第一部 【企業情報】

 

第1 【企業の概況】

 

1 【主要な経営指標等の推移】

(1) 連結経営指標等

回次

第9期

第10期

第11期

第12期

第13期

決算年月

2021年6月

2022年6月

2023年6月

2024年6月

2025年6月

売上高

(千円)

10,258,082

14,380,373

19,219,994

25,430,756

33,270,601

経常利益又は経常損失(△)

(千円)

2,719,141

3,085,882

7,982,411

8,638,178

412,709

親会社株主に帰属する当期純利益又は
親会社株主に帰属する当期純損失(△)

(千円)

2,756,177

11,609,024

12,338,435

10,150,671

1,370,024

包括利益

(千円)

2,758,262

11,598,196

12,197,227

10,213,896

1,346,781

純資産額

(千円)

46,871,624

36,428,622

27,059,061

16,952,345

19,663,283

総資産額

(千円)

55,286,315

47,413,069

42,786,885

39,953,073

52,595,683

1株当たり純資産額

(円)

849.99

636.68

444.66

286.47

329.82

1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失(△)

(円)

54.88

208.22

215.64

174.43

23.28

潜在株式調整後
1株当たり当期純利益

(円)

23.10

自己資本比率

(%)

84.2

76.1

60.1

42.0

37.1

自己資本利益率

(%)

7.6

株価収益率

(倍)

165.2

営業活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

192,533

1,069,658

4,753,626

6,767,571

3,661,980

投資活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

3,180,839

4,483,968

1,935,418

1,088,016

4,601,221

財務活動による
キャッシュ・フロー

(千円)

35,380,307

451,989

543,864

3,705,277

4,977,930

現金及び現金同等物
の期末残高

(千円)

47,143,365

42,046,956

35,905,852

31,750,897

35,789,632

従業員数
〔外、平均臨時雇用者数〕

(名)

656

139

916

158

1,299

190

1,722

202

1,901

156

 

(注) 1.第9期、第10期、第11期及び第12期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、1株当たり当期純損失であるため、記載しておりません。

2.第9期、第10期、第11期及び第12期の自己資本利益率については親会社株主に帰属する当期純損失が計上されているため、記載しておりません。

3.第9期、第10期、第11期及び第12期の株価収益率については1株当たり当期純損失であるため、記載しておりません。

4.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数は年間の平均人員を〔 〕内に外数で記載しております。

5.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第10期の期首から適用しており、第10期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

 

(2) 提出会社の経営指標等

 

回次

第9期

第10期

第11期

第12期

第13期

決算年月

2021年6月

2022年6月

2023年6月

2024年6月

2025年6月

売上高

(千円)

10,300,835

13,517,521

18,209,878

24,257,095

33,186,272

経常利益又は経常損失(△)

(千円)

2,540,749

1,666,202

7,251,610

8,156,615

476,278

当期純利益又は当期純損失(△)

(千円)

2,884,333

11,527,826

12,324,481

10,427,500

1,440,766

資本金

(千円)

24,151,096

24,724,300

25,640,623

26,348,152

27,043,623

発行済株式総数

(株)

54,778,125

56,695,564

57,875,116

58,600,020

59,221,680

純資産額

(千円)

46,916,007

36,506,510

26,085,198

16,944,961

19,726,596

総資産額

(千円)

53,896,327

46,480,433

41,428,118

37,206,251

52,643,840

1株当たり純資産額

(円)

850.80

639.04

446.99

286.35

330.89

1株当たり配当額

(1株当たり中間配当額)

(円)

(-)

(-)

(-)

(-)

(-)

1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失

(△)

(円)

57.43

206.76

215.40

179.19

24.48

潜在株式調整後
1株当たり当期純利益

(円)

24.29

自己資本比率

(%)

86.5

77.9

62.4

45.1

37.2

自己資本利益率

(%)

7.9

株価収益率

(倍)

157.1

配当性向

(%)

従業員数
〔外、平均臨時雇用者数〕

(名)

572

131

721

151

1,208

180

1,687

202

1,851

156

株主総利回り

(%)

209.0

67.1

66.6

49.6

78.7

(比較指標 : TOPIX配当込み)

(%)

(126.9)

(124.7)

(157.8)

(198.2)

(206.3)

最高株価

(円)

12,750

10,160

4,250

4,020

4,275

最低株価

(円)

4,700

2,755

2,450

2,190

2,050

 

(注) 1.第9期、第10期、11期及び第12期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、1株当たり当期純損失であるため、記載しておりません。

2.第9期、第10期、11期及び第12期の自己資本利益率については、当期純損失を計上しているため記載しておりません。

3.第9期、第10期、11期及び第12期の株価収益率については、1株当たり当期純損失が計上されているため記載しておりません。

4.1株当たり配当額及び配当性向については、配当を実施していないため記載しておりません。

5.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数は年間の平均人員を〔 〕内に外数で記載しております。

6. 最高株価及び最低株価は、東京証券取引所マザーズにおける株価であり、2022年4月4日以降は同取引所グロース市場における株価を記載しております。

7.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第10期の期首から適用しており、第10期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

 

 

 

2 【沿革】

 

年月

概要

2012年7月

東京都港区にCFO株式会社(現・フリー株式会社)を資本金100万円で設立

2013年3月

「クラウド会計ソフトfreee(現・freee会計)」をリリース

2013年7月

商号をCFO株式会社からフリー株式会社に変更

2014年2月

「クラウド会計ソフトfreee iOS版(現・freee会計iOS版)」をリリース

2014年4月

「クラウド会計ソフトfreee Android版(現・freee会計Android版)」をリリース

2014年10月

「クラウド給与計算ソフトfreee(現・freee人事労務)」をリリース

2015年5月

e-gov API(注)を利用した日本初の労働保険申告機能をリリース

2015年6月

「会社設立freee(現・freee会社設立)」をリリース

2015年9月

「マイナンバー管理freee(現・freeeマイナンバー管理)」をリリース

2015年12月

金融機関向けプロダクトをリリース

2016年6月

AI研究に特化したスモールビジネスAIラボを創設

2016年10月

「開業freee(現・freee開業)」をリリース

2016年10月

株式会社みずほ銀行とAPI連携(メガバンクとのAPI連携は国内初)

2016年10月

「申告freee(現・freee申告)」をリリース

2017年3月

「クラウド会計ソフトfreee(現・freee会計)」において、上場会社(金融商品取引法監査)にも対応したエンタープライズプランをリリース

2017年7月

事業用クレジットカード「freeeカード」を開発

2017年8月

「クラウド給与計算ソフトfreee」をリブランドし、「人事労務freee(現・freee人事労務)」をリリース

2018年10月

子会社フリーファイナンスラボ株式会社を設立

2019年1月

アプリケーションプラットフォーム「freeeアプリストア」をリリース

2019年12月

東京証券取引所マザーズ(現・グロース市場)に上場

2020年4月

「プロジェクト管理freee(現・freee工数管理)」をリリース

2020年12月

「freeeスマート受発注(現・freee受発注)」をリリース

2021年4月

NINJA SIGN(現・freeeサイン)を提供する株式会社サイトビジット(吸収合併時・フリーサイン株式会社)を子会社化

2021年7月

Likha-iT Inc.を完全子会社化

2021年11月

「freee勤怠管理Plus」をリリース

2021年12月

「freee経費精算」をリリース

2022年1月

「freeeカード Unlimited」をリリース

2022年6月

Mikatus株式会社を完全子会社化

2022年9月

Mikatus株式会社を吸収合併、「freee登記」をリリース

2022年10月

「freee許認可」をリリース

2022年11月

「freee販売」をリリース

2022年12月

「freee請求書」をリリース

2023年1月

sweeep株式会社を完全子会社化

2023年6月

Why株式会社を完全子会社化

2023年7月

Why株式会社を吸収合併

2023年10月

「freee人事労務 健康管理」をリリース

2023年12月

エン・ジャパン株式会社のフリーランス管理ツール「pasture」事業(現・freee業務委託管理)を会社分割により事業承継

2024年1月

sweeep株式会社を吸収合併

2024年6月

フリーサイン株式会社を完全子会社化

2024年7月

フリーサイン株式会社を吸収合併

2024年7月

フリーファイナンスラボ株式会社を吸収合併

2024年10月

アポロ株式会社を完全子会社化

2024年11月

子会社フリー創業融資サポート株式会社を設立

2025年1月

株式会社YUIを完全子会社化

2025年2月

「freee予約」をリリース

2025年3月

株式会社YUIを吸収合併

 

(注)API: Application Programming Interfaceの略称。ソフトウェアの一部を公開することで、他のソフトウェアと機能の共有を可能にするインターフェースを指す。

 

3 【事業の内容】

(1) ミッション

当社グループは「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションのもと、「だれもが自由に経営できる統合型経営プラットフォーム」の実現を目指し、個人事業主及び従業員1,000名以下の法人に対してサービスの開発及び提供をしております。

大胆に、スピード感をもってアイデアを具現化することができるスモールビジネスは、様々なイノベーションを生むと同時に、大企業を刺激して世の中全体に新たなムーブメントを起こすことができる存在だと考えております。

一方、日本全体の労働生産性は主要先進7ヶ国中最下位(注1)であり、なかでも中小企業の従業員一人当たり付加価値額は大企業の半分未満(注2)と、スモールビジネスの生産性は低い状況にあります。

当社グループは、AIを始めとする先進的なテクノロジーを用いてスモールビジネスにクラウドERPサービス(注3、4)を提供し、スモールビジネスの生産性向上と経営改善を支援してまいりました。

当社グループは、データとテクノロジーの活用が、スモールビジネスが更なる成長を遂げる鍵であると捉え、スモールビジネスこそがデータとテクノロジーの最先端を活用できる世界を追求することで、より良い社会を実現してまいります。

(注) 1.公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2024」。主要先進7ヶ国(米国、ドイツ、カナダ、フランス、イタリア、英国、日本)における1人当たり労働生産性の比較において日本が最下位。

2.中小企業庁「中小企業白書(2025年版)」。従業員一人当たり付加価値額の企業規模別の比較において、大企業(資本金10億円以上)は約1,588万円であるのに対し、中規模企業(資本金1千万円以上1億円未満)は約578万円、小規模企業(資本金1千万円未満)は約503万円。

3.クラウドサービス:ソフトウェアやハードウェアを所有することなく、ユーザーがインターネットを経由してITシステムにアクセスを行えるサービス。

4.ERP:Enterprise Resources Planningの略称。日本語では、企業経営において点在するあらゆる情報を一箇所に集め、一元管理を行うシステムを指して一般的に「ERP」「ERPパッケージ」と呼ばれる。

 

(2) サービス概要

当社グループでは、スモールビジネスのバックオフィスの生産性向上に寄与するSaaS(注1)サービスを開発・提供してまいりました。具体的には、2013年に「freee会計」を、2014年に「freee人事労務」をリリースしました。その後もラインナップを拡充し、2016年に「freee申告」を、2020年に「freee工数管理」を、2021年に「freee勤怠管理Plus」及び「freee経費精算」を、2022年に「freeeカード Unlimited」及び「freee販売」をリリースしました。

事業領域拡大に向けたM&Aにも積極的に取り組んでおります。2021年には、株式会社サイトビジット(注2)を子会社化し、電子契約サービス「NINJA SIGN(現・freeeサイン)」の提供を開始しました。2022年には、Mikatus株式会社を完全子会社化及び吸収合併し、税理士事務所向け及びその顧問先に電子申告ソフト「A-SaaS(エーサース)」の提供を開始しました。2023年には、sweeep株式会社を子会社化(注3)し、請求書の受取・仕訳・振込・保管を自動化するサービス「sweeep(現・freee支出管理 受取請求書)」の提供を開始したほか、Why株式会社を完全子会社化及び吸収合併し、企業の情報システム部門向けの作業自動化ツール「Bundle」の提供を開始しました。さらに同年、フリーランス管理ツールの「pasture」事業をエン・ジャパン株式会社より承継し、「freee業務委託管理」の提供を開始しました。2024年には、アポロ株式会社を完全子会社化し、翌年より「freee予約」の提供を開始しました。2025年には、株式会社YUIを完全子会社化及び吸収合併し、「freee会計」の連結会計機能を強化しました。

なお、当社グループは、当社と連結子会社5社及び持分法適用関連会社1社の合計7社(注4)で構成されておりますが、プラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

(注) 1.SaaS: Software as a Serviceの略称。ユーザー側のコンピューターにソフトウェアをインストールするの ではなく、ネットワーク経由でソフトウェアを利用する形態のサービス。

2.2022年8月に株式会社サイトビジットの社名をフリーサイン株式会社に変更。2024年6月にフリーサイン株式会社を完全子会社化、2024年7月にフリーサイン株式会社を吸収合併。

3.2024年1月にsweeep株式会社を吸収合併。

4.当事業年度末時点。

 

 

(3) 統合型クラウド会計ソフト・人事労務ソフトを提供する「freee」が選ばれる理由

当社グループが提供するサービスは、資本、人材に限りのあるスモールビジネスにおける利用を前提に設計・提供しており、独自性の高い統合型クラウド会計ソフト・人事労務ソフトとして、下記の特長がユーザー企業(注)に支持されています。

(注)当社グループのサービスを利用する個人事業主と法人の双方を指す。

 

① カンタン、自動化

一般的な会計ソフトは、すべての取引を複式簿記形式の仕訳として手動で入力する必要があり、多くの手間を要するという課題があります。「freee会計」においては、例えばクレジットカードや銀行の口座との同期(データ連携を指し、以下、「同期」という。)を行うことで、金融機関のトランザクションデータを自動的にサービス上に取り込み、AIにより自動で仕訳を行うことができます。これにより、ユーザー企業は手作業や手入力にかけてきた時間と工数を削減し、生産性を向上させることが可能です。

また「freee会計」は、簿記の知識がない人でも直感的に使用可能なユーザー・インターフェイスの提供により、専門人材の確保が容易でないスモールビジネスが自社で財務会計及び管理会計を実施することを可能にしております。一方で、従来の会計ソフトで一般的な複式簿記形式の入力に対応したインターフェースも提供しているため、会計士をはじめ高い専門性を有するユーザーのニーズにも対応しております。

さらに当社グループでは、会計ソフト業界において早期よりモバイル対応の開発を行ってまいりました。「freee会計」のモバイルアプリは、直感的に操作しやすいユーザー・インターフェイスを有し、簡単かつ効率的に業務を行うことができます。その結果、このモバイルアプリは、9万件超のユーザー評価をいただくなど、多くのユーザーに利用頂いていることに加えて、5段階評価で平均4.5の高評価(注)を獲得しております。

また、スモールビジネスにおいて、会計業務に次いで大きな負担となっているのが給与計算や勤怠管理等の人事労務業務です。人事労務の業務領域では、社会保険や源泉所得税などの専門的知識が必要である上に、勤怠情報や従業員の扶養状況といった詳細情報の把握や、様々な行政手続を遅滞なく正確に実施することが必要となります。

「freee人事労務」では、従業員が必要な情報を登録し、勤怠をつけるだけで、会社の給与計算やそれに付随する申告書類の作成などを自動化することができるため、専門的知識がなくても利用可能です。

(注)Apple社が運営するApp Storeにて「freee会計」のiPhoneアプリが5段階評価で平均4.5のスコアを獲得。ユーザー評価数は9万件超(いずれも2025年8月末時点)。

 

② バックオフィスオートメーション

一般的な単機能型会計ソフトが担う領域は経理業務全体の一部である記帳処理に留まり、上流工程である業務は別のソフトウェアやソリューションを使用する必要があります。例えば、請求書発行や入金消込といった販売管理業務や、購買申請や支払いといった仕入業務では、会計ソフトとは異なるソフトウェアや紙・印鑑などを使用したオペレーションが用いられてきたため、各業務が分断された非効率な業務構造となっています。加えて、同一の取引に係る情報について、会計ソフトへの転記作業が発生し、さらに手入力ミスを防止するための確認作業を要するという課題があります。

「freee会計」は、スモールビジネス向け統合型会計ソフトであり、請求書機能やワークフロー機能(注)を同一のソフトウェア上で提供しているユニークな設計を特長としており、経理業務の枠を超えたバックオフィス全体の効率化に寄与します。例えば、「freee会計」上にて作成した請求書の情報は、売掛金として自動で帳簿に登録され、かつ債権管理台帳にも登録されます。その債権情報と、銀行のオンライン口座の入金情報との連携により、自動的に債権の消込が行われます。一方、仕入取引又は経費精算の場合においても、受領した請求書をスキャンして取り込むと、買掛金や未払金として自動で会計帳簿及び債務管理台帳に登録されます。加えて、登録された債務は「freee会計」の中から一括で振込指示を行うことができ、債務の消込も自動的に行われます。

このように、統合型会計ソフトである「freee会計」上で上流工程にあたる業務を行うことで自動的に会計帳簿が作成されるため、経理業務自体が大幅に効率化されます。

同様に、人事労務の領域においても、従来は、従業員基礎情報、勤怠管理、給与計算、保険・行政手続、マイナンバー等の人事関連の定型業務に係る情報のマスタ(データベース)が別個のソフトウェアに散逸し、マスタ間の転記及び整合性担保に手間とコストが生じているケースが見られました。

「freee人事労務」も統合型ソフトとしての特長を有しており、従業員基礎情報の構築から給与計算及び行政手続等に至るまでのデータを一元管理することで、人事労務に係る定型業務を単一のソフトウェア上で完結できます。これにより、人事労務担当者の負荷を軽減するとともに、従来の転記作業に伴うミスを抑制でき、人事労務業務の大幅な効率化に寄与します。

(注)経費精算、支払依頼、各種稟議など、各種業務フローに係る申請・承認を行う機能。

 

③ 経営者の意思決定をナビゲート

一般的な会計ソフトは、税務を中心とした制度会計向けの財務諸表作成とそのための記帳を主な目的として利用されています。スモールビジネスにおける経理業務は、会計ソフトだけでなく、様々なソフトウェアや紙と印鑑によるオペレーションの組み合わせにより行われていることが多く、販売や仕入等の取引発生から会計処理の完了までのリードタイムは長期化しています。また、様々なソフトウェアやアナログ手法の組み合わせによって経理業務が行われていることで、取引の発生から財務諸表までのデータは断絶されています。そのため、従来の会計ソフトは、経営指標のモニタリングや経営分析を目的に利用することが困難です。

当社グループの「freee会計」は統合型会計ソフトであるため、上流工程と会計帳簿を一体で扱うユニークな設計を有しており、リアルタイムに経営状況が記録され可視化されます。また、財務情報のみならず、財務諸表や各種レポートから、上流工程業務の証憑、取引先、部門等の情報を一元化して可視化し分析することができます。例えば「予算・実績管理」機能を用いることで、予算と実績の差異について、財務諸表から個々の取引情報や証憑まで遡って分析することができます。

人事労務ソフトの領域においても、従来は、従業員情報及び勤怠情報等のデータが別個のソフトウェアに散逸し、意思決定に有用なデータをリアルタイムで把握することが困難な状況が珍しくありませんでした。

当社グループの「freee人事労務」は統合型人事労務ソフトであり、人事労務に係る情報を単一のソフトウェアに集約することが可能です。これにより、適時に情報を把握することが可能となるほか、「freee会計」の各種機能と連携することでより高度な分析を実現し経営の意思決定をサポートします。

 

④ 組織全体での利用による効率化と内部統制整備

一般的な会計ソフトは、経理業務に携わる従業員のみがライセンスを有して使うことが想定されています。

「freee会計」は、上述のワークフロー機能の提供を通じて、経理業務の枠組みを超えた企業のあらゆる事業活動において全従業員が活用することが可能な設計となっております。特に中堅規模以上の企業において、全従業員が利用することで「カンタン、自動化」「オペレーション効率化」の更なる追求につながる他、ワークフロー機能が有する承認プロセスの証跡を活用することで内部統制の整備にも貢献します。

また、「freee人事労務」と併せて利用することで、人事データ及び組織構造をリアルタイムにワークフローや経営分析に反映し、一層の業務効率化と高度な経営の可視化の両立を図ることが可能となります。

 

⑤ パブリックAPI(注1)による拡張性

従来のスモールビジネスでは、その企業特有の業務プロセスを自動化するために、独自のシステムを開発するしかありませんでした。しかし、独自のシステム開発は多額な開発コストとメンテナンスコストがかかり、IT投資の体力が限られるスモールビジネスにとって、大きな負担になっていました。また、そもそも独自のシステム開発自体が難しい規模の企業においては、市販のソフトウェアにアナログのプロセスを加えて補う運用がなされてきました。

このように自社開発された独自システムや、市販のソフトウェアと別のソフトウェア間でのデータ連携も容易ではなく、システム間のデータ連携はファイルの取り込み等の手作業によってなされ、工数が増大する上、転記ミス等の原因にもなっていました。

当社グループは、2013年に日本国内の会計ソフト業界では初めてパブリックAPIを公開して以来、クラウドとAPIを活用したオープン・エコシステム(注2)の構築を進めております。パブリックAPIの公開により、「誰でも、自由に」当社グループのサービスとデータ連携を行うためのアプリケーション開発を行うことができます。

そのため、スモールビジネス向けの業務ソフトウェアを提供する企業が、当社グループのサービスとの連携機能を自発的に開発することが容易になります。このような他社製品との連携機能が多く提供されることにより、スモールビジネスが社内業務のための独自のシステムやソフトウェアを開発する負担を大幅に削減することができます。

また、もし独自要件を追加したい場合でも、パブリックAPIを活用すれば、ユーザー企業が自社の業務プロセスに合わせて、カスタマイズ開発を従来より簡単に行うことができます。

2019年1月には「freeeアプリストア」をリリースしました。freeeのユーザー企業は、必要な業務カテゴリーごとにfreeeと連携可能なソフトウェアを検索することができ、数回のクリックで簡単にfreeeと連携させることができます。業務ソフトウェアを提供する企業にとっては、当社グループの顧客基盤にアクセスできる「freeeアプリストア」への掲載は、魅力的な販促手段となりえます。

(注) 1.組織内部のみでの利用を想定したAPIをプライベートAPIと呼び、他方で、組織外の主体にも利用を認めるものをオープンAPIと呼ぶ。オープンAPIの中でも、特定の提携企業のみでなく、幅広い外部企業が利用可能なものをパブリックAPIと呼ぶ。

2.複数の企業同士が非排他的に提携することで、複数の企業が提供するサービスが共存共栄できる生態系のような環境を指す。

 


以上の「選ばれる理由」を背景に、有料課金ユーザー企業数(注1)及びARPU(注2)の双方が伸長した結果、当社グループのARR(注3)は堅調に成長し、2025年6月期末には34,393百万円(うち法人26,701百万円、個人事業主7,692百万円)に到達するなど、事業は順調に拡大しております。

(注)1.当社グループのサービスを利用する個人事業主と法人の双方を指す。

2.ARPU: Average Revenue Per Userの略称。1有料課金ユーザー企業当たりの平均単価。各期末時点における合計ARRを有料課金ユーザー企業数で除して算出。

3.ARR:Annual Recurring Revenueの略称。各期末月のMRR(Monthly Recurring Revenue)を12倍して算出。MRR:Monthly Recurring Revenueの略称。対象月の月末時点における継続課金ユーザー企業に係る月額料金の合計額(一時収益は含まない)。

 

 

(4) サービスラインナップ

①「freee会計」

個人事業主及び法人向けに提供している統合型クラウド会計ソフトです。

銀行口座やクレジットカード等との連携、請求書発行から入金管理、各種稟議や支払依頼など日々行われる経理の上流工程業務との統合により、手入力によるミスを防ぎ、経理作業にかかる負担を大幅に削減できます。同時に、上流工程業務まで含めた日々のデータを活かして、リアルタイムでの経営指標のモニタリングや具体的な打ち手に繋がる詳細な経営分析を可能としております。

さらに、従業員に個別アカウントを付与し、ワークフロー機能を利用することで、更なる業務の効率化と内部統制の整備にも寄与します。なお、ワークフロー機能は、承認プロセスの証跡を有していることから、上場企業に求められる内部統制報告制度に対応しており、上場準備企業及び上場企業における利用も非常に効果的です。なお、個人事業主向けプランにおいては、所得税の確定申告まで完結できます。

また、「freee経費精算」や「freee経理」等、「freee会計」から特定の機能を切り出したプロダクトも提供することで段階的なソフトウェア導入のニーズにも対応しております。

②「freee人事労務」

法人向けの統合型クラウド人事労務ソフトです。

人事労務業務においては、給与計算、勤怠管理、保険・行政手続、マイナンバー管理等と多岐にわたり、かつ従来は業務ごとに使用するツールが異なるなど、複雑に分断されているという課題がありました。

従業員一人一人が、「freee人事労務」の従業員用アカウントを用いて、個人情報や勤怠情報を入力することにより、給与計算や年末調整の自動化に加えて、労務の諸手続の自動化や従業員マスタとなるデータベースの構築を可能とします。

また「freee会計」と「freee人事労務」を連携することで、「freee人事労務」で計算した給与の情報が「freee会計」に自動で反映されるほか、「freee会計」にて申請・承認された経費精算と給与の支払いを「freee人事労務」経由でまとめて実施することができます。さらに、「freee人事労務」上の従業員マスタにおける役職や組織構造に基づくワークフローを「freee会計」の申請経路として自動で反映させ運用することが可能です。

加えて、幅広いニーズに適した勤怠管理プロダクトである「freee勤怠管理Plus」をリリースし、店舗数や拠点数が多いユーザーや、組織階層が複雑なMidセグメント(注) のユーザーにおけるニーズに対応します。また、人事労務領域の関連分野にも事業を拡大しており、借り上げ社宅制度の導入及び運用のサポートや充実のベネフィットサービスを提供する「freee福利厚生」や、freee人事労務」の従業員マスタとの連携により社員の健康管理を効率化できる「freee人事労務 健康管理」をリリースしました。

(注) 従業員が20名以上1,000名以下の法人を指す。

③「freee販売」

個人事業主及び法人向けに提供している統合型クラウド販売管理ソフトです。

販売管理業務においては、商談の開始から売上の入金等のプロセスが紙や表計算ソフトで管理されることが多く、業務ごとに異なるツールが使用され案件別の工数を正確に把握することが難しいという課題がありました。

「freee販売」では請負型ビジネスにおける商談開始からサービス受注・発注後の納品管理まで、一連の販売管理業務を案件単位で管理することを可能としております。

また「freee販売」は、「freee会計」の取引先マスタや「freee人事労務」の従業員マスタを共通で利用できます。そのため、「freee販売」において新たにマスタを構築することなくスムーズに利用開始でき、またソフトウェア間でのデータの整合性にも優れております。

④「freee申告」

「freee申告」は、会計事務所や小規模法人に提供している、「freee会計」とシームレスに連携したクラウド型税務申告ソフトです。

従来の税務申告ソフトは、会計ソフトとは分断されていたことから、会計ソフトから出力したデータを税務申告ソフトに手入力などで転記する必要があるなど、多大な労力や時間がかかるという課題がありました。

「freee申告」の利用により、これまで分断されていた会計と申告の業務がシームレスに連携し、「freee会計」上の財務情報をもとに税務申告書を自動で作成することができ、更に、作成した申告書の電子申告まで実施することができます。

また、会計事務所は、顧問先とともに「freee会計」及び「freee申告」を利用することで、会計事務所での記帳業務から顧問先の決算申告、経営支援まで、ワンストップでクラウド上で行うことができます。

⑤「freeeサイン」 

「freeeサイン」は、個人事業主及び法人向けに提供している電子契約サービスです。

スモールビジネスにおいては、法務専任者を自社に抱えていないことが多く、担当者が他の業務と兼務しながら契約業務を行うことが一般的であり、本来注力すべき業務に時間を割けないなどの課題がありました。

「freeeサイン」は、法務の知識が浅い方や、業務に時間を割けない方でも、迷わず簡単に利用できるユーザー・インターフェイスを提供しており、契約書のひな形やテンプレートをご利用いただくことで簡単にドラフトを作成いただけます。契約書の新規作成から、社内承認プロセス、電子契約の締結、契約書管理まで、契約業務をカバーしているため、契約業務をワンストップでクラウド上で管理することが可能になります。

金融サービス

スモールビジネスの資金繰り改善を企図した金融サービスとして、「freeeカード」や「freeeカード Unlimited」等を提供しております。

「freeeカード」は、従来クレジットカードを作成することが容易でなかった個人事業主や中小企業に特化した事業用クレジットカードです。経費精算や仕入等をキャッシュレス化することでバックオフィス業務の効率化が可能となります。さらに、法人顧客の資金ニーズに対応すべく、自社の与信モデルを活用した「freeeカード Unlimited」も提供しております。「freeeカード Unlimited」では、「freee会計」のデータを活用した独自審査により最大5億円の利用可能枠を実現しており、ユーザーの事業成長をサポートします。また、クレジットカードの利用明細を自動で「freee会計」に同期させることで経営状況のタイムリーな可視化を可能とします。

以上に述べたプラットフォーム事業を事業系統図によって示すと、次のとおりです。


 

4 【関係会社の状況】

 

名称

住所

資本金
(千円)

主要な事業
の内容

議決権の所有
(又は被所有)
割合(%)

関係内容

(連結子会社)

 

 

 

 

 

フリー創業融資サポート株式会社

東京都品川区

40,000

資金調達の

サポート事業

100.0

従業員の出向

その他4社

(持分法適用関連会社)

 

 

 

 

 

1社

 

(注) 有価証券届出書または有価証券報告書を提出している会社はありません。

 

5 【従業員の状況】

 (1) 連結会社の状況

2025年6月30日現在

従業員数(名)

1,901

156

 

(注) 1.従業員数は就業人員数であり、臨時雇用者数は年間の平均人員を( )内に外数で記載しております。

   2.当社グループは、プラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメントによる情報については、記載を省略しております。

   3.  前事業年度末に比べ従業員が179名増加しております。主な理由は、持続的な事業成長を見据えた採用増加に起因するものです。

 

 

 (2) 提出会社の状況

 

 

 

2025年6月30日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

1,851

156

33.1

2.2

6,884

 

(注)  1.従業員数は就業人員数であり、臨時雇用者数は年間の平均人員を( )内に外数で記載しております。

 2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

 3.当社は、プラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメントによる情報については、記載を省略しております。

 4.前事業年度末に比べ従業員が164名増加しております。主な理由は、持続的な事業成長を見据えた採用増加に起因するものです。

 

(3) 労働組合の状況

労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。

 

 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

   提出会社

当事業年度

管理職に占める
女性労働者の
割合(%)(注1)

男性労働者の
育児休業取得率(%)

(平均取得日数)
(注2)(注3)

労働者の男女の賃金の差異(%)(注1)

全労働者

正規雇用労働者

(注4)

パート・
有期労働者

18.9

88.9

(    104.3日)

71.5

77.5

98.9

 

 

 (注)  1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したも

      のであります。

       2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の

      規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」

     (平成3年労働省令第25号)第71条の6における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

       3.平均取得日数は、子が1歳以降の日数を除いて算出したものであります。
       4.当社グループでは年齢や入社年次等に関わらず、同一の等級や評価で男女間での賃金差異はありません。
       そのため、今回示した男女間賃金差異の要因は、より高い等級の女性割合が低いことであると考えておりま

      す。

      5.連結子会社は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児  休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。