当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下の通りです。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、企業理念において「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションの下、「ビジネスインフラになる」というビジョンを掲げています。このミッション、ビジョンの実現に向けて、人や企業との出会いをビジネスチャンスにつなげる、働き方を変えるDXサービスを展開しており、これらの事業活動の推進が社会課題の解決に寄与し、ひいては当社グループの株主価値及び企業価値の最大化につながるものと考えています。
(2)重視する経営指標と中期財務方針
2025年5月期から2027年5月期の中期財務方針として、売上高の堅調な成長と調整後営業利益(注1)の成長加速を掲げています。最重要の経営指標である売上高については、当該期間の年平均成長率(CAGR)22%から27%を目指しています。また、調整後営業利益については、各事業の売上高成長に向けた投資を行いながらも成長を加速させ、2027年5月期における調整後営業利益率は18%から23%、長期的には30%以上の水準を目指しています。
(注)1. 調整後営業利益:営業利益+株式報酬関連費用+企業結合に伴い生じた費用(のれん償却額及び無形固定資産の償却費)
(3)中長期的な経営戦略
当社グループの事業には次のような特徴があり、これらに基づいて中長期的な経営戦略を立案しています。
①広大な市場機会
DXへの意識改革や働き方の変化、SaaSビジネスへの関心の高まり等によって、当社サービスに関連する市場は拡大が続いています。DX市場は、2030年度に8兆350億円(2023年度見込比4兆153億円増)(注2)、国内SaaS市場は、2027年度に2兆990億円(2023年度見込比6,862億円増)(注3)の規模に達すると予想されています。
また、当社グループのサービスが取り扱う名刺や請求書、契約書といった書類は、現在でも紙のままで日常的に利用されている機会が多く、業務効率化や有効活用の余地が大きく残されています。各サービスの潜在市場について、「Sansan」は法人向け名刺管理サービス市場においてNo.1の売上高シェア(84.1%)(注4)を有していますが、日本国内の総労働人口を対象として捉えた場合、2025年5月期末における「Sansan」利用者数の割合は約4%(注5)に留まっており、広大な開拓余地が残されていると考えています。次に、「Bill One」では、クラウド請求書受領サービス市場においてNo.1の売上高シェア(47.0%)(注6)を獲得していますが、2025年5月期末における利用企業カバー率は、日本国内の企業の1%未満(注5)に過ぎないため、広大な開拓余地が存在していると考えています。
(注)2.「2024 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望 市場編、企業編」(富士キメラ総研)
3.「ソフトウェアビジネス新市場 2023年版」(富士キメラ総研)
4.「営業支援DXにおける名刺管理サービスの最新動向2025」(2025年1月 シード・プランニング調査)
5.分母となる国内の総企業数及び従業者数は、総務省統計「令和3年経済センサス活動調査」を基に算出
6. デロイトトーマツミック経済研究所「高成長が続くクラウド請求書受領サービス市場」(ミックITリポート2024年12月号)
②アナログ情報のデータ化精度99.9%を実現する仕組みとテクノロジー
当社グループの各サービスにおけるアナログ情報のデータ化精度は、サービスの本質的な品質や競争力に資するものであり、99.9%のデータ化精度を実現する仕組みとテクノロジーを有していることが事業共通の強みです。当社グループでは、機械学習等によって日々進化するテクノロジーと人力の組み合わせによってアナログ情報をデータ化しており、創業以来、名刺をはじめとする膨大なアナログ情報をデータ化してきたことで、大量の情報を正確かつ効率的にデータ化できる体制を確立しています。この技術力と独自の仕組みが競争力の源泉であり、サービスの品質や競争力の向上に向けて、新技術の開発やオペレーションの改善を追求しています。また、現在では、独自に開発した生成AIを活用することで、オペレーションのさらなる効率化に取り組んでいます。
③高い安定性を誇る財務・収益モデル
主要サービスにおける課金モデルは、継続収入が見込めるサブスクリプション(月額課金)が中心となっています。また、サービスの月次解約率は直近12か月平均で1%未満に留まっており、契約当たり売上高の拡大に努めることで、顧客LTV(ライフタイムバリュー)の最大化を推進しやすいことから、継続的な事業成長が見込める、高い安定性を誇るモデルであると捉えています。
具体的な当社グループの経営戦略は、以下の通りです。
(ⅰ)Sansan/Bill One事業の売上最大化
「Sansan」や「Bill One」「Contract One」は、業種や業態を問わず幅広い企業を対象とするサービスであり、今後も大きな顧客開拓余地があります。「Sansan」においては、全社利用を前提とした新規顧客獲得や既存顧客の利用拡大を推進するとともに、生成AIを活用した機能を強化することで、サービス価値のさらなる向上を目指します。また、「Bill One」においては、現在展開している請求書受領や経費精算、債権管理といったさまざまなサービスをワンパッケージで提供することで、営業活動効果の最大化を図るとともに、生成AIを活用した新サービスによる、新たな収益機会の創出に取り組みます。さらに、「Contract One」においても生成AIを活用した機能拡充を図り、サービス価値を向上させながら、営業体制の強化を通じて、さらなる販売拡大を目指します。
(ⅱ)Eight事業の収益拡大
収益性を重視した事業運営体制の下、登録ユーザー409万人を有する「Eight」のネットワークを活用し、ビジネスイベント等のBtoBサービスのマネタイズを強化することで、さらなる事業成長を目指します。
(ⅲ)M&Aの活用
グループ各社の企業価値向上に向けた施策を推進するとともに、当社グループが保有するリソースやノウハウを有効活用することで、シナジーの創出に取り組みます。また、M&Aの活用は重要な成長戦略の1つに位置付けており、今後も積極的な検討を進めます。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
上記の経営戦略を進めるに当たって、当社グループの対処すべき主な課題は以下の通りです。
①優秀な人材の採用・育成と多様性の確保
当社グループの持続的な成長のためには、多岐にわたる経歴を持つ優秀な人材を多数採用し、営業体制や開発体制、管理体制等を整備していくことが重要であると捉えています。当社グループの企業理念や事業内容に共感した優秀な人材が、高い意欲を持って働ける環境や仕組みを構築しながら、人材の多様性確保を進めていきます。
②セキュリティリスクに対する管理体制の継続的な強化
当社グループは、提供サービスを通じて個人情報をはじめとした重要な情報資産を多く取り扱っているため、情報管理体制を継続的に強化していくことが重要であると考えています。現在においても、情報セキュリティ方針や個人情報保護方針等を策定した上で、情報資産を厳重に管理する等、情報保護については万全の注意を払っていますが、今後も社内体制や管理方法の強化、整備を行っていきます。
③技術力の強化
アナログ情報を正確にデータ化する技術は、当社グループの競争力の源泉であり、さまざまなサービスの成長を支える共通基盤でもあることから、継続的な改善、強化が重要であると考えています。これまで独自で開発したさまざまな技術やAIと、人の力を組み合わせることで高品質のデータ化を実現してきましたが、現在では独自に開発した生成AIを組み合わせることで、さらなる効率化に取り組んでいます。今後も、国内外における優秀な技術者の採用や先端技術への投資、モニタリング等を通じて、技術力のさらなる向上に取り組みます。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは次の通りです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)サステナビリティ全般への取り組み
当社グループは、事業活動を通じて社会課題の解決に貢献することが持続可能な社会の構築に寄与し、ひいては当社グループの持続的な成長や企業価値の向上につながるものと考えており、事業環境や経営状況、事業ステージといったさまざまな要素を考慮した上で、全てのステークホルダーとの協働や連携を通じてサステナビリティの実現に向けた活動を推進することとしています。このような考えの下、国際ガイドラインやステークホルダーの視点を参考に重要課題候補を抽出し、社会と経営双方にとっての重要性を取締役会が評価した上で、事業と親和性の高い社会課題を重要課題(マテリアリティ)として特定し、経営戦略に反映しています。2022年8月や2023年8月の取締役会での決議を経て、2030年5月期における長期目標と連動した取り組みを推進しています。
重要課題の特定プロセス
|
(ⅰ)重要課題候補の選定 |
SASB(Sustainability Accounting Standards Board)スタンダードやSDGs(持続的な開発目標)におけるゴール、ターゲットといった国際ガイドラインや原則に加え、業界動向やESG評価機関の観点も参照し、当社グループとの関連性が高い課題を洗い出します。また、当社取締役や機関投資家との議論等を通じて、外部視点と経営視点の双方から重要課題候補を選定します。 |
|
(ⅱ)課題の重要性評価 |
(ⅰ)で選定した各課題について、「持続可能社会を実現する上での社会(ステークホルダー)にとっての重要性」と、「当社グループがビジョンの達成や事業成長を実現する上での重要性」の2軸で評価を実施します。評価は当社の全取締役が個別に行い、専門性と多様な視点を取り入れながら、課題の優先順位を可視化します。 |
|
(ⅲ)取締役会での議論・決議 |
(ⅱ)での評価結果について、取締役会で議論、審議を行い、重要課題を特定します。特定した重要課題に関連する内容は、マテリアリティオーナーである取締役の下で戦略的な取り組みに反映されます。2022年8月の取締役会において、5つの分野に整理される10の重要課題を特定した上で、2023年8月の取締役会にて、2030年5月期における長期的な定量目標を策定しました。 |
5つの重要分野と10の重要課題
|
重要分野 |
|
|
(1) |
セキュリティと利便性の両立 利便性を確保した上で、全従業員を対象としたデータプライバシーの保護や情報セキュリティ対策を講じ、安全性の高いサービス提供を安定的に行います。
重要課題 1.安全かつ安定的なインフラサービスの提供 2.データプライバシーの保護と情報セキュリティの徹底 |
|
(2) |
革新的なDXサービスで働き方を変革 ビジネスインフラになるべく、当社の強みであるデータ化技術を活用し、社会・経済の生産性を大きく向上させる革新的なDXサービスの開発及び提供に取り組みます。
重要課題 3.生産性向上に寄与するDXサービスの推進 4.革新的なビジネスインフラの創造 |
|
(3) |
人材の多様性を尊重し、イノベーションを生み出す 出会いの力でビジネスの課題解決につながるイノベーションを生み出すため、多様性に富んだ全ての人材が活躍できる機会の創出や環境の整備を推進します。
重要課題 5.人材の採用・育成・活躍推進 6.ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進 |
|
(4) |
急速な事業成長を支える強固な経営基盤の確立 コーポレートガバナンスの強化やコンプライアンスの徹底により、事業成長を支える経営基盤の強化を推進します。
重要課題 7.コーポレートガバナンスの強化 8.コンプライアンスの徹底 |
|
(5) |
事業活動を通じた自然環境の保全 DXの推進やペーパーレス化の支援、環境に配慮したサービスの導入等、事業活動を通じて気候変動問題への対応に取り組むことで、自然環境の保全を推進します。
重要課題 9.気候変動問題への対応 10.自然資源の効率的活用 |
①ガバナンス
当社グループが特定した重要課題それぞれに対して当社取締役を責任者(マテリアリティオーナー)として設定し、その監督の下で対応方針や取り組み内容を検討する会議を年2回開催しています。本検討内容を含むサステナビリティの実現に資する事項については、毎年取締役会が報告を受けて監督しており、重要事項については、取締役会で審議し、決定しています。
マテリアリティオーナーとの会議
|
重要分野 |
責任者(マテリアリティオーナー) |
主な議題 |
|
(1) |
取締役/執行役員/CISO/DPO/技術本部 本部長/Eight事業部 事業部長 塩見 賢治 |
プライバシーポリシーの改定検討 サイバーセキュリティの現状認識と課題 |
|
(2) |
取締役/執行役員/COO 富岡 圭 |
事業戦略に基づくユーザー数拡大の見通し アナログ業務のデジタル化促進における課題 |
|
(3) |
取締役/執行役員/CHRO 大間 祐太 |
リファラル採用の促進に関する課題整理 従業員エンゲージメントの向上に関する現状分析 ダイバーシティ&インクルージョン推進のための施策検討 |
|
(4) |
取締役/執行役員/CFO 橋本宗之 |
取締役報酬制度の現状認識と課題 取締役会及び指名報酬諮問委員会の構成 ゼロトレランスの推進 コンプライアンス基本方針の制定 |
|
(5) |
代表取締役社長/CEO/CPO 寺田親弘 |
事業戦略に基づくペーパーレス機能利用件数の見通し GHG排出量の削減及びカーボンニュートラルに向けた施策 |
②戦略
当社グループでは、特定した5つの重要分野と10の課題について、マテリアリティオーナーである取締役が責任を持って各種取り組みを推進しています。各分野ともにリスクと機会の両面から分析を行い、その結果は、2030年5月期における目標達成のための施策に反映しています。
|
重要分野 |
リスク |
機会 |
|
(1) |
顧客の重要な情報資産を扱うサービスを提供しているため、自然災害や不正アクセス、内部の過失等によって、個人情報の漏洩、システム障害等が発生した場合、顧客の信頼喪失や法的リスクにつながる可能性があります。また、さまざまな機能追加等に伴い、より高度な情報セキュリティ対応が求められる可能性があります。 |
高度な情報セキュリティ対策の下で、利便性と安全性の両立を実現した信頼性の高いサービスを提供することで、顧客基盤の拡大や利用継続率の向上につながる可能性があります。また、法令遵守やプライバシー保護への対応が先進的であることがレピュテーションの向上につながり、新規顧客獲得に寄与する可能性があります。 |
|
(2) |
技術トレンドの変化や顧客ニーズへの対応が遅れた場合、当社グループの提供サービスが競争力を喪失し、顧客の離脱やサービスの陳腐化を招くおそれがあります。また、当社サービスの利用による業務生産性の向上効果が十分に発揮されない場合、新規顧客の獲得や既存顧客の利用継続判断に影響を与えるおそれがあります。 |
働き方の変革や生産性向上につながる革新的なサービスや機能を提供することで、各サービスの社会的価値が高まり、さらなる事業成長につながる可能性があります。また、当社グループのサービスが社会や企業の基盤として機能する状態となれば、より持続的な成長実現につながる可能性があります。 |
|
(3) |
多様性の受容や包摂的な組織文化の醸成が不十分であった場合、人材の定着率が低下し、組織の生産性や創造性が損なわれるおそれがあります。また、従業員エンゲージメントの低下は退職者の増加を招き、採用及び育成コストが上昇するおそれがあります。加えて、各種ハラスメント等への対応が不十分な場合、レピュテーションリスクが顕在化するおそれがあります。 |
多様性に富んだ人材が活躍する環境を整備することで、創造的なイノベーションの創出や多様な顧客ニーズへの対応が可能となり、当社の競争力が向上する可能性があります。また、従業員エンゲージメントを維持・向上させることで、それぞれの人材が強みを発揮できる組織風土が醸成され、優秀な人材のさらなる獲得につながる可能性があります。 |
|
(4) |
事業の急成長に伴い、ガバナンス体制や内部統制の整備が追いつかない場合、不適切な意思決定や法令違反等が発生し、当社の事業運営や社会的信用に深刻な影響を及ぼすおそれがあります。また、組織の急拡大に伴い、コンプライアンスに対する意識の浸透が十分でない場合、内部統制の実効性が低下する可能性があります。 |
適切なガバナンス体制の構築は、迅速かつ的確な意思決定等を支える強固で盤石な経営基盤となり、事業の持続的な成長につながる可能性があります。また、ガバナンス体制の透明性と信頼性の確保は、さまざまなステークホルダーとの建設的な対話につながり、中長期的な企業価値向上に寄与する可能性があります。 |
|
(5) |
脱炭素や循環経済等への対応が不十分な場合、顧客や投資家をはじめとしたステークホルダーからの評価が悪化し、各サービスの競争力の低下につながるおそれがあります。また、気候変動対策に関連する費用が上昇するおそれがあります。 |
環境負荷の軽減につながるサービスや機能を提供することで、当社サービスに対する顧客からの選好が高まり、さらなる事業成長につながる可能性があります。また、適切な気候変動対策に取り組むことで、将来における費用削減につながり、当社の利益率向上に寄与する可能性があります。 |
③リスク管理
当社グループでは、サステナビリティ対応におけるリスクについては、経営や事業に重大な影響を及ぼす可能性があるリスクと同義あるいは密接な関係にあると捉えており、分析や把握については、全社的なリスク管理の一環として実施しています。リスク等の内容については、「
④指標及び目標
当社グループでは、サステナビリティ上の重要課題に関する評価指標及び2030年5月期における目標を次の通り定め、進捗をモニタリングしています。
|
重要課題 |
評価指標及び2030年5月期目標 |
当連結会計年度 |
前連結会計 |
|
1.安全かつ安定的なインフラサービスの提供 |
重大なインシデント発生件数:0件 |
0件 |
- |
|
2.データプライバシーの保護と情報セキュリティの徹底 |
個人情報保護士取得率:80%以上の維持 |
90.6% |
+3.9pt |
|
3.生産性向上に寄与するDXサービスの推進 |
当社サービスでのアナログ情報のデータ化件数:5億件 |
2.7億件 |
+9.1% |
|
4.革新的なビジネスインフラの創造 |
当社サービス利用者数:2,000万人 |
980万人 |
+24.2% |
|
5.人材の採用・育成・活躍推進 |
リファラル採用比率:35% 「Unipos」投稿率:80% |
12.1% 59.5% |
+1.8pt +1.4pt |
|
6.ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進 |
女性管理職比率:30%以上 女性従業員比率:45%以上 |
20.2% 37.0% |
+2.4pt +0.3pt |
|
7.コーポレートガバナンスの強化 |
女性取締役比率:30%以上 |
20.0% |
△2.2pt |
|
8.コンプライアンスの徹底 |
重大なコンプライアンス違反件数:0件 コンプライアンス関連の研修受講率:100% |
0件 100% |
- - |
|
9.気候変動問題への対応 |
スコープ1+2:カーボンニュートラル |
575t-CO2 |
△39.2% |
|
10.自然資源の効率的活用 |
当社サービスにおけるペーパーレス機能の利用件数:1.2億件 |
0.2億件 |
+23.0% |
(注)1. 連結実績の算定に必要な数値実績の把握が現状困難なため、当社単体の実績を集計しており、当連結会計年度時点で当社グループの事業範囲の95.5%(連結売上高に占める単体売上高の割合)をカバーしています。
2. 個人情報保護士は、一般財団法人全日本情報学習振興協会が設定する資格の称号です。
3. 当社サービスに関する実績は、「Sansan」「Bill One」「Contract One」「Eight」における該当実績を
集計しています。
4. 「Unipos」は、Unipos株式会社が提供するピアボーナス®を軸とするサービスです。
5. スコープ1は、当社が所有するオフィスや設備において直接排出されたGHG排出量を集計しています。ス
コープ2は、各オフィスにて購入した電力や熱エネルギー等の使用を通じて間接的に排出されたGHG排出
量を集計しています。算出方法や対象とする範囲の精緻化に伴い、過去数値を更新しています。
(2)気候変動課題への取り組み
当社グループでは、気候変動問題に関して、適切な体制の下で事業上のリスクや機会を把握・監督し、課題への対応力を高めていくことは、安定的な経済発展や生活の基盤確保等を目指して低炭素経済への移行を進める上で、
極めて重要な取り組みであると捉えています。このような考え方の下、当社は気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が公表する提言に賛同を表明しており、当該枠組みに基づく開示を以下の通り、行っています。
①ガバナンス
当社グループでは、サステナビリティの実現に資する各種方針や重要事項等については、取締役会で審議し、決定しています。気候変動問題への対応は、当社グループが優先的に取り組むべき重要課題(マテリアリティ)の1つに特定し、責任者である代表取締役の監督の下、IR・サステナビリティ推進部及び財務経理部にて検討しています。気候変動に係る各種指標や事業上のリスク、機会といった事項は、取締役会が毎年報告を受け、監督しており、事業戦略や計画は、当該重要事項を考慮した上で決定しています。
②戦略
当社グループでは、気候変動がもたらす事業環境変化への対応力や適応力を強化するべく、主には、IPCCの共有社会経済経路・代表的濃度経路といったシナリオを利用し、気温上昇を1.5℃(SSP1-1.9)や2℃未満(SSP1-2.6)に抑えた事業環境のほか、4℃上昇(SSP5-8.5)が生じた事業環境を分析しています。その上で特定した事業上のリスク、機会及び対応策は下表の通りです。
なお、分析の対象期間として、現在から2025年中までを短期、2030年までを中期、2050年までを長期として設定し、当社グループの全事業を対象範囲としています。また、利益影響度は、年間10億円未満の場合を小、10億円以上30億円未満の場合を中、30億円以上の場合を大として表示しています。
(ⅰ)リスクの特定
|
種類 |
シナリオ 分析 |
リスクの内容 |
発現時期 |
利益 影響度(年間) |
対応策 |
|||
|
移行リスク |
市場 |
紙資源からのデジタル移行 |
1.5℃/2℃未満
|
社会全体で環境保護意識が高まり、紙資源を使用した各種ビジネスツールの利用が漸次的に減少し、デジタル情報やツールの利用が拡大する |
紙の名刺や請求書、契約書等をデータ化し、生産性の向上を実現する当社サービスの一部機能の活用頻度や重要性が低下する |
中期 |
小 |
デジタル情報の活用を主軸とした利便性の高い機能を拡充し、プラットフォームとしての価値を向上させることで、アナログ情報のデータ化による価値と同等以上の付加価値を提供する |
|
4℃
|
紙資源からのデジタル移行は緩やかだが、災害やパンデミック等への対応として、デジタル情報やツールへのニーズは維持される |
小 |
||||||
|
クリーンエネルギーの利用 |
1.5℃/2℃未満
|
クリーンエネルギーの利用に対する社会要請や需要が拡大し、各種エネルギー価格が高騰するほか、温暖化によって情報通信設備の冷却負荷が増加する |
SaaS型のビジネスモデルを中心に事業展開する当社にとって必要不可欠なサーバー価格や電力等の各種エネルギー価格が上昇し、営業費用が増加する |
中・長期 |
小~中 |
サーバーや電力をはじめとした必要資源・資材の調達先を適正化することでコスト削減に努めるほか、省エネの実施によって効率を向上させ、エネルギー使用量を削減する |
||
|
4℃
|
クリーンエネルギー移行が進まないため、発電コストは比較的低位で推移するが、猛暑による冷房需要で一部のコストが上昇する |
小 |
||||||
|
法規制 |
炭素税率の上昇 |
1.5℃/2℃未満
|
多くの国や地域においてGHG排出量に対する各種規制が強化されるほか、カーボンプライシングとして新たに炭素税や高い税率が導入される |
税金負担額をはじめ、カーボンオフセットのための非化石証書やクレジットの購入費用が増加する |
中・長期 |
小 |
再生可能エネルギーの利用拡大や、省エネの実施によるエネルギー効率の向上等によって、税金負担額やカーボンオフセットに係る費用を削減する |
|
|
4℃
|
GHG排出量に対する制度的対応や社会受容が十分に進展せず、カーボンプライシングとしての炭素税や税率は緩やかな上昇に留まる |
小 |
||||||
|
物理的リスク |
急性 |
自然災害の増加 |
1.5℃/2℃未満
|
自然災害の発生が緩やかに増加する |
利用するサーバーや、紙の請求書等のデータ化を担う拠点が浸水し、サービス提供が停止するほか、当社が保管するサービス利用企業の書類の汚損が発生し、サービス価値が低下する |
中・長期 |
小~中 |
事業継続計画(BCP)の一環として、複数サーバーの利用によるシステムの冗長化、サービス運営上の重要拠点の分散化や緊急時用のマニュアル整備等を行うことで、自然災害時におけるサービスの継続性を確保する |
|
4℃
|
大きな被害につながる集中豪雨や洪水といった自然災害が激甚化かつ頻発化する |
小~大 |
||||||
(ⅱ)機会の特定
|
種類 |
シナリオ 分析 |
機会の内容 |
発現時期 |
利益 影響度(年間) |
対応策 |
||
|
製品/サービス
|
紙資源からのデジタル移行 |
1.5℃/2℃未満
|
社会全体で環境保護意識が高まり、紙資源の使用を抑制するサービスへの需要が拡大するほか、業務効率化を目的としたデジタル情報やツールの導入ニーズが急速に拡大する |
デジタル情報の活用によってさまざまな業務フローの効率化を実現しながら、紙の利用抑制にもつながる機能を備えた当社の各種DXサービスに対する需要が拡大する |
中・長期 |
小~中 |
デジタル情報の活用を主軸とした利便性の高い機能を拡充し、ユーザーへの提供価値を向上させるほか、営業やマーケティング活動を強化し、さらなる需要を喚起する |
|
4℃
|
社会全体の環境保護意識が限定的な水準に留まり、企業の行動も業務効率化を目的とした範囲に限られる中で、デジタル情報やツールに対するニーズの拡大は緩やかに推移する |
小 |
|||||
③リスク管理
当社グループでは、各領域の管掌取締役とIR・サステナビリティ推進部及び財務経理部との協議の下でシナリオ分析を行い、気候変動に関する事業上のリスクと機会を特定し、重要性の評価や利益影響度の算出、対応策の検討を行っています。当該事項は年次で取締役会に報告され、取締役会は、これらリスクや対応策といった重要事項を考慮した上で、事業戦略や計画を決定しています。また、気候変動に関する重要なリスクは、内部監査等で実施する全社的なリスク分析の結果と統合し、管理しています。
④指標及び目標
当社グループでは、気候変動に関する評価指標としてGHG排出量を選定しており、直近3か年における実績は下表の通りです。また、スコープ1及びスコープ2の削減目標として、2030年までのカーボンニュートラルの実現を掲げており、目標の達成に向けて各種取り組みに着手していくとともに、スコープ3の削減目標の設定についても、さまざまな内部・外部要因等を踏まえて、総合的な検討を進めています。
|
項目 |
単位 |
前々連結 会計年度 |
前連結 会計年度 |
当連結 会計年度 |
|
スコープ1 |
t-CO2 |
233 |
243 |
|
|
スコープ2(ロケーション基準) |
t-CO2 |
607 |
752 |
|
|
スコープ2(マーケット基準) |
t-CO2 |
618 |
702 |
|
|
スコープ1+2(マーケット基準) |
t-CO2 |
851 |
945 |
|
|
スコープ3 |
t-CO2 |
18,638 |
21,509 |
|
|
スコープ1+2+3(マーケット基準) |
t-CO2 |
19,489 |
22,454 |
|
|
スコープ1+2+3 GHG排出量原単位 |
t-CO2/億円 |
78.2 |
69.0 |
107.5 |
(注)1. 連結実績の算定に必要な数値実績の把握が現状困難なため、当社単体の実績を集計しており、当連結会計年度時点で当社グループの事業範囲の95.5%(連結売上高に占める単体売上高の割合)をカバーしています。
2. スコープ1は、当社が所有するオフィスや設備において直接排出されたGHG排出量を集計しています。スコープ2は、各オフィスにて購入した電力や熱エネルギー等の使用を通じて間接的に排出されたGHG排出量を集計しています。スコープ3は、スコープ1及びスコープ2以外のバリューチェーン全体(カテゴリ1から15まで)におけるGHG排出量を集計しています。算出方法や対象とする範囲の精緻化に伴い、過去数値を更新しています。
(3)人的資本に関する取り組み
①ガバナンス
当社グループでは、持続的な事業成長や新しい価値創出を実現していく上で、人材を最も重要な経営資本の1つに位置付けており、人材の多様性を受け入れ、多岐にわたる経歴をもつ1人ひとりが高い意欲を持って働ける環境を整備することが重要であると捉えています。このような考え方の下、当社グループでは、優先的に取り組むべき重要課題として「人材の採用・育成・活躍推進」及び「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進」を特定しており、責任者である取締役/執行役員/CHROの下で具体的な取り組み内容を検討しています。本検討内容を含む人的資本に関する取り組みについては、定期的に取締役会が報告を受けて監督しており、重要事項については、取締役会で審議し、決定しています。
②戦略
当社グループでは、人的資本に関して、主に次の通り取り組みを行っています。
(ⅰ)多様性に富んだ優秀な人材の採用
重要な成長戦略の一環として継続的に人材採用を強化しており、当連結会計年度末の連結従業員数は2,235名となり、開発や営業、バックオフィス等のさまざまな組織は多様な経歴をもった人材で構成されています。採用においては、高い専門性やスキルに加えて、当社グループの企業理念に共感するミッションドリブンな姿勢を重視しており、この方針に基づき、主に以下の取り組みを実施しています。
|
名称 |
内容 |
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HRBP(Human Resource Business Partner)組織の設置 |
各事業部にHRBPを配置し、採用計画の立案から面接、内定者フォローまでを一貫して支援しています。現場と連携した体制により、人材要件の精緻化と早期の立ち上がりを実現しています。 |
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リファラル採用の推進 |
当社グループでは、ミッションやビジョン、バリューズといった企業理念と、自らのありたい姿が合致する人材ほど、入社後に活躍できる可能性が高いと考えています。この考えに基づき、リファラル採用を重視しており、採用者紹介のインセンティブ制度や、社内のデジタルサイネージでの事例共有を通じて、全社で取り組みを強化しています。 |
(ⅱ)人材の育成・活躍推進
従業員1人ひとりの自律的な成長を促し、その能力を最大限に発揮できる環境を整備することで、組織全体の成果向上と新たな価値創出へつなげることを目的として、主に以下の取り組みを行っています。
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名称 |
内容 |
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ミッショングレード制度の採用 |
人事制度として「ミッショングレード制度」を採用し、業務上の権限や責任、処遇等を等級によって定めています。この等級は、これまでの実績だけではなく、今後の期待値に応じて決定することで、個人の成長にレバレッジをかけています。 |
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OKR(Objectives and Key Results)と360度評価 |
人事評価では、四半期毎に組織で設定するOKR(Objectives and Key Results)に基づき、個人の組織への貢献度を評価しています。また、360度評価を取り入れることで、直属の上長だけでなく、業務上関わりのある同僚や他部門の関係者からのフィードバックも総合的に反映しています。これにより、従業員の成長促進と組織全体のパフォーマンス向上につなげています。 |
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SCOP(Sansan Culture Onboarding Program) |
新入社員を対象に、初期研修プログラム「SCOP」を実施しています。配属後半年間にわたり、月1回の理念対話機会を設け、組織文化への理解と早期定着を支援しています。 |
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TOPGUN(新卒社員向けの成果型研修) |
総合職の新卒社員を対象に、入社後約半年間の成果型研修「TOPGUN」を実施しています。チーム単位で実際のビジネス課題に取り組み、戦略立案から商談、クロージング、サポートまでを自ら遂行することで、実務力と当事者意識を早期に醸成します。事業部門の従業員がマネージャーとして伴走し、企業カルチャーや業務理解の定着も支援します。 |
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カタチ議論 |
企業理念について全従業員で議論する機会を設けており、会社の価値観や文化に向き合うことは、個人の成長や生産性向上の観点で重要な機会となっています。当期においては、組織の持続的成長という視点から、全従業員によるパーパスに関する議論を実施し、企業理念の理解と共感を深めました。 |
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コーチャ・キャリトーク |
社内の有資格者による1on1コーチング「コーチャ」と、キャリア課題に専門的に向き合う面談制度「キャリトーク」を通じて、個人の内省と行動変容を支援しています。これにより、従業員の自律性を高め、成長実感の醸成と中長期的なキャリア形成を後押ししています。 |
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生成AI活用プログラム |
全従業員を対象とした生成AI活用のためのオンボーディングプログラムを通じて、業務での活用事例の共有や、各部署での活用支援を実施する等、全職種におけるAI活用の定着と業務効率化を推進しています。 |
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強マッチ |
キャリアサマリや性格診断結果に基づき、従業員同士が自身の強みや行動特性を共有できる制度「強マッチ」を導入しています。各従業員の強みは人材管理システム上で可視化・共有され、部門を超えたコミュニケーションの活性化やマネジメント精度の向上、適材適所の配置の強化に寄与しています。 |
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「Unipos」 |
ピアボーナス®を軸とする全従業員参加型のプラットフォームを活用し、社内における称賛事例を可視化することで、会社文化の浸透や従業員のエンゲージメント向上を図っています。 |
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エンゲージメントサーベイ |
月に1回、正社員、契約社員に対してエンゲージメントサーベイを実施し、回答の分析結果をセルフマネジメントや組織マネジメント、全社的な社内制度・施策の立案等に活用しています。 |
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ヨリアイ |
社内の交流を促進し、新しいアイデアやコラボレーションを生み出すことを目的に、飲食費補助制度「ヨリアイ」を導入しています。オフィス内でのドリンク無償提供やチーム単位の飲食費補助等を通じて、多様なコミュニケーションの場を創出しています。 |
(ⅲ)女性の活躍推進
経歴や性別といった特定の属性に関わらず、優秀な人材を積極的に採用・登用する方針の下、全ての従業員に公平な評価と登用の機会を設けています。毎期のモニタリングを通じて、特定の属性に依存しない評価運用を維持し、多様なロールモデルを創出してキャリアパスを示す取り組みを強化しています。
(ⅳ)外国籍、障がい者雇用の推進
海外での積極的な事業展開を志向する上で、外国籍をもつ従業員の採用を強化しており、海外拠点における外国籍従業員と日本国内における日本国籍従業員との交流機会を創出し、コミュニケーションを活性化させることで、多様性を受け入れながらミッションを実現していく企業風土の醸成に努めています。また、障がい者雇用については、当社サービスの「Sansan」「Bill One」「Contract One」のデータ化といった、事業に直結した業務で実施しています。特性に配慮したオンボーディングプログラムの拡充を通じて、障がい者の就労機会と活躍機会の拡大に取り組んでいます。
③リスク管理
当社グループでは、人的資本に関するリスク等については、経営や事業に重大な影響を及ぼす可能性があるリスク等と同義あるいは密接な関係にあると捉えており、分析や把握については、全社的なリスク管理の一環として実施しています。リスク等の内容については、「
④指標及び目標
当社グループでは、人的資本に関する取り組みについて、主には次の通り評価指標を定め、進捗をモニタリングしています。また、一部の指標については、2030年5月期における目標を設定しています。
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重要課題 |
評価指標( |
当連結会計年度 |
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人材の採用・育成・活躍推進 |
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「カタチ」関連研修の総参加時間 |
約10,500時間 |
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社内コーチング延べ参加人数 |
759人 |
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生成AI関連の教育時間 |
約5,800時間 |
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生成AI関連の投資額 |
72百万円 |
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ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進 |
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外国籍従業員比率 |
7.0% |
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(注)1. 連結実績の算定に必要な数値実績の把握が現状困難なため、当社単体の実績を集計しており、当連結会計年度時点で当社グループの事業範囲の95.5%(連結売上高に占める単体売上高の割合)をカバーしています。
2. 外国籍従業員比率は、当社及び当社子会社のSansan Global Pte. Ltd.、Sansan Global Development
Center, Inc.、Sansan Global (Thailand) Co., Ltd.を対象に算出しています。
3. 障がい者雇用比率は、3月期決算の期間(4月から翌年3月)に読み替えて算出しています。
(4)情報セキュリティ関連の取り組み
①ガバナンス
当社グループでは、事業活動を通じて取り扱う全ての情報資産を厳格に管理し、プライバシーを尊重することが企業の社会的責務であり、当社グループの持続的な成長や企業価値の向上のために不可欠な経営基盤であると考えています。このような考え方の下、「安全かつ安定的なインフラサービスの提供」「データプライバシーの保護と情報セキュリティの徹底」を優先的に取り組むべき重要課題に位置付けており、当社取締役をCISO(最高情報セキュリティ責任者)、DPO(データ保護責任者)及び個人情報保護管理者として任命しています。同取締役が全社的なリスク対応を統括した上で、経営会議に定期的に状況を報告し、経営レベルでの迅速な意思決定を促します。また、専門部署として情報セキュリティ部を設置し、CSIRT(Computer Security Incident Response Team)機能や内製SOC(Security Operation Center)による24時間365日の監視及び分析体制を構築しています。加えて、隔週で情報セキュリティ・プライバシー委員会を開催し、リスク分析や対策、ルール整備を継続的に行っています。これらの体制の下で検討されたデータプライバシーと情報セキュリティに関する取り組みについては、定期的に取締役会に報告されており、重要事項については、取締役会が審議し、決定しています。これにより、プライバシーとセキュリティ双方のリスクに対し、迅速かつ全方位的に対処できる体制を整えています。
②戦略
当社グループでは、データプライバシーと情報セキュリティに関して、主に次の取り組みを行っています。
(ⅰ)各種規程の制定と目的
情報漏洩やサイバー攻撃等のリスクに対応するため、各種規程やガイドラインを整備し、管理体制を強化しています。「個人情報保護基本規程」では、JIS Q 15001に準拠した個人情報の取り扱いを定め、情報システムや情報資産の管理に関する規程を設けています。また、情報資産が適切かつ安全に管理され、有効に活用されることを目指し、情報システムの技術的な安全管理ルールや、サービス毎のプロダクトセキュリティガイドラインも策定しています。なお、全ての規程は年に一度見直しを行い、常に最新性を保つことで実効性を確保しています。
(ⅱ)セキュリティに関する教育
全社のセキュリティ意識向上のため、全役職員に「個人情報保護士」資格の取得を義務付けています。また、入社時と年に一度、情報セキュリティと個人情報保護に関する研修を全役職員に実施しています。さらに、取締役が毎月セキュリティに関する情報発信を行い、最新のリスクや取り組みを共有しています。情報資産は機密性に応じて区分し、それぞれのリスクに応じた管理策と取り扱い手順を定義しています。これらのルールの徹底を図るため、役職員の中からセキュリティ委員を指名し、役職員間で相互監査を行う体制を整えています。
(ⅲ)セキュリティ人材の確保と育成
主体的に高度なセキュリティ対策を講じることができる人材の採用や育成を強化しています。具体的には、セキュリティに関する専門知識やスキルを持つ人材を国内外から採用しているほか、特定分野に優れた人物を社内で選抜し、有識者による専門家育成を行っています。加えて、各サービスのエンジニアがCSIRTを兼務することで、実務を通じたセキュリティ意識と対応能力の向上を図っています。そのほか、高度なセキュリティ関連資格の取得を推奨し、自己学習を促進しています。
(ⅳ)脅威への防衛体制
複雑化するサイバーセキュリティ、情報セキュリティ上の脅威に適切に対応し、安心安全なサービスの提供を行うため、防御、監視活動並びにこれらを支える体制を構築しています。ネットワークの通信制御を含む多層防御のアーキテクチャを採用し、各端末ではEDR(Endpoint Detection and Response)を導入しており、異常検知時には自社のSOCにて迅速な調査、対応が可能な体制を整備しています。また、プロダクトセキュリティチームは、サービスの開発段階から一貫してセキュリティ向上に取り組んでいるほか、CSIRTを組織することで、インシデント発生時には即座に対応できる体制を整えています。
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名称 |
内容 |
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24時間365日の監視活動 |
自社及び外部ベンダーと協力し、サイバー攻撃に対して24時間365日の監視活動を行い、異常検知時には速やかに調査及び対応を実施しています。また、社内の情報機器に対する不正行為を予防する監視活動を行っています。 |
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定期的な脆弱性診断、ペネトレーションテストの実施 |
外部機関のハッカーを登用し、意図的にサイバー攻撃を行わせることで、各サービスやシステムのセキュリティレベルをテストし、強化につなげています。社内環境においてもペネトレーションテストを実施し、役職員に対しては標的型攻撃メールやBCP(Business Continuity Plan)訓練をしています。 |
(ⅴ)技術的な取り組み
第三者機関や社内専門部署による脆弱性診断のほか、さまざまな技術的な取り組みを進めています。
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名称 |
内容 |
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通信の暗号化 |
外部からアクセスされたデータセンターへの通信は、ユーザー認証HTTPSによる高度な暗号化等を行っています。 |
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紙書類のスキャン後、端末の画像を削除 |
名刺や請求書等の紙書類をスキャンした後、端末から画像データを削除しています。 |
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サービスの高可用性 |
全てのサーバーは、ネットワーク機器の多重化等により負荷分散がなされており、障害発生時にはサービスを迅速に復旧させることが可能です。また、データセンターの二重化を行い、災害時のサービス停止リスクを最小化しています。 |
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ゼロトラストセキュリティの採用 |
全社でゼロトラストセキュリティを採用し、守るべき情報資産へのアクセスにはゼロトラストベースの管理策を適用することで、社内ネットワークの内外を問わず、安全に業務を遂行できる環境を整備しています。 |
③リスク管理
当社グループでは、プライバシーや情報セキュリティに関するリスクは、経営や事業に重大な影響を及ぼす可能性があるものと認識し、全社的なリスク管理の一環として、その把握と分析に努めています。全社的なリスクの内容については、「
情報セキュリティリスクについては、評価基準を定めた上で、体系的なリスク評価と管理を実施しています。まず、脅威と脆弱性の観点からリスクの発生可能性と影響度を定量的に評価し、その結果に基づきリスクの重大度を分類します。その後、分類されたリスク毎に受容可否を判断し、必要に応じた適切な管理をしています。
④指標及び目標
当社グループでは、データプライバシーや情報セキュリティに関する取り組みについて、主には以下の評価指標を定め、進捗をモニタリングしています。また、一部の指標については、2030年5月期における目標を設定しています。
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重要課題 |
評価指標及び2030年5月期目標 |
当連結会計年度 |
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安全かつ安定的なインフラサービスの提供 |
重大なインシデント発生件数:0件 |
0件 |
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データプライバシーの保護と情報セキュリ ティの徹底 |
個人情報保護士取得率:80%以上の維持 |
90.6% |
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情報セキュリティ関連研修の総参加時間 |
約5,600時間 |
当社グループの経営・事業上のリスクには、名刺や請求書等の企業の重要情報を扱うサービスを提供しているため、個人情報の取り扱いやシステムの整備等、情報セキュリティに関するものが挙げられます。また、インターネットの利用環境や技術革新、ユーザーの行動変容といった不確実性の高いリスクも存在しています。これらのリスクに対して、管理体制や対応策の整備に努めており、急速な事業成長を支える経営基盤の強化に取り組んでいます。
(1)リスク管理
当社グループでは、経営に重大な影響を及ぼす可能性があるリスクに対して、その発生可能性を認識した上で、リスク管理体制やリスク対応の手法について整備しています。また、当社グループの事業を取り巻く環境の変化を踏まえ、リスクの発生回避及び発生した場合の対応を実施しています。
①リスクの把握・分析のプロセス
当社グループでは、内部監査規程に則って内部監査計画を策定し、内部監査プロセスにおいて全ての部署が定期的にリスクの見直しを行っており、年度毎に抽出されたリスクの評価と対応計画を取りまとめたリスク分析表を作成しています。各部署が作成したリスク分析表は、内部監査部門が集計した上で、取締役会に報告しており、全社のリスクに対し、迅速かつ全方位的に対処可能な体制となっています。
②インシデントガイドライン
当社グループでは、災害や事故、不正アクセス、脆弱性の問題等のサービス提供に係るインシデントが発生した場合に備え、各部署においてインシデントに対する体制・指揮命令系統や判断基準、対応手順に関するガイドラインを定めています。具体的には、インシデントの種別を機密性・完全性・可用性という3つの観点で種別し、それぞれの対応について優先度を設定した上で、各部署におけるインシデントの判断・対応の意思決定者を定めています。
(2)主なリスク
当社グループの事業及び財務・経理の状況等に影響を及ぼす事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項について、以下の通り記載しています。当社グループは、これらのリスクの発生可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ですが、当社グループの株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えています。なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性を内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。
各リスクの発生頻度及び利益影響度については、内部監査室が各部署から収集、集約したリスク分析情報を基に、全社的な評価を行っています。発生頻度は、5段階(1:極めて低い、5:極めて高い)で評価しており、利益影響度は当該リスクが顕在化した場合に当社に与える影響金額を想定し、年間10億円未満の場合を小、10億円以上30億円未満の場合を中、30億円以上の場合を大として表示しています。
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種別 |
項目 |
リスク内容 |
発生 頻度 |
利益 影響度 |
対応 |
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情報セキュリティリスク |
(1)個人情報の取り扱いについて
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・外部からの悪意による不正アクセス行為及び内部の故意または過失による顧客情報の漏洩、消失、改ざんまたは不正利用 |
2 |
小 |
・個人情報保護マネジメントシステムの構築、運用 ・プライバシーマーク付与の認定 ・ISO/IEC 27001、ISO/IEC 27017、ISO/IEC 27701の認証取得 ・ISMAP-LIUクラウドサービスリストの登録 ・全役職員への個人情報保護士資格の取得義務付け ・国内外の新たな法的規制等に関する情報収集及び必要な対策の実施 ・法令遵守の徹底及び業務委託先の安全管理 |
|
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(2)設備及びネットワークの安定性について |
・火災、地震等の自然災害や外的破損、人的ミスによるシステム障害、その他予期せぬ事象による当社グループの設備及びネットワーク利用への支障発生 |
2 |
小 |
・複数のサーバーによる負荷の分散や定期的なバックアップ ・リアルタイムのアクセスログチェック機能やソフトウエア障害を即時に通知する仕組みの整備 ・障害発生時を想定した復旧訓練 |
|
サービスリスク |
(3)サービス等の不具合について |
・当社グループのアプリケーション、ソフトウエアやシステムにおける各種不具合の発生 ・当社グループ事業の運用に支障をきたす致命的な不具合の発見 ・障害発生時の対応遅延や既存顧客へのフォロー不足 |
2 |
小 |
・信頼度の高い開発体制の構築、維持 ・サービスのインシデントガイドラインの策定と実施 ・対応体制の整備 |
|
外部環境リスク |
(4)インターネットの利用環境について |
・インターネットの利用に関する新たな規制の導入や弊害の発生 |
2 |
小 |
・インターネットに関する法的規制等の情報収集及び課題抽出と解決策の実行 |
|
(5)クラウド事業について |
・クラウドサービス自体の大幅な需要低迷 |
2 |
小 |
・新たな提供価値の創造 ・新技術の積極的な投入 ・特許取得等による知的財産権の保護 ・M&Aや資本業務提携の推進 |
|
|
(6)技術革新への対応について |
・技術革新等への対応遅延 ・予想外の開発費等の発生 |
3 |
中 |
||
|
(7)競合について |
・既存事業者や新たな参入事業者との競争激化 ・画期的なコンセプトの他社サービス出現による競争激化 |
4 |
中 |
||
|
(8)自然災害について |
・地震や台風等の大規模自然災害による事業の遅延や停止 |
1 |
小 |
・BCPマニュアルの策定 |
|
|
投資リスク
|
(9)広告宣伝活動やプロダクト開発等の先行投資について |
・広告宣伝活動の方針や計画変更による大幅な支出増加 ・サービスの撤退に伴う損失の発生 |
2 |
小 |
・広告宣伝活動の費用対効果のモニタリング ・プロダクト開発におけるモニタリング |
|
(10)企業買収や投資有価証券の取得等の投資について |
・買収や出資後における事業計画の遅延 ・投資有価証券の減損損失の発生 |
3 |
中 |
・対象企業に対する十分なデューデリジェンスの実施 ・対象企業に対するモニタリングやフォローアップの徹底 |
|
|
(11)システムインフラ等への投資について |
・サービスの安定運用のための、予期せぬハードウエアやソフトウエアへの追加投資 |
2 |
小 |
・外部からのアクセスに関するモニタリングの徹底 ・事業拡大に応じた適切なシステムインフラ投資の設計 |
|
|
人的リスク |
(12)経営管理体制の確立について |
・事業規模に応じた体制や内部管理体制構築の遅延 ・外部委託先のモニタリングや体制不十分による納期遅延 |
2 |
小 |
・業容や従業員の増加に合わせた内部管理体制整備の徹底 ・外部委託先との情報管理体制の構築 |
|
(13)人材の育成及び確保について |
・優秀な人材の不足 ・営業人材の確保遅延や流出 ・ハラスメントや多様性への配慮不十分による生産性低下及び流出 |
2 |
小 |
・優秀な人材の採用 ・社内育成等による体制強化 ・労働環境の整備 |
|
|
(14)特定の人物への依存について |
・代表取締役である寺田親弘の業務継続が困難となる何らかの事象の発生 |
1 |
小 |
・同氏に過度に依存しない体制の整備 ・役員間の相互情報共有や経営組織の強化 |
|
|
法的リスク |
(15)法令について |
・国内外における新たなプライバシー関連法規の制定、インターネット関連事業者を規制する法律及び事業環境の拡大に伴い関連する法律等による影響 |
2 |
小 |
・法的規制等の情報収集及び課題抽出と解決策の実行 |
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(16)知的財産権の侵害等について |
・第三者からの特許権侵害や商標権侵害を理由とする損害賠償請求や差止請求 ・第三者による当社グループが保有している知的財産権への侵害 |
1 |
小 |
・特許事務所を通じた特許権侵害調査の実施 ・特許等の出願、登録 ・法的措置の実施 |
|
|
海外リスク |
(17)海外展開について |
・対応が困難な海外特有のリスク発生 ・海外事業の収益化の遅延 |
2 |
小 |
・事業展開地域の情報収集及び課題抽出と解決策の実行 ・適切な事業計画の策定 |
|
財務リスク
|
(18)信用について |
・信用低下による資金調達の制限 ・クレジットカードサービスの急拡大に伴う決済性資金確保の難易度上昇 |
2 |
小 |
・資本市場との継続的な対話と情報開示による信用維持 ・資金調達手段の多様化 ・回収不能リスクに備えた財務基盤の整備 |
|
その他 |
(19)インセンティブの付与について |
・発行するストックオプションの行使による既存株主の株式価値の希薄化(注) |
1 |
小 |
・市場環境や既存株主への影響等を十分に考慮したストックオプションの設計 |
(注)2025年7月31日現在におけるストックオプション(同日までに発行決議したものを含む)による潜在株式数は3,411,244株であり、発行済株式総数の2.7%に相当します。
(1)経営成績等に関する説明
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要は次の通りです。
①経営成績の分析
当連結会計年度の経営成績は以下の通りです。
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(単位:百万円) |
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
前連結会計年度比 |
|
|
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売上高 |
33,878 |
43,202 |
+27.5% |
|
売上総利益 |
28,814 |
37,410 |
+29.8% |
|
調整後営業利益 |
1,709 |
3,555 |
+108.0% |
|
経常利益 |
1,224 |
2,743 |
+124.1% |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
953 |
424 |
△55.5% |
当連結会計年度においては、堅調な受注状況を背景に、さらなる売上高成長の実現に向け、「Sansan」及び「Bill One」の営業体制の強化等に取り組みました。また、Eight事業においては、収益性に焦点を当てた事業方針の下、さらなる収益拡大に取り組みました。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は前連結会計年度比27.5%増、売上総利益は前連結会計年度比29.8%増(売上総利益率は86.6%)となり、堅調な実績となりました。また、売上高の伸長や売上総利益率の改善に加え、採用人数が前連結会計年度比で減少したことによる売上高人件費比率の低下等により、調整後営業利益は前連結会計年度比108.0%増、経常利益は前連結会計年度比124.1%増となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、2025年5月22日に公表した「Unipos株式会社に係る優先株式の追加取得及び資本業務提携の解消並びに投資有価証券の譲渡に伴う損失(特別損失)の計上に関するお知らせ」に記載の通り、株式売却契約損失引当金繰入額2,301百万円を特別損失に計上したことにより、前連結会計年度比55.5%減となりました。
セグメント別の業績は以下の通りです。
なお、当連結会計年度より、これまで各セグメントに配賦していなかった全社費用を一定の方針に基づき配賦しており、前連結会計年度の実績にも遡及して反映しています。
(ⅰ)Sansan/Bill One事業
当報告セグメントには、営業DXサービス「Sansan」や経理DXサービス「Bill One」等のサービスが属しています。
当連結会計年度におけるSansan/Bill One事業の成績は以下の通りです。
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(単位:百万円) |
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
前連結会計年度比 |
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売上高(注1) |
29,948 |
37,785 |
+26.2% |
|
「Sansan」 |
22,889 |
26,766 |
+16.9% |
|
「Sansan」ストック |
21,509 |
25,136 |
+16.9% |
|
「Sansan」その他 |
1,379 |
1,629 |
+18.1% |
|
「Bill One」 |
6,168 |
9,790 |
+58.7% |
|
その他 |
889 |
1,229 |
+38.1% |
|
調整後営業利益 |
2,251 |
3,581 |
+59.1% |
|
|
|
|
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「Sansan」 |
|
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|
契約件数 |
9,693件 |
10,701件 |
+10.4% |
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契約当たり月次ストック売上高 |
197千円 |
210千円 |
+6.6% |
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直近12か月平均月次解約率(注2) |
0.42% |
0.49% |
+0.07pt |
|
「Bill One」 |
|
|
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MRR(注3) |
640 |
913 |
+42.7% |
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有料契約件数 |
2,816件 |
3,932件 |
+39.6% |
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有料契約当たり月次ストック売上高 |
227千円 |
232千円 |
+2.2% |
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直近12か月平均月次解約率(注2) |
0.33% |
0.33% |
- |
(注)1. 外部顧客への売上高及びセグメント間の内部売上高または振替高の合計値
2. 各サービスの既存契約のMRRに占める、解約に伴い減少したMRRの割合
3. Monthly Recurring Revenue(月次固定収入)
a.「Sansan」
主に人材育成による営業体制の強化に取り組んだこと等により、契約件数は前連結会計年度比10.4%増、契約当たり月次ストック売上高は前連結会計年度比6.6%増となりました。また、直近12か月平均月次解約率は0.49%(前連結会計年度比0.07ポイント増)となり、1%未満の低水準を維持しました。
この結果、「Sansan」売上高は前連結会計年度比16.9%増、うち、固定収入であるストック売上高は前連結会計年度比16.9%増、その他売上高は前連結会計年度比18.1%増となりました。
b.「Bill One」
人材の採用や育成を中心とした営業体制の強化に取り組んだ結果、有料契約件数は前連結会計年度比39.6%増、有料契約当たり月次ストック売上高は前連結会計年度比2.2%増となりました。また、直近12か月平均月次解約率は0.33%(前連結会計年度と同水準)となり、1%未満の低水準を維持しました。そのほか、2024年6月から「Bill Oneビジネスカード」を活用した「Bill One経費」のサービス提供を開始し、さらに同年9月からは請求書発行から入金消込までを一気通貫で完結可能な「Bill One債権管理」のサービス提供を開始しました。
この結果、「Bill One」の2025年5月におけるARR(注4)は10,962百万円となり、売上高は前連結会計年度比58.7%増となりました。
(注)4. Annual Recurring Revenue(年間固定収入)
c. その他
AI契約データベース「Contract One」の売上拡大に向け、既存サービスで培った強みや知見、ノウハウ等を活かして、営業体制の強化や機能拡充等に取り組みました。また、連結子会社であるナインアウト株式会社において、「Ask One」の販売強化等に取り組みました。
この結果、その他売上高は前連結会計年度比38.1%増となりました。
以上の結果、Sansan/Bill One事業の売上高は前連結会計年度比26.2%増、調整後営業利益は前連結会計年度比59.1%増となりました。
(ⅱ)Eight事業
当報告セグメントには、名刺アプリ「Eight」やイベント書き起こしサービス「logmi」シリーズが属しています。
当連結会計年度におけるEight事業の成績は以下の通りです。
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(単位:百万円) |
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
前連結会計年度比 |
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売上高(注5) |
3,548 |
5,051 |
+42.4% |
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BtoCサービス |
347 |
402 |
+15.8% |
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BtoBサービス |
3,200 |
4,649 |
+45.3% |
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調整後営業利益 |
△462 |
63 |
- |
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「Eight」 |
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「Eight」ユーザー数(注6) |
372万人 |
409万人 |
+36万人 |
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「Eight Team」契約件数 |
4,608件 |
5,451件 |
+18.3% |
(注)5. 外部顧客への売上高及びセグメント間の内部売上高または振替高の合計値
6. アプリをダウンロード後、自身の名刺をプロフィールに登録した認証ユーザー数
a. BtoCサービス
デジタル名刺交換等の機能拡充を行った結果、「Eight」ユーザー数は前連結会計年度比36万人増の409万人となり、BtoCサービス売上高は前連結会計年度比15.8%増となりました。
b. BtoBサービス
各サービスのマネタイズ強化に継続して取り組んだ結果、BtoBサービス売上高は前連結会計年度比45.3%増となりました。また、名刺管理サービス「Eight Team」においては、契約件数が順調に増加し、前連結会計年度比18.3%増となりました。
なお、2024年6月に連結子会社化し、同年9月に連結子会社ログミー株式会社が吸収合併した、かえでIRアドバイザリー株式会社の業績が期首より寄与しています。
以上の結果、Eight事業の売上高は前連結会計年度比42.4%増となりました。調整後営業利益は、売上高の増加に加え、収益性を重視した事業運営に注力した結果、63百万円(前連結会計年度は462百万円の損失)となり、黒字化を実現しました。
②財政状態の分析
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(単位:百万円) |
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
前連結会計年度末比 |
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資産合計 |
37,592 |
47,984 |
+10,392 |
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負債合計 |
22,819 |
31,943 |
+9,123 |
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純資産合計 |
14,772 |
16,040 |
+1,268 |
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負債純資産合計 |
37,592 |
47,984 |
+10,392 |
(資産)
当連結会計年度末における総資産は47,984百万円となり、前連結会計年度末に比べ、10,392百万円増加しました。これは主に、現金及び預金の増加6,298百万円、建物及び構築物の増加1,681百万円、その他(流動資産)の増加1,026百万円、繰延税金資産の増加1,013百万円、前払費用の増加192百万円及び売掛金の増加179百万円、敷金の減少465百万円によるものです。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は31,943百万円となり、前連結会計年度末に比べ、9,123百万円増加しました。これは主に、顧客企業から契約期間分の料金を一括で受領すること等による前受金の増加3,808百万円、株式売却契約損失引当金の増加2,301百万円、未払金の増加1,007百万円、未払法人税等の増加785百万円、賞与引当金の増加169百万円、長期借入金の減少915百万円によるものです。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産額は16,040百万円となり、前連結会計年度末に比べ、1,268百万円増加しました。これは主に、新株予約権の行使による資本金、資本剰余金の増加がそれぞれ429百万円、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加424百万円及び新株予約権の計上による335百万円、自己株式の増加299百万円によるものです。
③キャッシュ・フローの分析
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(単位:百万円) |
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
前連結会計年度比 |
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営業活動によるキャッシュ・フロー |
5,483 |
9,651 |
+4,168 |
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投資活動によるキャッシュ・フロー |
△3,180 |
△2,550 |
- |
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財務活動によるキャッシュ・フロー |
1,431 |
△654 |
- |
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現金及び現金同等物の期末残高 |
24,729 |
31,172 |
+6,443 |
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は31,172百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,443百万円増加(前連結会計年度末比26.1%増)しました。当該増加には資金に係る為替変動による影響△3百万円が含まれています。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は9,651百万円(前連結会計年度は5,483百万円の収入)となりました。
主な資金増加要因は、前受金の増加額3,808百万円、株式売却契約損失引当金の増加額2,301百万円、その他の負債の増加額1,509百万円、未払金の増加額969百万円、仕入債務の増加額177百万円、賞与引当金の増加額173百万円、非現金支出となる減価償却費の計上940百万円、株式報酬費用の計上573百万円、投資有価証券評価損の計上126百万円であり、主な資金減少要因は、投資有価証券売却益418百万円、その他の資産の増加額343百万円、前払費用の増加額179百万円及び法人税等の支払額324百万円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は2,550百万円(前連結会計年度は3,180百万円の支出)となりました。
これは主に、有形固定資産の取得による支出2,231百万円、無形固定資産の取得による支出470百万円、投資有価証券の取得による支出400百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出230百万円等の支出、投資有価証券の売却による収入668百万円及び敷金の回収による収入783百万円等の収入によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果支出した資金は654百万円(前連結会計年度は1,431百万円の収入)となりました。
これは主に、長期借入金の返済による支出907百万円及び自己株式の取得による支出299百万円等の支出、株式の発行による収入642百万円等の収入によるものです。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは、提供するサービスについて生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載はしていません。
b.受注実績
当社グループは、受注から役務提供の開始までの期間が短いため、受注実績に関する記載は省略しています。
c.販売実績
当連結会計年度の外部顧客への販売実績をセグメント毎に示すと、次の通りです。
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セグメントの名称 |
前連結会計年度 (自 2023年6月 1日 至 2024年5月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年6月 1日 至 2025年5月31日) |
前連結会計年度比 |
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Sansan/Bill One事業 |
(百万円) |
29,938 |
37,773 |
126.2% |
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Eight事業 |
(百万円) |
3,542 |
5,039 |
142.2% |
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その他 |
(百万円) |
397 |
389 |
98.1% |
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合計 |
(百万円) |
33,878 |
43,202 |
127.5% |
(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りです。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。
①重要な会計方針及び見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成に当たって、重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しています。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載の通りです。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等に関する説明」に含めて記載しています。
③資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、認知度の向上及びユーザー数の拡大をすべく、積極的に広告宣伝活動を実施しました。今後も広告宣伝投資を継続して実施する方針です。当社グループの資金需要の一定割合は広告宣伝投資であり、必要な資金は自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本方針としています。なお、これらの資金調達方法の優先順位等に特段方針はなく、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に検討を行う予定です。
④経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」をご参照ください。
⑤経営者の問題意識と今後の方針に関して
経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
(Unipos株式会社の株式の譲渡)
当社は、2025年5月22日付の臨時取締役会において、当社が保有するUnipos株式会社(以下、Unipos社)の普通株式及び種類株式並びに株式会社日本政策投資銀行(以下、DBJ社)より株主間契約に基づいて取得する種類株式を株式会社リンクアンドモチベーション(以下、LMI社)に譲渡することを決議し、2025年7月1日に実施しました。
・株式譲渡契約を締結した理由:
当社は、2021年5月19日付でUnipos社と資本業務提携契約を締結し、同社サービスの「Unipos」が一定規模に成長した場合には、当社が将来的にUnipos社を連結子会社化することを視野に入れた上で、当社サービス「Sansan」と「Unipos」の連携を通じた相互サービスの価値向上や営業活動の連携、当社のEight事業で展開する広告サービスとの連携等について、さまざまな検討を進めてきました。しかしながら、この度、両社におけるサービス開発の優先度の相違や事業構造、展開サービスの変化等によって、当初想定した業務提携の内容を実行し、シナジーを創出していくことは困難であるとの双方合意の結論に至りました。かかる状況を受け、保有資産の効率化を図る目的で、当社が保有するUnipos社の普通株式及び種類株式の全てに関して、LMI社と株式譲渡契約を締結しました。また、これら結論を踏まえ、Unipos社との資本業務提携を解消することを決定しました。
・DBJ社から種類株式を取得する理由:
当社は、Unipos社の種類株式に関して、2021年5月19日付でDBJ社との間で株主間契約を締結しています。この度、LMI社へUnipos社株式の譲渡を企図するに当たり、諸条件を経済合理性の観点から勘案した結果、本株主間契約に基づき、当社がこの時点でコールオプションを行使し、DBJ社が保有するUnipos社の種類株式の全てを追加取得した上で、その後、当社が保有するUnipos社の普通株式及び種類株式の全てについて、LMI社に譲渡することとしました。
なお、これら一連の行為は、2025年6月27日開催のUnipos社の定時株主総会において、LMI社による Unipos社の完全子会社化に向けた株式交換契約に係る議案が承認されること、並びに同定時株主総会及び同日開催のUnipos優先株式に係る種類株主総会において、Unipos優先株式の内容変更に係る定款の一部変更が承認されることを前提条件としていたものです。
該当事項はありません。