第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営理念等

 当社グループでは、経営理念を示す「理念」及び「使命」を以下のように定めております。

 

理念:   「進化を感動に」

使命:   「知恵と技術をエンジニアリングし、価値創造を革新する」

      「『本質的に美しいものづくり』を実現する」

 

(2) 経営方針等

 当社グループは、設立から30年以上が経過し、社会・産業・技術等の大きな変化への対応として、経営方針として「システムとしての企業体」、「アントレプレナーシップ」を掲げるとともに、全社での変革(Corporate Transformation)を推進しております。またこれらの活動を支える全社スローガンとして「人間の創造性はこれからだ。」を設定しております。

 

 経営方針

 ・「システムとしての企業体」は、社内外でのつながり、掛け合わせを通じ付加価値の向上やケイパビリティ獲得の早期化を目指すものです。

 ・「アントレプレナーシップ」は企業体としての継続的な成長に向け、新しく事業を創造する強い情熱を持った新たな事業リーダーを多く生み出すという想いが込められています。

 

 全社変革(Corporate Transformation、以下、「CX」という):長期的な計画を策定し、次の2段階で実行中となります。

 ・CX第1フェーズ:

     目的:企業体としての組織・プロセス・戦略等を再構築することで、次の成長に向けた基盤構築

     期間:2020年~2024年

 ・CX第2フェーズ:

     目的:当社グループ使命を実現する企業体への変容

     期間:2025年~2033年

 

 全社スローガン「人間の創造性はこれからだ。」は、地球資源を際限なく消費するだけでなく、余剰や無駄がなく資源が循環するものづくりのあり方、人とモノと自然環境が調和する世界の実現等の社会の進化に向け、開かれた人の知恵による人間の創造性の駆動を目指すものです。

 

(3) 経営戦略等

 当社グループは、3D技術等のデジタルテクノロジーを活用しデジタルものづくりを革新する、グローバルな製品開発のエンジニアリングパートナー企業であります。創業以来、製造業の顧客を中心に各種サービスによる価値を提供して参りました。グローバルでより大きな価値を顧客へ提供すべく、海外現地法人の設立、海外でのサービス提供等の海外展開も進めております。

 2020年~2024年までのCX第1フェーズにおいては、長期的な全社変革とそれを実行するためのより迅速な経営判断及び効率的な運営体制構築を目的として、2021年1月1日付で当社を吸収合併存続会社、完全子会社であったSOLIZE Engineering株式会社及びSOLIZE Products株式会社を吸収合併消滅会社とする吸収合併を行いました。本合併に伴い、国内における事業部門を再編し各法人間で分かれていた事業・技術・サービスを掛け合わせ、社員の融合及び文化醸成等を行うことで、サービスの提供価値の向上や新規の事業・技術の開発を推進しました。また、国内管理部門も統合し、管理業務・管理プロセスの統合・標準化、社内業務システムの刷新、人事制度の統合等が完了しました。加えて、2024年6月には、積極的な投資をタイムリーに進めることを目的とし、グループ投資戦略部を新設し、当社グループの企業価値向上に資するプロジェクト等の実行及びM&Aや資本提携等の戦略立案・実行を加速させる体制を構築しました。

 2025年以降のCX第2フェーズを実行するにあたり、当社の中長期の成長目標を設定いたしました。まず、人間の創造性と企業に求められる公益性を軸にデジタルテクノロジーを通じてさまざまな制約を超え、次世代の「ものづくり」「企業運営」そして「社会」を変革する担い手を目指し、当社グループ使命を実現する企業体への変容を推進します。また、「デジタルものづくり」というコア領域で培った実践と変革を応用することで、提供価値の拡大を推進し、2027年に売上高400億円、2033年に売上高1,000億円の企業規模を目指して参ります。

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 上記、当社グループ使命を実現する企業体への変容の推進及び、今後のさらなる事業拡大、企業価値の向上を追求するための成長手段として、従来領域と新規領域の掛け合わせによる成長に加え、M&Aを活用することにより成長速度を加速して参ります。

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 加えて、より一層の経営のスピード化を図り、機動的かつ柔軟な経営判断を可能にするグループ運営体制を構築することが望ましいと判断し、持株会社体制へ移行を推進いたします。持株会社体制への移行により、持株会社は経営戦略の策定、資源の再配分、グループガバナンスの強化、M&A等の戦略投資及び企業経営のスタッフ的機能を中心としたグループ経営に特化し、各中核事業会社はそれぞれの事業領域で、あらゆる経営環境の変化に迅速に対応することで、グループ全体として、柔軟かつ強靭な経営体制へと進化することを目指しております。2025年1月1日付でエンジニアリングサービス領域におけるソフトウエア事業を分社化し、ソフトウエア事業以外の中核事業に関しては、2025年7月1日付での分社化を計画しております。

 2024年9月に策定した『中期経営戦略2025-2027』に基づき、中長期の企業価値の向上に主眼を置き、新たな取組にチャレンジし、競争力のさらなる強化と成長に向け新たな技術獲得や事業開発を加速させて参ります。

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・顧客への貢献価値の向上

 個別のサービス提供に留まらず、エンジニアリングサービス及びマニュファクチュアリングサービスの実践力による総合的なサービス提供を行うことで顧客の開発パートナーとなること、また、顧客の将来への競争力を強化するために変革力の提供を行うことで変革パートナーにもなることにより貢献価値を向上させます。

 実践力と変革力とを融合させることで、開発及び変革パートナーとしてより高い価値を提供することが可能となります。例えば、新たなデジタル技術を導入する顧客に対し、エンジニアが導入に対する技術支援をすると同時にコンサルタントが新技術導入後の最適なプロセスへの変革を提供することや、エンジニアが新たな技術導入後の開発実業務をオンサイトで支援しながらコンサルタントが新プロセスにおけるノウハウ構築やさらなる効率化を実行することなどです。また従来は顧客内で実施してきた業務を外部委託が可能な状態にするために、コンサルタントがプロセス・ノウハウ・要求項目等の整備を行い、その上で当社が委託先となることで顧客の開発力の向上に寄与することが可能です。

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・デジタルものづくりのケイパビリティの向上

 当社が保有するケイパビリティの融合によるサービス提供領域の拡張と新しいケイパビリティの獲得に伴う領域の拡張を継続します。またその実現のために、研究開発部門の設置、事業開発の専門部門の設置を行い、従来事業から得た収益を次の成長に向けた事業・技術開発のための投資に割り当てます。拡張の具体例は以下の図のとおりです。

 

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・海外事業の拡張

   既存の米国、中国、インド、欧州に加え、北米市場の拡張に向けて新たにカナダ法人を設立しました。加えて、成長率の高いアジアマーケットへの進出・拡張のため、タイ法人も設立し、海外事業の成長を一層加速いたします。

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      ・M&A・スタートアップ投資

    当社の健全な財務状況を背景としたM&A・スタートップ投資の積極活用によりインオーガニック成長を実現するとともに、既存ビジネス成長に貢献する新領域・新技術の獲得との両立を目指し事業成長を加速します。

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    ・人的資本経営の実践

     経営戦略と連動した人材戦略を策定し、採用投資、人事制度投資、人材育成・組織開発投資、社員満足度・エンゲージメント投資を行い、当社の成長の原動力であるエンジニア及びコンサルタントの確保と活躍を推進します。特に多くのハイエンド人材を確保するために、2022年以降、採用力の強化を継続しており、2027年までに年間500名を採用できる体制を構築して参ります。

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(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標

 当社グループは、経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標として以下の項目を定めております。なお、国内エンジニア数 (含 コンサルタント)については、国内のエンジニア数及びコンサルタント数の合計であり、当社グループの売上高及び営業利益の大半を占めるデザイン事業の業績に大きく影響するため、重視しております。

 a. 売上高対前年増加率

 b. 営業利益

 c. 国内エンジニア数 (含 コンサルタント)

 

(5) 経営環境

 当社グループは、グローバルに製品開発サポートを行うグローバルエンジニアリング企業であり、当社グループの主要顧客は自動車業界を中心とした製造業となります。

 自動車業界においては、CASE(Connected、Autonomous/Automated、Shared、Electric)と呼ばれる新しい領域での技術革新や、地球環境問題への対応としてカーボンニュートラルへの取り組みが急速に進んでおります。そのような状況の中、コネクテッドカー、自動運転などの技術の実運用を目指し、自動車メーカー各社の開発需要の増加が期待されております。電気自動車(EV)、自動運転技術の開発などから、自動車開発における電子制御の複雑化とともにサイバー攻撃への対応の重要性が増しており、MBD、ソフトウエア、デジタルリスク領域の需要が高まっております。同時に自動車完成車メーカーにおいては、上述の先端領域へのリソースシフトが進んでおり、それ以外の領域において外部委託化が加速しております。これらの状況から、当社グループとしても、自動車メーカー及び自動車部品メーカー等による開発投資の拡大継続を見込み、先端領域への支援と外部委託化が進む内外装領域の一括受託設計支援の両面において当社グループの幅広いエンジニアリング技術を融合し、顧客の製品開発をサポートすることでエンジニアリングサービスの収益拡大を図って参ります。

 自動車完成車メーカーの研究開発費は以下のように安定的に推移しております。

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 また3Dプリンターを活用したAdditive Manufacturingのものづくりへの適用が拡張しており、従来の試作用途だけでなく、少量量産の最終部品としての用途が本格化しつつあります。本領域における長期にわたる経験を活かし、3Dプリンターの活用のための上流工程からのエンジニアリング支援及び最終部品としての品質を確保した製造の請負が拡大すると見込んでおります。当社はこれまでも3Dプリンター活用を推進し国内における3Dプリンター市場の拡大に貢献して参りましたが、今後もそれを継続しマニュファクチュアリングサービスの収益拡大を図って参ります。

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 これらのエンジニアリングサービス、マニュファクチュアリングサービスの需要の増加に加え、将来の競争力確保に向け部門横断での開発プロセス変革やDX活動が増加しており、当社グループのコンサルティングサービスの需要も高まっております。変革活動実施のための顧客内でのリソースを確保するために、当社グループのエンジニアリングサービスを先行的に活用し開発キャパシティを保ち、かつ、エンジニアリングサービスを通じて獲得した顧客の製品・開発プロセス・技術等の知識を踏まえたコンサルティングサービスを提供することで収益拡大を図って参ります。

 

(6) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

(当社グループ全体の事業上の課題)

①人的資本経営の実現

 当社グループは事業拡大と継続的成長のために、顧客企業と共に高い価値を生み出す優秀な人材が重要な資本であり、その採用が重要です。2024年は人事トランスフォーメーション元年とし、人的資本経営の実践を目指した人財戦略に注力して参りました。新卒採用者、経験者採用ともに積極化し、採用数を増加させています。退職者も一定数いますが、入社者数が上回っており、2024年12月期の退職率は8.3%でした。

 

国内採用者数(人)

 

2020年12月期

(注)1

2021年12月期

2022年12月期

2023年12月期

2024年12月期

国内新卒

   95

   98

   86

   84

   93

海外新卒(注)2

12

25

11

3

4

経験者

64

51

110

149

202

合計

171

174

207

236

299

(注)1.2020年12月期は、当社及び旧SOLIZE Engineering株式会社、旧SOLIZE Products株式会社における採用者の合算値であります

2.海外新卒の採用活動については新型コロナウィルスの感染拡大により2020年12月期以降、活動を縮小しておりましたが、2024年12月期よりアジア地区を中心に活動を再開しております

 また、当社グループは「お客様の高い期待に応える、プロフェッショナル集団」として、製品開発をリードする人材や新しい手法・道具、進化する企業文化の創造を目指しています。「人財体系図」に基づく新任役職者研修や、経験者合同研修、学習サイトを拡充し、人材の育成システムを維持・強化します。

 なお、国内の派遣契約におけるエンジニアの平均時間単価、稼働率は以下のとおり推移しております。

 

国内における派遣契約の平均時間単価(円)

 

2020年12月期

2021年12月期

2022年12月期

2023年12月期

2024年12月期

平均時間単価(注)

4,326

4,339

4,385

4,556

4,809

(注)経験者・新卒含む全派遣契約の平均時間単価(残業代は除く)の平均値であります

 

国内における派遣ビジネスの稼働率(%)

 

2020年12月期

2021年12月期

2022年12月期

2023年12月期

2024年12月期

稼働率(注)

85.8

87.5

94.4

94.9

95.0

(注)派遣技術者数(研修中の従業員を含む)に対する稼働人数の割合を期中平均にて算出しております

 

②グローバルサポート体制の強化

 当社グループは、サービスの海外展開、海外事業の開発に取り組んでおり、海外企業へのサービス提供や、日本企業の海外展開支援を既に行っておりますが、海外市場におけるビジネスチャンスを十分に取り込めているとは言えず、グローバルサポート体制の強化が課題であると認識しております。グループ全体の製品開発における強みを活用した海外事業戦略の実行や、海外市場におけるブランド構築を促進して参ります。

 

③投資について

 当社グループは事業の成長と人材・経営基盤の強化を目的に、研究開発投資や設備投資、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)投資を行っています。これらの投資は事業環境の変化や投資先企業の進捗状況により、事業や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 このため、当社グループでは、投資案件の内容・規模により、取締役会、SOLIZE執行役員会、戦略投資会議等において、事業計画に基づく十分な検討を行ったうえで投資に対する意思決定をしており、また、投資実行後も定めたプロセスに則り進捗確認を実施しております。

 

(デザイン事業の課題)

   ①製品設計開発に係る総合的なデジタルエンジニアリングサービスの拡大

  当社グループの主要顧客の属する自動車産業においては、電動化や自動運転等の新規技術に関する開発意欲が高く、引き続き、設計開発の受託、エンジニア派遣サービス、変革コンサルティングサービス、ソフトウエア開発等の分野への当社サービス拡大を目指して参ります。また、前項①に記載しましたとおり、人財採用及び育成も強化いたします。

 ②ソフトウエア関連事業の分社化準備

  2025年1月付でソフトウエア関連事業を分社化する活動及び関連する人員増強を行って参りました。主に販売管理領域の経験者の積極採用、国内拠点の拡張を進めた結果、2024年は収益に先行し、販売費及び一般管理費が増加いたしました。来期に向け、開発を担うエンジニアの採用及び育成が急務であると認識しております。

 

(マニュファクチュアリング事業の課題)

①最先端のAM(※)技術を駆使しAM市場をリードする

 2024年は、最新型の3Dプリンター設備増強を行ったほか、大和の工場増床を進め、金属3Dプリンター工場を集約し、生産体制見直しによる合理化、生産能力拡大を推進して参りました。既存ビジネスである各種工法による試作・装置販売は、合理化した組織で最大利益を継続的に創出し、その利益をAM市場拡大投資へ有効活用し、欧米に比してものづくりのDX化推進が遅れている国内AM市場をリードして参ります。

※ AM:Additive Manufacturing(積層造形で物体を作り上げる製造プロセス)

 

②少量量産領域への事業拡大

 当社グループは、3Dプリンターによって最終製品の部品(補給部品を含む)を製造し顧客へ納品する事業を開始しており、最終製品を製作するための技術とノウハウを高め、顧客へ少量量産の価値を訴求し、今後一層の規模と価値の拡大を追求して参ります。

 

(財務上の課題)

 当社グループは、グローバルに存在する顧客のあらゆるニーズに応えることを目的として、新規事業や新規技術の開発とそれに必要となる優秀なエンジニアの確保、増強のために採用活動の強化及び入社後の教育・トレーニング等を行っています。一時的な景況の悪化により当社グループの提供するサービスや製品への需要が減少する時期においても、当社グループの成長の源泉である人材を維持するための支出が発生し、財務上の安全性が低下する可能性があります。このような状況に備え、当社グループでは一定程度の資金を確保し安定的な経営に努めて参ります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 サステナビリティに関するガバナンスはコーポレート・ガバナンスの一部として、主に取締役会、SOLIZE執行役員会及びリスク管理委員会等により決定しております。原則として、取締役会は毎月1回開催、SOLIZE執行役員会は毎週1回、リスク管理員会は隔月に1回開催しております。リスク管理委員会において、当社グループの事業活動に影響を与える重大リスクについて検討し共有することで、サステナビリティを含めたリスクの低減に努めております。リスク管理委員会の活動や検討・協議された方針・課題は必要に応じてSOLIZE執行役員会及び取締役会に付議又は報告されております。取締役会はこれらのプロセスを定期的に監督し、必要に応じて対応の指示を行っております。

 詳細は、「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載しております。

(2)戦略

 当社グループは、デジタルものづくりの総合ビューローとして、高度なエンジニアリング技術と3Dプリンティング技術を掛け合わせた多様なものづくりの現場で培ってきたデジタルエンジニアリング・デジタルマニュファクチュアリングの実践力と、サービスと独自の方法論に基づく変革力とを融合させることで、各ステークホルダーに貢献すること、また、2030年に向けて企業としての公益性を高めていくことを目指しております。新しい社会や経済のシステム、ものづくりの在り方に変化をもたらすべく、私たちは革新し続けます。多様なステークホルダーとエコシステムとしての企業体を形成し、自然環境と人々の生活の豊かさが調和していき、本質的に美しいものづくりの実現を目指します。

 

① 脱炭素社会に向けた取り組み

 当社グループは、地球環境と人類社会の共生、循環型社会の実現に向けて、2021年に新たな使命として「『本質的に美しいものづくり』を実現する」を追加しました。これは、開発から製造、消費、廃棄や再利用の過程で、ものづくりが人間社会と地球環境の中で調和することを目指しています。その一環として、2030年のScope1と2のカーボンニュートラル化を目標に掲げ、 自社の事業活動におけるGHG(※1)排出量削減と廃棄物削減に 取り組みます。

 また、社会のカーボンニュートラルの達成及び資源循環社会の実現に向けて、製品設計の手法自体にも変化が必要となります。製品へのリサイクル材利用の義務化、CO2排出量に関する規制や国境炭素調整などのカーボンプライシングの導入が進むと、環境配慮の優先度は、機能・性能・コストと同等レベルになることが予想されます。環境配慮設計の在り方を進化させることを目指し、エンジニアに必要なスキル獲得を積極的に推進し、ライフサイクルエンジニアリング や DfE(※2)、ライフサイクルアセスメント(※3)の教育を実施しております。上流の設計から環境を配慮することで、カーボンニュートラルの世界を目指すという難題に対して、パートナー企業と連携しながら取り組みを進めています。

 当社からのサービスとしては、「第1 企業の概況 3事業の内容」の①エンジニアリングサービスの[デザイン&シミュレーション領域]の■設計・3Dスタイリングにも記載しました通り、ライフサイクルエンジニアリングの観点を踏まえた設計業務を提供しております。

 

 具体的な取り組み内容としては以下のとおりです。

 ・社用車にZEV(電気自動車や燃料電池車などのゼロエミッション車)を導入

   2023年に2台(EV1台、FCEV1台)を置き換えました。

 ・事業所の電力を再生可能エネルギーや実質再エネに転換

 2023年に当社グループのオフィスで最大の電力を使用しているGlobal Engineering Center-Yamatoにおいて電力プランを東京電力エナジーパートナー株式会社提供のグリーンベーシックプラン(実質再エネプラン)に切り替えています。

 ・エネルギー利用効率化の取り組みを推進

 当社グループにおける電気使用量及び社用車のガソリン使用量について継続的に計測を行なっており、工場の環境マネジメント(ISO14001)の一環で行われる省エネ活動に加えて、エネルギー利用の効率化に向けた全社横断的な活動につなげます。

 ・廃棄プラスチックのリサイクルの取り組み

 当社グループは環境マネジメント活動の一環で、産業廃棄物の削減に取り組んでいます。3Dプリンターの材料については品質確認をしながら可能な限り再利用するプロセスを構築してきましたが、それでも一定量の粉末状のプラスチックについては廃棄せざるを得ない状況でした。さらなる廃棄物削減に向けて、粉末プラスチックをリサイクラーに買い取っていただきペレット化する再利用の取り組みを2023年から開始しています。まずは大和工場から始め、2024年からは豊田工場でも運用を開始しました。これにより従来の廃棄量の60%が削減できる見込みです。残りの廃棄プラスチックについても、3Dプリンターを活用しながら再利用する取り組みを進めています。

 ・当社グループエンジニアの環境配慮設計スキル習得
   以下の人的資本・多様性の取り組みの中で詳細を記載します。

 

※1 GHG:Greenhouse Gas、温室効果ガスを指し、熱(赤外線)を吸収する性質をもっている

※2 DfE:Design for Environment、製品の製造やサービスの提供に際してその設計、企画段階において環境負荷を可能な限り低減させることを目指すこと、環境適合設計または環境配慮設計などとも表現される

※3 ライフサイクルアセスメント:資源採掘から廃棄まで製品のライフサイクル全体で生じるGHG排出や資源利用などの環境負荷を定量的に評価する手法

 

② 人的資本・多様性への取り組み

 当社グループは、中長期的かつ持続的な企業価値の向上を図るうえで、人財の多様性が重要であると認識しております。また、今後の社会のあり方が大きく変化することも踏まえ、多様な人財の確保や育成を重要な経営アクションの一つとして、以下の理念・方針等に則り取り組みを行っております。

 

<人事理念>

・新しい事業と技術を創造する情熱(アントレプレナーシップ)をもった人財を積極的に輩出する組織であり続ける

・“SOLIZEならより高いレベルに成長できる、面白いことができる”と感じられる企業風土・組織であり続ける

・いかなる時でも誠実さを最優先に考える組織であり続ける

<人事方針>

経営理念である「進化を感動に」と使命の実現に向けて、人事理念を踏まえて「人事方針」を定める

(1)人を大切にし最大の財産(人財)と捉え、いかなる時でも誠実さを最優先に考え、公正、公平、透明性を旨とする

(2)会社と社員は互いに理解・協力し合い、より良い制度の構築や運用に向けて取り組む

(3)この人事方針の適用対象はグループ全社で雇用する社員とする

ア.雇用・採用

(a)公正な雇用慣行の元に社員との雇用契約を結び、企業としての責任を果たすよう最大の努力を払う

(b)事業の成長及び生産性の革新・向上に向けて、事業競争力・事業性等を考慮の上で適時適切に人財を確保する

(c)人財の性別、国籍等を問わず、経営理念と使命に共感する多様な人財をその能力に基づき採用する公正な雇用慣行の元に社員との雇用契約を結び、企業としての責任を果たすよう最大の努力を払う

イ.処遇・評価

(a)経営理念の実現に向けて、行動規範・行動指針を実践し、チャレンジする社員を評価、処遇する

(b)事業競争力・事業特性を踏まえた処遇水準を目指し、職責に応じた成果・能力を適正に評価する制度を設ける

(c)社員の育成・能力開発において評価制度が重要な手段であることを認識し、透明性・公正性・公平性・納得性を追求して運営する

ウ.配置・異動

(a)情熱と能力のある人財を見出し、社員一人ひとりに自己実現と成長する機会を公正・公平に提供する

(b)事業成長と新事業創出の実現のために、計画的・全社的な配置・異動を行う

エ.能力開発・組織開発

(a)社員が能力を最大限に発揮できる環境づくりと生産性の向上のために、能力開発・組織開発を進める

(b)多様な価値観・発想・成長意欲のある人財を尊重・支援し、新しい事業と技術を創造する情熱(アントレプレナーシップ)をもった人財を輩出する

(c)創造性・専門性・個性を発揮・追求できると感じられる企業風土の醸成を積極的に行う

 

<行動規範>

・誠実に向き合い期待を超えろ

 お客さま、そして仲間に対して、偽らずに真心を持って向き合うこと。

 相手の期待をしっかりと感じ取り、その期待を超えることを常に目指せ。

 どんな些細な期待であってもいい。

 その期待を超えること、超え続けることが信頼に繋がる。

・覚悟を持って自らを革新せよ

 一人ひとりが、会社のミッションとともに個人のミッションを持ち、それを成し遂げんとする覚悟を持て。

 腹をくくり、自分の軸を持て。

 そして、より高いレベルを目指し、勇気を持って自らの思考、行動を変えよう。

 それこそが全ての革新への源になる。

・考え続けろ、行動を起こせ

 考える事に妥協しない。

 深く考えても行動を起こさなければ何も起こらない。

 すばやく行動を起こし、行動しながらも考え続けよ。

 行き詰った時、周囲に相談することも行動のひとつ。

 最高の結果を最速で追い求めろ。

・摩擦を恐れず真剣に話せ

 互いに信頼し、互いの成長を望め。

 自分がどう思われるか、相手がどう思うかを不安に思わず、意見の衝突やすれ違いを覚悟し、

 自分の思いを真剣に伝えろ。

 一体となって困難を乗り越えるチームはこうして生まれる。

・自分初、世界初を創り続けろ

 既存の価値や概念にとらわれず、感動や驚きを伴う新しい価値を創造せよ。

 世界を変える方法はどこか余所にではなく、一人ひとりの手元にある。

 個々人の「自分初」の積み重ねが、組織の「世界初」を創り出す。

・未来を描き、チャレンジを楽しもう

 未来は与えられるものではなく、自ら描き、創るものだ。

 在りたい未来から、今何をすべきかを考えよう。

 未来を実現する高い目標にチャレンジし、困難でもその過程を楽しもう。

 そして、つかめ、その手に、「輝かしい未来」を。

 

<行動指針>

・社会の公器たる企業としての義務と責任を自覚して、公正、公平、透明で健全な事業活動を行います。

・法令、契約や社内規程などの遵守はもちろんのこと、高い倫理観と道徳観に基づいた誠実で真摯な行動を実践します。

・お客さまや取引先、株主、社員、地域社会などステークホルダーの皆さまの信頼を得て企業価値の向上に努めます。

・グローバル企業として文化や慣習を尊重し、公正な雇用慣行と多様性のある人財の活力で社会の健全な発展に貢献します。

・知恵の創造に関わる企業として、よりよい環境と魅力ある経験の場を提供して、社員一人ひとりの成長と幸福を推進します。

 

<実践状況>

ア.人財採用

 近年の採用市場は逼迫しており、採用競争は激化している中、当社では優秀なエンジニアの確保に向け国内・海外での採用活動を積極的に展開しており、2024年では対前年比2倍の母集団を獲得することができました。母集団を拡大できたことで2024年の経験者採用数は202名(前年比135%)、2025年に入社予定となる新卒採用数は151名予定(前年比160%)となり採用数を拡大することができました。

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■母集団形成

  弊社の人事理念・行動規範等に共感・適合する人財を採用すべく、即戦力層に加えて経験の浅い未経験層や国内・国外の海外籍人財についても積極的に採用を行い、ターゲットの拡大を行いました。また、人材紹介エージェントへの採用広報活動の強化や、社員が候補者を紹介するリファラル採用の浸透推進、AIを活用した求人広告の活用など、チャネルの多角化を進めています。上場時にはリファラルのキャンペーンを実施し母集団形成の増加に取り組みました。さらにCX(Candidate Experience)の強化として、SOLIZEのデジタルものづくりを体験できる取り組みにも力を入れており、新卒採用についてはインターンシップや仕事体験のプログラムを複数追加し多くの学生に参加していただきました。産学連携も推進しており、学生のキャリア形成支援に係る産学協働に積極的に取り組んでおります。

■選考

  採用活動での選考フェーズでは、候補者にとって最適な選考活動を行うために、事業領域・保有スキル・希望職種ごとに選考フローを構築し、事業部門の現場で活躍している社員による選考を行っております。また、候補者の希望に沿った最適な選考日程を考慮した選考を行うことで、SOLIZEでの業務の理解を深め、選考中の離脱を抑制しています。

■内定・入社

  待遇改善にも積極的に取り組んでおり、激化している採用市場における対策を行っております。

  また、新卒採用活動での先輩社員を巻き込んだリクルーター制度、事業部門や経営層を巻き込んだ魅力付けなど、全社での採用活動を推進し内定者とのコミュニケーションを強化しております。

■採用ブランディング

  2024年では上場を梃にした採用強化キャンペーンを実施しました。また、下期以降では2025年の分社に向けた採用ブランディングの検討を開始しており、これまで実施できなかった採用市場における認知拡大に向けた取り組みを進めております。

■採用活動体制の強化

  年々激化する採用活動において、母集団形成・選考・内定・入社での選考フェーズごとに行う施策を確実に実行するために、採用体制の強化を行っています。採用部門の人員体制の増強と組織化や事業部門での採用に関わる人員との連携強化を行い、全社採用活動体制を推進しています。

 

イ.人財育成

  SOLIZEは、企業理念である”進化を感動に”のもと、社員の創造性と能力を最大限に引き出すため、職位に応じた役割遂行に必要な学びの機会と、実践の機会を下記のとおり提供し、社員一人ひとりの成長を支援しています。

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■教育機会

 等級・役職ごとの役割遂行・能力発揮を支援するために、SOLIZE人財開発体系図に基づき、各種研修を実施しています。

分類

研修名

階層別教育

新入社員研修、若手社員研修、中堅社員研修、管理職研修など

テーマ別教育

コンプライアンス研修、経験者オンボーディング研修など

  <主な取り組み>

・新入社員研修:SOLIZE人財としての基盤を形成することを目的に実施しております。全社合同で行うSOLIZE理解講座、SOLIZE理解ワークショップと部門別で実施するポータブルスキル研修、専門スキル研修があります。全社合同では、当社の社員としての価値観や目指す方向を講座で知り、ワークショップで体感するものになっています。部門別では、各カリキュラムが講義と実務に近い実践の繰り返しで構成されております。研修講師は毎年現場から集められ、現場の感覚を各カリキュラムの実践の際に新入社員に伝えています。

・管理職研修:新たに管理監督者になった社員を対象に、マネージャーとしての期待役割とマネジメント基本知識を学ぶための研修を実施しています。管理職は「仕事のマネジメント」と「人(メンバー)のマネジメント」を統合的に行い、4つの成果「仕事の完遂」「仕事の改善」「メンバーの協働」「メンバーの成長」を実現するための、5つの活動について理論と実践を通して学びます。

・経験者採用オンボーディング研修:キャリア採用入社者が既存社員と共通の価値観を持つことを目的に実施しております。①マインド、②サービス・ドメイン紹介、③人事制度説明の3部構成となっています。①では当社の歴史・理念使命等を作ってきた役員自らが説明しています。②では当社の幅広いサービス・ドメインの解説をそのトップが行うことにより、内容と共に各トップの顔が分かるようにしています。③により人事制度への理解と馴染みを促進し、当社の社員として早期に活躍できるようにしております。これらを1日で行う充実した研修となっています。

■支援制度

スキルアップ支援制度として、希望する社員に対して下記の補助を行っています。

支援施策

内容

資格取得支援

共通対象資格及び各部門対象資格の受験費用を補助

eラーニング支援

指定する外部eラーニングの利用料を補助

書籍購入支援

書籍購入費用を補助

■他者との交流

 新たな価値創造や部署間の技術交流・知の交流を目的とした社内イベントを実施しています。

 SOPCC ※1では自社オリジナルプロダクトの製作・企画のコンテストを行い、参加人数:50人(38人)※2、企画件数:15件(11件)と年々共に増加しており、「SOLIZEだからできるものづくり」の実現と事業化にむけた取り組みを通じて社員が成長できる場を提供し、社員の成長を後押ししています。

 また、技術に関する情報共有イベントTDF※3の参加人数:1,112人(470人)も同様に増加しており、社内の取り組みと独自技術をさらに高める後押しも実施しています。

社内イベント名

内容

SOPCC ※1

自社オリジナルプロダクトの製作や企画をコンテスト形式で実施

TDF ※3

自社の独自技術や社内の取り組みを共有し、技術力をさらに高めていく機会提供のイベント

社内公募

各種プロジェクト

※1 SOLIZE Original Product Creation Challenge の略称

※2 文中カッコ内の数値は2023年度の実績

※3 Tech Design Fes の略称

■役割遂行

  下記の2つのキャリアパスを設け、等級・役職ごとの役割遂行と能力発揮を通じて活躍しています。また、キャリアに基づいて活躍の場を設定し、エンジニア/コンサルタント/ビジネスリーダーとして期待される役割に応じた成長を促進しています。

キャリアパス

特徴

スペシャリスト

高度な専門性と技術力をもちいて、役割遂行と能力発揮

マネジメント

組織運営やプロジェクト推進において、役割遂行と能力発揮

 

■評価・フィードバック

  各役割に求められる業績貢献(パフォーマンス評価)と成長(アビリティ評価)に基づいて人事評価が行われ、その評価結果が給与、賞与、及び昇給・昇格に反映しています。評価を行うにあたり、年初に上司と本人が話し合いを行い、成長課題を決定します。その結果、メンバーの半期ごと又は年度末におけるあるべき姿が明確化され、半期ごと又は年度末に上司が本人に対して評価とその理由をフィードバックし、今後の期待を伝えることで成長を促進しています。

 

ウ.ダイバーシティ&インクルージョン

・育児・介護支援制度

 当社は、社員が出産、育児、介護等により就業を断念することなく、仕事、育児、介護を両立できるよう、各種人事制度を整備しています。

育児休業

子を養育し希望する社員は、性別問わず、最長で子が満2歳に達する日まで育児休業を取得することができる。

育児短時間勤務

性別問わず希望する社員は、最長で子が小学校6年生の年度末に達する日まで育児短時間勤務制度を利用することができる。

介護休業

要介護状態にある家族を介護する社員は、対象家族1人につき、延べ93日間までの範囲内で、かつ分割して介護休業を取得することができる。

介護短時間勤務

要介護状態にある家族を介護する社員は、介護短時間勤務制度を利用することができる。

出産祝い金

社員又はその配偶者が出産した場合、特別休暇及び出産祝金の制度を利用することができる。

・子育て支援

 当社は2019年に、くるみん認定を取得しています。

※「くるみん」とは、「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定を受けた企業の証です。

次世代育成支援対策推進法に基づき策定した一般事業主行動計画の目標を達成し、一定の基準を満たした企業は、申請を行うことによって厚生労働大臣の認定(「くるみん」認定)を受けることができます。

 

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・障がい者雇用

 当社は、さまざまな障がいを持つ方々を事務職やエンジニア職として雇用し、共に事業に取り組んでいます。文書管理、物品管理等の一般事務処理業務や、データベースの運用管理、3Dプリンター関連業務、各種研修サポートなど、障がいの特性に応じて担当業務を検討し、能力の発揮と職業的成長に取り組んでいます。

 また、2020年から新たな障がい者雇用として、当社事業所のGlobal Engineering Center-Yamato(神奈川県大和市)における清掃業務を開始しています。現在は清掃業務にとどまらず、消耗品の在庫チェック等へと業務領域を広げています。

 

・高齢者雇用

 当社は多様な人財の活躍を推進するため、シニア世代の豊富な経験やスキルを引き続き事業発展の推進力とし、定年後も活き活きと活躍する場を提供すべく、定年退職を迎え希望する社員に対して、再雇用制度による雇用延長を実施しています。本人の希望に応じて、最長65歳まで雇用機会を確保します。

 

・外国籍社員の採用

 当社は、多様な国籍・文化的背景を持つ人財を積極的に採用しています。その割合は年々増加し、2018年以降、世界16ヶ国・延べ173名の社員を迎えました。現在も、さまざまなバックグラウンドを持つ社員が活躍しています。

 

エ.人権の尊重

 当社が人権を尊重する企業であるために、私たちは共に働く人びとの人権を尊重します。国際的な人権基準を支持・尊重し、人権侵害に一切加担しません。個人の尊厳を傷つける言動・行動はしません。労働に対する同意の欠如や処罰の脅威による強制労働の撤廃を支持し、加担しません。児童労働の実効的な廃止を支持し、加担しません。

 

(3)リスク管理

 当社グループは、組織の収益や損失等に影響を及ぼすリスクを適切にマネジメントするために、グループリスク管理規程を定めるとともに、全社的な管理体制を整えております。リスク分類毎に主管する部門もしくは会議体と関連する部門が、グループ内に生ずるリスク管理(リスクの抽出・評価、リスク発生の回避・低減・移転・受容)におけるグループポリシーの企画・作成、対処方針の立案と実行を行い、必要に応じSOLIZE執行役員会、取締役会への報告を行うこととしています。事業計画からの進捗の乖離等の業績関連リスクについては、月次事業報告等を通じてSOLIZE執行役員会が主管会議体となります。また人的資本関連のリスクについては人事部が主管部門、その他リスク全般についてはリスク管理委員会が主管会議体となります。

 詳細は、「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおりであります。

 

(4)指標及び目標

脱炭素社会への取り組み

・自社起因の温室効果ガス排出量(Scope1及びScope2)について、2030年までにカーボンニュートラル化を実現

 

人材育成方針や社内環境整備方針に関する指標の内容、当該指標による目標・実績

施策と目標

実績

2024年度

フルタイム労働者等の法定時間外労働時間の1人当たり月間平均: 目標 30時間未満

17.1時間

月間平均の法定時間外労働80時間以上の労働者数:目標 0

0

 

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項を以下に記載しております。あわせて、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項についても、投資者の判断にとって重要であると当社グループが考える事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。なお、本項の記載内容は当社株式の投資に関する全てのリスクを網羅しているものではありません。
 当社グループは、これらのリスクの発生可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて慎重に検討したうえで行われる必要があると考えております。

 当社グループはリスクを適切にマネジメントするために、グループ横断でのリスク管理委員会を設置しております。本委員会の説明、コーポレート・ガバナンスの体制図等については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載しております。
 本項記載の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

1. 事業環境に由来する事項について

(1) 景気動向、自動車関連市場等による影響
    [発生可能性:高、影響度:大、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループは、主要取引先が自動車関連メーカーであるため特に国内の自動車関連業界の開発動向に影響を受けやすい状況です。国内自動車関連業界は景気、金利、為替及び消費動向等の経済状況に影響を受ける傾向があり、それらの状況によっては、当社グループの取引先企業の業績が左右され、結果として当社グループの受注状況が影響を受けることにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループとしましては、自動車業界以外の顧客に対する事業拡大、M&Aを含めた海外への進出等により、特定の業界や地域等の影響を受けにくい体質を構築する方針ですが、国内自動車業界の状況が想定以上に悪化した場合は、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 これに加えて、世界の自動車関連業界においては、CASEに代表される変革を背景に次世代技術の研究開発が活発化しております。これに伴い、当社グループを取り巻く事業環境も大きく変化するものと予想されます。例えば、自動車の多機能化や自動車部品の電動化等に伴い、自動車関連業界ではまったく新たな分野での研究開発も必要になり、製品開発におけるニーズは多様化してきていると認識しております。

 当社グループでは、このような多様化する顧客ニーズに適応するために、ものづくりのデジタル技術の領域を拡大しながら製品開発を支援して参りました。具体的には、従来の3D技術による設計・解析領域に加えて、MBD・ソフトウエア・XR・デジタルリスク等の技術を活用した事業領域の拡大に取り組んでおります。このほかにも、顧客層の拡大や多様な人材の確保を通じて収益機会の拡大だけでなくノウハウの蓄積も目指して参ります。一方で、これらの施策をもってしても顧客ニーズに適応しきれない場合は、想定どおりの売上高が得られない等の理由により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、短期的には、世界の政治経済の動きに端を発する外国為替相場の急激な変動があります。これは当社グループの主要顧客が海外市場の動向の影響を受けやすい自動車産業に属し、これら為替相場の変動など急激な経済環境の変化が主要顧客の開発や設計に関わる計画に変更を及ぼすことがあるためであります。他方で、中長期的には自動車の開発や設計に関わる技術やツールの変化、自動車そのものの構造に関わる変化が当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があります。

 

(2) 競争環境による影響

    [発生可能性:中、影響度:大、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループの事業はいずれも類似事業を営む企業による事業推進の強化や新規参入等による競合が発生し得る分野であり、競争の激化による受注の減少や受注単価の低下が発生する可能性があります。当社グループとしては、幅広い業務領域への対応能力により顧客ニーズへ素早く対応できる体制や、当社自身が設計から製造まで幅広く実践している中で蓄積してきた独自の技術による付加価値の提供等により、他社の動向に左右されにくい体制の整備を進めておりますが、競合が急速に進行した場合や競合の影響が甚大な場合は当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 技術革新

    [発生可能性:中、影響度:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループが事業展開する分野は、グローバル規模で絶えず技術革新が進められており、当社グループに要求される技術水準や生産能力も年々高まっている状況です。当社グループとしても、社員教育を通じた技術水準の向上や生産設備の新設及び更新を通じた生産能力の向上により、技術革新に対応した事業展開ができるよう努めているところです。
 しかしながら、技術革新の水準が想定以上に進んだ場合又は当社グループの対応が技術革新のスピードより遅れた場合、当社グループの役務提供又は製品供給が顧客の要求水準どおりに実施できず、市場における競争力の低下が発生する可能性があり、その場合は想定どおりの売上高が得られない等の理由により当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 原材料の調達

    [発生可能性:低、影響度:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループで使用している一部の原材料については、その特性から調達先を特定の仕入先に依存せざるを得ないものがあります。当社グループでは、当該原材料について一定量を保有し、調達の多様化を進めることで、主要な仕入先への依存のリスクを低減しておりますが、主要な仕入先の業績の悪化又は政策の変更等によりこれらの調達が困難になる可能性も考えられ、その場合は当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 為替相場の変動による影響

    [発生可能性:高、影響度:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループは、北米、中国、インド、欧州等の企業と取引を行っており、米ドルやユーロ等の外貨建てで取引されているサービスの価格は為替相場の影響を受けるため、為替相場の変動状況によっては、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 また、海外関係会社の現地通貨建ての財務諸表は、連結財務諸表作成の際に円換算されるため、円換算する際の為替レートによっては、為替換算調整勘定を通じて連結財務諸表の純資産の部が変動する可能性があります。

 

(6) 海外情勢の変化による影響

    [発生可能性:中、影響度:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループは海外に子会社を有しており、販売先や仕入先等の取引先も海外に幅広く存在しております。また、今後についても海外での事業展開を積極的に図っていく方針です。このような状況下において、進出国における法令、政治、経済及び文化等の様々なカントリーリスクを有しております。
 当社グループは現地の動向を随時把握し、適時適切に対応していく方針でありますが、不測の事態が発生し事業の推進に障害が発生する場合は、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 減損損失
    [発生可能性:大、影響度:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループは、有形固定資産やのれん等の固定資産を保有しております。これらの資産については減損に係わる会計基準に従い、定期的に固定資産の減損の兆候を判定し、兆候がある場合は保有資産の将来キャッシュ・フロー等を算定し、減損損失の認識・測定を行っており、減損処理が必要な資産については適切に処理を行っております。しかし、将来の環境変化により将来キャッシュ・フロー見込額が減少した場合には、追加の減損処理により、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 投資有価証券評価損

    [発生可能性:大、影響度:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループは、事業シナジーによる戦略的リターンを重視したコーポレートベンチャーキャピタル(以下、CVC)投資を行っております。CVC投資はシードからアーリーステージのベンチャー企業も対象としているため、計画どおりに投資先企業の事業が進捗しない場合など、投資有価証券評価損により、当社グループの財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

2. 事業内容に由来する事項について

(1) 事業運営における重要な契約について

① 3Dプリンターに関する代理店契約

   [発生可能性:小、影響度:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 マニュファクチュアリング事業は、米国3D Systems社及び株式会社スリーディー・システムズ・ジャパン社と3D Systems社製3Dプリンターの日本国内における装置販売及び保守に関する代理店契約を締結、また株式会社日本HPとHP社製3Dプリンターの日本国内における装置販売に関する代理店契約を締結しております。これらの契約は、当社又は相手先から契約解除の申し出がない限り自動的に契約更新がなされることとなっており、今後につきましても現状の良好な取引関係を継続していく方針です。一方で、新しい技術を搭載した3Dプリンターの取扱いの拡大についても継続して取り組んで参ります。しかしながら、契約内容の変更又は解消等が発生した場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 重要な事業拠点の賃借契約
   [発生可能性:小、影響度:大、発生する可能性のある時期:2026年]

 当社グループでは、重要な事業拠点として以下の賃借契約を締結しております。

事業所名

セグメント名称

所在地

契約開始時期

契約終了時期

Global Engineering Center-Yamato

(大和工場)

デザイン事業

マニュファクチュアリング事業

全社(共通)

神奈川県

大和市

2021年8月

2026年7月

 現時点においては、賃貸人と当社グループとの関係は良好であり、賃貸人から契約期間中の解約の申し出がなされる可能性は低いものと考えておりますが、賃貸人側の事情等により予期せぬ解約の申し出がなされる可能性があります。その場合、代替となる事業拠点が適時適切に確保できず操業が停止したり事業拠点の移転に伴う費用が発生したりすることにより、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) エンジニアの確保及び育成

    [発生可能性:大、影響度:大、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループは、デジタル技術を核とする製品開発ノウハウに基づき、グローバルに製品開発サポートを行う企業集団でありますが、エンジニアは重要な経営資源であり、かつ今後の事業拡大の重要な要素であると捉えているため、当社グループの事業の継続及び拡大にあたっては顧客企業の要求水準に応える優秀な人材を確保し、さらには常に最先端の技術に対応できるエンジニアの育成が不可欠であると考えております。

 エンジニアの確保については、国内・海外で積極的に実施しており、国内においては、全国の理工系大学の訪問やホームページ及び求人サイト等のインターネット媒体の活用等だけでなく、国内拠点の近隣に限らず全国主要都市での会社説明会の開催等、新たな採用戦略を進めております。海外においては、グループの海外拠点を活用した採用活動に加えて、優秀なエンジニアを多く輩出している東南アジア諸国からの採用等を展開しております。

 育成についても、継続的に成長を促すための人材育成システム及びスキルアップ支援体制等の施策により、人的資本経営に取り組んでおります。

 しかしながら、当社グループの求める人材の確保が計画どおりに進まない場合や現在在職している人材の予想を上回る流出が発生した場合、売上高の減少や売上原価率の上昇につながる恐れがあり、結果として当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) M&Aについて
    [発生可能性:中、影響度:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループは、デジタル技術を駆使するグローバルエンジニアリング企業として顧客並びに技術獲得の早期化と事業成長のために、M&Aをその有効な手段の1つとして位置付けており、必要に応じてM&Aを実施する可能性があります。
 M&Aに際しては、対象企業のビジネス、財務内容及び法務等について詳細なデューデリジェンスを行い、各種リスクの低減を図る方針でありますが、これらの調査の段階で確認又は想定されなかった事象がM&Aの実行後に発生又は判明した場合や、M&A実施後の事業展開が計画どおりに進まない可能性があり、その場合は当社グループが当初期待した業績への寄与の効果が得られない可能性があることに加えて、対象企業の投資価値の減損処理が必要になることも考えられ、当社グループの財政状態及び業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 特定取引先への依存

    [発生可能性:小、影響度:大、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループの有力販売先の1つに本田技研工業株式会社があります。2024年12月期において、同社に対する売上高は、当社グループの売上高の28.7%を占めており、販売先の中でも比率が高い状況にあります。
 当社グループは、同社に限らず各取引先との良好な取引関係を維持していくよう努めていくと同時に、新規事業の伸長や海外を含めた新規取引先の開拓により、特定の取引先の動向に左右されにくい環境を構築していく方針です。しかしながら、上記環境の構築が進まなかった場合、同社の方針の変更やその他の何らかの事情により、当社グループとの取引の減少や取引条件の変更等により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 経営成績の季節等による変動

    [発生可能性:大、影響度:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループは、顧客企業に対し製品開発ノウハウやデジタル技術等を顧客企業オンサイトでのサービス提供も実施しております。オンサイトでのサービス提供の場合、主な契約形態として請負契約・準委任契約・派遣契約があり、特に準委任契約・派遣契約の場合、売上高がエンジニアの稼働時間に応じて変動するため、各月の稼働日や時間外業務時間数の多寡が売上高及び利益に影響を及ぼすこととなります。特に、夏季休暇や年末年始等の顧客企業の大型連休の時期はエンジニアの稼働日数が減少することが多いため、これらの時期の売上高及び利益の水準は、ほかの時期と比較して落ち込む傾向にあります。また、当社グループの新入社員は、研修期間を経て一般的に毎年7月以降にエンジニアリング等の業務に就きます。よって新入社員の稼働に伴い7月以降の売上高及び利益の水準を6月以前と比較して押し上げる要因となりますが、新入社員の稼働が計画どおりに進まなかった場合に、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 3Dプリンター装置の販売について

    [発生可能性:大、影響度:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループは、3Dプリンター装置の販売を行っております。3Dプリンター装置の販売については検収基準で売上高が認識されますが、特に受注の時期は顧客企業の都合により左右されることがあるため、当社グループが予定した時期に売上高を認識できないことがあります。当社グループとしては、顧客企業に対し3Dプリンターの特長等を訴求することにより、円滑な受注及び検収が実現するよう努めておりますが、売上高の認識の時期が当初の予定と相違した場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 新規事業の展開によるリスク

    [発生可能性:中、影響度:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループは、事業規模の拡大と高収益化を目的として、既存事業に留まらず、新規事業の開発に積極的に取り組んでいく方針であります。既存事業よりリスクが高いことを認識しておりますが、企業価値のさらなる拡大を目指すには、市場成長性の高い分野への進出や新規市場の創造が不可欠であると考えております。

 新規事業への取り組みは、綿密な市場調査・分析や、入念な事業計画を策定するなどを行っておりますが、予測と異なる状況が発生し計画どおりに進まない場合には、当社グループの事業及び経営計画に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 法的規制

    [発生可能性:小、影響度:大、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

① デザイン事業に関する法的規制

 当社グループは、デザイン事業の実施にあたり、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下、「労働者派遣法」という。)」に基づく労働者派遣事業の許可を受けております。当社グループでは、規程の整備及び役職員への教育等を通じて関係諸法令を遵守するよう努めており、本書提出日現在において、当社グループが労働者派遣事業の許可取消し等の事由に該当する事実はないと認識しておりますが、仮に労働者派遣法に定める派遣元事業主としての取消し等の事由等に該当した場合には事業の継続に支障を来す恐れがあり、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 また、労働者派遣法を始めとする関係諸法令は、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」など社会情勢及び経済環境の変化等に伴い改正されることがあります。今後改正が行われる場合に、改正内容が当社グループの事業にとって不利なものである場合は、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(許可の状況について)

会社名

許可の名称

(許可番号)

監督官庁

有効期限

SOLIZE株式会社

労働者派遣事業

(派13-315070)

厚生労働省

2028年10月31日

株式会社STELAQ

労働者派遣事業

(派13-317617)

厚生労働省

2027年10月31日

 

(許可の取り消し等の事由)

 労働者派遣法において、労働者派遣事業を行おうとする者(法人である場合には、その役員を含む)が、法令違反等の許可の欠格事由(第6条)又は許可の取消事由(第14条)に該当した場合には、事業の全部又は一部の停止を命じることや許可の取消し等ができる旨が規定されております。

 このほか、当社グループが実施している請負についても、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)に準拠する必要があります。これについても労働者派遣法と同様の方法でその遵守に努めており、本書提出日現在において、当該基準に抵触する事実はないと認識しておりますが、仮に当社グループが請負で受託した取引が実質的に労働者派遣とみなされ労働者派遣法に違反するような場合は、業務停止等の行政処分により、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

② その他の法的規制

 その他にも、当社グループがマニュファクチュアリング事業で使用している各工場において消防法及び関連法令の適用を受けているほか、日本国内のみならず、事業活動を行う世界各国において様々な法的規制を受ける場合があります。当社グループでは、「グループコンプライアンス規程」を制定しグループ内へ周知徹底するとともに、グループ内での定期的なコンプライアンス研修の実施、法務担当部門における法的規制の改正の確認及び顧問弁護士との連携等の各種施策を講じることにより、法的規制に抵触するリスクを低減するよう努めております。しかしながら、当社グループが何らかの理由で法的規制を遵守できなかった場合や法的規制に重要な変更が発生した場合等には、当社グループの事業の推進に障害が発生したり、対応のためのコストが発生したりすることが考えられ、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 個人情報等の管理

    [発生可能性:小、影響度:大、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループは、「個人情報の保護に関する法律」で規定する個人情報取扱事業者として同法の適用を受けており、事業を通じて顧客及び従業員等の個人情報を保有しております。当社グループでは個人情報の管理について、「個人情報保護規程」等による厳格なルールを設けて対応しておりますが、万一個人情報の漏洩等が発生した場合にはその対応のための費用が発生し、さらには当社グループの信用にも影響が出ることが想定されるため、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 情報セキュリティ

    [発生可能性:中、影響度:大、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループでは、顧客企業の機密情報を大量に取り扱っております。そのため、機密情報の取り扱い等の情報セキュリティに関する規程を整備・運用し、毎年役職員への情報セキュリティの研修も実施しております。さらに、増加・巧妙化するコンピュータウィルス感染や不正アクセスなどのサイバー攻撃への対応のため、ネットワーク、サーバー、パソコン等を対象としたセキュリティ対策の強化を推進しております。また、ネットワークセキュリティ等のハード面でのセキュリティ強化や、事務所や施設へのアクセス制限等の管理も行っており、機密情報の漏えいに対する対策を講じております。
 このような対策にも関わらず、機密情報の外部への漏えい等が起こった場合には、顧客企業から当社グループへの損害賠償請求等が発生することが想定され、その場合は当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 生成AIの利活用に関するリスク

  [発生可能性:中、影響度:大、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループでは、生成AIやAI(機械学習・人工知能)を用いた情報分析等を行っております。WEB検索結果の要約や文書作成、予測・分類から対話や生成といった人的業務の代行まで、社会実装の範囲が拡大しています。生成AIを利用するうえでのリスクを考慮した生成AI利用ガイドラインを制定し、AIシステムの開発・運用・利活用を中心としたAIガバナンスの取り組みを拡大・継続しております。

 しかし、誤った利活用や秘密情報の漏洩防止、著作権侵害のリスク回避、安全性・正確性の確保、倫理的配慮が求められ、適切に対応しないと社会的信用やブランドイメージが低下する可能性があります。

 

3. その他について

(1) 一般財団法人SOLIZE財団との関係

    [発生可能性:小、影響度:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 一般財団法人SOLIZE財団(以下、「同財団」という。)は、人の知恵と技術を活かして社会課題を解決することを目的に、社会課題の解決を志向する個人又は団体への活動資金の助成、学術的研究に対する助成等を行う財団として2022年4月に設立され、本書提出日現在、当社株式16,600株を保有しております。今後、同財団は当社株式から得られる配当金、当社からの寄付金及び一般からの寄付金を主な原資として運営する予定となっています。同財団が保有する当社株式数については、助成金の対象範囲を拡大するための原資の確保の趣旨から将来的に増加する可能性がありますが、本書提出日現在において具体的に決定している事項はありません。

同財団の理事は5名選任されていますが、そのうち3名は当社の役職員が兼職により同財団の理事として就任しております。当社としましては、同財団の議決権行使に係る独立性の確保のため、当社株式の議決権行使に係る理事会決議に当社役職員を兼職する理事は参加しない方針としております。また、同財団は公益財団法人への移行も視野に入れており、その移行のための認定の基準を充足する観点から、当社の役職員又はその関係者ではない者を同財団の理事に追加で招聘する可能性があります。

このほか、本書提出日時点で同財団は当社の関連当事者に該当しております。当社は、関連当事者との取引については、取引の必要性を含め一般株主の利益保護の観点から極めて慎重に判断する方針です。この点、同財団の事務局を当社の職員1名が兼職することにより対応しておりますが、これは「知恵と技術をエンジニアリングし、価値創造を革新する」、「『本質的に美しいものづくり』を実現する」という使命を掲げる当社が同財団の活動方針に賛同し、CSR活動の一環として行っているものであり、当面の間継続して実施する方針です。これ以外に、当社と同財団との間で特別な利害関係はありません。

 

(2) 訴訟

    [発生可能性:小、影響度:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 本書提出日現在、当社グループの業績に重要な影響を及ぼすような訴訟を提起されている事実はありません。一方で、事業を推進するうえでは訴訟が発生する可能性が日常的に存在します。さらに、当社グループの場合は海外でも事業を展開しているため、海外においても予期しない訴訟が発生する可能性もあります。
 当社グループでは、「グループコンプライアンス規程」及び「グループリスク管理規程」の制定、コンプライアンス委員会及びリスク管理委員会の設置並びに社内教育による法令遵守の周知徹底等、多様な手段を講じ可能な限り訴訟を受ける可能性を排除するための内部管理体制を整備しております。しかしながら、何らかの訴訟を受けた場合、その内容及び結果によっては、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 災害等が発生した場合の影響
    [発生可能性:小、影響度:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループは、国内外で事業を展開しており、大地震、台風等の自然災害や事故、火災等により、生産の停止、設備の損壊や電力供給不足等の不測の事態が発生した場合には、当社グループの事業活動に支障が発生する可能性があります。また、当社グループの責に帰すべき事故等が発生した場合には、損害賠償請求等を受ける可能性があります。このような場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 社会保険料率の上昇

    [発生可能性:中、影響度:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社グループのデザイン事業においては、エンジニアが経営資源の中心となるため、売上原価の大半が労務費で構成されております。このため、社会保険料の料率が上昇した場合は売上原価率の増加につながる恐れがあります。
 当社グループとしては、稼働率の適時な見直し、業務の効率化及び単価の改定等により影響を最小限に抑制する方針ではあるものの、料率変更が想定以上に大きくなった場合は、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 大株主について

    [発生可能性:低、影響度:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社の株主である古河未由紀氏、古河摩耶氏、古河慶純氏、古河陽純氏及び古河真季氏は、当社の元取締役である古河建規氏の親族であり、古河建規氏の逝去に伴いその所有していた当社株式を相続により取得しており、本書提出日現在の議決権比率は合計で29.8%となっております。これらの株主と当社との間には特記すべき利害関係がない状況ですが、これらの株主が所有する当社株式について、少なくとも当社が知り得る限りにおいて短期的にはその数が増減するような事象は認識されておらず、またその議決権行使に当たっては、株主共同の利益を追求する方針であると聞き及んでおります。しかしながら、将来的に何らかの事情によりこれらの株主の所有株式数が増減した場合には、当社株式の市場価格及び議決権行使の状況等に影響が及ぶ可能性があります。

 

(6) 資本政策について

    [発生可能性:低、影響度:小、発生する可能性のある時期:特定時期なし]

 当社は、本書提出日現在、自己株式を747,169株(発行済株式総数に対して12.5%)保有しております。自己株式については、主に現在発行済みの新株予約権(本書提出日現在の目的となる株式の数は合計475,920株であり、本書提出日現在の発行済株式総数の7.9%に相当)の行使がなされた場合に、新株の発行に代えて交付することを予定しております。また、当社は、取締役に対する譲渡制限付株式報酬制度(年間30,000株以内、年額100百万円以内)を導入しておりますが、本制度に基づき、これまでに譲渡制限付株式報酬として6,831株の自己株式処分(本書提出日現在の発行済株式総数の0.1%に相当)を行っており、今後も同様の自己株式処分を予定しております。ただし、今後何らかの事情により資本政策を変更する可能性があります。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

①財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末の資産合計は前連結会計年度末に比べて2,402百万円増加し、15,448百万円となりました。自己株式の処分等により現金及び預金が1,028百万円増加したほか、取引量の拡大等により売掛金が247百万円増加、商品が100百万円増加、契約資産が93百万円増加したこと等により、流動資産合計が1,638百万円増加、さらに、建物及び構築物等の有形固定資産が208百万円増加、投資有価証券等の投資その他の資産が521百万円増加したこと等により固定資産合計が739百万円増加したことが主な要因となっております。

(負債)

 当連結会計年度末の負債合計は前連結会計年度末に比べて594百万円増加し、3,970百万円となりました。未払金が194百万円増加、賞与引当金が193百万円増加、買掛金が134百万円増加、未払費用が117百万円増加したこと等が主な要因となっております。

(純資産)

 当連結会計年度末の純資産合計は前連結会計年度末に比べて1,808百万円増加し、11,478百万円となりました。自己株式の処分等により株主資本合計が1,719百万円増加したこと等が主な要因となっております。

 

②経営成績の状況

 当社グループを取巻く経済環境は、当連結会計年に発生した自動車産業における認証不正の問題により、厳しい状況からスタートすることとなりました。年度の後半には、落ち込んだ自動車産業の生産が正常化へ向かう方向となりましたが、欧州や中国など海外経済の減速の影響も加わり、景況感は横ばいの状態となりました。一方で、当社グループの主要顧客の製品設計開発に係る需要は製造販売の動向は、電動化や自動運転等の新規技術に関する開発意欲が依然として高く、強い需要が継続することとなりました。

 このような環境の中、当社グループは中長期の収益成長の一層の加速を意図し、エンジニア及びコンサルタントの増員を加速、東日本ブランチ、及び、西日本ブランチを増床、中部ブランチを移転・拡張、新宿、熊本にオフィスを新設したほか、最新型の光造形機に関連する設備の増強を行う等、生産能力の拡大を推進して参りました。また、収益に先行してエンジニア及びコンサルタントの増員を加速したことに加え、経営のスピード向上を意図した分社化、持株会社化等を目的とした管理人員の増強を行って参りました。

 これらの結果、当社グループの売上高は前連結会計年度より13.1%増加し22,713百万円、営業利益は48.6%減少し455百万円、経常利益は52.4%減少し416百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は56.1%減少し254百万円となりました。

(デザイン事業)

 デザイン事業の市場は、国内自動車産業の景況感としては横ばいの状況でありましたが、自動車産業の顧客を中心に前連結会計年度に引き続き、当社サービスに対する需要拡大の傾向が継続して参りました。

 このような環境の中、輸送用機器産業等における設計開発に係る受託、及び、エンジニア派遣サービス、さらに、ソフトウエア開発等の分野において受注を拡大し、インド現地法人 SOLIZE India Technologies Private Limitedにおいても3D CADのソフトウエア販売の受注拡大を継続して参りました。また、中長期の収益拡大の加速を目的としたエンジニア及びコンサルタントの採用活動を強化、増員したほか、分社化に関する活動及び関連する人員の増強を行って参りました。

 これらの結果、デザイン事業の売上高は前連結会計年度より15.2%増加し18,612百万円、セグメント利益は66.5%減少し334百万円となりました。

(マニュファクチュアリング事業)

 マニュファクチュアリング事業の市場における需要環境は、3Dプリンターによる試作品、及び、3Dプリンターに係る保守サービスに対する堅調な需要が継続、3Dプリンターの販売に対する需要は横ばいの傾向が継続することとなりました。特に相対的に利益率の高い試作品製造販売の需要回復継続が顕著となりました。

 このような環境の中、当社グループは、自動車関連企業や機械メーカーを中心とした当社グループ主要顧客に対する試作品サービス提供の拡大を継続して参りました。また、従前より販売を積み重ねて参りました3Dプリンター納入顧客に対するメンテナンスサービスや材料の供給等、保守サービスによる収益の増加も継続いたしました。さらに、マニュファクチュアリング事業の生産体制見直しによる合理化として横浜工場の移転・集約を実施し、販売費及び一般管理費を抑制することができました。

 これらの結果、マニュファクチュアリング事業の売上高は前連結会計年度より4.4%増加し4,101百万円、セグメント利益は前連結会計年度の112百万円の損失から大幅に改善し120百万円となりました。

 

(グループ全体)

 為替差益の減少等により営業外収益は1百万円減少し19百万円となりました。また、投資事業組合運用損の増加等により営業外費用は27百万円増加し57百万円となりました。当社グループのコーポレートベンチャーキャピタル投資先の有価証券に係る投資有価証券評価損等が増加したことにより、特別損失は10百万円増加し85百万円となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は7,190百万円となり、前連結会計年度末と比較し1,010百万円の増加となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と増減の要因は次のとおりであります。

 営業活動によるキャッシュ・フローは、297百万円の収入となりました。主なキャッシュ・フローの増加要因

は、税金等調整前当期純利益331百万円、減価償却費205百万円、賞与引当金の増加額192百万円、未払金の増加額168百万円等、主な減少要因は、売上債権及び契約資産の増加額359百万円、保証金・敷金の支払等その他の主たる営業活動254百万円、法人税等の支払額154百万円等となっております。前連結会計年度との比較では、営業活動によるキャッシュ・フローは191百万円減少しました。税金等調整前当期利益が470百万円減少、その他主たる営業活動が262百万円減少した一方、未払金の増減額が244百万円の支出減少となったこと、法人税等の支払額が206百万円減少したこと等が主な要因となっております。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、718百万円の支出となりました。主な支出の内訳は、コーポレートベン

チャーキャピタル等への出資による投資有価証券の取得300百万円、オフィスの拡張や3Dプリンター等有形固定資産の取得290百万円、生産及び教育用ソフトウエア等無形固定資産の取得66百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得47百万円となっております。前連結会計年度との比較では、投資活動によるキャッシュ・フローは442百万円の支出増加となりました。有形固定資産の取得による支出が182百万円増加、投資有価証券の取得による支出が163百万円増加、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が47百万円増加、無形固定資産の取得による支出が35百万円増加したこと等が主な要因となっております。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、1,384百万円の収入となりました。主な内訳は、自己株式の処分による収入が1,617百万円、配当金の支払額が178百万円等となっております。前連結会計年度との比較では、自己株式の取得による支出の減少により1,122百万円増加、自己株式の処分による収入の増加により1,617百万円増加したこと等により、財務活動によるキャッシュ・フローは2,723百万円の収入増加となりました。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2024年1月1日

  至 2024年12月31日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

マニュファクチュアリング事業

2,318

104.5

 (注)1.金額は製造原価によっております。

2.セグメント間取引については、相殺消去しております。

3.デザイン事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、記載を省略しております。

 

b.受注実績

 当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2024年1月1日

  至 2024年12月31日)

受注高

(百万円)

前年同期比

(%)

受注残高

(百万円)

前年同期比

(%)

デザイン事業

18,696

115.3

894

114.7

マニュファクチュアリング事業

4,093

103.5

89

91.7

合計

22,789

113.0

984

112.1

 (注)金額は販売価格によっており、セグメント間取引については、相殺消去しております。

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2024年1月1日

  至 2024年12月31日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

デザイン事業

18,612

115.2

マニュファクチュアリング事業

4,101

104.4

合計

22,713

113.1

 (注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。

相手先

 前連結会計年度

(自 2023年1月1日

  至 2023年12月31日)

 当連結会計年度

(自 2024年1月1日

  至 2024年12月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

本田技研工業株式会社

5,117

25.5

6,512

28.7

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績に関する認識及び分析・検討内容

(財政状態)

 当連結会計年度末の流動比率は334.0%となり引続き高い流動性を維持し、固定比率は24.9%となり安全性を維持しております。短期及び長期の借入債務はありません。

 

(経営成績)

 当社グループの主要顧客の属する自動車産業は、引き続き自動運転や新規技術による自動車の設計開発に関する技術について激しい競争環境におかれ、各社先行的に研究開発や新規技術の開発を促進している状況にあります。当連結会計年度の事業環境は、第1四半期より発生した自動車産業における認証不正の問題により、厳しい状況からスタートすることとなり、年度の後半には、台風等の自然災害からの復旧も進み、自動車産業の生産が正常化へ向かう方向となりましたが、欧州や中国など海外経済の減速の影響も加わり景況感は横ばいの状態となりました。しかしながら当社グループの主要顧客の製品設計開発に係る需要は製造販売の動向とは異なり、電動化や自動運転等の新規技術に関する開発意欲が高く、強い需要が継続することとなりました。

 このような環境の中、当社グループは中長期の収益成長の一層の加速を意図し、エンジニア及びコンサルタントの増員を拡大、東日本ブランチ、及び、西日本ブランチを増床、新宿、熊本にオフィスを新設したほか、最新型の光造形機に関連する設備の増強を行う等、生産能力の拡大を推進して参りました。また、経営のスピード向上を意図した分社化、持株会社化等を目的とした管理人員の増強を行って参りました。

 これらの結果、グループ全体として前連結会計年度に比べて増収、売上総利益増益、営業減益の結果となりました。

 また、当社グループは工業製品の設計開発の分野において、常に顧客よりも技術及び関連する知見について先行し、顧客サービスの品質向上とより広い顧客ニーズに応えるためのサービス分野の拡大を重要な戦略の一つとしております。そのため、このような技術及び知見の発展と蓄積、及び、実際にこれらを推進することのできるエンジニアやコンサルタントの人財開発を重点的に行い、将来のリターン獲得を目的として研究開発費以外に投資的費用610百万円を費用計上しております。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループは、自動車産業を中心とする製造事業者に対して、当社グループエンジニアによる製品開発・設計の請負サービス、及びエンジニア派遣サービスを提供、また3Dプリンター等の造形設備を利用した試作モデル製造販売及び少量多品種製品の製造販売を行っております。そのため当社グループには、エンジニアやコンサルタント等人財への投資、製品の設計開発を行う専用ハードウエア及びソフトウエア等のツールへの投資、3D造形設備への投資、及びその原材料費の支払や人件費等運転資金に対して資金の需要があります。当連結会計年度においては外部からの借入等による資金調達の必要は無く、これらの資金需要に対して自己資本で賄っております。流動性について、当連結会計年度末において7,190百万円の現金及び現金同等物を保有し、当社グループの事業運営上十分な流動性を確保していると考えております。当連結会計年度末における自己資本比率は74.3%となっており今後も安全性の高い資本構成を継続する考えであります。2016年に実施したCSM Software Private Limited(現SOLIZE India Technologies Private Limited)及びCSM Software USA,LLC(現SOLIZE USA Corporation)の買収時のように、一時的にまとまった資金需要が発生し、資金の流動性が低下するリスクがあるため、借入等機動的な資金調達ができる体制の構築を進めて参ります。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っていますが、見積りには不確実性を伴うため、実際の結果は、これらと異なることがあります。

 なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表[注記事項](重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下の

とおりであります。

(固定資産の減損)

 当社グループは、継続的に収支の把握を行っている管理会計上の事業区分に基づき資産のグルーピングをし、減損の兆候の有無を判定しております。減損の兆候があった場合、将来キャッシュ・フローを見積り、減損の要否を判定しております。判定の結果、減損が必要と判断された資産については、帳簿価額を回収可能価額まで減額しております。

(繰延税金資産の回収可能性)

 当社グループは、将来の課税所得を合理的に見積り、繰延税金資産の回収可能性の判断をしております。将来の

課税所得に関する予測は、中期経営計画等をもとに行っているため、経営環境等の変化により、課税所得の見積りの変更が必要となった場合には、繰延税金資産の計上額が変動し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

④経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等についての分析

 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するため、当社グループでは売上高対前年増加率及び営業利益額を重視するとともに、売上高の大部分を占める構成要素である国内エンジニア数(含 コンサルタント)を客観的な指標としております。顧客ニーズに応えるため、提供するサービスのラインナップを拡充、グローバルにもサービス提供ができるキャパシティを確保することを目指し、売上高の成長率を重要な目標と考えております。また、当社グループサービスの本業による付加価値の拡大を目指し、営業利益の成長を重要な目標と考えております。
 当連結会計年度においては、売上高対前年増加率13.1%、営業利益は455百万円となりました。また、国内エンジニア数(含 コンサルタント)は1,389名(対前年比106名増加)となりました。推移は以下のとおりです。

 

2020年

12月期

2021年

12月期

2022年

12月期

2023年

12月期

2024年

12月期

国内エンジニア数(人)

1,060

1,101

1,205

1,283

1,389

 

5【経営上の重要な契約等】

(代理店契約)

契約会社名

相手方の名称

国名

契約名称

契約期間

主な契約内容

SOLIZE株式会社

(当社)

3D Systems Corporation

米国

代理店

契約

2016年1月1日

から自動更新(注)

米国3D Systems社製3Dプリンターの日本国内における装置販売及び保守に関する代理店契約

株式会社スリーディー・システムズ・ジャパン

日本

 

契約会社名

相手方の名称

国名

契約名称

契約期間

主な契約内容

SOLIZE株式会社

(当社)

株式会社日本HP

日本

代理店

契約

2019年4月1日から自動更新(注)

HP社製3Dプリンターの日本国内における装置販売に関する代理店契約

 (注) 当社又は相手先から契約解除の申し出がない限り、自動的に契約更新がされるものであります。

 

(吸収分割契約)

 当社は、2024年7月19日開催の取締役会において、吸収分割の方式により会社分割を行うことにより、2025年1月1日を効力発生日とし、ソフトウエア事業を分社化することを決議し、2024年10月18日開催の取締役会において、分割準備会社と吸収分割契約を締結することを決議し、同日に締結致しました。

 詳細につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等[注記事項](企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

 

6【研究開発活動】

 自動車産業の技術環境が大きく変化する中、当社グループを持続的な成長へと導くことのできる人材の育成と技術の開発に早急に取り組むことを目的として、2018年4月にSOLIZEテクノロジーラボを設立しました。当連結会計年度においてSOLIZEテクノロジーラボでは本質的に美しいものづくりの実現に向けて、「地域循環のものづくり」、「廃棄粉末樹脂リサイクル」、「自然と調和したものづくり」等に係る研究開発を促進して参りました。また、「ものづくりの開発課題を技術で解決」することを目的としているSOLIZE開発統括部において、少量量産やライフサイクルアセスメント等に関する研究開発を促進して参りました。これらの結果、SOLIZE開発統括部等における当連結会計年度の研究開発費は272百万円となりました。

 デザイン事業においては、AIを利用したソフトウエア開発に関する研究開発を進めて参りました。当連結会計年度のデザイン事業の研究開発費は12百万円となりました。

 マニュファクチュアリング事業においては、3Dプリンターによる少量量産に関する研究を継続して参りました。マニュファクチュアリング事業における当連結会計年度の研究開発費は5百万円となりました。

 以上の結果、当社グループ全体の研究開発費の金額は291百万円となりました。