第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 経営の基本方針

当社のミッションは、世界中の人・物にAIを届け、豊かな未来社会に貢献することです。その実現のため、高品質・高価値なユーザ体験を届けることが、当社にとって最優先の事項です。当社の経営は、徹底したユーザ重視を基本方針としています。
 

(2) 目標とする経営指標

リカーリング型売上の成長を最重要指標と定めており、その要因として契約件数や契約の解約率(注1)、AIファンクションのリクエスト数を指標としております。

 

(3) 経営環境及び対処すべき課題

当社が展開する事業と関わりの深い「非IT系の外部委託市場」を例にとると、2016年度は1.66兆円の実績、2017年度は1.7兆円の実績とされており、市場は成長していくと予想されます(市場規模は全て「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場の実態と展望 2018-2019(株式会社矢野経済研究所)」より)。

また、BPO市場に限らず、「国内売上高上位企業のCIO(最高情報責任者)を対象とした郵送によるアンケート調査」(出典:野村総合研究所「ユーザー企業のIT 活用実態調査」2018年5月発表)では、AI技術の導入、または検討をしたい企業は全体の66.9%に上るなど、さらに市場は成長していくと予想されます。

 

当社が事業を展開するAI-OCR市場は、新型コロナウィルス感染症拡大の影響が大きく出始めた当事業年度末においても業務効率化を目指す事業者を中心に導入が進み、今後も市場の成長は持続するものと予測しておりますが、現時点で、新型コロナウィルスが収束していないことから、先行きについては非常に見通しが難しい状況であります。このような環境のもと、当社が対処すべき主な課題は以下の通りと認識しております。

 

① 顧客基盤を拡大する

当社は、製品をユーザへ直接販売しておりますが、パートナーを通じた販売も行っております。既にパートナー販売における契約数の割合が直接販売よりも高く、今後さらにその比率を上げていく方針です。また、セリング型の売上に含まれる初期費用などを低価格化し、導入拡大を図ることで、リカーリング型の売上を拡大させていく方針です。

 

② 組織運営について

販売における組織運営方針:当社はエンタープライズ企業への販売と、パートナー販売のサポートのためにアライアンスにフォーカスします。

カスタマーサポートにおける組織運営方針:カスタマーサポートはパートナーが行う場合があります。当社は、ユーザに伴走して課題解決を行う、カスタマーサクセスにフォーカスします。
 開発における組織運営方針:AIの研究、データサイエンス、データエンジニアリング、ハードウェア、UX(注2)にフォーカスします。

 

③ 良い製品を提供する

当社で提供しているAIは、ユーザが日々の業務で使うほど、さらなる追加学習のためにフィードバックがなされ、精度が向上するという特徴を備えております。その学習部分を担う当社内部の仕組みが「Learning Center」です。

「Learning Center」は、好循環サイクルにおいて、より高精度、高価値なAIを提供し続けるために重要な基幹機能です。これにより当社は、ユーザへより良い製品を提供し続けるための活動を行っていく方針です。

 

 

④ 基礎研究

短期的な技術開発の場では、失敗の許されない状況における開発が主となることが多いため、既存技術のブラッシュアップにしか手を出すことができず、抜本的な技術開発には着手しにくくなります。本質的な次世代技術を開発するためには、その基盤を固める知識・経験が必須であり、将来的に確実に必要となる長期的課題にも積極的に取り組んでいかなければ、世界のAIを牽引するような企業に発展することは望めません。そのため、当社は応用研究だけではなく、基礎研究も行い続けます。

 

⑤ 安く提供する

好循環サイクルにおいて、大規模化による低コスト構造の実現と、AIを動作させるためのハードウェアを自社開発、自社利用することにより、ユーザへより低価格での提供が可能となっています。当社は高品質・高価値なAIを安く提供する方針です。

 

⑥ 早く提供する

当社は、製品を「クラウド」「オンプレミス」などのユーザ環境の違いに関わらず、ユーザがすぐにAIの利用を始められる仕組みの構築を「AI inside Cloud」「AI inside Cube」を通じて進めていく方針です。

 

⑦ 広く提供する

「DX Suite」における「Intelligent OCR」「Multi Form」は、日本語に限定されないアルゴリズムで構築されています。今後は多言語対応を進め、グローバル市場に向けて、国内外の販売パートナーと共に販売を推進していく方針です。

 また、当社のAIは、クラウド環境、オンプレミス環境共にソフトウェアインフラ基盤「AI inside Computing Engine」の上で稼働しております。 このインフラ基盤を、当社の「AI inside Cube」以外のデバイスにも搭載していくことで、ユーザがより幅広いデバイスを対象にAIを配信できるようにしていく方針です。

 

⑧ より多様な製品群を提供する

「Learning Center」は、当社AIの学習部分を担う内部の仕組みですが、好循環サイクルの中で「AI insideが培ってきた研究技術を結集させた転移学習(注3)とAIの設計図を活用して、ユーザ独自のAIを生成できるサービス」として、一部ユーザにアルファ版として提供を始めています。機械学習の専門知識が限られていても、シンプルなGUI(注4)操作で、ユーザのデータに基づいたAIのトレーニング・評価・改善・配信ができます。データサイエンティストであれば、より高度な設計図の編集やスムーズな配信を行えます。

具体的事例としまして、ゴミ処理場での危険物仕分けAIの生成があげられます。ベルトコンベア上を流れるゴミの中から、プラントの故障原因となる物体や、火災の危険性などがある危険物を取り除く作業を機械化するため、様々なゴミとその重なりなどの状況下において仕分け判定を行うAIをユーザが「Learning Center」のGUIを操作するだけで生成しました。

このように、特定の業務を行える高品質・高価値なAIを開発・提供することだけでなく、あらゆる種類の業務に対応できるAIが、ビジネスの現場ニーズに沿って数多く開発される機会を提供することは重要であると考えております。当社は、「Learning Center」により、ユーザが自らAIを「開発者」として生成・利用できる機会を拡大していきます。また、「開発者」が望めば、生成されたAIを「AI inside Computing Engine」を搭載したデバイスに配信できる機会を拡大していきます。このように「開発者」「ユーザ」の双方を拡大していくプラットフォーム戦略をとります。

なお、「AI inside Computing Engine」には、「DX Suite」や「Learning Center」で生成したAI以外のアプリケーションやAIも配信していく方針です。

「Learning Center」は、AI開発・学習のための必須機能を提供しています。そのシンプルな操作の背景では、当社の保有するAIの処理に最適なチップや、スーパーコンピュータが稼働し、高速に学習を行います。さらに、生成されたAIを当社のデータセンター「AI inside Cloud」または「AI inside Cube」を選択して配信し、すぐにAIの利用を始められる仕組みとして構築を進めていく方針です。

 

⑨ 情報管理体制の強化

当社は、顧客企業の業務データや公開前の製品企画情報など多くの機密情報や個人情報等を保有しており、その重要性については十分に認識しております。その保護体制構築に向けて、社内規程の厳格な運用、定期的な社内教育の実施、情報セキュリティマネジメントシステムの構築・維持向上に努めることで、今後も引き続き、情報管理体制の強化を図ってまいります。

 

⑩ 優秀な人材の確保

当社は、今後の事業拡大に伴い、当社の企業理念に共感し高い意欲を持った優秀な人材を継続的に採用していく必要があると考えております。労働市場における知名度の向上を図り採用力の向上に努めるとともに、業務環境や福利厚生の改善により採用した人材の離職率の低減も図ってまいります。

 

(注1) 解約率:既存契約の月額課金額に占める、解約に伴い減少した月額課金額の割合であります。

(注2) UXとは、ユーザ・エクスペリエンスの略で、ユーザが製品・サービスを通じて得られる体験を指します。

(注3) 転移学習とは、ある領域で学習されたモデルを別の領域に適応させる技術です。これにより、少ないデータでモデルを構築することができます。

(注4) GUIとは、グラフィカル・ユーザ・インタフェースの略で、コンピュータを操作するために、画面上のボタンや画像などを選択する事でリアクションを発生させる仕組みです。

 

 

2 【事業等のリスク】

当社は、事業展開上のリスクになる可能性があると考えられる主な要因として、以下の記載事項を認識しております。また、リスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、以下の記載事項及び本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性のあるすべてのリスクを網羅したものではありません。

 

(1) 景気動向及び業界動向の変化ついて

企業を取り巻く環境や労働人口減少に伴う企業経営の効率化などの動きにより当社が事業を展開する市場は今後も拡大すると予想されるものの、企業の景気による影響や各種新技術の発展による影響を受ける可能性があります。当社においては当社が事業を展開する市場が経済情勢や技術革新などにより事業環境が変化した場合には当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 競合について

 当社の事業は、同様のビジネスモデルを有している企業は数社あるものの、製品の特性、その導入実績、保有特許、ノウハウによる技術等、様々な点から他社と比較して優位性を確保できていると認識しておりますが、将来の成長が期待される市場であり、国内外の事業者がこの分野に参入してくる可能性があります。このため先行して事業を推進していくことで、さらに実績を積み上げて市場内での地位を早期に確立してまいります。

 しかしながら、今後において十分な差別化等が図られなかった場合や、新規参入により競争が激化した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 技術革新について

当社の事業に関連するAI技術は、世界的に研究開発が進んでおり、技術革新のスピードが極めて速い分野であります。当社はこうした技術革新に対応できる研究開発活動を推進することで、AIを活用した事業により事業基盤の拡大を図ってまいります。しかしながら、技術革新への対応が遅れる可能性もあり、その場合には当社の競争力が低下することで、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) システムトラブルについて

当社の事業は、PCやコンピュータシステム並びにこれらを結ぶ通信ネットワークに依存しており、これらにトラブルが発生した場合には、業務遂行に障害が生じます。このため当社では、システムトラブルを回避するために、サーバー負荷の分散、サーバーリソース監視、定期バックアップの実施等の手段を講じることでトラブルの防止及び回避に努めております。また、万一の場合に備え、サイバー保険を付保しております。

しかしながら、アクセスの急激な増加等による負荷の拡大や自然災害や事故などにより予期せぬトラブルが発生し、システムトラブルが発生した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社が利用しているクラウドサーバーの稼働にトラブルが生じた場合、当社が提供するサービスの安定稼働に支障が生じ、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 情報セキュリティ及び個人情報等の漏えいについて

当社では、業務上、個人情報その他機密情報を顧客より受領する場合があります。当社におきましては、2016年3月に情報セキュリティマネジメントシステム(JIS Q 27001:2014、ISO/IEC27001:2013)の規格に適合する証明を、また2018年7月にプライバシーマークを取得しており、情報管理の重要性を周知徹底するべく役職員に対し研修等を行い、情報管理の強化を図っております。また、情報セキュリティについては外部からの不正アクセス、コンピュータウィルスの進入防止について、社内のコーポレートサクセスグループを中心にシステム的な対策を講じております。なお、万一の場合に備え、サイバー保険を付保しております。

しかしながら、当社が取り扱う機密情報及び個人情報について、漏えい、改ざんまたは、不正使用等が生じる可能性が完全に排除されているとはいえず、何らかの要因からこれらの問題が発生した場合には、顧客からの損害賠償請求等によりサイバー保険で填補できない損害が生じ、または、信用が失墜する等により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 知的財産権について

当社は、事業運営の際に第三者の知的財産権侵害などが起こらないような管理体制を構築しておりますが、第三者の知的財産権に抵触しているか否かを完全に調査することは極めて困難であります。このため、知的財産権侵害とされた場合には、損害賠償または当該知的財産権の使用に対する対価の支払い等が発生する可能性があり、その際には当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

  (7) 個人情報を含むデータを学習に用いるリスクについて

 当社は、「DX Suite」その他のサービスを提供するにあたり、顧客から取得した個人情報を含むデータを用いて、人工知能の学習を行うことがあります。当社は、個人情報保護法を含む法令を遵守し、また、当該学習に用いることにつき顧客の承諾を取得しておりますが、個人情報の本人など消費者から理解が得られず、当社又は顧客が批判にさらされる可能性があり、そのような場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 法的規制等について

当社は、当社の事業を制限する直接的かつ特有の法的規制は本書提出日時点において存在しないと考えております。しかしながら、今後、当社の事業を直接的に制限する法的規制がなされた場合、また、従来の法的規制の運用に変更がなされた場合には、当社の事業展開は制約を受ける可能性があります。当社としては引き続き法令を遵守した事業運営を行っていくべく、今後も法令遵守体制の強化や社内教育などを行っていく方針ですが、今後当社の事業が新たな法的規制の対象となった場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 訴訟、係争について

当社では、本書提出日現在において業績に影響を及ぼす訴訟や紛争は生じておりません。

しかしながら、今後何らかの事情によって当社に関連する訴訟、紛争が行われる可能性は否定できず、かかる事態となった場合、その経過または結果によっては、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

  (10) 当社設立からの経過年数について

 当社は2015年8月に設立され、本書提出日時点では7期目と若い企業です。優秀な人材を積極的に採用し、社内管理体制の構築、製品・サービスの開発、販売の強化を行ってきました。今後も事業拡大に向けた社内体制の強化、新規サービスの研究及び製品・サービスの拡販に向けた取り組みを強化してまいりますが、何らかの理由によりこれらの取り組みが想定通りに実施されなかった場合には当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 小規模組織であることについて

当社は2021年3月31日現在、従業員102名と小規模な組織であり、業務執行体制もこれに応じたものとなっております。当社は今後の事業拡大に応じて従業員の育成、人員の採用を行うとともに業務執行体制の充実を図っていく方針でありますが、これらの施策が適時適切に進行しなかった場合には当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (12) 人材の確保と育成について

当社が今後更なる成長を成し遂げていくためには、優秀な人材の確保と育成を重要課題の一つであると位置づけております。当社は現在も優秀な人材の採用を進めておりますが、これらの要員を十分に採用できない場合や、採用後の育成が十分に進まなかった場合、あるいは在職中の従業員が退職するなどした場合には、当社の事業拡大の制約となり、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (13) 内部管理体制について

当社は、今後の事業運営及び業容拡大に対応するため、内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しており、今後、事業規模の拡大に合わせて内部管理体制も充実・強化させていく方針であります。しかしながら、事業規模に応じた内部管理体制の整備に遅れが生じた場合は、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (14) 特定人物への依存について

当社の代表取締役社長CEOである渡久地択は、当社の創業者であり、設立以来当社の経営方針や事業戦略の立案やその遂行において重要な役割を担っております。当社は特定の人物に依存しない体制を構築するべく、幹部社員への情報共有や権限の委譲によって同氏に過度に依存しない組織体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により同氏の当社における業務遂行が困難になった場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

  (15) 特定の当社サービスへの依存について

 当社は「すべてのモノにAIを」を目指しており、「DX Suite」、「Learning Center」、「AI inside Cube」等の製品及びサービスを展開しておりますが、主力サービスである「DX Suite」に関する売上高が大半を占めております。そのため、市場環境等の変化により「DX Suite」に関連する売上高が著しく減少した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

  (16) 販売代理店への依存リスクについて

 当社は株式会社エヌ・ティ・ティ・データを販売代理店としたサービス提供を行っており、前事業年度における売上高全体に占める同社の販売比率は10.8%でした。また、当事業年度においては西日本電信電話株式会社の売上高全体に占める同社の販売比率は46.8%となっております。

 当社は顧客基盤を拡大するために代理店を通じた販売を重視しており、代理店販売における契約数の割合を高めていくべく、上記2社及び他の代理店とも協業体制を引き続き推進していく方針です。そのため今後は当社の売上高に占める両社をはじめとした代理店販売の比率は高まることが想定されます。なお、本書提出日現在において、西日本電信電話株式会社による契約の太宗は不更新となる見込ですが、当社と同社間における関係は良好であり、他の販売代理店同様に当社サービスの販売促進に向けた協業を強化していく方針です。

 当社は両社、また他の販売代理店ともパートナーシップ関係を強化していく方針であり、当社としては次年度以降も代理店販売契約の継続を見込んでおりますが、今後何らかの理由により契約の更新がなされない場合や、取引条件の変更、もしくは両社をはじめとした代理店経由の販売が落ち込んだ場合等には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また販売代理店の一形態であるOEM販売については、営業活動及び顧客サポートの実施はOEM先により実施されます。当社が有する販売及び顧客サポートのノウハウは適宜OEM先と共有することで、顧客獲得とその維持につながるように努めてまりますが、OEM先の販売施策により顧客獲得の急激な増減が生じ、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(17) 当社の経営指標について

当社は重要経営指標として、リカーリング型売上を掲げております。リカーリング型売上は継続的に計上されることが期待される収益であり、当社が独自にその定義を設定し、算出した数値を開示しております。

当社は引き続きリカーリング型売上を重要指標として開示していく方針ですが、リカーリング型売上は当社と顧客間の契約件数、解約率等の関連指標の推移により影響を受けます。これらの関連指標も当社が独自に定義・算定しており、事業環境の変化による販売戦略の変更、販売代理店固有の販売施策等により影響されるものであり、結果として当社が開示するリカーリング型売上に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (18) ソフトウェアの開発について

当社ではサービス提供に使用する自社利用のソフトウェア開発に関し、ソフトウェア開発プロジェクトに関する期間や費用の見積り及び将来収益計画について妥当性の確認を行っております。しかしながら、顧客のニーズによる開発途中の要件変更や品質改善要求、開発遅延等により当初計画どおりの開発及びサービス提供がなされなかった場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (19) 配当政策について

当社は、株主に対する利益還元を経営課題と認識しており、内部留保の充実状況及び企業を取り巻く事業環境を勘案し、利益還元政策を決定していく所存であります。

しかしながら、当社は、成長過程にあり内部留保が充実しているとはいえず、創業以来配当を行えておりません。また、現時点では事業の効率化と事業拡大のための投資等に充当し、なお一層の事業拡大を目指すことが、株主に対する最大の利益還元に繋がると考えております。

将来的には、内部留保の充実状況及び企業を取り巻く事業環境を勘案し、利益還元を行うことを検討してまいりますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。

 

 (20) 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

当社は、業績向上に対する意欲向上を目的として、ストック・オプション制度を導入しており、会社法の規定に基づく新株予約権を当社の役員及び従業員に付与しております。本書提出日現在、新株予約権の対象となっている株数は89,450株であり、当社発行済株式総数の3,914,900株に対する潜在株式比率は2.3%に相当しております。これらの新株予約権の行使が行われた場合には、当社の株式価値が希薄化する可能性があります。

 

 (21) М&Aによる影響について

当社は、事業拡大を加速する有効な手段のひとつとして、当社に関連する事業のМ&A戦略を検討していく方針です。М&A実施に関しては、対象企業の財務・法務・事業等について事前にデューデリジェンスを行い、十分にリスクを吟味した上で決定いたしますが、買収後に偶発債務の発生や未認識債務の判明等、事前の調査で把握できなかった問題が生じた場合、また事業の展開等が計画通りに進まない場合、当社の経営成績及び財政に影響を与える可能性があります。

 

 (22) 過年度の経営成績について

当社では創業以来、販売活動に先んじて新製品の開発に投資を継続してきた影響により、「第一部 企業情報 第1 企業の概況 1.主要な経営指標等の推移」に記載のとおり、第1期から第4期において、継続的に損失を計上しております。今後も顧客の業務効率化を実現するサービスの開発を続けてまいりますが、当社が展開する事業領域は持続的に成長しており、売上高の増加に伴い損益も改善し、第5期において黒字化しており、当事業年度においても増益を達成しております。

しかしながら、更なる開発を要するような状況の変化、売上拡大のための先行投資や、当社が期待するほどの売上成長とならない場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(23) ソフトウェアの資産計上に伴う費用化による影響について

当社では、ソフトウェアの開発に係る費用を「研究開発費等に係る会計基準」に従って研究開発費の一部について、適切に資産計上及び減価償却を行っており、無形固定資産(ソフトウェア、ソフトウェア仮勘定の合計)は、2021年3月末時点で136,240千円となっております。今後、研究開発の結果として資産計上されるソフトウェアが増加した場合には、それに伴う減価償却費も増加することとなり、当社の将来の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(24) 減損の可能性について

当社では有価証券を保有しておりますが、時価のある有価証券については株式市場の変動などにより時価が著しく下落した場合には、評価損を計上することとしております。また、当社は事業用の設備やレンタル資産等を固定資産として計上しておりますが、これら資産が期待どおりのキャッシュ・フローを生み出さない状況になる等、その収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなることにより減損処理が必要となる場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (25) 資金使途について

当社株式上場時の公募増資による調達資金の使途につきましては、主に社内サーバの購入費、社内サーバの設置スペース費及びメンテナンス等の各種維持費、AIプラットフォームビジネスを拡大するための優秀な人材の採用費及び人件費等に充当する予定です。

しかしながら、急速に変化する経営環境へ柔軟に対応していくため、投資による期待どおりの効果があげられなくなる可能性や、場合によっては資金使途の変更が生ずる可能性があります。この場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (26) 自然災害に関するリスクについて

大規模な地震等の自然災害や事故など、当社による予測が不可能かつ突発的な事由によって、事業所等が壊滅的な損害を被る可能性があります。このような自然災害に備え、免震性の高いビルへのオフィス移転、従業員安否確認手段の整備、オフィスでの備蓄食料・生活物資の確保、無停電電源装置の確保等に努めておりますが、想定を超える自然災害が発生する場合は、当社の事業活動が制限され、業績に影響を及ぼす可能性があります。当社が直接被災しない場合であっても、外部パートナー等の被災により、間接的に損害を被る場合もあります。

また、災害等の発生によって、電力等の使用制限による社会インフラ能力の低下、個人消費意欲の低下といった副次的な影響により、顧客企業の事業活動の抑制につながる可能性があり、そのような場合は、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

① 財政状態の状況

(資産)

当事業年度末における流動資産は、前事業年度末に比べて2,878,971千円増加し、5,654,495千円となりました。この主な要因は、現金及び預金が2,282,362千円増加したことに加え、売掛金が564,319千円増加したことよるものであります。また、固定資産は、前事業年度末に比べて1,584,076千円増加し、1,816,409千円となりました。この主な要因は、自社サーバー設備やレンタル資産等の有形固定資産131,403千円の増加、無形固定資産135,910千円の増加、関係会社株式1,237,875千円の取得等によるものであります。この結果、総資産は、前事業年度末に比べ4,463,047千円増加し、7,470,904千円となりました。

 

(負債)

事業年度末における流動負債は、前事業年度末に比べて2,571,519千円増加し、3,265,616千円となりました。この主な要因は、短期借入金が1,500,000千円、未払法人税等が617,975千円、未払消費税等が160,889千円、未払金が159,036千円増加したこと、及び前受収益が131,001千円減少したこと等によるものであります。固定負債は、長期前受収益が前事業年度末に比べて6,119千円減少し、1,851千円となりました。この結果、総負債は、前事業年度末に比べて2,565,399千円増加し、3,267,468千円となりました。

 

(純資産)

当事業年度末における純資産合計は、前事業年度末に比べて1,897,648千円増加し、4,203,436千円となりました。これは、主に新株予約権の行使により、資本金及び資本剰余金が99,260千円ずつ増加したこと、当期純利益1,660,567千円を計上したことによるものです。

なお、当事業年度末における自己資本比率は56.3%となり、前事業年度末に比べ、20.4ポイント減少しております。

 

② 経営成績の状況

近年我が国において、少子高齢化や人口減により生産年齢人口が減少する一方、人によるデータ入力に関する外部委託市場は2017年度実績で5,830憶円あり、この市場は今後成長してくと予想されております(市場規模は全て「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場の実態と展望2018-2019(株式会社矢野経済研究所)」より)。企業は労働者の在宅ワーク導入など働き方改革をこれまで以上に意識した事業運営が求められていること、また新内閣におけるデジタル庁の創設に向けた動きから、社会的なデジタルトランスフォーメーション(DX)推進は加速していくものとみられます。

このような市場環境において、当社は、ディープラーニングによる手書き文字認識AIを活用した生産性向上のためのAI-OCRサービス「DX Suite」の提供、また当社の企業理念「世界中の人・物にAIを届け 豊かな未来社会に貢献する」を実現するための製品「Learning Center」の開発を進めてまいりました。その結果、売上高および各段階利益については以下の実績となりました。

 

(売上高)

当事業年度の売上高は4,597,295千円(前年同期比188.9%増)となりました。これは、主に「Intelligent OCR」契約数が前事業年度末に比べて1,873件から10,630件へ増加したこと、「Elastic Sorter」契約数が前事業年度末から比べて418件から669件へと順調に獲得できたことによります。「Intelligent OCR」契約数の前年同期からの大幅な増加は、大口販売パートナーによる「DX Suite」Liteプランの販売促進活動実施によるものであり、同販売促進活動による当期末時点における契約件数は9,284件となっております。また、エッジコンピューティング用ハードウェア「AI inside Cube」の本番導入数については、政府の給付金事業等による一時需要は落ち着いたものの新規受注が増加し、前事業年度末の33台から87台へ伸長した結果、売上高の増加に貢献しました。

売上高のうち、リカーリング型モデル(注1)及びセリング型モデル(注2)の内訳は以下のとおりとなりました。なお、セリング型モデルの売上高が前年同期比67.3%と減少しておりますが、これは当社のリカーリン型モデルの収益を重視するという方針からサービスの料金設計を改訂してきた結果であります。

 

収益モデル

第5期事業年度

(自 2019年4月1日

  至 2020年3月31日)

第6期事業年度

(自 2020年4月1日

  至 2021年3月31日)

売上高(千円)

前年同期比(%)

売上高(千円)

前年同期比(%)

リカーリング型モデル

750,891

770.7

4,031,981

537.0

セリング型モデル

840,563

241.7

565,313

67.3

合計

1,591,454

357.4

4,597,295

288.9

 

(注)1. リカーリング型:顧客が当社のサービスを利用する限り継続的に計上される収益形態を表します。

 2. セリング型:特定の取引毎に計上される収益形態を表します。

 

(売上原価、売上総利益)

当事業年度の売上原価は、301,401千円(前年同期比146.7%増)となりました。主な要因は、サーバ費用108,121千円(前年同期比42.7%増)、人件費・外部委託費が159,879千円(前年同期比308.8%増)が発生したこと等によるものです。これらは、新型コロナウイルス感染症に起因する行政の給付金事業や「DX Suite」の契約数並びに利用の増加に伴い、サービス運用安定化施策の実施の結果増加したものです。この結果、売上総利益は4,295,893千円(前年同期比192.4%増)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

当事業年度の販売費及び一般管理費は1,935,260千円(前年同期比86.6%増)となりました。主な要因は、業容拡大に伴う人件費・採用費の増加、「DX Suite」、「Learning Center」及び「AI inside Cube」に係る研究開発費等であります。この結果、営業利益は2,360,632千円(前年同期比446.1%増)となりました。

 

(営業外収益、営業外費用、経常利益)

当事業年度において、営業外収益は10,796千円(前年同期比1,881.9%増)、営業外費用は32,230千円(前年同期比35.2%増)を計上しました。主な要因は受取配当金10,626千円、投資有価証券評価損26,462千円等を計上したことによるものです。この結果、経常利益は2,339,197千円(前年同期比471.9%増)となりました。

 

(特別損益、当期純利益)

当事業年度において特別損益は発生しておらず、法人税等を749,590千円(前年同期比611.3%増)、法人税等調整額70,960千円(前年同期比39.0%減)を計上した結果、当期純利益は1,660,567千円(前年同期比295.4%増)となりました。

 

なお、セグメントについては、当社は人工知能事業の単一セグメントであるため、記載しておりません。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ2,282,362千円増加し、4,816,451千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により得られた資金は2,090,066千円(前事業年度は580,459千円の収入)となりました。税引前当期純利益2,339,197千円などで資金が増加した一方、売上高の増加に伴う売上債権の増加564,319千円、サービスの価格設計の変更に伴う前受収益の減少131,001千円等により資金が減少しました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において投資活動により支出した資金は、1,503,834千円(前事業年度は103,679千円の支出)となりました。主な要因は、関係会社株式の取得による支出1,237,875千円、有形固定資産の取得による支出142,616千円、無形固定資産の取得による支出93,356千円であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度において財務活動により得られた資金は、1,696,130千円(前事業年度は1,258,241千円の収入)となりました。主な要因は、短期借入れによる収入1,700,000千円、短期借入金の返済による支出200,000千円、株式発行による収入198,520千円であります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績

当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載を省略しております。

 

b.受注実績

当社で行う事業は、受注から役務提供の開始までの期間が短く、受注状況には重要性がないため記載を省略しております。

 

c.販売実績

当事業年度における販売実績は次のとおりであります。なお、当社は人工知能事業の単一セグメントであるため、収益計上のモデル別に記載しております。

 

収益モデル

売上高(千円)

前年同期比(%)

リカーリング型モデル

4,031,981

537.0

セリング型モデル

565,313

67.3

合計

4,597,295

288.9

 

 

(注) 1.当事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

第5期事業年度

(自 2019年4月1日

至 2020年3月31日)

第6期事業年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社エヌ・ティ・ティ・データ

171,665

10.8

西日本電信電話株式会社

2,152,654

46.8

 

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

3.第5期事業年度における西日本電信電話株式会社に対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため記載を省略しております。

4.第6期事業年度における株式会社エヌ・ティ・ティ・データに対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため記載を省略しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りを行うにあたり、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる結果をもたらす場合があります。当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。また、当社が行なっております会計上の見積りのうち特に重要なものは以下のとおりであります。

a. 繰延税金資産の計上

当社は繰延税金資産の回収可能性について毎期検討を行なっております。当社の繰延税金資産の回収可能額は、将来の課税所得の予測に大きく依存しておりますが、課税所得の予測は将来の事業環境や当社の事業活動の推移、その他の要因により変化いたします。将来、課税所得の予測に影響を与える諸要因に変化があり、当社が繰延税金資産の回収可能性がないと判断した場合には繰延税金資産を取り崩し、損益計算書の法人税等調整額が増加し、当期純利益が減少いたします。
 

b. 固定資産の減損

当社は固定資産の減損について、主として事業の種類別に資産をグルーピングし、減損の兆候の有無を判定しております。減損の兆候があった場合、将来キャッシュ・フロー等を見積り、減損の要否を判定いたします。判定の結果、減損が必要と判断された資産については、帳簿価額を回収可能価額まで減損処理いたします。

 

② 財政状態の分析

財政状態に関する分析は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」に記載のとおりです。

 

③ 経営成績の分析

経営成績に関する分析は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② 経営成績の状況」に記載のとおりです。

 

④ キャッシュ・フローの状況の分析

キャッシュ・フローの状況の分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」をご参照下さい。

 

⑥ 資本の財源及び資金の流動性について

当社の資本の財源及び資金の流動性につきましては、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。運転資金需要のうち主なものは、当社サービスを拡大していくための開発人員及び営業人員の人件費、また研究開発に係る費用であります。これらの資金については自己資金にて充当する方針です。

 

⑦ 経営者の問題意識と今後の方針について

経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照下さい。

 

4 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

5 【研究開発活動】

当社は、人工知能を活用した画像認識技術や独自の匿名化技術等、専門的な知識とノウハウ、特許を有しており、それらをベースとしたAIプラットフォームの研究開発を行っております。また、それをさらに普遍化した高度なアルゴリズムの研究開発に取り組んでおります。

社内体制としては、大手IT企業での研究開発職、大学での専門的なディープラーニングの研究など高い専門性を有するメンバーが在籍し、研究開発に従事しております。

 

当事業年度における研究開発費の主な内容は、研究開発における人件費、サーバー費用等の271,940千円になります。

なお、当社は人工知能事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

当事業年度の研究開発活動は、以下のとおりであります。

(1)Workflowsα版

「DX Suite」を含むAIやアプリケーションを柔軟に扱えるソフトウェアの研究開発を行いました。

(2)「Learning Center」

ノーコードで精度の高いAIモデルを作成できるソフトウェアの研究開発を行いました。