第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社は、ミッションとして「データによって人の価値を最大化する」を掲げております。当社は、インターネットで欠如しているユーザーデータを蓄積するミドルウェアのような存在となり、人の価値を最大化するためのサービスを提供していくことに注力しております。

また、ビジネスミッションとして「個客中心のサービス体験をあたりまえに」を掲げております。

この背景として、ウェブサイトやスマートフォンアプリ上に今いるユーザーが、手に取るように見えたとしたらもっと面白くて有益なサービス体験が提供できるはずであると考えており、当社は「インターネットでは人は見えない」というあたりまえを壊したいと考えております。

インターネットの良さを最大限に生かし、インターネットをリアル化することで、当社はインターネットにおいて「人」を徹底的に可視化し、あらゆる顧客接点をデータにより個客中心の体験へと簡単にアップデートしていく、そんな次代のあたりまえを実現するためチャレンジしていくという想いをこのミッションに込めております。

 

(2) 経営戦略等

ミッションである「データによって人の価値を最大化する」の実現のため、当社グループはSaaS事業として「KARTE」を提供し、官民問わずオンラインに顧客接点を持つあらゆるサービスの運営事業者と事業上の関係性を構築し、運営事業者における複数の部署で横断的に「KARTE」が利活用されることを目指します。同時に、導入先のウェブサイトやスマートフォンアプリを通じて「KARTE」に集積される、膨大なユーザーの行動データを、機械学習技術等を用いて分析・モデル化することを通じて、次代のデジタルトランスフォーメーションを可能にするプラットフォームを構築することを目指しています。当該戦略の実現のため、「KARTE」のさらなる機能強化、営業戦略を通じた顧客基盤の拡大、事業連携等の戦略的パートナーシップの構築に注力しております。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは「KARTE」をサブスクリプションモデルで提供しているため、毎月経常的に得られる「KARTE」の月額利用料の積み上がり状況の指標であるARRの拡大を経営上の目標としております。その達成状況を判断する上で、サブスクリプション売上高、サブスクリプション売上高比率、導入企業数を重要な指標としております。サブスクリプション売上高は毎月経常的に得られる「KARTE」の月額利用料の合計額であり、経営上の目標の達成状況を把握するものです。サブスクリプション売上高比率は、当社グループ全体の売上高のうち、毎月経常的に得られる売上高の比率であり、当社グループ売上高の安定性を表します。ARRを高めていくためには導入企業数を増やしていくことが重要と考えております。

 

(4) 経営環境並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループの事業はデジタル・マーケティング・サービスが主な関連市場となっております。

当社グループの提供する「KARTE」は、大企業を中心に、役割の異なる複数部署及び複数事業で活用される事例が増えています。また、ECのみならず人材サービスや金融、不動産や自動車など、インターネット上に顧客接点を持つ多くの業界で利用されています。

インターネット上のCX(顧客体験)の強化に関しては、昨今、企業の競争優位性確保の手段として改めて注目されており、取り組みが活発となっております。企業の提供する製品やサービスが成熟している日本などの市場において、製品やサービス自体の差別化だけではなく、CX(顧客体験)を高めることにより競争優位性を高めることを狙う企業も増えていると考えております。

しかしながら、国内デジタル・マーケティング・サービス市場は、事業環境の変化が早く、それによりクライアント企業のニーズが絶えず変化しております。当社は直面する課題に対処するだけではなく、今後さらなる飛躍をするために、以下の取り組みを行ってまいります。

 

 

① 提供するプロダクト、サービスの向上

当社グループの顧客基盤の拡大に伴い、顧客ニーズも多様化しております。当社グループは、多様化する顧客ニーズを的確に捉え、既存プロダクト、サービスのさらなる付加価値向上を図ることが欠かせないものと認識しております。そのため、当社グループは、プロダクト、サービスの機能追加・改善を継続的に実施し、顧客価値の向上に努めてまいります。

 

② プロダクト、サービスの認知度向上

当社グループが成長を維持していくためには、当社グループのプロダクト、サービスの認知度を向上させ、新規顧客を獲得することが必要不可欠であると考えております。従前より、積極的なマーケティング活動やパートナー企業との提携等の認知度向上に向けた取り組みを行ってまいりましたが、今後、これらの活動をより一層強化・推進してまいります。

 

③ プロダクト、サービスに対する顧客の価値実感の向上

優れたプロダクトやサービスを顧客に提供するだけで、顧客がその価値を実感できるとは限りません。当社グループのプロダクトやサービス、特に「KARTE」は、顧客企業が積極的に活用して、その先にいるユーザーのCXを高めることで初めて価値を生み出します。そのためには、単にプロダクトやサービスを顧客に提供するだけではなく、顧客が「KARTE」などの我々のプロダクトやサービスを活用できる状態にしていくことが、顧客企業にとっても、我々にとっても、そして顧客企業の先にいるユーザーにとっても大切です。

それを実現していくために、我々はカスタマーサポートなどの有償・無償の顧客支援を提供していくことが大切であり、そのための人的資源に投資していく方針です。

 

④ 組織体制の整備

当社グループは、顧客基盤の拡大、サービスの付加価値向上及び新規サービスの開発等の多面的な取り組みにより成長を継続していくため、多様なバックグラウンドの優秀な人材を採用・育成し、組織体制を整備・強化していくことが重要であると考えております。当社グループの理念に共感し、高い意欲を持った優秀な人材を採用していくために、積極的な採用活動を行っていくとともに、従業員が働きやすい環境の整備を継続的に実施してまいります。

 

⑤ 経営基盤の強化

事業の拡大に伴う人材増強及び経営基盤の強化が欠かせないと認識しております。継続して人材の確保・育成・活用を行うと同時に、マネジメント力の強化や財務健全性の確保等の収益力を支える経営基盤の強化を図り、勢いのある成長を目指していきます。

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社グループは、Purpose「PLAY&AID」、Mission「データによって人の価値を最大化する」のもとに、人にフォーカスし、人々の生活をより豊かなものにすることを創業以来目指してきました。

 

私たちが事業やプロダクト開発の主眼に置く「人の価値」とは、人の発想や直感であったり、創造力(=クリエイティビティ)といった、子供から大人まで、人種や国籍、性別など問わず誰もに備わる能力のことです。私たちはデータとテクノロジーを使ってそこに作用し、世の中や社会に対して人から生まれる価値の総量を、今より圧倒的に増やそうとしています。

 

私たちが提供するCXプラットフォーム「KARTE」は、データの解析、可視化、アクションを通じた個別最適なコミュニケーションを実現することで、ユーザーへのサービス価値の最大化、業務や人員の最適化、業務効率の向上を可能にし、結果としてあらゆる産業においてユーザーの利便性を向上することができます。この人を軸とした好循環のサイクルは繰り返され、あらゆる産業でサービスを生み出す「人」の能力が引き出され、世界中の創造性と生産性を向上し、持続可能な社会の実現に貢献できると信じています。

 

1. ガバナンス

当社は、健全性を維持しながら企業価値を継続的に向上させるために、コンプライアンス及び、公正で透明性の高い経営を確保していくことがコーポレート・ガバナンスの基本であると考え、当社を中心とした当社グループにおいて内部統制システムに関する基本方針を定め、必要な体制の整備を図っています。今後も不断の見直しにより、その時々の要請に合致した体制を構築し、実施していきます。

詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 ⑴ コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 

2. 戦略

 人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

あらゆる人が自分らしく生き、ポテンシャルを発揮して活躍できる社会を目指す「Diversity & Inclusion」の考え方は、「人の発想や創造力を生かす」という当社のプロダクト開発思想と通じています。多様な人々が生きるこの社会において、「個」の力を発揮できるプロダクト提供を通じ、より豊かな社会の実現に向けて企業活動を進めています。

当社従業員と組織づくりもプロダクト思想と同様、個の力を信じ、互いの価値観を尊重する風土の醸成に努めています。

 

(1) フラットで透明性の高いコミュニケーションに基づく挑戦機会の創出

当社では売上や経営上の重点指標など可能な限り透明性高く社員に情報を公開し、戦略やプロダクトの方向性など、意思決定前の重要な議論に社員の誰もが参加できる組織文化を形成しています。「挑戦しない方がリスク」という考えのもと、様々な取り組みやプロジェクトを小さく素早く実行して価値検証できるよう、一定のモニタリング体制のもと、承認プロセスを可能な限り排除した縦に短く横に長い組織となっています。

 

(2) 従業員の成長支援

 a. 充実した学習機会

当社では、新たに入社する全従業員を対象に個人情報保護やセキュリティ、事業や組織に関する研修を行っており、オンボーディングや採用後の成長支援を目的とした様々な研修を実施しています。他にも、当社エンジニアが講師となるSQL講座の開催や自社プロダクト理解を深めるコンテンツ配信など、一人ひとりが高いパフォーマンスを発揮する為の学習機会を数多くを設けています。

 

 b. マネジメントスキル向上研修

企業風土の醸成や、業績向上に向けた拡張性ある組織づくりの為には、マネージャー層の育成や成長支援が重要であると考えており、チームメンバーやプロジェクトメンバーと日々接するミドルマネジメント層を対象に1on1スキル向上や組織マネジメントスキルの開発研修を実施しています。

 

(3) 個々の働きやすさを追求した独自の福利厚生

従業員の高いパフォーマンス発揮に向けて、働く環境及び働き方におけるフレキシビリティを高めることにも努めております。コロナ禍以前よりリモートワーク制度を導入している他、「PLAY-AID Holiday」という独自の休暇制度により、雇用期間に関わらず十分な休暇日数を付与し、出産・育児・介護・療養などを含め、従業員が自分や家族のために休みやすい環境を整えています。また、使い道を限定しない経費を予め社員に付与する「PLAY-AID Allowance」という独自制度を導入し、少額の経費精算など業務における非効率を可能な限り減らしています。

 

3. リスク管理

当社グループでは、リスク管理委員会において各種リスク管理の方針等について審議等行い、管理部門を中心としてリスクの評価及び対応を実施するとともに、案件に応じて、取締役会に報告等を行う仕組みを構築しています。リスク管理の詳細は「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

4. 指標及び目標

上記の取組に関する指標をウェブサイト上で公開しております。各指標に対する目標は定めておりませんが、今後も各取組の継続や見直しを通じて、持続可能な社会の発展への貢献と、企業価値の向上を目指してまいります。

   日本語:https://plaid.co.jp/esg/data/

   英語 :https://plaid.co.jp/en/esg/data/

 

3 【事業等のリスク】

以下には、当社グループが事業展開その他に関してリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項について記載しております。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生する可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。また当社グループがコントロールできない外部要因や必ずしもリスク要因に該当しない事項についても記載しております。当社グループはこれらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、リスク回避あるいは発生時に迅速に対応する所存ですが、当社グループの経営状況、将来の事業についての判断及び当社株式に対する投資判断は、本項記載内容を慎重に検討した上で行われる必要があると考えます。

 

(1) 事業環境に関するリスク

① CX(顧客体験)及びデジタルマーケティングの市場について

当社グループは、インターネット業界においてクラウドサービスを提供しているところ、当社グループの売上高は主としてSaaS事業による収益であるため、当該事業に依存しております。当社グループの提供する「KARTE」の各サービスは、顧客の行動をリアルタイムに解析して一人ひとりを可視化し、個々の顧客にあわせてサイト内でのデジタルマーケティングを可能とするものであるため、当社グループのサービスが日本をはじめとするCX(顧客体験)及びデジタルマーケティングの市場において受け入れられることが当社グループの今後の成長にとって必要となります。現在は顧客である企業のお客様に対するダイレクトマーケティングニーズ(注1)の上昇を源泉として事業を拡大しておりますが、今後国内外の経済情勢や景気動向、CX(顧客体験)に関するサービスの認知度が向上しないこと、顧客の嗜好変化等の理由により、市場の成長及び需要が当社グループの見込みより下回った場合や、当社グループがターゲットとする市場の規模が当社グループの見込みより小さかった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応として、CX(顧客体験)及びデジタルマーケティングの市場の動向について情報収集を継続的に実施します。また、事業の拡大と積極的なマーケティング活動を通じてCX(顧客体験)やデジタルマーケティングに関するサービスの認知度向上に努めてまいります。

 

(注1) 外部の流通チャネルを介さずにターゲットの消費者との直接のコミュニケーションを図ることを指します。

 

② 当社グループの属する市場における競争及び「KARTE」ブランドの確立と維持について

当社グループの提供するサービスである「KARTE」のように、顧客の行動をリアルタイムに解析して一人ひとりを可視化し、個々の顧客がよりよい体験を得られるような施策を提供することができるCXソフトウェア市場は、日本では比較的新しい市場であり、今後競争が激化することが予想されます。今後、従前よりマーケティングツールを提供している企業により類似したサービスが開発され、それらが安価で又は無料で提供される等競合環境が激化した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応として、当社グループは、既存サービスのさらなる機能強化や新たな機能開発等により、顧客に対し新たな価値を提供するとともに、権利保全のための特許の取得等を通じて当社の付加価値を高めていく方針です。

また、当社グループは、CXソフトウェア市場において信頼される「KARTE」ブランドを確立し、これを維持することが、既存取引先の維持や新規取引先の獲得に不可欠であると考えています。当社グループは「KARTE」ブランドの確立及び維持のために様々な施策を行っておりますが、今後の競争環境の激化その他の要因により「KARTE」ブランドの確立及び維持を想定どおりに出来ない場合には、当社グループの成長が阻害され、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

加えて、海外市場など競合環境等の異なる新たな市場への展開を行った場合にはその成否次第で当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応として、当社グループは「KARTE」ブランドの確立及び維持のためにマーケティング活動をはじめとした様々な施策を行っております。また、海外市場など競合環境等の異なる新たな市場への展開を検討する場合には、綿密な市場調査の実施により事業リスク等を慎重に検討し、実行の判断を行うように努める方針です。

 

 

③ インターネットアクセスについて

当社グループの提供するサービスである「KARTE」は、事業者及び顧客がアクセスするインターネットの通信環境に影響を受けます。ネットワーク事業者によるサービスの内容や価格の変更等の動向によっては、事業者がインターネットを通じて「KARTE」にアクセスして利用することが制限され、また、かかる利用に関する費用が増加する場合があります。加えて、インターネットの利用者数、利用頻度、データ送信量は増加し続けているところ、当該増加によって当社グループ及び事業者が依拠するインフラとしてのインターネットに障害等が発生した場合、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応として、当社グループでは、自然災害、事故、インターネットの障害等に備え、サービスの定期的バックアップ、稼働状況の常時監視等によりトラブルの事前防止又は回避に努めております。

 

(2) 事業に関するリスク

① 当社グループのサービスの競争力(取引先の支持及び技術革新)について

当社グループの提供するサービスである「KARTE」は、ウェブサイトやスマートフォンアプリを運営する事業者のサービスに訪れた顧客の行動をリアルタイムに解析して一人ひとり可視化し、「顧客分析」と「施策制作・配信」を同サービス上でまとめて実行することができる点に競争力があると考えております。そのため、当社グループが今後事業者との取引を維持・拡大するためには、事業者の要望に応え、また、急速な技術革新に対応することで、当社グループの提供するサービスが市場に受け入れられることが必要となります。しかしながら、当社グループが事業者の要望に十分に応えるサービスを提供できない場合、急速な技術革新への対応が遅れた場合、当社グループのマーケティング活動が功を奏しなかった場合、取引先である事業者が利用している他社のアプリケーションやプラットフォーム等との互換性を確保できない場合等には、当社グループのサービスの競争力が減退し、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応として、当社グループは、事業者が効果的かつ容易に利用できるサービスを提供できるよう、新たなサービスの導入や既存サービスの強化等に引き続き注力します。具体的には、サービスの機能改善や新たな機能開発の検討において、当社グループのサービスが解約に至った理由のヒアリングや傾向分析等の結果を参考にして開発活動を行うことにより、事業者が効果的かつ容易に利用できるサービスの提供に努めております。

 

② 取引先の獲得・維持及び販売拡大について

当社グループが今後成長を持続するためには、新規取引先の獲得や既存取引先の維持、販売の拡大が必要となりますが、当社グループのコントロールの及ばないものを含む内外の要因によってこれらが達成できない可能性があり、その場合には当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。かかる要因には、潜在取引先の発掘、人材の確保、事業計画及び経営戦略の達成状況、販売価格の水準及び改定、カスタマーサポートの充実度、「KARTE」のマーケティング活動の状況、競争環境、取引先側のマーケティングに対する方針や取組み状況、当社グループとパートナー企業を含む第三者との関係、技術革新、情報セキュリティに関する環境など様々なものが含まれます。

また、当社グループは、これまで新規取引先の獲得や既存取引先の維持及び販売の拡大にあたって、既存取引先による当社グループに対する高い評価や推薦・紹介が重要な要因になっておりましたが、既存取引先との間の契約の解消等により、かかる評価が低下した場合には、新規取引先の獲得や既存取引先の維持、販売の拡大に悪影響を与え、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応として、取引先の獲得・維持及び販売拡大に大きく影響する事業計画及び経営戦略の達成状況や営業・マーケティングの活動状況については、KPIの設定とそのモニタリング体制の強化に引き続き注力してまいります。

 

③ 当社グループの価格決定モデル及びコストについて

当社グループの提供する「KARTE(for Web)」及び「KARTE for App」のサービス契約期間は原則単年(12ヶ月)契約であり、料金体系としては、毎月一定のプロダクト利用料をいただく月額課金型(サブスクリプションモデル)を採用しております。「KARTE(for Web)」及び「KARTE for App」は、原則として、契約締結前12ヶ月間における事業者のサービス(ウェブサイト・スマートフォンアプリ)の平均MAU数に応じて月額固定の利用料金が決定されます。

 

年間の利用期間中にMAU数が急激に増加する場合や当社グループの想定よりもアクション数の多いアクティブユーザーを顧客に持つ事業者との契約の場合には、月額固定の利用料金が、MAU数の増加等に伴い上昇するサーバー利用に係るコストに見合わない事態が生じ、当社グループの売上総利益率が低下する可能性があります。当社グループは、契約更新前の利用状況を踏まえて、契約更新時に利用料金の増額交渉を行っておりますが、当該交渉が不調に終わった場合には、当社グループの売上総利益率が低下する可能性があります。当該リスクへの対応として、当社グループの価格決定モデル、利用料金の定期的な見直し及びコストの分析の継続的な実施に努めます。

また、当社グループの現在の取引先の多くはEC事業者でありますが、他の業種業態の事業者が当社グループの取引先として拡大する等、事業環境の変化によって上記の価格決定モデルを改定する必要性が生じる可能性があります。当社グループがかかる改定を適時適切に行うことができない場合やかかる改定が取引先に受け入れられない場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

加えて、新たなサービスの導入や既存サービスの強化等にあたっては開発に係る人件費の増加等が発生する可能性がありますが、当社グループが予期せぬ状況の発生により、新たなサービスの導入や既存サービスの強化等が計画どおりに進まない場合又は想定どおりに投資回収ができない場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応として、事業及び開発の進捗や計画との差異状況を適時適切に把握の上、投資判断を行うことに努めてまいります。

 

④ 不正アクセスと情報流出について

当社グループは、提供サービスである「KARTE」を通じて、取引先である事業者に関する情報や事業者が運営するウェブサイトやスマートフォンアプリに訪れる顧客の行動情報等を取り扱っております。また、当社グループは、「KARTE」を運営するにあたり、グーグル・クラウド・ジャパン合同会社の提供するGoogle Cloud Platform及びアマゾンウェブサービスジャパン合同会社の提供するアマゾンウェブサービスの外部クラウドサービスを利用しており、これらのサービスの提供元における情報セキュリティ対策措置にも一部依拠しております。万が一当社グループが保有する情報が流出した場合には、当社グループに対する損害賠償請求や社会的信用の失墜により、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応として、当社グループでは、クラウドサービスの提供及び利用に適用できる情報セキュリティ管理策のための指針を示した国際標準規格である「ISO/IEC 27017:2015」に基づくISMSクラウドセキュリティ認証を取得しております。また、当認証を取得するために必要となる情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格である「ISO/IEC 27001」の認証取得もしており、情報セキュリティの確保に努めております。加えて、セキュリティインシデントの事例等を通じて、当社グループの情報セキュリティ対策の強化に努めるとともに、クラウドサービスの提供元における情報セキュリティ対策のモニタリングに引き続き注力してまいります。

 

⑤ 当社グループのプラットフォームのパフォーマンス及び第三者のデータセンターについて

当社グループは、インターネット通信を介してサービスを提供しており、当社グループの持続的な成長は技術基盤を含む「KARTE」のパフォーマンスに依拠しているところ、人為的ミス、通信ネットワーク機器の故障、アクセス数の急激な増大、ソフトウェアの不具合、コンピューターウィルス、停電、利用するクラウドサービス等の外部サービスの提供の停止・故障等により、システム障害が発生する可能性があります。当社グループでは、システムの冗長化やセキュリティ対策に努めておりますが、当社グループの想定しないシステム障害が発生し、サービス提供に支障が生じた場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、当社グループが提供する主たるサービスである「KARTE」の運営にあたり、外部クラウドサーバーを利用しておりますが、安定した品質の確保や機能維持コストの観点から、当該サーバーについては、グーグル・クラウド・ジャパン合同会社の提供するGoogle Cloud Platform及びアマゾンウェブサービスジャパン合同会社の提供するアマゾンウェブサービスを利用して運営を行っております。しかしながら、サービスの提供元においてシステム障害が発生する場合や当社グループとサービスの提供元との間の契約が終了する場合等には、「KARTE」のサービス提供に支障が生じ、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

加えて、これらの当社グループの事業及び業績に対する影響は、当社グループが加入している保険等によっては、十分に補償されない可能性があります。当該リスクへの対応として、インターネットの障害やセキュリティインシデントに備えたサービスの冗長化、セキュリティ対策、クラウドサービスの提供元を含めた当社プラットフォームの稼働状況の常時監視等に引き続き注力してまいります。

 

⑥ 当社グループの事業パートナーとの関係について

当社グループは、「KARTE」を提供し、CXプラットフォームを構築するため、事業連携等の戦略的なパートナーシップの構築に注力しております。例えば、当社グループは、「KARTE」の運営において利用する外部クラウドサーバーについて、グーグル・クラウド・ジャパン合同会社及びアマゾンウェブサービスジャパン合同会社をデータパートナーと位置づけております。加えて、Googleとは資金調達と同時に戦略的パートナーシップを結んでおり、Google Cloudの機械学習やAI(人工知能)技術の統合において、協業をしていく予定です。また、当社グループは販売の促進・拡大のため、企業間で戦略的アライアンスを含めたパートナーシップを結んでおり、当該企業をコンサルティング・ソリューションパートナー(注2)と位置づけております。かかるパートナーシップが当社グループの想定どおりにCXプラットフォームの構築に寄与しない場合やパートナーとの関係が悪化した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応として、各パートナーシップをさらに深化させるため、相互の事業価値向上に資する実証実験にかかる取り組みや実効的なアライアンスを推進する人材の確保など、適切な機会創出とリソース配置を推進してまいります。

 

(注2) 当社グループと共同して販売支援活動等を行っていただくパートナー企業を指します。

 

⑦ 知的財産権について

当社グループは、当社グループが提供するサービスに関する知的財産権を獲得、保護し、第三者の知的財産権を侵害することなく事業を行うことが重要であると考えています。

当社グループは、特許権及び商標の登録等によって当社グループの知的財産の不正使用を防止するための対策を講じていますが、当社グループの知的財産権を保護するために提起される訴訟には多額の費用を要し、また、これらの対策は不正使用を防止するために十分でない可能性があります。また、競合他社が類似の技術やサービスを開発する可能性や、当社グループが知的財産権を行使しようとした場合にその有効性を否定する旨の主張がなされる可能性もあります。当社グループが不正使用を検知若しくは防止できない場合、又は権利を行使することができない場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、第三者の知的財産権を侵害しないように取り組んでおりますが、万が一、当社グループが第三者の知的財産権等を侵害したと主張される場合には、損害賠償請求や使用差止め等の訴えを起こされる可能性があります。かかる場合には、解決までに多くの時間や費用を要し、侵害されたと主張される知的財産権が組み込まれたサービスの提供を中止せざるを得ない等、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

加えて、当社グループの提供する「KARTE」の各サービスは、オープンソースソフトウェアを使用しておりますが、当社グループが同ソフトウェアを使用できなくなることで、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応として、当社グループの事業を安定的に拡充するため、権利の保全と、他社の知的財産権の侵害を回避するため、競合他社の技術動向を分析し、知的財産権の調査を拡充するなどして、中心的な事業にかかる権利の早期取得を戦略的に推進してまいります。

 

 

(3) 会社組織に関するリスク

① プライバシー、個人情報保護、情報セキュリティに係る規制その他の規制について

当社グループは、提供するサービスの特性上、取引先である事業者からその顧客に関する個人情報の取扱いを委託され、事業者による監督のもとでこれを取り扱っています。そのため、個人情報の保護に関する法律や関連する法令を遵守することを徹底し、個人情報の適切な管理と流出防止を経営の重要課題として位置付けております。具体的には、個人情報保護方針を策定して管理体制を構築し、徹底した管理とITセキュリティ、従業員教育等の施策を実施するとともに、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)やプライバシーマークといった情報セキュリティに関する認証を取得しております。また、2022年4月に施行された個人情報の保護に関する法律(以下「個人情報保護法」という。)の改正を含め、法規制の変化への対応にも努めております。しかしながら、外部からの攻撃や関係者の故意・過失、盗難等により、当該個人情報の流出、破壊もしくは改ざん又はシステムの停止等が引き起こされる可能性があります。そうした事態が生じた場合には、社会的信用の低下、被害を受けた方への損害賠償等の多額の費用の発生等により、当社グループの事業及び業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、監督者である事業者から個人情報のより厳格な安全管理を求められる可能性があり、かかる場合には、コストの増加等により当社グループの事業及び業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、上記のとおり事業者からその顧客に関する個人情報の取扱いを受託する立場にあるため、提供するサービスの特性上、委託者である事業者が顧客の個人情報の取得等を行うことにつき、当該事業者が自身に適用のある個人情報保護法や関連する法令等を遵守していることに依拠しております。当社グループは事業者との間のサービス利用規約において、事業者が当該法令等を遵守することを確認した上でサービスを提供しておりますが、事業者において当該法令等の違反が発生した場合には、社会的信用の低下等により、当社グループの事業及び業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループの事業領域においては、事業展開そのものについて著しく制約を受ける法的規制は現時点ではありません。しかしながら、インターネットの利用形態の多様化や国際的な規制動向に伴い、関連する法令等の新たな制定や、既存の法令等の改正や解釈の変化が生じた場合、もしくは法令等に準ずる業界内の自主規制が制定されその遵守を求められるといった状況が生じた場合に、その内容によっては当社グループの事業及び業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。例えば、当社グループのサービスではデータの収集に主に1st Party Cookieの情報を用いておりますが、仮に将来において当該利用に関する法的規制が強化された場合やインターネットユーザーがデータの提供に消極的な傾向を示すようになった場合には、当社グループのサービスにおいてその利用が制限されることになり、当社グループの事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応として、セキュリティフレームワークによる審査や関連情報のアップデート、最新のセキュリティインシデントの事例等を通じて、当社グループの情報セキュリティ対策の強化を継続するとともに、個人情報保護法や関連する法令等、またCookie等を取り巻く技術革新の動向を注視し、事業活動における影響を見極め、早期の体制構築に努めてまいります。

 

② 当社経営陣及び従業員について

当社の創業者であり、創業以来代表取締役を務めております代表取締役執行役員CEO 倉橋健太、及びCPO(Chief Product Officer)を務めております取締役執行役員 柴山直樹は、当社グループの事業方針や戦略の決定をはじめ、サービスの開発、新規顧客開拓等の重要な役割を担っております。そのため、今後何らかの要因により、両氏による事業運営の継続が困難になった場合、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

また、当社グループは事業をさらに成長させる上で、エンジニアや営業担当者をはじめとした優秀な人材を確保・育成することが必要不可欠であると認識しております。現在、人材の確保は従業員からの紹介に主に依拠しておりますが、今後、同様の方法による人材の確保が功を奏しない可能性があり、このように人材の確保が想定どおり進まなかった場合や、優秀な人材が社外に流出した場合には、当社グループの提供するサービスの競争力の低下や採用コストの増大を招き、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応として、当社グループの事業計画に基づき計画的に採用を進め、多様な人材を確保するため、当社グループのビジョンの一層の浸透を図るとともに、フレックスタイム、在宅勤務等の働きやすい環境の整備を推進してまいります。

 

③ 内部管理体制について

当社グループは、コーポレート・ガバナンス体制の充実を重要な経営課題と認識しており、今後の事業拡大に対応するため、内部管理体制の充実を図っていく方針であり、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性の確保、事業活動に関わる法令等の遵守を徹底してまいりますが、当社グループの急速な事業展開及び会社規模の拡大に内部管理体制の整備が追いつかなかった場合には、業務運営に支障をきたし、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応として、事業環境の変化や法改正等の動向を早期に把握し、また外部専門家の知見を取り込むなどして、効率的に体制の強化を図ってまいります。加えて、採用を強化し、また内部における知見の共有を一層推し進めるなどして、人材の拡充にも努めてまいります。

 

(4) その他

① 配当政策について

当社は会社設立以来、配当を実施しておらず、今後の配当の具体的な実施の有無等についても未定でありますが、将来にわたって経営環境、財政状態や内部留保の状況を勘案し、株主に対する利益還元を検討していくこととしております。しかしながら、将来的に安定的な利益を計上できない場合には、配当による利益還元が困難となる可能性があります。

 

② 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

当社は、当社の役員、従業員に対して新株予約権を付与しており、本書提出日現在における新株予約権による潜在株式数は1,397,000株であり、発行済株式総数40,668,944株の3.4%に相当しております。

今後もストック・オプションとしての新株予約権を付与する可能性があります。今後、既存の新株予約権や将来付与する新株予約権が行使された場合には、当社株式の1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。

 

③ 自然災害等について

当社グループの事業は、インターネットや第三者が提供するクラウドサーバー等に依存しています。そのため、これらに被害をもたらすおそれのある自然災害等が発生した場合には、当社グループは事業を継続することができない等の支障が生じ、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、自然災害等に備えて災害時の事業継続計画を策定していますが、当社グループの事業を継続するために十分ではない可能性があり、結果として、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクへの対応として、事業環境の変化や最新の災害事例を踏まえ、事業継続計画をタイムリーに見直し、その実効性を確保してまいります。

 

④ 繰延税金資産の回収可能性について

当社グループは、将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に対して、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を判断して繰延税金資産を計上しております。将来の課税所得については、経営環境の変化等を踏まえて見直しを行いますが、その結果、繰延税金資産の全部または一部に回収可能性がないと判断し、繰延税金資産の取り崩しが必要となった場合、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態の状況

(流動資産)

当連結会計年度末における流動資産は、942,897千円増加し、6,243,398千円となりました。主な内訳は、取引規模の拡大により売掛金が158,666千円、現金及び預金が917,565千円増加したことによるものであります。

(固定資産)

当連結会計年度末における固定資産は、137,638千円増加し、1,056,531千円となりました。主な内訳は、繰延税金資産が401,109千円増加したことによるものであります。

(流動負債)

当連結会計年度末における流動負債は、1,114,372千円増加し、3,575,899千円となりました。主な内訳は、契約負債が347,993千円増加及び1年内返済予定の長期借入金が315,038千円増加、未払法人税等172,767千円増加したことによるものであります。

(固定負債)

当連結会計年度末における固定負債は、488,007千円減少し、521,026千円となりました。主な内訳は、長期借入れの返済により、長期借入金が469,514千円減少したことによるものであります。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は、454,171千円増加し、3,203,004千円となりました。主な内訳は、非支配株主持分が93,572千円減少した一方で、利益剰余金が320,732千円増加、資本金145,262千円及び資本剰余金が145,262千円増加したことによるものであります。

 

② 経営成績の状況

当社グループは「データによって人の価値を最大化する」をミッションに掲げ、世の中に溢れる様々なデータを生活者(注1)にとって価値あるものとして還元し、豊かな体験を流通させることを目的に、当社の提供するCX(注2)(顧客体験)プラットフォーム「KARTE」をウェブサイトやスマートフォンアプリを運営する企業に向けて、クラウド方式(注3)で提供しております。

ショッピングや旅行、金融など様々なサービスがインターネットを介して提供されるようになった今、生活者が企業にもとめることは、「自宅にいながら買い物できる」「予約できる」といった単なる利便性だけではなく、自分の興味や状態に合った最適な提案を受けられる良質なコミュニケーションやその先の体験へとシフトしていると当社グループは考えております。

一方で、企業がそれに応えるためには、データの蓄積、統合、分析を通じて一人ひとりの状態を正しく理解し、それに基づいて適切なコミュニケーションを図る、あるいはウェブサイトやスマートフォンアプリをパーソナライズさせる仕組みを構築する必要がありますが、これらの取り組みは企業にとって複雑で難易度の高いものとなっているのが現状です。

企業は「KARTE」を活用することにより、ウェブサイトやスマートフォンアプリ上のリアルタイム行動データを中心とする様々なデータを、ユーザー単位で解析することができます。それによって、一人ひとりの興味や状態が可視化され、ユーザーをPV(注4)やUU(注5)といった塊の「数字」としてだけではなく、一人の「人」として理解しやすくなると当社グループは考えております。その上で企業は、「KARTE」内で一人ひとりの興味や状態に合わせた多様なコミュニケーション施策を実施し、その結果を検証することなどができます。

顧客体験向上やデータ活用に対する企業の関心が高まる中、「KARTE」はウェブサイトやスマートフォンアプリ上のマーケティング領域に留まらず、カスタマーサポート領域など様々な企業活動において活用いただいております。今後も「KARTE」の機能強化や各種プロダクトの提供を通じて、企業が統合的にユーザーを理解できるデータ環境の拡充を進めていきます。

当連結会計年度においては、「KARTE」の販売強化に向けた組織変更や人員増強を行ったほか、更なる事業領域の拡大に向けた取り組みも行いました。

 

この結果、当連結累計期間の末日における当社グループのARR(注6)は10,085,915千円となり、売上高は10,992,713千円(前期比27.3%増)、営業利益は260,915千円(前期は営業損失881,423千円)、経常利益は184,413千円(前期は経常損失938,343千円)、親会社株主に帰属する当期純利益は320,732千円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失2,108,610千円)となりました。

なお、当社グループはSaaS事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

(注1) 世の中一般の不特定多数の人々を「生活者」、企業が商品・サービスを提供する相手を「ユーザー」と表記しております。

(注2) Customer Experience(カスタマーエクスペリエンス)の略語であり、一般的に「顧客体験」と訳されますが、顧客がよいと感じられる体験、つまり「顧客が体験して得られる価値」までも含めて定義しております。

(注3) クラウドコンピューティングの略語であり、ソフトウェア等のシステムをインターネット経由でサービス提供することを前提とした仕組みの総称であります。

(注4) Page View(ページビュー)の略語であり、ウェブサイト内の特定ページが開かれた回数を表し、ウェブサイトがどのくらい閲覧されているかを測るための指標の一つです。

(注5) Unique User(ユニークユーザー)の略語であり、特定の集計期間内にウェブサイト又はスマートフォンアプリに訪問したユーザーの数を表す数値です。

(注6) Annual Recurring Revenueの略語であり、各期末の月次サブスクリプション売上高を12倍して算出。既存の契約が更新のタイミングで全て更新される前提で、既存の契約のみから、期末月の翌月からの12ヶ月で得られると想定される売上高を表す指標です。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ917,565千円増加し、当連結会計年度末には4,744,925千円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は900,478千円(前年同期は325,088千円の使用)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益25,010千円、株式報酬費用198,075千円、減損損失153,179千円の計上、契約負債の増加額347,993千円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は49,686千円(前年同期は89,033千円の使用)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出が57,617千円であったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果得られた資金は66,773千円(前年同期は905千円の獲得)となりました。これは主に短期借入金の返済による支出1,660千円、長期借入金の返済による支出554,476千円があった一方で、短期借入れによる収入100,000千円、長期借入れによる収入400,000千円、及び新株予約権の行使による株式の発行による収入が122,911千円であったことによるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績

当社グループは、インターネット上での各種サービスを主たる事業としており、生産に該当する事項が無いため、生産実績に関する記載はしておりません。

 

b.受注実績

当社グループは、受注生産を行っておりませんので、受注実績に関する記載はしておりません。

 

c.販売実績

当社グループは、SaaS事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。

なお、当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。

 

事業分野別の名称

当連結会計年度

(自 2023年10月1日

至 2024年9月30日)

販売高(千円)

前期比(%)

SaaS事業

10,992,713

127.3

 

(注) 金額は、販売価格によっております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産及び負債又は損益の状況に影響を与える会計上の見積りは、連結財務諸表作成時に入手可能な情報及び合理的な基準に基づき判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループは、安定的な収益獲得を実現し、持続的な成長を達成するために、経常的に獲得される収益としてARRを重要な経営指標として掲げており、その拡大のために、サブスクリプション売上高、サブスクリプション売上高比率、顧客社数を特に経営成績に影響を与える主要な経営指標と捉えております。

当連結会計年度においては、「KARTE」の販売強化に向けた組織変更や人員増強を行ったほか、更なる事業領域の拡大に向けた取り組みも行いました。この結果、主要な経営指標の推移は以下のとおりとなっております。

当連結会計年度の末日におけるARRは10,085,915千円、サブスクリプション売上高は9,041,029千円、サブスクリプション売上高比率は82.2%となっております。また、単体顧客社数は659社、単体顧客単価は1,127千円となっております。これは主に、CX(顧客体験)及び「KARTE」の認知拡大のために実施したマーケティング活動による新規顧客開拓並びに当社カスタマーサクセスチームに加えてパートナー企業と連携した「KARTE」の活用支援の強化等により、「KARTE」の利用領域の拡大が進み導入企業数及び導入ウェブサイト数等の件数が拡大したことによるものであります。

 

(売上高)

当連結会計年度の売上高は10,992,713千円(同27.3%増)となりました。主な要因は、「KARTE」の利用領域の拡大が進み単体顧客社数が659社となったことによるものであります。

 

(売上原価、売上総利益)

当連結会計年度の売上原価は3,122,960千円(同30.3%増)となりました。これは、導入企業数の増加に伴い、サーバー利用料等が増加したことによるものであります。この結果、売上総利益は7,869,753千円(同26.2%増)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

当連結会計年度の販売費及び一般管理費は7,608,837千円(同6.9%増)となりました。これは主に、人員増強に伴う人件費の増加によるものであります。この結果、営業利益は260,915千円(前期は営業損失881,423千円)となりました。

 

(営業外収益、営業外費用及び経常損失)

当連結会計年度の営業外損益は主にポイント還元収入による営業外収益5,528千円(同32.7%増)、譲渡制限付株式関連費用、支払利息による営業外費用82,030千円(同34.3%増)を計上いたしました。この結果、経常利益は184,413千円(前期は経常損失938,343千円)となりました。

 

 

(特別損益、親会社株主に帰属する当期純損失)

当連結会計年度の特別損益は、特別損失として減損損失及び投資有価証券評価損を計上いたしました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は320,732千円(前期は親会社株主に帰属する当期純損失2,108,610千円)となりました。

 

なお、財政状態の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」に、キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性の分析

当社グループの運転資金需要のうちの主なものは、サーバー利用料、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。

当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。

 

なお、当連結会計年度末における借入金の残高は1,320,692千円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は4,744,925千円となっております。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、様々なリスク要因が当社の経営成績に影響を与えるおそれがあることを認識しております。

これらリスク要因の発生を回避するためにも、提供するサービスの機能強化、人員増強、財務基盤の安定化等、継続的な経営基盤の強化が必要であるものと認識し、実行に努めております。

 

⑤ 経営者の問題意識と今後の方針について

経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照下さい。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。