当第1四半期累計期間において、新たな事業等のリスクの発生、または、有価証券報告書に記載した事業等のリスクについての重要な変更はありません。
文中の将来に関する事項は、提出日現在において、当社が判断したものであります。
当第1四半期累計期間(2020年8月1日から2020年10月31日まで)における事業の概況としましては、再生誘導医薬開発品レダセムチド(HMGB1より創製したペプチド医薬)について、臨床試験に向けた研究開発が引き続き進捗いたしました。レダセムチドは、従来の再生医療とは異なり、体外で人工的に培養した細胞の移植や投与を一切必要とせず、薬の投与のみにより患者体内の幹細胞を活用する方法で、損傷した組織の再生を促す全く新しい作用メカニズムに基づく医薬品です。具体的な進捗としまして、レダセムチドの導出先である塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」)との間で2020年6月30日付にて締結したレダセムチドの複数の疾患に対する臨床開発を加速度的に展開していくための契約について、本契約に係る一時金の受領条件を一部達成し、一時金210百万円を受領いたしました。なお、本契約に係る対価として今後最大で1,190百万円を塩野義製薬から受領する予定です。本契約は、当社がこれまでに複数のアカデミア・グループとの共同研究を通じて蓄積してきた非臨床のエビデンスを活用して、新たに慢性肝疾患、変形性膝関節症、心筋症を対象とした医師主導治験を開始する準備を進めていくものであります。引き続き幅広い疾患領域への適応拡大を通じて、レダセムチドの価値最大化に向けた取り組みを加速してまいります。
また、レダセムチドについて、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が実施する、2020年度「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬開発(3次公募)」に採択されました。COVID-19肺炎は、重症化すると肺胞上皮細胞や肺胞周囲の血管内皮細胞が不可逆的に傷害され、肺炎治癒後も肺機能障害が長期の後遺症として残り、抗ウイルス薬や抗炎症剤では失われた肺機能の回復は期待し得ないことが知られておりますが、レダセムチドの投与により骨髄から損傷組織に集積する間葉系幹細胞は、抗炎症作用、抗線維化作用と共に、上皮組織や血管組織を再生する作用を持つことが示されていることから、レダセムチドはCOVID-19肺炎の後遺症リスクを軽減する世界初の治療薬となることが期待されます。
当社の事業領域である再生医療業界においては、2014年11月に施行された再生医療安全性確保法及び改正薬事法によって再生医療の産業化促進の基盤が整うなか、引き続き複数の再生医療等製品が承認を受けるなど、再生医療技術に対する社会的な期待と関心はますます高まっております。また、再生医療の市場規模予測では、国内2020年950億円が2050年2.5兆円、世界2020年1兆円が2050年38兆円と大幅な増加が見込まれており、従来の医薬品や医療では治療が困難であった疾患に対する新たな医療への期待がいかに大きいものかがわかります。このような状況の中、体外で培養し加工した細胞を用いず、医薬品の投与によって患者自身の体内で間葉系幹細胞の集積誘導による再生医療を実現する「再生誘導医薬」を、移植治療や従来型の再生医療が抱える数多くの問題を克服する革新的な再生医療技術として、表皮水疱症をはじめとした難病を含む様々な疾患に苦しむ世界中の患者の皆様にお届けすることは、ステムリムの社会的使命であると考えております。
レダセムチドにおける各疾患ごとの進捗は以下の通りです。
a) 栄養障害型表皮水疱症治療薬(PJ1-01)の開発について、2020年1月に開催された第41回水疱症研究会及び、第1回国際表皮水疱症会議(The 2020 EB World Congress)にて、栄養障害型表皮水疱症患者を対象とした臨床試験(第Ⅱ相医師主導治験)のデータ解析結果(速報)が報告され、本治験に参加した栄養障害型表皮水疱症患者全例(9例)の解析で、レダセムチド投与により主要評価項目(全身皮膚の水疱、びらん、潰瘍の合計面積の治療前値からの変化率)で、統計学的に有意な改善が確認されました。レダセムチド投与終了後の最終観察時点(投与終了6ヵ月後)においても、9例中7例が治療前値を下回る改善を示し、そのうち4例は50%以上の著明な改善を示したことから、栄養障害型表皮水疱症に対するレダセムチド治療効果の長期持続性も確認されました。また副次評価(安全性評価)では懸念となる有害事象は観察されず、栄養障害型表皮水疱症患者におけるレダセムチド投与の有効性と安全性が確認されました。
表皮水疱症治療薬について、対象となる栄養障害型表皮水疱症は、全国の患者数が200名前後である希少難治性疾患であり現在有効な治療法がありません。また年間当たりの新規患者は15名程度と想定されており、大規模な第Ⅲ相試験を計画することが困難であるため、当初の予定どおり第Ⅱ相試験の結果を踏まえ、医薬品の承認申請を行うことを見込んでおります。
b) 脳梗塞治療薬(PJ1-02)の開発について、本医薬品のライセンス先である塩野義製薬により、第Ⅱ相臨床試験が進行中であり、2019年11月に、臨床試験実施施設における第一例目の被験者への投与が行われております。また、これまでに被験者の組み入れと安全性の確認が順調に進捗しており、今後も被験者への投与が進められるものと期待しております。
c) 心筋症治療薬(PJ1-03)の開発については、大阪大学医学系研究科心臓血管外科学との共同研究において、心筋梗塞や各種心筋症の疾患モデル動物を用いた薬効試験にて顕著な治療効果と作用メカニズムの証明がなされており、その成果は、米国の循環器学会であるAHA (American Heart Association) Scientific Sessions 2018 等の国際学会で報告されるとともに、2019年3月の第18回日本再生医療学会総会では多光子顕微鏡によるin vivo imaging(生体画像描出法)によって、レダセムチドを投与した心筋梗塞モデル動物において、GFP(緑色蛍光タンパク)陽性骨髄由来細胞が心筋梗塞巣へ集積し血管周囲において活発に移動する様子を観察することに成功したことを報告するなど、評価を受けております。
d) 変形性膝関節症治療薬(PJ1-04)の開発について、2020年11月より国立大学法人弘前大学において、変形性膝関節症患者を対象とした医師主導治験(第Ⅱ相試験)を開始いたしました。変形性膝関節症は膝関節軟骨の摩耗により膝の形が変形、痛みや腫れをきたす疾患で、重度の症例では強い痛みのため歩行困難になることも多く、QOL (Quality of Life) 及び日常生活動作の低下が顕著になります。本邦の潜在患者数は約2,500万人、そのうち自覚症状を有する患者数は約800万人と推定されています。主な原因は加齢によるものが多く、40代以降の中高年に多く発症します。損傷をうけた関節軟骨は自己修復しにくいことが知られており、損傷した軟骨組織の修復促進、あるいは人工関節置換術への移行を回避できるような新たな治療法の開発が望まれています。レダセムチドは、マウス膝関節軟骨欠損モデルを用いた本剤の非臨床試験で軟骨修復作用等が確認されており、変形性膝関節症患者に対する新たな治療薬となることが期待されます。
e) 慢性肝疾患治療薬(PJ1-05)の開発について、2020年11月より国立大学法人新潟大学において、慢性肝疾患患者を対象とした医師主導治験(第Ⅱ相試験)を開始いたしました。線維化の進行した肝硬変は、肝機能低下、門脈圧亢進、発癌など生命予後を左右する様々な問題が生じうる疾患であり、肝硬変の患者数は国内40~50万人、世界2,000万人と推定されております。現状、一般治療において、線維化の進行した肝硬変に対し完治が期待できる治療法は肝移植を除き確立しておらず、移植医療に頼らない新たな肝線維化改善薬や組織再生促進薬の開発が期待されております。レダセムチドは、肝硬変モデルマウスに対して高い抗炎症、線維化改善効果が確認されており、有効な治療法のなかった線維化を伴う慢性肝疾患・肝硬変の患者に対し、新たな治療の選択肢になり得る可能性があります。
また、HMGB1ペプチド以外の新規再生誘導医薬候補物質の探索プロジェクトについては、次世代の開発候補品選定に向けた積極的な研究開発投資を続けながら候補物スクリーニングを多面的に展開してきたことで、これまでに顕著な活性を有する複数の新規候補化合物を同定するに至っております。
このような状況のもと、当第1四半期累計期間の事業収益は210,000千円(前年同期はなし)、営業損失は268,439千円(前年同期は216,922千円の営業損失)、経常損失は268,274千円(前年同期は271,241千円の経常損失)、四半期純損失は261,525千円(前年同期は272,208千円の四半期純損失)となりました。
なお、当社は再生誘導医薬事業の単一セグメントであるため、セグメント別の業績記載を省略しております。
(資産)
当第1四半期会計期間末における流動資産合計は10,579,807千円となり、前事業年度末に比べ386,903千円減少いたしました。これは主に現金及び預金が420,312千円減少したことによるものです。また、固定資産合計は330,163千円となり、前事業年度末に比べ15,459千円増加いたしました。これは主に投資その他の資産が19,520千円増加したことによるものです。この結果、資産合計は10,909,970千円となり、前事業年度末に比べ371,444千円の減少となりました。
(負債)
当第1四半期会計期間末における流動負債合計は94,305千円となり、前事業年度末に比べ260,223千円減少いたしました。これは主に未払金が191,127千円減少したことによるものです。また、固定負債合計は76,130千円となり、前事業年度末に比べ700千円減少いたしました。これは主にリース債務が757千円減少したことによるものです。この結果、負債合計は170,436千円となり、前事業年度末に比べ260,924千円の減少となりました。
(純資産)
当第1四半期会計期間末における純資産合計は10,739,534千円となり、前事業年度末に比べ110,520千円減少いたしました。これは主に四半期純損失261,525千円を計上した一方、新株予約権の行使により資本金及び資本剰余金がそれぞれ40,622千円増加したことによるものです。
当第1四半期累計期間において、当社が対処すべき課題について重要な変化はありません。
当第1四半期累計期間における当社の研究開発費の総額は、360,456千円であります。なお、当第1四半期累計期間においては、「(1) 経営成績の状況」に記載したとおり、研究開発を推進しております。
当第1四半期会計期間において、経営上の重要な契約等の決定または締結等はありません。