文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションを掲げ、「だれもが自由に経営できる統合型経営プラットフォーム」をコンセプトとしたサービスを提供しております。
(2) 当社グループの強み
① 成長性の高いクラウド会計・人事労務ソフト市場におけるユニークで強固なポジション
国内企業の99.7%を占める中小企業(注1)は大企業と比べて生産性が低く、テクノロジー活用において大きな成長ポテンシャルが存在しております。当社グループは、個人事業主をはじめ、従業員規模別に法人顧客を区分したSmall(従業員19名以下)及びMid(従業員20名以上1,000名以下)の3領域に対して、それぞれのニーズに即したソリューションを提供しております。(注2)
当社グループは、ビジネス向けの財務関連ソフトと人事労務ソフトのTAM(注3)について、合計で約1.6兆円と推計(注4)しております。また、財務関連ソフト及び人事労務ソフトの市場におけるクラウドソリューションへの支出額比率は各48.4%及び66.7%であり(注5)、諸外国との比較においてもクラウド浸透が低い水準に留まっていることから、クラウドERP市場の拡大ポテンシャルは高いと認識しております。さらに、大企業よりも深刻な人材不足(注6)等を背景とした業務効率化ニーズの高まりをはじめ、経営者の世代交代の活発化(注7)、新設法人数の増加(注8)といったマクロ環境の変化がスモールビジネスにおけるクラウド浸透の継続的な追い風になっていると考えております。
財務関連ソフト及び人事労務ソフトにおけるクラウドソリューションへの支出額比率の比較(注9)
前記「第1 企業の概況 3 事業の内容 (3)統合型クラウド会計ソフト・人事労務ソフトを提供する「freee」が選ばれる理由」にて記載のとおり、当社グループの提供するサービスは、単に従来型の会計ソフト・人事労務ソフトをクラウド化したものとは異なる統合型のクラウド会計ソフト・人事労務ソフトであり、経費精算や請求書発行といった記帳業務の上流工程まで含めた一体的な設計により、経理業務の枠を超えたバックオフィス全体の効率化、及び経営者の意思決定のナビゲーションにも寄与するものです。
こうしたユニークなサービス設計・顧客価値により、成長性の高いクラウド会計・人事労務ソフト市場において当社グループのユーザー規模は創業以来順調に拡大しており、マーケットリーダーとしてクラウド会計・クラウド人事労務業界を牽引しております。なかでも、「freee会計」については新設法人、並びに「freee会計」及び「freee人事労務」の両者についてはIPO準備企業群にて多く使われております。
(注) 1.中小企業庁「中小企業白書(2025年版)」
2.個人事業主、Small及びMidにおける潜在企業数と出所は下表のとおり。尚、Midの潜在企業数については、「令和3年 経済センサス 活動調査」における雇用者規模20~999名の企業数を参考値として使用。
3.TAM:Total Addressable Marketの略称。当社グループが想定する最大の市場規模を意味する用語であり、当社グループが本書提出日現在で営む事業に係る客観的な市場規模を示す目的で算出されたものではない。各プロダクトのTAMは、一定の前提の下、外部統計資料をはじめ、プロダクトラインナップ拡充やプラン改定等の当社ビジネスの取り組み状況も踏まえ、国内における全潜在ユーザー企業において各プロダクトが導入された場合の年間支出総金額を当社グループが推計したものであり、その正確性にはかかる統計資料や推計に固有の限界があるため、実際の市場規模はかかる推計値と異なる可能性がある。
4.国内における当社グループの全潜在ユーザー企業において「freee会計」及び「freee人事労務」が導入された場合の全潜在ユーザー企業による年間支出総金額。全潜在ユーザー企業は、個人事業主と従業員1,000名未満の法人の合計。(「freee会計」及び「freee人事労務」の全潜在ユーザー企業数(国税庁「令和5年申告所得税」、総務省統計局「令和3年経済センサス 活動調査」) × 従業員規模別の「freee会計」及び「freee人事労務」の想定年間課金額)
5.International Data Corporation(IDC)「Worldwide Software and Public Cloud Services Spending Guide_2025V2」。財務関連ソフトウェア及び人事労務ソフトウェアそれぞれについて、従業員1,000人未満の中小企業及び個人事業主を対象に、クラウドソリューションへの支出額をオンプレミスを含むソフトウェア全体への支出額で除して算出。尚、人事労務ソフトウェアのデータは、給与計算関連のソフトウェアのみを対象に集計。
6. リクルートワークス研究所(2025)、「ワークス大卒求人倍率調査(2026年卒)」。従業員300名以上の企業における大卒求人倍率は約0.9倍である一方、従業員300名未満の企業における同倍率は約9.0倍。
7. 中小企業庁「中小企業白書(2025年版)」。2015年から2024年にかけて、経営者が最も多い年代が60代から50代にシフト。
8.「国税庁法人番号公表サイト」より、各年に新たに法人番号が指定された法人を新設法人として抽出し集計。新設法人数は、2016年から2024年にかけて104,355社から140,439社に増加。
9.IDC「Worldwide Software and Public Cloud Services Spending Guide_2025V2」からクラウド化率が比較的高い国を抜粋。当該国には、ニュージーランドの同業プレーヤーであるXeroが進出。
② スモールビジネス向けクラウドERP市場における更なるTAMの拡大
当社グループは、上記のとおり、従来の会計・人事労務ソフトの枠を超えて、バックオフィス全体の効率化に資するERP(統合型業務ソフト)を志向してサービスを提供しております。今後はさらに提供するサービスモジュールを広げ、スモールビジネス向けERPとして実現・提供可能なサービスの範囲拡大を目指してまいります。これは、上流工程から下流工程までを一貫してソフトウェア化するユニークな設計思想によって可能になるものです。
そのため、従来の会計・人事労務の枠を超えたバックオフィス全体の効率化に資するERP(統合型業務ソフト)のTAMとして捉えた場合には、当社グループが狙うTAMは合計で約3.6兆円(注)まで拡大すると考えております。
(注) 当社グループの全潜在ユーザー企業において「freee会計」「freee人事労務」「freee販売」「freeeサイン」「freee業務委託管理」及びファイナンスサービス(カード・ファクタリング)が導入された場合の全潜在ユーザー企業による年間支出総金額。全潜在ユーザー企業は、個人事業主と従業員1,000名未満の法人の合計。(各プロダクト及びサービスの全潜在ユーザー企業数(国税庁「令和5年申告所得税」、総務省統計局「令和3年経済センサス 活動調査」) × 従業員規模別の各プロダクト及びサービスの想定年間課金額)
③ スモールビジネスの情報が蓄積されたビジネスプラットフォーム
「freee会計」は、統合型会計ソフトであるため、経理財務情報のみならず、上流工程である個々の取引情報まで広くカバーしており、各ユーザー企業のトランザクションデータを保有しております。ECサイトや決済サービス等も同様にトランザクションデータを保有しておりますが、一つのユーザーが複数のECサイトや決済サービスを利用するのに対し、「freee会計」は他のソフトと併用する必要はなく、すべてのトランザクションデータが集約される点が強みです。
また、「freee人事労務」には、人事労務の定型業務に係る情報が一元的に蓄積されており、従業員向けの付加サービスを提供する上での有力なプラットフォームになると考えております。
④ 高い安定性を誇る財務モデル
当社グループは、サービスの多くをサブスクリプション(継続課金)方式で提供しており、売上高合計に占めるサブスクリプション売上高の比率は90%超(注1)と、安定的かつ継続的な収益構造にあります。
顧客生涯価値(LTV)(注2)の長期的な最大化を企図し、機能の開発及び改善やカスタマーサクセス等に投資しております。その結果、2025年6月期における月次平均解約率(注3)は約1.1%となっており、大企業と比して廃業率が高く他のソフトウェアへの乗り換えが多い傾向にあるスモールビジネスを対象としたサービスとしては、低い解約率を実現しております。
(注) 1.サブスクリプション売上高(顧客から解約意思を示されない限り継続する自動更新契約から毎月得られる収益)を全売上高で除した比率(2025年6月期)。
2.LTV:Life Time Valueの略称。顧客から契約期間(Life Time)を通じてもたらされる価値であり、契約期間×MRR×売上総利益率によって算出。
3.(当該月に有料課金ユーザーでなくなったユーザーに関連するARR÷前月末ARR)の過去12ヶ月平均。当社の全顧客領域を集計対象。
⑤ 企業文化
「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションの実現に向け、当社グループは「マジ価値を届けきる集団」であると自己定義し、「本質的な価値(マジ価値)をユーザーに届けきること」を世の中へのコミットメントとして位置づけております。「マジ価値」とは、「ユーザーにとって本質的な価値があると自信をもって言えることをする」という意味であり、当社グループが創業以来、大切にしている考え方です。同時に、これは届いてこそ意味があるという考えから、マジ価値を届ける共通基盤である全役員及び全従業員が持つべきマインドとして「マジ価値2原則」を、マジ価値をチームとして届けるために大切にしたい行動として「マジ価値指針」を全役員及び全従業員で議論し浸透させております。
また、当社グループは原則全日出社の方針を設け、働き方の柔軟性を担保しながら「一緒に出社」することで高いスピード感で事業を推進しております。
当社グループは、ミッションやコミットメントに共感する社員が集まり、個々人が高い自律性を持ちながらも強い一体感・カルチャーを持つ組織を実現しています。
マジ価値2原則
・「社会の進化を担う責任感」:社会をよい方向へ進化させる責任を有するという自負をもって、あきらめずに挑戦する姿勢。また、世の中を変えうるよい事例は率先してつくるという姿勢
・「ムーブメント型チーム」:目指すべき世の中の方向性に共感し、自律的にアクションを起こす姿勢
マジ価値指針
・「理想ドリブン」:理想から考える。現在のリソースやスキルにとらわれず挑戦しつづける
・「アウトプット⇒思考」:まず、アウトプットする。そして考え、改善する
・「Hack Everything★」:取り組んでいることや持っているリソースの性質を深く理解する。その上で枠を超えて発想する
・「ジブンゴーストバスター」:フィードバックを貪欲に求めることで、自分が認識出来ていない自分を知る。強み・弱みと向き合い、自分を進化させ続ける。
・「あえて共有」:人とチームを知る。知られるよう共有する。オープンにフィードバックをしあうことで一緒に成長する
(3) 経営環境
我が国は、少子高齢化を背景に人口減少フェーズに入り、生産年齢人口の減少が見込まれております。また、2017年3月に政府から「働き方改革実行計画」が発表されて以降、労働環境の規制が強化されています。加えて、最低賃金も上昇するなど、労働生産性の向上が益々要求される局面を迎えております。生産年齢人口が減少する一方で、新設法人数や副業者数は増加傾向にあります。こうした独立を志向した生き方に対するニーズが時代に合わせて大きくなることで、スモールビジネスの裾野は広がりを見せております。
当社グループでは、このような環境下において、スモールビジネスは労働力への依存から脱却し、テクノロジーに代替可能な作業を積極的に置き換える必要があるほか、だれもが自由に経営できる社会をつくり、新しい生き方のニーズに対応することが重要であると認識しており、スモールビジネスが強くスマートになることに貢献するサービスの開発、提供を目指してまいります。
また、(2) 当社グループの強み ① 成長性の高いクラウド会計・人事労務ソフト市場におけるユニークで強固なポジションに記載がある通り、現状の我が国における会計ソフト及び人事労務ソフトの普及余地は多分に存在するものと考えております。
(4) 中長期的な経営戦略
上記の経営環境を前提とし、今後も継続的な成長を実現することを目的として、中長期成長戦略のもとで事業を推進しております。この度アップデートした中長期の財務見通しにおいては、事業からのキャッシュ創出力を示す調整後フリー・キャッシュ・フロー(注1、以下「調整後FCF」という)を採用し、2028年6月期までに調整後FCFマージンを15%以上に向上させることを目標に掲げました。加えて、当社グループでは、キャッシュ創出力及び収益性の中長期的な向上の前提として売上高成長が重要であると考えており、双方を踏まえた目標として対前期比売上高成長率と調整後FCFマージンの合計で40%に到達することを掲げ、持続的な事業成長と収益性の向上の両立を図ってまいります。
① ユーザー基盤の更なる拡大
当社グループの2025年6月期末における有料課金ユーザー企業数は606,533件であり、創業以来順調に拡大し続けております。これまでは、WebマーケティングやSNS経由で流入した顧客の自発的なユーザー登録をはじめ、インサイドセールス(注2)及びフィールドセールス(注3)経由での獲得が中心でした。近年では、これらのダイレクトチャネル経由での顧客獲得に加えて、会計事務所とのパートナーシップ拡大により会計事務所経由での顧客獲得が大きく伸長しています。これは、会計ソフトと申告ソフトの双方を提供し一気通貫でオンライン完結できるプラットフォームとしての価値が会計事務所及び顧問先から高く評価されているものと考えております。
加えて、会計・人事労務といったコア事業領域においてプロダクトの業種別ニーズへの対応を進めております。具体的には、店舗と本社での小口現金に関するデータ連携を可能とする「freee支出管理 小口現金」や、AIでシフトを自動作成できる「freee人事労務 AIシフト管理」等をリリースしました。今後も、プロダクトの業種別ニーズ対応を加速させることで、統合型プラットフォームとしての価値を多様な業種のスモールビジネスに提供し顧客基盤をさらに拡大させていきます。
今後もスモールビジネスへのタッチポイントの深化、多様化を進めることで、ユーザー基盤の更なる拡大を進めてまいります。
有料課金ユーザー企業数推移(件)
(注)1.調整後フリー・キャッシュ・フロー:一般的なフリー・キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フロー+ 投資活動によるキャッシュ・フロー)に対して、クレジットカード事業で発生する立替金の増減が営業キャッシュ・フローに与える影響と、M&Aに伴う支出及び収入が投資キャッシュ・フローに与える影響を調整したもの。
2.メールや電話等を活用し、非対面で実施する営業活動。
3. 見込み顧客を直接訪問し、対面で実施する営業活動。
② 顧客価値の最大化
当社グループは継続的に新規サービスをリリースしてきたほか、既存サービスの機能改善などにより、顧客価値の向上に努めております。また、プロダクト価値の向上に応じた機動的なプラン改定の実施や、複数プロダクトの利用を促すクロスセルを推進した結果、ARPU(注)の上昇を実現してまいりました。
今後は、収益の中心である会計・人事労務領域に留まらず、「freee販売」をはじめ高い成長ポテンシャルを有する新規事業領域にも注力し、スモールビジネスの業務の効率化と可視化をより幅広い領域で実現することで統合体験を強化していきます。
真にスモールビジネスに必要とされる既存サービスの改善や新規サービスのリリース等を通じて、顧客価値の最大化を目指してまいります。
(注)ARPU: Average Revenue Per Userの略称。1有料課金ユーザー企業当たりの平均単価。各期末時点における合計ARRを有料課金ユーザー企業数で除して算出。
③ 金融サービスの拡大
当社グループは、新規事業領域の1つとして金融サービスに注力しております。2022年1月には、Midセグメント(注1)を中心とした顧客の成長資金ニーズに対応すべく「freeeカード Unlimited」をリリースし、2023年2月にはSmallセグメント(注2)にも提供範囲を拡大いたしました。また、M&Aも積極的に活用しながら金融サービスのラインナップ強化に取り組んでおり、即日払いのファクタリング等の金融支援サービス「FREENANCE」を提供するGMOクリエイターズネットワーク株式会社を2025年9月に完全子会社化いたしました。
今後もスモールビジネスにとって大きな課題である資金繰りに対して、これらの改善を進めるとともに、データとテクノロジーの力を活用することで、あらゆる経営課題の解決に貢献するサービス開発及び提供を目指してまいります。
(注)1.従業員が20名以上1,000名以下の法人を指す。
2.従業員が19名以下の法人を指す。
④ AI活用の推進
当社グループは、プロダクトの価値強化と社内業務の生産性向上の双方においてAIの活用を進めております。プロダクト強化の取り組みにおいては、AIエージェント及び、6つのAI新機能を新たに開発し、ユーザーからのフィードバックを得ながら収益化を進めております。なかでも、業務負荷が大きい年末調整の領域では、2025年度分の年末調整業務での利用を見据え、情報の自動入力・不備検知が可能な「AI年末調整」をリリースします。業務効率化ニーズが大きい領域にAI機能を導入することで、さらなる顧客獲得やfreeeプロダクトのクロスセル促進を図っていきます。
また当社グループは、全社的なAI活用を通じた更なる業務効率化・生産性向上を重点施策として推進しております。既にセールス活動の生産性向上の取り組みにおいて実績が出始めており、商談前後の業務時間削減やセールスノウハウの属人化解消を実現したことが評価され、Forbes JAPAN NEW SALES OF THE YEAR 2025において「AIトランスフォーメーション賞」を受賞しました。セールス以外の領域においても、例えばAIチャットボットによるカスタマーサポートの更なる効率化や、AIコーディングによる開発生産性の向上等、更なる生産性向上に繋がる高いポテンシャルを有していると考えております。
(5) 対処すべき課題
① スモールビジネス向けクラウドERP市場の拡大
当社グループは、スモールビジネス向けのクラウド会計ソフトとクラウド人事労務ソフトのTAMについて、合計で約1.6兆円と推定(注)しております。また、財務関連ソフトウェアを利用する従業員1,000人未満の中小企業及び個人事業主におけるクラウドソリューションへの支出額比率は48.4%であり(注)、クラウドERP市場の拡大ポテンシャルは高いと認識しております。
当社グループは、スモールビジネス向けクラウドERP市場におけるリーディングカンパニーとして、市場を引き続き牽引することが重要であると認識しております。
(注)前記「(2)当社グループの強み ① 成長性の高いクラウド会計・人事労務ソフト市場におけるユニークで強固なポジション」を参照。
② 持続可能な社会の実現と、そのための組織体制の整備
「freee会計」、「freee人事労務」をはじめとする各サービスの提供により、だれもが自由に自然体で経営できる環境をつくることで、ユーザーの皆様を通じて、持続可能な社会の実現に貢献することが重要と考えております。また、当社グループが持続可能な組織であるために、多様なバックグラウンドをもった優秀な人材を採用し、強い組織体制を整備することが重要であると認識しております。
上記をはじめとするサステナビリティ推進活動の詳細に関しては、当社グループWebサイト内の「サステナビリティ」コーナー、及び「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
③ 情報管理体制の強化
当社グループは、提供するサービスに関連して多数のユーザー企業の機密情報や個人情報を取り扱っております。これらの情報資産を保護するため、専任の情報セキュリティチームを設置しております。また情報セキュリティ基本方針を定め、この方針に従って情報資産を適切に管理、保護しております。今後も社内教育・研修の実施のほか、システムの強化・整備を実施してまいります。
④ 新規事業の展開
現在、当社グループの収益の大半が「freee会計」や「freee人事労務」等のSaaSサービスから成り立っております。今後も継続的な事業成長の実現に向けて、既存サービスの伸長に加えて、金融サービスや取引プラットフォームにおける新規事業の展開を積極的に検討してまいります。
⑤ 利益及びキャッシュ・フローの創出
当社グループの収益の中心であるSaaSビジネスは、サブスクリプション方式でユーザーに提供しており、継続して利用されることで収益が積み上がるストック型の収益モデルになります。SaaSビジネスにおいては、開発費用やユーザーの獲得費用が先行して計上される特徴があり、短期的には赤字が先行することが一般的です。当社グループは、2024年6月期まで、開発費用やユーザーの獲得費用等に先行投資を行ったため営業損失を計上しておりましたが、2025年6月期においては営業損益の黒字化を達成しました。
SaaSビジネスにおいては、投資効率を計る指標として顧客生涯価値(LTV)(注1)と顧客獲得コスト(CAC)(注2)のバランス(LTV/CAC)が重要であるため、当社グループではこれを重要指標の一つとして顧客獲得活動における投資判断を行っております。さらに、既存顧客からの収益拡大の状態を示す重要指標としてNet Revenue Retention Rate(注3)を定めており、収益獲得の効率性を測っております。これらの指標を基準として成長投資を継続することが中長期的に利益及びキャッシュ・フローの最大化に寄与するものと考えております。
また、今般アップデートした中期財務目標においては、事業からのキャッシュ創出力を示す調整後フリー・キャッシュ・フロー(注4、以下「調整後FCF」という)を採用し、2028年6月期までに調整後FCFマージン(調整後FCFの売上高に対する比率)を15%以上に向上させることを目標としております。加えて、当社グループではキャッシュ創出力及び収益性を中長期的に向上させるためにその前提となる売上高の成長が重要であると考えており、双方を踏まえた目標として対前期比売上高成長率と調整後FCFマージンの合計で40%に到達することを掲げ、持続的な事業成長と収益性の向上の両立を図ってまいります。
(注)1.LTV:Life Time Valueの略称。顧客から契約期間(Life Time)を通じてもたらされる価値であり、契約期
間×MRR×売上総利益率によって算出。
2.CAC:Customer Acquisition Costの略称。顧客の獲得に要するコストであり、セールス活動及びマーケティング活動に係る費用が該当。
3.Net Revenue Retention Rateは、該当期間中に、前期の同期間において顧客であったユーザーの該当期間における売上を前期の同期間における売上で除して算出。会計事務所の売上増分は顧問先の売上増加を含む。
4. 調整後フリー・キャッシュ・フロー:一般的なフリー・キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フロー+ 投資活動によるキャッシュ・フロー)に対して、クレジットカード事業で発生する立替金の増減が営業キャッシュ・フローに与える影響と、M&Aに伴う支出及び収入が投資キャッシュ・フローに与える影響を調整したもの。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、スモールビジネスは個性的かつ創造的であり、多様な価値観や働き方を促進し、持続可能な社会
の実現に必要となる新たなムーブメントを起こすことができると信じております。スモールビジネスが活躍するため
にはテクノロジーの活用が不可欠であると考え、「freee会計」「freee人事労務」をはじめとする各サービスの提供
により、だれもが自由に自然体で経営できる環境をつくることで、ユーザーの皆様の持続可能な事業運営に貢献でき
ると考えております。
また、当社グループ自身が持続可能な組織であるために、一人ひとりのメンバーが自らの能力を最大限に発揮でき
るような組織づくりを促進してまいりました。今後もミッションである「スモールビジネスを、世界の主役に。」を
合言葉に、持続可能な社会の実現に向けて、各種取り組みを推進してまいります。
当社グループでは、サステナビリティに関する基本方針及びリスク・機会認識に基づく対応方針・施策等について当社の取締役会にて監督しております。サステナビリティへの対応方針・施策等は、各担当部門が主体となって推進し、これらの進捗状況等を定期的に取締役会に報告します。
(1)気候変動
気候変動は、持続可能な社会を実現する上で最も差し迫った課題の1つであり、気候パターンの変化や異常気象により我々の社会に大きな影響を及ぼすリスクがあります。当社グループは気候変動対策として、エネルギー使用量と温室効果ガス排出量の測定・開示・削減に取り組むとともに、「freee会計」、「freee人事労務」をはじめとする各種オンラインサービスの提供により、ユーザーの皆様のペーパーレス推進や不要な移動の削減の一翼を担うことで、社会全体の環境負荷低減に貢献していきたいと考えております。
(2)人的資本
当社グループでは、ミッションである「スモールビジネスを、世界の主役に。」を組織の存在目的として最重要視しております。ミッションを達成するために、ミッションに共感する優秀な人材を集め、成長させ、一人ひとりがその個性や才能を発揮し、ワクワクしながら自律的に行動を起こしてもらうと同時に、当社グループに所属する全てのメンバーが一致団結して同じ方向に向かって進み、組織として高いパフォーマンスを継続的に発揮し続けていくことが不可欠であると考え、様々な施策や制度策定をしております。
①成長支援
当社グループでは、従業員が個々の強みを活かしながら成長することが、当社グループの長期的な成長につながるという考えのもと、より多くの挑戦機会と継続的に学び続けられる環境を提供することで、従業員一人ひとりの成長を加速させることを目指しております。具体的には、以下のような取り組みを重点的に行っております。
a. freee style 人事制度
当社グループでは、基幹人事制度「freee style 人事制度」を成長支援の中心に据えております。「マジ価値を届けきるための成長を加速する人事制度」をコンセプトに、四半期ごとに従業員一人ひとりにストレッチな業務アサインを行い、チャレンジングな目標を設定します。また、成果・成長について直属マネージャーだけでなく、部署を跨いでマネージャー同士が多面的に議論し、今後の具体的な成長に向けたフィードバックの内容を作り込むことで効果的な成長促進を実現しております。さらに、当社グループの内外問わずに従業員一人ひとりが自身のキャリアビジョンを策定することで自律的な成長を促すとともに、その内容を業務のアサインや目標設定に活かすことで従業員の自己実現と当社グループのミッション実現の両立を追求しております。
b. マネージャー育成・支援
当社グループでは、マネージャーのことを「ジャーマネ」と呼称し、タレントであるメンバーの活躍・成長を後押ししながら、チームの成果・成長を最大化させる役割と位置付けております。組織拡大を続ける中でマネージャーの重要性が増していることから、昨年刷新したマネージャーに期待する役割定義をもとに、これまで以上にマネージャーの活躍・成長支援に力を入れております。新任マネージャーがより早期に活躍するためのオンボーディング・プログラムの強化、マネージャー向けの体系的なトレーニング、定期的なサーベイ・フィードバックなどの支援基盤を再整備・拡充することで、マネージャーおよびマネージャー候補の継続的な確保・育成に取り組んでおります。
c. 入社後の早期活躍と継続学習の支援
当社グループでは、組織拡大を続ける中で新たなメンバーがより早期に活躍できるようにオンボーディングに力を入れており、充実した入社時研修や個別フォロー体制による社内人脈づくりや業務に必要な知識獲得の支援をしております。また、オンボーディング後もより活躍・成長し続けられるように、業務に関連する書籍を月3冊まで購入できる「書籍費freee」や、業務に関連する学びの費用を補助する「ジブングロースハッカー」などの学習支援制度、社外派遣も含むスキルアップ研修プログラムを整備し、従業員一人ひとりの継続的な学びを後押ししております。
d. エンジニアリング組織の取り組み(キャリアの複線化)
当社グループのプロダクト開発組織では、エンジニア、プロダクトマネージャー、アプリケーションデザイナーそれぞれのロール定義とスキル要件を明文化しています。代表的な例として、エンジニアでは、プロダクト開発をリードするProduct Lead、技術領域の意思決定をするTech Lead、プロダクトマネージャーではプロダクト価値向上・事業貢献に全方位にコミットするProduct Management Lead、特定ドメインの深い知見を持ちユーザーの体験を作り上げるDomain Expert、アプリケーションデザイナーでは、UI設計の実践からPdMと伴走し上流工程の問題解決を行うといったロールを設定し、それぞれのロールにおけるラダー・スキル要件定義や研修を行っています。社員一人ひとりに多様なキャリアパスを提示することで、自身の強みや志向に合わせた自律的な成長を支援すると同時に、それぞれの専門性を核としながらも役割の境界を越えて連携し、組織全体のインパクトの最大化を目指しています。
e. 女性のリーダー育成・支援
当社グループでは、社員の成長を多角的に支援し、社員一人ひとりが自然体で最大限の価値を発揮できる職場環境を築くための、重要な投資として多様な人材の育成を目指す社内プログラムInteractive Mentoring Program(IMP)を実施しています。主に女性たちに向け、成長支援として1on1での経営陣との対話の機会を定期的に設け、成長の伴走を行っています。
②従業員エンゲージメント向上
当社グループは自組織を「ムーブメント型チーム」(注)と位置づけ、当社グループの掲げるミッション・ビジョンに対して各従業員が自律的にアクションを起こし、その熱狂が伝播することが重要と考えております。そのため、ミッション・ビジョンを浸透させることやその実現に向けての道筋の丁寧な共有を行うと共に、従業員の自律性・働きやすさを担保し、業務上のつながりを超えたつながりを創出することが、従業員のエンゲージメント向上、ひいては熱狂が伝播しやすい環境の整備につながると考えています。
(注) 当社グループが定める価値基準の一つで、「ミッションに共感し集まった仲間たちが自律的にアクションを起こし、その熱狂が伝播することで、より良い相乗効果を生み出していく集団である」と定義しております。
a. 社内情報共有
当社グループでは、従業員の自律性と組織の一体感を高めるため、経営陣と現場従業員間の情報共有を重視しています。月に一度の「freeers 総会」では、経営陣から全従業員に直接情報が共有され、リアルタイムな質疑応答で活発なコミュニケーションが行われます。また、年度初めには「freee spirits」と呼ばれる全社イベントを実施し、全社のミッションや中長期戦略を共有することで、従業員一人ひとりが自身の貢献がどのように会社の全体目標につながるかの理解を深めます。さらに、今年度から経営陣がマネージャー層と直接対話し、より密な意見交換を行うことを目的に「タウンホールMTG」を半期に一度実施しております。これらの取り組みを通じて、従業員一人ひとりが当社グループのミッション及び中長期戦略を深く理解し、自律的に行動する文化の醸成を目指しています。
また、ナレッジマネジメントの観点としては、社内キャラクターを起用した「わカルさんbot」と呼ばれるAIチャットボットに社内制度やルールに関する質問をすると回答してくれる仕組みを整備しています。「わカルさんbot」の利用率は社員の80%以上、問い合わせの件数は9,500件/月にも上っており、蓄積されたナレッジにより社員一人ひとりが課題に対して自己解決を行うことができる仕組みが構築され、業務の効率化とスピードアップにつながっています。
b. 出社を促進するオフィス環境作り
当社グループでは、会議の生産性や事業の推進スピードを大きく向上させることを目的に、原則全日出社としています。その上で、育児や介護の当事者や突発的な個別事情に配慮し一定もしくは都度のリモート勤務を認めるなど従業員の働きやすさとの両立を行っています。増員に伴いオフィス計画の見直しを定期的に実施し、固定席とフリーアドレス活用の組み合わせを行うことで、効率的なオフィス運営と出社によるつながりづくりを実現しています。また、社員同士の交流を促す社内フリーマーケットや、当社プロダクトユーザーの方をオフィスにお招きし商品を販売してもらう交流イベントといった、出社への意欲につながる企画を定期的に開催しています。これらの取り組みを通じて、リモートワークのみでは実現できない、質の高い、スピード感のある事業運営を実現しております。
c. 従業員同士のつながり作り
当社グループでは、従業員のエンゲージメントを高めるため、業務以外でのつながりを育む取り組みを積極的に支援しています。共通の趣味を持つ従業員が交流する「オフカツ」は80種類以上の活動があり、部署を超えたランチ費用を補助する「Shall We Lunch?」は毎月100件近く活用されているなど、役職や部門を超えた自然な交流が活発に生まれています。また、年に2回開催される「ファミリーデー」でも、子どもをもつ従業員同士のつながり作りを促進しています。
これらの施策は、出社して対面で会うことを前提としており、「出社したくなるオフィス」づくりと相まって、従業員一人ひとりが生き生きと働き、会社全体にポジティブなエネルギーが満ち溢れることを目指しています。
d. ワークライフバランス
当社グループでは、従業員一人ひとりがライフステージの変化に応じて健康かつ生産性高く働き、成長と働く幸せを実感できる状態を体現できるよう各種制度を整えております。社内には、個人の事情に応じた柔軟な勤務形態を尊重する風土が根付いており、多様な働き方の実現とワークライフバランスの支援に力を入れております。
<産休育休明け職場復帰サポート制度>
・認可外保育園金額補助
・家事代行補助
・ベビーシッター補助
・労務復職前面談、マネージャーによる1on1の実施
・復職時研修、オンボーディングパートナー制度
<ライフスタイル変化におけるサポート制度>
・働き方freee(時短勤務制度)
・引退制度(定年制度に代わる自律的に引退条件を決める制度)
③DEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)
当社グループでは、スモールビジネスの多様な価値観や生き方が、世の中に新しいイノベーションを生み出す起爆剤であると信じ、誰もが各々の個性を活かし、公平な環境でビジネスができ、人生が豊かになっていく世界を作っていくことを目指しております。当社グループのダイバーシティは、そういった多様なスモールビジネスを支えるためにあると位置づけ、創業以来、ミッション実現のためにも多様な人材がそれぞれの持つユニークな能力を発揮して自律的に活躍できる環境を整備してまいりました。具体的には、以下のような取り組みを重点的に行っております。
a. DEI推進の体制
当社グループでは、2018年にダイバーシティ推進室を設置、2022年10月から、チーフ・カルチャー・オフィサー(以下、CCO)(注)を当課題解決の責任者として任じ、2024年1月からCCOの下に専任チームとしてDiversity, Equity & Inclusionチームを設置しました。併せて多文化共生の観点から、Globalization Success部を新設し、開発組織を起点として、言語や国籍に寄らないインクルーシブなコミュニケーションの設計、浸透を進めています。その他、プロジェクトチームとして、CCOが委員長を務め、CHROの他、ビジネス組織の人事担当役員、エンジニア組織の人事担当役員で組成する「ジェンダーギャップ委員会」や、2024年4月1日の「改正障害者差別解消法」施行を受け、当社グループのプロダクトやサービスを利用する上で障害のある当事者からの相談を受け付ける専用窓口の運営者として、プロダクト担当者や採用に関わる従業員で組成する「合理的配慮委員会」を通して、各種課題の解決に取り組んでおります。
(注) カルチャーの強化推進を担う役職として2020年より設置しております。
b.社内に向けた継続的なDEI教育とみんなが働きやすくなる環境づくり
当社グループでは、2018年より一貫して、多様な人材が持続的に活躍できる環境を作るために、入社時及び管理職登用時にDEIに関する研修(「アンコンシャス・バイアス」研修を含む)やアクセシビリティー研修を行い、継続的に全社に対する意識醸成を行っております。さらに2024年5月より、「freee人事労務」を用いて、従業員の性別について戸籍上の性別とは別に生活上の性別を所属組織を介さずに登録できる仕組みを作り、移行期前後に関わらずトランスジェンダー当事者が会社での日常生活において安心して過ごすことができる環境を整備しました。その他、視覚障害者の従業員に向けた社内各所への点示案内の設置、外国語話者に向け重要な社内の案内を日英併記にするなど情報格差を生まない工夫を行っております。
c. ジェンダーギャップの解消目標の設定
当社グループでは、社内で意思決定に関わる従業員の多様性向上を目指す上で、特に「最大のマイノリティ」たるジェンダーに関わるギャップの解消を重要と位置づけており、「2030年6月期に社員および管理職比率において男女ともに最低45%を達成(残り10%には男女どちらにも性別を分類できないケースを含む)」を目標として掲げております。当該目標の設定に先立っては、2023年に代表取締役から全社に向けた「ジェンダーによらず活躍しやすい環境作り」の宣言を行い、日常のコミュニケーションを通して職場環境を整えていく意思を示しております。
d. 多様なキャリアと働き方の可視化
社内でロールモデルを見つけにくくなりがちなマイノリティに向け、社内の他部署のメンターを紹介するキャリア相談制度「キャリアよろず相談窓口」の他、ロール定義とキャリアステップの明示(①-dに詳細を記載)をプロダクト開発組織全体に広げキャリアを多様にする取り組みも進めています。 男女を問わず育児に関わるメンバーが情報交換・交流できるコミュニティとして「つばめっ子クラブ」も積極的に活動を行っております。また、小中学生の子どもを持つ従業員が長期休み期間中に、仕事と子どもの世話の両立で直面する課題に対応すべく、子連れ出社ができる施策として「つばめっ子スペース」を運用しています。従業員と子どもが、業務および休憩時間を共に過ごすことができ、子育て世代同士の情報交換の場にもなっています。未来の人生設計を従業員が考えるきっかけも提供しています。
e.社外に向けた協賛の取り組み
当社グループでは、アジア最大級のLGBTQ+関連イベントの東京レインボープライドや、アクセシビリティの祭典GAAD(Global Accessibility Awareness Day)に対して、企業として継続的に協賛し、社会全体でのダイバーシティ向上に貢献していく意思を示しております。
当社グループでは、サステナビリティに関する事業への影響を把握・評価し、認識したリスクと機会については以下のとおりに対策を進めております。リスク管理の観点で重要な事項についてはリスク管理委員会にて協議し、必要に応じ当社の取締役会にて報告・協議しております。
また、当社グループのサービスは社会のインフラであるという認識のもと、ユーザーの皆様にいつでも安心してご利用頂くためにサービスの安定稼働に努めております。ユーザーの皆様の重要な情報資産を適切に管理、保護するとともに、情報セキュリティ基本方針を定め、メンバーに対して継続的な研修活動や障害訓練を実施しております。加えて、当社グループのサービスは全て拡張性・信頼性が確保されたクラウドサービス上に構築しており、さらには複数のデータセンターで構成されるサービスを利用する等、物理リスクが直接的に影響して業務継続に影響を及ぼす可能性を極めて低い状態に保っております。
<4>指標及び目標
(1)電力使用量および温室効果ガス(GHG: Greenhouse Gas)排出量
当社グループの2025年6月期の電力使用量及び温室効果ガス排出量実績は以下の通りです(注)。従業員の増加にもかかわらず、前年度からの排出量が大幅に減少していますが、これは全社的な節電への取り組みによるものです。また、当社グループでは再生可能エネルギーを使用したクラウドサービスを活用し、サービスを提供しております。当社グループが気候変動に与える影響の多くは電力消費に起因するものであり、継続的な増員が見込まれる中でも、さらなる電力消費の削減や再生可能エネルギーの利用を進め、環境負荷を抑制してまいります。
(注)対象はフリー株式会社の東京本社及び関西オフィス
(2)ジェンダーギャップの解消
当社グループでは、社内で意思決定に関わる従業員の多様性向上のために、管理職に占める女性労働者の割合を
増やすことが重要であると考えております。労働者に占める女性の割合を高めると共に、管理職に占める女性労働
者の割合について、労働者に占める女性の割合と同水準にすることを目標として取り組んでまいります。
(注)1.連結子会社は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児休 業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定による 公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。
(注)2.労働者に占める女性の割合および管理職に占める女性労働者の割合については、2030年6月期に45%を達成目標として掲げております。
以下において、当社グループの事業展開その他に関してリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしも、そのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
当社グループのプラットフォーム事業は、売上高の大部分をクラウドサービスのサブスクリプション売上高が占めています。国内のBtoB向けのクラウド関連市場は従来型の会計ソフト・人事労務ソフトと比べて発展途上段階にあり、当社グループは当該市場が今後も拡大していくことが事業展開の前提であると考えております。当社グループでは、今後もクラウド関連市場の順調な成長を見込んでおりますが、クラウドサービスに関連して、今後新たな法的規制の導入、技術革新の停滞などの要因により、クラウドサービスの導入が想定通りに進捗せず、クラウド関連市場の成長が阻害される場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループのプラットフォーム事業においては、顧客であるスモールビジネスのニーズに対応したサービスの拡充・開発を適時かつ継続的に行うことが重要です。
とりわけ、クラウドサービスを取り巻く技術革新のスピードは大変速く、先端的なニーズに合致するクラウドサービスを提供し続けるためには、常に先進的な技術ノウハウを獲得し、当社グループの開発プロセス・組織に取り入れていく必要があります。このため、当社グループは、エンジニアの採用・育成や創造的な職場環境・開発環境の整備を進めるとともに、技術的な知見・ノウハウの取得に注力しております。しかしながら、かかる知見やノウハウの獲得に困難が生じた場合、技術革新に対する当社グループの対応が遅れた場合又は競合他社がより優れたサービスを展開した場合には、当社グループの競争力が低下する可能性があります。更に、新技術への対応のために追加的なシステム投資、人件費などの支出が拡大する可能性があります。このように、当社グループが技術革新に対して、適時かつ適切に対応することができなかった場合には、当社グループの技術力低下、それに伴うサービスの質の低下、そして競争力や業界での地位の低下を招き、また、対応のための支出の増大により、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、会計、税務、人事労務その他の規制に関する変更により、当社グループのサービスについて重大な修正を要し、又は販売が延期若しくは中止となる場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 法的規制について(発生可能性:低、影響度:大)
当社は、電子決済等代行業者及び金融サービス仲介業者として関東財務局に登録(登録番号:関東財務局長(電代)第1号及び関東財務局長(金サ)第17号)(以下、「本登録」という。)をし、サービスの提供を行っております。本登録に関して、有効期限は存在しないものの、当社が本登録に関連する法令に違反して業務改善命令を受ける、又は本登録が取り消される等した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。但し、本書提出日現在において、本登録の継続に支障を来す要因は発生しておりません。
また、当社子会社であるフリー創業融資サポート株式会社は貸金業者として東京都に登録(登録番号:東京都知事(1)第32015号)を行っており、貸金業法に基づく役務の提供を行っております。
上記許認可及び登録の状況の概要は以下のとおりであります。
(当社)
(フリー創業融資サポート株式会社)
当社グループは、社内の管理体制の構築等により、当該法令を遵守する体制を整備しておりますが、当社グループが当該法令に抵触すること等により何らかの行政処分を受けた場合や、社会情勢の変化等により当社グループの事業展開を阻害する規制の強化等が行われた場合には、当社グループの事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
④ 情報管理体制について(発生可能性:低、影響度:大)
当社グループは、提供するサービスに関連して多数の顧客企業の機密情報や個人情報を取り扱っております。これらの情報資産を保護するため、情報セキュリティに係る専任チームを設置し、情報資産を適切に管理、保護しております。具体的には、「freee会計」、「freee請求書」及び「freee経理」については、国際的な保証報告書であるSOC1 Type2報告書を取得しております。また、「freeeカードunlimited」ではクレジットカード取扱事業者に求められる国際認証であるPCI-DSSを取得しており、提携先の金融機関によるセキュリティチェックや、電子決済等代行業者の登録に際して金融庁によるセキュリティチェックをパスしております。また、個人情報の取扱いに関して、プライバシーポリシーを定めると共に、個人情報保護に係る国際認証であるTRUSTe認証を取得し、関連法規類に準拠した情報保護を実施しています。さらに、情報セキュリティ基本方針を定め、従業員に対して継続的な研修活動を実施しております。
しかしながら、このような対策にもかかわらず、重要な情報資産の外部漏洩等により、当社グループが行政指導や行政処分等を受け、当社グループの社会的信用が失墜したり、若しくは損害賠償請求が発生したりする可能性があります。また、情報資産の取扱いに関する法規制若しくはその運用の厳格化等により、当社グループのサービスの停止、情報の利活用に対する制約の増加等が発生した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
⑤ 競争状況について(発生可能性:中、影響度:大)
当社グループは、主としてクラウド会計サービス業者、クラウド人事労務サービス業者と競合するほか、クラウドサービスと従来型の会計ソフト・人事労務ソフトの双方を提供している会計・人事労務サービス業者とも競合していることに加え、当社グループが属するクラウド関連市場は、近年急速に拡大している分野であるため、さらに多数の競合企業が参入する可能性があります。
当社グループは、これまで培った独自の開発ノウハウを活用したサービスを提供し、また、新規顧客獲得のための戦略的な施策を展開することで、継続的な事業成長に努めておりますが、既存の競合企業の競争力の向上や競合企業の参入を含む競争環境の変化にともなって、当社グループや当社グループのサービス等に対する評価や信頼性を維持することができず、又はその優位性が失われる場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
⑥ 既存ユーザー企業の継続率及び単価向上について(発生可能性:中、影響度:大)
当社グループのSaaSサービスのビジネスモデルは、サブスクリプション型のリカーリングモデルであることから、当社グループの継続的な成長には、新規顧客の獲得のみならず、既存顧客の維持及び単価向上が重要と考えております。
既存顧客の維持については、その継続率が非常に重要な要素であり、機能の追加開発やサポートの充実により、継続率の維持・向上を図っております。予算及び経営計画には、実績を基に一定の解約率を踏まえた継続率を見込んでおりますが、当社グループのサービスの魅力の低下、競合他社に対する競争力の低下、追加機能やサポートに対する満足度の低下等により、当社グループの想定を大幅に下回る継続率となる可能性があります。
単価向上については、当社グループは、ユーザー企業当たりのユーザーID数の増加によるARPUの増加、既存顧客へのアップセルやクロスセルを促進する戦略をとっております。しかしながら、既存顧客の事業が成長しない、中堅規模の企業の顧客獲得が奏功しない、又は当社グループのサービスが顧客のニーズに合致しないこと等により、想定した顧客単価の向上が実現しない可能性があります。
これらの結果、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
⑦ 事業の拡大に伴うリスクについて(発生可能性:中、影響度:大)
現在、当社グループの収益は、主力サービスである「freee会計」及び「freee人事労務」等のSaaSサービスによる売上が大部分を占めている状況であるため、当社グループは、多角的観点から新たな収益源を常に模索し、スモールビジネス向けERPとして実現・提供可能なサービスの範囲の拡大を目指すとともに、金融サービスの拡大等に取り組んでおります。加えて、当社グループは、今後、フィンテック領域における新規金融サービス等、現在の事業領域と異なる分野にも進出する可能性があります。しかしながら、現在の事業領域と異なる分野に進出したものの当該分野において収益化が進まない場合や当該分野に関係する法規制に新たに服することになる場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、事業の拡大及び新規事業展開に際しては、資本提携やM&Aも有効な手段であるものと認識しております。資本提携やM&Aに際しては、既存サービスとのシナジーやリスク等について十分な検討を行うことによりリスク低減を図る方針ですが、当初想定した事業のシナジー効果等が得られない、デュー・ディリジェンスの限界等から法的若しくは事業上の新たなリスク要因が発生する、または期待した投資のリターンが得られない等の可能性があり、これらに起因して当社グループの事業又は業績に影響を及ぼす可能性があります。また、期待した収益を得られず、保有する投資有価証券やのれん等の減損損失等が発生する場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 先行投資から得られる効果が期待通りに実現しないリスクについて(発生可能性:中、影響度:大)
当社グループが運営する事業は、先行的に研究開発費及び広告宣伝費を投下し、サービス開発とユーザー獲得を進めることが必要なものであり、当社グループは、創業以来赤字を継続しておりましたが、2025年6月期に黒字化を達成いたしました。今後も、高水準な売上高成長を維持しつつ収益性の向上に努めながら先行的な投資を継続する方針であり、開発費用やユーザーの獲得費用等の対売上高比率を改善させ調整後営業利益(注1)率及び調整後フリー・キャッシュ・フロー(注2)マージンの改善を見込んでおります。
当社グループは、海外の同業他社等を参考に、売上に対して適切な比率の額を研究開発費として先行投資し、将来的なサービスの競争力を維持・向上させることに努めておりますが、研究開発活動をより確実に成果に結びつけるため、新規のサービスを小規模に開始し、市場の反応を確認しながら改善していく方法を採っております。また、顧客獲得活動についても先述のとおりLTV/CACを投資判断の重要指標として、Net Revenue Retention Rate(注3)を獲得した顧客からの収益増加の状態を示す重要指標として計測・把握し、日々活動の効率を向上させております。
しかしながら、経営環境の急激な変化、その他「事業等のリスク」に記載のリスクの顕在化等により、こうした確実性を担保する努力にも関わらず、これらの先行投資が想定どおりの成果に繋がらなかった場合、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
また、当社グループは、目標とする経営指標の見込みや財務方針等を掲げることがありますが、かかる経営指標の見込みや財務方針等は、経済状況の変化、経営環境、ユーザー企業のニーズの変化、他社との競合、技術革新の動向、法規制の変更及び為替変動等に係る多くの前提に基づいて作成されています。
(注)1.調整後営業利益=営業利益+株式報酬費用+M&Aにより生じた無形資産の償却費用+その他一時費用
2.調整後フリー・キャッシュ・フロー:一般的なフリー・キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フロー+ 投資活動によるキャッシュ・フロー)に対して、クレジットカード事業で発生する立替金の増減が営業キャッシュ・フローに与える影響と、M&Aに伴う支出及び収入が投資キャッシュ・フローに与える影響を調整したもの
3.Net Revenue Retention Rateは、該当期間中に、前期の同期間において顧客であったユーザーの該当期
間における売上を前期の同期間における売上で除して算出。会計事務所の売上増分は顧問先の売上増加を
含む
⑨ 為替の変動について(発生可能性:低、影響度:大)
当社グループは、外部クラウドサーバーのAmazon Web Services社が提供するサービス(以下、「AWS」という。)をはじめとする海外事業者が提供するサービス利用料等の支払いの一部を外貨建てで行っております。当社グループは、為替相場の変動リスクを軽減するために、一部の外貨建て支払いにおいて為替予約を利用しておりますが、想定以上に為替相場が円安傾向となった場合は、当社グループの事業運営、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑩ 金融機関、他社ソフトウェアや会計事務所との連携について(発生可能性:低、影響度:大)
第三者との連携は、当社グループの事業の維持・成長における重要な取り組みです。例えば、当社グループが提供するサービスの重要な機能として、金融機関及び他社ソフトウェアとデータ連携することによる入力等業務の自動化が挙げられます。
金融機関との口座同期(いわゆるアカウントアグリゲーション)について、当社は電子決済等代行業の第一号として関東財務局へ登録しております。何らかの事情により、当該許認可の取り消しや金融機関との契約が維持できない場合は、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
一方、他社ソフトウェアとのデータ連携は、主に当社グループが提供するパブリックAPIを通じて実施するものとなります。当社グループは顧客基盤の拡大及びサービスの機能の向上を通じて、連携先企業からみた当社グループが提供するプラットフォームの魅力を増大させております。また連携先企業を増やすことで、特定の連携先に対して依存しない体制の構築に向けて取り組んでおります。しかしながら、何らかの事象による連携先企業と当社グループの関係悪化等によって、連携が解消された場合、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
さらに、当社グループは、会計事務所及び金融機関等との間で密接な関係を築くことでスモールビジネスとのタッチポイントを拡充しています。しかしながら、会計事務所及び連携先には当社グループとの関係を継続する義務はありません。競合他社がインセンティブを提供することなどにより、当社グループの連携先の数が減少した場合には、当社グループの顧客獲得力が減退し、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
⑪ 固定資産の減損リスクについて (発生可能性:中、影響度:中)
当社グループは、今後減損の兆候が認められ、減損損失の認識をすべきであると判定されたソフトウェア等の固定資産について減損損失を計上する場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
⑫ 業績の季節変動について(発生可能性:中、影響度:大)
当社グループの個人事業主向けのプランの新規契約の多くが確定申告時期(1月から3月、当社グループにおける第3四半期)に集中する傾向があります。確定申告時期においては、他の四半期の時期と比して、広告宣伝費を増額することが多く、第3四半期における損益が悪化する傾向にあります。
また、2020年6月期及び2021年6月期においては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、確定申告期限が当初3月中旬であったところ4月以降に延長され、同連結会計年度の損益に一定の影響が生じました。このように、確定申告期限の変更により、上記季節変動に変更が生じる可能性があります。
⑬ 金融サービスにおける与信管理について(発生可能性:低、影響度:小)
当社グループは、既存ユーザーの利便性向上と事業の拡大を目的として金融サービスの展開を進めております。具体的には、2022年1月よりクレジットカードサービスの「freeeカードunlimited」を提供しており、2025年9月より新たにファクタリングサービスの提供を開始しております。これらのサービスにおいてはカード決済代金の立て替えや売掛債権の買い取りに伴いユーザーに対する与信リスクを負担しており、与信管理が重要であると考えております。
当社グループは、創業以来提供しているクラウド会計サービスから得られる会計情報を背景に中小企業の決済に関する与信管理のノウハウを十分持っていると認識しておりますが、金銭債権の回収がなされず想定以上の貸倒が発生した場合、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
(2) システム等に関するリスクについて(発生可能性:低、影響度:大)
当社グループが運営する事業は、PC、スマートフォン、コンピュータ・システムを結ぶ通信ネットワークに依存しており、自然災害や事故(社内外の人的要因によるものを含む)等によって通信ネットワークが切断された場合には、当社グループの事業及び業績は影響を受けます。また、当社グループのサービスは、AWSにて提供しており、AWSの安定的な稼働が当社グループの事業運営上、重要な事項となっております。当社ではAWSが継続的に稼働しているかを常時監視しており、障害の発生又はその予兆を検知した場合には、当社の役職員に連絡が入り、早急に復旧するための体制を整えております。AWSは、個々のアベイラビリティゾーン(注1)で運用されており、FISC安全対策基準(注2)を満たす安全性を備えております。
しかしながら、システムエラー、人為的な破壊行為、自然災害等や当社の想定していない事象の発生によりAWSが停止した場合や、コンピュータ・ウイルスやクラッカーの侵入その他の不具合等によりシステム障害が生じた場合、又はAmazon Web Services社との契約が解除される等によりAWSの利用が継続できなくなった場合には、顧客への損害の発生、当社グループの追加費用負担、又は当社グループのブランドの毀損などにより、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(注)1.リージョンの中の個々の独立したデータセンターの名称を指す。
2.金融庁が金融機関のシステム管理体制を検査する際に使用する基準を指す。
(3) 経営管理体制に関するリスクについて
当社グループは、企業価値を継続的かつ安定的に高めていくためには、コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が適切に整備され、有効に機能していることが必要不可欠であると認識しております。業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保のための内部統制システムの適切な整備・運用、更に法令・定款・社内規程等の遵守を徹底しておりますが、事業の急速な拡大により、十分な内部管理体制の整備が追いつかない状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社グループの事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、今後急速な成長が見込まれる事業の展開や企業規模の拡大に伴い、継続的に幅広く優秀な人材を採用し続けることが必須であると認識しております。質の高いサービスの安定稼働や競争力の向上に当たっては、開発部門を中心に極めて高度な技術力・企画力を有する人材が要求されていることから、一定以上の水準を満たす優秀な人材を継続的に採用すると共に、成長ポテンシャルの高い人材の採用及び既存の人材の更なる育成・維持に積極的に努めていく必要性を強く認識しております。しかしながら、特にエンジニア等の一定の人材の確保に関する競争は激しく、当社グループの採用基準を満たす優秀な人材の確保や人材育成が計画どおりに進まなかった場合又は人材確保のためにより高額の報酬を支払うこととなった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社の代表取締役である佐々木大輔は、創業者であると同時に創業以来当社の事業推進において重要な役割を担ってまいりました。同氏は、クラウド会計ソフトの企画から開発、運用に至るまで豊富な経験と知識を有しております。当社の設立以降は、経営方針や事業戦略の決定及びその遂行において重要な役割を果たしております。当社グループでは、取締役会やその他会議体において役員及び従業員への情報共有や権限委譲を進めるなど組織体制の強化を図りながら、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めております。しかしながら、何らかの理由により同氏が当社の経営執行を継続することが困難になった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、企業価値を高めていくためにはコンプライアンス体制が有効に機能することが重要であると考えております。そのため、コンプライアンスに関する社内規程を策定し、全役員及び全従業員を対象として社内研修を実施し、周知徹底を図っていると共に、コンプライアンス体制の強化に取り組んでおります。しかしながら、これらの取組みにも関わらずコンプライアンス上のリスクを完全に解消することは困難であり、今後の当社グループの事業運営に関して法令等に抵触する事態が発生した場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、運営するコンテンツ及びサービスに関する知的財産権の獲得に努めております。また、第三者の知的財産権の侵害を防ぐ体制として、当社グループの法務本部及び顧問弁理士への委託等による事前調査を行っております。しかしながら、万が一、当社グループが第三者の知的財産権を侵害した場合には、当該第三者から損害賠償請求や使用差止請求等の訴えを起こされる可能性があり、これらに対する対価の支払いやこれらに伴うサービス内容の変更の必要等が発生する可能性があります。また、当社グループが保有する知的財産権について、第三者により侵害される可能性があるほか、当社グループが保有する権利の権利化ができない場合もあります。こうした場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、自然災害、事故等に備え、サービスの定期的バックアップ、稼働状況の常時監視等によりトラブルの未然防止又は回避に努めておりますが、当社グループまたは当社グループが利用するクラウドサービスの所在地近辺において、大地震等の自然災害が発生した場合、当社グループが保有する設備の損壊や電力供給やインターネットアクセスの制限等の事業継続に支障をきたす事象が発生して、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 株式の追加発行等による株式価値の希薄化について(発生可能性:中、影響度:小)
当社は、当社の役員及び従業員に対するインセンティブを目的とし、新株予約権の発行や譲渡制限付株式付与のための新株発行をしており、また、今後においても譲渡制限付株式や株式給付信託等による株式報酬制度を活用していく方針であります。発行済みの新株予約権が権利行使された場合や譲渡制限付株式付与、株式給付信託制度の運用に伴い、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、本書提出日の前月末現在(2025年8月末)でこれらの新株予約権による潜在株式数は430,195株であり、発行済株式総数59,568,886株の0.72%に相当しております。
③ 訴訟等について(発生可能性:低、影響度:大)
当社グループは、本書提出日現在において、事業に重大な影響を及ぼす訴訟を提起されている事実はありません。しかしながら、事業を展開するなかで、当社グループが提供するサービスの不備、情報漏洩等により、何かしらの問題が生じた場合等、これらに起因して偶発的に発生する訴訟等やそれに至らない請求等を受ける可能性があります。その場合、当該訴訟等に対する防御の為に費用と時間を要する可能性があるほか、当社グループの社会的信用が毀損され、また、損害賠償の金額、訴訟等の内容及び結果によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 税務上の繰越欠損金について(発生可能性:中、影響度:中)
2025年6月期末において、当社グループに税務上の繰越欠損金が存在しております。当社の経営成績が順調に推移することにより、繰越欠損金が解消した場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が計上されることとなり、キャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営成績等の状況の概要
当社グループは、スモールビジネス(注1)向けのクラウド会計ソフトとクラウド人事労務ソフトのTAM(注2)について、合計で約1.6兆円(注3)と推計しております。一方、財務関連ソフトウェアを利用する従業員1,000人未満の中小企業及び個人事業主におけるクラウドソリューションへの支出額比率は48.4%であり(注4)、クラウドERP市場の拡大ポテンシャルは高いと認識しております。当社グループは「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに掲げ、「だれもが自由に経営できる統合型経営プラットフォーム。」の実現を目指してサービスの開発及び提供をしております。
当連結会計年度において、当社グループは、主要サービスである「freee会計」及び「freee人事労務」を中心に機能改善を目的とした開発投資を実施し、会計事務所経由での新規顧客獲得の推進、及び、既存の顧客基盤を活用したクロスセル販売の促進を行いました。また、法人向け創業融資サポートのコンサルティング事業を目的とした「freee創業融資サポート」を提供開始したほか、M&Aを活用してクラウド連結会計ソフト「結/YUI」やネット予約サービスの「tol」を取得し、プロダクト拡充を進めました。さらには、主に営業活動でのAI活用により生産性向上を実現し、Forbes JAPAN NEW SALES OF THE YEAR 2025で「AIトランスフォーメーション賞」を受賞するに至りました。
このような取り組みの結果、当連結会計年度末におけるプラットフォーム事業(注5)のARR(注6)は前連結会計年度末比31.8%増の34,393百万円、有料課金ユーザー企業数(注7)は同13.9%増の606,533件、ARPU(注8)は同15.8%増の56,704円、当連結会計年度における同事業の売上高は前連結会計年度比30.8%増の33,270百万円、調整後営業利益(注9)は1,885百万円(前連結会計年度は調整後営業損失7,562百万円)となりました。
以上の結果、当連結会計年度における売上高は前連結会計年度比30.8%増の33,270百万円、調整後営業利益は1,885百万円(前連結会計年度は調整後営業損失7,562百万円)、営業利益は610百万円(同営業損失8,386百万円)、経常利益は412百万円(同経常損失8,638百万円)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,370百万円(同親会社株主に帰属する当期純損失10,150百万円)となりました。
プラットフォーム事業のARR、有料課金ユーザー企業数及びARPU推移
(注) 1.「スモールビジネス」とは、個人事業主と従業員が1,000名以下の法人を指す
2.TAM:Total Addressable Marketの略称。当社グループが想定する最大の市場規模を意味する用語であり、当社グループが本書提出日現在で営む事業に係る客観的な市場規模を示す目的で算出されたものではない。各プロダクトのTAMは、一定の前提の下、外部統計資料をはじめ、プロダクトラインナップ拡充やプラン改定等の当社ビジネスの取り組み状況も踏まえ、国内における全潜在ユーザー企業において各プロダクトが導入された場合の年間支出総金額を当社グループが推計したものであり、その正確性にはかかる統計資料や推計に固有の限界があるため、実際の市場規模はかかる推計値と異なる可能性がある
3.国内における当社グループの全潜在ユーザー企業において「freee会計」及び「freee人事労務」が導入された場合の全潜在ユーザー企業による年間支出総金額。全潜在ユーザー企業は、個人事業主と従業員が1,000名未満の法人の合計。(「freee会計」及び「freee人事労務」の全潜在ユーザー企業数(国税庁「令和5年申告所得税」、総務省統計局「令和3年経済センサス 活動調査」) × 従業員規模別の「freee会計」及び「freee人事労務」の想定年間課金額)
4.International Data Corporation(IDC)「Worldwide Software and Public Cloud Services Spending Guide_2025V2」
5.スモールビジネス向けに展開するクラウドERPの提供や金融サービス等から構成される事業。2022年6月期においては、当社グループの事業全体から、当時連結子会社であった株式会社サイトビジットが提供していた「資格スクエア」事業(2021年12月に売却)を除いたもの
6.ARR:Annual Recurring Revenueの略称。各期末月のMRR(Monthly Recurring Revenue)を12倍して算出。MRR:Monthly Recurring Revenueの略称。対象月の月末時点における継続課金ユーザー企業に係る月額料金の合計額(一時収益は含まない)
7.当社グループのサービスを利用する個人事業主と法人の双方を指す
8.ARPU: Average Revenue Per Userの略称。1有料課金ユーザー企業当たりの平均単価。各四半期末時点における合計ARRを有料課金ユーザー企業数で除して算出
9.調整後営業利益=営業利益+株式報酬費用+M&Aにより生じた無形資産の償却費用+その他一時費用。なお、調整後営業利益については有限責任 あずさ監査法人による監査又はレビューを受けておりません
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末比12,642百万円増加の52,595百万円となりました。これは主に、現金及び預金が4,038百万円、ソフトウェアが2,547百万円、立替金が1,693百万円増加したことによるものです。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末比9,931百万円増加の32,932百万円となりました。これは主に、短期借入金が4,900百万円、前受収益が3,308百万円それぞれ増加したことによるものです。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末比2,710百万円増加の19,663百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上1,370百万円、新株の発行1,273百万円によるものです。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、35,789百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により獲得した資金は3,661百万円となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益416百万円及び前受収益の増加額3,276百万円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は4,601百万円となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出3,832百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により獲得した資金は4,977百万円となりました。これは主に、短期借入金の純増額4,900百万円及び株式の発行による収入97百万円によるものです。
当社グループが営む事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
b. 受注実績
当社グループが営む事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載に馴染まないため、当該記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績は前連結会計年度比30.8%増の33,270百万円となりました。なお、当社グループは、当社と連結子会社5社及び持分法適用関連会社1社の合計7社で構成されておりますが、プラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。また、総販売実績に対する販売実績の割合が100分の10以上の相手先が存在しないため、主な相手先別の販売実績等の記載は省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析は、以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般的に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、見積りが必要な事項につきましては、一定の会計基準の範囲内にて合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
なお、当社グループの連結財務諸表の作成に際して採用している重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(売上高)
売上高は33,270百万円となりました。これは「freee会計」及び「freee人事労務」の有料課金ユーザー企業数の増加、ARPUの上昇によるARRの拡大を主因とした売上高の増加によるものであります。
(売上原価、売上総利益)
売上原価は5,909百万円となりました。これは主に、サービスの利用ユーザーの増加に伴う、サーバーに係る
費用やカスタマーサポートに係る費用の増加によるものであります。この結果、売上総利益は27,361百万円(前連結会計年度は20,991百万円)となりました。
(調整後販売費及び一般管理費、調整後営業利益(注1))
調整後販売費及び一般管理費は25,475百万円となりました。当連結会計年度においては、中長期成長戦略に伴い人件費、マーケティング費用への投資を継続しながらも、獲得生産性の向上やソフトウェアの資産計上の再開により、販売費及び一般管理費が減少しました。この結果、調整後営業利益は1,885百万円(前連結会計年度は7,562百万円の損失)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
営業外収益は28百万円となりました。営業外費用は226百万円となり、主な内容は支払利息及び譲渡制限付株式報酬償却損であります。この結果、経常利益は412百万円(前連結会計年度は8,638百万円の損失)となりました。
(特別利益、特別損失、親会社株主に帰属する当期純利益)
特別利益は32百万円となり、主な内容は固定資産売却益であります。特別損失は28百万円となり、主な内容は投資有価証券評価損であります。以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は1,370百万円(前連結会計年度は10,150百万円の損失)となりました。
(単位:百万円)
(注)1.調整後営業利益=営業利益+株式報酬費用+M&Aにより生じた無形資産の償却費用+その他一時費用。なお、調整後営業利益及び調整後販売費及び一般管理費については有限責任 あずさ監査法人による監査又はレビューを受けておりません
2.Research and Developmentの略称。研究開発に係るエンジニアの人件費や関連する経費及び共通費等の
合計
3.Sales and Marketingの略称。販売促進に係る広告宣伝費やセールス人員の人件費や関連する経費及び共通費等の合計
4.General and Administrativeの略称。コーポレート部門の人件費や関連する経費及び共通費等の合計
当連結会計年度の財政状態の分析については、前記「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載のとおりであります。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、前記「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループにおける主な資金需要は、当社グループの業容拡大を企図した、M&Aや戦略的投融資のほか、研究開発活動や営業活動にかかる人件費や広告宣伝費です。これらの資金需要に対しては、主に自己資金を充当することを基本としております。また、クレジットカード事業においては、運転資金の効率的な調達を行うため当座貸越契約等を締結しております。
当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社は、2024年10月7日の取締役会の書面決議において、アポロ株式会社の全株式を取得し同社を完全子会社化することを決議し、2024年10月21日付で実施いたしました。また、2025年1月21日開催の取締役会において、株式会社YUIの全株式を取得し同社を完全子会社化すること、及び同社を吸収合併することを決議し、2025年1月31日付で完全子会社化を、2025年3月16日付で吸収合併を実施いたしました。また、2025年4月18日開催の取締役会において、当社の完全子会社であるアポロ株式会社を吸収合併することを決議し、2025年7月1日付で実施いたしました。
詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載の通りです。
当社グループは、スモールビジネス向けクラウドERPとしての価値をさらに高めるべく、プロダクトへのAI導入をはじめとする研究開発活動に注力した結果、当連結会計年度の研究開発費は
今後は、AIコーディング等も活用しながら効率的な研究開発活動を推進し、継続的なプロダクト価値の向上に取り組んでまいります。