新型コロナウイルス感染症による働き方の変化やDXへの意識改革、SaaSビジネスへの関心の高まり等によって、当社サービスに関連する市場は拡大が続いています。DX市場は2030年において5兆1,957億円(2020年比3兆8,136億円増)(注3)、国内SaaS市場は2026年には1兆6,681億円(2022年比5,790億円増)(注4)の規模に達すると予想されています。
また、名刺や請求書、契約書といった書類は、現在でも紙のままで日常的に利用されていてデジタル化が進んでおらず、業務効率化や有効活用の余地が大きく残されていると考えています。各サービスの潜在市場について、「Sansan」は、法人向け名刺管理サービス市場において81.6%(注5)のシェアを有していますが、日本国内の総労働人口を対象として捉えた場合、「Sansan」利用者数の割合は約3%(注6)に留まっており、広大な開拓余地が残されていると考えています。次に「Bill One」では、無料利用を含めた契約企業と、各契約企業に対して請求書を送付する企業で構成されるインボイスネットワークを構築していますが、2023年5月末時点におけるネットワーク参加企業数は、日本国内の企業の約4%(注6)に当たる約9.0万社に過ぎないため、広大な開拓余地が存在していると考えています。
(注)3.「2022 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望 市場編、ベンター戦略編」富士キメラ総研
4.「ソフトウェアビジネス新市場 2022年版」富士キメラ総研
5.「営業支援DXにおける名刺管理サービスの最新動向2023」(2022年12月 シード・プランニング調査)
6.分母となる国内の総企業数及び従業者数は、総務省統計「令和3年経済センサス活動調査」を基に算出
②アナログ情報のデータ化精度99.9%を実現する仕組みとテクノロジー
当社グループが提供する各サービスにおけるアナログ情報のデータ化精度は、サービスの本質的な品質・競争力に資するものであり、99.9%の精度を実現する仕組みとテクノロジーを有していることが当社グループ事業共通の強みとなっています。当社グループのサービスでは、機械学習等によって日々進化するテクノロジーと、人力の組み合わせによってアナログ情報のデータ化を行っており、創業以来、人力によるデータ入力を中心に、膨大な名刺をはじめとするアナログ情報をデータ化してきたことで、現在では、大量のアナログ情報を正確かつ効率的にデータ化する独自システムの開発・運営が可能となりました。この技術力と独自の仕組みが競争力の源泉であり、継続的なサービス品質・競争力の向上に向けて、新技術の開発やオペレーションの改善を追求しています。また、これらの仕組みやテクノロジーは、さまざまなビジネス分野で活用が可能であるという特徴を有しています。
③高い安定性を誇る財務・収益モデル
「Sansan」「Bill One」の課金モデルは、継続収入が見込めるサブスクリプション(月額課金)が中心となっており、安定的かつ継続的な事業成長が見込めるモデルです。また、サービスの月次解約率は直近12か月平均で1.0%未満に留まっており、契約当たり売上高の拡大に努めることで、顧客LTV(ライフタイムバリュー)の最大化を推進しやすいことから、魅力的なモデルであると捉えています。
具体的な当社グループの経営戦略は、以下の通りです。
(ⅰ)Sansan/Bill One事業の売上最大化
「Sansan」及び「Bill One」は業種や業態を問わず、多くの企業を対象とするサービスであり、日本国内だけでも大きな顧客開拓余地があります。2024年5月期期首より、今後の売上高のさらなる成長に向けて「Sansan」「Bill One」それぞれに専属の営業部門を設け、主に中堅・大企業を対象とした営業体制を強化しました。今後も積極的な人員採用を継続することで営業体制をさらに強化し、「Sansan」においては、ユーザー企業の全社員によるサービス利用(全社利用)を前提とした新規顧客獲得や既存顧客の利用拡大の促進等について継続的に取り組み、「Bill One」においては新規顧客獲得やオプション機能の充実による、さらなる売上高の拡大を図ります。
また、サービス面においては、「Sansan」「Bill One」ともに、さらなる機能の充実化によって顧客にとってのサービス価値向上を図ります。「Sansan」においては、顧客とのメールを自動で「Sansan」上に蓄積・可視化する機能等、営業活動のDXを促進する機能の追加に取り組みます。「Bill One」においては、オプションサービスとして追加した法人カードサービスの利便性向上や、経理業務の効率化につながるさまざまな機能の拡充に取り組みます。
また、「Sansan」で培った技術を活用した新たなサービスの創出や、立ち上げた新サービスの強化にも取り組みます。契約DXサービス「Contract One」においては、契約書の要約に生成AIを活用する等、契約書の全社利用に向けたサービス開発に注力していきます。
(ⅱ)Eight事業の収益化
登録ユーザー330万人を有する「Eight」のネットワークを活用し、ビジネスイベント等のBtoBサービスのマネタイズを強化するほか、より収益性を重視する事業運営に移行することで、事業全体で通期での調整後営業利益の黒字化を目指します。
(ⅲ)M&Aの活用
2023年3月にグループ会社化したクリエイティブサーベイ株式会社と、2023年6月にグループ会社化した株式会社言語理解研究所の企業価値向上に向けた施策を推進するとともに、当社グループの既存サービスとのシナジー創出に取り組みます。また、M&Aの活用は重要な成長戦略の1つに位置付けており、今後も積極的な検討を進めます。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
上記の経営戦略を進めるに当たって、当社グループの対処すべき主な課題は以下の通りです。
①セキュリティリスクに対する管理体制の継続的な強化
当社グループは個人情報等の重要な情報資産を多く扱っており、情報管理体制を継続的に強化していくことが重要であると考えています。現在においても個人情報保護方針及び情報セキュリティ方針を策定した上で、情報資産を厳重に管理する等、個人情報保護に係る施策には万全の注意を払っていますが、今後も社内体制や管理方法の強化・整備を行っていきます。
②優秀な人材の採用・育成と多様性の確保
当社グループの持続的な成長のためには、多岐にわたる経歴をもつ優秀な人材を多数採用し、営業体制や開発体制、管理体制等を整備していくことが重要であると捉えています。当社グループの企業理念や事業内容に共感した優秀な人材が、高い意欲を持って働ける環境や仕組みの構築を進めるとともに、人材の多様性確保にも取り組みます。
③技術力の強化
アナログ情報を正確にデジタル化する技術は、当社グループの競争力の源泉であり、当社グループが手掛けるさまざまなサービスの成長を支える共通基盤でもあることから、継続的な改善、強化が重要であると考えています。優秀な技術者の採用や先端技術への投資・モニタリング等を通じて、国内を代表する技術者集団になるべく、技術力の向上に取り組みます。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは次の通りです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)サステナビリティ全般への取り組み
①ガバナンス
当社グループでは、事業活動を通じて社会課題の解決に貢献することが持続可能な社会の構築に寄与し、ひいては当社グループの持続可能な成長や企業価値の向上につながるものと考えており、事業環境や経営状況、事業ステージといったさまざまな要素を考慮した上で、全てのステークホルダーとの協働・連携を通じてサステナビリティの実現に向けた活動を推進することとしています。このような考え方の下、サステナビリティ上の重要課題(マテリアリティ)については、それぞれに対して当社取締役を責任者として設定し、その監督の下で対応方針や取り組み内容を検討しています。本検討内容を含むサステナビリティの実現に資する事項については、毎年取締役会が報告を受けて監督しており、重要事項については、取締役会で審議し、決定しています。
②戦略
当社グループでは、優先的に取り組むべきサステナビリティ上の重要課題を次のプロセスにて特定しています。
|
(ⅰ)重要課題候補の選定 |
SASB(Sustainability Accounting Standards Board)スタンダードやSDGs(持続的な開発目標)におけるゴール、ターゲットといった国際ガイドラインや原則を参照するほか、当社取締役や機関投資家との議論等を通じて、当社グループに関連性が高い重要課題候補を選定します。 |
|
(ⅱ)課題の重要性評価 |
(ⅰ)で選定した各課題について、「持続可能社会を実現する上での社会(ステークホルダー)にとっての重要性」と、「当社グループがビジョンの達成や事業成長を実現する上での重要性」の2軸の観点で、当社の全取締役が個別に評価を行います。 |
|
(ⅲ)取締役会での議論・決議 |
(ⅱ)での評価結果について、取締役会で議論、審議を行い、重要課題を特定します。 |
上記の結果、当社グループでは次の通り、5つの分野に整理される10の重要課題を特定しています。
|
重要分野(1) |
セキュリティと利便性の両立 利便性を確保した上で、全従業員を対象としたデータプライバシーの保護や情報セキュリティ対策を講じ、安全性の高いサービス提供を安定的に行います。
重要課題 1.安全かつ安定的なインフラサービスの提供 2.データプライバシーの保護と情報セキュリティの徹底 |
|
重要分野(2) |
革新的なDXサービスで働き方を変革 ビジネスインフラになるべく、当社の強みであるデータ化技術を活用し、社会・経済の生産性を大きく向上させる革新的なDXサービスの開発・提供に取り組みます。
重要課題 3.生産性向上に寄与するDXサービスの推進 4.革新的なビジネスインフラの創造 |
|
重要分野(3) |
人材の多様性を尊重し、イノベーションを生み出す 出会いの力でビジネスの課題解決につながるイノベーションを生み出すため、多様性に富んだ全ての人材が活躍できる機会の創出や環境の整備を推進します。
重要課題 5.人材の採用・育成・活躍推進 6.ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進 |
|
重要分野(4) |
急速な事業成長を支える強固な経営基盤の確立 コーポレートガバナンスの強化やコンプライアンスの徹底により、事業成長を支える経営基盤の強化を推進します。
重要課題 7.コーポレートガバナンスの強化 8.コンプライアンスの徹底 |
|
重要分野(5) |
事業活動を通じた自然環境の保全 DXの推進やペーパーレス化の支援、環境に配慮したサービスの導入等、事業活動を通じて気候変動問題への対応に取り組むことで、自然環境の保全を推進します。
重要課題 9.気候変動問題への対応 10.自然資源の効率的活用 |
③リスク管理
当社グループでは、サステナビリティ対応におけるリスク等については、経営や事業に重大な影響を及ぼす可能性があるリスク等と同義あるいは密接な関係にあると捉えており、分析や把握については、全社的なリスク管理の一環として実施しています。リスク等の内容については、「
④指標及び目標
当社グループでは、サステナビリティ上の重要課題に関する評価指標及び2030年5月期における目標を次の通り定め、進捗をモニタリングしています。
|
重要課題 |
評価指標及び2030年5月期目標 |
2023年5月期実績 |
|
1.安全かつ安定的なインフラサービスの提供 |
重要なインシデント発生件数:0件 |
0件 |
|
2.データプライバシーの保護と情報セキュリ ティの徹底 |
個人情報保護士取得率:80%以上の維持 |
88.0% |
|
3.生産性向上に寄与するDXサービスの推進 |
当社サービスでのアナログ情報のデジタル化件数:5億件 |
1.9億件 |
|
4.革新的なビジネスインフラの創造 |
当社サービス利用者数:2,000万人 |
573万人 |
|
5.人材の採用・育成・活躍推進 |
リファラル採用比率:35% 「Unipos」(ピアボーナス)投稿率:80% |
12.0% 59.6% |
|
6.ダイバーシティ・エクイティ&インクルー ジョンの推進 |
女性管理職比率:30%以上 女性従業員比率:45%以上 |
17.8% 34.9% |
|
7.コーポレートガバナンスの強化 |
女性取締役比率:30%以上 |
22.2% |
|
8.コンプライアンスの徹底 |
重大なコンプライアンス違反件数:0件 コンプライアンス関連の研修受講率:100% |
0件 100% |
|
9.気候変動問題への対応 |
スコープ1+2:カーボンニュートラル |
851t-CO2 |
|
10.自然資源の効率的活用 |
当社サービスにおけるペーパーレス機能の利用件数:1.2億件 |
0.1億件 |
(注)1. 当社単体の実績・目標を記載しています。
2. 個人情報保護士は、財団法人全日本情報学習振興協会が設定する資格の称号です。
3. 当社サービスに関する実績は、「Sansan」「Bill One」「Contract One」「Eight」における該当実績を
集計しています。
4. 「Unipos」は、Unipos株式会社が提供するピアボーナスを軸とするサービスです。
5. スコープ1は、当社が所有するオフィスや設備において直接排出されたGHG排出量を集計しています。ス
コープ2は、各オフィスにて購入した電力や熱エネルギー等の使用を通じて間接的に排出されたGHG排出
量を集計しています。
(2)気候変動課題への取り組み
当社グループでは、気候変動問題に関して、適切な体制の下で事業上のリスクや機会を把握・監督し、課題への対応力を高めていくことは、安定的な経済発展や生活の基盤確保等を目指して、低炭素経済、ひいては脱炭素社会への移行を進める上で極めて重要な取り組みであると捉えています。このような考え方の下、当社は気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が公表する提言に賛同を表明しており、当該枠組みに基づく開示を以下の通り、行っています。
①ガバナンス
当社グループでは、サステナビリティの実現に資する各種方針や重要事項等については、取締役会で審議し、決定しています。気候変動問題への対応は、当社グループが優先的に取り組むべき重要課題(マテリアリティ)の1つに特定し、責任者である代表取締役の監督の下、IR室やオフィス戦略部、財務経理部等のコーポレート部門で構成される気候変動対応プロジェクトを設置し、検討しています。当該プロジェクトにおいて、検討、集計及び特定等がなされた気候変動に係る各種指標や事業上のリスク、機会といった事項は、取締役会が毎年報告を受け、監督しており、事業戦略や計画は、当該重要事項を考慮した上で決定しています。
②戦略
当社グループでは、気候変動がもたらす事業環境変化への対応力や適応力を強化するべく、主には、IPCCの共有社会経済経路・代表的濃度経路といったシナリオを利用し、気温上昇を1.5℃(SSP1-1.9)や2℃未満(SSP1-2.6)に抑えた事業環境のほか、4℃上昇(SSP5-8.5)が生じた事業環境を分析しています。その上で特定した事業上のリスク、機会及び対応策は下表の通りです。
なお、分析の対象期間として、現在から2025年までを短期、2030年までを中期、2050年までを長期として設定し、当社グループの全事業を対象範囲としています。また、利益影響度は、年間10億円未満の場合を小、10億円以上30億円未満の場合を中、30億円以上の場合を大として表示しています。
(ⅰ)リスクの特定
|
種類 |
シナリオ分析 |
リスクの内容 |
発現時期 |
利益影響度(年間) |
対応策 |
||
|
1.5℃/2℃未満シナリオ |
4℃シナリオ |
||||||
|
移行リスク |
市場 |
社会全体で環境保護意識が高まり、紙を利用した各種ビジネスツールの利用が漸次的に減少し、デジタル情報の利用が拡大する。 |
紙の名刺や請求書、契約書等をデジタル化し、生産性の向上を実現する当社サービスの一部機能の活用頻度や重要性が低下する。 |
短・中期 |
小 |
小 |
デジタル情報の活用を主軸とした利便性の高い機能を拡充し、プラットフォームとしての価値を向上させることで、アナログ情報のデジタル化による価値と同等以上の付加価値を提供する。 |
|
クリーンエネルギーの利用に対する社会要請や需要が拡大し、各種エネルギー価格が高騰するほか、温暖化によって情報通信設備の冷却負荷が増加する。 |
SaaS型のビジネスモデルを中心に事業展開する当社にとって必要不可欠なサーバー価格や電力等の各種エネルギー価格が上昇し、営業費用が増加する。 |
中・長期 |
小~中 |
小 |
サーバーや電力をはじめとした必要資源・資材の調達先を適正化することでコスト削減に努めるほか、省エネの実施によって効率を向上させ、エネルギー使用量を削減する。 |
||
|
法規制 |
多くの国や地域においてGHG排出量に対する各種規制が強化されるほか、カーボンプライシングとして新たに炭素税や高い税率が導入される。 |
税金負担額をはじめ、カーボンオフセットのための非化石証書やクレジットの購入費用が増加する。 |
中・長期 |
小 |
小 |
再生可能エネルギーの利用拡大や、省エネの実施によるエネルギー効率の向上等によって、税金負担額やカーボンオフセットに係る費用を削減する。 |
|
|
物理的リスク |
急性 |
大きな被害につながる集中豪雨や洪水といった自然災害が激甚化かつ頻発化する。 |
利用するサーバーや、紙の請求書等のデジタル化を担う拠点が浸水し、サービス提供が停止するほか、当社が保管するサービス利用企業の書類の汚損が発生し、サービス価値が低下する。 |
中・長期 |
小~中 |
小~大 |
事業継続計画(BCP)の一環として、複数サーバーの利用によるシステムの冗長化、サービス運営上の重要拠点の分散化や緊急時用のマニュアル整備等を行うことで、自然災害時におけるサービスの継続性を確保する。 |
(ⅱ)機会の特定
|
種類 |
シナリオ分析 |
機会の内容 |
発現時期 |
利益影響度(年間) |
対応策 |
|
|
1.5℃/2℃未満シナリオ |
4℃シナリオ |
|||||
|
製品/サービス |
社会全体で環境保護意識が高まり、紙の利用抑制につながるサービスへの需要が拡大するほか、気温上昇に伴う感染症リスクの高まりによって、非対面・非接触型の事業活動が増加し、デジタル情報活用の重要性が高まる。 |
デジタル情報の活用によってさまざまな業務フローの効率化を実現しながら、紙の利用抑制にもつながる機能を備えた当社の各種DXサービスに対する需要が拡大する。 |
中・長期 |
小~中 |
小 |
デジタル情報の活用を主軸とした利便性の高い機能を拡充し、ユーザーへの提供価値を向上させるほか、営業やマーケティング活動を強化し、さらなる需要を喚起する。 |
③リスク管理
当社グループでは、各領域の管掌取締役と気候変動対応プロジェクトとの協議の下でシナリオ分析を行い、気候変動に関する事業上のリスクと機会を特定し、重要性の評価や利益影響度の算出、対応策の検討を行っています。当該事項は年次で取締役会に報告され、取締役会は、これらリスクや対応策といった重要事項を考慮した上で、事業戦略や計画を決定しています。また、気候変動に関する重要なリスクは、内部監査等で実施する全社的なリスク分析の結果と統合し、管理しています。
④指標及び目標
当社グループでは、気候変動に関する評価指標としてGHG排出量を選定しており、直近3か年における実績は下表の通りです。
また、2024年5月期において、スコープ1及びスコープ2の削減目標として、2030年までのカーボンニュートラルの実現を新たに掲げました。今後、目標の達成に向けて各種取り組みに着手していくとともに、スコープ3の削減目標の設定についても、さまざまな内部・外部要因等を踏まえて、総合的な検討を進めていきます。
|
項目 |
単位 |
前々年連結 会計年度 |
前連結 会計年度 |
当連結 会計年度 |
|
スコープ1 |
t-CO2 |
0 |
0 |
0 |
|
スコープ2(ロケーション基準) |
t-CO2 |
477 |
639 |
840 |
|
スコープ2(マーケット基準) |
t-CO2 |
525 |
668 |
851 |
|
スコープ1+2(マーケット基準) |
t-CO2 |
525 |
668 |
851 |
|
スコープ3 |
t-CO2 |
- |
15,679 |
18,638 |
|
スコープ1+2+3(マーケット基準) |
t-CO2 |
- |
16,347 |
19,489 |
|
スコープ1+2+3 GHG排出量原単位(売上高当たり) |
t-CO2/億円 |
- |
81.7 |
78.2 |
(注)1. 当社単体の実績を集計しており、当連結会計年度時点で当社グループの事業範囲の97.7%(連結売上高に
占める単体売上高の割合)をカバーしています。
2. スコープ1は、当社が所有するオフィスや設備において直接排出されたGHG排出量を集計しています。ス
コープ2は、各オフィスにて購入した電力や熱エネルギー等の使用を通じて間接的に排出されたGHG排出
量を集計しています。スコープ3は、スコープ1及びスコープ2以外のバリューチェーン全体(カテゴリ1
から15まで)におけるGHG排出量を集計しています。
3. 集計方法の精緻化に伴い、前連結会計年度以前の実績を再計算しています。
(3)人的資本に関する取り組み
①ガバナンス
当社グループでは、持続的な事業成長や新しい価値創出を実現していく上で、人材を最も重要な経営資本の1つに位置付けており、人材の多様性を受け入れ、多岐にわたる経歴をもつ1人ひとりが高い意欲を持って働ける環境を整備することが重要であると捉えています。このような考え方の下、当社グループでは、優先的に取り組むべき重要課題として「人材の採用・育成・活躍推進」及び「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進」を特定しており、責任者である取締役/執行役員/CHROの下で具体的な取り組み内容を検討しています。本検討内容を含む人的資本に関する取り組みについては、定期的に取締役会が報告を受けて監督しており、重要事項については、取締役会で審議し、決定しています。
②戦略
当社グループでは、人的資本に関して、主に次の通り取り組みを行っています。
(ⅰ)多様性に富んだ優秀な人材の採用
重要な成長戦略の一環として継続的に人材採用を強化しており、当連結会計年度末の連結従業員数は1,399名となり、開発や営業、バックオフィス等のさまざまな組織は多様なバックボーンをもった人材で構成されています。採用においては、高い専門性やスキルを保有しているだけではなく、当社グループの企業理念に共感するミッションドリブンな姿勢のある人材を重視しており、ミッションやビジョン、バリューズといった企業理念と、自らのありたい姿が合致する人材ほど、入社後に活躍できる可能性が高い傾向にあります。そのため、当社ではリファラル採用を強化しています。
(ⅱ)人材の育成・活躍推進
優秀な人材が活躍するだけではなく、その優れた知見を組織が吸収し、周囲のさらなる成長につながる環境を整備する目的で、主に次のような取り組みを行っています。
|
名称 |
内容 |
|
カタチ議論 |
企業理念について全従業員で議論する機会を設けており、会社の価値観や文化に向き合うことは、個人の成長や生産性向上の観点で重要な機会となっています。 |
|
「Unipos」(ピアボーナス) |
ピアボーナスを軸とする全従業員参加型のプラットフォームを活用し、社内における称賛事例を可視化することで、会社文化の浸透や従業員のエンゲージメント向上を図っています。 |
|
エンゲージメントサーベイ |
月に1回、正社員、契約社員に対してエンゲージメントサーベイを実施し、回答の分析結果をセルフマネジメントや組織マネジメント、全社的な社内制度・施策の立案等に活用しています。 |
|
Know Me |
異なる業務に携わる従業員が3人1組で交流する場合に飲食費を補助する制度を設けて、社内コミュニケーションを活性化し、業務の質の向上につなげています。 |
|
コーチャ |
個人の伸びしろや可能性から成長のための課題を発見し、行動の後押しをすることを目的に、コーチングの専門資格をもつ従業員から、1対1でのコーチングが受講可能な制度を設けています。 |
|
Geek Seek |
サービスの品質向上を目的として、エンジニア職や研究職、デザイナー職向けに知識習得や業務効率向上に必要な書籍、ツールの購入やイベント参加費用等を補助する制度を設けています。 |
(ⅲ)女性の活躍推進
経歴や性別といった特定の属性によることなく、積極的に優秀な人材を採用、登用する方針の下、全ての従業員に対して公平な評価及び登用の機会を設けています。結果として、女性従業員比率や女性の登用率は向上傾向にあり、毎期のモニタリング等を通じて、特定の属性によらないフェアな評価運用を継続していきます。
(ⅳ)外国籍、障がい者雇用の推進
海外での積極的な事業展開を志向する上で、外国籍をもつ従業員の採用を強化しており、海外拠点における外国籍従業員と日本国内における日本国籍従業員との交流機会を創出し、コミュニケーションを活性化させることで、多様性を受け入れながらミッションを実現していく企業風土の醸成に努めています。また、障がい者の就労機会の創出や活躍機会の拡大についても取り組んでいます。
③リスク管理
当社グループでは、人的資本に関するリスク等については、経営や事業に重大な影響を及ぼす可能性があるリスク等と同義あるいは密接な関係にあると捉えており、分析や把握については、全社的なリスク管理の一環として実施しています。リスク等の内容については、「
④指標及び目標
当社グループでは、人的資本に関する取り組みについて、主には次の通り評価指標を定め、進捗をモニタリングしています。また、一部の指標については、2030年5月期における目標を設定しています。
|
重要課題 |
評価指標(2030年5月期目標) |
2023年5月期実績 |
|
人材の採用・育成・活躍推進 |
リファラル採用比率(35%) |
12.0% |
|
「Unipos」投稿率(80%) |
59.6% |
|
|
「Unipos」での称賛投稿数 |
約45,000件 |
|
|
エンゲージメントサーベイ回答率 |
82.6% |
|
|
「カタチ」関連研修の総参加時間 |
約5,600時間 |
|
|
Geek Seekへの投資額 |
43百万円 |
|
|
社員間交流施策への投資額 |
12百万円 |
|
|
社内コーチング延べ参加人数 |
約800人 |
|
|
ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン の推進 |
女性管理職比率(30%以上) |
17.8% |
|
女性従業員比率(45%以上) |
34.9% |
|
|
外国籍従業員比率 |
2.6% |
|
|
障がい者雇用比率 |
2.6% |
(注)1. 当社単体の実績・目標を記載しています。
2. 外国籍従業員比率は、当社及び当社子会社のSansan Global Pte. Ltd.を対象に算出しています。
3. 障がい者雇用比率は、3月期決算の期間(4月から翌年3月)に読み替えて算出しています。
当社グループの経営・事業上のリスクには、名刺や請求書といった企業の重要情報を扱うサービスを提供しているため、個人情報の取り扱いやシステムの整備等、情報セキュリティに関するものが挙げられます。また、インターネットの利用環境や技術革新、ユーザーの行動変容といった不確実性の高いリスクも存在しています。これらのリスクに対して、管理体制や対応策の整備に努めており、急速な事業成長を支える経営基盤の強化に取り組んでいます。
(1)リスク管理
当社グループでは、経営に重大な影響を及ぼす可能性があるリスクに対して、その発生可能性を認識した上で、リスク管理体制やリスク対応の手法について整備しています。また、当社グループの事業を取り巻く環境の変化を踏まえ、発生の回避及び発生した場合の対応を実施しています。
①リスクの把握・分析
当社グループでは、内部監査規程に従って内部監査計画を策定し、内部監査プロセスにおいて定期的にリスク把握及び分析をしており、各部署において抽出されたリスクについて、発生頻度及び影響度の観点からリスク評価を行い、リスクの未然防止や早期発見に努めています。
②インシデントガイドライン
当社グループでは、災害や事故、不正アクセス、脆弱性の問題等のサービス提供に係るインシデントが発生した場合に備え、各部署においてインシデントに対する体制・指揮命令系統や判断基準、対応手順に関するガイドラインを定めています。具体的には、インシデントの種別を機密性・完全性・可用性という3つの観点で種別し、それぞれの対応について優先度を設定した上で、各部署におけるインシデントの判断・対応の意思決定者を定めています。
(2)主なリスク
以下において、当社グループの事業及び財務・経理の状況等に影響を及ぼす事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を記載しています。当社グループは、これらのリスクの発生可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ですが、当社グループの株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えています。
なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。
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種別 |
項目 |
リスク内容 |
対応 |
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情報セキュリティリスク |
(1)個人情報の取り扱いについて
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・自然災害や事故、外部からの悪意による不正アクセス行為及び内部の故意または過失による顧客情報の漏洩、消失、改ざんまたは不正利用 |
・個人情報保護マネジメントシステムの構築、運用 ・プライバシーマーク付与の認定 ・ISMS、ISO27017の認証及びSOC2の発行 ・全従業員への個人情報保護士資格の取得義務付け ・国内外の新たな法的規制等に関する情報収集及び必要な対策の実施 ・法令遵守の徹底及び業務委託先の安全管理 |
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(2)設備及びネットワークの安定性について |
・火災、地震等の自然災害や外的破損、人的ミスによるシステム障害、その他予期せぬ事象による当社グループの設備及びネットワーク利用への支障発生 |
・複数のサーバーによる負荷の分散や定期的なバックアップ ・リアルタイムのアクセスログチェック機能やソフトウエア障害を即時に通知する仕組みの整備 ・障害発生時を想定した復旧訓練 |
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サービスリスク |
(3)サービス等の不具合について |
・当社グループのアプリケーション、ソフトウエアやシステムにおける各種不具合の発生 ・当社グループ事業の運用に支障をきたす致命的な不具合の発見 |
・信頼度の高い開発体制の構築、維持、サービスのインシデントガイドラインの策定と実施 |
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外部環境リスク |
(4)インターネットの利用環境について |
・インターネットの利用に関する新たな規制の導入や弊害の発生 |
・インターネットに関する法的規制等の情報収集及び課題抽出と解決策の実行 |
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(5)クラウド事業について |
・クラウドサービス自体の大幅な需要低迷 |
・新たな提供価値の創造 ・新技術の積極的な投入 ・特許取得等による知的財産権の保護 ・M&Aや資本業務提携の推進 |
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(6)技術革新への対応について |
・技術革新等への対応遅延 ・予想外の開発費等の発生 |
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(7)競合について |
・既存事業者や新たな参入事業者との競争激化 ・画期的なコンセプトの他社サービス出現による競争激化 |
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投資リスク
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(8)広告宣伝活動等の先行投資について |
・広告宣伝活動の方針や計画変更による大幅な支出増加 |
・広告宣伝活動の費用対効果のモニタリング |
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(9)企業買収等の投資について |
・買収や出資後における事業計画の遅延 |
・対象企業に対する十分なデューデリジェンスの実施 ・対象企業に対するモニタリングやフォローアップの徹底 |
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(10)システムインフラ等への投資について |
・サービスの安定運用のための、予期せぬハードウエアやソフトウエアへの追加投資 |
・外部からのアクセスに関するモニタリングの徹底 ・事業拡大に応じた適切なシステムインフラ投資の設計 |
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人的リスク |
(11)経営管理体制の確立について |
・事業規模に応じた事業体制や内部管理体制構築の遅延 |
・業容や従業員の増加に合わせた内部管理体制整備の徹底 |
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(12)人材の育成及び確保について |
・優秀な人材の不足 ・Sansan/Bill One事業の営業人材の確保遅延や流出 |
・積極的な人材採用 ・社内育成等による体制強化 ・労働環境の整備 |
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(13)特定の人物への依存について |
・代表取締役である寺田親弘の業務継続が困難となる何らかの事象の発生 |
・同氏に過度に依存しない体制の整備 ・役員間の相互情報共有や経営組織の強化 |
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法的リスク |
(14)法令について |
・国内外における新たなプライバシー関連法規の制定、インターネット関連事業者を規制する法律及び事業環境の拡大に伴い関連する法律等による影響 |
・法的規制等の情報収集及び課題抽出と解決策の実行 |
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(15)知的財産権の侵害等について |
・第三者からの特許権侵害や商標権侵害を理由とする損害賠償請求や差止請求 ・第三者による当社グループが保有している知的財産権への侵害 |
・特許事務所を通じた特許権侵害調査の実施 ・商標の出願、登録 ・法的措置の実施 |
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海外リスク |
(16)海外展開について |
・対応が困難な海外特有のリスク発生 ・海外事業の収益化の遅延 |
・事業展開地域の情報収集及び課題抽出と解決策の実行 ・適切な事業計画の策定 |
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その他 |
(17)インセンティブの付与について |
・発行するストックオプションの行使による既存株主の株式価値の希薄化(注1) |
・市場環境や既存株主への影響等を十分に考慮したストックオプションの設計 |
(注)1. 2023年7月31日時点でのストックオプションとしての付与株式数は発行済株式総数の2.76%当たる3,459,544株
(1)経営成績に関する説明
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要は次の通りです。
①経営成績の分析
当社グループは、「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションの下、「ビジネスインフラになる」というビジョンを掲げ、クラウドソフトウエアにテクノロジーと人力によってアナログ情報をデジタル化する仕組みを組み合わせた手法を軸に、人や企業との出会いをビジネスチャンスにつなげる、働き方を変えるDXサービスを提供しています。
具体的には、企業の営業活動や請求書業務、契約書業務等に対して、デジタルトランスフォーメーション(DX)を促進するサービスを展開しており、DXへの意識改革やコロナ禍による働き方の変化、SaaSビジネスへの関心の高まり等によって、国内DX市場は2030年度に5兆1,957億円(2020年度比3兆8,136億円増)(注1)、国内SaaS市場は2026年度に1兆6,681億円(2022年度比5,790億円増)(注2)の規模に達すると予想されています。当社が提供する営業DXサービス「Sansan」は、法人向け名刺管理サービス市場において81.6%のシェア(注3)を占めており、同市場は当社サービスの成長等につれて、2013年から2021年にかけて約14倍に拡大しています。また、当社が提供するインボイス管理サービス「Bill One」は、クラウド請求書受領サービス市場においてNo.1の売上高シェア(注4)を獲得しており、2021年度の同市場は、前年同期と比べて226.0%拡大しています。
当連結会計年度の経営成績は以下の通りです。
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(単位:百万円) |
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
前連結会計年度比 |
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売上高 |
20,420 |
25,510 |
+24.9% |
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売上総利益 |
17,904 |
21,827 |
+21.9% |
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調整後営業利益(注5) |
730 |
942 |
+28.9% |
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経常利益 |
968 |
122 |
△87.4% |
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親会社株主に帰属する当期純利益 |
857 |
△141 |
- |
当連結会計年度においては、中期的な売上高成長及び調整後営業利益率の向上に向け、「Sansan」や「Bill One」においては営業体制の強化や機能拡充、「Eight」においては収益化等に取り組みました。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は前連結会計年度比24.9%増、売上総利益は前連結会計年度比21.9%増(売上総利益率は85.6%)となり、堅調な実績となりました。調整後営業利益は売上高の伸長等により、前連結会計年度比28.9%増となりました。一方、経常利益は、株式報酬関連費用の増加や、前連結会計年度において投資有価証券売却益979百万円を営業外収益に計上していたこと等により、前連結会計年度比87.4%減となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券評価損980百万円を特別損失に計上したこと等により、赤字額を計上しました。
(注)1.「2022 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望 市場編、ベンター戦略編」富士キメラ総研
2.「ソフトウェアビジネス新市場 2022年版」富士キメラ総研
3.「営業支援DXにおける名刺管理サービスの最新動向2023」(2022年12月 シード・プランニング調査)
4. デロイト トーマツ ミック経済研究所「驚異的な成長が見込まれるクラウド請求書受領サービス市場の現状と将来」(ミックITリポート2022年7月号)
5. 従来、営業利益を表示していましたが、当連結会計年度より経営上重視する業績評価指標を当社の株価水準に応じて大きく変動する可能性のある株式報酬関連費用や企業結合に伴い生じる費用を控除した恒常的な企業の収益力を表す指標に変更しました。これに伴い、営業利益に株式報酬関連費用及び企業結合に伴い生じた費用(のれん償却額及び無形固定資産の償却費)を加えた調整後営業利益にて表示しており、前連結会計年度についても調整後営業利益を表示しています。なお、株式報酬関連費用には、信託型ストックオプションに係る当社グループ従業員等への金銭での補填及び代替的な給与等の支給に関する費用を含んでいます。
セグメント別の業績は以下の通りです。
(ⅰ)Sansan/Bill One事業
当事業セグメントには、営業DXサービス「Sansan」やインボイス管理サービス「Bill One」等のサービスが属しています。
当連結会計年度におけるSansan/Bill One事業の成績は以下の通りです。
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(単位:百万円) |
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
前連結会計年度比 |
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売上高(注6) |
18,105 |
22,516 |
+24.4% |
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「Sansan」 |
17,214 |
19,793 |
+15.0% |
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「Sansan」ストック |
16,349 |
18,688 |
+14.3% |
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「Sansan」その他 |
865 |
1,104 |
+27.7% |
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「Bill One」 |
826 |
2,414 |
+192.2% |
|
その他 |
64 |
308 |
+379.7% |
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調整後営業利益 |
5,752 |
7,005 |
+21.8% |
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「Sansan」 |
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契約件数 |
8,488件 |
8,969件 |
+5.7% |
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契約当たり月次ストック売上高 |
170千円 |
184千円 |
+8.2% |
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直近12か月平均月次解約率(注7) |
0.62% |
0.44% |
△0.18pt |
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「Bill One」 |
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MRR(注8) |
116 |
316 |
+172.8% |
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有料契約件数(注9) |
776件 |
1,581件 |
+103.7% |
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有料契約当たり月次ストック売上高(注9) |
149千円 |
200千円 |
+34.2% |
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直近12か月平均月次解約率(注7) |
0.49% |
0.64% |
+0.15pt |
(注)6. 外部顧客への売上高及びセグメント間の内部売上高または振替高の合計値
7. 各サービスの既存契約の月額課金額に占める、解約に伴い減少した月額課金額の割合
8. Monthly Recurring Revenue(月次固定収入)、算出方法の見直しにより、前連結会計年度の値を変更
9. 集計タイミングを契約締結完了時点からサービス利用開始時点に見直したことにより、前連結会計年度の値を変更
a.「Sansan」
「Sansan」の契約件数及び契約当たり月次ストック売上高のさらなる拡大に向け、クラウド名刺管理サービス「Sansan」を「営業を強くするデータベース」をコンセプトに、営業DXサービス「Sansan」へと刷新し、新たな機能の搭載に取り組みました。具体的には、2022年6月に「Sansan」上で100万件以上の企業情報を閲覧できるようにしたほか、名刺だけではなくメール署名等の接点情報を蓄積し可視化できる機能を搭載しました。ユーザーはこれらの接点情報と企業情報を組み合わせることで、接点のない企業の情報も含めた利用企業ならではのデータベースを「Sansan」上に構築することが可能になりました。また、顧客とのメールを自動的に「Sansan」に蓄積する機能等の搭載に取り組みました。これらの新機能を背景に、新規ユーザーの獲得や既存ユーザーのアップセルの実現に向けた販売力の強化に注力し、特に中堅・大企業向けの営業体制を強化しました。
これらの結果、「Sansan」の契約件数は前連結会計年度末比5.7%増の8,969件、契約当たり月次ストック売上高は前連結会計年度比8.2%増となりました。また、直近12か月平均月次解約率は、0.44%(前連結会計年度比0.18ポイント減)となり、1%未満の低水準を維持しました。
この結果、「Sansan」の売上高は前連結会計年度比15.0%増、うち、固定収入であるストック売上高は前連結会計年度比14.3%増、その他売上高は前連結会計年度比27.7%増となりました。
b.「Bill One」
「Bill One」の高成長継続に向け、人材採用をはじめとした営業体制の強化やサービスの機能拡充等に取り組んだ結果、2023年5月におけるMRRは前連結会計年度比172.8%増、ARR(注10)は3,798百万円となりました。また、中堅・大企業を中心とした新規契約獲得が進み、有料契約件数は前連結会計年度末比103.7%増、有料契約当たり月次ストック売上高は前連結会計年度比34.2%増となりました。また、直近12か月平均月次解約率は、0.64%(前連結会計年度比0.15ポイント増)となり、1%未満の低水準を維持しました。
この結果、「Bill One」売上高は前連結会計年度比192.2%増となりました。また、2023年6月には「Bill One」のオプションとして法人カード「Bill Oneビジネスカード」の提供を開始しました。
(注)10. Annual Recurring Revenue(年間固定収入)
c. その他
既存サービスで培った強みや知見、ノウハウ等を活かして、契約DXサービス「Contract One」等の立ち上げに注力しました。そのほか、連結子会社化したクリエイティブサーベイ株式会社の業績が2023年3月より寄与しています。
この結果、その他売上高は前連結会計年度比379.7%増となりました。
以上の結果、Sansan/Bill One事業の売上高は前連結会計年度比24.4%増、調整後営業利益は前連結会計年度比21.8%増となりました。
(ⅱ)Eight事業
当事業セグメントには、「Eight」やイベント書き起こしサービス「logmi」シリーズが属しています。
当連結会計年度におけるEight事業の成績は以下の通りです。
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(単位:百万円) |
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
前連結会計年度比 |
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売上高(注11) |
2,213 |
2,867 |
+29.5% |
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BtoCサービス |
286 |
303 |
+6.0% |
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BtoBサービス |
1,927 |
2,563 |
+33.0% |
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調整後営業利益 |
△355 |
△170 |
- |
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「Eight」 |
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「Eight」ユーザー数(注12) |
310万人 |
331万人 |
+20万人 |
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「Eight Team」契約件数 |
2,819件 |
3,703件 |
+31.4% |
(注)11. 外部顧客への売上高及びセグメント間の内部売上高または振替高の合計値
12. アプリをダウンロード後、自身の名刺をプロフィールに登録した認証ユーザー数
a. BtoCサービス
コロナ禍収束に伴うビジネスの正常化を背景に、「Eight」ユーザー数は堅調に増加し、前連結会計年度末比20万人増の331万人となり、BtoCサービス売上高は前連結会計年度比6.0%増となりました。
b. BtoBサービス
大型ビジネスイベントの開催等、各種BtoBサービスのマネタイズに取り組んだ結果、「Eight Team」契約件数は前連結会計年度末比31.4%増、BtoBサービス売上高は前連結会計年度比33.0%増となりました。
以上の結果、Eight事業の売上高は前連結会計年度比29.5%増、調整後営業損失は前連結会計年度と比較して185百万円縮小しました。
②財政状態の分析
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(単位:百万円) |
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
前連結会計年度末比 |
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資産合計 |
26,292 |
31,200 |
4,907 |
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負債合計 |
14,199 |
18,009 |
3,810 |
|
純資産合計 |
12,093 |
13,190 |
1,097 |
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負債純資産合計 |
26,292 |
31,200 |
4,907 |
(資産)
当連結会計年度末における総資産は31,200百万円となり、前連結会計年度末に比べ、4,907百万円増加しました。これは主に、現金及び預金の増加5,682百万円、売掛金の増加423百万円及びのれんの増加476百万円、投資有価証券の売却による減少2,557百万円によるものです。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は18,009百万円となり、前連結会計年度末に比べ、3,810百万円増加しました。これは主に未払金の増加847百万円、長期借入金の新規借入による増加291百万円、賞与引当金の増加113百万円及び顧客企業から契約期間分の料金を一括で受領すること等による前受金の増加2,530百万円によるものです。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産額は13,190百万円となり、前連結会計年度末に比べ、1,097百万円増加しました。これは主に、新株予約権の計上による314百万円、新株予約権の行使による資本金、資本剰余金の増加がそれぞれ155百万円及び持分法の適用範囲の変動による計上及び親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加310百万円によるものです。
③キャッシュ・フローの分析
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(単位:百万円) |
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
前連結会計年度比 |
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営業活動によるキャッシュ・フロー |
3,123 |
3,848 |
724 |
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投資活動によるキャッシュ・フロー |
△1,014 |
1,364 |
2,379 |
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財務活動によるキャッシュ・フロー |
909 |
523 |
△386 |
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現金及び現金同等物の期末残高 |
15,245 |
20,985 |
5,739 |
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は20,985百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,739百万円増加(前連結会計年度末比37.7%増)しました。当該増加には資金に係る為替変動による影響4百万円が含まれています。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は3,848百万円(前連結会計年度は3,123百万円の収入)となりました。
主な資金増加要因は、前受金の増加額2,423百万円、未払金の増加額780百万円、非現金支出となる減価償却費の計上898百万円、株式報酬費用の計上296百万円、持分法による投資損失の計上287百万円、投資有価証券評価損の計上980百万円であり、主な資金減少要因は、関係会社株式売却益619百万円、投資有価証券売却益291百万円の計上、売上債権の増加額391百万円及び法人税等の支払額471百万円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果得られた資金は1,364百万円(前連結会計年度は1,014百万円の支出)となりました。
これは主に投資有価証券の売却による収入1,406百万円及び関係会社株式の売却による収入1,601百万円等の収入、投資有価証券の取得による支出359百万円、無形固定資産の取得による支出480百万円、有形固定資産の取得による支出200百万円及び出資金の払込による支出500百万円等の支出によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は523百万円(前連結会計年度は909百万円の収入)となりました。
これは主に長期借入金の借入による収入900百万円及び株式の発行による収入307百万円等の収入、短期借入金の純減少140百万円及び長期借入金の返済による支出527百万円等の支出によるものです。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは、提供するサービスについて生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載はしていません。
b.受注実績
当社グループは、受注から役務提供の開始までの期間が短いため、受注実績に関する記載は省略しています。
c.販売実績
当連結会計年度の外部顧客への販売実績をセグメント毎に示すと、次の通りです。
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セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 2021年6月 1日 至 2022年5月31日) |
当連結会計年度 (自 2022年6月 1日 至 2023年5月31日) |
前連結会計年度比 |
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Sansan/Bill One事業 |
(百万円) |
18,104 |
22,512 |
+24.4% |
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Eight事業 |
(百万円) |
2,204 |
2,864 |
+29.9% |
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その他 |
(百万円) |
111 |
134 |
+20.4% |
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合計 |
(百万円) |
20,420 |
25,510 |
+24.9% |
(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りです。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。
①重要な会計方針及び見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成に当たって、重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しています。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載の通りです。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績に関する説明」に含めて記載しています。
③資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、認知度の向上及びユーザー数の拡大をすべく、積極的に広告宣伝活動を実施しました。今後も広告宣伝投資を継続して実施する方針です。当社グループの資金需要の一定割合は広告宣伝投資であり、必要な資金は自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本方針としています。なお、これらの資金調達方法の優先順位等に特段方針はなく、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に検討を行う予定です。
④経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」をご参照ください。
⑤経営者の問題意識と今後の方針に関して
経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
該当事項はありません。
該当事項はありません。